彼は僕のヒーロー   作:社畜のきなこ餅

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日間ランキングにINさせて頂けたので更新します。

漸くオリ主こと、狐白が父親から受け継いだ個性のお披露目回です。

2020/3/1 緑谷家が一軒家だと勘違いしており、原作読み返したらマンション的な集合住宅だと知ったので一部書き直しました。


7.No.1ヒーローとの邂逅(なお狐白は真実を知らない)

 ヘドロ型ヴィラン騒動が終わって早一週間ほどが過ぎた頃。

 未だ朝靄が街を包む午前四時前、緑谷家のある集合住宅の入口を監視できる物陰に狐白は潜んでいた。

 どこからどう見ても不審者そのものでしかない狐耳尻尾の生えた美少女であるが、これには多少深い理由が存在している。

 

 まず一つ目に、あの日までは並んで通学をしていたのだがどこか気まずくて碌な会話が為されていないという点が挙げられる。

 頬を平手打ちしてしまった手前、自分から話を切り出す踏ん切りがつかない狐白と……自分が叩かれた事は割とどうでもよく、むしろ夢に向かってわき目もふらず全速力で走っている状態の出久。

 この時点でまず、一つすれ違いが生まれている。

 

 そして二つ目に、出久が授業中も疲労困憊でどこか上の空である事。

 その事をクラスメイトはヴィランに襲われた事が原因によるノイローゼかなどと野次っていたが、狐白にはどこか不審な点を感じられた。

 

 最後の三つ目は、どこかギクシャクしている出久と狐白の様子に要らんことを考える男子が増えた事である。

 出久に何が起きているのか、覚悟を決めて狐白が問い詰めようとした矢先に狙いすましたタイミングで、教室の入口に現れては告白をしてくるのだ。

 これに関してはどちらかというと出久は巻き込まれ事故をもらった被害者である、しかし結果的に狐白の機嫌は急速に傾いていた。

 

 それらの事情が複雑に絡み合った中で、何とか狐白が居眠りしかけていた出久から聞き出した情報、ソレが。

 早朝から起きて、色々特訓をしているというキーワードなのだ。

 

 

 ここで彼女が未だ冷静さを保っていたのならば、メールか何かで問うなり顔馴染みである出久の母へ聞き出すという考えも浮かんだのだろうが……。

 彼女は彼女で、親友である幼馴染に嫌われたのだろうかと疑心暗鬼にかられ、行動がいささか視野狭窄な方向に転がっていた。

 

 

「……あ、出てきた」

 

 

 時折通りかかる早朝パトロールをしているヒーローに見つかりかけた狐白であったが、その都度機転を利かせて辛うじて補導される事を凌いでおり。

 今、彼女の視線の先で集合住宅の中にある緑谷家の扉が開きスポーツウェアに身を包んだ出久が、張り詰めた表情を浮かべて小走りで道を駆けていった。

 

 

「あっちは確か……」

 

 

 海流の関係でゴミが流れ着き、更に不法投棄が相次ぐ事で早朝から向かう人などいない海浜公園の方角であると狐白は察すると。

 時折視線を感じるのか足を止めて振り返る出久の視界に入らないよう苦心しながら、狐白は彼を尾行し始める。

 

 どこに出しても恥ずかしくない、愛が暴走したヤンデレストーカーが如き行為にしか見えない構図だが、狐白の頭には純粋に親友を心配する気持ちしかなかった。

 もしかすると、最近構ってくれない親友への苛立ちもあるかもしれないが、誤差の範囲だから問題ないのである。

 

 

「おはよう緑谷少年! さぁ今日も美化活動はりきってやっていこうか!」

 

「はい!」

 

 

 そして見つかることなく辿り着いたゴミに埋もれた海浜公園。

 そこに辿り着いた出久は入り口で待っていた、大柄でありつつも衰えた体が酷く印象的な男性に声をかけられ、勢いよく返事をすると同時に素手で大小さまざまなゴミの撤去活動を始めていた。

 

 

「……これが、特訓?」

 

 

 時折力尽きかけては男性から叱咤激励され、そのたびに這いあがっては美化活動を続ける幼馴染の様子に狐白は声音に困惑を滲ませながら呟く。

 確かに砂で足を取られる状態で、大きさも重量も千差万別なゴミを人力で撤去するという行為は特訓には最適と言えるだろう、だがそれでも限度があるのじゃないかという想いが狐白の胸中を占める。

 そして、その想いは物陰で見守っている間も強くなり、やっぱり我慢できないとばかりに飛び出して二人を止めようと狐白は動く、が。

 

 歯を食いしばって撤去活動を続ける出久の瞳に、ぎらつくような渇望と希望の光が宿っている事に気付いてその足を止める。

 その顔と瞳の輝きは、中学生に上がってから段々と諦観に塗りつぶされていた出久のモノとは思えない輝きで……そして、幼き頃の狐白を救ってくれた時と同じ瞳の輝きを。

 彼女の視線の先で、奮闘を続ける出久はその目に宿していたのだ。

 

 

「こんなの、止められないよ……」

 

 

 あの骨と皮だけの大男に何を吹き込まれたのか狐白にはわからない、だが出久が己が信じる未来をその手で掴もうとしている事だけは間違いないと断言できる光景だった。

 最初は無理をしていたり何かに騙されてるようなら力尽くで止める腹積もりだった狐白は、肩をすくめて嘆息すると先ほどまでと違い足音を立てるようにしながら物陰から姿を現す。

 

 

「お、おっと少女よ!一体こんな時間に何の用かな?!」

 

「こ、こーちゃんどうしてここに!?」

 

 

 尻尾をゆらゆらと動かしている狐白に漸く気付いた二人は、これでもかというぐらいに仰天しながら驚愕の叫びをあげた。

 そんな二人の様子に、隠し事がありますって白状してるようなものだよなぁ、などと思いながら狐白は口を開いた。

 

 

「初めまして、玉藻 狐白と申します。そちらで一生懸命ロッカーの残骸を運んでいるいずちゃんの幼馴染です」

 

「う、うむ初めまして! 私は八木というモノだよ、緑谷少年がヒーローになる為に特訓を付けているんだ!」

 

 

 自身の祖母に叩き込まれた作法に則り、失礼のないよう目上にあたる男性へ自己紹介をする狐白、思った以上に礼儀正しく挨拶された八木ことオールマイトはしどろもどろになりながら返事を返す。

 一方、出久は突然現れた幼馴染というインパクトから未だ抜け出ていられていなかった、だが無理もあるまい。まだ早朝の六時過ぎでしかも彼女が自発的に来ようとしないこの場所に、ひょっこり現れてきたのだ。

 来るはずがない、などと思っていた彼を責められる人間が果たしているだろうか……狐白がここまで思いつめる切っ掛けになった案件については彼も言い訳のしようがないかもしれぬが。

 

 

「え、えっとねこーちゃん、これは……」

 

「そんなに慌てなくてもいいよいずちゃん、これは夢をかなえる為に必要なんでしょ?」

 

「…………うん」

 

「だったら僕は止めたりなんかしないよ、それに付き添いしてくれる大人もいるみたいだしね」

 

 

 バツが悪そうに俯く出久に狐白は近付くと、柔らかく微笑みながら肩に提げていた鞄からスポーツドリンクの入ったペットボトルを取り出して手渡す。

 そして、いつものように軽くその手で出久の体へと触れ、身体の一部分に負荷が溜まっていない事を確認すると満足そうに離れる。

 

 

「だけど、それでもいきなり無茶をやってるみたいだからあちこちに疲労溜まってるよいずちゃん、後でマッサージするからね」

 

「う、うん……お手柔らかにお願いするね」

 

 

 悪戯っぽく微笑む狐白の言葉に、出久は顔をこわばらせながら受け取ったペットボトルの中身で水分を補給する。

 そんな仲睦まじい男女の様子を眺めていた、トゥルーフォーム状態のオールマイトは青春だなぁ。などと呑気に呟き……。

 

 その日の早朝ゴミ撤去作業の終わりに出久が狐白にマッサージを受ける時になって、オールマイトは出久のガールフレンドだと思っていた狐白の異常性に気付く。

 

 

「あー、玉藻少女。そのマッサージはただの指圧とかでは、ないよね?」

 

「あ、わかりますか? 僕の『修復』の個性でいずちゃんの体の疲労の原因になる個所を治しながら、身体の増強に悪影響が出ないよう解してるんです」

 

 

 海浜公園の中で少し開けた、周囲に比べて聊かマシと言える場所にブルーシートを広げその上に出久をうつ伏せに寝かせた狐白が。

 マッサージの心地よさにだらしない貌を浮かべ声にならない声を漏らしている出久の背中へ手を当て、力を込めてマッサージしながら淡く光る燐光を出久の体全体へ撫でるようにして広げていく。

 

 

「どのぐらいの怪我なら、玉藻少女に負担なく治せるのかね?」

 

「え? そうですねぇ、擦り傷や少し深めの切り傷程度なら多少お腹が空く程度で治せますよ」

 

 

 欠損した四肢や内臓まで治すとなると、どうなるかは見当もつかないですねぇ、と呑気に尻尾を振りながらマッサージを続ける少女の姿にオールマイトは……。

 この少女を、雄英高校で保健医として働いている国内最高峰の治療系個性の所持者、リカバリーガールに師事させたらどれほどの癒し手になるのだろうかと考えてしまった。

 もしかすると、自身の体も治せるのではないかと、淡い希望を抱いてしまったのだ。

 

 

「八木さんもあちこち悪くしてそうだから後で診させてもらっていいですか?」

 

「ファッ?! え、ええといいのかい?」

 

「構いませんよ、いずちゃんが心の底から信じる人にそう悪い人いませんし」

 

 

 

 

 

 そしてこの日から、出久とオールマイトの二人三脚の特訓に狐白を加えた日々が始まった。

 彼らは早朝6時に海浜公園で合流すると特訓を始め、途中で体を痛めるようであればすぐに狐白が出久の体を癒す。

 その上で、狐白は実は八木がオールマイトだという事なんて知る由もなく、ただ親友が師事を受けている人物だからと特に深い事を考えずにオールマイトの体を癒していく。

 

 無論、無理のない範囲での修復では呼吸器半壊の胃袋全摘、更には全身に致命的な損傷を抱えていた八木……オールマイトの体を治す事など狐白には不可能としか言いようがなかった。

 故に彼女は方針を変更し、治す方向ではなくこれ以上の悪化を防ぐ方向へ修復をシフトし治していくのだが、意図せずこの作業は狐白の個性を鍛える訓練になるのであった。

 

 

 

 なお、初見で八木の体を診た狐白は……真顔で、なんで病院で安静にしていないんですか?!と怒鳴りつけたらしい。

 

 




少し強引な流れかもしれないけども、許してほしい!
なお出久を洗脳したりして狐白引き込もうとした場合、少しの変化から出久の異常に気付いて狐白は大暴れをし始めます。
だけども、(現状)彼女は出久君に恋愛感情は持っていないのだ。持っていないと言ったら持っていないのだ!

そしてある程度の情報が出たので、原作風に狐白のプロフィールを出してみます。


【キャラクタープロフィール】
『玉藻 狐白』
幼い頃に緑谷出久に救われ、個性が発現しどん底にいる時に再度救われた……元は無個性男子だった少女。
狐目と揶揄される糸目と銀色の髪の毛と狐のような耳と尻尾を持ち、飄々とした性格をしている。
本人が思っている以上に、出久への依存心が強い。

所属(現在):折寺中学校3年生
誕生日:3月8日
身長:160cm
血液型:AB型
出身地:京都府あたり
好きなもの:厚揚げを炊いたの、出久
嫌いなもの:犬、勝己
戦闘スタイル:近接中距離戦闘(長巻使用)

個性:『稲荷』と『修復』
稲荷:狐白の一族女性がほぼ例外なく発現する個性、髪の毛の色と同じ色の狐耳と尻尾が生える。
五感が一般的な人体に比べ優れており、肉体の俊敏性も高いのが特徴だが、それ以上に。
父方にあたる個性を併合して発現する事が多い、肉体の土壌とも言える個性という特徴を持っている。
修復:自身が構造を理解しているモノを、現状問題なく動いている所を阻害する事なく修復する事が可能な個性。
本来ならば機械の修復も可能な強個性だが、肝心の本人が機械音痴の為そちらには適用できていない。
使いすぎるとお腹が空く上に、それでも限界を超えると 脂肪→筋肉→内臓の順に消耗していく。
万が一誰かの肉体の欠損を直そうとした場合、どれぐらいの代償を要するのかは狐白自身もわかっていない。

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