正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる

ＵＬＴＩＭＡＴＥ

　──シャボンディ諸島。

　海軍本部と王下七武海ＶＳ白ひげ海賊団によるマリンフォード頂上戦争。

　“火拳のエース”公開処刑を発端に起こるその世界の命運を左右する戦いを見届け、また世界に発信しようとそこには大勢の記者、海賊、民衆が詰めかけていた。

　広場に映る映像電伝虫の中継は、まるでこの世の終わりを見ているかのような光景が映し出される。この世の頂点に相応しい常識外の怪物達の戦いだ。

　だが彼らは、そこでとんでもないものを見ることになる。

　七武海バーソロミュー・くまの見た目をした兵器が海賊達を襲う光景に驚いたのもつかの間、空から墜ちてきた怪物や海からやってきた怪物。

「な、なんてことだ……！！」

「うそ……！！」

　氷の壁を壊し、海賊船がやってくる。

　マリンフォードの広場に降り立つのは知らない者がいないほどの大海賊。

　そしてその面子は……昔を知る者からすれば、ある伝説の再来にも思えた。

「社長！！　大変なことに！！」

「クワハハハ！！！　最高だ！！　これはビッグ・ニュース！！！　あの面子は“ロックス”の再来だ！！！」

「は……ロックス……？　し、しかし、映像電伝虫が次々と消えて……」

「それは問題ねェ！！　見ろ！！！」

「！？」

　裏世界の帝王にも数えられるその鳥男はその映像に大興奮し、最高の記事が出せると大喜びする。若い社員達が“ロックス”という名称に頭に疑問符を浮かべ、映像電伝虫が切られることを危惧したが、鳥男は問題ないと称した。

　なぜなら彼は知っていた。取引によって、戦場の映像がくまなくこの場所へ送られることを。

『はーい！！　こちら海軍本部マリンフォード！！　ここからの映像は世界政府と道化のバギーに代わりまして“百獣海賊団”の提供でお送り致しまーす！！！　政府が隠したい不都合なやり方も、凄惨な戦場の光景も、何もかもをそのままを映しますのでどうぞ楽しんでいってね～～！！　以上、新世界のアイドルことぬえちゃんでした～～！！　撮影用ＵＦＯ飛ばしまーす！！！』

「！！　あの少女は……！！」

「“妖獣”だ！！！　元ロックス海賊団の見習い！！　百獣海賊団の副総督にして“百獣のカイドウ”の唯一の兄姉分！！　今回もイカれた生配信が見れるぞ！！」

　突然映像の中に映ったその少女は可愛らしい少女ではあったが、知る人が見れば恐怖でしかない存在。

　だが鳥男は喜ぶ。彼女の配信は刺激的で、彼のジャーナリズムを刺激する。政府によって情報操作の命令が出て記事を伏せてはいても、幾度となくその配信を流してもらい、様々な光景を見させて貰ったのだ。今回の映像も、ジャーナリストとしてこれほど心躍るものはない。

『世界経済新聞社社長“新聞王(ビッグ・ニュース)”モルガンズ』

「何してるお前ら！！　撮れ！！　ビッグニュースの連続！！　情報の“大収穫祭”だぞ！！　見逃すな！！！」

「は、はいっ！！」

　とんでもない状況でも、新聞屋はブレない。──たとえ、自分達と深い繋がりを持つ世界政府が滅びる可能性があろうとも、そのことを喜びシャッターを光らせた。

　戦場となる海軍本部“マリンフォード”では、その怪物達の登場に誰もが顔を青ざめさせていた。

「なぜカイドウがここに……！！？」

「“ビッグ・マム”と小競り合いをしていたハズでは！！？」

「その“ビッグ・マム海賊団”もいるぞ！！」

「“金獅子海賊団”までいるのはどういうことだ……！！？」

　海兵達は突如、安全な筈の広場に降って現れた怪物“百獣のカイドウ”と“妖獣のぬえ”から距離を取り、突然現れた他の四皇や金獅子の船に顔面蒼白になる。

　凍った湾内にいるインペルダウン脱獄囚、そして白ひげ海賊団も同じだった。

「カイドウにぬえがいるぞ……！！」

「っ……あいつら……混ぜっ返しやがって……！！」

「なんだ！！？　今降ってきたデカいの！！　しかも空に船もあるし、ＵＦＯまで……！！　どうなってんだ！！？」

「“四皇”よ麦わらボーイ！！　“百獣のカイドウ”！！　これはマズい事態になってきたッキャブル！！」

「あっちには“ビッグ・マム”の船と“金獅子”の船もおるぞ……！！」

「っ……！！　こんなとこで“自殺”か……！！」

　白ひげ海賊団で彼らをよく知る隊長や白ひげは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、知らない麦わらのルフィは走りながらもちらりと見えた白ひげを超える巨漢の姿を同行したイワンコフやジンベエに問いかける。中でも、ムサシがどうやら訳知り顔であり、舌打ちを漏らしていた。

　そして七武海も──

「カイドウにぬえだとォ～～～～！！？」

「フ……フッフッフッフッ……！！！　とんでもねェな……！！　ここでお終いか？　海軍……！！」

「……！　（カイドウにぬえ……！！）」

「混沌としてきたな……まさかここまでの戦場になるとは……フフ」

「…………」

　わかりやすく、恨みと恐れが混じった表情で声を上げるモリアに、余裕そうに笑いながらも冷や汗をかいているドフラミンゴ。同じく険しい表情を浮かべているハンコックが目立つ。くまは何も発さず、ミホークは未だ冷静だがその戦場の推移を見て、僅かに笑みを浮かべていた。

　そして、再び海軍が反応を見せる。一度広場へと戻った海軍大将や処刑台にいるセンゴク、ガープ、そして死刑囚であるエースらが一番近くで彼らを見ることになる。誰もが背筋に冷たいものを感じていた。

「おいおい……マジかよ……！！」

「こりゃあ……まいったねェ～～……！！」

「っ……！！　おんどりゃあ……何しに来たんじゃあ！！！　おのれらァ！！！」

「これは……まさか“ロックス”の再来か……！！」

「……！！　貴様ら……！！！　一体何をしに来た！！！　答えろ！！　カイドウ！！！」

　赤犬やセンゴクが怒りを込めて問いかける。広場の中心より少し右側。そこに墜ちてきたカイドウといつの間にか近くにおり、そのカイドウの肩からひょっこりと顔を出しているぬえは、大勢の海兵に囲まれながらも動じている様子はない。カイドウが、センゴクの方を向きながら問いに答える。

「ウォロロロ！！！　見てわからねェか？　てめェら海軍が白ひげ海賊団と戦争をする……その戦争を終わらせに来た！！！」

「──マ～マママ！！！　そうさ！！！」

「！！」

　カイドウの言葉を引き継ぐように、マリンフォードの左方。轟音と共に広場へと現れるその怪物は白ひげ、カイドウと肩を並べる“四皇”の１人。

「パーティだ♪　パーティ！！」

「全員殺す♪」

「白ひげと海軍♫」

「みんな殺す！！」

「戦争の始まり♫　甘～～～いひととき♫」

　歌を歌いながら行進するのは人間ではない様々な生命体。それらを率いる巨大な老婆こそ魂を操る怪物。

「──この戦争を終わらせて、おれ達の戦争を始めるのさ！！！　センゴク～～～白ひげェ～～～～！！！」

「び……“ビッグ・マム”だァ～～～～！！！？」

　一撃で破壊したパシフィスタを広場の海兵達に向かって投げ入れ、そう告げたのは“四皇”ビッグ・マム海賊団の船長シャーロット・リンリン。

　だがそれでは留まらない。空に浮かぶ島の様なその船から、１人の男が姿を現す。

　彼は葉巻を咥えたまま、海兵達や白ひげ海賊団を見下ろして不敵な笑みを浮かべた。

「早ェ話がだ！！　センゴク！！　ニューゲート！！　おれ達の意見が、奇遇にも一致してな……ジハハハ……！！　それぞれの野望を完遂する前に……まずは邪魔なてめェらを“排除”することにしたのさ！！！」

「！！？」

「お、おい……それってまさか……！！！」

　大海賊時代以前の伝説の海賊。金獅子海賊団の大親分“金獅子のシキ”がそう口にしたことで、海兵、海賊、民衆と誰もがその“最悪の可能性”に行き着く。

　三大勢力とは、“四皇”同士が対立しあうからこそ均衡が保てる。

　誰もが人の下にはつけない性格で、誰もが異なる信念、野望、性格の不一致があるからこそ協力出来ず対立し合う。

　だがその対立がなくなれば──どうなるかは子供でもわかる。

「そうだ！！　おれ達“百獣海賊団”と──」

「──“ビッグ・マム海賊団”とォ！！」

「──“金獅子海賊団”はァ！！！」

　海賊の親玉達が言う。この世を絶望させる宣言を──

『“白ひげ海賊団“と“海軍本部”を滅ぼすために──“海賊同盟”を結ぶことにした！！！』

「！！！？」

　──全世界に告げた。

「いえ～～～い！！！　そういう訳で、全員ぶっ殺すからよろしく～～～♡」

「……！！　おそらく、ぬえが計画しやがったな……！！」

「“カイドウ”と“ビッグ・マム”は犬猿の仲……！！　“金獅子”や“白ひげ”も含めて……元“ロックス海賊団”の連中は誰もが仲が悪かった……！！　その例外は１人……ぬえ！！！　貴様の仕業だな！！？」

「あはははは！！！　仕業って……買いかぶり過ぎじゃな～い？　私はちょっと同窓会でもしようかなって計画立てて調整役になっただけなのにさぁ。偶然、都(・)合(・)の(・)い(・)い(・)会(・)場(・)がここだっただけだよ～？」

　私が紙吹雪をパラパラと撒きながらその宣言を喜んでいると、湾内の方で“白ひげ”がそれを推測し、処刑台の方からセンゴクが私に怒りの形相で問いかけてきたので私は笑って遠回しに肯定してやる。確かに、一時的に同盟を組んで、海軍本部と白ひげ海賊団を潰さないかという提案をカイドウにしたのは私だ。

　とはいえ、決めたのはカイドウだし、リンリンだし、シキ。元々私達は戦争に参加するつもりだったので、とりあえずリンリンに協力しないか、あるいは攻めてる間に攻め込んでこないでねと交渉しに行ったら、カイドウとリンリンが殺し合いを始めたのでそれを静観。結果、一日戦いあった末に私も割って入って協力することを決める。

　その後はシキ。態々シキのアジトがあるメルヴィユという島に行って持ちかけた。いや～スケジュール調整が大変だったよね。私は他にもやりたいことがあったから、楽園と新世界を行ったり来たりする羽目になった。

　まあその甲斐あってか、同窓会が実現。白ひげと海軍を滅ぼすまでとはいえ、これが成立したのは中々に奇跡だ。上手くいけば、戦争が終わった後も同盟を維持出来るかもしれない──まあそれについては解消されようがどっちでもいいんだけどね。

　実際、カイドウとリンリン、シキは完全に仲良くなったという訳ではない。互いにメリットがあるから組んだというだけだ。皆海軍は邪魔だと思ってるし、白ひげの首は欲しがってる。

　だからこそ、その二勢力を潰すための“海賊同盟”だ。態々同盟を組み、赤髪を足止めし、私達の所有する移動する空島を用いてまでここまでやってきた。

　上手くいけば、このまま世界政府まで潰すことが出来ると私達はほくそ笑む。そうなった先の世界こそが、私達の理想。

「おれ達にとっちゃあ“火拳のエース”処刑なんぞどうでもいい話だ！！！　“火拳”共々……白ひげ海賊団と海兵を！！！　この地で皆殺しにし！！　世界政府を滅ぼす！！！」

「そうすればこの世界は海賊の世界になる！！！　おれ達の理想も近づくってものさ♡」

「海賊は海の支配者だ！！！　バカな天竜人や海軍には勿体ねェ！！！」

　謳い上げるのは私達の思想。海賊によるこの海の“支配”。

　それぞれの道を行こうとも、それが共通するがゆえに私達はここに、再び集った──今度こそ“世界政府”を滅ぼし、自分達だけの“儲け話”を成就させるために。

　宣言する。私が細工した映像電伝虫はシャボンディ諸島や幾つかの国、私達のナワバリにも繋がっている。全世界とまでは行かないが、見られなかった者もシャボンディ諸島に集まった記者達によって世間に拡散される。私達の野望を、知らなかったとは言わせない。

「ひいては──これを聞いている各国の王！！　市民共も覚悟しろ！！！」

　海賊の世界を作るために。

「この“頂上戦争”で“海軍本部”は跡形もなく消え去る！！！　海賊からお前らを守る者は誰もいなくなるだろう！！！」

　“恐怖”と“戦争”に満ちた──“暴力”が絶対の価値観となる世界が作られる。

　そこに君臨するのは…………私達だ！！！　

「今日のこの日──この“偉大なる航路(グランドライン)”を本当の意味で海賊の“楽園”にする！！！　４つの海も同じだ！！！　海軍が滅べば海賊の支配となる……それを拒むというなら誰であろうと殺すしかねェ！！！」

「──さあ行くわよあんた達！！！」

「ウオ～～～！！　海兵も白ひげも皆殺しだァ！！！」

　私達の野望に賛同した部下達がそれぞれの牙を手に広場へと降り立つ──さあ戦闘開始だ。

「最強と言われた海賊“白ひげ”も死ぬ！！！　見てろ平和を愛するバカ共！！！　本当に“最強”なのは誰か──今ここではっきりとさせてやる！！！！」

「ウオオオオオオ～～～～～！！！　最強はおれ達、“百獣”だァ～～～～！！！」

　──そして、私達は動き出す。

　だが動き出すのは当然──私達だけじゃない。

「ハ～ハハマママママ！！！　海兵と白ひげ海賊団を皆殺しにしてやりなァ！！！」

「はいママ！！」

　私達とは反対側の広場に降り立つビッグ・マム海賊団。

「ジハハハハ！！！　さあ行くぞ！！！　Ｄｒ．インディゴ！！　準備は？」

「ええ、手筈通りに。白ひげ海賊団の後方に放ちます」

「よし、なら攻め入るぞ！！　お礼参りしてやる！！！　覚悟しな“白ひげ”！！！　海軍！！！」

　白ひげ海賊団の背後。宙に浮かぶ船団から金獅子海賊団。

　そして湾内では──

「！！！」

「うお！！？」

　突如、残っていた氷の壁を地震の力で完全に破壊し、白ひげはその巨大な薙刀──最上大業物“むら雲切”を手にする。

「この戦場は……紛うことなき“死地”だ。逃げてェ奴は逃げて構わねェ。おれは行くが、おれと共に来るなら──」

「オヤッさん……！！」

　そして覇気の籠もった声で忠告した。

「──命を捨ててついて来い！！！」

「っ……ウオオオオオオオオ～～～～！！！」

「そうだ！！！　四皇がなんだってんだ！！！」

「おれ達はエースを見捨てねェ！！！　必ず助け出す！！！」

「邪魔ァするなら誰だって容赦しねェぞ～～～！！！」

「全てを薙ぎ倒して……エースを救出しろォ～～～！！！」

　だが──誰もが……恐れて逃げても恥ではないというのに……逃げる者はいなかった。

「……！！　誰が相手だろうと……」

　そして海軍も──

「易々と滅ぼされる訳にはいかんのだ！！！　ここは世界中の正義の戦力の中心！！！　我々がここからいなくなったら……誰が民を守る！！！　“仁義”という名の“正義”は決して滅びん！！！」

「センゴク元帥……！！」

「……！！」

　処刑台に立つ海軍本部元帥センゴク。“君臨する正義”を掲げる男が、１人の海兵として告げる。

　もはや逃げることは叶わないと察しているのか。いやあるいは……センゴク達、一部の者だけは残るつもりなのか。

　センゴクほどの男がこの状況を見て正面衝突を選ぶのか。退けない状況とはいえ限度もある。不利と分かれば退くことを選ぶことも出来る将。

　ならばやはり──当たった後で撤退を選ぶのが濃厚だ。

「引く訳にはいかん！！！　早急に“火拳”の処刑を執行し……海賊共を撃退する！！！」

「！！　……はっ！！！」

　だが──覚悟は決まっていた。

　誰もが……そう、“覚悟”を決めた者達。

　自らの意志のために自分の命を賭け、相手の命を奪う覚悟を持っている。

「さて……私も……昔とは違うってとこを見せてあげる！！」

　３６年前のように……本物の猛者だけが集った死地“頂上戦争”。

「“覚悟”を決め、死の恐怖を忘れた者達よ！！！　正体不明の飛行物体(だんまく)に怯えて死ね！！！」

　それが今──よ(・)う(・)や(・)く(・)始(・)ま(・)っ(・)た(・)の(・)だ(・)。

　三日月型の湾内に出来た氷の大地では、海兵と白ひげ海賊団、インペルダウン脱獄囚に王下七武海と様々な勢力が入り乱れていた。

　だが彼らは一様に気にする──左右の湾港から侵入する別の海賊達のことを。

「ハァ……なんかやべェぞ！！　早くしねェと！！」

「ああ！！　このままじゃエースさん救出どころではなくなる！！　だがオヤジさんも動いた！！　ルフィ君、急いで突破せにゃならんぞ！！」

「ああ！！」

「どくッキャブル！！　“ＤＥＡＴＨ　ＷＩＮＫ(デス・ウィンク)”！！！」

　エース救出に動く麦わらのルフィ、海侠のジンベエ、イワンコフらは目的は変わらず、白ひげ海賊団と共に湾内の突破を目指す。

　だが他にも別の目的を持つ集団がいた──インペルダウンの脱獄囚を束ねる男“道化のバギー”と囚人達だ。

「キャプテン・バギー！！　ヤバいですよあれ！！　四皇が白ひげ含めて３人！！」

「しかもあの“金獅子”までいます！！　このままいけば……！！」

「ああ……やべェ……！！　ヤバすぎる……！！　こんなところにいちゃあよォ……！！！」

　バギーは戦慄していた。“白ひげ”となぜか一時的に手を組み、囚人たちに持て囃されて有頂天になっていたが、そんな時に現れた四皇、“百獣のカイドウ”に“ビッグ・マム”。おまけにあの“金獅子”ときている。

　こんなところにいれば命はない。ならばもう、何を捨てても逃げるしかないと思った直後──同じ様にヤバさを感じてる筈の囚人達が声を震わせながら言う。

「このままいけば……“カイドウ”と“ビッグ・マム”の首が取れますよ！！！」

「──へ？」

「な……まさかキャプテン・バギー！！　アンタ……この状況で海軍はおろか“四皇”をほぼ全員討ち取ろうってのか！？」

「“白ひげ”と一時的に手を組んだのも結果的には……ハッ！！　まさかアンタ、この状況まで読んで！！？」

「あの“仏のセンゴク”すら読み切れなかった“百獣”や“ビッグ・マム”の参戦を読んでいたって言うのか！！」

「“伝説の船員”は恐れを知らねェんだな！！　さすがはキャプテン・バギー！！」

「お前らはどんだけ期待しとるのガネ！！！」

　囚人たちの過剰な持ち上げっぷりにＭｒ．３がツッコミを入れる。正直、こんなとこでギャグやってる場合ではないのだが、下手に動くことも出来ずにとりあえず攻撃を避けることに集中する。

「お、おいおいてめェら……さすがにもう──」

「ジハハハハ！！！　誰かと思えば……てめェロジャーんとこの赤っ鼻じゃねェか！！」

「あァ！！？　誰が赤っ──って、金獅子ィ～～～～～！！？」

　赤っ鼻と呼ばれ、条件反射的に怒声を浴びせようとしたら──その声の先の空に浮かぶのは足に刀、頭に舵輪が刺さった金髪の獅子にも例えられる男、“金獅子のシキ”。

「なるほど……てめェもロジャーの息子を助けに来たってところか？」

「っ……！！　お、おう！！　今は“白ひげ”と同盟組んでんだコノヤロー！！！　（もうダメだ死ぬ死ぬ死ぬ……！！！）」

　バギーは内心で泣いた。咄嗟に白ひげの名前を出して相手をビビらせようとしたが、よく考えたらその程度で臆する筈もないし、逆効果だ。白ひげの味方と言ってしまえば、金獅子は攻撃してくる。このままではマズいと、そう思っていたが──

「ほう……奇遇だな。おれも実は、考えがあってな──ん？」

「へ……？　うおおっ！！？」

「！！！」

　その途中、シキが何か考えをバギーに明かそうとしたその時、衝撃が大気を走ってきた。大地を揺らし、海を揺らすその莫大なパワーを持つその攻撃を放てる男は湾内には１人しかいない。

　シキはなんとかそれを躱しながらその相手をニヤリと見て声を掛けた。実に２０年振りの再会だ。

「ジハハハ！！！　急なご挨拶じゃねェか“白ひげ”！！！　元仲間じゃねェか！！　昔みたいに一杯やろうぜェ！！」

「フザケたこと言ってんじゃねェぞ“金獅子”ィ！！　先に攻撃してきたのはてめェの方だろう！！！」

「おお……そうか。ところで……ロジャーの息子は助けられそうか？　なんならおれが手を貸してやろうか？　ジハハハハ！！！」

「……！！　今はてめェの相手をしてる暇はねェんだよアホンダラァ！！！」

「お前になくてもおれにはあるんだよ！！！」

「！」

「船が浮いたぞ！！　金獅子の能力か！！」

　金獅子がそう言うと、既に触れていたのか軍艦の一隻が浮き上がり白ひげに向かって叩き落される。シキやシキが触れたものを浮かせるフワフワの実の能力だ。軍艦など幾らでも浮かせて叩きつけることも可能だし、その程度はまだまだ序の口というレベル。いわば白ひげへの挨拶代わりの攻撃であり、白ひげが当然の様に軍艦を砕いてそれを防ぐのも読めていた。

「読めていたぞ“白ひげ”！！　その首を置いていけ！！」

「！」

「ジョン・ジャイアントだ！！！」

　そしてここは幾つもの勢力入り乱れる戦場。金獅子の攻撃に対応した白ひげの隙を突こうと海兵が攻撃を仕掛けてくるのも当然の事だった。海軍本部中将にして巨人族初の海兵ジョン・ジャイアントが巨大な刀を持って斬りかかってくる。

　だがそこにはまた乱入者が現れた。雲に乗って現れるそれはおかしの国を治める怪物。

「ママママ！！　相変わらず“家族ごっこ”が好きなのかい！！？　“白ひげ”ェ～～～～！！！」

「！！？　“ビッグ・マム”だ！！」

「危ない！！　避けろォ～～～～！！！」

「食らえよエルバフの槍……！！！」

　四皇の１人“ビッグ・マム”ことシャーロット・リンリンが己のソルソルの実の力で生み出した特別な“魂”。雷雲ゼウスに乗って剣を振りかぶった。そのとんでもない攻撃の気配に、白ひげ海賊団も海兵も全力でその場から飛び退く。間にいたのはジョン・ジャイアントだった。

「“威国”！！！」

「！！？」

「ジャイアント中将～～～！！」

「うおァ！！？」

　剣を振ったその衝撃波はジョン・ジャイアントを一撃で貫き、それでもなお進行上にある全ての障害物を削ぎ落としながら進み、地震の力を込めた白ひげの薙刀によってようやく止められた。

「悪いが、お前の息子達は全員殺させてもらうよ！！　義理の息子なんだから別に構わないだろう？　ウチと違ってな！！　ハ～ハハハマママママ！！！」

「リンリン……！！！」

「ハァ……ハァ……今の技……巨人族のおっさんの技に似てるな……！！」

　白ひげが眉を立て、ビッグ・マムを睨む。そんなことは絶対に許さないという目だ。ルフィもまた、その余波によって軽く足を止め、前に見た巨人の技に似ていると不思議に思う。

　──そして湾内が荒れる中、広場では海兵達が更に慌ただしく動いていた。

「隊を３つに分けてそれぞれ左右の“百獣海賊団”、“ビッグ・マム海賊団”！！　中央は“白ひげ海賊団”と“金獅子海賊団”に対応しろ！！！　作戦の準備を急げ！！！」

「はっ！！」

　センゴクの指示により海兵達が海賊の撃退に動く。

　中でも海兵達の戦意が強く、同時に恐れも強く抱くのは処刑台から見て右側の広場──百獣海賊団側の戦場だ。

「あれがぬえだ！！　ゼファー先生の仇を取れ！！」

「油断するな！！　見た目は少女とはいえ怪物だぞ！！！」

「カイドウもいる……！！　一瞬の油断が死に繋がるぞ！！　気をつけろ！！」

　海兵達がカイドウとぬえを囲み、戦意を強くする。全ての海兵を育てた男ゼファーを殺したのはカイドウの側で浮いているぬえであり、多くの海兵がぬえに敵意を向けていた。

　だがぬえはそんな海兵達の恨みをけらけらと嘲笑う。

「その節はどうも！！　大事な恩師の生首のプレゼントは喜んでくれたかな？　あはははは！！」

「貴様ァ！！」

「あらあらそんなに怒っちゃって……でもまあ安心して！！　あなた達全員……ゼファーと同(・)じ(・)場(・)所(・)に送ってあげる！！！」

「ウォロロロ！！　全員殺してやる！！！　行くぞぬえェ！！！　暴れるぞ！！！」

「ええ！！　──さあどれだけ避けきれるか見せてもらうわよ！！！」

「！！　カイドウとぬえが動いたぞォ！！！」

「！？　ＵＦＯが……！！」

　カイドウの肩から飛び上がり、空へ浮かんだぬえはＵＦＯを生み出して海兵と海賊、全てを狙うために赤いＵＦＯをまずは動かした。

「“正体不明”……“忿怒のレッドＵＦＯ襲来”！！！」

「！！？」

「うあああああっ！！」

　赤いＵＦＯが列を成し、炎弾の雨を地上へと降らせ、敵を襲う。一つ一つのＵＦＯの攻撃力はそれほどではないが、その数は脅威だ。空に浮かんでいることから落とすことも難しい。

「消し炭になれ……！！！」

「！！　マズい！！　全員退避～～～！！！」

　だがそれよりもマズい事態が迫る。

　カイドウが変身し、ぬえと同じ様に宙へと浮かんだ──が、その姿は巨大で圧倒的にわかりやすく恐ろしい。

「空に巨大な龍が……！！」

「なんだあれェ！！？　メチャクチャでけェぞ！！？」

「カイドウじゃ……！！！」

　湾内からも──マリンフォードの全ての場所からでもわかるその巨大な体躯はルフィも含めた初見の者を大きく驚かせる。

　その姿だけでも本能的に恐怖が呼び覚まされ、戦意を喪失してしまいかねないものだ。この世の“最強生物”。その名に恥じない龍の姿のまま、カイドウは地上へ向かって大きく息を吸い込み──そのまま吐き出す。

「“熱息(ボロブレス)”！！！」

「！！？」

　瞬間、極大の熱線が多くの海兵を巻き込み、海軍本部の城塞に穴を空ける。

「城塞に穴が……！！」

「化け物だ……！！　ＵＦＯの攻撃も止まらない……こんな相手、どうすれば……！！？」

　広場でそれを見上げて震える若い海兵──コビーやヘルメッポらはただただ恐れるしかない。

　これが“最強生物”。“百獣”と呼ばれた男。

　これが“最恐生物”。“妖獣”と呼ばれた女。

　その実力は一瞬で彼らの脳に嫌というほど刻み込まれた。並の者では相手にならないと。

　だがここに集まったのは海軍本部の精鋭。手をこまねく者だけではない。中将クラスを中心に、彼らも反撃に出ようと“月歩”を用いて空のＵＦＯやカイドウを相手にしようとする。

「怯むな！！　あれだけ的が大きいなら攻撃を当てることは難しくない！！　少しでも削れ！！　消耗させろ！！」

「おお！！」

「──そういうことだよねェ～～」

「黄猿さん！！」

　ピュン──と、レーザーがＵＦＯを貫き、カイドウの身体に当たって爆発する。

　ＵＦＯは大破して消えたが、カイドウはその攻撃を受けて傷は負わずともギロリと黄猿を睨んだ。ぬえもまた、懐かしい顔に顔を綻ばせる。

「黄猿か……その程度のレーザー、おれには効かねェぞ……！！」

「ボルサリーノじゃん。あはは、また貧乏くじ引かされたの？　可哀想だね～♡」

「経験があるからねェ～～……こうなるのは必然ってことだよ全く……！！」

　海軍本部の最高戦力の１人。黄猿が飄々とした様子で言葉を交わす。だがその態度ほど余裕ではない。額に僅かに汗を掻いているのがその証拠。

　何しろ黄猿は中将時代、百獣海賊団と交戦し、手痛い傷を負っている。その時の傷が疼き、嫌でもその時のことが思い起こされるのだ。

　だがそれでも戦った経験がある。ゆえに百獣海賊団の相手を自ら買って出たのだ。

　ぬえもそれを知った上で楽しそうに獣の目を浮かべて笑うが……しかし、ぬえはそこから距離を取った。

「なるほどね～♡　でも悪いけど──私は先に挨拶したい相手がいるからさ！！　ちょっとカイドウや私のＵＦＯと遊んでてよ！！」

「！！　“妖獣”が移動し……湾内に！！」

　黄猿を無視し、カイドウからも離れてぬえは高速で空を行き、湾内へと向かっていく。一直線に向かったその先にいるのは“白ひげ”だ。呼びかけながら槍を構える。

「久し振りだね！！　“白ひげ”～～～！！！」

「！　ぬえ……！！」

「あはははは！！　隙あり～～～！！！」

　白ひげもそれに気づいて対応しようとする。

　だがその直前、それを防ごうと同じく空を飛んで割って入った者がいた──白ひげ海賊団の１番隊隊長“不死鳥”マルコだ。

「ぬえ……！！　オヤジはお前なんかの相手をしてる暇はねェよい！！」

「あ、マルコ～～～！！　久し振り～～～！！　さすが“不死鳥”。相変わらずのずるい能力だね！！」

「おめェに言われたくはねェよい！！」

　ぬえの一撃を受け止め、しかし再生しながらぬえを止めてみせたマルコにぬえがその実力と能力を褒めるが、マルコとしてはこの相手に言われる筋合いはないと言い返した。

　だがその直後──

「マルコ隊長！！　危ねェ！！！」

「ん！？　──っ！！？」

　眼下の氷上にいた白ひげ海賊団の船員がマルコに呼びかけたその直後、マルコは横から蹴り飛ばされ、氷上へと勢いよく叩き落された。

「！！　アイツは……！！」

　それを為したのはぬえではない。ぬえやマルコよりも大きな黒い姿で、その背に炎を背負っている。そして誰もが知る古代の生物のシルエット。その男が地上へと降り立ち、マルコ達白ひげ海賊団の前に立ち塞がる。彼の名前を、白ひげ海賊団や海兵が呼んだ。

「プテラノドンの姿……！！　間違いねェ……百獣海賊団の“大看板”……！！　“火災のキング”だ！！！」

「……！！　キング……てめェ……！！」

「──フン。“不死鳥”マルコ……お前は厄介だ……早々に消させて貰う！！！」

　黒い翼に炎を背負う６メートルを超える巨漢は、百獣海賊団が誇る最高幹部、カイドウの懐刀の１人、大看板“火災のキング”だった。

　ぬえの邪魔をしようとしたマルコを見て、プテラノドンの姿で横からマルコを蹴りつけた男は氷上へと降り立ち、マルコと対峙する。それを見たぬえが顔だけを向けてキングに命令する。

「あはは！！　それじゃ色々と任せたよキング！！！」

「──そういうワケだ。ぬえさんの邪魔はさせねェ」

「……！！　だったら……止めてみろよい！！！」

　マルコが氷となった地面を蹴りつけ、青い炎と共にキングに向かって飛び蹴りをお見舞いすると、キングも腕でそれをガードした。赤い炎が轟々と燃え盛り、青い炎と激突する。

　そしてその間にぬえは“白ひげ”の元へと到達した。

「！！！」

　ぬえが覇気を込めて槍を振るい、白ひげも薙刀に覇気を込めてそれを受け止めた瞬間──天が割れる。

「天が割れた！！」

「クソ！！　オヤジが狙われた！！」

「“妖獣”も“覇王色”だ！！　気をつけろ！！」

「……！！　あいつ……前に船で見た……！！」

　白ひげ海賊団の船員や麦わらのルフィが驚く。前者はその実力を再確認し、後者は以前見た少女であることに。

　それらを全て無視し、ぬえと白ひげは久し振りに言葉を交わした。

「ん～～良いパワー♪　──だけど、少し衰えちゃったんじゃない？　“白ひげ”～～～♡」

「っ……誰に言ってんだアホンダラァ！！　おれの実力を計るなんざ百年早ェぞ、ぬえ！！！」

　白ひげの覇気とぬえの覇気が轟音を響かせ、衝撃波を撒き散らす。白ひげは苦い表情を浮かべ、ぬえは本気の時に見せる獣の目を赤く爛々と輝かせながら不敵に笑みを浮かべていた。

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新聞王→この状況で大喜び出来る強い鳥。地味に腕っぷしも強い。
中継→細工済。ここからの戦いは全てシャボンディ諸島に全て映されます。
七武海→大体ビビってる。例外はミホーク
インペルダウン組→ルフィ視点だと初登場多し
海軍→ヤバすぎて草も生えない。エース処刑をしつつもどうにか海軍を生き残らせるためにセンゴクが考え中
白ひげ→エース救出を諦める訳にはいかないので一点突破狙い。ただし色んな奴に狙われてる人気者
海賊同盟→最強勢力爆誕。戦争後に継続するかは未定
金獅子→何か狙いがある。バギーを覚えてた。白ひげ海賊団後方から参戦。
ビッグ・マム→相変わらずの怪物ババア。ジョン・ジャイアントを殺しました。湾港左側、ホワイティ・ベイが突破した辺りから参戦。
百獣→演説が上手い。右側、オーズが突破した辺りから参戦だけどカイドウとぬえは更に奥の広場の方に墜ちてきた。
キャプテン・バギー→百獣とビッグ・マムと金獅子の首を……！！？
ぬえちゃん→パーティの幹事。ＵＦＯは集団戦だと強すぎる。本気モード可愛い
麦わらのルフィ→空気だけどしゃーない。次回以降に期待してください

ということで遂に戦争が始まりました。ちょいちょい死者が出ます。今更ですが心構えをしといてください。次回はまた戦争。というかしばらく戦争パートなので次回予告もへったくれもない。どんどんキャラが出てきますのでお楽しみに

感想、評価、良ければお待ちしております。