ボンドルドールズフロントライン   作:pilot

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もっとほしい、だからすてる

「あれから数日たちましたが、やはり被害が目立ちますね。」

 

荒れ果てた基地内を巡回するボンドルド。

その姿はこの前までのかわいらしい少女ではなく、細く光るスリットの入った黒い仮面と、全身真っ黒のコートのようなもので覆われた体である。

確かに中身は少女の体なのだが、暁に至る天蓋によりほとんどその姿の名残は見られない。

 

あまりにもの非常事態なので、研究施設から発掘品を奪取したことも有耶無耶になり、今現在もこうして自由に使えることとなった。

だが実際には、誰一人として使用法も、事実動かすことすらできなかったそれを有効活用出来るのなら友好的な存在であり、それについて詳しいボンドルドに任せておいた方がいいだろうという上層部の打算的な判断でもあるのだ。

 

「確かになぁ。

ボンドルドさんがカバーできた範囲以外でも暴れていたらしい。まったく迷惑な話だ。しかも鉄血工造自体が壊滅した、と。クソッ!補償も出ねえのかよ。」

 

青年は悪態をつく。

死にかけたから無理もない。

対して、いつもの如くボンドルドはどこか楽しげだった。

 

「あの人形たちの製造元が無に帰ったのは残念ですが、しかしながら人形自体は確保できました。

次なる問題は設備なんですよね。」

 

彼は前しか向いていない。

目標へ真っ直ぐに進むのが、ボンドルドの無意識下での流儀である。

 

「まあボンドルドさんも形式上はただの人形、普段研究室に自由に出入りすることは不可能だよなぁ。」

 

青年も機会さえあれば遺跡発のテクノロジーを見に研究室に行ってみたかったが、結局現場働きにまで回されてしまった過去を持つ。

彼の隊で苦労して運んだ例の巨大な美術品も、結局彼自身は詳しく調べることができなかった。

彼の隊は、つまるところ下請けのようなもので、詳しいことを知らされることは永劫ないはずだったのだ。

だからこそボンドルドについて回れば運命を変え、いつかは更なる探求をできるのではないか。

そういう期待を込めて協力者となっていたので、彼自身にも関わり深い問題なのだ。

 

「そうだ、いいことを考え付きましたよ。

いっそのこと怪我を理由に辞めちゃいましょう。

私も行きます。」

 

辞めちゃいましょう。

さぞ簡単なことに聞こえるが、今の時代軍に就職すること自体が優れた将来を確約する救いのようなものなのに、それを放棄するという一大事である。

それを、ましてや他人のことでもあるのに、ボンドルドは簡単にいい放った。

 

「は?今なんて___」

「辞めちゃいましょう。」

 

言うのが先か、するのが先か。

もう既に彼はいつものように、そそくさと用意を始めていた。

 

「これが辞表です、手続きの仕方はこうです。

精神隷属器も私に返却してもらいましょう、あてをつくったのでそれらに少し手伝いしてもらいます。

行き先はこのグリフィンです、先日の鉄血人形の暴走にいち早く対応した優秀な企業らしいですよ、すごいですよね。

面接はきっと通ります、大丈夫、私が付いてますから。」

 

トントン拍子で計画を練り終わったボンドルドは、青年が思考を纏め反応を返す前に何処かへと行ってしまった。

慣れっこだったが、しかし釈然としないと青年は感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいお前!何してるんだ止まれ!」

 

夥しい数の人形を引き連れ、そしてその集団が運んでいるのはなんと精神隷属器(ゾアホリック)

巨大なその美術品のようなものを、ボンドルドが支配した装甲人形、この前捕らえ簡単な修理を施した鉄血人形が急ピッチで運んでいた。

 

「おや、隊長殿。調子は如何ですか?」

 

「貴様のせいで最悪だ、それを元に戻せ!」

 

怒鳴る上官、無視して運ぶボンドルド達。

 

「聞こえないのか!?」

 

怒りは吹き出、ボンドルドに叫び続ける。

 

「元には戻します。ですから運んでいるのですよ。

貴殿方の探索した建造物、あれら全てが私の物でした。

そろそろ返していただきたい。」

 

知らぬ彼らからすれば意味のわからぬ言葉だろうが、事実だ。

しかしながら、そんな事情など軍は知ったことではない。

 

「そんな道理が通るか!」

 

遂にボンドルドにつかみかかる上官。

しかし足でその体を掬われ、そのまま呪い針(シェイカー)を五本打ち込まれたや否や、在らぬ方向に体をよじり続けながら倒れこんでしまった。

 

「ああ......グリフィンでは一人の指揮官に与えられる基地が大きいらしいじゃないですか。自由にできる場所がほしい。是非とも行きたい。」

 

楽しみだ。そう言いたいのだろう。

 

先程上官を転ばしたその足を軽やかに動かしながら、浮かれた様子のボンドルドはそのまま基地の外へと精神隷属器(ゾアホリック)を運び出していくのであった。

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