お兄ちゃんは勇者である   作:黒姫凛

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やっぱり人数増えると全員に焦点向けなきゃならんから難しくなるな。

えちえちでべけすどな赤黒い勇者服きたおにゃの子にhshsしたい(切実)。


花結いのきらめき その9

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事態は急を要した。

 

 

勇者部に回収された初代勇者達は、大赦が運営する病院に搬送。初代勇者達が何故この世界にいるとか、そういった疑問は病院側は微塵も思っていないようで、スムーズに受け入れられて緊急治療状態に入った。

 

 

一先ず病院には付き添いとして風、優希、ひなたが残り、他のメンバーは帰宅させてある。小学生が居る中、頼れる人材をこの場に残すのは些か他のメンバーのメンタル的な考慮がされていないように思えるが、そこは勇者部員。しっかりと互いにカバーし合って落ち着きを保っている。

 

が、この中で一番心を病んでいるのは、他でもないひなたであろう。

笑い合い、助け合って生活していた西暦の勇者達だが、ひなたもそこに含まれている。そんな楽しかった思い出が嘘になるかのような出来事。仲間が来てくれるという嬉しさ反面、こういった事態が起きる事も分かっていた筈なのに、いざそうなってしまうと受け入れる事が難しい。

涙に昏れるひなたを、そっと優希と風が落ち着かせる。

 

 

 

 

それから数時間後。泣き疲れたひなたを抱き寄せながら座る風と優希が待つ扉の前。緊急手術室のランプが消点し、がらりと扉が開かれる。 数名のスクラブを身を纏った医者が扉から出てくる。

そのうちの一人、先頭を歩いていた男性が三人の前まで歩いてくる。他の人達はスタスタと廊下を歩いて行く。

 

 

「担当の日下部です。率直に申し上げますと、搬送された5名の方の手術は成功です。手術と言いましても、切り傷よりも打撲や内出血が酷いようでしたのでその手当て及び酸素マスクの装着。今日より数日は病内で安静にさせて回復を待つしかありません」

 

「……意識はまだ?」

 

「搬送時は心拍数が低下していましたが今は正常です。肋骨や手足に多少の骨折をされていますが、粉砕骨折までは至っていませんでしたので怪我の度合いから見るに数週間は安静に。目が覚めても体を動かすのは控えていただきます」

 

 

手術は何とかなったと。思わず安堵の息が漏れる。

 

 

「事情は上の方から聞き及んでいます。隔離という形になってしまいますが、他の一般人との接触を避ける為、最上階の病室を用意させて頂いております。詳細は後程」

 

「……ご配慮、ありがとうございます」

 

 

では、とこの場を後にする医者を背に、優希と風は今一度息を吐く。

一時はどうなるかと思ったが、後遺症の残る被害が出なかっただけでも一先ず良かったと思える。数週間はは不便だがそれから何とかなるのなら安心だ。

 

 

「………良かったわ。大事にならなくて」

 

「……あぁ、本当に」

 

「……とんでもない出会いから始まる事になったけど、勇者部もこれで安泰ね」

 

「……まぁそうなんだけどな。……気掛かりなのは、初代勇者様方をああも追い詰めたバーテックスの強さだろう。夏凜と銀が倒したあのバーテックス………彼奴があの一瞬で倒せたとは思えないんだ」

 

 

思い出されるのは先の戦闘。夏凜と銀(中)、両者が力不足なのでは無く。何なら、勇者部の中でダントツの火力を担う二人の攻撃にあっさりと落ちたバーテックス。その姿は救出に向かっていた優希と銀(小)もしっかりと見ていた。()()()()からこそ辿り着く疑問。頭の中に当時のイメージが浮かび上がる。

 

 

「言うなれば、力を失っていた……ような。彼奴は何処か事切れたように動きが無くなった。そこを銀達が叩いたが………バーテックスを解明出来ていないとはいえ、仮説を立てるにはかなり憶測でしか判断出来ないな」

 

「……じゃあ何?あの場にもしかしたら二体居たってこと?倒してなかったら……もしかしたら神樹様の方に……っ」

 

「いや、その線は薄いと思う。神樹様に近付いているのなら、神樹様は俺達に撃退するように呼び出す筈だ。……考えられるなら、初代様方が第打撃を受けながらも一体倒した。あのバーテックスも弱っていた……と仮定すると辻褄が合う。これは初代様方が起きてから確認するしかないけど」

 

 

仮説段階だが、優希の中ではこの仮説は間違いなく無いと確信している。風はあのバーテックスを遠目でしか見ていなかったから、状況をハッキリと理解出来ていないが、優希はしっかりと現場を見ている。

明らかにバーテックス側の()()()()()()()話よりもずっとタチの悪い情報操作。真実を伝えられないからこそ、風やひなたに歯痒さを感じてしまう。

 

 

「……より強力な敵が来るって訳ね。戦力が増大した分、バーテックスの方でも強化されてるって訳か」

 

「……ふんどし締めなおさないと、本当に誰か殺られるかもな」

 

「……ちょっと、あんまり縁起でもない事言わないでよね。………あ、私と樹とあに……おに……いちゃんが居れば百人力なんだから」

 

「……ふっ、そうだな。俺達兄妹は最強だ」

 

「どんな相手が来たって、私達は負けないんだからね」

 

「………あぁ、そうだな。()()()……負けないもんな」

 

 

 

優希の呟きは、最後まで風の耳には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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初代勇者達の意識が戻ったと連絡が風に入った。放課後、すぐさま勇者部員は病院に向かい、病室に向かった。

優希は()()()()()()()係の仕事があるので後から合流となる。

 

病室に辿り着くと、部屋の中から楽しげな笑い声が聞こえた。

 

 

「若葉ちゃんっ、皆さん!!」

 

 

病院内であるにも関わらず、何時もの冷静さと落ち着きが無くなっているひなたは物音を立てながら引き戸を開ける。

 

 

「ーーーひ、ひなたっ」

「ーーーひなちゃん!!」

「ーーーひなた!!」

「ーーーひなたさんっ」

「ーーー上里さん」

 

 

扉を開けたのが誰なのか。目に映った瞬間に、病室にいるであろう全員からひなたの名前が呼ばれる。

駆け出すひなたは、未だベッドの上に体を預けているベージュ色の長い髪を靡かせた少女に感化余って飛び付いた。相手がけが人であるにも関わらず、思わず飛び込んでしまったひなたを誰が責めようか。

 

 

「っ!!す、すいません若葉ちゃんっ。怪我をしているのに……」

 

「ふふっ、構わないさ。私も、ひなたを肌身で感じたかった」

 

 

自分の犯した罪を認識したひなたは我に返ると、涙ぐんだ瞳を震えさせながら謝罪する。謝罪を受けた若葉という少女は、柔らかい笑みを浮かべるとよりギュッとひなたを抱き締める。

 

 

「ひなちゃん私も〜!!」

 

「タマも抱きしめてやるぞ〜!!」

 

 

続いて友奈と酷似した姿をしている少女と焦げ茶色の短髪で小柄な少女が二人にくっついていく。それを見るだけでも、彼女達がどれだけ仲慎ましいか分かる光景だ。

 

 

「……あ〜、コホンっ。一先ず、情報整理させてもらっていい?」

 

 

咳払いを一つ。ピンと右人差し指を真上に立てた風がじゃれあっているひなた達に声を掛ける。ぞろぞろと5台並んだベッドがある病室に勇者部メンバーが続いて入室していく。

ひなたは若葉からそっと体を離し、乱れた掛け布団を掛け直して風の隣に移動した。

 

 

「……すまない。つい気分が高まってしまった。こんな形で許してもらいたいが自己紹介を。私は乃木若葉、助けてくれて本当にありがとう」

 

「はいはいはーい!!タマは土居球子だ!!タマって呼んでくれタマえ!!」

 

「……もう、タマっち先輩ったら。初めまして、伊予島杏と申します」

 

「……郡千景よ」

 

 

若葉の言葉の後に続き、ぶんぶんぶんと包帯を巻いた両手を大きく振ってアピールする土居球子。それを苦笑いで抑える伊予島杏。無愛想にそっぽを向くのが郡千景。それぞれ身体の所々に包帯やガーゼを貼って痛々しく見えるが、運び込まれた時よりはかなり回復しているようにも見える。

 

 

「……ん?()()はどうした?」

 

「え?()()?」

 

 

もう一人いるはずの仲間の声が聞こえないのを不思議に思った若葉がふと顔をそちらに向ける。風達勇者部もそれに釣られてそちらを向いた。

 

 

「……むむむむむ」

 

「……ほわわわわ」

 

 

そこには瓜二つの、若干髪質や色素が違うがほぼ同一人物と言っても過言では無い()()達がいた。

互いに唸りをあげている。

 

 

「えっ!?友奈が2人!?」

 

「ゆゆゆゆ友奈ちゃんが2人ですって!?」

 

「た、高嶋さんが2人!?」

 

 

上から、風、美森、千景である。3人以外も表情が驚愕の色に染っている。

 

ぺたぺたと互いの顔を触っては唸り触っては唸りを繰り返し、やがて何かを納得した2人は布団に潜り込んでモゾモゾと動き始める。

そしてバッと布団を勢いよく捲りあげ、2人が肩と肩をくっつけて笑顔で口を開いた。

 

 

「「どっちが友奈で、どっちが友奈でしょうか!!」」

 

 

ーーー。

 

 

暫く沈黙が支配した。とりあえずツッコミたい事が多すぎて困る。先ず疑問しか無い。どうやってそんな事をアイコンタクトだけで理解出来たのか、初対面のはずではと、ぐるぐる思考が疑問を生み出していく。

 

 

「私から見て右が高嶋さんよ」

「私から見て左が友奈ちゃんよ」

 

 

そんな中、ほぼ同時に口を開いた者がいた。一人は友奈ちゃん大好きな東郷美森、もう一人が郡千景である。寸分の狂いもなく同時に口を開いた2人は、当然と言わんばかりにふんすっと得意気な表情。

再び数秒間の沈黙がやって来た。

 

 

「………はぇー、やっぱり東郷さんは凄いね。直ぐに私だって分かっちゃうなんて」

 

「ふふっ、愛のなせる技よ友奈ちゃん」

 

「ぐんちゃんも凄いね。ビビって来ちゃったよ!!」

 

「……高嶋さんの事なら、なんでも分かるもの」

 

 

どんどんほんわかしていく空間に、何故か百合の花が4本生えているような気がする。

 

 

「……あー、ハイハイ。仲良くなるのは良いけど、取り敢えず情報共有と行きましょ」

 

「友奈、怪我もあるんだから余り激しい動きは控える事だ」

 

「えへへ、ごめんね若葉ちゃん。あっ、私は高嶋友奈です!宜しくね」

 

「うわぁーっ、私とそっくりなのに名前まで同じなんて初めてだよ。……同じ顔の人が世の中に3人いるって言ってたけど、なんて言うんだっけ?」

 

「ドッペルゲンガーよ、友奈ちゃん」

 

 

改めて見ると殆ど同じ顔である友奈と友奈。違いで分かるとすれば髪色ぐらいだろう。

 

 

「……それで、まずは。私は讃州中学勇者部部長、犬吠埼風よ。まずは詳しい話をひなたと一緒にするわねーーー」

 

 

 

 

それから数十分かけて、風とひなたは若葉たちにこの世界の事、自分達のことを説明した。若干一名頭から湯気を出しているが、大方理解出来たようで、成程と若葉は相槌を打った。

 

 

「……成程。神樹様、神世紀、造反神。そして私達の時代から約三百年後の勇者達。改めて考えると、中々に実感がわかないな」

 

「……ま、そうよね。はいそうですかで理解されても困るもの」

 

「元の世界……でいいだろうか。彼処では常に敵と戦う為の訓練や勉強が主だったからな。私はオカルト的な分野には乏しいのだが。……杏はどうだ?」

 

「……俄には信じられませんが、ひなたさんが仰るのなら信憑性は高いと思います。この部屋にある物は元の世界と同じようにも見えますが若干異なっている。となれば、より強固になると私は考えます」

 

 

杏の答えに、若葉は満足気に首を縦に振った。その隣で球子も満足気に胸を張っている。

 

 

「と、言うわけだ。私達の頭脳である杏が言ったように、その事実を受け止め、貴女方と協力し合うと誓おう」

 

「……ありがとう。そう言って貰えると、私としても嬉しいわ」

 

「また、若葉ちゃん達と一緒に過ごせるのですね。楽しみです」

 

 

 

 

「ーーーちょっと待って。私は反対よ」

 

 

静止と反論の声が飛び出した。

 

声の主は千景だ。眉を歪め、苛立ちを表情に感じる。須美と園子(小)はそのただならぬ威圧から銀(中)の後ろに身を潜める。

 

 

「何が反対なんだ、千景」

 

「簡単な事よ乃木さん。私は、彼女達を信用出来ない」

 

「……ぐんちゃん」

 

 

若葉と千景の視線が交差する。目じりを吊り上げ、鋭い眼光で互いに牽制し合う。間に挟まれている球子と杏はギュッと互いに身体を寄せあっている。

 

 

「直ぐに信用してもらえるなんて考えてない。貴方達の現状の把握を……」

 

「その親切心が疑わしい。唯でさえ右も左も分からない場所で、自分達に着いてくれば大丈夫と先導きって私達の手を取る貴方達。明らかに怪しすぎるわ。善意だろうが使命だろうが、腹の中が分からない相手にホイホイついて行くなんて、無用心すぎるわ乃木さん」

 

「しかし、風さん達は深手を負った私達を病院まで運んでくれた。それにひなたも今目の前にいる。紛いなりにも信憑性はあるはずだ」

 

 

若葉の言葉に、千景は否定の意を見せる。分からないの?とでも言いたげな表情に、若葉も表情を曇らせる。

 

 

「それも敵の仕業である可能性を考えたかしら。上里さんが居るからと言って、安易に信用すれば私達は壊滅。死ぬかもしれないのよ?……死と隣り合わせの現状で、浅はかな考えよ」

 

 

千景の言葉は、確かに納得出来る用途をついている。まだしどろもどろな現状、病院に入院する羽目になったのも、こうして勇者が増えた事も、西暦時代の勇者達からすれば理解出来てない部分が多い。千景の言う可能性、無下に出来ないのは事実であった。

 

考えさせられた若葉はふと何かを思考する仕草をすると、ならばと千景に問いかける。

 

 

「千景の話もわかる。が、言葉ではああ言ったが私とて心を完全に許したわけではないさ。何か、信用出来る事を見せてもらえれば、千景の考えも変わるんじゃないのか?」

 

「………はぁ、乃木さん。そういう嘘方便は大概にして欲しいのだけれど。……まぁ、確かに。完全に信用しないとは言え、認めないことも無いわ」

 

 

やれやれと言った感じで肩を下ろす千景。少し場の雰囲気が和らいだ気がした。してやったり、という程でもないにしろ若葉の表情は少し誇らしげだ。

 

 

「……と、言うわけだ風さん。少し手間をかけさせてしまうが、どうか一つ」

 

「……ふふん、問題ないわ。元々、若葉たちにも私達の活動を手伝って貰うつもりだったから」

 

「……活動、と言うと先程の話に出ていた勇者部という部活動の事だな?」

 

「ええ、そうよ。私達は讃州中学勇者部。困ってる人が居たら手助けするをモットーに、悩み相談事なんでもこなすお助け勇者なんだから!!」

 

 

ドーンッと、風の後ろにゴシック体の勇者部という文字が見えているような迫力があった。胸を張り、誇らしげに語る風の姿に、西暦勇者達はおおーっと感銘をあげる。

 

 

「改めて聞くといい名前だ!!復活したらタマも大いに暴れまくるぞ!!」

 

「……部活動、青春の1ページ。誰かの為に手を差し伸べる王子様、お姫様達。素敵です」

 

「とっても楽しそうだねっ、ぐんちゃん!」

 

「……え、ええ。そうね……高嶋さん」

 

 

目をキラキラ輝かせているのは球子、手を差し伸べている美化された風たちを想像しトリップしている杏。楽しそうにはしゃぐ友奈の隣で、気難しそうに千景ははぁ、と溜息を吐いた。

 

 

「……私達の怪我、見るからに1ヶ月ぐらいは安静にしておいた方が良さそうよね」

 

「はい、千景さん。お医者様曰く、数週間は絶対安静。運動も控えて頂きます」

 

「えぇーっ、タマは我慢出来ないぞぉ」

 

 

ぐへぇーとベッドに倒れ込む球子。確かに、見た目からでも滲み出ているアウトドア系球子からすれば退屈な日々だろう。

 

 

「安心してください!!この不詳、三ノ輪銀両名が球子さんのお世話を致します!!」

 

「え、あたしも?……まあ、いいか。よろしく、球子さん」

 

「ふふふっ、タマの事はそんな畏まら無くてもいいぞ。気軽にタマ、またはタマっち先輩と呼びたまえ!!」

 

 

「わ、私は伊予島さんのお手伝いをしますね」

 

「わ、私にもですか!?な、なんというか恐れ多い……」

 

 

球子の元に銀達が。杏の元には樹が。それぞれお世話係としてついた。

若葉にはひなた、園子ズがつき、御先祖と呼ばれ始めた若葉はどう対応していいのか分からないようで、ギクシャクしている。

 

 

「はいはーいっ、高嶋ちゃんには私がつくよ!!ね、夏凜ちゃん」

 

「わ、私もなのっ!?……まぁ、別にいいけど」

 

 

「こ、郡さん。僭越ながら、この鷲尾須美。お世話させて頂きます!!」

 

「……無理に来なくてもいいのよ。さっき、怖がっていたでしょ?」

 

「例え怖がっていたとしても、それを嫌いになる理由はありません。私は郡さんのお世話がしたいんです!!」

 

「……っ、そう……、ありがとう。あと、郡じゃなくて千景でいいわ。あまり、苗字は好きじゃないの」

 

「はい、千景さん」

 

「……私のお世話をするなんて、物好きな子もいるのね」

 

「須美ちゃんは千景さんと仲良くなりたいのよ。そういう、私もね?」

 

「東郷、さん……で、良かったかしら?」

 

「ええ、呼びやすい言い方で構わないわ。………どちらの友奈ちゃんが可愛いか、私……興味があるの」

 

「っ!?!?……同じ、と言うわけね。成程、確かに……仲良くなりたいわね」

 

「ふふふっ」

 

「?」

 

 

友奈には一瞬で仲良くなった友奈と、照れくさそうに連れてこられた夏凜が。千景の元へは須美と美森が。何やら密かに動き出しそうだが、今はまだ触れるべきでは無さそうだ。

 

兎も角、勇者部メンバーが付きっきりの元、西暦勇者のサポートをする事になった。立案者は風。のはずなのだが、その話をする前にこうなったので、これは自然現象。流石勇者部と言える行動力である。

風はそんな姿に涙腺崩壊だ。

 

 

「……ぐすっ、ううっ……。成長したわねっ、あんたら……っ」

 

「え、何泣いてるんですか風さん」

 

「あんたは私達の母親か!!」

 

 

立ち位置的には母親ですと、風はそう思った。

涙を拭いた風は、お決まりのキメ顔をすると高らかに腕を上に突き出した。

 

 

「何はともあれ、勇者部メンバーも増員。戦力的社交的にもおっきくなった勇者部!!これからもどんどん動いて行くわよォ!!」

 

 

『おぉーっ!!』

 

 

数分後、病院内にも関わらず大声を出した風達は、こっぴどく看護婦さんに叱られるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なんだったんですかアレ。話と全然違う」

 

 

今にも殴りかかりそうな勢いだ。凄まじい剣幕で距離を詰めた。

 

 

「たまたまだって………なんて、冗談は通じないか」

 

「……当たり前です。どういう事か説明してください」

 

「……だって私にも分からないんだよ?……まぁ、造反神自体、こんな戦い早く終わらせたいって思ってるみたいだし。動きは早いかもね」

 

 

おちょくっているのか、それとも本当に分からないのか。判断しずらい否定の仕方。しかし、メンタルの弱った心では、その捉え方は後者を選んだ。

 

 

「……そんなに、ですか?」

 

「怖い?恐ろしい?分かってるよ。こんな世界だもの、下手な事出来るような場所じゃない。君だって活路が見えたんだ。早く自由になりたいんでしょ?」

 

「……分かってますよ、そんな事……」

 

「なら従え。こっちには君を幾らでも思いどうりに出来るカードを持っている。その事を忘れずにね?」

 

「……はい」

 

 

じっと、視線で相手を射殺すかの如く。鋭い眼光がズキズキと心を削る。

 

 

「安心してよ。私は君の味方だよ。……私だけが君を見てあげられる。安心して……ね?」

 

 

ギュッと包容力ある身体が密着し、少しずつ冷たくなった心が暖かくなっていく。鼻腔を擽る甘い香り。怖い、逃げ出したい。だけど、そんな事も考えられなくなる程の熱。何時しか、腰に手を回し抱き締め返していた。

 

 

「……大丈夫だよ。世界が否定しても、私だけは……私だけは、君の味方……だからね」

 

 

甘い吐息が耳に流れ込む。もっと欲しいと、これは誰にも渡さないと、欲望が力となって抱き締める力が強くなる。

色香のある声が漏れ、それがどんどん理性を溶かす。

もっと、もっともっとと貪欲に。臭いを身体に擦り付けてマーキング。耳に蕩ける息が、激しい息遣いが聞こえ、次第次第に頭のネジを外していく。

 

 

「……私に全部、ぶちまけちゃえ」

 

 

二つの影が一つに重なるのはそれから、数分もしない頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これから、高嶋家友奈の事を文書では川嶋。結城家友奈の事を文書では葵と表記します。こんがらがったりちゃうんじゃねぇーかって思わないように。


……いや冗談ですってその拳をしまってください。高嶋と結城って表記しますって。
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