ボンドルドールズフロントライン   作:pilot

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侵入社員

「明らかに異常な成績だ。こいつは確かに元軍なのか?」

 

数人の人事担当者と、上級代行官のヘリアントスが協議を重ねている。

 

「はい、それは確実な筈です。

が、コイツは中々曰く付きで、彼が辞めた日に大規模な盗難が基地内で起きたらしく、事実死者も出たようなのです。

その事件が起こる数週間前から、不審な人形を購入したという噂も。」

 

掘れば掘るほど湧き出る怪しげな噂。

だが、問題の人間はそれを差し引いても喉から手が出るほど欲しい人材であるのだ。

 

筆記優秀。

この荒れ果てた時勢にありながら、凄まじい量の知識と洞察力を持っている。

下っ端軍人でここまで勉強熱心な者は見たことがない。

独自の理論構築も素晴らしく、まるで科学者のような着眼点のレポートをも書き上げていた。

語彙も十分、とても読みやすい。

 

そしてなにより、実技が優秀。

だが、彼を採用するのに二の足を踏まざるを得ない問題はここであったのだ。

 

いささか効率的すぎる。

死をも折り込み済みで、しかしながら無茶苦茶な特攻でもない。

総合的にみてこれ以上ない作戦立案、采配なのは確かなのだが、どこか人間らしくない印象を強くもたらす。

 

効率と目標だけしか見えていないような、例えるのならばゲームのタイムアタックじみた、そのような結果を叩き出していた。

 

それが底知れぬ恐ろしさと嫌悪感を採用担当者に与えていたのだ。

 

いくら扱うのが人形とは言え、このような傾向のある人間を雇うことはリスクがあると普通の人間は考える。

 

効率のために犠牲を払うよりも、少しでも多く生き残らせる。

グリフィンは民間軍事企業には珍しく、そういった思考なのだ。

 

今回の模擬戦は、さまざまな状況を想定しているとは言えこれ以上凄惨な戦況にならないという保証はない。

 

そのとき、彼は一体何を犠牲にするのだろうか。

勝ちはするだろう。

あらゆる死をも呑み込んで。

 

「いやいい、採用しろ。」

 

だが、これだけのリスクをちらつかせるこの人間を、ヘリアントスは雇うことにした。

やはりこの人材は後々必要になる。

そう言う確信があった。

肩書きや周りの事故など、そもそも見て決めるものでもない。

グリフィンははなから、実力しか見ないのだ。

そしてその実力の面では、誰も文句は言えないほどに完成されているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺上手くいく気がしないんだが......?

俺の退役前後に不味いことが起きすぎてる。普通に通るとは思えないってボンドルドさん。」

 

軍人だったとは言え、そのアドバンテージは大して影響が出ない。

グリフィンは昔から完全実力主義で、元あった肩書きなど紙切れひとつの価値すらないらしい。

 

青年は、強引すぎるボンドルドのやり方に不安を抱いていた。

このままもしグリフィンへ就職することが出来なかったならばどうなるか。

自由になる工房など夢のまた夢、ゾアホリックの長期的な隠し場所にも難儀するし、なにより補給が受けられない。

昨今の土地不足から考えるに、グリフィンをスルーした作戦は立てづらいのだ。

 

「大丈夫ですよ。予めグリフィンの採用基準は調べあげてきました。恐らくは筆記も実技も水準を大幅に上回っている筈です。

あとは待つだけ、就職は確実です。」

 

自信満々で言い放つボンドルド。

実際のところ試験はこいつに半分体を明け渡した状態で受けたのでいまいち実感が無かったが、相当な成績を叩き出していたらしい。

 

「任せてください。私が必ずや朗報をもたらしますよ。」

 

辞めろといったのはどこのどいつであろうか。

とにかく他人と生きる時間の異なるボンドルドに、久しぶりに驚かされる青年であった。

 

 

 

 

 

その後採用通知と基地の貸付が確約されると、ひとまず青年は胸を撫で下ろし、ボンドルドはもうゾアホリックを運び込ぶ算段を始めていた。

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