お兄ちゃんは勇者である   作:黒姫凛

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短いです。


花結いのきらめき その8

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惨劇とまでは行かないが、それでも彼女達にとっては想定外の事であった。

 

広がる樹海を縦横無尽に駆け回る5つの影。素早く動き、相手に場所を悟らせないよう移動しながら戦う戦法。近接型が多いこのチームでヒットアンドアウェイはハードなものだ。それを踏まえ近接型が出来る被弾を下げる為の戦法。ネーミングセンスはどうかと思うが、『コソコソ戦法』なる部屋の隅に蔓延る黒光りを連想させるような戦法ーーーをする彼女達だが、表情には苦痛が滲み出ている。

 

息が上がり、汗が滴る。戦闘に入ってからどれだけの時間がたっただろうか。

彼女達は丸亀城を拠点とした、四国ーーーいや世界最後の反旗を掲げる者達。刃を持ち、拳を握り、トリガーに指をかける。前には敵、後ろには守るべき世界。言わば板挟みのような彼女達は、自分達よりも強大な敵に果敢に立ち向かう。

不満が無いわけが無い。だが守ると決めたのなら、命として守り続けようとする彼女達の心は、果たして正常なのだろうか。

 

 

 

 

「ーーーはぁぁああ!!!」

 

 

グッ拳を引き締め、腰をキュッと回す。全体重をかけた渾身の一撃。敵の装甲は硬く、そこから来る反撃は致命傷になり得る強力なものだ。恐怖が頭を過るが、入れた力に緩みは無い。

 

 

ーーーッ!!!!!

 

 

風を切る、腰を入れ全体重がかかった右ストレートは、その巨体の土手っ腹とも呼べる場所に会心の一撃を叩き込んだ。

 

 

「ーーー下がれ友奈!!」

 

 

一撃は決まった。しかし、圧倒的距離が近過ぎる。反撃が来ることは目に見えていた。遅かれ早かれ、声を張り上げて危険を促したが意識の有無に関わらず結果は同じであったと想像してしまう。

 

拳を引き、素早く撤退するがそれでは敵の攻撃からは逃げられない。その巨体以上の昆虫のような見た目のしっぽを横凪で敵は反撃。空中故回避は不可。あの攻撃を防ぐ術は無し。全力で走り急いで攻撃の当たる軌道から抜け出せるよう抱えなければ脱出は不可。

 

 

時既に遅し。時間的に約数秒の世界で、あっという間に結末を迎えた。

体を縮こませ、腕をクロスし辛うじて防御体制をとったものの、威力を消せる訳もなく呆気なく地面に叩きつけられた。

 

 

「ーーー高嶋さん!!」

 

「ーーー球子っ、友奈を早く離脱させろ!!」

 

 

土煙が舞い上がる中に倒れ伏す影に急いで駆け寄り、敵の視覚外に移動する。痛々しいその姿に歯を食いしばりながら、急いで戦場に戻る。しかし、予想打にしない光景が目に飛んできた。

 

 

「ーーー良くも高嶋さんをっ!!来なさいっ、七人………っ、精霊が使えないっ!?ーーーァがァっ!!」

 

 

大鎌の少女は自身の力を叫ぶ。が、当然この世界では発動する訳でもなく不発に終わる。いつの間にか懐に入り込んでいたしっぽが、確実に心を捉えて地面に叩きつける。

 

 

「ーーー千景!!ーーーォゴッ!?」

 

 

一瞬気をとられ、地面を削りながら振り抜かれたしっぽは少女の背中を強打。反動で逆くの字に曲がった体は、遠心力でそのまま吹っ飛んでいく。勇者服を着ていなければ確実に死んでいた一撃。かひゅかひゅっと薄い呼吸音が聞こえるだけで身動きが取れていない。

 

ゾクッと背筋が凍りつく。頭の中に過ったのは、圧倒的な思考の結論。

 

 

 

ーーー全滅。

 

 

 

 

「ーーー杏っ!!千景を拾って下がれ!!タマは若葉をーーーっ!?」

 

 

「たまっち先輩!!」

 

 

猛攻が止まることは無い。しかし彼女達の足は止まった。

好機と捉えた敵は残りの2人も片付ける。その巨体から振り抜かれるしっぽの威力は当たっただけで吹っ飛ばされる。何とか紙一重で躱す2人だが、長期戦による疲労もあって動きにキレはなく、次第次第に足取りが重くなる。

 

 

「ーーーやばっーーー」

 

 

「ーーーたまっちーーー」

 

 

やがて2人纏めて吹き飛ばされる事となり、そそり立つ幹の体表に身体をめり込ませた。

 

既に意識は無い。ピクリとも動かない2人を見た敵は再び移動を始める。目指すのは中心部に存在する世界の源。三勢力に分かれた神の一勢力が集合体となって一本の巨大な木となり、残った人類を保護する為に結界を張ったその発信源。

これを落とせば四国の結界は崩壊し、最後の蹂躙が始まる。文字通り世界の終わりである。

 

それを止める勇者達はいない。進行を止めなければならない彼女達は地に伏せたまま動く事はない。

 

 

 

 

 

 

世界の終末は、後僅かまで迫っていた。

 

 

 

人類の終わりであるーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーせりゃァァァァ!!!!!」

 

 

 

最もその話は、()()()()()()の世界での場合である。

 

 

 

空から飛び降りる4つの影。うちの一つは敵の顔に似た部位に己の武器を叩き込んだ。

 

 

ーーーッ!!!!!

 

 

鉄が激しくぶつかりあった鈍い音。反動でぐらりと揺れ動くその巨体は、ゆっくりと後ろに倒れ込んだ。ぐったりと倒れ込んだ所に追い打ちをかけるように4つの影は飛び上がる。

 

 

「ーーー銀、夏凜で畳み掛けろ!!俺と銀ちゃんで勇者達を回収する!!」

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

「ーーーという訳だっ、その首置いてけぇええええ!!!!!」

 

 

両手に握った双斧をたて、空中で回転し運動エネルギーを生み出す。歯車のように高速運動し始めた回転は、火花を散らしながら敵の体を両断する。

 

 

「ーーー狙うならちゃんと一発で終わらせなさいよ!!」

 

 

首を置いてけと叫んだが本当に首(のような)部位を切断するとは思わなかった。仕方ないと二刀の刀を呼び出し、思いっきり敵の体にぶっ刺した。

グッと力を入れ、更に二刀呼び出し体を両断する。ピュンピュンと風を斬る音と裏腹に、流水の如く無駄の無い動きが彼女の強さを体現している。

 

 

「ーーーうりゃぁああっ!!もういっちょぉぉぉぉおおおお!!!!」

 

 

バキンっと、鈍い音と共に両断された身体は最早動ける力は残って居らず、淡い光を放ちながら空へと消えていく。

足場が消えた事で、足の裏の感覚が空中に変わり、ついで体が急降下していく。何事も無かったように着地した2人は、ぐるぐる周りを見渡す。

 

 

「……反応は無し。敵の全滅確認、と」

 

「……なんか、今の相手妙じゃなかったか?」

 

「何よ首置いてけ妖怪。あんな大技かますなら身体ごと真っ二つにしなさいよ」

 

「いや〜、優希さんと時代劇見ててつい使いたくなっちゃってさ」

 

「時代劇とは言えどんな状況よそれ」

 

 

首斬りでも主題にした作品なのだろうかと思いつつ、兎に角と敵の殲滅を終えた事で次の目的は勇者の回収及び治療に変わる。

チラリと横目で見ただけだが、視認できただけでも三。話では五人と聞いているので残りの二人も早く救出しなければならない。

 

 

「ほら、銀。初代勇者達を救出しに行くわよ」

 

「おっと、そうだった。早く行かなきゃ」

 

 

ぴょんっと体を屈伸させて文字通り飛んでいく。そう遠くない場所のはずだが、近場は他の二人が既に回収した可能性もある。が、それでも見落としは出来ないのでぐるぐると視野を動かしながら移動していく。

 

 

「ーーーあっ、彼処!!」

 

 

ピンと指を指した方向。ぐったりと影に座り込んでいる人影があった。神樹様の世界ではよっぽどのことがない限り出血はしない。しない、故にゼロではない。其れを意味するのは、その人影が血を流しているかどうかで処置が変わる。敵の猛攻でボロボロになった体を無理やり動かすのは御法度。しかし二人の知識では安全に運ぶ術が足りない。誰か呼ばなければ手遅れになる。

 

一先ず確認を、と人影の場所に降り立つと、驚愕する光景が目に飛び込んできた。

 

出血はしていない。しかし、体のあらゆる場所に打撲のような傷や汚れが目立っている。一目で命に別状は無いと分かる。

 

 

分かるが、問題は座り込んでいる人影ーーー少女が、どう見ても知り合いの顔にしか思えないのだ。

 

 

「ーーーゆ、友奈?」

 

 

 

 

 

 

 

その問いに答える者は、この場に居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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