重装傭兵ロドス入り   作:まむれ

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Ep.12-人生行路-

 永遠に同じ状況が続くかと思われた戦闘だったが、全くの埒外によって戦場の空気が変わった。無線機から切羽詰まったチェンの「崩落に注意しろ」の声。

 直後、轟音と共に天井の一角が崩れ展望デッキにいたであろうレユニオンが瓦礫と共に落ちていく。驚いてる間もなく、近衛局員と共に衝撃による揺れとコンクリートの破片から身を守るべく動いている。

 

≪──ザザッ はぁい! ロドスの新米オペレーター! 生きてるー?≫

 

 それが収まった時、チェンの次に無線機から放たれた陽気だが凛々しくもあるそれは今まで聞いた事のない声だった。

 

「危うく死にかけたけどな……その言い草からして、ロドスからの増援か?」

≪大正解! コードネームはブレイズ、貴方の大先輩だよ!≫

 

 大先輩というところはともかく、言葉を聞く限りは待ちに待ったロドスからの援軍だった。これが来たという事は、ケルシーが言っていた通りドクターとアーミヤは生きているのだろう。声色から混乱も見られず、高揚感が全てを占めている感じがするし、何より後ろから数回しか聞いた事の無いアーミヤとおぼしき声が聞こえる。

 とはいえ、命の危機すら感じている今はこれほどの遅参には文句の十や二十も言いたくなるのもわかってほしい。

 

「そりゃ結構。間に合ったから良いが、随分と遅い到着だったじゃないか。これからは≪ブービー≫を名乗った方がいいかもな!」

「せっかく来てくれたんですからそんなこと言わなくてもいいと思いますけど……」

「ってもなあエフィ、お前だってこんな極限状況に二日近くも置かれてんだぞ?」

≪ほーう? 随分とエッジの効いた新人だねえ? 私の得物とどっちの切れ味が鋭いか、勝負してみる?≫

「いやぁ! 絶妙なタイミングで助けられて惚れそうですよブレイズさん! レンジャーさんに勝るとも劣らないアーチャーの腕前で俺の心を撃ち抜きましたね!」

「エインさん……」

 

 皮肉の一つを返したら容赦ない脅しが飛んできた。冗談じゃない、こんなところに残されてたまるかと無線の先にいる相手を煽てて悲惨な未来を回避しようと試みる。

 変わり身の早さにエフィは呆れているが、プライドで死の危険や疲労が無視できるなら俺達はとっくに龍門を奪還しているわけで。

 

≪私の役割はアーチャーじゃなくてソードマンだからごめんね? あと、コードネームを馬鹿にしたお礼に帰ったらミッチリ鍛えてあげる≫

物理的に失恋(Heartbreak)はやめてくれませんかねぇ……」

≪ま、その話は残ってるレユニオンをぶった斬って(chopper)からね!≫

 

 咆哮にも似た雄たけびと何かの駆動音が聞こえ、そのまま無線が途切れる。随分と不穏な言葉が聞こえたが、間違いなくレユニオンを殲滅した後は問答無用で訓練室行きだろう。

 

「おっかねぇ……」

「自業自得ですよ、初対面なのにあんな失礼な事言って!」

 

 


 

Ep.12-人生行路-

 


 

 

 驚く事に、その後戦闘処理はあっというまに終わった。化け物になったレユニオンの動きが鈍くなり、あれほど強かった力も弱体化していて簡単に無力化する事が出来た。『後処理』を専門とする部隊が急行しているらしく、これで一段落だとようやく肩の力を抜く。

 

「実際に顔を向けるのは初めてですね、エインウルズさん」

「アーミヤ社長、と横にいるのは……」

「どうも、皆からはドクターと言われてる者だよ」

 

 次に待っていたのはロドストップとの面談だった。エフィは後からやってきたオペレーターに付き添われてロドスアイランドへと帰艦しており、ブレイズさんはチェンと共に戦場の後片付けの手伝いをしている。なにせ、展望デッキを見た時はあまりにも破壊されていて唖然としたほどで、四分の一程は下の階を合わさって瓦礫の山になっているしそれ以外の半分程も亀裂が走っていたりコンクリートがめくりあがったりしていた。

 そう言う訳で今は短い時間の間に俺とアーミヤ達で話をする運びとなった。自分の胸ほどの身長しかない少女と素顔を隠した怪しげな風貌の存在。「これがロドスのトップと頭脳です」なんて言われて信じる人間がどれ程いるのだろうか。

 

「まずは申し訳ありません。ケルシー先生からの命令とはいえ、ロドスに所属したばかりなのに二日間もこのような事態に巻き込んでしまったのはこちらの落ち度です」

「ああいや、気にすることはねえですよ。『ロドスから出せたのは一人だけしかいなかった』もんで、それが俺ってだけだったんです」

「……えぇ、そうですね」

 

 一人の部分を強調すれば、アーミヤは少しの間を置いて首を縦に振った。横でドクターが笑っているから聞いてみれば、さっき似たようなやりとりをアーミヤとチェンの間で繰り広げられたらしく、それが可笑しくて笑いを堪えきれなかったのだとアーミヤへ指を向けて説明してくれた。

 

「こんな気分だったんですねチェンさんは」

「まあそれは後においておきましょう、用件はなんですか?」

「ロドス本艦へと帰艦してください」

「なんだって?」

 

 あまりにも予想外な一言に聞き間違いかと思わず聞き返すが、戻って来たのは一言一句同じ言葉。

 

「理由をお聞きしても?」

「ケルシー先生から提示された命令は達成されました」

「俺はまだ戦える」

「だからこそです。メフィストが逃げ続ける限り異形の感染者は増えるでしょう。一旦帰艦し、治療と休息を行った後に接舷区の防衛をお願いしたいです」

 

アーミヤの言葉になるほどと頷く。近衛局の精鋭ですら手を焼く相手、エフィのアーツを受けてなお立ち上がり暴力を振るうアレは確かに大きな脅威だ。たった一体いるだけでも装備がなければ防衛線を突破されかねない。接舷区を抜かれた先にあるのは非戦闘員の住宅区であり、ロドスアイランドに所属する人間の帰るべき場所でもある。

 未だ戦乱が燻る龍門も大事だが、それと繋がるロドス本艦の防衛もまた疎かに出来ない。

 

「了解した。そういうことなら、お任せください」

「私達はこれから龍門奪還作戦の最終フェーズに入ります。何かあれば無線機で連絡してください」

「エインウルズ、これが終わったら改めて面談をしよう。曲がりなりにも上官だからね、部下とはきちんと話をしておきたいんだ」

 

 メットで素顔を隠し、表情を窺い知れないはずなのに、ドクターの笑っている顔が見えた気がした。それはきっと、こんな状況でも楽しそうな声だからだろう。アーミヤは以前無線で話した記憶が残っているのか、あんまり良い表情はしていない。「お酒はきちんと自制しないと駄目ですよ?」と言ってくるが、この後治療が終わった後にでもに飲む気満々だ。戦闘中だろうが一仕事終えたのなら一杯くらいは良いだろう。べろべろになるまで飲むのは良くないが、たった一杯くらいなら影響は全くないのだから英気のためにも摂取すべきである。

 

「駄目と言ったら駄目ですよ!」

「ああ、そんな雷落とさんでくださいよ、全く石みたいに固い頭ですね」

「給料も減らしましょうか?」

「ほんとすみませんでした社長」

 

 ブレイズさんの次はアーミヤにまでこんな茶番をするとは思わなかった。横でドクターがまた笑っているが、話を纏めたらしいブレイズさんとチェンがやってきたことで真面目な雰囲気が戻ってくる。

 

「うん? きちんと見ると良い顔しているわねあなた」

「普段はもっとマシなんすよこれでも」

「さっきの威勢が欠片もないね」

「二日間も戦い続けた疲労……ですかね」

 

 嘘は言っていない。激戦は最後だけだったが、レユニオンの数に比べて圧倒的少数な近衛局との合同作戦は神経を使うものだった。傭兵として渡り歩いていた俺でも体力と精神の両方で疲れているのだから、それについてきたエフィははっきり言って異常だ。高揚感や色々一周回った結果だとしても、最後の最後まで泣き言を漏らす事もなかった。龍門での仕事が終わったら何かご褒美でもあげるべきだろう。

 ぱしんと、肩を叩いて褒めてくるブレイズさんだが、正直言って力が強過ぎて痛いからやめてほしい。元気そうに見えるかもしれないが、俺は負傷しているのである。頭に一発以外にも大小様々なダメージを貰っているし、ちょっと無理して盾をぶん回したりしているからちょっと肩とか肘とかが痛む。

 

「……ありがとうエインウルズ。貴様がいたおかげで部下の損失をかなり抑えられた」

「チェン」

「本当ならば、この後も共に戦ってほしいのだがな」

「やめろやめろ、お前らしくもない。鳥肌が立つ」

 

 わざとらしく自分の身体を抱き、ぶるりと身体を震えて見せれば心外だと言わんばかりにチェンの口が『へ』の字に曲がる。下らない冗談を投げる割には、こちらが返してやるとすぐに腰に差す武器へ手を伸ばすのはチェンの悪い癖だ。

 それはさておき、冗談交じりに言った俺の言葉も半分は真意だ。いくら柔らかくなったからといって硬さを全て失ってしまっては張り合いがなくなる。昔の堅物だったチェンには、癪だが認められる点があったのだからそこまで無くすべきではない。

 

「貴様と言うやつは……まあいい、終わったら酒に付き合え」

「いや本当に、今回の作戦ではお前に驚きっぱなしだ。酒代は全部お前が持てよ、チェン」

「女に集るとは甲斐性がないな」

「女に見られたくばもうちょっと御淑やかさを身に着けるべきだなお嬢様」

 

 今度は得物が半分くらい顔を出して煌めいている。これでいい、こうやって軽口を言い合っていると記憶の通りだと安心出来る。まあ、チェンと飲みに行くくらいは構わないだろう。奢りではなく折半で、が前提だが。

 だいぶ先ではあるが楽しみが出来たところで、俺が乗るであろうヘリが半壊した展望デッキへ足を下ろす。後部の座席へと身体を滑らせ、盾を置いて緊張を完全に解けば、二日間の疲れが押し寄せてきたのか瞼が重くなる。

 ロドス本部まで、短くも貴重な睡眠時間。良い夢を見れれば良いなと思いながら、意識を深くへと潜らせた。

 

 

 

 

 


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一章

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龍門近衛局奪還作戦

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-完-

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大陸版の翻訳読んだんですけど六章は入る余地がない(そもそもキツい)ので一旦離脱という形になりました
ここからの時系列は大体イベントのように龍門での事件から数か月後みたいな感じの日常回を書いていくつもりです。

大陸版で実装されているがこっちでは未実装のオペレーターを出したくなったのでオペレーターのネタバレ上等で出しても良いですか?

  • いいよ
  • どちらでも構わない
  • 駄目です
  • 結果を見たい人用
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