ボンドルドールズフロントライン   作:pilot

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「いやぁ、自由に使える体はいつぶりでしょうか。」

 

その若々しい見た目で、穏やかな口調で話しているのはなんとボンドルド。

精神隷属器の正確な所在がわからないものの、基地内部にあるのは確かなようだ。

その証拠に、彼だけが理解しているそれの使い方に乗っとれば、この通り意思のある人形を自分の体にすることができた。

 

「喜んでもらえて何よりだよ。それに、やっと俺が安眠できるしな。」

 

青年は青年で、自らの睡眠時間を確実に確保できるという事実に喜びを隠せていない。

 

帰るときも楽だった。

人形を連れ帰るにあたって、当初青年は事実を隠し通そうとした。

だが、ボンドルドは「それでは自由に研究ができないから他の案にしましょう。私に任せてください」などと言うのだ。

彼は流石のボンドルドであろうとも無理があることではと考えたが、青年の上官の元へ向かいしばらくすると、これまたあっさり許可を勝ち取ってしまった。

 

青年は舌を巻いた。

あの堅物上官を、しかも人形だというハンデを背負いながら説得したのだ。

人間技ではない、まるで奇跡のようなことをここ数日で何度も何度も起こしている。

怪物か、あるいは神なのか。

彼はそれでも、ボンドルドのことを人間と認知していた。

だからこそボンドルドも彼を気に入っているのだろう。

 

「さあ、次は適当な衣服を見繕いましょう。

流石にこんなボロボロの衣装では、後々支障が出ますからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻前。

 

「人形風情が何の用だ。」

屈強な男と、みずぼらしい少女。

一見、乞食のようにも見える配役。

 

「人形風情、ですか。人形も人間も、それぞれが特別なのですよ。私の体になって頂いたこの子も、また優秀な子でした。」

 

男性の猜疑心をこめた言葉に対して、やや頓珍漢で不可思議な返事を返す少女。

 

少女なのだろうか。

 

「何を言っている?電脳でもイカれたのか?」

 

「いえいえ、私はキチンと正しいことを言っています。

_____遺跡で見つけた物、気になりませんか?」

 

何故それを。

そう言いたかったが、かつて少女だった筈の「ボンドルド」はそのチャンスを与えなかった。

 

「精神隷属器。」

 

部屋の中にいた羽虫が突然規則的な動きをしだす。

 

「あの大きな遺物、綺麗ですよね?あれは精神をこうやって移すことができるんですよ。」

 

「おいまさか__」

 

「もちろん人にも。精神さえあれば、今の体のように人形にも。」

 

警備中だった筈の装甲人形が、いつの間にか部屋に侵入していた。

ボンドルドの動きをトレースし、腕を大きく横に広げている。

 

「すごいでしょう?この世界にはまだまだこんなものが沢山、星の数ほどあるんですよ。

私は誠心誠意お願いしたい。私を貴方たちに協力させてくれませんか?」

 

ボンドルドは本心からそういった。

それと同時に、無理と答えるのならば男性をもどうにかしようとすら考えていた。

 

長年生きてきた筈の男性も、このような輩は見たことも聞いたこともない。

 

恐れを抱いた。

その一方で、憧れも抱いた。

彼もまた、探検隊としてあの遺跡郡を調べていた人間だ。

未知の甘さを知っている。

憧れは止まることがない。

 

「......よかろう。君が何者なのかはわからないが、例の遺跡に関わる存在なのは確かなのだろう。

無論、協力関係ならば我々にも利益はもたらしてもらうぞ。」

 

畏怖の感情に突き動かされるまま、彼はそれを受け入れたのだ。

 

それを聞き、にこやかな表情を浮かべるボンドルド。

 

「ありがとうございます。共に夜明けを迎えましょう。」

この上なく穏やかな声で、そう言った。

 

黎明は、誰にとっても黎明である。

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