重装傭兵ロドス入り   作:まむれ

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W引くまでにエリジウム完凸したので初登場です


Ep.26-鼻元思案-

Date:Unknown 3:13 PM

Rhodes Island Weather:Rainy.

 

 

 

「さて、何故お前がここに呼ばれたのか、わかるか?」

 

 外ではしとしと雨が降り注いでいるが、我らがロドスアイランド艦内に限ってはなんの障害も受けずに午後の休暇に勤しむことが出来る。

 小会議室でのちょっとした催し物というには机を挟んで対面に座る人物の顔色がよろしくないが、俺以外の同室しているオペレーターは部外者根性で楽しそうにしているから差し引きでプラスだ。

 

「皆目見当もつきませんよエインウルズ。今まで何度も話した事はありますが取るに足らない雑談ばかり、僕がエインウルズの不興を買う事もなければエインウルズが僕の不興を買う事もない」

 

 完全アウェーであるにも関わらず、いつもの調子を崩さずに肩をすくめ、心外だと首を傾ける男は俺の目を真っ直ぐ見る。全く、恍けるのが上手くて親近感が湧くね。

 

「ああ、そうだ。いや、『そうだった』と言うべきだな」

「過去形ですか。それでは教えて欲しいけど、僕がいったい何をしたのかな?」

「──数日前、俺はロドスの甲板でとある人物と世間話をしてな。自分で言うのもなんだが、他人に聴かれると誤解を招きかねない話だった」

「それはまた……恐ろしい話ですね」

「で、だ。その話が何故かロドスで広がった。お前に解るか? 誤解を解いてくれと必死になってヴァルポの少女に頭を下げた時の気分が」

「……………………想像しても及びがつきません」

 

 俺がなんの回り道もせず、核心を最初に話し出したのが意外だったのだろう。一瞬だけ目を背け、ややあって絞り出すように答えた。

 全く、これで解るなんて言われたら机を派手に叩いていただろうから正しい答えを選んでくれて助かった。

 

「さて、その話は速やかに上へと伝えられた、具体的にはドクターとアーミヤ社長へな」

「数日前の艦内放送はそれでしたか。僕の周りの皆は、あー例の件かと呆れていましたが」

「お前はどう思った?」

「今度こそ退艦になるのかなと」

 

 その言葉が空中に吐き出された時、右に立つ元ホストが思わず笑いを零し、レイジアン製の製造プラットフォームが電子音をかき鳴らした。俺は力の限り机を叩いて強くて鈍い音を会議室に響かせながら、地獄の底のように煮えたぎる感情を押し殺した低い声で身を縮こませた男を問い詰める。

 

「俺にとって幸いだったのはヴァルポの少女が献身的だった事、その過程で一人の医師の名誉が少し汚されたが些細な犠牲だろう」

 

 少なくとも俺にとっては。

 

「さて、疑いの晴れた俺が一番に取り掛かった事は、いつ、どこで、誰が、どうやって、この話を知り得たか探ることだ」

「犯人探しってやつですね。……僕が呼ばれた理由はそれですか?」

「良いね、頭の回転が早いのは良い事だ」

 

 問い詰められている男が左右に立つオペレーターへ助けを求めるが、残念ながらこいつらはそんな優しい存在じゃない。安全圏から他人が落ちていく様を笑って肴にするよう奴らだ。一応、名誉のために言っておくが、命の危険があれば助ける方を真っ先に選ぶし、真面目に振る舞うところでは当然止めたりもする。

 つまりこれは茶番だと言うことだ。命を取られることもなければ何か無理難題を言って困らせる事もしない。それをわざわざ本人に言って安堵させる事も、またしないが。

 

「さっきの少女がまた、協力してくれた。まー不用意な言葉でオペレーター一人の人生を閉ざしかけたからな、罪悪感もあったんだろ」

「子供を、利用したんですか?」

「世間話を盗み聞きして、それを言いふらすこととどっちがマシかは意見がわかれるところだ」

「それは……」

 

 言葉に詰まる。そりゃあそうだろう。なにせ調査の結果、噂の出どころはよりにもよってその日行われていた新米オペレーターのロドス艦内スタンプラリーへと集約され、まだ初々しい新人たちに詰め寄る事になった俺は当然の様に怖がられた。それを何度か繰り返して、向かいの男に行きついたのだから俺の怒りも大きくなる。

 栄えあるロドスのオペレーターになったばかりで緊張ガチガチ、すれ違うオペレーターは一定の確率でヤバい奴。危険地帯にいる後輩を和ませようと握ったばかりのホットな話題を提供して肩の力を抜かせたのは責めたりしない。

 ただし、それがネタにされた本人の耳に入れば話は別だ。

 

「俺はな、とても優しい男なんだ」

「あなたとはそれなりに親しいですけど、初めて知りました」

「知れて良かったな。無知のままだったら──俺はお前の赤メッシュを一本残らず収穫するところだった」

「自然愛好家でもありましたか……今なら神にもお祈りできそうです」

 

 ここに至って減らず口を絶やさないその根性。なんというか、性格が似ていて危機感を覚えすらするのだが、つまりはそんな理由で俺はこの男が嫌いではなかった。

 イベリア生まれの白髪イケメンで長身のお調子者、戦闘では敵の動きを妨害しつつ部隊の指揮と鼓舞をするオペレーター。

 

「人事科には俺から伝えておこう、エリジウムはラテラーノ人だったって」

 

 エリジウム。

 

 俺の満足いく答えを引き出し、口角を緩めさせた男のオペレーター名だ。

 

 


 

Ep.26-鼻元思案-

 


 

 

「俺が思うに男ってのは簡単に仲良くなれる。一つの戦場、一個の武器、一杯の酒。だが一番簡単なのは一つの趣向」

「つまり、エインウルズはこのロドスアイランドで女性の品評会でも開こうと言う訳ですか。凄いですね、命がいくつあっても足りはしない」

「やるのは君だけどね、エリジウム。エインウルズも俺も、そこのCastle-3も、通った道だ」

「冗談……ではなさそうだね」

 

 冗談であれば良かった──エリジウムの望みをミッドナイトが粉砕し、そのミッドナイトの一言を聞いたエリジウムは諦めたような溜息を吐く。あれこれと迂遠な言い回しをする必要はなくなったようだ。

 茶番にカーテンコールを降ろし、舞台だった会議室をただの会議室に戻した後に、CASTLE-3が淹れてきた茶を三人で味わいながら本題に入る。

 

「ここに何人かピックアップした。俺の独断と偏見で選んだ数人だ」

 

 写真を数枚ファイルから取り出して机にならべる。写真に写る被写体はカメラの方を向き、時には指でVの字を描いているから無許可で撮られた非正規品ではなく、事前許可済のクリーンなものだとわかるだろう。

 

「……質問、いいですか?」

 

 全ての写真に目を通した後、さっきの空気を引きずったままなのか俺の感情を伺う様におずおずとエリジウムが手をあげた。拒否する理由はどこにもない。 

 

「ああいいぞ」

「これ、やたらと彼女達の尻尾が強調されるように映ってますが……趣味ですか?」

 

 なるほど、それは確かに大事かもしれない。力強く、ひょっとしたらさっき机を叩いた時よりも力を込めて、仰々しく首を縦に揺らす。

 

「そうだ」

「なるほど」

「どう思う?」 

「正気を疑いますね」

 

 もちろん、あなたの趣味の事ではないと前置きしてエリジウムは続けた。

 

「まずこれ、レイズさんですよね?」

「何か問題が?」

「大ありですよ! 炎国の官僚! 下手な事をすれば外交問題! というかよくこんな写真撮れましたね!?」

 

 そこに写っていたレイズさんはノリノリで杖を構え、周囲にアーツによる雷を迸らせて自分の髪の毛や尻尾を逆立てている姿。身体を傾け、半身の形になることでより映えるようにしてある。尻尾が。

 まあ確かにエリジウムの言う通り懸念もあるが、もう既に何か月とロドスに滞在しているのだから大丈夫だろう。ヤバかったら写真を撮り始めた辺りで誰かが止めに来る。

 

「いいよな。触ることは叶わないが、立派なもんだ。ヴァルポやフェリーンと違って、毛並みが縦に長く続いている割には絡まる事が一切ないらしい」

「これで既にお触りしていましたなんて言ってたら、僕はこの席を立っていましたよ。間違いなく、パスタが茹で上がる前にです」

「俺が聞いた話では既にお願いして断られたって言ってるけどね」

「正気を疑ったのは間違いじゃありませんでしたか」

「気付くのは大分遅いですよ、オペレーターエリジウム。ミートソースのパスタはもう出来上がっております」

 

 散々な評価だが、俺は正気なので何も問題はない。お茶の次にと壁を作るかのように湯気がたんまりと昇る熱々のスパゲティが各々の前に置かれ、フォークで巻き取って口へと運ぶ。

 お堅くて真面目と評されるレイズさんだが、話せば意外と悪くもなく──俺の評判を聞いてなお要求を聞いてくれた事は大変疑問だが──書類仕事の手伝い程度ならたまに手を貸すようにしている。

 そのことはまあさておき、だ。

 

「スパゲティ美味しいな……ん、見間違いじゃなければこれはプラチナさんですよね」

「ああ、好きに撮って良いと言われたからな」

「片目だけカメラ目線、ポーズも完璧だ……」

 

 ソースが跳ねないように注意しつつ数口食べた後、フォークの代わりに持った写真。

 ロドスの訓練場、密林ステージで後ろへ跳んで地面に倒れ込みながら写真外へ向けて弓矢を構えるプラチナさん。白尾は彼女自身のロングヘアー、それと衣服に合わさり巨大な旗の様にも見える。「中々ね」とは本人の感想だが「シーンならもっと上手く撮る」と本職と比べてくるのはあんまりだ。

 

「気が合うんだ、プラチナさんとは」

「尾を触った経験は?」 

「気が合う事と気を許すことはイコールじゃないんだよ」

 

 エリジウムの問いかけにイエスと答えられていたら俺はもうちょっと嬉しそうに話すし敬称も取れている。プラチナさんの計画する悪戯に助力を乞われ、もしくは俺がターゲットの場所がわからずプラチナさんに索敵をお願いしたり。そんな協力関係を結んでいるが、俺の盾に勝ると劣らず尾へのガードは固いのだ。

 

「この、ニアールさんを彷彿とさせるプレートアーマーの麗人やその人に叔母と呼ばれていた教官はともかく、ですよ」

「エインウルズ、どうすんですかこれ。エリジウムのキャパシティがだいぶヤバい」

「今まで女の話をしたことなかったんだろ。お前の経験を以てご指導ご鞭撻してやれ」

「オペレーターエリジウムが大きいのは武器だけ、と言う事ですか」

「女性関係くらいありますけどね!? そうじゃなくて写ってる人物が軒並みヤバイ存在なんですよ! ……特にこれ!」

 

 もう半ばヤケクソなのだろう。エリジウムは数枚を一気に机に置き、いよいよ残った一枚を叩きつける。膝まで届く髪、雪のようと表すには白さが足りなく更に先端が灰色、それが完璧でないと彼女の可愛らしさを引き立たせている。遠くはイェラグの民族衣装を身にまとい、他でもない彼女自身しか扱えない神聖な鈴を胸に抱いている写真。

 

「カランドの巫女! そしてシルバーアッシュさんの妹! プラマニクスさんじゃないですか!」

「そうだな」

「そうだな、じゃないですよ!」

 

 エリジウムの懸念も尤もだ。なにせ、彼女もまたレイズさんに劣らず爆弾になり得る存在なのだから。信じがたい事だがカランドの巫女であるプラマニクスは当初、イェラグを『抜け出して』ロドスにやってきた。その事実は当然のように権限処理を施されて守秘義務が科されたが──いつの間にかそれもなくなり当たり前の様に馴染んだ。

 

「怖くて聞きたくないけど……聞いた方が良いよね?」

「尻尾な、触ろうとした事はあったんだ」

「あったんですか」

 

 俺も最初はノーマークだったのだ。そんな奴がいたなくらいの認識だったのだがロドスの功労賞でブランドメーカーの特注服を着ている姿を見て、びびっと来てしまったのだ。──意外とあるな、と。

 毛量、抱き心地はレジェンドに比べると物足りないが、鮮やかな毛並みと冬でも困らない程熱を保っていられる適切な硬度を持っているのだろう。神授の聖鈴よりよっぽど神々しく見える。

 だがいざその用件を伝えようとすると、通路の曲がり角からやってくる殺気と羽ばたき音が、俺の口を閉じさせる。気のせいだろうと思ったが次もその次も全く同じような事があり、更に数日間視界の端に見覚えのある鳥が映りこんだ辺りで俺は『マジ』だと理解した。このまま同じ事をすれば、不幸にも白塗りの真銀斬にめった斬りにされてしまうのは想像に難くない。

 プロファイル上では不仲のはずなのだが、やはり長兄としては気にしているらしい。そして多分、拗らせてる。

 

「その話があってなおここに写真を混ぜられる度胸が凄いね。もしかして、命がストック制だったりする? 一日何回までは死んでもベッドの上で復活します系の」

「俺がそんな化け物なら、とっくに命を使い果たしてくたばってただろうな」

 

 とにかく、これでエリジウムは全ての写真に目を通したことになる。

 

「で、この中なら誰が一番良いと思う?」

「魅力的な、という意味ですよね? 何かさせるわけでもなく、誰に言うでもなく」

「何かしたかったのか? そして、言いふらしてほしかったのか? お前がしたように」

「とんでもない! あれは僕にとって痛恨のミスでした。今では後悔しかありませんよ……で、選ぶとすればそうですねえ……」

 

 机に散らばる無数の写真から一枚を抜き出し、指の間に挟んで俺達へと見せる。

 誰を選んだかは俺達のみぞ知るわけだが、誰にでもわかる確かな事実としては今日まであった不幸な行き違いは解消され、エリジウムと俺は仲間に戻ったという事実だけである。

 

 

 

大陸版で実装されているがこっちでは未実装のオペレーターを出したくなったのでオペレーターのネタバレ上等で出しても良いですか?

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