ボンドルドールズフロントライン   作:pilot

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胡蝶

2061年

 

「素晴らしい......ああこれも......これも気になりますね......」

 

ひたすらに学術書を読み耽る一体の人形。

ボンドルドの精神が移されたそれは、休むことなくその行為を続けてる。

軽く、ここへと来てから一週間ほどだ。

青年は朝起きて本を読むボンドルドを眺め仕事をし、夜帰ってきて本を読みつづけていたボンドルドの横で眠りにつく。

 

ボンドルド自体は彼のもらってきたI.O.Pの人形、ということにしている。

あの上官だけは何やら知っているようだが、ボンドルド自身が話をつけていたのか追及してくることはなかった。

 

明くる日、彼は朝ボンドルドに訪ねる。

 

「あんた休まなくてもいいのか?」

 

青年は、あまりにも吸収が早いボンドルドに驚いている。

何故ならば、彼は全く予備知識の無い状態でこの世界に目覚めた。

だというのに、もう彼は人形などの技術、ありとあらゆる物理化学、最新の生態系などを魂に叩き込んでいる。

凄まじき知識欲、そこの知れぬ学習能力があるのだ。

 

「休むなんてとんでもない。休んでいる時間が惜しいのですよ。幸い貴方の見繕ってくれたこの「人形」、そうとう頑丈なようで、物質的な肉体面ではほとんど疲労を感じません。

貴方には感謝してますよ。ありがとうございます。」

 

まあ、本人が喜んでいるので良しとしよう。

きっとそれが、未来の自分達のためになるから、と。

 

だが、それはそれとして彼なりにボンドルドにもまた新しい経験を与えてやりたいとも思っていた。

 

「そうだな。あんたまだ目覚めてから「飯」食ってないだろ?料理も化学って言うし、ちょっと食べに行かないか?」

 

ボンドルドは一瞬逡巡したが、直ぐにこちらへ向くと興味深そうに頷いた。

こちらが知的好奇心をそそらせる言い方さえすれば、彼は喜んでこちらの提案に乗ってくれる。

人間離れしてるが、その部分だけはとても親しみやすいとすら感じられた。

 

 

 

 

 

「す、素晴らしい......素晴ら......あっ、それ取ってもらってもよろしいですか?」

 

先程から食事を口に運ぶ度に感謝の言葉をのべる人形。

言われる側は、さぞかし料理人冥利に尽きるだろう。

言われた要求通り調味料を差し出しながら、青年はその食べる姿をまじまじと見つめていた。

 

「見た目も声も女の子なのに、中身はあの頭の中で響いていたあれと一緒なのほんと不思議だなぁ。」

 

「うーん、素晴らしいですねこれは。

あまり味には頓着しないタイプだったんですが、やはり美味しい方がいいのは確かですよねぇ。」

 

もくもくと出された食事を頬張り続けるボンドルドの姿は、先程までの学者然とした姿と解離しているように見えて、それでもどこかその楽しげな雰囲気は変わっていない。

 

「食べ終わったらそこら辺の人形に容器は任せていいぞ。」

 

そろそろボンドルドが食べ終わりそうなことを青年は察すると、それとなく次の方法を示唆する。

 

「人形たちは働き者ですね。ここには私のからだとはことなる鉄血製のものも居るんですか?」

 

それにすらも感心するのだから、ボンドルドという存在はひたすらにポジティブだ。

 

「もちろん。

ほら、あそこにも。

このすぐ近くにも......あれ、何でかたまってんだろ?故障か?」

 

疑問。

忙しなく動いてなければおかしい状況。

ボンドルドも皿を既に纏めているというのに全くもって回収に来ない。

というか他のテーブルでも朝食を済ませ終わった奴等の食器がいたるところに放置されている。

おかしい。

複数体いるのに全部故障はありえない。

 

「おかしいですね~動きませんね

気になります、中が見たい。」

 

ボンドルドはぶれずに探求を続けようとしている。

近付いてより詳しく様子を見ようとしていた。

そのときだ。

 

破裂音。

打撲音。

ボンドルドは、空を舞っていた。

 

「ボンドルド!?」

 

つまりはぶん殴られたのだ。

鉄血人形の、長きに渡る人類への反抗の幕開けだった。

 

 

 

 

「おやおやおや......素晴らしい馬力ですね......体が頑丈で助かりましたよ。

しかしながら対抗するには分が悪い。」

 

至るところで暴れだした鉄血人形たちから隠れるように動く二人組。

傷を庇いつつも冷静に状況を把握しようとするボンドルド。

なにやら悲鳴も聞こえるし、銃撃すら始まっている。

 

「チッ......鉄血工造の野郎、クレームいれてやるからな......」

 

青年は悪態をつき、ボンドルドはひたすらに感心している。

するとボンドルドは何かを思い付いたように顔をあげた。

妙案でも思い付いたのかもしれない、ボンドルドなら何とかしている。

その期待をこめて青年は彼を見やる。

 

と思えば突然ボンドルドが走り出す。

 

「!?おいボンドルド!?」

 

「すみません少し所用が。

あなたはなんとか生き残ってください、大丈夫、貴方ならできます。

なるべく耐えてくださいね。」

 

突然走り去ってしまったボンドルドを眺めながら、青年の逃走劇が始まってしまった。

 

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