お兄ちゃんは勇者である   作:黒姫凛

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日常ぶち込んでいくぅー


花結いのきらめき その3

 

 

 

歴代最高の勇者になれると聞かされた時、俺はどういう気持ちだったのだろうか。

 

前例の無い、男の勇者。更に言うなら神託からの名指し。

 

ありえない存在だったはずの俺だが、現に今まで勇者としてバーテックスと戦って来た。須美ちゃん、銀ちゃん、そのちゃんの3人の小学生勇者達と共に。

 

中学生の俺と上手くやっていけるのか大赦も俺達も心配していたが、何とか友達関係は結べているようだ。そのちゃん曰く、『ズッ友』らしい。

俺もその一人に入っている事に何だか嬉しさを感じた。勇者になれると聞かされた時以上の昂りがある。

 

だから同時に、彼女達3人は絶対に守りたいと強く思う。彼女達はまだ小学生、ましてや夢想う無邪気な時だ。

御役目に選ばれてしまった以上、戦うのは避ける事が出来ない。

だが、俺は3人が笑って過ごせる日々を守りたい。

 

大袈裟かもしれない。だけど、未来は誰にも分からない。

どんな事が起こっても、3人の友情だけは失わせたくない。

 

 

 

それが死を選択させる道であろうと、俺は進み続ける。

 

 

 

 

 

だからどうか俺に願わせてくれ。

 

 

 

あの子達のこれからに、幸あれと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先代勇者組が勇者部と合流してから1週間。小学生組はすっかり打ち解け、それぞれ仲良くなった者と行動する事が多くなった。

須美は美森と友奈とひなた。銀(小)は夏凜と銀(中)。園子(小)は樹と園子(中)。

やはりと言うべきか、未来の自分の事には素直に興味があるようで、それぞれが事ある事に色々と聞いている。園子ズに囲まれ半強制で園子ズの珍行動に巻き込まれている樹も、1週間もあれば慣れたのか着々と園子化に近付いている。

現在ひなたは諸事情で遅れているが、今もそのメンバーどうして仲良く話している。

そして、勇者部部長と優希はと言うと。

 

「……ねぇ、兄貴。お願い」

 

「……それまた、まぁいいか。ほら、口開けて」

 

「あーーん、……っん」

 

「……名残り惜しいように箸舐め回さない、行儀悪いぞ。まだこんだけあるんだから欲しい時言いなさい」

 

「じゃあ今欲しい」

 

「……見ない間に幼くなったな、中身が。お前がこーんなちっこいときはおにいおにいって後ろついてきて可愛かったのに……。今も無茶苦茶可愛いなおい」

 

「ふふん、兄貴がいれば私の女子力と可愛さは限界突破よ。さぁ兄貴、可愛い可愛い妹にもう一回あーん」

 

「任せろ、例え食べさせづらいうどんだろうとお兄ちゃんはお前の為に完璧にこなすぞ」

 

「………何時までやってんのよバカ風!!」

 

「……あいたっ、なによ夏凜。私と兄貴の時間を奪おうっていうの?」

 

甘ったるい空間を作り上げていた優希と風。我慢の限界突破した夏凜が丸めた紙で風の頭に天誅。ベコッと紙の曲がる音と鈍い音が風の頭から聞こえる。風は涙目で夏凜を睨みつけた。

 

「もう少し節度を持ちなさいよ。仮にも最上級生でしょ?」

 

「兄貴がいるから私は最上級生では無いのよ夏凜。それに、何処だろうと私は兄貴の膝の上に座らなきゃならないのよ」

 

「あんた歳いくつだ!!」

 

再び天誅。風の謎の使命感により夏凜は頭がいたくなった。確かに最上級生は風の兄である優希だが、先代組の当時の年齢から計算するとほぼ風と同い歳である。これには文句が言える訳では無いが、問題はその後。なんだ座らなきゃならないって。

思わず夏凜の口からツッコミが入る。風は今、椅子に座る優希の膝の上に座って身体を預けている。異様な姿だ。あの風がこんなことするはずないないと、誰もが驚いている。

 

「だってしょうがないでしょ?兄貴が甘えて来いって言ったんだから、こういう事したって。……ははん、さては夏凜、兄貴に同じ事して欲しいのかな」

 

「なっ、ば、馬鹿な事言ってんじゃないわよ。そ、そんなのあるわけないじゃない」

 

「じゃあふーみん先輩っ、次私がしたいです!」

 

何かを察した風はニヤニヤした顔で夏凜にそう聞いた。夏凜は顔を赤くさせながらそっぽをむいて否定する。そして園子(小)が座りたいと挙手して近付いてきた。

 

「おーおーミニ乃木、おいでおいでー。兄貴、片膝の上乗らせて上げて」

 

「……なんか俺椅子化してない?まぁいいんだけども」

 

風の位置をずらし、ポンポンと左膝を叩く。それを見た園子(小)は目を輝かせながら膝の上に座る。

 

「ふふーんっ」

 

「……むにゃー」

 

瞬間に園子(小)は夢の世界にダイブした。風は優希の肩に頭を置いて満足気な表情。それを見た樹は顔をむくれさせてあからさまな不機嫌状態。先代中学生組は寂しそうな表情を浮かべる。

 

「ぶー、お姉ちゃんばっかずるいよ。お兄ちゃん、後で部屋でやって欲しいなー」

 

「任せろ樹」

 

「何だか今の風先輩達を見てると、家族みたいですね。優希先輩がお父さんで風先輩がお母さん。それで園子ちゃんが2人のお子さん見たいです」

 

「いい事言ったわ友奈!!兄貴、ほんとにそうなりましょ?」

 

「馬鹿な事言わないの。俺はお前を妹としか見れないよ」

 

「じゃあミニ乃木は自分の子供として見れるって事でいいのよね?」

 

「……なんでそんなにも食ってかかってくる?」

 

友奈の言葉に風が目を輝かせる。早速優希に申し出るも軽くあしらわれてしまう。が、諦めきれない風は何とか活路を見つける為に園子(小)を娘に見える?と追い詰める。優希は若干苦笑い。

 

「風さんはホントに優希さんの事が好きなんですね。樹さんもそうだけど。こりゃ、須美も負けてはいられないな」

 

「銀!!余計な事言わないで!!大体、兄妹でありながらあの距離、破廉恥だわ」

 

「と、言いつつも羨ましがる須美であったと」

 

「う、羨ましがってなんて……」

 

「………」

 

銀が羨ましいと表情に出ている須美をおちょくっている。顔を真っ赤にしながらぷりぷり怒る須美だが、銀には本当に羨ましそうに見つめているから言っているだけだと須美に言う。それを複雑そうに美森と銀(中)は見つめている。

 

「……ふーみん先輩は、なんでそんなにもゆーに……優希さんの事が好きなの?」

 

「兄貴が好きな理由?」

 

園子(中)が風に近付いてそう聞いた。確かに、ここまでベッタリなのは兄妹だろうと全く見ない光景だろう。樹も甘えたそうにしているが、いつも樹を優先に考えている風と比べると明らかに何かある。

 

「んー、あんまり考えた事ないわね。だって兄貴だから好きなんだもの。ただそれだけよ」

 

「もうちょっとなんかないですか?こー、なんかエピソードみたいな」

 

「……お姉ちゃんって基本サバサバしてる所あるから、決めた事には取り敢えずこれで、って事よくありますから」

 

「なによー、樹。甘えられないからって私を悪く言っちゃってー。いいわ、それだったら樹の恥ずかしい話を兄貴にしてあげるわ」

 

「ん?樹の恥ずかしい話?」

 

「樹ってば昔、出掛けてた兄貴のベッドの中でーーー」

 

 

 

「ーーーお仕置きっ!!」

 

 

 

バチンっと先程夏凜が天誅したものよりも太いもので風の頭に天誅。その勢いの良さに全員は開いた口が塞がらない。

 

「いったぁあぁあいぃぃっ!!………ちょっと樹、何すんのよ!?」

 

「もうお姉ちゃんなんて知らない。私、お兄ちゃんだけの妹になります」

 

「まさかの姉妹脱退!?」

 

「あんな樹ちゃん初めて見たわ……」

 

「普段大人しいのにやる時は殺るなんて、流石優希さんの妹ね」

 

「あれは流石に痛そー」

 

「……こら樹、そんなもので頭を叩いちゃダメだろ。ほら、俺の隣に座りな」

 

それぞれが今の一撃に感心した。受けた風は頭を優希に撫でて貰っている。

 

「………なんか、話戻しずらくなっちゃったけど、風先輩の優希先輩が好きな理由詳しく聞いてもいいですか?」

 

「………うぅぅぅ、そうね。考えてみれば、私はいつも兄貴の背中を追っかけてたっけ」

 

「確かに。風は基本親よりも俺にくっついてたよな。カルガモの子供みたいに」

 

「可愛くていいでしょ?で、なんでそうなったのかって言ったら、やっぱりあれじゃない?」

 

「あれ?……あー、あれか」

 

「あれ?」

 

「あれってなによ」

 

兄妹同士で生まれた阿吽の呼吸によって全員の理解が追いつかない。樹ですら首を傾げている。

 

「私ってほら、あれじゃない?女子力の塊じゃない?元は兄貴が家事とか全部出来てそんな姿を見てカッコイイなーって思ったの」

 

「確かに、優希さんなんでも出来ますからね」

 

「でねー、料理する姿とか掃除する姿とか見てたら、何だかこう……、胸を刺激してくるのよね。感情が昂ってて、何だか私も兄貴みたいになりたいなーって」

 

「成程、優希さんの姿を見てそう思うとは、流石です」

 

「一種の憧れかしらね。だから私は兄貴を後付けて色々と見てたのよ。なんでも聞いたし、なんでも答えてくれた。だから今の私、女子力王犬吠埼風がいるのよ」

 

「女子力じゃなくて馬鹿力なんじゃ……」

 

「なーにが馬鹿力じゃーっ!!」

 

「いだだだだっ、これっ、これっ、これの事ッスよ風さーんっ!!」

 

言葉が違うと指摘した銀(中)にアイアンクローを食らわせる風。風が膝から降りた事で、樹が流れるように膝の上に座った。

 

「へぇー、風先輩の女子力にそんなエピソードが」

 

「ええ、だから私はずっと兄貴に付いて回ってたの。まあ、兄貴が好きだったって事もあるだろうけどね」

 

「ホントに仲良いんですね」

 

「でしょー、自慢の兄妹よ」

 

友奈の言葉に胸を張る風。しかし、優希は風を見て何故か首を傾げている。

 

「え?俺がうどん作ってて食べたいって食べさせたらうどん好きになって沢山食べたいから付いて回ってたんじゃなかったのか?」

 

部室内が凍り付いた。

 

 

「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

『えっ???』

 

 

「………んぉっ?みんなどうしたの〜?」

 

ひなたが来るまで、この沈黙は続くのであった。

 

 

 

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