次の日
よし、作戦を開始する。作戦名その名も『あいつの真似をすればなんとか部員が集まるだろう大作戦』だ。真吾司令官それは無理だ、今まで話したことない人たちに声をかけるなんて危険すぎる。そんなことはないぞ、真吾二等兵俺達には切り札がある。それは作戦名通り、あいつの真似をすれば何とかなるはずだ。なるほどさすが司令官です‼一生ついていきます。
何を頭の中で兵隊ごっこを僕は一人でしているのだろうか、自分で思うのもなんだが頭の痛い奴だ。それにしても驚いたボッチ生活をしていると一人で会話ができるようになっていたのか、なんともまぁ寂しいものだな。とりあえずうじうじしてないで行動に出るとしますか、廊下の窓から景色を見るのも飽きたからな。でも一週間に部員を集めるのは無理がある。僕がコミュ障どうこう以前に今は6月の中旬だ、1年生はほとんど部活に入っている、2年生は今所属している部活に慣れてきたころだろう。3年は最後の試合やらコンクールに集中している。しかもだ、この学校は小中学校だ、生徒全員がここの小学校上がりの奴しかいないため、生徒数自体少なく、ほとんどの生徒が部活に入っている。この中から帰宅部を見つけるのは困難だ。そもそも帰宅部が居るのかどうか、いやそれを見分ける方法が一つだけある。
それは、下校するとき帰宅部はまっすぐ帰るはずだ、(当然である。)そこで見分けて見せる。
「よし校門前に立って校門を抜けた生徒に話しかけよう。そのまま勧誘だ。」
そして放課後
僕は県立栢木小中学校といかつく書かれた銘板の前に仁王立ちしながら学校が終わると同時に出てくる帰宅部を待っていた。
「この作戦を実行するために、6時間目をサボったんだ、せめて収穫は一人でもいいからほしいところだ」
まぁ別に授業をサボるなんていつものことだから実はなんとも思っていない。なんか大学生になってからイキってる奴になった気分だ。
キーンコーンカーンコーン
みんな大好きなじみのある曲が流れだした、さぁ来るぞ、未来のテニス部員たちが。
そして五分ほど待つと、いかにも真面目そうな男女がこっちに向かって帰宅している。どうやら一緒に帰っているわけではなさそうだ、別に団体戦をできる人数を集めろと言っているだけで、実際の試合で団体戦をしろとは言われていない、渡辺先生も6人集めろとしか言わなかったからな、つまりこの際女の子が、6人のうちの一人でも大丈夫ということだ。うん、まぁ、でもあれだ、今回は男に話しかけよう。そうしよう。そして勇気を振り絞り僕は男子生徒に話しかけた。
「こkっこここっここんにぃぃわ」
あ、やべミスった。あまりの緊張に『こ』をめさんこ噛んでしまい申した。やばいどうしよう前が見えないてか見たくない・・・。いや、見よう僕はあいつみたいになるって決めたんだ。あいつは起こってしまったことからは、目をそらさない‼
そして僕が見た光景は、笑いもせず笑顔でもなく、ただただ変な人を優しく見つめる、裏表のない純粋なまなざしで僕を見つめる少年と少女であった。やめてそんな目で僕を見ないでと叫びたい、ていうか無駄に声が大きかったみたいで女子生徒にまで聞こえたみたいだ。恥ずかしい
「あの、どうかしましたか?」
と、普通に男子生徒は返事をしてくれた。よかった一人目は優しい人で、僕も少し落ち着き、
「あ、あ、あのですねええ、お宅はテニスとkとか興味はない、か、しら?」
スゲエ、僕が知らない人と話せてる、感激だ。
「はぁまぁ嫌いではないですけど」
「では、テニス部に、そのぉ入りませんかい?」
ここはストレートに勇気を出して誘うしかないと考えた僕は、ドストレートに誘ってみた。
「すみません、自分要領の悪いので、いい高校に行きたいためには、勉強を優先しなくてはいけないので部活には入れません」
と男子生徒はきっぱりと言い放ちそのまま帰路についてしまった。何だろう、そんな内容で真面目に断られると、要領のいい自分が遠回しに褒められてるみたいで照れてしまうじゃないか。
そのあと三人ほど地味目な男子に話しかけたが、すべて断られ、心が折れた僕は帰ることにした。
次の日の放課後
先日は緊張もあってか、うまく話せなかった。いやそもそも話しかけなくていいんだ、まったく俺は何を生き急いでいたのやら、まぁ今日は秘密兵器がある。僕は銘板の横にある茂みに昨日の夜作ったこの『テニス部員募集中』と書かれたでかい看板を出した。なんでそんなとことから看板が出てくるのかって?それはだな教室にもっていくのが恥ずかしかったから朝一番に登校しここに、隠したからだ。その陰で一番に教室にいたものだからクラスメイトに変な顔で見られたぜ。
「さてと看板を持って、後はでかい声でテニス部募集中ですとか叫んでいたら。大丈夫だろ。」
よし叫ぶぞ大丈夫、あいつなら普通にやるし余裕でできるはずだ、あいつになると決めた俺にならできる‼
そして僕は三十分以上無言で看板を持ちながら校門前で仁王立ちしているだけの人になった。
それからまた少し時間がたったころ。
「頑張っているな、田本」
「うひぁあんあん」
いきなり背後から話しかけられ、驚いてしまい変な声を出してしまった。振り返るとそこには渡辺先生がいたどうやらこの人が犯人らしい。
「なんだ、あんたか驚かさないでくれ」
まったくと、ぼそっと言い、冷たく対応した。
「悪い悪い、でもお前の驚き方相変わらずきもいな「そうだね」それにしてもよく作ったなこの看板、板とか自分で買ったのか?」
「いや、美術室にいい感じのがあったから盗んだ「お前何してんの?」嘘だよ」
冗談で言ったつもりだが、意外とガチな顔をされたので普通に訂正した。この人も仮に教師、いつも拍子抜けでラリパッパな人だが根は真面目さんらしい。時と場合と人によって態度を変えるのも生きていくには必要ってことか。この教師を見ながら冷静に分析する。なぜだが知らないけど、渡辺先生は、僕以外には素を見せないのだ。しかも外面はかなり良く、ほかの先生方には気が利き、生徒思いの優しい先生だと感心されており、生徒からは不真面目な生徒をうまく更生させ、どんな生徒にも分け隔てなく対応してくれる、頼れる先生と評価されてきたという素晴らしい功績を買われ、この栢木中学一期教師に選ばれたのだ。と風のうわさで聞いたことがあるがやはり、にわかに信じがたい。だってこの人最初にあったころからラリパッパだったし。
「まぁ別にもし盗んでたとしても俺には関係ないから、どうでもいいんだけどな」
本当にこの人のあの噂は本当なのだろうか、いつも疑ってしまう。
「ていうか、先生は何しに来たんだよ。冷やかしに来たのか、じゃあもう職員室にもどってくんなまし」
僕も先生が行ったらそのまま帰ろう。そう決めた瞬間だった。
「テニス部部員募集中でーす‼気になった奴はすぐに入部してくださーい‼」
は?何いきなり叫んでるのこの人は、なぜかいきなり僕ではなく渡辺先生が勧誘活動を始めだした。
「ちょっ、何いきなり叫んでるんだ?あんたは」
「何って、俺が担当している部活の生徒が頑張っているんだ、俺も顧問として、ボッチでかわいそうな君を助けてあげようと思ってな」
ちょっと、何言ってるかわからなかった、でも理解した。やはり教師としてこの人はちゃんと僕のことを考えてくれていたらしい。なんか癇に障ることを言われたが。
なんだろう、この人はやはり噂通りの人なのだろうか。僕が慣れないことをしているのを見て手伝いに来てくれたってことか?もしそうならこの人は噂通りでめっちゃ生徒思いの人だ。僕はかなり見直してしまった。
「田本」
「なんだ?」
「これで部員出来たら、貸し1だからちゃんと返せよ」
・・・前言撤回。
そんなこんなで先生と勧誘活動を始めて二日がたった、今日までの勧誘効果もあってか、部員が3人ほど増えて僕も自信みたいなものがついてきたのか、大きな声を出して勧誘活動ができてくるようになった。しかし期限まで残り3日はあるが明日は土曜日だ、つまり明日、明後日は学校が休みというわけで、勧誘できる日は週明けの日だけというをことだ。
僕は自室で悩んでいた。
「困ったな、3人も入ってくれたがこのままだとそれが無駄になってしまう」
確かに自分のここまで頑張ってきた努力が中途半端に終わるのは嫌だ、しかし今ではそんなことよりも初めてできた後輩のことを考えてしまう(一度も話したことがない)せっかく入ってくれたのだ、僕がもっとうまく勧誘できるように、あいつみたいに堂々と自分が言いたいことを落ち着いて言えるようにならなければ、そのためには僕はあいつを真似するだけじゃだめだ。
そうかあいつのようにではなく、あいつになればいいのか。
自分がどう変わるかの方向性が決まり、僕が思いつく限りのあいつの性格、特徴、仕草、話し方などをノートにまとめることにした。
【人づきあいがよく、面倒見の良い人】
【どんな人にも優しく接することができる】
【自分が言いたいことは、相手が誰であろうとはっきり言える】
【モテる】
【基本的には明るく、笑顔を絶やさない】
【自分よりも、何かあると友達とかを優先する】
【運動音痴】
【明るくて、一緒にいるとこっちまで明るい気持ちになる】
【目上の人には礼儀正しい】
【僕が持っていない要素をすべて持っている人】
「他にも色々あるがとりあえず、大体こんなものかな。それにしてもあいつは俺とは真逆の性格をしているな」
だから、憧れたんだけどな、いつかはあんな感じになりたいと。まぁそんな過去のことは、今はどうでもいい、思い出せば出すほど思い出に浸ってしまいそうだ。
あいつになると決めたんだ、いつものような舐め腐った話し方はやめよう、明るく楽しそうな感じで、あとはあいつと同じで一人称はオレで、よし決まったさっそく家族に試して見よう。
自室を出てリビングに行くと、朝っぱらから親父がソファで寝ころびながら韓ドラを見ていた。お前は暇な主婦かよ。
「おう、真吾‼おはようさんさん」
僕に気づいた親父は、すぐに朝の挨拶をしてきた。相変わらずきもい話し方をするなこの人は、いつもならここで「あーはいはいおはおは」とか言って適当に流しているのだが、新しく変わった俺は一味違うぞ。
「お父さんおはおはぁ‼今日はオレ早起き出来たぜ」
「おう‼そうかいそうかい、お前も韓ドラ見るかいな?今結構いいとこだぞ」
普通に会話してくる。僕の変化に気づかないだと・・・
でもうちの親父は、俗にいう変人だ、ボッチで腐っている性格の息子持っている時点で変人だという理由になる。こんな小さな変化にも気づかないのは、当然なのかもしれない。
あれ、つまり僕がこんなんなのはこいつのせいってことか。まぁいい会話を続けよう。このまま会話をしていると違和感は、感じるかもしれない。
「お父さん、今日はずっと家にいるの?」
「せやな、久々の休みだし、せっかくだから大切な存在である。息子と過ごそうと思ってな」
「え?あ、ああっそっそうだね、最近朝起こしてくれる時しか会ってなかったしな、こうやって話すのもなんか久しぶりな感じがするよ」
「?」
いきなり普通に柄にでもないことを真顔で話し出すから驚いてしまった。
僕と親父は二人家族だ、僕が物心つく前に両親は離婚してしまったらしい。仕方がないこんな変人なのだから振られてもおかしくはない。しかもかなりのブラック企業についており低収入、だから朝は早くて夜は遅い、そりゃ愛想つかされる。
「でもさ、そう思っているならさ、韓ドラを見てないで、息子の相手をしたほうがいいのでは?」
僕と朝の挨拶をしてからこの人は、テレビから目を離していない、そんな態度で、せっかくだから息子と過ごそうと思っていたとか、よく言える。
「いやいや、大切な息子と一緒にテレビを見ているじゃないかいな」
ん?待てよ、なんか親父のセリフには違和感がある。やたらと僕のことを名前ではなく息子と呼んでいる。一体これには何が示されているのだ?
いや、認めたくないが僕はこの変人の子供だ、会話の内容を考えなくてもいい、察するんだ。
あっなるほどそういうことか、すぐ理解してしまった。本当に悩む必要なんてなかった。
「・・・じゃあオレは、自分の大切な息子と部屋に戻って、勧誘の作戦でも考えとくよ」
「おう!なんの勧誘かは、知らないけどがんばりんご!俺もこの韓ドラを見終わったら、自分の息子と羽を伸ばすから極力リビングには来ないでクレヨン」
やっぱり自分の股間のことを話していたのか、一瞬でも意味も分からず感動しそうになっていたさっきの僕と感動させかけたこのデブを思いっきりぶん殴りたい。
ていうかこの野郎、家に僕がいることをわかっていながら、スッキリするつもりなのか?いやまさかなこんな堂々と自分の子供に自慰行為宣言を堂々とするわけない、きっと息子と羽を伸ばすというのは、たぶん僕が思っていることかもしれない。この人は一流の変人、予想をはるかに超えたことを常にする人だ。きっと違う意味に違いない、そう思ってしまうのは僕の心が汚れているからだ。
「お父さん、一応聞くけど息子と羽を伸ばすってどういうこと?」
「オ〇ニー」
「朝っぱらから、きもいなーお前」
自室に戻り、朝から疲れた僕はベットにダイブした。
「一人しかいない布団、これこそ真のシングルベッド・・。なんてな」
自分でもしょうもないとわかりつつも、なぜか口ずさんでしまった。それにしても暇だ。
作戦を考えるとは言え、最初に思いついた自分を変えてあいつのようになることしか思いつかない。
何か暇を潰せるものはないかと部屋を見渡してみた。机の上には読み切った漫画、テレビ周りにはやり切ったゲームと見終わったアニメのDVD、外で暇を潰そうにも、友達がいないので遊ぶ相手がいない。
いやいやなんで外で暇を潰す=友達と遊ぶという考え方をしているのだ僕は、ボッチのくせに。
「まぁいいや、家にいても暇なだけだ、外に出たら自分が変われるヒントでも見つかるかもしれないだろ」
よし外に出よう。
適当に街をぶらぶらしようと決めた僕は、適当にジャージを羽織り、リビングにいる親父に外に出ることを伝えて、家を出た。親父も嬉しそうだった、これから羽を伸ばすみたいだ。まだ自慰行為をしてなくてよかった、父親の自慰行為を見るとかたぶん一生のトラウマになる。
家を出て街に出た、ここ栢木は都会寄りの田舎で住宅街だ。基本的にはそんな地域の街は小さいものだが、都会に近いせいか映画館、ゲームセンター、カラオケ、アミューズメント施設など若者が暇を潰すのに最小限のものはそろっている。
しかし友達がいない僕は、ゲームセンター以外どれも一人で入るのはかなり厳しいところだ。いや無理だ。
少しマイナスな気持ちになりながら、街をぶらぶら歩いていた。今は昼をいい感じに過ぎた、午後の2時くらいだろうか、僕は携帯を持っていなければ、今時間がわかるものも所持していなかったので今の時間がわからなかった。暗くなってきたら適当に帰ればいいか。それにしても天気がいいな。
「しかし、外に出れば暇じゃなくなると思ったんだがな・・」
「ねぇ」
「自分が変われる方法が分かったとしても、うまく実行できないしな」
「ちょっと」
「うまく人を引き込むにはやはりあいt「おい‼無視すんな‼」なんだよさっきからうざいな」
「気づいていたのなら無視しないでくれる?」
人が真剣に考えてるときに、白髪のセミロングで瞳の色が赤色の異世界から来たのかと思わせる見た目をした少女がいきなり出てきやがった。
「ほんと、真吾はなんでこう冷たい人になったのやら昔はこう・・」
「それで、なんか用か?千歳」
「え?あっいや、特別な用はないけど」
唐突に表れた少女の正体は幼馴染である、宮川千歳だった。こいつは僕が学校内で渡辺先生以外で唯一話せる人間の一人で、学力は普通、スポーツもできなくはないがあまりしてはいけない体質で、アルビノだという部分以外は特徴のない奴だと最近まで思っていたが、どうやら違ったらしい。
渡辺先生から聞いた話ではこの白髪ちゃんはかなり男に人気があるそうだ。そんな幼馴染であり、しかもよく僕に話しかけるものだから、僕はかなり目立っていたということだ。そう、目立っていた理由の一つはこいつのせいなのである。確かにこいつはかなり顔は整っている方だし、体系も小柄で鬱陶しいくらい元気っ子だからかわいいほうではあると思うが、小さいころから知っているせいか恋愛方面の感情がわかない、どちらかというと兄妹的な?まぁ学校にはほかにもモテそうなやつは大勢いる中、こいつがみんなの目に入ってしまう見た目をしているからそれにつられて好きになる輩が多いのだろう。
「ていうか、お前アルビノだろ?こんな天気のいい中、お肌さらしても大丈夫なのか?」
そう、こいつは一万分の一位の確率で稀に誕生する人間のアルビノ個体だ。僕も詳しくはわからないが昔から外に出るときは日差しに気を付けていた。そのせいか学校に来るときはいつも日傘などを差してきている。
なのに、こいつは帽子を被っていないし、上半身は黒色の長袖のシャツだが、下半身はミニスカートでかなり肌を見せている。うんいい太ももだ。
「何、心配しながらしゃがんでアタシの下半身を見てるわけ?」
「そこに純白の太ももがあったから、つい無意識に」
無言で頭を思いっきり踏まれた。
「日光のことなら大丈夫よっ」
ない胸を張って自信満々に言う、本人がそういっているのだから大丈夫なんだろう。これ以上他人である僕が心配しても意味がないか。
「ちなみに、どんな風に大丈夫なんだ?」
「折り畳み式の日傘がカバンの中に入ってるから、大丈夫」
「いや、あるなら差しとかないとだめじゃないか」
昔から知っている奴だからだろうか、関係ないと思っても、無意識に心配してしまった。
「しんどくなったら、差すよ」
「今差せ、しんどくなってからでは遅い」
「わかったわよ、まったく強情なんだから」
千歳は観念したようで、ブツクサ文句言いながら、カバンから折り畳み傘を出し、傘を差した。
いい天気の日に広げられた傘は、彼女を被い日光から彼女を守りだした。
彼女を被う日傘は、太陽の光を通しその光は彼女を照らす。少し金っぽい真っ白の髪と白い肌が光に照らされ、いつもよりよく見ると、きれいに見えてしまう。さっき恋愛感情がわかないとは思いつつもやっぱりこいつは年頃の異性なのだなと感じてしまう。
それにしても、日傘を差したのに何でこいつ影に隠れてないんだ・・・?あれ、この傘・・・
「ってお前‼それ日傘じゃなくてビニール傘じゃねーか‼」
「驚いたか‼真吾、そうこれは折り畳み式のビニール傘。差したものに日光を浴びせる、これこそ真の日傘ってな‼」
「やかましいわ‼早くちゃんとした日傘を差せ‼」
「実は誰かにこのネタを披露することしか考えず出かけてしまったため、持ってきてなかったり」
「馬鹿ぁ野郎ぉおおおお!」
なんでこう、僕の周りには親父といい、渡辺先生といい、変人しかいないのだろうか。
そして週明け
あの後、僕の上着を千歳に被らせて、無理やり手を引っ張り家まで送った。
そして今日から、まためんどくさい平日が始まる。
今は、いつも通り遅刻スレスレで学校に向かって登校中だ。
「まったく、おとといは千歳の奴の相手をして疲れたし、昨日はあいつになれるように脳内でイメージトレーニングしていたら一日が終わっていたしせっかくの休みが台無しだ、でもそのおかげか今日から僕は変われそうだ」
「どんなふうに?」
「うひゃああん」
びっくりした。本当に驚いた。
声がした方向を向くとそこには黒色の傘を差している、制服を着た白い少女、宮川千歳がいた。
「アハハ!真吾おはよう、相変わらず驚き方きも面白いよね」
それにしても裏表のない満面の笑みだ。くそぅむかつく。今すぐに殴りたいその笑顔。
「はいはい、おはようさん、今日はちゃんとした日傘なんだな」
「えへへ、実は真吾に家に送ってもらった後、親にめちゃくちゃ怒られちゃったんだ」
だろうな、外でネタを披露するために体を張ったため、倒れたとかなったら、ご両親もたまったもんじゃないだろ。
「ママが真吾に感謝していたよ。「あ、そう」それで、真吾はまた変わっちゃうの?」
「・・・変わる?なんの話だ?」
少し寂しそうに千歳は僕を見てめてくる。
ごまかそう。別に変わろうとしていることがばれて恥ずかしいとかそんなんでごまかそうとしているんじゃない。まぁ恥ずかしいけど、あいつになろうとしているのをこいつに知られるのが嫌なんだ。もし今日変われたとしてもこいつには見せないようにしよう。多分バレる。
「さっき一人で、僕は変われそうだとか言ってたじゃん」
「は?なんことだ?」
「いや、言っていたよ。わかった‼聞かれていたのが恥ずかしかったからごまかそうとしているんでしょ?長い付き合いだからそんなのはお見通しなんだからねっ」
得意げにない胸を張りながら指を差してくる。
半分正解、半分不正ってとこかな、まぁそんなことはどうでもいいちょっとめんどくさくなってきたな、こいつの相手。
そう思った僕は、左手首を見た。
「やばい‼もうこんな時間か‼遅刻するぞぉ千歳ぇ‼」
そう叫び、全力疾走した。
「いや、真吾、腕時計持ってないじゃん‼ていうか遅刻なんて気にしない子でしょ君はぁぁぁ‼」
と言いながらも、傘を差しながら全力で追いかけてくる千歳であった。
昼休み
昼休みになった直後、僕は渡辺先生に呼ばれ、今肩を並べて一緒に廊下を歩いている。
「先生、俺をどこに連れて行くんですか?」
「は?」
「ん?」
なんかめちゃくちゃ渡辺先生は驚いたみたいで、すんごい速度ですんごい顔をしながらこっちを見てきた。
「どうかしました?いきなりすごい顔をして」
「どうしたかって?それはこっちのセリフだ‼お前熱でもあるのか?いきなり敬語とか使いやがって気色悪いなぁ」
どうやらいきなり、態度が変わったから驚いているようだ。それもそうだ、先週まで僕は敬語とは無縁な人間だったのだから、もし逆の立場だったらそんな奴が急に変わると僕だって驚くだろう。
でも、今日から変わると決めた以上、やり切らないといけない。これからのことを考えたらこれがベストなんだ。
「実は、今日から自分を変えてみようと思いまして」
「そ、そうか。そうだなお前もあと半年ほどで高校生だそうなったほうがいいのかもな」
先生は、半分寂しさ、半分嬉しさって感じの表情を見せてきた。
「これも、先生方が出してくれた課題のおかげかもしれませんね」
自分でも驚いてしまうくらい意識していないのにきれいに話せてしまう自分の変化が自分でも怖い。
「・・・・きもい」
「え?」
「きれいな田本なんて気持ち悪いぞぉぉぉ‼お前は本当に田本か⁈「田本です」いいや違う田本の見た目をした誰かだ‼「田本です」戻ってこい田本ぉcomeback田本ぉぉ」
僕の肩を掴みながら発狂する渡辺先生であった。
うるせぇなこいつ。
そして
「わるい、休み明け早々一番厄介な奴がきれいになってたからよ、驚きを抑えられなくてな」
「いいんですよ、先生。俺も案外簡単に変われそうなのでかなり内心驚いてますよ」
「お前、湖に落ちたりしてないよな?」
「ド〇えもんは実在しませんよ先生」
やはり、まだ現実を受け入れていないようだ。先生先週までの田本真吾は外では出てきませんよ。これからはあいつの皮を被った存在として外で生きます。それにしてもさっきから自分に違和感を感じる、感覚が合わないというか、目に見えているものが遠いような、いきなり変わろうとしてるから自分そのものが驚いているのかもしれないな。
「それで、先生俺はどこに連れてこられようとしているのですか」
こいつと茶番をしたせいで当初の目的を忘れるところだった。まぁその目的も知らないのだけど。
「あぁそうだな、おっ着いたぞ」
内容を聞く前に目的地に着いたみたいだ。
先生が、僕を連れてきた場所は学校の一番端の目立たないところにある空き教室だった。一体ここに連れてきて何をするつもりだ?そう考えていると渡辺先生は空き教室に入った。
「すまない、待たせたなお前たち」
中に誰かいるようだ、一体何なんだ?
「おい、田本早く入れ昼休みが終わってしまうだろ」
「は、ハイ」
渡辺先生に呼ばれ、空き教室の中に入った。
入るとそこには男子生徒3人、女子生徒一人が大きな丸いテーブルを囲うようにして座っていた。円卓の騎士かな?
「えっと、先生。この人たちは?」
「あ、ああそうか、伝えてはいたが会うのは初めてだったな、ほらテニス部に入ってくれた3人だよ」
え?いや4人に見えるんだが。
「いや、俺には4人に見えるんですけど」
「そう、先週までは男3人入部し、そしてありがたいことに、そこの女の子は今朝入部届を出してくれたんだ」
わお、それはすごい。それにしても今日まででよくここまで集まったな。今俺を含めると5人、つまり後二人か。それにしても
「君、大丈夫か?見ての通り今はまだ男しかいないけど」
「はい、大丈夫です。全然‼むしろそのほうが・・・なんでもありません」
え?何?めっちゃ気になる。でも聞かないでおこう、言うのをやめるということは聞いてほしくないということだからな。
「そうか、とりあえず入部してくれてありがとう」
「は、はい」
それから軽く全員と自己紹介をして本題に入ることにした。
ここに連れてこられた理由は、明日までに2人入部させなければせっかく4人も入ってもらえたのに廃部してしまうから、今日できることをみんなで話し合うために渡辺先生がここに集めたということらしい。結局のところ昼休みももう終わる勧誘できる時間はいつも通りの放課後にあの看板を持って声をかけるということになった。
「あ、そうだ、もし人数そろったら。この部屋部室にしていい裸子ぞ」
・・・・・
「お前ら‼死ぬ気で声出して、話しかけて勧誘するぞぉぉ」
「「「「はいぃぃぃ」」」」
テニス部が一つになった瞬間であった。
6時間目の時間
僕は真面目に授業を受けていた。そのせいか今日一日、授業担当の先生はおろか、クラスメイトまで珍しそうに僕を見ている、それもそうか、いつもなら午後の授業はサボっているのに、今日いきなり真面目な奴になっていたら、それは物珍しそうに見るだろう。でも真面目になったといえど、頭の中では勧誘についてのことでいっぱいだ。知らないうちに4人も入り、今日はいつもみたいに先生と二人で勧誘活動するのではなく、入ってくれたみんなとする。そんな経験もなかった僕は楽しみ半分、不安半分といったところだ。
・・・・あれ?
何で僕は、人と何かをすることについて楽しみにしているのだろうか?今まで避けて誰とも仲良くなんてしようとしなかったのに、コロッと変わろうと思って変わったとはいえ、人付き合いに対する心中までそんな簡単に変わるものなのだろうか、なぜ僕はこんなにも誰かと何かをすると思うとドキドキしているのだろうか。違う・・なんだ?なにか僕の中でずれて・・・
((やっと気づいたのかい?))
「誰だ⁈」
「アタシよ」
「お前か」
なんか聞いたことのある、声がしたと思い、気が付いたら。目の前に千歳がいた。でも僕が聞いた声は千歳のものではない。
「どうしたの?今日一日珍しく全授業居眠りもせず受けていたのにもかかわらず、死んだ魚のような眼をしてボーっとしちゃって。あ、わかった普段しないことしたから集中切れちゃったんでしょ⁈」
「まぁそんなところだ」
なんだ?僕は目を開けながら居眠りでもしてたのか?それにしてもこいつなんか遠くないか?
「なぁ千歳」
「なぁ~に?真吾」
「なんでお前、そんな離れて俺と話すんだ」
「何言っての?距離15センチもないと思うけど・・」
あれ?3メートル位離れていると思っていたが、よく見ると千歳は僕のすぐ真ん前にいた、どうやら本気で寝ぼけていたらしい。
「悪い、俺かなりボケていた」
「あ、そう今日が最後の勧誘活動日でしょ?ほら早くいかないと後輩たち待たせちゃうわよ」
時計を見ると6時間目はもうとっくに終わっており放課後になっていた。集合時間まで残り五分もなかった。
「あ、やべ‼起こしてくれてあんがとな千歳、じゃな」
「うん、頑張んなさいよ」
「おう‼」
急いで、教室を出た。
真吾が教室に出る瞬間。
「俺ねぇ・・・・、誰だったのかしら。そっか、真吾はまた変わるんだね」
千歳の言ったその言葉は真吾には聞こえていない。
放課後
後輩たちと声を出し、手分けして一人一人数少ない帰宅部の人たちに声をかけていった。真面目に断られたり、おちょくられたり、なんかキレられたりしたが、初日のあれに比べたら順調だ。それにしても僕はこんなに人に話しかけることができるようになったのか。人はやろうと思えばできる、つまり変わろうと本気で思えば変われるってことだな。よしこの調子で勧誘して、部員を増やすぞぉぉ‼
10分後
「あ、あのう」
「はい?」
いきなり真正面から黒髪ロングの清楚系女子が話しかけてきた。それにしてもタイプだ。こんな子がうちの学校にいたとは知らなかった。いやなぜ、僕はこんなにタイプの子を知らなかったのだ?
「私、昨日転校してきた二年の『網出内』といいます。」
なるほど、転校生か通りで知らないわけか。まぁ全校生と知っているかと言われたら、そうではないが。実際ちゃんと名前覚えている生徒なんて今日できた後輩とクラスメイト数人くらいだし。
「そうなんだ、でもこんな少人数の部活で大丈夫?転校したばかりなら友達多くできるほかの部のほうがいいのでは?」
なぜか僕はテニス部よりも他の部をお勧めしていた。この子のためを思って言ったのか?僕が?おかしい常に自分のことしか考えてなくて自分が良ければ全てよし、他人なんか知るか精神で生きている僕が他人のこれからの学校生活を心配しているだと、ありえないもうこんなの僕じゃないみたいだ。
「はい、むしろ人が少ないほうがいいです‼」
「そう?だったらようこそテニス部へ」
あれ、僕が話しているのになんか違う人が僕を使って網出さんと話しているような気がする。まったく頭の中に思いついていない言葉が僕の口から流れてきている。なんだこれ、遠い、目の前に話し相手がいるのに3メートルほど離れて話しているような気分だ、さっき千歳と話時もこれと同じ感覚がした。
「田本さん、やりましたね‼」
「流石、田本さん僕たちのためにかわいい子ゲットしてくれてあざす‼」
「おらもう感激だぁ」
男子三人がかなり喜んでいる、まぁこんなにかわいい子が入ったら感激しない男子なんていないだろ。
「わ、私の逆ハーレム計画が・・・」
なるほど、君がお昼、言いそうになったことがよくわかったよ。うん知りたくなかったな。
もう帰宅部は来ないかな、学校が終わり40分ほど過ぎ、まっすぐ帰る生徒が少なくなってきていた。
「おい、お前ら部員なってくれそうなやつは見つかったか?」
渡辺先生が様子を見に来た、この人部員が増えたとたん勧誘活動手伝わなくなったな。
「渡辺先生、今頃来たんですか?部員は一人増えたのですが、これでも6人しかいません。部活に入ってない生徒もほとんど帰りましたし、残念ですが諦めるしかないそうですね。」
まぁ僕にしてはものすごく頑張っただろう、テニスでの今までの努力は無駄になってしまうけど、自分には無理だと思っていたことができたんだ、もうそれで満足だ。
「は?宮川が昼休み終わる直前、入部届出したからもう7人そろってるぞ」
「ん?なんて?」
「だから入部届出したんだって」
「宮川さんが?」
「宮川さんが」
「つまり?」
「部員数7人なったからテニス部は存続可能だ」
それを聞いた瞬間、我々テニス部は校門前で大きな雄たけびを上げた。
後日学校に残っていた多くの生徒が校門前で叫んでいるテニス部を目撃したようで、我々テニス部は学校中から変な目で見られるようになった。
学校帰り
今日はやり切った感がすごい、しかし今のはそのことよりも今日ずっと感じていた違和感がどうしても気になる、一体何だったのだろうか、今日いきなり自分を変えられたとはいえあんなにスラスラと人と話せるものなのだろうかしかもほぼ初対面。さらに自分が見ている物をテレビ画面から見ているようなあの感じも一体・・・
(それはね)
「⁉誰だ」
(それはね、君は誰かになろうとしてたみたいだけど、心の奥のどこかでそれを嫌がっていたせいだよ)
「どこから話している」
(簡単に言うと君の中からかな)
「僕の中?」
(とりあえず帰路のど真ん中で話していたら変な人と思われるぜ)
「そうだな」
こいつの言うとおりだ、それにしても僕の頭の中?前にも一人で会話ができるとか思ったけど、とうとう僕もここまで来たのか、無意識に自分と話すようになるとはね。後輩もできて人とも話せるようになったと思っていたのだが。
家に着き自室
家に帰ってもただいまを言う相手がいなければお帰りといってくれる相手もいない。ブラック企業に勤めている親父は朝のちょっとの時間しか会わない、この生活にはもう慣れている。
「それで、頭の君は一体何者なわけ?」
(俺は君だぜ?)
「僕はそんな話し方はしない」
(先週まではね)
「⁉」
そういうことか、これは僕の無意識でも何でもない。こいつは今日の僕だ。
「つまり、あれか?本当は僕は何にも変わっていなくて、変わろうとしたら、中で君が生まれたと?」
(まぁそういうことだね、世の中は不思議で満ち溢れているぜ)
「じゃあ、あの何かがズレていた感じも、目に映ってるものが遠く感じたのもお前のせいってことか?」
(そうだぜ、まだ完全ではないけど真吾とその時交替していたんぜ)
なるほど、通りで思ったてたよりも話せたわけだ。
「じゃあ、何か?お前僕から体を乗っ取ろうとか言う、王道の展開か?」
(あーうんそんなのは、きょうみないぜ)
「じゃあ、聞こう」
正直、乗っ取りに来ようとかそんなんだったら全力で回避するがそれが目的でないならこいつは何なんだ?それにしてもぜーぜーぜーぜーうるさいなこいつ。
「お前、一体何者だ?どういう原理で俺のなかに現れた?」
(俺は君がどんなふうになりたかったのかは知らないけど、それになりたいと思いながらもそれに背を向けていた感情が真吾の知らないところでぶつかり合い、そして真吾がそれに無理やりなろうとしたあたりから心の中で真吾がなりたかった人物像が生まれた)
「つまりそれが?お前ということか?」
(そうだぜ‼昨日真吾がイメトレをして、今日の昼それを実行したあたりから俺がはっきりと誕生したんだぜ)
なるほど、つまりこいつは昨日の僕の脳トレで大体のなりたい人物像を掴みそれを今日僕が実行したときにひょいと僕に乗り移ったてことか。
「あれ?じゃあお前俺が何になろうとしてしてたのか知らないのか?」
(知らないし、興味ないぜ)
まぁ僕がなりたかったあいつはこんな話し方ではないが何となく雰囲気は僕が思っているあいつと似ている。興味がないなら別に教えなくてもいいだろう。そんなことよりも変われたと思っていたのに実はそれいきなり生まれた人格でしたというオチか・・・
この性格の、僕を知っている後輩はいない、後輩たちが知っている僕はこの第二の人格とやらだ。だったらせめて後輩たちに変に思われないためには、外の生活をこいつに任せるしかない。
「おい、おまえ」
(何?)
「名前は?」
(田本真吾?)
要するに、ないというわけか。じゃあ、こいつにはあいつの名前がふさわしいかな。
「同じ名前は、僕のもう一つの人格としてもきしょい」
(じゃあどうすれば?)
「外では、僕の名前を名乗れ。でも僕たち同士で会話をするときはお前は『山崎幸太郎』だ」
(は、はぁ)
「幸太郎、これからお前には僕の外の生活を任せる。いいな」
(それは全然いいけど・・・名前が幸太郎って)
自分につけられた名前に不満なのか、名前の経緯について聞いてくる。興味ないとは言っていたけど自分のことを少しでも知っておいて損はないだろう。その名前の由来を教えよう
「それが俺のなろうとしてた憧れの人物」
(へーちなみにその人は今どうしてるの?)
「二年前に死んだよ、僕のせいでな」
つづき思いつかん(誰も期待してない)