お兄ちゃんは勇者である   作:黒姫凛

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知識は無い。だが、何となく勉強の合間にぶち込んでみる。


鷲尾須美の章
プロローグ


 

 

 

 

 

 

 

ーーー風、樹。いつかきっと、会える時が来るから。

 

 

 

私には二つ上の兄貴がいた。兄貴はいつも私を笑顔で迎えてくれた。

 

 

私には四つ上のお兄ちゃんがいた。お兄ちゃんはいつも私を優しく引っ張ってくれた。

 

 

 

ーーー女の子の涙って言うのは、悲しい時に流しちゃ駄目だ。

 

 

 

 

 

兄貴は私に色んなことを教えてくれた。

 

 

お兄ちゃんは私に色んなことを見せてくれた。

 

 

 

 

ーーー涙の意味はそれぞれだけど、俺は2人には嬉しい時に流して欲しいな。

 

 

 

 

そんな私はいつも兄貴の後ろにくっついていた。

 

 

そんな私はいつもお兄ちゃんがする事に興味津々だった。

 

 

 

 

ーーー風の姿は、樹だって見ている。兄姉ってのは、弟妹が真似する一番の姿だそうだ。風が俺の真似をするように、樹だってお前の真似をする。

 

 

 

 

兄貴はいつも頼りになるし、いつも不安を払ってくれる。

 

 

お兄ちゃんはいつも優しいし、いつも頭を撫でてくれる。

 

 

 

 

ーーー胸を張れ。お前達2人は俺にとって可愛い妹。そして風、お前は樹にとって最高の姉だ。

 

 

 

 

兄貴は、私と樹にとっての、自慢の……兄貴だ。

 

 

お兄ちゃんは、私とお姉ちゃんにとって、大好きな……お兄ちゃんだ。

 

 

 

 

ーーーだから風。樹を、父さんと母さんを頼んだぞ。そして叶うのなら、最高にいい女になっとけよ。

 

 

 

ーーー樹。風と父さん、母さんの言うことをしっかり聞くんだぞ。兄ちゃんがベタ褒め出来るぐらいの、可愛い妹になるんだぞ。

 

 

 

 

兄貴、兄貴は………。

 

 

お兄ちゃん、お兄ちゃんは………。

 

 

 

 

 

 

ーーーまたな。風、樹。

 

 

 

 

 

 

“私達にとって、何者にも変えられない、大切な存在だった。”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から数百年前、世界に未知のウイルスが発生。それにより、四国以外の全てがウイルスに感染した。四国が無事だった理由は、神樹と呼ばれる神様が力を使って結界を張ったからである。

そこから派生し、年号を神世紀と名付け、神樹様に感謝の祈りを捧げると共に四国に住む人々の守り神として奉った。

 

それから約200年、結界は破られることなく、人々は神樹様に日々感謝し平和に過ごしていた。

 

 

一部を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー何卒、宜しく御願い致します」

 

 

そう、丁寧に地面に手をついて頭を垂れる神主のような服装のーーー男か女か判別出来ないよう仮面を着けたーーー使者に、対面する二人の肝を冷やす。

 

使者は大赦と呼ばれる、簡単に言えば神樹様と四国を守る組織に所属する者だった。

そんな組織の人間が家を訪ねてくる。そんな事、ある筈ないと否定したかった。その理由は、大赦に務める二人なら嫌という程理解出来てしまう。

 

「……待ってくださいっ、待ってくださいよ!!何かの手違いでしょ!?勇者には、無垢な少女しかなれない筈では!?私達の息子、()()は男ですよ!?」

 

間違いだと思いたかった。勘違いだと、安心したかった。だが、現実は残酷だ。目の前にいる大赦の人間が、冗談等では済まさないのだと。

だが、父と母として、それだけはどうしても譲れない。どう考えても前例の無い、有り得ない()()()()。そんな得体の知れない事に、息子を送り出すなど余りにも残酷すぎる。

 

「申し訳ありませんが、これは神樹様の神託によるお告げです。拒否権や間違い等、有り得ない」

 

その言葉に、二人は打ちのめされる。震える身体が抑えきれない。自分達の無力さに涙を流し、逃げ道の無い申し出に、ただ押し黙るしか二人には出来なかった。

 

 

 

 

期限は一週間。その間に養子になる為と家から出る準備をしろと大赦から下された。養子となる御家は高嶋家。初代勇者である乃木若葉と共に戦っ事のある御家に養子として入る事になるのは、大赦に就く者としてはとても名誉ある事である。だがそんな事、今はどうでもいい。

大赦の使者が去っていった後、両親は自分の息子を呼び、先程の話を聞かせた。

 

「……蕾希、済まない……。父さん達が腑甲斐無いばかりに、お前を御役目に……」

 

「……ごめんね、ごめんね蕾希……」

 

御役目の内容。それは、神樹様を守る為にウイルスと戦う勇者になる事。これは、大赦に務める者の中でしか知り得ない秘匿情報。大赦の高い地位に居る者は、自分達の子供から勇者を出す事が何よりの喜びであった。それがどんな形であれ、神樹様の為になるのならと、一種の洗脳のような強い願望を抱いている。だが、そんな組織の中にも一部には例外がある。自分達の子供を何故そんな事に出さなくてはならないのだと。今この二人もその思いは同じである。

 

しかし、そんな両親の思いとは裏腹に、二人の息子である蕾希(らいき)は、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「……父さん達が不甲斐無い訳ないじゃないか。いつも家族の為に、仕事に一生懸命になって働いてくれてる2人が腑甲斐無いなんて、俺は絶対思わないよ」

 

「………蕾希」

 

「御役目、父さん達がそんなに思いつめるほどのものなのか?」

 

「……そうだ。運が悪ければ、二度と俺達とは会うことができない。それ程危険なものなんだよ、御役目というのは」

 

「でも断れないんでしょ?」

 

「……そ、それは……」

 

「分かってる。二人の気持ちは十分理解出来るよ。でも、言い換えればこれは神樹様を守る為の大切な事なんでしょ?」

 

「それはそうだが……」

 

「なら俺は迷わないね。毎日のように祈ってた神樹様に、日々の感謝を表す事が出来る。俺にとってこれは、感謝する事なのかもしれないな」

 

「………なんで、そんな事を……」

 

「だって決まってるでしょ?」

 

 

 

 

「神樹様がいないと、俺達は生きて行けないんだから」

 

 

 

 

 

 

 

それから一週間後、犬吠埼蕾希は家族に見守られながら家を出ていく事となる。

 

 

そして数年後、思いもよらぬ形で、残された妹達は再開するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー高嶋家がとったという養子。中々に見所がある。勇者適性が過去最高と言われる程の数値。更に類まれなる身体能力と理解の速さ。偉大なる先代勇者、乃木若葉様に届き得るかもしれぬな」

 

「今のうちに唾をつけておくべきか。乃木家の娘、三ノ輪家の娘。大赦の息がかかった家柄からは二人しか勇者が選ばれなかった以上、次の世代の為に、高嶋家にはより頑張って貰わねば」

 

「鷲尾家がとった養子も中々の数値。鷲尾家にも期待せねばな」

 

「出来るなら、この4人の中からーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神樹館小学校。それは、大赦の御家柄の家計の子供達が通う小学校である。ほぼお坊ちゃまお嬢様しかいないこの学校の一室での出来事である。

 

小学5年生を後数ヶ月で終える時期、鷲尾須美は大赦の御役目について話があると放課後に呼び出された。

 

大赦の御役目によって鷲尾家に養子として出た須美は、やっとこの時が来たのだと、気を引き締めてこの場に訪れていた。

元々愛国心が強い須美にとって、御役目、国防と言う言葉にはすぐ感化される事が多く、今回の御役目の話に須美は迷うこと無く頷いたのである。

 

教室に入るがそこには誰もおらず、須美は首を傾げるのであった。

 

(まだ予定時間より早いとはいえ、いくら何でも気が抜けているのでは?)

 

確かに予定時間の20分前に到着した須美だが、大切な御役目についての話をするのにこの集まりの悪さは腑抜けていると、須美は苛立ちを感じていた。

 

そして待つこと約10分。椅子に座って待っていると、唐突に扉が開く。

 

「んしょー……、あれ〜?お話の場所ってここであってるのかなぁ?」

 

「お話、というのは御役目の事?それならこの教室で間違いないわ」

 

「おぉー、何となく来たらあってたー」

 

心底嬉しそうに笑う少女を見て、須美は期待していた人物像とは違っていた事に肩を透かした。

御役目に選ばれるのだから、もっと真面目な人達が来ると思っていたら……、まさかのこんな人が選ばれるとは。

 

「貴方は乃木園子さんね」

 

「おぉー、そうだぜぇ〜。私は乃木さんちの園子だぜぇ〜」

 

「……なんなのこのテンション」

 

「そういう貴方はワシさん〜?」

 

「鷲尾よ鷲尾。隣のクラスとはいえ、御役目のお話を貰った時名前を教えて貰ったでしょ?」

 

「んー、ワシさんとしか覚えてないんだぜ〜」

 

更に呆れる須美。掴めないというかなんというか、明らかに須美とは違ったタイプなのは確かである。生まれてこの方、こんなマイペースな人と関わった事の無い須美は、これからのことを思い更に気を落とす。

 

「……なんでこんな人と一緒に」

 

「んー?まだあと二人は来てないの〜?」

 

「……ええ、私と乃木さんだけよ」

 

「じゃあワシさん〜、揃うまでお話しましょ〜」

 

「……まぁ、そのくらいなら」

 

案外引っ張ってくれる事に須美は感謝する。あまり初対面の人とは上手く接せない須美にとって、今の園子の行動はとても有難いことであった。……口には出さないが。

 

「それで、なんの話をーーー」

 

「……ん〜、むにゃむにゃ……」

 

(ね、寝てるぅ!?)

 

前言撤回。須美は園子とは仲良く出来ないと早い段階で決定付けた。

 

 

 

 

 

更に数分後、再び扉が開かれる。

 

「あら、やっぱり鷲尾さんは早かったわね。でも乃木さんが先生より早く着いた事には驚いたわ」

 

入って来たのは神樹館の相談室にいる相談役の先生、安芸真鈴であった。

 

「安芸先生?なんでここに?」

 

「私が御役目についての説明をするからよ鷲尾さん」

 

須美は首を傾げ安芸先生に尋ね、安芸先生は微笑んでそう言った。

机を引っ張ってきてその上に持ってきた資料を広げる。かなりの量だ。須美はより御役目の重要性について深く感じる。

 

「……その書類は全て御役目の?」

 

「いえ、これは学校での私の仕事よ。最近中々減らなくて……」

 

須美はガクッと肩を落とすのであった。

 

 

 

 

そして時刻は予定を過ぎ、30分遅れ。他愛もない話をしていた時、再び扉が開かれる。

 

「ーーーうわっ、遅れちゃった!!すいません遅れちゃって!!」

 

入って来たのは、同じクラスの三ノ輪銀であった。彼女が入ってきた瞬間、須美は嘘であって欲しいと絶望した顔で銀を見つめた。

彼女は毎回のように予鈴に遅れてくる。遅刻なんてほぼ毎日。そんな銀に須美はとてもじゃないが良い印象なんて持てない。なんなら、嫌いの一言で突き放す事も須美は考えている。

ましてや御役目と言う大切な事にそんな不真面目な彼女をつかせるなど、神樹様に対して失礼だと須美は考える。

 

「……三ノ輪さん、事情はどうであれ、遅れて来るのは駄目よ。これからは気を付けなさい」

 

「はーい、気を付けます。ていうか、あと一人遅れてるじゃないですか」

 

「彼の事情は前もって聞いています。だから先に説明を始めていて構わないとも聞いているので、実質三ノ輪さん待ちだったんですよ?」

 

「うげぇ、なんだよォ。ずりー」

 

(……彼?何故彼女では無く彼なのかしら)

 

安芸先生の言葉に疑問を感じた須美。御役目には少女しか選ばれないと聞いていた須美は、疑問でならなかった。

 

「安芸先生、彼とはどういうーーー」

 

 

 

「ーーーすいません、遅れました!!」

 

 

 

須美の言葉を遮ったのは開かれた扉からだった。須美は顔を顰めて振り返る。

少し薄い金色の短い髪。明らかに小学校とは違う体格。少女では無く、青年。そんな人が焦った表情で息を切らしながら入ってきた。

 

「いえいえ、高嶋君。ただでさえ中等部は遠いのに部活の途中で呼び出してしまって申し訳ないわ。さ、まだ説明はしてないから座って」

 

はい、と返事をした青年は銀の隣に用意された椅子に腰をかける。

隣の銀と比較すれば分かる。絶対小学生では無い。しかも部活と安芸先生は言っていた。つまり須美達3人よりも高学年という事。そんな人が何故同じ御役目に?

 

「それでは全員揃った所で、御役目について説明を始めます。乃木さん、起きてください」

 

「んぉ〜、えへへ、寝ちゃってた〜」

 

余りにも締まらない空気。須美は本当にこれからやって行けるのかと不安で仕方なかった。

 

 

「それでは、鷲尾須美さん、乃木園子さん、三ノ輪銀さん。そして、()()()()さん。これから御役目、勇者についての説明を始めます」

 

 

 

 

 

鷲尾須美は勇者である。ここからがスタートであった。




原作とか持ってないんで、言動とか可笑しいかもしれんけど何も言わないで。

捏造オンパレードしてくかも。
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