お兄ちゃんは勇者である   作:黒姫凛

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1回1回題名考えるのが難しい。

それと時間がほ、ほすぃ。


アルストロメリアは知っているか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三ノ輪銀が()()を体験したのは、単なる偶然だった。

 

 

 

 

ある日の夕方。いつもの下校時刻と共に走って帰る銀は、()()目に入った道が気になり、いつもとは違う帰り道を行く事にした。

 

しかし運悪くその道は遠回りだったらしく、山の近くまで続く一本道となっていた。住宅街が乱立する中に綺麗に伸びる一本道。何か不自然さを感じる道のようだが、銀はそれでもなお足を動かす。流石に引き返すよりは進んだ方が()()と思い歩みを止めなかったが、何故かどんどん空気が冷たくなってきているような気がした。

 

今は春先。冷え込むにしてもこんなすぐには温度は下がらないはず。しかし歩けば歩く程、身体が凍るような冷たい風が全身を撫でてくる。

そこではっと、何かが可笑しいと気付き、一度()を止め、恐る恐る後ろに下がるように元来た道を戻り始めた。

 

 

 

 

ーーーまたね。

 

 

 

 

誰の声か、最近聞いたことのあるような声。しかし、突然聞こえた声に、そんな反応出来るはずもなく、銀は後退りしてしまう。

 

あのまま()()()()()()()()不味いと直感で行動出来たのが幸いであったと、今の銀は思いもしないだろう。

 

周りが白い霧に覆われ始めたような気がする。目を擦っても目の前には白い濃霧。

先程まで目に写っていた筈の住宅や壁、赤く染った夕焼け空は消え、新たに写っているのは何処までも続く青黒い空と白い濃霧だけ。

 

 

銀は初めてここで恐怖した。今まで見ていたものが全て消え、まるで死者が逝くような無の世界となった世界に、銀は恐怖するしかなかった。

泣き叫ばないだけ銀は我慢強いだろう。

 

しかし、恐怖したところで銀には何も出来ない。

その場で立ち尽くし、戻れるまで待つしか手は無い。

 

 

 

 

 

ーーー私は、この時後悔したんだ

 

 

 

 

 

声が聞こえる。今度はさっきよりも意識して聞くことが出来た。

 

 

 

 

 

ーーー弱い自分を呪ったよ。なんでって。どうしてって

 

 

 

 

 

泣きたくなる様な悲しい声。後悔と悲しみが籠った冷たい声。

間違いなく、誰かの声だ。しかも、聞いた事のある声。最初に聞いた声とは、声質が違う。

 

 

 

 

 

ーーーけどもう、どうしようもない。諦めたくないけど、諦めるしかない

 

 

 

 

 

ゆっくりと思い出す。毎日聞いている声だ。

 

友達?違う。両親?違う。弟達?違う。

 

 

 

 

これは、私?

 

 

 

 

 

 

ーーー私は無理だった。だから、きっと無理なんだろうな。

 

 

 

 

 

 

ーーー今のうち、悔やんどいた方がいいよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー世界って、ホント……残酷だよね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー遅いっ、罰金!!」

 

 

何処ぞのS〇S団団長のような発言とともに、遅れてきた銀に言葉を投げつける須美。園子はサンチョなるぬいぐるみを横抱きに椅子に座って船を漕いでいる。

 

 

「ごめんっ。でも罰金は勘弁」

 

「……まぁいいわ。銀が遅れて来るのは予想出来たから」

 

 

現在午前8時ちょうど。1時間の遅刻である。流石にこれは須美が激おこになるのも分かる。しかも、時間指定したのは銀本人であるため、銀は謝るか本当に罰金するかしかない。

 

 

「全くもぅ……。それで?どうしてこんな時間に集合したの?」

 

「それがさ、優希さんって休日だとこの時間は鍛錬してるからそれから見ようかなって。興味あるだろ?どんなことしてるか」

 

「まぁ、それが今回の目的だから。それじゃあ高嶋さんの御自宅に向かうのね」

 

「そう。じゃあ早速行こうぜ」

 

「……遅れてきた人が仕切らないの。そのっち、置いてっちゃうわよ」

 

「……ンゴっ、……あ〜、待って〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩いて数十分。目的地である高嶋優希が住む建物に到着した。

趣のある門構え、坪千は優に超えるであろう広大な土地。大人よりも高く聳える白塗りの壁が土地を囲い、その中に収められた巨大な平屋。住宅街から少し離れた位置にある高嶋家本殿総本山。

 

思わずデカいと、開いた口が塞がらない状態に須美は陥っていた。

園子は自分の家もこんな感じだと慣れたような口振り。銀も初めは驚いたと須美の状態に共感を得ている。

 

 

「………こんなの、どうやって入ったらいいの?」

 

「普通に正面からじゃないのか?……まさか、この高い壁を登ろうなんて思ってないよな?」

 

「当たり前でしょ!こんな壁私達では不可能に近いわ」

 

「じゃあ普通に入るしか無くない?大丈夫だって。こっちには天下の乃木様が居るし」

 

「いえ〜い」

 

「だ、だけど、普通に……」

 

 

不法侵入なのでは?と言い切る前に、銀と園子は既に敷居を跨いでいる状態だった。隣に居たはずの2人が一瞬で移動した事に驚いた須美だが、これはもう止められないと判断し、最悪天下の乃木様に頼るしかないと覚悟を決めた。

 

「やっぱり中はもっと広いわね……」

 

「えーと、道場は確かこっちだったかな」

 

「そっちじゃないよミノさん。こっちだよ」

 

「お、流石園子。優希さん家は理解してるな」

 

「えへへ〜、伊達に毎週通ってないんよ〜」

 

「ま、毎週?!」

 

 

まさかの暴露に驚愕。それと同時に、園子が優希とそれ程仲がいい理由も何となく理解出来た。そんなに会っているなら仲良くなれないはずはない。しかも、園子の性格からして嫌な事には一々首を突っ込むことは無いことから、本当に優希の事がお気に入りなんだと分かる。

 

 

「……そのっち、それだけ通っておいてよくも騙してくれたわね……」

 

「……うぉお〜、わっしーなんか怖いんよ〜」

 

「……今のは、園子が悪いな」

 

 

ギロリと園子を睨みつける須美。サンチョを前に出して目線を合わせないようにする園子だが、グルグルと園子の周りを歩き回りながら目が合うように位置を変えている須美には勝てなかった。嫉妬の篭った瞳が園子に突き刺さる。

 

 

「……お、2人とも。アレアレ」

 

「どうしたの、銀……っ。あれは……っ」

 

「あ〜、ゆーにぃ〜おろろろ?」

 

「しーっ、出ちゃダメよ」

 

 

丁度曲がり角になった時、銀が進行方向を指さした。見てみると、少し拡がった場所に立つ袴姿の優希が見えた。手には分厚い篭手が巻かれ、足には具足が着いた履物を履き、ボクシングや総合格闘技を連想させる防具をつけている。

思わず園子は手を振りながら近付こうとするが、須美が口と肩を掴んで下がらせる。

 

 

「……そのっち察して。今流石に出ていったら御迷惑よ。既に御迷惑かけてるかもしれないけど……」

 

「ほら見てみ。なんか始まるぞ」

 

「フガフガ」

 

 

物陰にかくれながら、銀が再び注目を向けさせる。

優希の他に、赤髪の少女が瓦を持って立っていた。その背後にも瓦が何枚も積み上げられている。両手でやっと持てそうな瓦を彼女は片手でそれぞれ瓦を握っているため、思わず嘘でしょと銀と須美は口を揃えて呟く。

 

 

「ーーー行きます」

 

 

凛とした音色と共に、冷たい空気が頬を掠める。

右手を大きく振りかぶった少女は、野球のピッチャーのようなフォームで瓦を優希に向かって投げ飛ばした。

思わずえぇーっと声を上げてしまう。

 

 

「ーーーっ」

 

 

真正面にグルグルと不規則に回転して飛んでくる瓦。優希は腰を捻り、軸足からの連動で全体重を乗せて瓦を粉々に砕いた。砕かれた瓦はパラパラと埃を撒き散らして地面に落下する。

少女は更に左手の瓦を態と横回転させるようにサイドスローで放り投げた。若干カーブがかかった瓦は、先程よりも少し低い状態で優希に向かっていく。優希は飛び上がり、かかと落としの要領で瓦を踏みつけ粉々に踏み抜いた。

そこまで凡そ15秒。開いた口が塞がらない。故意で瓦を破壊するとはどういう事なのかと状況に追いつけていない須美と銀。園子はいつも通りの目でその光景を見ている。

 

続く連弾。下から振り上げるように瓦を両手連続で放り投げた。少女の腕力では凡そ投げる事は出来ないはずの体勢から繰り出される瓦。スピード、コントロール共にピッチャーが硬式ボールをキャッチャーのミット目掛けて投げる様。

視界に広がる2枚の瓦。グッと姿勢を落とし足に力を溜め、若干右向きに飛び上がり利き足である右足で後ろ回し蹴り。かかとが瓦を捉え1枚を砕き、そのままもう1枚足を振り切って蹴り砕く。

 

更に飛んでくる瓦。それを一旦体制を整えて1枚1枚砕いていく。

飛んでくる質量を跳ね返すでは無く壊す。それを実際に行う場合相当な技量と力、速度が必要なのだと何かの本で読んだことがあった事を須美は思い出した。いやまさか瓦を空中で砕くなんて業衝撃過ぎて終始驚くだけしか出来なかった。無論、優希も凄いがその瓦を悠々と投げるあの少女も少女だ。

須美達よりは年齢が下だろうか。身長は銀に近いかもしれない。発育は……須美の方が勝っているが、それは大した事である。

 

若干息切れしている少女は、手元に瓦がない事を確認すると、駆け足で優希の元に走り寄って行く。優希は養子で高嶋家の子供となった。高嶋家の実子がいてもおかしくは無いのだが……。

 

 

「……なんであんなにも仲がいいのかしら?」

 

「……おやおや?嫉妬ですか須美さんや」

 

「ち、違うわよ!……ただ、私も年下の妹か弟が欲しかったなって……」

 

「あたしはもうお腹いっぱいだな……。これ以上増やされちゃ溜まったもんじない」

 

「……ねぇそのっち、あの子は優希さんの妹さんなのかしら?」

 

「そうだよ〜、友香ちゃんって言うんよ。可愛いんだよ」

 

 

あれを見せられた後ではどうにもその先入観が持てない。歳が近い女の子があんな怪力なんだと思うと少し引いてしまうのは仕方ない事だろう。

 

だが園子の言うように、優希と会話する彼女の姿は年相応の可愛さを感じさせる。あれだけ見ていたら仲のいい可愛い妹が色々あった事を話す団欒にしか見えないだろう。

 

 

「……というか、これからどうする?」

 

「今更?!さっきの正面突破はどこ行ったのよ」

 

「……いやなんか、タイミングミスった」

 

 

てへぺろと須美の逆鱗を逆撫でする仕草をする銀。思わずどこからか取り出したハリセンでぶっ叩きそうになった。

 

 

「でもさっき大声で叫んじゃったし………」

 

「……既にバレてると私は思うわ」

 

 

 

 

 

「………バレてるんだよなぁ」

 

 

 

ビクンと肩を震わせ、ゆっくりと声のした方を見る。そこには苦笑いしながら、園子を背中に背負った袴姿の優希が立っていた。

しかし音も無く現れた優希もそうだが、今まで口を塞いでいたはずの園子が居なくなっていた事に気付いた須美は、更に驚愕した。

 

 

「そ、そのっち、いつの間に……!?」

 

「え〜、普通だよ〜。こーやってゆーにぃの所に行きたーいって思ったら背中に居たんよ〜」

 

「いやどういう事だよ……」

 

「……信じられる?友香が気付くまで分かんなかったからな」

 

 

園子に質問するのはナンセンス。的を得るような回答は貰えないので、園子のそういう行動は乃木ミスティックなどと命名して不思議現象だと認識するしかない。

 

 

「けどまぁ、とりあえず……おはよう2人とも」

 

「……お、おはよう、ございます」

 

「お、おはようっす」

 

「……腹減ってるか?朝ごはんにしちゃ遅いけど、食べる?」

 

 

一先ず、食事の席をご一緒させてもらう事にした3人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これは多分分ける流れ……。また待たせてしまうぅ……。
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