お兄ちゃんは勇者である   作:黒姫凛

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いっぱい感想ありがとう。

やっぱり勇者達には幸せになって欲しいよね(..◜ᴗ◝..)


感想を頂き、矛盾点を見つけたのでそれとなく直しました。


花結いのきらめき その2

「ーーー初めまして。犬吠埼家長男 犬吠埼蕾希こと、高嶋家長男 高嶋優希です。小学生共々宜しく」

 

勇者部の部室に戻され、ひなたが全員と合流出来たことに喜んでいた最中、自己紹介が行われていた。

小学生の頃の東郷美森ーーー養子だった為鷲尾須美と名乗っているーーー、三ノ輪銀、乃木園子の自己紹介が終わり、最後の一人である男の勇者、高嶋優希の自己紹介が始まった。

 

勇者部部長の風とその妹、樹の実の兄であると同時に、ただ一人の男の勇者である事に、姉妹と友奈、夏凜は驚きを隠せなかった。

 

「……風と樹は知ってたんじゃないの?」

 

「……私達だって知らなかったわ。そんな事一度も言われなかったから……」

 

口に出しては言えないが、大赦から両親と兄の死を知らされた時、大橋の崩落に3人とも巻き込まれたとしか聞かされていなかった。

何より、兄の養子先も知らなかった姉妹。いきなりの事で思う事も色々とあるだろう。

 

「………」

 

「……」

 

「……………」

 

何より、中学生側の3人は未だに目の前にいる優希の姿に涙し、再会出来たことを素直に喜べてない。

あの時の絶望感が、3人の心を蝕んでいる。

 

「で、俺達は一応紹介したから、そちらも紹介して欲しいんだけど……」

 

「あっ、ハイハイっ。私、結城友奈です。趣味は押し花で好きな食べ物はうどんと東郷さんが作るぼた餅です」

 

「おぉ、元気な子だな。風の後輩なだけはある」

 

元気な友奈に優希はうんうんと納得したように頷く。何時も元気な風の後輩もその元気に負けないぐらいの元気が無いと着いていけないと、離れる時に不安に思っていた優希だが、友奈の姿を見て大丈夫だったのだと安堵する。どれだけシスコンなのだろうか……。

 

「わ、私は三好夏凜、です。……あのっ、高嶋優希さんの噂は兼ね兼ね聞いていましたっ。お、お会いできて光栄です!!」

 

「噂?なんか俺やらかしてんのかな?」

 

「いいえっ、唯一の男の勇者であると同時に、歴代最高の勇者だと聞いております!!私は、そんな高嶋さんの後継ぎとして勇者となっています!!」

 

「へぇー、こっちの世界で俺は引退してるのか。まぁ流石に高校にもなって戦隊モノみたいな感じで変身して戦うなんて世間的にも痛いだろうからなぁ」

 

一方夏凜はガッチガチに緊張しながら話す。優希の端末を受け取り、それを夏凜用に更にアレンジされている為、性能的には優希が使用していた時よりも良いのだとか。

後継ぎだと聞き、自分は流石に年齢的に引退したのかと笑い飛ばす優希。その姿に優希を知る勇者部員は胸が締め付けられる思いだった。

 

「……で、改めて、久しぶりだね2人とも。別の世界とは言え、成長した姿を見られたのはとっても嬉しいよ」

 

「……兄貴も、元気そうで何よりね」

 

「……お兄ちゃんっ」

 

「おぉ、樹ー。大きくなってー。兄ちゃんが自慢出来る妹になれてるか?」

 

「……うんっ、お兄ちゃんが自慢出来るっ、妹になれてるよ」

 

「そうかそうか。……どした?なんで泣いてるんだ?ははーん、分かったぞ。こっちの世界の俺と会えないから寂しいんだろ。ほれっ、ほれほれ〜」

 

「うにゅー、おにゅーひゃん……、にゃめにぇー……ぐすっ」

 

涙を流す樹に優希は寂しいのだと理解し、頬をグ二グ二と弄り回す。しかし逆効果となり更に涙を流させる羽目になる。そんな樹をみて、優希はギュッと抱き寄せて宥める。昔していた、樹の涙を止める方法である。

 

「風も、なんで泣いてんだよ。そんなにもそっちの世界の俺はお前らに無関心になったのか?」

 

「………そうよっ、兄貴は……、兄貴は私達を置いてってどっか行っちゃったんだから……っ」

 

「なんて奴だ。妹を愛すると言う誓は何処に捨てたんだそっちの俺は。許せんな。じゃあ風、今俺にその想いをぶつけるんだ。ここにいる俺が、しっかり受け止めてやる」

 

「っ」

 

樹の姿を見て貰い泣きをしていた風も、優希の言葉に耐え切れず涙腺を崩壊させたまま優希に飛び付いた。

優希はどれだけ寂しい思いをさせているのかと内心怒りに満ちていた。引退したのなら会いに行けるだろと。涙を流させる程の事なのだからと。

 

「……なんでっ、なんで置いてくのよ……っ。ずっと、ずっとっ、一緒にいてくれるって言ったのに……っ」

 

「……お兄、ちゃん………っ」

 

「もう居なくならないでよっ、お願い……っ、お願いだからっ」

 

「……そっちで何があったかは分からないけど、お前達の兄ちゃんはここにいるぞ。約束する、絶対に居なくなったりしないって」

 

「「っ」」

 

2人の声が静かに聞こえる。今まで押し止めていた感情が、一気に爆発していく。突然居なくなったと思えば、突然他界したと伝えられた。両親が事故に巻き込まれてこの世を去ったと聞かされてすぐの事だ。もうどうすればいいのか全く分からなかったあの時。絶望に浸る毎日であった。死にたいとすら、姉妹で心中を考えた。しかし、それでも何とかここまで来れた。今ぐらい、我慢をしなくてもいいでは無いか。そんな想いが聞こえてくるような、悲しみに満ちた声を優希は受け止める。

 

勇者部全員は涙の再会を果たす犬吠埼家に貰い泣きを受け、中学生側の3人は膝を折って号泣し始めた。風と樹の気持ちが痛いほど分かるからだ。あの時流しきってしまった筈の涙が、突然の再会によってフラッシュバックし、涙腺を崩壊させた。園子は銀に抱き着いて号泣し、それに銀は構ってられず自身も涙を流すしかなかった。美森は声を押し殺して涙を流すが、内心は何度も何度も優希に謝るのだった。

 

 

 

 

ーーーごめんなさいっ。ごめんなさいっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か全員泣く羽目になった部室で、小学生組と優希は困惑した。貰い泣きを越して号泣になった中学生側の3人にどう対処したらいいのかとドタバタ騒ぎになり、それぞれ自分の似てる相手を宥めるという作戦になり、頭を撫でて落ち着かせたり、抱きしめて落ち着かせたり、共鳴して泣き出すと言う更に問題が発生したが、何とか全員落ち着きを取り戻した。

そして中断されていた中学生側の3人の紹介も終え、更に話は展開していく。呼ばれたはいいが、何処で暮らせばいいのかと言う話になった。

 

「それなら、私が住む寄宿舎に入る事になっているので安心なさってください」

 

「なるほど、よかったな3人とも。合宿みたいな感じになるぞ」

 

「おぉ〜、すっごく楽しそう」

 

「よっし、毎晩枕投するゾ!!」

 

「こら、銀。枕をそんな風には扱っちゃダメって何度も言ってるでしょ?それに私達だけが住むわけじゃないんだから、近隣の方に迷惑にならないようーーー」

 

「寄宿舎って俺も住むことになるのですか?」

 

盛り上がる小学生を隅に、優希はひなたにそう聞いた。

 

「んー、優希さんの場合は風さん達の住居があるので、そちらでも構いませんが。それと、私にそんなに気を遣わなくてもいいんですよ?」

 

「いやいや何を言いますか。初代勇者の御友人であり、最高位の巫女である上里ひなた様にそんな親しくするなど、高嶋家の長男である自分としましてはどうにも……」

 

「ここではお家柄など必要無いんですよ。敬語もなしです。さあ、私の後に続いて下さい。ひ・な・た」

 

「……ひ・な・た」

 

「もう一度、ひなた」

 

「……ひなた」

 

「では、これからはそう呼んでくださいね」

 

「……分かりま「ん?」、……分かった、ひなた」

 

満足気にニコニコと笑みを浮かべるひなた。優希としては、長男としてのプライドもあった為、渋々と言った感じだがひなたをそう呼ぶ事になった。

ゴホンッと話を戻す優希は、風と樹に問いかける。

 

「なぁ、こっちの世界の俺ってどこにいるんだ?」

 

ヒュッと静まり返る。実際には小学生組がガヤガヤさせているが、風と樹、中学生側の3人は凍らされたように動くことができなくなり、耳に入るはずの音が聞こえなくなっていた。

聞かれるとは思っていたが、今聞かれるとは。

そんな嫌味を押し隠し、風と樹はどう誤魔化そうか考える。

ここで明かすのはとてもじゃないが無理だ。しかし、きっと兄の事だ。居ないのなら行くと言うのは確実である。その方が風と樹にとってとても嬉しい事である。だが、家には両親と兄の仏壇が置いてある。それを見てしまっては疑問を浮かべるのも時間の問題となるのは目に見えていた。

 

「……それは、その……」

 

「……お、お兄ちゃんは……」

 

思わず言葉に詰まる。家には呼びたくないが一緒にいたい。だが、来るなと言えず、来てとも言えない。2つの選択肢が2人をより追い詰める。

 

「?……まぁいいか。居場所が分からないなら俺が探してぶん殴ってやる。可愛い妹を泣かせた罪を償って貰う。じゃあ親にも姿見られると困るのか。こりゃ住む場所は仕方ないけど寄宿舎だな。もしこっちの世界の俺が戻ってきたらそれはそれで修羅場になりそうだから。そういう訳で、俺も寄宿舎にって事で宜しーー、いいか、ひなた」

 

「はい、構いませんよ。手配しておきます」

 

「ありがとう。という訳で申し訳ないんだけど、風と樹が俺の部屋に上がり込んでもらう感じになるけどいいか?」

 

「っ、え、ええっ。それでいいわ。ホントに……ごめんなさい」

 

「……いつでも、遊びに行ってもいいかな?」

 

「勿論だ。いっぱい甘えさせてやるぞー」

 

縮こまった感じでおずおずと聞く樹に、優希は可愛いなぁーと抱き締め始める。その姿に、話を終えた小学生組は羨ましがり、友奈は仲良しさんだねーと微笑ましく見ており、夏凜は聞かされた高嶋優希の姿とは違う事に肩透かしを受けたような何とも言えない表情をうかべる。美森(中)と銀(中)、園子(中)はそんな姿を見て悲しい様な嬉しいような、色んな感情が合わさった表情を浮かべ、強く願うのだった。

 

 

 

 

ーーー絶対に、離れたくない。

 

 

 

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