番外編だよォ
星が恐怖の象徴では無い何処かの話。
輝く星々に、想いをのせてーーー。
7月7日。今日は七夕。しかし、毎年のように梅雨時期なので天気は雨。
夏の風物詩たる七夕を雨という憂鬱の中でするのは気分的に嫌気がさす。
かと言って、自分がどうこうできる問題ではない。天候を操れるような異形の力を持っている訳でもないし、七夕を梅雨が明けた時に盛大に行うと言った常識外れな事も出来ない。
今年も雨の中、七夕を過ごすのかと溜め息をひとつ。
護国思想を重んじる身としては、自国が古くから行っている行事は積極的に行いたいとは思っているものの、自分だけ1人実行出来る事はまず少ないだろう。
何より七夕と言えば、天にかけられし天の川が舞台。舞台の幕が上がらない限り、七夕は特別な日ではなくなってしまう。
「まだ溜め息吐いてるのか?」
窓の外を眺めていた私に、彼はそう問いかけてきた。机に肘をつき椅子に座った彼は、クルクルとペンを手で回しながら、困った様な表情を見せている。
「……ごめんなさい。気に触ったかしら?」
「いいや。毎年の事ながら、君のそういう表情を見るとなんだかやるせない気分になる」
ペンを置いた彼は立ち上がると、ゆっくりとこちらに歩いてくる。少し湿った室内で私も彼も薄着で過ごす。彼の場合、引き締まった身体を浮き出させるようなピチッとした服装だ。
「……まあ、この時期は梅雨。雨や湿気を含めると、気分が下がるのも分からなくもない」
「……私が覚えている限りで七夕に星を見たなんて事無かったわ」
「俺も見たことは無かったかな。見てみたい気持ちも分かる」
「今日ぐらい何処かの展望台にでも行けばよかったかしら……」
「考える事はみんな一緒だろ。しかも、残念だが今日は全国的に雨だとさ」
時間的にも難しいだろと、彼は端末に写った天気予報を見せながらそう言った。確かに、既に夜中と言っていい時間帯。今から何処かに出かけるというのも、難しい話だ。
今日の為に色々と準備をした。短冊と笹を購入し、窓際に笹を立てて短冊を結んでいる。短冊には願い事を娘と沢山書き、願いが叶いますようにとお祈りをした。
今日ぐらい晴れて欲しかったと思うのは、我儘では無いはず。娘にも、1度くらい見せて上げたいし、私も見たいと願っている。
「ーーーお父さん?お母さん?」
リビングの扉が開き、ひょこっと娘が顔を出す。
おいでと彼は手招きし、たたたっとやってきた娘を抱き上げた。
「ダメだろ、もう遅いんだから寝なくちゃ」
「一緒に寝たいからいやー」
「もぅ、我儘言わないの」
呆れたように言うが、こういう仕草や行動も娘の可愛いところだと思う。ぷにゅぷにゅとハリのある頬を突っつき、くすぐったそうにする娘。
私に似た黒い髪と、彼に似たライトグリーンの瞳。私達の娘だといつもながら認識させられる。
「ねぇねぇ、なんの話ししてたの?」
「お星様の話をしてたんだよ」
「えー、お星様?なーんだ、つまんない」
「ははっ、いつか美雨にも良さがわかるよ」
私達の娘、
「……美雨はお星様は好きじゃないのか?」
「お星様は
「……怖い夢?どんな夢か覚えてる?」
「……えーと、お空からお星様が落ちてきて、みんな
「……っ」
「まさか、お星様を見た時はずっとその夢を見てるの?」
「うん。だから私、お星様なんて嫌い」
いやいやと首を振る美雨。何か大きな事を忘れているような気がした。その夢を聞いた瞬間、何故か脳裏に過ぎった気がした。
しかしそれは勘違いだと
「
「勿論、今日は七夕でしょ?」
「そう、七夕。年に1回、織姫と彦星が出会う事が出来る日。とってもロマンチックな日だよ」
「でもお母さんの本で読んだよ。そうなった理由は自業自得なんだって」
ギロっと彼が睨んできたので目を逸らす。私は教えていないはずなのにどうして私が関わっているように言うのかしら。思わず叱りそうになってしまった。
「まあ、お母さんは現実主義者だからね。オカルトとか信じないタチだから」
「どうして私が悪い事になるの?!私だってロマンチックだと思っているわ」
「ハイハイ、分かった分かった」
「ちょっと、絶対それ分かってない」
「でもお母さんは寝る前にいっつもお父さんの名前呼んでるよ」
「…………」
「…………へぇー」
恥ずかしくて死にそうです。私の娘はどうやら口が軽いらしい。
プクーと頬を膨らませる私に笑みを向ける彼と美雨。なんだか腹が立つ。
「お、雨やんでるじゃん。ちょっと外出てみるか」
「また雨が降ってきたら嫌ですよ?」
「ベランダだから大丈夫だって。もしかしたら見れるかもよ」
「私も見る〜」
窓を開け、足元にある外用のスリッパに履き替えてベランダに出ていく彼。私もそれに続き外に出る。
確かに雨は止んでいるが、空気がジメジメしていて気持ち悪い。生暖かい風が全身を撫でていく。不愉快以外言葉が見つからない。
「うへぇ〜、気持ち悪いよー」
「我慢我慢。これがこの時期の空気だから仕方ないよ」
「これもう一度お風呂に入るしかないわね……」
「……別に俺のせいじゃないけど」
さっきのお返しとしてギロっと睨んでおく。冷や汗をかきながら明後日の方を向く彼。後で一緒に入ってもらおう。
「……晴れるかな?」
「……晴れるさ。きっと見えるよ」
「どうしてそう言いきれるの?」
感だよと、彼は美雨にそう言った。それにあまりピンと来てない美雨は首を傾げた。私は何となく、彼がそう言うのが分かった気がする。
彼はそういう時、絶対自信があるという顔をする。感だと言ってはいるが、色々と
「……美雨。空を見てご覧」
「……えっ?……うわぁーっ!!」
それから数秒経った時、彼が美雨にそう言った。ゆっくりと上を見上げる美雨は、その目に写る光景に声を上げた。
雲の間から次第に現れる空の
星々の大群が巨大な川を天に流し、キラキラと輝く煌めきはまるで光を反射した水のよう。
「……思ってたよりも大きいわね」
「雨が降ったからだろな。空気中の水分が屈折して大きく見えてるんだよ。しかし、本当に広大だな」
「……貴方の言う通り、本当に晴れたわね」
「俺は何もしてないよ。晴れるかなって思っただけさ」
「その予想するのが凄いことなのに……。あら、美雨?どうしたの?」
さっきから反応のない美雨の表情を見てみる。ずっと何かを見つめているような真剣な眼差し。ただじっと、瞬きせず微動だにしない。
「……美雨?どうしたの?」
「……お母さん。分からないの?」
「……え?何が?」
「……
皆さん感想ありがとうございます。本編の方もすぐに投稿出来るようにしたいと思います。
さぁこの世界はどうなるのやら。