重装傭兵ロドス入り   作:まむれ

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危機契約始まったんですけど、障害物利用してうろちょろさせるの苦手なんですよね……なので重装で固めて全部受け止めました(脳筋)


Ep.17-朝種暮穫-

 夏、夏、夏! 収入源が安定しない傭兵にとってシエスタのサマーフェスティバルとは決して手の届かない最上の休暇である……はずだった。

 だが今こうして俺はサングラスをかけながらぶらぶらとシエスタの街をアテもなく歩いては露店で軽食やアイスを無造作に買って日々のストレスを解消している。ロドスアイランドは素晴らしい組織ですと今なら胸を張って言えよう。

 

 いや、正しくは言えた(・・・)だが。

 

「てめえ、くたばったと思ったらこんなところで何をしてやがる」

「こちらこそ、貴方を見ると昔を思い出して嫌な気分になる」

 

 路地裏で、お互いがお互いに敵愾心を隠そうともせず刺々しい言葉の応酬を繰り広げる。俺の眼前には過去に散々めんどくさい戦闘を繰り広げたクロスボウの使い手。無論、向こうからしたら護衛対象の前をうろついて簡単に任務を終わらせてくれない忌々しい相手だと思っているだろうが。

 

「シュヴァルツ、こんなところにいたのね! ……その殿方は?」

 

 そんな剣呑な雰囲気の中、視界の外から乱入してきたのは如何にもなお嬢様だった。落としたら壊れそうな日傘を差し、姿の見えなくなった家族を見つけたように安堵の息を漏らす白を基調とした服を着る女の子だ。

 血生臭い傭兵とはどう転んでも縁がなさそうな少女へ先ほどまでの険しい表情をすっと消して柔らかな笑みを浮かべる女を見てこの世の終わりは今日かもしれないと覚悟した。

 

「お嬢様、何故このような場所に」

「護衛の方にお聞きしましたわ。貴方が私の傍を離れる程だもの」

「それを察せられるならば容易に来るべきではないはずですが……」

 

 過去に、やたらと強気な傭兵の四肢を撃ち抜いたとは思えない程腑抜けた対応。なるほど、と納得して俺は笑いを堪えきれない。

 

「いいじゃねえか、シュヴァルツ。たかだか小娘一人に翻弄されるとは随分と丸くなったものだ」

「……何を言うかと思えば。ええ、確かにそうかもしれませんが、それを私は悪い事とは思いません」

 

 からかい半分で出た言葉を、シュヴァルツは反論する事なく呑みこむ。ああ、なるほどこれはもう重症だろう。昔に見た、冷徹な瞳を上手く隠して。ただ、傍らに立つセイロンと呼ばれた少女を大事そうに見る優しい目だけがあった。

 

 


 

Ep.17-朝種暮穫-

 


 

 

「どくたぁーーー! 俺達はここになぁにしに来たんでしたっけぇ????」

「ごめんってエインウルズ、埋め合わせは絶対にするからさ!」

 

 なんて一幕があって、その後に俺が何をしているかと言えば、市長代理のクローニンとかいう奴とその護衛相手にドンパチである。レユニオンや直前にあったいざこざに比べればまあ、文字通りシエスタ(お昼寝)みたいなもんだが、俺達はここへ休みに来たのであって戦いに来た訳ではない。逃避行の最中に恨みがましくドクターを詰る。

 シュヴァルツを見かけてからいつ狙撃されても良い様にと相棒()を持っていたのが幸いと言っていいのか、それのせいとも言うべきか。いやでも休暇のために訪れた街で俺達の指揮官が問題ごと起こすとか予想出来るか? オマケにドクターが引っ張ってるお嬢様はさっき見た人だしよ。

 

 

「エインウルズ!」

「っとぉ……ぐお!?」

 

 ドクターの掛け声に合わせて盾を振る。若干の痺れと甲高い音と共に弾かれる鉄製の矢が見えた──瞬間に小規模な爆発が俺を包む。あのくそったれ、町中でソレを使うか!

 昔相対した中で幾度となく使われた爆発矢。一発辺りの威力は控えめではあるがこうやって周囲にばら撒かれると割とどうしようもないのがいやらしい。

 破片が頭を切ったのか血が流れてくるが、平衡感覚や視界に異常なし、かすり傷で済んだか。

 

「ドクター! これマジやばいってお嬢様誑かすから怒ってんじゃねえか!」

「軽口叩けるなら上等でしょ! 行けエインウルズ!」

「ざっけんな!! 対遠装備ならとかく、水着と盾でどう止めろと!?」

 

 軽口を叩ける余裕があるのはドクターも同じだった。現在の俺の装備は盾を除けば白に青色の花が描かれたラッシュガードとスイムショーツ、オマケに投擲用の小さなナイフが数本のみ。爆破弓を容赦なく放ってくるシュヴァルツ相手に有効手段を持たない。足止めくらいは出来るかもしれないが、あの女は壁を走って登ったりそこから跳躍したりと機動力も中々ある。最悪、俺の事を放置してドクターを追いかねない。

 

「ドクターとお嬢様、もうちょっとこっちに寄れ」

 

 あ、と思い付いてドクター達を手招きする。近寄って来た二人と並走しながら後ろを見て、一瞬後悔した。追跡者の表情が、ない。

 

「……なんかめっちゃ怒ってない?」

「そらそうだろ。俺、今人質取ってるもん」

「は?」

「いいかドクター、あいつは強いを通り越してヤバい、俺の折り紙付きだぜ」

「それは心強いね」

「味方なら、そうだったな」

 

 ドクターの顔は一瞬で歪んだ。

 

「周囲に観光客がいないのを確認しているが平然と町中で爆発矢をぶっ放して来やがる」 

「セイロンさんからシュヴァルツさんの事は多少聞いてるよ」

「そら手間が省けた。ええと、お嬢様?」

「セイロンで結構ですわ。あの時に聞きそびれていましたが貴方のお名前は?」

「エインウルズ。一緒に逃げる仲だ、よろしくな」

 

 セイロンの顔も歪んだ。何故だ。

 どこかで会ったのかとドクターに聞かれたので『休暇中』に少しと嫌味を含めて答える。

 

「話を戻そう」

「シュヴァルツさんがCASTLE-3より無表情な話」

「まあ傭兵だった頃のあいつは狼よりおっかねえ奴でな。それが久しぶりに見かけたと思ったらティーカップより重い物を持てなさそうな女の子の御守りなんかやってんだ」

「お顔の通り失礼な方ですわ。少なくとも、アーツユニットを振りかぶって無礼者を叩けるくらいの力はありますの」

「おお怖い」

「ところで傭兵が女の子の付き添いだなんて、どこかで聞いた話だね」

 

 合いの手のように入れられた一言が深く突き刺さる。

 笑っているドクターの足を引っかけて生贄にするかどうか、たっぷり五秒程迷って止めた。死ぬかもしれない今を回避して未来の死を確定させるべきではない。

 

「凄い顔をしますのね、さっきの私も同じくらい嫌な顔をしていたかもしれませんわ」

「あいつとセイロンお嬢様が話してるところを見たからわかるぜ。相当大事にしてる」

「それも経験則?」

「ああ、ドクターがエフィに何かしたら毎日面倒ごとを起こして事務仕事の数を二倍にしてやるぐらいにはな」

「面白いお話ですけれど、結論を言ってくださりません?」

「爆発矢は今の装備じゃどうにもならんからセイロンお嬢様を近くに寄せて盾にしてる」

「最低ですのね」

「生き残るための知恵と言ってくれ」

 

 現に、さっきから飛んでくるのは通常矢ばかり。それでも武器とあいつの膂力が加われば馬鹿にならない威力がある。なんかロドスに来てからこんな手合いと戦う事が増えたような気がするのだが。

 さて、問題はこの後。いつまでも走っていればこっちの体力が先になくなる。

 

「それにしても、シュヴァルツが昔は傭兵だったなんて……」

「知らなかったのか? まあそれは後にしとこう。とりあえず問題は今だ。ビーチにゃ他のオペレーターもいるが武器を持ってない。源石術を使える奴もいるが……」

「あんまり良くないね。どんな影響が出るかもわからないし、何より民間人の避難をさせなきゃならない。そんな時間はないよ」

「シュヴァルツ以外の護衛もいるから手詰まり感がな……チッ」

 

 交差点に差し掛かったところで、目前に黒服の男達が数人姿を現す。さっきからシュヴァルツ以外の姿がやけに少ないと思ったら迂回して挟み撃ちにする作戦だったらしい。

 ……しょうがない。これは俺が足止めをするのが最適解だろう。

 

「ここは俺に任せて先に行けよ!」

「それ死亡フラグ!!」

「ここで捕まってドクターが酷い目に遭えばどっちにしろ俺は死ぬんだよ!」

 

 一本二本と一番近い黒服の足めがけてナイフを投げる。吸い込まれるように刺さったソレに呻き声を漏らす黒服に周囲が一瞬動揺し──

 

「ほら行け行け!──『暗愚ども、俺様が相手だ!!』」

 

 盾を大きく振りかぶって、よーいドン。声に力を込め、見下して挑発するように叫べば残った黒服は走り去るドクターとセイロンではなく、俺に敵意の全てを向ける。

 

「これは、やられましたね」

「ああ、まあちょっとした小技を覚えてね。声に鉱石術を乗せて対象の意思に働きかける、だったかな」

 

 殺気立つ敵の中で、シュヴァルツがクロスボウを装填しながら歩いてくる。余裕綽々、されど油断の欠片も見当たらない。

 

「ただこれ、手練れには効かないはずなんだけどな。いいのか? 俺にかまけて二人を見逃しても」

「もう一つ先のブロックにも人員は配置しておりますので。見たところドクターと呼ばれる人物は強くないようですし」

「なるほどね」

 

 つ、と冷や汗が背中を伝る。道理でシュヴァルツまで残ったはずである。賭けるとしたらお嬢様が実は凄腕だったという奇跡だが……

 

「あーところで? 周りの奴らよりお前の方が何倍も敵意が強いみたいなんだが」

「昔は相対する度に殺してやりたいと思っていました、その名残でしょう」

「……で、今は?」 

「お嬢様を盾扱いした貴様が楽に死ねるとは思わない事です」

「なるほど、さてはセイロンお嬢様の怖さはお前譲りだな?」

「戯言を!」

 

 開幕の一矢と共に黒服が四方から取り押さえようと走ってくる。シュヴァルツがいなければ十分は時間を稼げただろうが、現実は非情だ。

 まずは一人目、遮二無二突っ込んできた貧乏くじの足を引っかけ、強く押して抱擁先を地面に変えてやる。左右同時にやってきた相手は先の黒服を押した手をそのまま振り回して顔面を殴りつけ、もう片方は盾で押し返す。

 

「獲った!」

「そうでもないさ!」

 

 盾から手を離し、後ろから警棒を振る敵の腕を掴む。後ろから攻撃してくる奴は何故どいつもこいつも声を出すのか、これがわからない。

 

「ぐ、なんて馬鹿力……」

「褒めてくれてありがと、よ!」

 

 姿勢を下げ、男の脇に腕を添える。そのまま持ち上げて背中越しに放り投げてやっと一息つく。多対一にも関わらず初動を捌かれたのか、周りの男達は警戒しているようで襲ってこない。

 だが────

 

「やはり避けられますか」

「ああ、まあ間一髪だったが」

 

 足元には地面に刺さる矢が一本。機動力を削ぐために放ったものだろうが、舗装された道路を易々と突き破っている。

 生きるにしろ死ぬにしろ、五体満足で済むかどうか怪しくなってきたな。

大陸版で実装されているがこっちでは未実装のオペレーターを出したくなったのでオペレーターのネタバレ上等で出しても良いですか?

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