正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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科学帝国

 ──世界政府が崩壊して数ヶ月。

 “偉大なる航路(グランドライン)”後半の海、“新世界”は最もその煽りを受けていた。

 

「戦争だ!! 武器を取れ!!!」

 

「負ければ未来はない!! どんな手を使ってでも勝利を勝ち取るのだ!!!」

 

「ちくしょう!! あいつら……やりやがった!!」

 

 幾つもの国が戦争を起こし、争いの輪に巻き込まれていく。

 火種は幾らでも転がっており、安定を失った海では容易に争いが起きる。

 ある者は自らの欲望のため──またある者はやられたからやり返す。

 善良な国同士ですらどっちがやった、やられたの水掛け論。実際は第三者に仕組まれた戦争だとしても……それに気づくことの出来ない彼らは怒りと大義を胸に武器を手に取り、結果自国民を含めた幾つもの血が流れる。

 自分の大切なものを守るためには“力”が必要であり、新世界の人々は自然と力を求め始め、その流れによって必然的に裏社会が活性化する。

 莫大な“金”……非人道的な“兵器”……海賊の“戦力”……求めるものはそれぞれ違うが、もはや誰もが躊躇う余裕はない。

 かつて“闇”であったシンジケートは表となり、新世界において堂々と取引を行い始める──そんな中“闇の科学”の拠点となる島があった。

 

「ウッ……相変わらず嫌な臭いがしますね……」

 

「──有毒物質によって腐敗した植物や土の臭いだ。もはや有毒物質はないそうだが、腐った臭いは相変わらずみてェだな……」

 

 腐敗した土を踏みしめ、島の奥へ歩いていく一団がある。

 誰も彼もが共通した特徴を持つ集団で、彼らは確信した足取りでないはずの建物へと向かいながら島について口にしていた。遠くの林から空へ飛び出てくる2体の異様な生き物を見て声を出す。

 

「……! 船長……あの生き物……」

 

「ああ……“(ドラゴン)”と“キメラ”だな……かつてこの島の護衛用に“Dr.ベガパンク”が作り出した生き物」

 

「グロロロロロ!!!」

 

「グオオオオオ!!!」

 

 空を飛び、互いに争い合う空想上の生物を見て先頭に立つ男が呟く。

 見える生物は確かにいない筈の生き物。翼と鱗を持ち、誰もが想像するその特徴的なフォルムの“(ドラゴン)”と、鳥の羽に獅子の頭、蛇の頭となっている尾など複数の動物の特徴を持つ異形の“キメラ”。どちらも人為的に作られた生物。

 その2体は集団に気づき……だが先頭の男に気づいた途端に背を向けて離れていく。凶暴な生き物だが生物としての本能には逆らえない。先頭の男がつまらなそうに鼻を鳴らす。

 

「もっとも……恐れる必要はねェ。自分より圧倒的に強いと見れば逃げ出す。そこらの獣と変わりゃしねェ」

 

「は……しかし、あの姿は分かっていても肝が冷えますね……まさか擬似的とはいえ再現出来るとは……」

 

「フン……()()()()()()に比べりゃ微塵も怖さを感じねェがな……さっさと行くぞ。その“本物”を待たせるワケにはいかねェ」

 

「はっ!!」

 

 先頭の男が煙草を吹かしながら命令すると部下達が男の後に続く。目の前に建つ研究所に足を踏み入れ、今度はカツカツと足音を響かせながら歩く。

 そこは元、世界政府の研究施設。世界最大の頭脳を持つ男“Dr.ベガパンク”がリーダーを務めていた科学班の研究所であり、多くの兵器や薬物の実験を繰り返していた曰くつきの島だ。

 そしてこの一団にとっては因縁深い施設でもあり、今となっても取引を行っているとある科学者の研究施設として関わりのある場所。

 だが彼らがやってきたのはその科学者や、ましてやその科学者を表向きに雇っている“仲買人”のためでもない。彼らの──先頭に立つ前を開けた赤いスーツ、角付きの赤いヘルメットの彼が言うことを聞くのはたった2人しかいない。

 

「──戻ったぜ」

 

「ムハハ!! 来やがったな、フーズ・フー!!」

 

「! クイーン……!! なぜお前がここにいやがる!?」

 

 1人はここにはいない海賊団の総督。そしてもう1人はここにいる副総督。彼は副総督の頼みで任務を受け、ここに戻ってきていたが……研究所の一室。寛ぐことの出来る広々としたその部屋に辿り着くなり、目障りな巨体が見えて思わず声を大きくする。

 3メートル強の長身である彼に対し、もう1人の男は8メートルを超える巨漢だった。どちらも、この新世界の海を支配する“四皇”百獣海賊団の幹部。

 

『百獣海賊団大看板“疫災のクイーン” 懸賞金18億2000万ベリー』

 

「ム~ハハハ!! おれの兵器の実験だ。おれが立ち会うのが自然だろう!! 相変わらず生意気な奴だぜ!!」

 

『百獣海賊団“飛び六胞”フーズ・フー 懸賞金8億2800万ベリー』

 

「チッ……うざってェ……言っとくが、おれはぬえさんの命令を聞いてやったんだ」

 

「ん~? 飛び六胞のお前が大看板のおれ様に従うのは普通だろう!! それを理解して態々引き受けてくれたんじゃねェのか? ムハハ」

 

「ぬえさんの頼みじゃなきゃ誰がてめェの趣味の悪い兵器の手伝いなんかするかよ」

 

 大看板のクイーンと飛び六胞のフーズ・フー。地位はクイーンの方が高いが、フーズ・フーは大看板の座を狙う外様の野心家であり、飛び六胞で1、2を争う実力を持つ。クイーンとも対等に口を利き、ぞんざいに扱った。

 

「言っとくが、次の金色神楽で行われる“百獣杯”にはおれも当然参加する。おれに指名されねェよう精々言動には気をつけな」

 

「おれを狙う気か? ムハハ……別に構わねェが、大看板になりたいならキングのカスにしとく方が賢明だぜ。おれと戦うと取り返しのつかないことになりかねねェからな!!」

 

「ハッ……相変わらず減らねェ口だ」

 

「お前が言うんじゃねェよ──「紅茶をお持ちしました~♡」おお、悪いな……って熱~~~っ!!?

 

 そしてクイーンもまたフーズ・フーの生意気な口を受け止め、自信たっぷりに不敵な笑みを浮かべるが……途中、横から紅茶の入ったカップを渡され、そのまま口を付け、その熱さに吹き出した。失敗ではなく、明らかな悪意のあるイタズラだが、こんな場所で百獣海賊団の大幹部であるクイーンにイタズラを仕掛ける度胸のある者など1人しかいない。いつの間にか隣にいたその人物にクイーンは全力でツッコミを入れる。

 

「って、何してんすかぬえさん!!」

 

「あはははは!! 引っかかった~~!! どう? 私の摩訶不思議科学!! 熱く感じるけど実際に温度は高くない紅茶!! 実験は成功ね!!!」

 

「……ん? 言われてみりゃあ確かに舌ももう熱くねェ……って、絶対科学じゃねェだろそれ!!

 

「いやいやいや、今の私は……天才美少女科学者ぬえちゃん!!! 正体不明の科学で人々に恐怖を与える世界一可愛い科学者よ!!!」

 

 ビシッとその場でポーズを取って見せるのはこの場にいる面々で最も偉い、百獣海賊団の副総督。フーズ・フーに命令を出した張本人である封獣ぬえ……なぜか丈の長い白衣と眼鏡を身に着けた大海賊だ。

 それを見てクイーンとフーズ・フーは軽く汗を掻き、何とも言えない表情になるが……反応しなければ始まらないため、仕方なく反応する。この場には部下達もいない。別の部屋や部屋の外で待機しているため、自分たちがリアクションするしかないのだ。

 

「……その衣装は……新しいやつっすか?」

 

「! そうそう!! 新しいやつ~♡ 今度科学者とかサイバーな雰囲気をテーマにしたアルバムも出すからね!! そのジャケット写真や購入特典のミニ写真集を撮ろうと思ってロケしに来たの!! ──ってことでフーズ・フー。写真は撮ってきた?」

 

「ああ……部下に撮らせたが……兵器の実験経過を確認するためだと思ってたぜ……」

 

「いや、それもあるよ? でもついでだから、化学兵器で苦しむ人々を表紙裏や見返し、奥付の部分に差し込もうと思ってね!! その方が終末感があって良くない?」

 

「ああ、なるほどな……」

 

「ふふん♪ 海賊業とアイドル業どっちもこなせて、しかも私も楽しめるなんて最高だよね。一石三鳥~♡ ありがとね~♡」

 

「…………」

 

 フーズ・フーが手渡した写真──化学兵器で苦しむ人々と滅んだ島を映した写真を見て機嫌よく白衣を翻して喜ぶぬえを見て、フーズ・フーは畏怖する。たかだか写真を数枚撮るためだけに、島1つを滅ぼした。その圧倒的な力を持つがゆえに実現出来る悍ましい所業とそれを楽しめる他の追随を許さないイカれっぷりはフーズ・フーが従うに値するものだ。アイドル活動についてはあまり理解が出来ないが、その強さと恐ろしさはフーズ・フーも他の船員同様尊敬している。上と明確に認める2人の内の1人だ。

 だからこそ、その側近である“大看板”になれればいい。トップに負けて従うことを決めた時点で目指す場所は頂点の1つ下。頂点以外で、一番力のある地位だ。

 そして百獣海賊団において地位は力の証明でもある。弱い奴が上に立つことはない。上に立っている者は例外なく強い。地位を得るためには力が必要不可欠である。

 言ってしまえば地位は“勲章”だ。力ある獣だと最強の獣に認められた誉れであり称号。そこに付随する権力などは己の力を飾る副賞に過ぎない。それを“獣”の一員として正しく理解しているからこそ、フーズ・フーは“大看板”という地位を得るために手柄を立てようとするし、頂点であるカイドウに海賊王を獲らせようと働く。今回の任務もそのために重要な物であることに違いなかった。

 

「シュロロロ……機嫌が良いようで何より……」

 

「あ、シーザー。いたんだ」

 

「!!? い、いやまあ……確かにおれは気体なので……いないようなもんなのは確かですが……」

 

「あはは!! 冗談だよ!! 本気にしちゃった? 気体になっても私には見えてるよー!!」

 

「しゅ、シュロロロロ……そうでしたか……(ぐっ……クソ……なんでこの化け物がおれ様の研究所に態々……!!)」

 

 そして機嫌の良いぬえを見て、奥の部屋から恐る恐るといった様子で声を掛けたのはこの研究所の主、元政府の科学者である大量殺戮兵器の第一人者であるシーザー・クラウンであった。

 人を騙して実験体にして非人道的な実験を繰り返し、自分を世界一の科学者だと称して多くの人間を殺す傲慢かつ卑劣な男。自然(ロギア)系“ガスガスの実”の能力者でもあり、新世界における大物の1人である彼だが……目の前にいる怪物には腰を低くして接していた。

 この場にいるフーズ・フーやクイーンもシーザーに比べれば格上の怪物には違いないが、それでもこのぬえという化け物に比べれば恐ろしくも何とも無い。どんな兵器よりも危険で恐ろしい化け物がこのガキなのだとシーザーは忌々しくも複雑に思っていた。

 何しろ彼ら百獣海賊団はシーザーにとってかなりのお得意様であり、今の実験体の調達や実験のしやすい世の中にしてくれた張本人である。自分をクビにした世界政府を潰した相手でもある。どれだけ恐れて苦手だろうが付き合うしかなかった。シーザーは揉み手をしながらぬえに近づき愛想良く対応する。

 

「と、ところで今回の兵器は気に入っていただけたでしょうか?」

 

「うん!! 良かったよ!! 見てよこの死体!! 凄いことになってる!! 出来れば生で見たかったくらい!! さすがはクイーンとシーザーの合作兵器だね!!! 2人とも良くやったよ!!!」

 

「ムハハ!! おいおいぬえさん、おれ達の天才的兵器を褒め過ぎだぜ!!(まあおれ様の方がこのクズより天才だが)」

 

「シュロロロ……!! 気に入ったのなら何よりで……!!(このデブよりはおれ様の方が天才だが)」

 

「うんうん、2人とも天才だね♪(どっちも自分の方が天才だと思ってそうだなぁ)」

 

 今回の実験の結果を指してぬえは2人を褒め称える。今回の空気感染するウィルス兵器の作成はクイーンとシーザーの合作。ウィルス兵器に特に造詣が深いクイーンに、シーザーのアイデアを組み合わせた形だ。それをぬえがフーズ・フーに命令して1つの島に対して使用した。結果は島が1つ滅びる結果となり、大成功。ぬえも良い写真が撮れてご満悦だ。

 一方で、2人の科学者は互いを見下して自分の方が上だと思っているが、それは致し方ない。科学者という人種は傲慢な人物が多いというのは裏社会や世界の著名な科学者を知る者なら誰もが知る事実。この場にいるクイーンとシーザーも例に漏れず……更には、フーズ・フーが言及した者も相当な悪人として有名だ。

 

「フン……兵器と言えばおれはジェルマの方が気になるがな……ヴィンスモークの奴らとは取引しねェのか? ぬえさん」

 

「あー、そういえば最近は“北の海(ノースブルー)”で結構話題だよね~。んー、今の所は予定にないけど考えはなくもないんだよねぇ……どーしよっかな~?」

 

「! いやいやいや、あんなお高く止まったゴミ野郎の技術より、おれの新しい毒ガス兵器の方が……!!」

 

「ヴィンスモーク・ジャッジなんて碌な奴じゃねェぜ、ぬえさん!! 自分以外の人間なんざ全員見下してる様な奴だ!! 取引なんかするくらいなら罠に嵌めて国ごと奪っちまった方がアイツには良い薬だぜ、ムハハハ!!」

 

「ボロクソに言うねぇ……人柄なんてどうでもよくない? 改造人間の技術って面白そうだし……気に入らない奴でもどうにかしちゃえばいいしさ」

 

「「でもアイツクズっすよ!!」」

 

「あんたらもでしょーが!! よく人に言えるね!!?」

 

 シーザーとクイーンの言いっぷりに我慢できずにぬえがツッコむ。ぬえも当然そうだが、裏社会で生きてきた者や海賊などは全員漏れなくクズには違いなく、人のことは言えない。もっとも、言ってダメということもないが。

 何しろ今の世界だとそのクズ──悪人こそが正義だ。

 ゆえに悪の軍隊“ジェルマ66”の首領、ヴィンスモーク・ジャッジもまた力を持った正義であるし、悪人や卑怯、クズといった悪名は褒め称えられるべきものである。

 そして今やその悪の頂点とも言えるぬえはジェルマの科学技術に興味を持っていた。世界中で戦う悪の“戦争屋”。今では祖国である“北の海(ノースブルー)”で幾つもの国を征服し、新政府とも争っている。元世界政府加盟国。つまり、れっきとした国であり、指揮しているのは王族──ヴィンスモーク一家だ。

 そして国王であるヴィンスモーク・ジャッジは昔、ベガパンクをリーダーとする違法な科学研究チームの一員。優秀な科学者であり、ベガパンクが発見した“血統因子”を応用した改造人間、人造人間の技術を開発し、その力で自らの子供達を、自国民を作り上げ、世界でも悪名高い戦争屋としての地位を確立した。

 鋼鉄の外皮。炎や電撃、怪力、毒などの特殊能力などを生まれ持ち、戦闘に邪魔な恐怖などの感情を持っていないジャッジの子供達の戦闘力は事情を知る国々からも恐れられている。

 そしてそのヴィンスモーク一家の三男にはぬえとしても注目している“麦わらの一味”の1人がいる。それも含めて、関わってみるのは面白そうだと見ていた。

 だがしかし、同じ科学者でありジャッジを知る者からは嫌われているらしい。そもそも科学者同士で仲が良いものなどいないが──シーザーは忌々しそうに顔を歪めて答えた。

 

「フン!! あんな高飛車野郎の技術なんざ高が知れてる……!! パンク野郎の“血統因子”の技術を盗んで使っただけな癖に……!!」

 

「お前もだろうが」

 

「アァ!!? おめェも似たようなもんだろうがよ!!」

 

「ああ!!?」

 

「──全員ベガパンクには劣るってことね」

 

「ウッ!!? ウギギギギ……!!!」

 

「!! いやまあそれは……」

 

 シーザーとクイーンの言い合いに再びぬえが言葉を差し込む。ベガパンクに劣ると言われて彼を憎むシーザーは文句を歯を噛み締めて我慢し、クイーンも否定は出来ずに言葉を濁らせた。それだけ、ベガパンクの科学力は圧倒的だと誰もが認識している。

 そしてそれに関わるのは2人だけではなく、この場にいるぬえも例外ではない。フーズ・フーがそれを言葉にする。

 

「……ベガパンクと言えば……カイドウさんにぬえさん……アンタらも昔は研究対象にされたと聞いてるが?」

 

「あー、なんかね。昔はいっぱい捕まってたから色々されたけど……まさかベガパンクに研究されてるとは思わなかったなぁ。なんか色々拷問みたいな実験されて血を抜かれて……でも結局何がなんだか分からずに暴れて逃げ出しちゃったし。その場所がパンクハザードだとも当時は気づけなくてさ」

 

 フーズ・フーの質問にぬえは机に頬杖をついて思い出すように答える。当時は気づかなかった──というのは真実であり、ほぼ誰もが知らないぬえの()()()()に当たる部分であった。

 何しろぬえはベガパンクの顔を知らない。そして、昔のパンクハザードという島の外観も知らない。……言ってしまえば当たり前のことだが、ぬえならば知っていてもおかしくない情報でもある。他の物事と同じように、予め知っていてもおかしくない。

 だが結局そこはわからない。当時はそれもあって気づけず、いつもの様にカイドウと共に暴れて逃げたと言う。他の者達はぬえの言葉の裏にある()()に気づけないが、それでもカイドウとぬえの恐ろしさは伝わった。──特に、ぬえに視線を向けられたシーザーなどは。

 

「──シーザーは当時居たんだよね? 私達の事、覚えてくれてるかなー? あはは♡」

 

「!! い、いやぁ……おれはその時別の研究をしてて……」

 

「なーんだ。残念」

 

 さして残念そうでもなくぬえはケラケラと笑いながら言う。シーザーは愛想笑いしたが、実際には知っている。確かに別の研究をしていてカイドウとぬえの実験には関わっていないが……それでもそのイカれっぷりは当時、話題になっていた。

 何でも──注射の針が刺さらないとか、麻酔が効かないとか、挙句の果てにあらゆる枷や檻を破壊し、研究所に多大な被害を出しての逃亡……別の場所にいてもその暴れっぷりは伝わっていたし、それによって生み出された物のことも知っている。島を守るために飛び回るドラゴンやキメラがそうだと。

 そしてそれはぬえも理解していた。

 

「まあ昔っからパンクハザードとは取引してウチのナンバーズを引き取ったりして世話になってるけど……やっぱ正体不明がウリの私の研究はいただけないし、どうにかしてベガパンクは手に入れたいなぁ……そこまでやったんなら私達のために協力してないと気分が良くないしねぇ……」

 

 ぬえはどこからか取り出した知恵の輪をくるくると指で手回ししながら目を細めた笑みを浮かべる。正体不明をモットーにしているぬえとしては、自分を明らかにしようとする研究はあまりよろしくはない。

 だが作り出した物自体は気に入っている様子だ。己を模した生き物というのは妖怪としては箔が付いたようで気分が良い。紛い物ではあるが、それでこそ本物の価値も上がるというもの。ベガパンク自体の価値も極めて有用だと理解している。科学力もまた強い“力”だ。

 それに──と、ぬえはふと、先程シーザーが出てきた強化防弾ガラスの窓のある一室を見た。大きな横広の窓から下の部屋が見える。そこにある存在を見た。それは、

 

「それに、()()のこともあるしね♡ ──どう? そっちは完成した?」

 

「! シュロロロロ……!! そちらは何とか……いや!! 簡単に実現しました!! どうぞ見て下さい──おい!! PX0!! 来い!!!」

 

「──了解」

 

 シーザーがぬえに進捗を問われると途端に得意気に笑い出し、隣の部屋に向けてその名を呼ぶ。部屋から出てきた巨体に誰もが目を向けた。その人相も容姿も誰もが知る有名人であり今や人ではない兵器。元海賊でもあるその男の名は──

 

『元“王下七武海”海賊(元革命軍幹部)バーソロミュー・くま 懸賞金2億9600万ベリー』

 

「…………」

 

「おお……!!」

 

「おー……すっかり見た目は元通りだね♡」

 

 ──かつて暴虐の限りを尽くしたと言われる海賊、バーソロミュー・くま。

 だが既に人間として人格はない。政府の人間兵器“パシフィスタ”としてベガパンクによって作り変えられた彼は先の戦争に参加し、百獣海賊団によって捕らえられ、ある理由によりこのパンクハザードに運び込まれた。

 そして数ヶ月の間、シーザーの手によって弄られたのだ──その中身を改造するために。その完成をシーザーや百獣海賊団も喜ぶ。

 

「シュロロロロロ!!! かなり時間が掛かり、苦労したが──あ、いや、この天才に掛かれば簡単だったが!! 命令系統を切り替えてやったぜ!!! これでもう政府の命令は聞かず、おれやあんたらの命令のみを聞くようになる!!! 何だったら試してみてくれ!!!」

 

「へぇ……それじゃあ“くま”ちゃん♡ 四つん這いになってみて♡」

 

「──はい」

 

 得意気になったシーザーの言葉に乗り、ぬえが試しに命令してみるとくまはその通りに従順に四つん這いになってみせる。その様を見てぬえは笑い、クイーンも爆笑、フーズ・フーもニヤリと笑みを浮かべた。

 

「あはははは!!! すご~~~い!!! 本当に言いなりだ!!!」

 

「ムハハハハ!!! 面白ェ!! まるで奴隷だな!!」

 

「へっ……元“七武海”様が情けねェ。こうなっちゃ形無しだな」

 

「シュロロロ……!! 命令系統は書き換えてやった……!! もはやこいつは政府のための兵器じゃねェ!! 海賊の為に平和を望む者達を抹殺する兵器だ!!!」

 

「なるほどねぇ♪」

 

 ぬえはシーザーの手並みに素直に感心する。どれだけ小物だとしてもその頭脳は腐っても世界2位の科学者だ。ベガパンクに遠く及ばずとも兵器を捕らえ、数ヶ月の間調べれば少し弄るくらいはワケない。

 ……だが、このシーザーでさえ数ヶ月調べてようやく少し命令系統を弄るのが限度であるというのは、如何にベガパンクが規格外なのか証明するものだ。さすがはベガパンクだと感心するべきか、それともそんなベガパンクの兵器をほんの僅かでも解析出来たシーザーを褒めるべきか。この場合は後者だろうとぬえは思う。それだけベガパンクの科学力は異常だ。

 

「大変だったんじゃない? 機械の頭脳……()()()に暗号でも掛けられてた? どういう風にやってるか分からないけど()()まで弄れちゃうなんてさすがシーザーだね!!」

 

!!? い、いやまあ……(こいつ!! なんでそんな単語知ってんだ!?)」

 

「あれれ? どうしたの? 私ってば何かおかしなこと言った?」

 

 ゆえにぬえは適当にこうじゃないかと口に出して褒めてやるが、シーザーはその言葉に驚き、恐れた。得体の知れない者を見るような目を向ける。ぬえはいたずらっぽい表情を浮かべながら首を傾げるが、クイーンやフーズ・フーでさえその言葉は恐れを覚えるものだった。クイーンがどう言っていいのか分からない表情を浮かべる。

 

「おいおい……ぬえさん。科学知識すら知ってんのか?」

 

「……元は科学者だったのか?」

 

「……さてさて、どうだろうねぇ~♪ でもこれで天才美少女科学者ぬえちゃんにもちょっとだけ信憑性が出てきて、正体不明度も上がったかな?」

 

 ぬえの語った単語にシーザーが驚愕した理由は──「なぜそんなことを知っている!?」というもの。科学の、それもベガパンク以外では中々知り得ない知識をぬえが簡単に、まるで理解しているかのようにぬえが言葉に出したからだ。その手の概念を知ったのはシーザーでさえごく最近のこと。大物とはいえただの海賊であるぬえが知っている筈がない。そのことに恐れを抱いたのは、ぬえの期待通りでもある。

 そもそもだ。ぬえはその科学知識を簡単に披露してみせたように見えるが、実際はなんてことはない。理解はしていないし、何となく概要だけ知っている昔の知識をちょっとひけらかしただけだ。言ったようにぬえは海賊。科学の知識など()()()()()にしか知らない。

 勿論ぬえが適当言ったか、事前に盗み聞きしていた可能性もあるが……それでも効果は少なからずあった。知る由もないことを口にするぬえの正体不明っぷりは更に増し、恐怖を感じさせたことにぬえは喜ぶ。眼鏡をくいっと上げて意味深に笑ってはぐらかすだけで科学者なのか、そうではないのか、どっちつかずの状態になる。ちょっとだけの信憑性はぬえの望むところ。ぬえの理想なのだと、満足気にぬえは話を元に戻す。

 

「ま、私の話は置いといて……科学力はジェルマにしてもベガパンクにしても有用だし……これからも重宝しないとね。シーザー、あなたもちゃんと厚遇してあげる──フーズ・フー」

 

「ああ。──おい、持って来い」

 

「!! おお、これは……!!!」

 

 ぬえが指を鳴らしてフーズ・フーの名を呼ぶと、それを察したフーズ・フーが外に控えさせていた部下を呼ぶ。ネコ科の動物を思わせるコスチュームの船員。フーズ・フーの部下達がかなり大きめのケースを持って現れ、それをシーザーの前に差し出した。ケースを開けて中を見せるとシーザーが目の色を変える。そこに入った──大量の金に。

 

「シュロロロロロ!!! 金……!!! こんなに沢山……!!!」

 

「──ざっと100億ベリーはあるよ。受け取って。内訳は……え~と、くまの代金と新しい兵器の代金やらシキから奪った研究の引き継ぎ費用に研究費用やら今後の諸々も含めて……細かく考えるのも面倒だからあなたへの報酬も含めてそれくらいにしたからね」

 

「ありがてェ……!! 助かるぜ……!!! やっぱりあんた達は最高のクライアントだ……!!! シュロロロロロロ……!!!」

 

 シーザーがケースの中の金を大量に手で掴み取り、百獣海賊団への感謝を口にしながら高笑いをする。顔はご満悦といったもので、その金をどんなことに使おうか考えているのだろう。無論、余計なことにも使うだろうが、そんなことはぬえ達も承知している。感謝もそれほどないことに。

 だが今の百獣海賊団にとってこれくらいの金はそれほど痛手でもない。金なんてナワバリから徴収したり、適当な島を襲って腐るほど集められる。傘下にも金を幾らでも収めてくれる相手がいる。問題はないのでケチケチしない。シーザーを別の相手に抱え込まれるくらいなら金は惜しまないし……牽制にもなると、ぬえは良い笑顔を浮かべてシーザーに言った。

 

「これだけお金も上げてるんだし、私達の期待はわかってるよね? シーザー♪ もし裏切ったりしたら……地獄を見せるから♡」

 

「!!? い、いや、裏切ったりなんてしねェよ……!! シュ、シュロロロロ……!!」

 

「──それなら良いんだけどね♡」

 

 恐怖を与え、縛りつける。実際に理解はしているが、目も眩むような大金を与えたことで百獣海賊団の力も改めてわかるだろうし、ぬえがここに態々顔を見せた意味もある。ここまでして、もし裏切ればシーザーの命など簡単に消えてしまうだろう。容易に地獄を見ることになる。想像するに恐ろしいことだ。

 だがシーザーほどの重要人物が消えてしまえば各所に問題は出る。──そのためここまで黙って聞くことに徹していたシーザーの秘書である美女はやっとここで声を出した。恐る恐ると、

 

「……ぬえ様。一応、シーザーの身柄は……」

 

「ん~~~? 何かな? モネちゃん♡」

 

「……っ!! いえ、シーザーの身柄は一応、我々ドンキホーテ・ファミリーが預かっていますので……出来れば取り引きや諸々の対応は若様を通して頂けると……それと、あなた方の部下についても、若様からお話が──」

 

 内心の恐怖を抑え込みながら冷静に口を挟んだのはモネ。元王下七武海、新世界の闇を取り仕切ると言われるドンキホーテ・ドフラミンゴの部下。幹部の1人であり、シーザーの監視のためにここに派遣されている美女だ。

 ドンキホーテファミリーは何年も前から百獣海賊団と取り引きを結んでいる関係性にある。謂わば協力者であるが、建前上は五分の取り引きをしている筈の関係だ。シーザーへの仕事の依頼も、出来ればファミリーを通してしてもらいたいというのが本音だ。ファミリーの益となることでもある。ファミリーの幹部……ドフラミンゴから“家族”という扱いを受け、ドフラミンゴを海賊王にするために忠誠を尽くす者であれば相手がどんな化け物であっても恐れずにファミリーの為になることを行う。モネも例外ではない。

 だが──

 

「…………もしかして──何か文句でもあるの?」

 

「……!! っ……ですから……」

 

 しかし、ぬえが笑みを消して獣の目を向けられると、モネの顔が青褪める。モネもまた……彼らに恐怖する1人の人間でしかない。

 無論、モネだって弱くはない。自然(ロギア)系“ユキユキの実”の能力者。ドンキホーテファミリーの幹部として戦闘力は持ち合わせているし、これまで様々な任務に従事してきた。度胸だってある。ドフラミンゴのためならどんなことでもするという忠誠心だってある。

 なればこそ、相手がたとえ“四皇”であろうと軽く威圧されただけで顔を青褪め、汗をダラダラと流すような有様でいてはならない筈だが……如何にモネがそれを己に科していても、本能には逆らえない。

 

「……ドンキホーテファミリーねぇ……別にさぁ、モネちゃん。私たちは()()()とあなた達を貶めたりする気はないし、むしろよく扱ってあげようと思ってるんだけど──肝心の“旨味”がなくなって来てるじゃない?」

 

「っ……いえ……それは……」

 

 ドフラミンゴでさえ、恐れることは避けられない。モネの恐れを咎めることはないだろう。……何しろこの場にドフラミンゴが居たとしても、ぬえの追及に満足する答えを差し出すのは難しいからだ。

 モネやドフラミンゴだってぬえ達、百獣海賊団が何を思っているのか理解はしている。今まで、何を必要としていたかも。それをぬえは再び笑みを浮かべて告げた。

 

「世界政府とのパイプを持っていたからこそ、私達はあなた達を重宝してた……だけどその世界政府が倒れた今、特別あなた達ファミリーを“仲買人(ブローカー)”として使ってあげる意味が薄いのよねぇ……?」

 

「……!! しかし、“SMILE(スマイル)”の取り引きが……」

 

「うんうん、わかってるよわかってる。一応“SMILE(スマイル)”の取り引きもあるし、世界政府が無くなったとはいえドフラミンゴは一応裏社会でのパイプもこれまでの努力のおかげで持ってるもんね~♡ 戦力としても価値はあるし……だから、関係を崩したりはしないよ♪」

 

 ──安心してね♡ と、ぬえがモネの近くまで行き、腰を折って見上げながら可愛らしくそう言うが……モネの恐怖は消えない。圧倒的な強者からの圧に嫌でも身体が硬くなってしまう。

 それに加えて、ぬえの後の言葉には更に肝が冷えた。言うことはわかる。価値がある内は関係を崩したりしない。その意味は──

 

「でもまあ……あんまり取り引きが面白くなくなったら……その時は、あなた達丸ごと私達のものにしてあげるから……!! ──ミンゴにもちゃんと伝えといてね♡」

 

「……!! はい……若様にも、伝えておきます……!!」

 

「ムハハハ!! モネちゃんがウチに入るならおれは大歓迎だぜ~~~♡」

 

「元七武海の経歴もおれ達には意味を成さねェ。肝に銘じておくんだな」

 

「大丈夫大丈夫♡ 私達に従ってる限りはちゃ~んとうまい汁を吸わせてあげるからさ♡」

 

「……!」

 

 ──価値が無くなれば……消される。

 百獣海賊団は誰が相手でも容赦はしない。元々仲良くしていた取引相手でさえ、用済みになれば消してしまうだろう。

 とはいえ実際のところ、ドフラミンゴは戦力としての価値は認められているため、取り引きが無くなったとしても消されることはないだろう。他の海賊相手と同様、部下になるよう勧誘をしてくる筈。

 だがそれをドフラミンゴが飲むことはない。ファミリーの幹部もそれを飲まない。カイドウとぬえはそれを許さない。争いになる。つまり……死ぬ。

 新世界にやってきて、四皇への恭順を断った他の海賊達と同じになる。百獣海賊団のやり口はわかっている。凄惨な拷問が行われ、心を折られるだろう。折れなければ、やはり死ぬしか未来はない。

 

「……これまで以上に、“SMILE(スマイル)”の出荷数に力を入れさせていただきます」

 

「お願いね~♡ 最近は部下達も増えちゃってさ。早く力が欲しい活きのいい“ウェイターズ”が待ってるんだよね♪」

 

 そしてその未来だけは何としても回避するべく、ドフラミンゴは動いていた。ファミリーの幹部達はドフラミンゴが海賊王になると信じて疑っていない。自分たちの実力も。

 だがモネは……実際に彼らを見て、やはり戦えば死ぬしかないと理解してしまっていた。

 

(敵わない敵を消す方法は幾らでもある……若様なら……大丈夫)

 

 だが忠誠心にも信頼にも陰りはない。ドフラミンゴなら絶対に彼らの上に立てると信じてモネは自分の役目を果たし続けた。

 今の新世界は──いや、世界は荒れていて付け入る隙や力を手に入れる機会もある。

 いずれファミリーの最高幹部として迎えられる予定のとある海賊にしても……戦争後に台頭したとある勢力についてもそうだ。

 

 ──そして偶然にも、ぬえもまたその勢力のことを思い浮かべたのか、ぬえは今日の新聞を伊達メガネ越しに見ながら溜息をつく。

 

「……はぁ……とはいえ、出来ればもうちょっと“SMILE(スマイル)”の成功確率も上げたいし、品質ももうちょっと上げたいのよねぇ……何とかベガパンクさえ手に入ればなぁ……」

 

 ぬえはそこで珍しく、新聞を見て苦笑するような、それでいて忌々しさも感じるような複雑な反応を見せた。

 だがそれは僅かにクイーンやフーズ・フーなどの部下達にもわかる。新聞に載っているとある勢力。その台頭は百獣海賊団にとって目障りに違いない。

 一方で、ぬえは強敵が現れたという楽しさと──その一方で、彼女にしか分からない面白さも感じているのだろう。ぬえは笑みを堪え殺しながら告げる。

 

「まさか()()()が……ここまで成り上がるなんてね……!!! ぷっ……くすくす……くく……あはははははは!!!

 

 ──新聞にはとある“海賊”について記されていた。

 

 

 

 

 

 ──新世界、とある海域。

 

 その海域は……とある海賊のナワバリだった。

 

「おい!! 船が見えたぞ!!」

 

「軍艦……!! いや、戦艦だ!!」

 

「大砲を撃て!! 船を近づけろ!!! 乗り込んで奴らを仕留めるぞ!!!」

 

「おお~~~~!!!」

 

 新世界にやってきた海賊達には、“四皇”の傘下となり安全を得るか、“四皇”に挑み続けるかの二択しかない。

 今日そこにやってきた海賊達は後者の選択を選んだ。ある大物海賊の首を取り、自らが成り上がることを選ぼうとした。

 相手の船が見えた時点で船を近づけ、大砲が届く距離まで近づこうとする。あわよくば、船を寄せてそのまま船上での戦いに移行する。

 海賊の戦いの主流ともいえる海戦。これを制する者達が海を征すると言っても過言ではない。

 

 ──だが……その海戦で。

 

「!!!?」

 

「うわあああああ~~~~~!!?」

 

「!! この距離で当ててきた!!?」

 

「届くのか!!?」

 

「いや、そもそも何だ今の火力は!!?」

 

「船が木っ端微塵だ……!! 冗談じゃねェ……あんなの、こっちまで当たったら……!!」

 

「やべェ……!! 次の砲弾が……!!!」

 

「!!?」

 

「ぎゃあああああ~~~~~!!!」

 

 ──その海戦で……圧倒的な強さを誇る海賊団が存在する。

 

「──おー……今日は2隻か。近づいて沈んだ宝とかを回収するぞ」

 

「へい!! わかりやした!!!」

 

 ──その海域に近づいた船は、瞬く間に戦艦による襲撃を受け、圧倒的な火力によって沈められてしまう。

 

「国王様……!! 港を守っていた部隊が……!!」

 

「っ……!! 降伏するしか、ないか……!! ()()()()()()()と手を組むとは……!!」

 

 ──その脅威は海だけでなく陸地にも届く。

 

「──リンドバーグさん!! 前線が押されてます!!」

 

「あーもう!! 仕方ない奴らだな!! 海賊の癖にどんな科学力してんだよ!!」

 

 ──そして脅威は新世界だけではなく……“南の海(サウスブルー)”でも広がっている。

 

 世界各国や新政府軍が苦戦し、木っ端の海賊では歯が立たない。

 その戦力はここ数ヶ月で急速に膨れ上がり、新たな勢力として台頭した。

 

「今日の収穫はどんなもんだい?」

 

「姐さん!! 今日も絶好調でさァ!!!」

 

「先日配備された新しい兵器もとんでもない威力で!!」

 

「そりゃあ良かったね──そろそろ“総帥”が姿を見せるからいつも通り騒ぎながら大人しくしてな」

 

「おお……!! “総帥”が……!!」

 

 新世界のとある要塞化された島を拠点にするその海賊について……新聞にはこう書かれていた。

 

『──聞こえるか!!? 見えてるか!!? 親愛なる野郎共!!!』

 

「!! 来たぞ!!! “総帥”だ!!!」

 

 ──その海賊は……かつて伝説の海賊“ゴールド・ロジャー”の船に乗り、世界中の海で戦ってきた……伝説の船員(クルー)

 

『──今日も飲んでるか!!?』

 

「勿論だぜ“総帥”!!!」

 

 ──同じく船を共にしていた後の四皇“赤髪のシャンクス”の兄弟分である……伝説の海賊。

 

『──今日も稼いでるか!!?』

 

「当然だ“総帥”!!!」

 

「アンタのおかげだ!!!」

 

 ──それらの誰もが恐れる輝かしい経歴を持ちながら……“東の海”で20年近く、爪を隠して潜伏し……数ヶ月前に起きた大事件。インペルダウンの脱獄を“麦わらのルフィ”と共に大量の囚人を引き連れて果たし、そのまま頂上戦争に参戦すると海軍本部、王下七武海、四皇……世界の三大勢力と渡り合った。

 

『──今日もハデに騒いでるか!!?』

 

「当たり前だぜ“総帥”~~~~!!!」

 

「“総帥”!!! “総帥”!!!」

 

 ──戦争自体は百獣海賊団、ビッグマム海賊団、金獅子海賊団の同盟に敗北したが、同盟を組んだ赤髪海賊団と共に撤退戦を成功させると、新世界に居を構え、あの“ジェルマ66”すら超える圧倒的な科学力と火力でナワバリを広げていった。

 

『──OKだ野郎共ォ!!! 今日もハデに騒いで英気を養え!!! ……ああ、それと今回はゲストがいる!!! おれ様達と新たに取り引きを結んだ協力者様だ!!!』

 

『ま~はっはっはっ!!! そうだとも!!! おれ様は協力者様!!! この度“総帥”と厚い友情と悪の取り引きを結んだ新たな悪の帝王!!!』

 

「おお……!!!」

 

 ──そして一ヶ月前……“南の海(サウスブルー)”で勢力を広げていた悪ブラックドラム王国と取り引きを結ぶと、形状科学合金“ワポメタル”を用いてその科学力からなる戦力を更に整え、“南の海(サウスブルー)”にも勢力を進出させた。

 

『そう!!! 新たな協力者を得て、最強の科学力とカリスマ!!! そしてお前らという最高の戦力!!! 親愛なる部下達を持つおれ様はこの“科学帝国”の“総帥”!!! ──と、一応シャンクスの奴との同盟関係もあり!! 新世界をハデに彩る新たな覇者!!! そんなおれ様の名は──』

 

 ──凶悪な海賊達をその圧倒的なカリスマで従え、その実力と科学力を以て敵を殲滅する……科学帝国の総帥。新世界に覇を築く新たな皇帝!!! それこそが──

 

『“四皇”バギー海賊団及びバギー科学帝国“総帥” “千両道化のバギー” 懸賞金23億1500万ベリー』

 

『──“四皇”!!! “千両道化のバギー”様だ!!! ぎゃ~はっはっは!!!』

 

「うおおおおお~~~~~~!!!」

 

「バギー総帥~~~!!!」

 

「キャプテン・バギー!!!」

 

「バギー!!! バギー!!」

 

 ──“千両道化のバギー”である!!! 

 

「く……あはははははは!!! ダメだ、やっぱ何度見ても面白い!!! ちょっとムカつくけど……なんであいつが四皇になってるのよ~~~~~~~!!!」

 

 ──しかし新聞を見て、その本当の実力を知る少女は腹を抱えて笑う。

 

 だが世間での信頼は絶大。今やあの“百獣のカイドウ”や“妖獣のぬえ”に一対一で敵うのは“バギー”であると、まことしやかに囁かれていた──。

 

 




竜とキメラ→カイドウとぬえの研究から作られた生き物。強い奴には怯える。
フーズ・フー→シノギの一貫としてシーザーに関わったことがある。
クイーン→ウィルス兵器が得意な科学者。科学というより化学寄り。
シーザー→小物だけど世界2位の科学者。地味に今回の一件で技術力がちょっと上がった。それでもベガパンクには遠く及ばないけど。
ジャッジ→親としてダメすぎるけど人造人間を始めとした科学力は凄い。北の海で新政府と戦争をしているが、膠着状態であるため何か手を考えている。
くま→人間兵器。シーザーに何ヶ月も弄られ、百獣海賊団の兵器となる。
モネ→可哀想。
ワポル→科学には欠かせなくなるワポメタルを世界で唯一生産出来るやべー奴。地味にバランスブレイカーな気がする。
バギー→白ひげの後釜となった新たな四皇。リンリンと同じで国の総帥兼海賊団の首領という感じ。成り上がりまくった。どうやって科学力を手に入れたのかはお察し下さい。
ぬえちゃん→今日は白衣に眼鏡の科学者スタイル。かわいい。写真集のために島を滅ぼして取引先を威圧し、新聞に爆笑する。かわいい。

と、今回はこんなところで。我らがキャプテン・バギーがとうとうやりました。科学帝国……こいつは唆るぜ!!
次回はちょっと迷い中。キング回か飛び六胞回か。それともどっちも混ぜるか。どっちにしろ日常回なのでどっち先書くか迷ってます。お楽しみに。

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