輪廻と遡行【魔法少女ふるで☆りか】   作:夢遊の残骸

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柴灯 【視点-美樹さやか】

梨花の記憶喪失の不審点。

 

両親を亡くしたショックで失われた記憶が、再始動したのは別のタイミング。

 

私の主観ではその理由に思い当たりがある。

 

というか…ほぼ確信的。

 

勿論、その情報は梨花の"正体"に直接繋がるものではないかもしれないけど…何かの手掛かりにはきっと、なり得る。

 

そんな事を考えながらも。梨花に今その事実を告げても、理解が得られるか不安だし、そもそも今伝えたところですぐに動ける訳でもないから、私の推測を伝えるのはまだにしておいたけど。

 

そろそろマミさんの家が恋しくて腰を上げると…聞こえてきたのは。

 

悪魔の声。

 

あぁ、気味が悪い。

 

気付けば暁美ほむらの使い魔が店中の隅にて、その不気味な容姿を蠢かせている。

 

…聞かれたみたい。

 

「引き裂かれたのは秩序かしら。それとも、後悔と犠牲かしら。」

 

そう告げた悪魔は、私を見下す。

あいも変わらず、憎悪を含んだ…ドス黒い瞳で。

さっき私が話した内容への言及だろう。…犠牲…か。

彼女にとってはそうかもしれない。

幸福な結末では無かったと思う。

それでも…今のこの世界は、イカれてる。

 

「引き裂かれた物が例え後悔や犠牲でも…。その犠牲の元に数多くの存在が、救われた。…あたしを含めて。その救いすらも…そして世界すらも台無しにする心算?」

 

睨む。

問い掛けても何の意味もない事は分かっている。

所詮単なる威嚇に過ぎない。

案の定、ほむらは鼻で笑いながら

 

「救う程の価値があるのかしら、世界に。」

 

と。この世界そのものを。

人類を。

生命を。

嘲笑い、侮辱し、憎悪し、冒涜する。

悪魔。悪魔。悪魔。悪魔。悪魔。

 

悔しいんだ。

親友が選んだ尊い選択を…踏み躙って、破滅を招く…悪魔が、憎いんだ。

 

 

 

 

「喧嘩は止めるのです。」

 

 

 

 

 

…私は悔しさに震えていた。

…悪魔は私への卑下に浸っていた。

その間の静寂を見計らったかのように。

意外にも口を開いたのは梨花だった。

 

「あら。ごめんなさい。変な話をしてしまったわね。…貴女には関係のない話よ。」

 

隈と窶れの伺える目元は目尻を上げながら。

虚妄の笑みを築き梨花に向けられる。

 

 

 

 

「…なら、尚更。私の前でそんな話をすべきでは無かったわね。不愉快だわ。…ほむら。」

 

 

 

なんて空気なんだろう。

元はと言えば私とほむらが醸し出した筈だけど。

…梨花はほむらとは…面識こそあれど、殆ど会話した事はない関係の筈。

私達が目の前で夢中に訳の分からない話をした事がそんなに苛立ったのだろうか。

…それとも、思う節があったのか。

 

梨花はその辛辣な口調と共に。

…口角を上げ、ドス黒い瞳で。

悪魔を睨みつけた。

 

先入観からだろうか。

確かに膨大な因果を宿しているような。そんな、圧を醸し出す。

普通じゃ、ない。

 

「怖い顔。"まるで悪魔"ね。」

 

…告げる悪魔本人は、何を思ったのだろうか。

腰を前に折りつつ、梨花に顔を寄せながら。

梨花の顎を4本の指先で支え上げ、瞳を見据える。

 

暫しの対峙。

何故か私は蚊帳の外だ。

見つめ合う二人の間に、一体何が流れているのか。

私は鳥肌すら立てながら。呆然と見守っていた。

 

 

 

「にぱー!」

 

 

 

 

…唐突な満面の笑み。

狂気すら宿すその変貌。あからさまに"子供を演じた笑み"に目を丸くしてしまうのは、悪魔も私も同様らしい。

 

「ほむらはおままごとが上手なのです!楽しかったのですー!ところでさやか、マミの家に行くのです?ほむらも来るのです?」

 

「……………。」

 

流石の悪魔も無言だ。呆気に取られているのだろう。

とてもじゃないけど私もついていけていない。頭がおかしくなりそうだ。

 

「来ないのですか?寂しいのですー!それじゃあ、また会いましょうなのです!にぱー!」

 

そそくさとランドセルを荷物入れから引き出した梨花。

ネットがブチッ!と一部引きちぎれ、外側へ垂れている。

 

彼女なりに場を和ませようとしているのか。

はたまた刺々しいまでの皮肉と、受け取るべきだろうか。

どちらにせよ、梨花がほむらに苛立ちを抱いたのは間違いない。

 

私は確かに視認した。

あの目は…まともじゃない。

悪魔も、梨花も。

私には分かる、狂った対峙だったと。

 

私の手を勢い良く掴んだ梨花の手の平は。

この寒い季節にも関わらず、滲むような汗を帯びていた。

 

 

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