オリキャラオリ設定有り。
神樹館中等部に通う優希は、一言で表すなら校内一注目される生徒である。
まず第一に、大赦の関係者が多く通う神樹館。小中高等部と分かれる大赦が運営する私立学校は、マンモス校という程では無いものの、坂出市内では大きな校舎と敷地を持った学校である。
大赦が運営しているだけあって神樹様第一の精神が根強く、神樹様への祈りの授業も行なわれ、神樹館を卒業する生徒達の大半はそのまま大赦に就職するものが多いという。
そんな神樹館中等部に通う優希は、勇者という御役目を担いながらも部活に勤しむ一生徒でもある。陸上部に所属する優希は、他にも幾つも部活を掛け持ちしており、柔道、剣道、バスケットボール、バレーボール部と体育系部活をひっきりなしに回っている。
助っ人と言う訳では無いが、どの部活にもその身体能力の高さから切り札的存在として在籍しており、普通そんな立場の生徒がいれば僻まれるのが当たり前なのだが、逆にどんどん来て欲しいと積極的に呼ばれる程の高い信頼を得ている。
勿論こんな生徒がモテないはずもなく、優希は学校中の憧れの的として見られており、毎日の様に告白されるのが日常。大赦直結の大家からは縁談の話も幾つかあるんだとか。
御役目がある為優希は告白を全て断っているが、それが逆に女子生徒たちからの好感度を上げているらしく、ファンクラブなるモノもあるんだとか。
まぁそんなこんなで、優希は何処でもチヤホヤ持て囃されている学校生活を送っているのだが、当然友人関係にも恵まれている。
基本的平等に接する優希は、男子生徒達から頼りにされる場面が多く、面倒見がいいのもあって何時も周りに人が集まっている。
言わば学校の中心と呼べる優希なのだが、そんな彼は内心どう思っているのかというと。
「ーーーふぁぁぁ〜っ、だ、りぃ〜」
机に突っ伏してそう息を吐く。
四六時中誰かに付きまとわれるというのは中々に疲れるものだ。向こうからしたらそんなのお構い無しで、楽しいからどんどん近寄ってくるのだが、優希からすれば楽しいがそれが1人2人なら兎も角、何十人単位なので流石におなかいっぱい。優希が蕩けるように机に身体を倒しているのも分からなくはない。
現在午前中の授業が全て終わりこれから各々昼食を摂る時間だ。優希も栄養バランスを考えられた弁当を取り出そうとするも、なんだか食べる気になれないでいた。
「人気者は辛いね全く。いつか身体をバラバラに刻んで全生徒に配られる勢いだ」
「……何言ってんだお前」
唐突に突っ伏す優希の頭をグリグリと拳を押し付ける生徒。クオーターの血筋であるかどうかは知らないが何故か髪色がクリーム色の男子生徒は、優希の前の席の椅子に座り込むとポケットからなにやら紙を出してきた。
「取り敢えず今日の話を聞かせろよ。夕海子が聞きたがってる」
「……まだ午前中なんですけど。それにそんな大した話なんてないぞ」
「何を言いますか。お前が居るだけで面白いんだから大丈夫だって」
「弥勒家の長男坊がそんなんで大丈夫なのか……?」
「俺は継がないから大丈夫」
取り敢えず捏造しとくわと、紙にペンを走らせる男子生徒。最早恒例となった彼の行動に、優希は止めるという選択肢を無くしている。彼の妹に聞かせるという武勇伝、何故そんなものが聞きたいのか聞いても話してくれないので諦めているのだが、そんなこんなでもこの男子生徒とは長い付き合いになっている。
「……取り敢えずはと、優希……んーと、午前中だけで10人に告られるっと。男子生徒含む……」
「おい書くならマトモなのにしろよ。まるで男にもモテてるみたいじゃないか」
「何を今更。男心まで鷲掴みしてる奴がなーに言ってんだ」
「男心?俺が?やだよなんだよ気持ち悪い」
「何を今更。俺なんかお前が思うよりも前から気持ち悪いって思ってた」
「……それ俺が気持ち悪い?それとも俺に恋してる男子が?」
「真実は神樹様のみぞ知るってね」
「おいマジでやめてくれ。そんな真実押し付けられたら神樹様病んじまうぞ。どっちか否定してくれよ」
「なーにを今更。否定出来ないから気持ち悪いんだろうが」
何言ってんだこいつと、ジト目を向けられる優希。最早何も語るまいと、ゴンッと額を机にぶつけて顔を伏せた。
この男、弥勒
「……んー、なんだかなぁ。もうちょい面白いネタない?最近の身の回りとかなんか変化ない?」
「……お前の思考がバグってるぐらいだ」
「あ、成程年下好きね」
「待ってそれどっから出た」
紙に滑らせていたペンを鷲掴みにする優希。ペンから鳴ってはいけない軋む音が聞こえる。
「……お前自分の握力考えろよ?その歳で林檎潰すとか正気の沙汰じゃねぇんだからな?」
「いつかお前の頭を潰すその時までは自重するさ。……というか、なんで年下好きって話が出るんだよ」
「なんで声のボリューム落とした。そしてなんで声のトーン落とした。……分かってるだろ?小学生と最近仲が宜しいようで。お陰で夕海子の機嫌が悪いのなんの」
「弥勒家の人間なら分かるだろ?御役目で一緒に居るんだから自然とな。……なんで夕海子ちゃんが機嫌悪くなるんだ?」
「クソ鈍感が。今時鈍感主人公なんて流行んねぇんだよ糞が」
「おい言葉が汚ぇって。それでも大赦の人間かよ」
「家継がないから大丈夫」
その言葉はそんなに便利じゃ無いんだぞと、ため息混じりにそう呟く。
大赦直結の大家は、基本的当主は長女が襲名する。代々男性より女性の方が大赦内での活躍が多く、勇者巫女を始め全て女性中心で行われているためその仕来りで長女は御家を、長男は婿養子として家を出ていくことが多い。この蓮兎も例に漏れず、この歳で既に許嫁が存在しており、将来は確実にその許嫁と婚姻を結ぶ事になる。優希はまだ確定した許嫁は居ないが、一番関係の深い乃木家の婿養子になる可能性が高いと思っている。
「まぁ何?年下好きって言うのは別に悪かないんだがな?小学生に手を出すってどうよ。天下無敵の優希君がそんなんじゃ神樹館中等部の面子が崩壊しちゃうぞ」
「……お前そんなにもこの学校への誇り持ってたのか」
「ある訳ないじゃん。埃?綺麗好きな俺には邪魔でしかないよ」
「そのホコリじゃねぇよ。言葉汚い癖に綺麗好きとか言うなよ」
「何を今更。俺がそんなわけねぇじゃねぇか」
「会話が続かんてしっかりしてくれ」
「しっかりしてるわ。それで、答えてもらいましょうかね?中等部を背負う優希君の言い訳を」
まるで人を犯罪者みたいに。優希は何度目かのため息を吐いた。
確かに仲がいいとは思っているが、所詮はの程度。手を出す……というのは何処からの事を言っているのか具体的には知らないが、決してやましい訳でもないし、そんな気持ちもさらさらない。逆にいい迷惑だと蓮兎を睨みつける。
「言い訳とか何よほんと。……まぁ、そのちゃんとは仲がいいからそれなんじゃね?あの子いっつもくっついてくるし」
「……あぁ、乃木家の御令嬢ね。確かに可愛いがうちの夕海子の方が可愛いだろ?」
「可愛い……と言うより、美少女って言った方がいい気がする。絶対別嬪さんになるよ夕海子ちゃん」
「おっけー伝えとくわ」
「嘘混ぜるなよ捏造するなよ。夕海子ちゃんまで変な誤解したら困るんだよ……」
「大丈夫だって。それで?乃木家の御令嬢とは何処まで?」
「……何処までとは?」
しらばっくれるなよと、態とらしくため息を吐く蓮兎はペンを机に置き、ピシッと指を優希に向ける。
「今時の中学生カップルなんてやる事はやるんだよ。相手が例え小学生だろうとやる時はやる。それを踏まえ大赦の大物であるお2人は一体何処までの御付き合いをしてるんだって話」
「……別にカップルとかそういう訳じゃ無いんだけどな。大物って言っても俺養子の身だし。大体、それを乃木家が許すわけ無いだろ?」
「成り行きとかでもいいんだ。どうしてそんな深く関われてんの」
「……お前は何を聞きたいんだ?夕海子ちゃんが聞きたがってる話とか嘘だろ」
「いいからいいから」
「……はぁ。……そのちゃんの出会いね」
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大赦の上層会議。半年に一度行われるこの会議は、乃木、上里を始め大赦上層階級の御家当主が集まる重要な会議だ。
主に話題に上がるのは御役目と今後の方針。特に前者は今回初となる男の勇者の登場により話題性が高く、対応をどうするか追われている事が多い。もし万が一何かあってもいいようにと、今回は念入りに策が講じられ、能力強化を含め養子として迎えた高嶋家以外にも赤嶺、伊予島、土居家を始め、多くの家が尽力を尽くす方向になっている。
そんな会議に高嶋家当主も呼ばれる訳だが、今回は養子として迎えられた犬吠埼蕾季、名を高嶋優希も会議に出席する事になった。
と言っても、会議に出る訳ではなく挨拶回りが主である。特にお世話になる御家や、今回御役目に選ばれた乃木家への挨拶と交友関係を結ぶ。今回は乃木家長女も出席すると言うので、仲良くなっておけと言う当主からの命令でもあった。
という訳で、ご当主とは別行動になった優希は、客室に案内される。何人か既に客室に案内されており、一人ずつ挨拶に向かう優希。
皆優希の事は噂のみ聞いていたようで、誰も彼もが驚いていた。今挨拶した全員女性であることに優希は驚いているが、全員年上。しかもここに来たということは何かしら御家の重要な立ち位置にいる人間であると判断した優希は下手に口を開かず、腹の中を見せないよう会話する。
そんな中、部屋の端っこでぬいぐるみを抱いている少女が目に入った。透き通るような少し黄色がかったクリーム色。ぐにぐにと手元の高野豆腐のように四角いぬいぐるみを弄りながら寂しそうにしている少女。それが何処か妹の姿と被った優希に、話しかけないという選択肢は無かった。
「こんにちは」
ゆっくりと近付き、驚かせないように声を掛けるも、ピクッと肩を震わせて驚かせてしまった。ゆっくりと肩越しに見てくる少女。くりくりとした可愛らしい目がこちらを見ており、その瞳から何処か不安の色が見える。
しゃがんでいるがそれでも高さが出来ている為怖がらせてしまったかと思う優希は、ゆっくりと畳に腰を下ろすと、再度挨拶を口にする。
「こんにちは」
「……こ、こんにちは、なんよ」
何処か怯えた雰囲気の少女は、ぬいぐるみを胸元で抱き締めて身体をこちらに向けてきた。お姫様のようなフリルの着いた可愛らしい白いワンピース。ぷにぷにした柔らかそうな白い肌。何処か神秘的な風貌を持った少女だが、優希に怯えて若干涙目になっている。
どうしたらいいか考えると、少女の抱き締めるぬいぐるみがふと目に入る。何処か見覚えのあるぬいぐるみ。なんだったかなと思考を巡らせていると。
「………サンチョ?」
咄嗟に出た言葉。しかし少女はその呟きを聞き漏らさない。
少し目を輝かせながら、嬉しそうに優希に近付いた。
「サンチョ知ってるの?」
「あ、うん。確か妹がちっちゃいぬいぐるみを持っててね」
高嶋家のでは無く、犬吠埼家の方だが。
しかし少女はそんな返答にも嬉しそうな表情を見せ、ギューッとサンチョをより抱き締める。
「……サンチョ知ってる人初めてだから嬉しいんよ」
「俺はあんまり知らないけど、確かに可愛いよな。特に、そのギャップで喋る渋い声がなんとも」
「!?わ、一緒だ!わ、私もそこが好きなんよ!!」
どうやらお気に召したらしい。少女特有のニコニコした笑顔が戻り、優希も少し嬉しくなった。
「俺、高嶋優希。君の名前は?」
「…たか、しま…。あ、私と同じ御役目の人なんよ」
「……御役目って言うと、君が?」
「うんっ。私は乃木園子。宜しくね、ゆーにぃ」
にょへんと締りのない蕩けた笑みを浮かべた園子は、そう言って抱き着いてきたのだった。
「………別に大した事じゃねぇだろ?」
「うるせぇ女ったらし。うちの可愛い可愛い夕海子泣かせたら殺すぞ」
「なーに言ってんだコイツ……」
「なーにを今更」
友人と馬鹿やるのが、誰しも一番楽しい時間なのかもしれない。
優希は無意識にそう思うのだった。
やっぱり黒髪が好きだわ……。れんちー彼女になってくれよ。そのグラマラスな凹凸で俺を罵って椅子にしてくれなんでもするぶひぃっ。