正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる 作:黒岩
──ただ堕ちていく日々だった。
『──決着~~~!!! 最後のベスト16の枠を勝ち取ったのは“最悪の世代”……トラファルガー・ロー!!!』
「最後はローか。あのディアマンテとかいう奴、舐めすぎたな」
「そんなことより私の次の相手があの気持ち悪い奴でごんす!! ぺーたん代わって~~!!」
「知るかよ!! ぬえさんに言え!!」
獣の群れに交ざりながら眼下で起こった戦いの結末を見た。
“最悪の世代”と呼ばれる“新世代”の1人が七武海の幹部を撃破した──大物食いを達成したその戦いは一瞬で決まり、観客を驚かせる。
その実力は確かに1年前に“
だが……私には分かる。あれは私と同じ──“復讐者”だと
『──さあこれでベスト16が出揃いました~~~!!! ここで改めて勝ち上がった連中の紹介と組み合わせを発表するよ~~~~!!!』
復讐のために日々を生き、力をつけてきた者。その様は自分と被る。似ている。
ゆえに気づいた。彼は私と同じであり……しかし、完全に同じではないと。
『“飛び六胞”フーズ・フー!!! それに挑むのは元CP9最強の殺し屋……ロブ・ルッチ!!!』
「──やっとボス猫のお出ましか」
「へっ……好きに言ってろ。格の違いってのを教えてやる……!!!」
彼にはきっと彼を慕う仲間がいる。
『“最悪の世代”の1人“死の外科医”トラファルガー・ロー!!! 襲いくるは自称ワノ国一の剣豪!! お騒がせの“狂獣”ムサシ!!!』
「ふむ……お前があの……」
「……?」
彼はきっと……まだ戻ることが出来る。
『同じく“最悪の世代”!! 元海軍将校の異例の海賊!! “赤旗”X・ドレーク!!! 相手は自称光月おでん!!! 最近人妻になった新鬼ヶ島の将軍……ヤマト!!!』
「ぐっ……嫌な紹介を……!!!」
「……ヤマトぼっちゃん、か」
自分はもう戻ることは出来ない。
『“飛び六胞”ページワン!!! 挑むのは元見廻り組総長!!! ホテイ!!!』
「これに勝てば昇格はほぼ確定だ。悪いがやらせてもらうぜ……!!!」
「フン!! そう簡単に行くと思ってんじゃねェぞ……!!!」
自分は自分を慕う相手もそのために殺した。
『“飛び六胞”うるティ!!! 相手はデスマッチショーで無敗を誇る元チャンピオン!!! グラン・テゾーロディーラー……ダイス!!!』
「んん!? お前はいつぞやの……!!! おれを頭突きで打ってくれェェい!!!」
「うわ気持ち悪っ!!! 変態じゃねェか!!!」
引くことは出来ない。
『“飛び六胞”ブラックマリア!!! 戦うのは九蛇を統べる3姉妹の次女!!! ボア・サンダーソニア!!!』
「ハァ……ハァ……またキツい相手……!!」
「ウフフ……ここまでよく頑張ったじゃない♡ でもここまでよ……!!! 早々に終わらせてあげるわ♡」
どこまでも堕ちるしかない。
『“飛び六胞”ササキ!!! 相手は元お庭番衆隊長!! 福ロクジュ!!!』
「忍者の頭か。面白ェ……!! 狂死郎と戦う前の手慣らしにしてやる……!!!」
「…………御手柔らかにお頼み申す」
強くならなければ……堕ちなければ……生き残れない。
望みを叶えるためには何が何でも勝つしかないのだ。全てを犠牲にしてでも。だから──
『“飛び六胞”小紫!!! 相手は元ワノ国一の侠客!!! “居眠り狂死郎”!!!』
「…………」
「っ……く……!!」
──たとえ相手が……自らを慕う者であっても──勝つしかない。
相手を殺すつもりで、全力で、仇を相手にする時のように……刃を抜いて突き立てなければならない。
……あの時の……河松のように。
「……どうしても……やると?」
「…………言ったでしょう」
雌雄を決する舞台の上で、再度、何度目かになる意志の確認をしてくる。不要なやり取り。12年前から何度も何度も答えてきた質問だ。
「私はやらなければならない。そう……貴方達がそうだからこそ……私は全てを犠牲にしてでも成し遂げる」
「……お気持ちは……変わりませぬか」
「──くどいですよ、狂死郎」
鬼面の内で唇を震わせる──これだから困るのだと。
全力の彼を相手にしなければ、勝っても意味がない。戦う意味がない。
だから自分は本気にさせるためにも、改めて変わることのない意志を言葉に込め、刃を二振り──彼も知る2人の故人の刀を抜いて構えを取る。
「私は“悪鬼”。終わらない復讐と死の輪廻を終わらせるもの。最早……この身は人ではないのです。貴方が本気でやらないなら……私は、貴方を討つ」
「……!! そこまで……!!」
彼は歯を食いしばってこちらを憂いている。この期に及んで。私に殺意を向けられているのに。その心配はもうとっくに余計なものでしかないのに。
だが……これではいつまで経っても彼を越えることは出来ない。
「……どうしても、私にそれを諦めさせたいと言うなら──」
だから言った。私は今まで言わなかった、決着をつける言葉を。
「──私を負かしてみなさい」
「!! それは……!!」
狂死郎の目の色が変わる。
現金なものだった。主君の娘には散々刃を向けることを拒否していたというのに、諦めさせるためにはそれも許容するらしい。
こちらの身を案じてのものだとはわかってはいても……それはただ鬱陶しいだけ。
「……二言はありませぬな?」
「ええ。どの道、今貴方に勝てない程度では私の望みは成就しない」
「……ならばその勝負、受けて立とう」
彼らの優しさはもう私には必要ない。
目的の為なら仲間や身内にすら刃を抜くその姿こそが好ましい。
そうしてくれるだけで──私もようやく手にかける決心がつく。
「ええ。ですがご注意を。私は背水の陣で……貴方を仇と思って臨みます。手加減は死や取り返しのつかない事態を招きますよ?」
「……肝に銘じましょう」
刀を抜き、侍の顔となる狂死郎と対峙する。
騒がしい周囲の音は排除した。景色もいらない。戦う相手だけが見えてれば良い。
だがそれでも仇となる相手の存在だけは消えてくれない。上から悪意に満ちた可愛い声が聞こえた。
『さてさて!!! お次は小紫対狂死郎!!! 仁義なき侍対決!!! 勝つのは復讐に燃える女武者か!!! 忠義を尽くす侠客か!!! いざ尋常に──試合開始!!!』
「!!!」
その声を合図に真っ直ぐに駆ける。狂死郎も迫る。
激突したのは開始一秒にも満たない瞬足。鋼の音は甲高く、空気は衝撃波となって周囲に吹き抜ける。鍔迫り合いは押された。一瞬で理解する実力はワノ国一の侠客に──赤鞘九人男の名に恥じないもの。
私は彼の甘さをいつも疎ましく思っているが、戦ってみればこちらが格下なのだから情けない。こんなザマでは復讐を成し遂げることは出来ない。
「……その程度か……!!?」
「……!! いえ……!!」
だから──やる。
最強の命を取るためには赤鞘程度の強さですら最低限だろう。おそらく。ここに至らなければ傷をつけることすら出来ない。
だから……越えるしかない。
「まだまだ序盤ですよ……焦らずとも……ここから何度も見せてあげます……!!! 私の意志を……!!!」
「……! そうか……!!」
剣戟が重なり、覇気が激突する。
今だけは仇を見ず、目の前の身内を越えることだけに意識を向けた。
ベスト16。勝ち残り、選ばれた強者達による戦いが始まるとデルタ島はさらなる熱狂に包まれた。
血沸き肉躍る戦いを見て人々が吠える。楽しみ、喜び──祭りにおいて最も発しやすい人々の感情が島中に渦巻いている。争いこそが多くの人の闘争心を掻き立て、熱狂させる最高の方法だ。
「──マーヴェラス!!!」
それを信じている男は島の中心。熱狂の中心でもあるコロシアムの最上階にて、激しい戦闘と沸き上がる観客達を見下ろして口端をニヤけさせた。
両手を広げて呟くのは男の口癖。人々を熱狂させることを生きがいとするたちの悪い“祭り屋”。
またの名を“最悪の戦争仕掛け人”ともいうその男こそ、今年の金色神楽の開催に当たって様々なバックアップ、プロデュースを行ったロジャー時代の大物海賊。アフロヘアーがトレードマークの小柄な男。
『フェスティバル海賊団船長“祭り屋”ブエナ・フェスタ』
「マーヴェラス!! マーヴェラスだ!!! やはり争いこそが人々を“熱狂”させる!!! ──そう思うだろ!!? なァ……“百獣のカイドウ”……!!! “妖獣のぬえ”……!!!」
「ウォロロロロ……!!! ああ、争いのねェ世界は退屈だからな……!!!」
「ま、私のライブの次くらいには盛り上がるよね!!!」
フェスタが振り返るなり2人の大物に声を掛ける。相手は四皇の一角。今や世界最強の海賊団として知られる百獣海賊団の総督と副総督を務める2体の怪物──カイドウとぬえだ。
上機嫌だが危険極まりない2人。戦闘力のないフェスタでは一息で殺されるほどの相手に、しかし怯えもせず対等のように話しかける。ワノ国仕様の上座の上に座るカイドウの隣には最高幹部“大看板”のキング、ジャック、ジョーカーが横を固めており、試合を実況、解説するぬえの横にはクイーンもいる。
全員が凶悪。威圧感を感じさせる面々であり、普通の一般人ではこの場にいるだけで震えが止まらなくなるだろう。彼らだけで何百万何千万。あるいはそれ以上の人々が地獄に落とされ、幾つもの国や組織が滅んだ。世界一の戦力を構成する化け物共の巣窟だ。
だがそんな連中の前でもフェスタはおべっかを使わない。自分を偽らず、彼らに対して対等に話しかける。昔の、まだそれほどでもなかった頃を思い出して笑みを浮かべながら正直に彼らを讃えた。
「しかし……まさかあの頃はお前らが世界を壊すとは思ってもいなかったぜ!!! “ロックス”の船の見習いでしかなかったお前たちが“白ひげ”や“金獅子”……“世界政府”まで出し抜いてよくやったもんだ……!!!」
「フェスタってば見る目ないねー!! 私達は見習いの頃から世界を獲る気だったよ!!!」
「懐かしい話だ……確かお前と取り引きを始めたのはおれ達が“楽園”のキース島をナワバリに活動してた頃か」
「あーあの頃は大変だったね。カイドウがメチャクチャしたせいで稼ぐのも一苦労だったしさ」
「昔の話だ。今はちゃんとやってるから別にいいだろう」
「今もメチャクチャだけどね」
「それはお前もだろうが」
フェスタと出会った頃の話を切っ掛けにカイドウとぬえが軽口を叩き合う。いつものことでこれくらいは喧嘩でも何でもない日常茶飯事。兄妹分で何十年の付き合いだからこその遠慮のない会話だ。大看板もこれくらいでは懸念することはない。
そんな彼らの様子を見ながら、フェスタは再び自分から口火を切る。振る話は彼らを褒め称えながらも今後の展望を冗談気味に不安視するものだ。
「ここまでの試合を見てもわかる。どいつもこいつも凶悪!! 屈強!! 残虐!! まさに世界一の軍隊に相応しい顔触れだが……未だに“敵”は多いだろう!! どうだ? そろそろ“ラフテル”には行けそうか?」
「時間の問題だ。戦力も情報も出揃ってる!!」
「石の場所はもう掴んでるからね!! ここからちょっとずつ手に入れて最後の仕上げをして……行くのは
「! ほう……!! さすがだな……!!」
具体的な年数。1年後には“ラフテル”へ行く──つまり“
昔フェスタが出会った頃の彼らが言ったのならただの戯言だが、今の彼らが言うのならそれが実現可能な現実であることがわかる。戦力は全勢力、海賊達の中でも最強。頂上戦争後に更に勢いを増し、盤石な勢力を築きつつある百獣海賊団はまさしく“白ひげ”に取って代わった“海賊王”に最も近い海賊だろう。
だがかといって簡単ではないことはフェスタも知っている。世界中で暴れてきた悪名高い彼らには──
「──カイドウ様!!」
「!」
不意に部屋に入ってくる者達。百獣海賊団のウェイターズと思われる下っ端が報告に現れる。カイドウやぬえ、大看板が一斉に視線を向けた。──やはり何か騒動が起こったのかと。
「何か起きたか?」
「はい!! 港で暴れてる海賊団が幾つか……!! それとアプーさんから連絡も……!!!」
「! 来やがったか……おい、ジャック、ジョーカー」
「は!!」
「ええ」
下っ端の報告を聞くと、驚くでもなくカイドウは頷き、傍らの大看板ジャックとジョーカーの名を呼び、呼ばれた2人は返事をすると具体的な命令を聞かずに扉の外へと向かっていった。
フェスタはそれを見てえげつなさに思わず笑ってしまう。この場から離れていく大看板2人にぬえが明るい声を掛けた。
「2人共頑張ってね~~!! お土産期待してるよ~~~♡」
「「ええ、すぐに戻ります」」
「……町で何か騒ぎでも?」
「まあね。でもすぐ収まるから心配しなくていいよ~♪ これくらいの問題なら私達が対処するからさ!!」
「騒ぎを治めるのに大看板を2人も駆り出すとは……容赦のなさは相変わらずみてェだな」
「ん~というより今は真打ちの殆どがこのコロシアムに集まってるからね。ギフターズじゃ手こずる相手なら大看板を向かわせてさっさと処理した方がいいじゃない? 今日はせっかくのお祭りだし、宴に水を差すようなことはしたくないからね」
「なるほどな。だがその分ここが手薄になるんじゃねェか?」
フェスタは町の方で起きている騒ぎに大看板を2人向かわせたことでこの場を守る人員が減ることを懸念する。無論、冗談気味にだが、半分は彼らの意識を確かめるためにだ。
今回の金色神楽、百獣杯の警備は百獣海賊団とフェスタが雇った一部の海賊達で行っているが、主導権は当然百獣海賊団にある。デルタ島はフェスタのアジトであるため最低限の警備は行っているが、今この場所で騒ぎを起こすような猛者がいればフェスタの雇った警備では手こずる可能性も高いため、百獣海賊団の猛者を駆り出すことになる。
そして真打ちの殆どがこのコロシアムに集結している以上、出ていくのは大看板だ。それはこの場所の戦力が減ることを意味するが──当然、それは問題にならない。冗談を言われたと思い、ぬえとカイドウは大笑いする。
「あははははは!!! 今この場所を手薄と思って襲うような奴なら喜んで相手してあげるよ!!! バカは嫌いじゃないからね!!!」
「ウォロロロロ!!! ぬえの言う通りだ!!! 何も心配する必要はねェぞフェスタ!!! おれ達の選んだ大看板全員を出し抜いて挑んでくるような奴がいればおれ達が消してやる!!!」
「……ははは!! そうだろうな!!!」
2人の言葉にフェスタは同意して大笑いする。当然だ。この島には百獣海賊団の全戦力が集まっている。真打ちの大部分が試合を終えて治療を行っていたとしてもよっぽどの重傷者でもなければすぐに回復するし、大看板2人が出ていったとはいえここにはまだキングとクイーンがいる。仮にカイドウとぬえの首を狙う者がいたとしてもまずこの2人を出し抜くことがそもそも至難の業だ。カイドウとぬえが余裕を持って大笑いするのも当然である。
僅かに気になったのは、2人は大看板を出し抜くような相手でも簡単に消せると言い切ったことだが、だがそれもおかしなことではない。たとえ相手が四皇の──それこそ全盛期の白ひげが襲ってきても今のカイドウとぬえが2人がかりなら消すことも出来るだろう。海賊王ゴール・D・ロジャーが現れようとも、ロックス・D・ジーベックのような一対一で敵わない伝説の怪物でもこの2人を同時に、単独で相手をして勝てるような奴はいないとほぼ言い切れる。
彼らは今の世界最強。世界最強の兄妹。それは決して揺るぎない事実だ。
──だがそれがもし崩れたなら?
「──マーヴェラス」
「?」
そう──
誰もが気づかない中でフェスタは小さく呟く。そうなれば何よりも面白い。熱狂的な祭りになると。
この世に不可能なんてない。不可能に近いことでも必ず何か可能にする方法はある。
そのための方法を……不確定要素が混じることも含めて全て組み込んだフェスタは目の前で起きる戦いや、裏で起きているであろう様々な出来事を感じて不穏さに笑みを浮かべる。
「あーうー!!」
「ああ!! 待ってくださいオワリ様~~~!!」
「! 何遊んでやがるバオファン!!」
「てへへ、ごめんなさ~~い!! オワリ様がまたふわふわ浮いてはしゃぎまわっちゃって!!」
「あはは、まーた
「ちゃんと閉じ込めとけ!!」
「了解です!! ほらオワリ様!! こっちにミルクがありますよ!!」
「あ~~うう~~~!!」
「オワリちゃんはお転婆だねー。一体誰に似たのやら──あ、そろそろ試合が動くかな?」
「……そうみてェだな」
最上階の観覧席に入ってきたフワフワと浮かぶ赤ん坊を見てフェスタは少し気になったが、部外者が口を出すと火傷する可能性が高いと見て何も言わない。そもそもそちらについてはどうでもいいことだ。誰が何を企んでいようと、自分の望みさえ叶えばいい。
「──決着まで見届けようじゃねェか……!!!」
まずは試合。猛者達の激突を見て楽しむ。その余裕は、あるかどうかはわからないが……待てずに始まったとしてもそれはそれでいい。フェスタは“熱狂”だけを待ち望んでいた。
“百獣杯”ベスト16同士の戦いはこれまでの試合より一段と激しさを増し、会場を沸かせていた。戦いの結果は概ね順当と言ったものだ。
「“ウル
「っ……!! 気持ち……良い……!!」
「気持ち悪いんだよ!! 死ね!!!」
第2試合──うるティVSダイス。
無類の打たれ強さと刃を弾き返すほどの武装色の覇気をもってここまで勝ち抜いてきたダイスであったが、うるティの頭突きには耐えられずに決着。
「貴女の姉ならともかく……貴女では相手にならないわ。九蛇の戦士とやらも大したことないのね♡」
「っ……すみません……姉様……!!」
「ソニア姉様……!!」
「……!!」
第3試合──ブラックマリアVSサンダーソニア。
ヘビヘビの実の能力者であり、優れた覇気使いでもあったサンダーソニアだが、ブラックマリアの放つ糸から抜けられず、粘りはしたが終わってみれば惨敗。客席から試合を終えたマリーゴールドの心配する声が響き、ハンコックもまた表情を険しくする。
ここまでは設けられた賭けのオッズが低い方。飛び六胞が今のところ勝利しているが、続く第4試合──X・ドレークVSヤマトは試合が長引き未だに戦闘中であり、第5試合ではまさかのムサシが棄権。ぬえの脅しにも似た棄権を禁ずるルールもムサシには通用せず、何言か話した後にムサシは舞台から去り、トラファルガー・ローがベスト8へ駒を進めた。
そして第6試合ササキVS福ロクジュもササキが早々に勝利し、このタイミングでドレークVSヤマトも決着がつく。続いて第7試合が行われるが──
「ハッ……意気揚々と挑んできた割にはその程度かよ」
「……ハァ……ハァ……!!」
「おいおい……嘘だろ……!?」
「……そんなにも実力が離れておるのか……!!?」
舞台の上で血溜まりに沈んでいるのは、CP9最強の殺し屋──ロブ・ルッチ。
会場が一瞬の静けさの後に沸き上がる。ルッチの実力を知るジャブラやカクが驚くほどに、勝敗は既に決まりかけていた。
試合が始まり、互いに即座に人獣型を解放するとネコ科の俊敏性を発揮して互いに一撃を最速で相手に見舞った。そうして血飛沫を流したのはルッチであり、フーズ・フーに目立った傷はない。
そしてなおも戦いは続くが、優勢なのは常にフーズ・フーだった。ロブ・ルッチも粘り、六式と覇気を組み合わせた技を用いて善戦し、少なからずフーズ・フーに手傷を負わせるが、やはり苦しそうなのは常にルッチだった。
だがそれも当然のことだ。
「随分と粘るな。悪くはねェが、
「っ……!!」
「怒ったか? だが似た能力である以上、どう足掻いてもお前はおれの下位互換だ。パワーもスピードもタフネスもおれには及ばねェ……!! グルル……!!!」
「ぐ……!!」
ルッチが獣型に変型し、豹の姿となってスピードで撹乱する作戦に出る。それを見てフーズ・フーも獣型となり、ルッチを待ち受けた。力の差は見た目以上に歴然だ。
ネコネコの実モデル“豹”のルッチに対し、ネコネコの実古代種モデル“サーベルタイガー”のフーズ・フーの体躯はルッチの何倍よりも大きい。
それは単純に豹とサーベルタイガーという動物の差でもあるが、肉体の大きさは両者の鍛錬と実力も表している。
百獣海賊団に入って1年。ロブ・ルッチは更に自らを鍛え続け、真打ちの中でも上位の実力者と噂されるほどになったが……それでも不動の飛び六胞として長年百獣海賊団で己の牙を鋭く鍛え続けたフーズ・フーにはまだ及ばない。スピードを活かした奇襲も制され、サーベルタイガーの長い牙で噛みつかれるとルッチは苦悶の声を上げる。
「……!! “
「! “六式”か……懐かしいな……!!」
人獣型となり、フーズ・フーの拘束から抜け出すと今度は六式の“
だがそれを見てもフーズ・フーは動じない。それを食らってもなお。
「“
「!!」
両手を使った“
しかしルッチの猛撃が終わると、口元をニヤリと変化させてルッチに告げた。
「……それも悪くはねェが……
「!?」
ルッチがフーズ・フーのその発言と構えに驚き、とっさに防御の“
「“
「!!!」
ルッチが放ったそれに酷似した──それでいてルッチの技よりも凄まじい
「“
「“
「!!!」
しかし六式には六式で返される。ルッチの放った斬撃がフーズ・フーの斬撃と激突し、周囲を弾き飛ばす。より大きく吹き飛ばされたのはルッチの方だ。
「どうやら戦闘技術もおれの方が上のようだな。政府の六式使いってのはこの程度か? こんなもん、ジョーカーの奴と比べたら子供のお遊びだぜ」
「……っ……!! “最大輪”……!!」
「あ……?」
──だがルッチは倒れなかった。
土煙の中、血塗れになったルッチは豹の尻尾でフーズ・フーを掴み、両の拳をフーズ・フーの腹に当てて六式の最大奥義を、武装色の覇気を込めて放つ。
「“
「!!?」
大砲を何重にも重ねたような空気を弾く音と衝撃が発生し、フーズ・フーが口から血を吐く。
ルッチの最後の力を込めた一撃だ。長期戦で勝ち目はないと冷静に判断した。スタミナでは勝てない。
ならば一撃で決めようと全力を賭した一撃を見舞うのは自然な考え。間違ってはいなかった──相手の耐久力がそれ以上でなければ。
「……効いたぜ……!!」
「!!」
口の端から血を垂らしながらも、フーズ・フーは全力の攻撃を終えたルッチに人獣型で攻撃を放つ。
「油断した……よくもやってくれたな……!! その礼だ……一撃で沈めてやる……!!!」
それは敬意であり、仕返しであり、計算の上での行動だ。
これ以上この男と戦いを続けるのはこの先の戦いを考えると面倒だ。無駄に体力を削られる。百獣杯はまだまだ続き、この先は“飛び六胞”とも戦闘を行うのだ。
そして同時に、体力を削るほど善戦してみせたルッチを“敵”と認めて戦闘不能へと追い込む。そのための、六式ではないフーズ・フーの一撃。
「“
「!!!」
──ロブ・ルッチが白目を剥き、膝を突く。
フーズ・フーはルッチの背後へと回り、煙草に火を付けた。それを見れば、どちらが勝ったかは一目瞭然だ。
「……こんなもんか」
「つ……強ェ……!!」
「これが“飛び六胞”の実力……!!」
戦闘をほぼ終えて一服し始めるフーズ・フーを見て、観客は戦慄する。あのCP9最強の殺し屋。ロブ・ルッチを相手に一方的な勝利を収めたその実力に。
だがルッチが弱いのではない。それを勘違いする輩は見聞色が不得意と言わざるを得ないだろう。フーズ・フー自身もそれを理解している。
「もっとも……修行前のおれ相手ならもう少しいい勝負になったかもな……!!」
「……!!」
そうしてここまで戦ったルッチを褒め称える。意識を保っているルッチを先程のホールデムのように首を持ち上げて締め付けると、人獣型を解除して人型に戻った。
「フン……お前程度ならあの島で修行したおれなら相手にならねェらしい。お前もこの1年で鍛えたんだろうが……覇気もまだまだ浅いな」
『ムハハ、おいおいやりすぎだ!! 殺すんじゃねェぞ!!』
「一々言わずともわかってる──ほら、お仲間にでも介抱してもらうんだな」
「……ウッ!!」
「だが実力を悲観することはねェ。気が変わったら言え。おれの部下になるならよ……!! それなりに良い待遇で使ってやるぜ……!!」
試合を見ていたクイーンから笑いながらの注意が来るとフーズ・フーはルッチを舞台の上に投げ捨てて解放する。元より殺すほどの価値もなければ必要もない。一応、こんな怪しい連中でもまだ黒ではない大事な戦力なのだ。
それに幾ら血に飢えてるとはいえ、フーズ・フーが殺したい相手は
「チッ……まだ粘ってやがるのか……相変わらずのタフさだな……小紫の奴……!!」
百獣杯のベスト16、第1試合──小紫VS狂死郎は泥仕合の様相を帯びていた。
「ウッ!!」
「ハァ……ハァ……いい加減に……倒れて貰いたいものだな……!!」
2人の真打ち。ワノ国出身である侍2人の戦いは主に剣術での戦いであった。
小紫の能力は
「……!! まだ……まだ……!!」
「……!! くっ……いつになったら……倒れるのだ……!!」
──狂死郎には敵わない。
ワノ国一の侠客。オロチ政権にて頭角を現したその侍の強さは観客の多くの予想以上。飛び六胞にすら迫るものだった。
無論相手は飛び六胞の末席である小紫であり、早々に勝負を決めた飛び六胞の4人や、この後ホテイとの勝負があるページワン──こちらも恐らくはページワンの勝利だろうが──彼らと比べて狂死郎がどうなのかはわからない。
しかし小紫と狂死郎の実力を比べれば……完全に狂死郎の方が上であった。それは観客も、戦ってる2人ですら理解していること。
だが、追い詰められているのは狂死郎の方に見えた。体の節々から血を流し、息も絶え絶えになっているのは小紫で、かすり傷や多少の火傷がある程度で勝利が見えているのは狂死郎だが、それでも狂死郎の方が苦しいと言わざるを得ない。
(なぜ……これほどまでに……!!! 日和様……!!!)
そう、何しろ……赤鞘の1人である傅ジローにとって、日和は主君にも等しい大事な御方。
傷つけることすら本来は罷り通らない。それを選ぶくらいなら自らの腹を切って自害することを選ぶ方がよっぽど楽な相手であり、本当ならこの状況も絶対に防ぎたいものであった。
だがそれは既に不可能。今はもう、彼女を負けさせる以外に方法はない。
ならば、と狂死郎は顔を円形の闘技場の一端。最上階に向けて声を上げるも──
「──ぬえ様!!! もう誰の目から見ても拙者の勝ちは明らか!!! 試合終了の宣言をお願い申す!!!」
『……んー? そうかなぁ。私の目から見ると小紫ちゃんはまだ戦えそうだけどねぇ』
「これ以上やれば命を落とす!! 早く、試合終了の──」
『──私の見立てが間違ってるって言いたいの?』
「……!!!」
審判でもあり、この大会の全てを差配するぬえにしつこく異議を申し立てるが……それが気分を害したのか底冷えするような獣の目でぬえが狂死郎を見つめてくる。
その表情に普段の笑みはない。酷く冷たい。捕食者の瞳だった。人とは思えない──人を人と思っていない怪物性がその表層に現れる。
試合を観戦していた下っ端達もそれを感じ取ったのか会場が静かになる。彼らにとってもぬえの激情など死んでも味わいたくないものだ。笑みを浮かべながらも息を呑み、気分を読んで黙るのが間違いない生存のための手段だと本能的に感じ取っている。
だがぬえもすぐに表情は崩した。会場の盛り下がりを見てやめたのか、単純に怒りが引いたのか、それとも気まぐれか──理由はわからないがぬえは再び明るい笑顔を浮かべてマイクで喋り始めた。
『──まあでももしかしたらそういうこともあるかもね!! ということで小紫ちゃん自身に決めてもらおっか!! ……どうかな? 小紫ちゃん♡ 無理っていうなら終わってもいいけど……まだ戦えるかな?』
「……!! 当然……です……!! 私はまだ……ゼェ……戦え、ます……!!!」
「……!! (そんな……!!)」
『……だってさ♡ ってことでそんなに勝負を終わらせたいなら小紫ちゃんに“まいった”って言わせたら狂死郎の勝ちでいいよ!!!』
『え~~!!? いやぬえさん!! それじゃあまた小紫たんが傷だらけになっちまうぜ!!! せっかく美人で気に入ってんだからやめてくれよ!!!』
『顔は仮面で守ってるだろうから別にいいじゃない──はい、それでけって~~い!! あ、勿論狂死郎は今までのルール通り棄権なんてしちゃダメだからね? まあしないとは思うけどさ』
『えー!!?』
「っ……!!」
ぬえが決めたその突然のルール変更に、狂死郎は歯を食いしばる。
異を唱えたのが逆効果だった。“まいった”と言わせれば勝ちとは言うが、それが厳しいことは会場の者達も狂死郎も誰もが知っている。
「いいですね……!!! なら、それで……続けましょう……!!!」
「……!! 相変わらず……ゾンビみてェなタフさだな……!!」
「なんであれで動けるんだ……!?」
「無駄にタフれすからねえ……小紫は……あ、いやタフじゃないれす!!」
何しろ──小紫のタフさは百獣海賊団の中でも知れ渡るほどに……常軌を逸している。
観客の誰かが畏怖する言葉を投げた。それは多くの者が思っていること。
実際、単純なタフさ。耐久力は大看板にも敵うべくもないし、他の飛び六胞と比べて高い訳ではない。
問題は精神力だ。小紫という人物はどれだけ重傷を負っても、戦い続ける。戦いを止めない。気絶することなく、自分が死にかねない状態でも戦い続ける。
それは見方によっては死に向かっているようだ。運良く生き残っているに過ぎないと噂もされるが、実際にそれはそう。彼女は今までに何度も死んでもおかしくない──が、運良く生き残って今日まで生き延びているだけだ。
その異常な精神力も含めたタフさと運で戦い続け、それで得た“飛び六胞”という地位だ。
これまでに何人もの真打ちが小紫に戦いを挑んだが、誰もが根負けした。中には優位に立ち回る者もいたが、粘りに粘られ、体力が衰えてきたところで逆転される。小紫はボロボロでも、最後の瞬間に立っていたのは小紫だった。絶対に負けとは認めない。命尽きるまでは立ち上がって戦い続ける。
ゆえに彼女に負けを認めさせるのは何よりも難しい。気絶でもすればそれで終わりだが、気絶も中々しない。
無論殺す気でやればどうにでもなる相手ではあるが──殺すのを禁じられている、そして殺す気など微塵もない傅ジローからすればこれほど難しい勝利条件はない。
おまけに負けることも出来ないともなれば……八方塞がりだ。
(どうする……!!? これ以上傷を負わせては本当に死んでしまう……!! どうにかしてこちらが重傷を負って負けるしか……!! しかしぬえの目を欺けるか……!!?)
傅ジローは必死に考える。こうなればどうにかして負けるしかないが、それが難しいことは何年と百獣海賊団のことを調べて潜伏していた狂死郎として知っている。
そもそも仮に欺けたとしても……それがぬえにとって気に入らない結末だったとなれば、認められない可能性だってある。
つまり少しでも怪しいと思われれば終わりだ。どうにかして戦えない状態に持っていくか、あるいは上手に負けてみせるか──
「……随分と……余裕ですね……!!!」
「!!? 小紫……っ!!!」
様、とは付けることが出来ない。未だ自分はオロチに仕えていた侠客、狂死郎。そのことが歯がゆい。許されるならすぐに日和を保護して差し上げたいが、それは日和自身に強く拒絶されている。身分をこの場で明かすことも叶わない。
日和は未だに小紫として、こちらに強い戦意を向けてきていた。
「そうやって考え事をして……隙を突かれても知りませんよ……!!!」
「……! そろそろ諦めたらどうだ……!!? どれだけやっても拙者には勝てはせぬ……!!!」
「やってみなければわからない……終わってみるまではわかりませんよ……!!! “河童流”……!!」
「……!!」
小紫の覇気が膨れ上がる。人獣型。二刀の刀の内、“外無双”を使ったその技はこの世にはいない傅ジローの同志の流派であり、日和がアレンジした技だ。
「“
「!!! ……くっ……!!」
凄まじい力。鋭い剣捌きだ。ここにきてここ1番の強さを見せた日和に傅ジローは一瞬、感服するが、すぐに気を引き締め直す。手加減は出来ない。どうにかして勝つしかない。そのための方法を、この瞬間に傅ジローは思いついた。
(確かこの下は海……!! 出来るかはわからないが、舞台を壊して海に落とすしかない……!!! 能力者ならどうあがいても海に浸かっては戦えない……!!!)
この特設闘技場は海の上にある。舞台は硬い材質で作られ、周囲もその壁で囲まれているが、下にあるのは海水だ。そこに沈めれば勝つことが出来る。
能力者が海に沈んだならさすがのぬえも決着を告げるしかない。誰の目から見ても明らかな勝利だ。そのために傅ジローは跳躍し、下にいる小紫と舞台に向けて刀を振りかぶって力を込めた。全力でやるしかない。舞台を斬って破壊する。これまでの戦闘でそれほどの破壊は起きていないが、出来ないことはない筈──否、やるしかないのだと強く意志を込め、
「……“おでん”……“二刀流”──」
「……!! え……!!?」
──そんな時、傅ジローは確かに聞いた。
亡き主君の流派。その構え。天下無敵のその剣術。あのカイドウにすら傷をつけた伝説の一撃。
日和が知る筈のないその構えと技。教えたことなど一度もないそれを見て、狂死郎は意図せずして──僅かに隙を生んでしまう。
そしてその瞬間を──日和は見逃さなかった。
『──“桃源十拳”!!!』
「!!!?」
宙へ飛んだ小紫が──狂死郎の身体を斬り裂く。
刹那、観客は息を呑んだ。
ウェイターズもプレジャーズもギフターズもメアリーズも。真打ちや飛び六胞、大看板も驚いた。
そしてカイドウもぬえも──表情を喜悦のものへと変えて見ていた。
そしてその瞬間を……地面へ叩きつけられた傅ジローはゆっくりと感じていた。
「これ……は……!!?」
そしてゆっくりと声を出し、そして力を込めようとして驚愕する。
立てない。
刀を持つ手に力が籠もらない。
これでは戦闘継続は不可能だ。負けと言わざるを得ない。
だが意図しない隙での敗北だ。日和を傷つけずに済んで嬉しい筈。
だが一方で、自分が立てないほどに力が込められた一撃。覇気が、意志が込められた一撃に……傅ジローは涙を流す。
(日和様は……!! 日和様の復讐に懸ける意志は……これほどまでに強いのか……!!!)
その意志の強さを感じ取ってしまったのだ。
日和はもはや“復讐”しか見えていない。“復讐”を自分の手で完遂しなければならないと強く思い込んでいる。
日常を、友を、仲間を、家族を、平穏を、未来を──何もかもを捨てて……“力”を得ることに執心させられている。
絶対に敵わない。少なくともこのままでは。この強さでは。たった1人では。
しかしそれを行うことを自分の意志で決めるように導かれている。
誰が? どんな目的で? ──それは決まりきっていた。
「よくやったね──小紫ちゃん♡」
「ハァ……ハァ……!!」
空から諸悪の根源が舞い降りる。
“妖獣のぬえ”。カイドウと並ぶ光月家の……ワノ国を滅ぼした仇の1人。同志である“河松”を日和の手で葬らせ、今なお日和を復讐へ導く怪物。
それが日和の側に舞い降り、血に染まった彼女を褒め称えながらもこちらを見ている。
あまりにも──憎い。
真打ち狂死郎として“ダメだ”と思いながらも憎悪を向けてしまう。ぬえがゆっくりと近づいてくる。不思議と仇が近寄ってくると力が湧き上がった。やってはならないが、それでも刀を握れる。握ってそれを突き立てられればどれだけいいかと──
「そして……お疲れ様──
「!!!? な……に……!!?」
──血の気が引く。
名前を呼ばれた。仮の名ではない。欺くための名前ではない……本当の自分の正体を暴かれた。
「知らないとでも思った? ふふふ、ざーんねん♪
「……!! くっ……!!」
「はい、だーめ♪」
「ぐ、ァ……!!」
刀を握ろうとした手を踏み潰される。見た目通りの少女の力ではない。どれだけ力を入れても動かせない、万力のような力で手を踏み潰される。動きは軽く見えるが、そうではないのだ。
そうして反撃の手を潰されながら、日和の方を見る。バレる筈のない偽装がバレた。どこからバレたのか──考えられるのは日和しかいない。まさか自分を売ったのかと息の荒い日和を見るが、
「っ……ぬえ……さん……!!」
「!!?」
──いや違う!! 日和様ではない!!!
傅ジローは即座にそう判断する。日和の表情が純粋な驚きに満ちていたからだ。
それはこちらの正体をぬえが知っているとは思わなかったというもの。あるいは、知ってはいてもおかしくないが、本当に知っていたのかと驚くものだ。日和ではない。手段は違えど仇討ちという共通の目的のある日和が教える筈はない。
なら一体誰が?
「ふんふ~ん♪ それじゃこれで試合は決着。勝者は小紫ちゃんってことでー……これから試合合間のレクリエーションとして、裏切り者の狂死郎の粛清ショーを始めるよ~~~~!!!」
「え……?」
「裏切り者……!!?」
「まさか!! 狂死郎親分が!!?」
ぬえの宣言に会場がざわめく。狂死郎が裏切り者という情報が信じられないようだ。昔からいる百獣海賊団の海賊達やオロチに仕えていた侍、忍者達も汗を掻いて心底驚いている。それほどまでにオロチに忠誠を尽くし、これまで過ごしてきたのが“狂死郎”という男だ。ゆえに彼らは驚愕する。
そしてその中でも特に驚き、思わず控え室から舞台の上に駆けてきたのは、
「おいおい嘘だろぬえさん!! 狂死郎が裏切り者!!? そりゃ何かの間違いだ!!! とても信じられねェ!!!」
(……! ササキ……!!)
百獣海賊団“飛び六胞”の1人。ササキ。“狂死郎”が情報を得るための付き合いとして関係を築いていた親友だ。
会場がざわめく中、僅かに焦りながらもぬえに恐れずそれは間違いだと告げるササキは心底狂死郎を信じているのだろう。だがぬえは容赦なく真実を突きつける。ややササキの顔を見て、言葉を選んでいるのか考え込みながらも、
「……残念だけどね、こいつは裏切り者なんだよササキ──いや、最初っから味方じゃなかったと言うべきかな?」
「そんな訳ねェ!! 狂死郎はずっとオロチに従ってきたヤクザ者だろ!! 一体何の根拠があるってんだぬえさん!!?」
「んー……ごめんね? まさかここまで友情を感じてると思わなかったし、しばらく泳がせたかったから黙ってたけど間違いなく狂死郎は“敵”なんだよ──ね!!」
「っ!!」
「!!? これは……!!!」
「おいおい……あの背中の家紋って……!!?」
ぬえが台詞の最後を口にすると同時に、狂死郎の服を下にずらして背中を露わにさせる。UFOの映像電伝虫もそれを映して会場全体に届ける。
そこに映っているのは──輪を描く鳥の紋。
ワノ国の侍は元より、長らくワノ国を拠点にし、かつてそれを滅ぼした百獣海賊団の面々はその家紋を知っている。ワノ国の将軍の家柄。九里の大名。カイドウに傷を負わせたあの男の家。そして狂死郎の正体をぬえは暴露する。
「“光月家”の家紋……!!?」
「──そう、これはあの“光月家”の家紋。そしてそれを背中に背負う狂死郎の正体は──“赤鞘九人男”の1人、傅ジロー!!!」
「……!! まさか……“赤鞘”の1人が生き残ってたのか……!!」
「狂死郎が……!!」
「……っ……!!」
もはや覆せない。弁明も釈明も不可能。たとえ傅ジローでないと証明したところでこの背中の家紋は決定的な裏切りの証。
「まあこの家紋だけで傅ジローだという証拠にはならないけど……それでもわかったでしょ? 狂死郎は光月家の家臣。私達の首を取ろうと目論んでずっと潜伏してたんだってね」
「…………マジなのかよ、狂死郎」
ササキが家紋を確認して真剣な表情で拳を握りしめながら問いを投げた。
だが狂死郎ではない傅ジローは答えない。歯を食いしばって捕まってしまったことを内心で同志達に謝ることしか出来ない。
そうして答えない狂死郎を見て、ササキもわかったのだろう。表情を虚しいものから怒りへと変えて狂死郎を睨みつける。
「……ああ、そうかよ……おれはマヌケだな……!!! ずっとダマされてたってワケだ……!!!」
「ここまで馴染んでた傅ジローを褒めるべきだと思うけどね。私がいなきゃ誰も気づかなかっただろうし」
「……なぜ……どこで気づいた……!!?」
「──さーて、どこだろうね~? なんでだろうね~? 気になるだろうけど教えてあげなーい!!! ……とまあそんなことより!!」
傅ジローがなぜ気づいたのかと質問したがぬえは子供のような可愛らしい、意地悪い笑顔を浮かべて答えなかった。少し溜めてどこからか槍を取り出して見せる。ぬえの得物である三叉槍。それを傅ジローの首に突きつけながら、
「これからあなたの粛清を始めるワケだけど……その前に助かるチャンスをあげる!! もしあなたが狂死郎じゃなくて傅ジローとして私達に忠誠を誓うなら……改めてウチに迎え入れてあげるよ!!! 潜伏してた件や昔のことも水に流してあげる!!!」
「……!!」
ぬえの告げた提案は傅ジローの誇りを傷つけるものだった。光月家を裏切り、自分達に忠誠を誓えと。
それは狂死郎としてオロチの忠臣として過ごしてきた傅ジローにとっても、決して簡単なことではない。狂死郎としてではなく傅ジローとして部下になれとぬえは言っている。
そんな要求は絶対に飲めない。だから返答するまでもなく、代わりに傅ジローは疑問を口にした。
「なぜ日和様は……!! 生かし続けている……!!? 拙者は殺し、日和様は生かす……!! その理由は何だ……!!?」
「……んー……その質問に質問で返すのは“断る”ってことでいいのかな? だったら地獄を見せちゃうけど」
「くどい……!! 拙者の質問に答えろ……!! なぜ貴様達は日和様を生かしている……!!?」
百獣海賊団の幹部にとっては周知の事実である小紫が光月日和であること。それが露見していることはとっくの昔に日和自身から狂死郎も聞いていた。その際に河松も死んだことも。
だが解せない。裏切るその時まで道楽で日和を生かし続けるなら、なぜ自分達はそうしないのか。自分達を殺して、日和だけは生かす理由はなんなのか。
そこに悪意が隠れているような予感がして、傅ジローは聞かざるを得ない。自分はいい。だが日和だけはどうしても救わなければならないのだ。
「……別に答える義理はないんだけどなー。まあでもいいか。冥土の土産に教えてあげる」
しかしぬえが答えるとは限らないし、日和が自分のこれからの言葉で覚めてくれるとも限らなかったが……だが意外にもぬえは素直に答える意思を見せる。傅ジローの耳元に顔を近づけ目を細めると、
「と言ってもなんてことはないんだけどね──要は“投資”で楽しんでるの。ちょっと前から嵌っててね。成功も失敗も楽しめるというか……どっちに転んでも楽しめるの♪」
「! 投資……だと……!!?」
「ええ。もっぱら人への投資♡ 日和ちゃんの場合は……もうほぼありえないとは思うけど万が一これから急成長して私達に届き得るほどになったら楽しめるし、もし失敗しても──
「……!!!」
“投資”という耳を疑う発言に続き、更に悪意に満ちた言葉を聞いて傅ジローは顔を怒りで染めた。そして同時に悔しさで顔が歪む。要は──全てが道楽で……日和を嬲り、弄んでいるのだ。
「まー最終的にはどっちにしろ殺すんだけどね。でもほら、弱い奴殺すよりも、強い奴と死闘を繰り広げてその末に殺す方が達成感があって楽しいし、何の因縁もない相手を普通に殺すより……必死に何がなんでも私達を倒したい、殺したい──って思ってる人を虫ケラのように殺す方が楽しいじゃない♡」
「貴様……!! そんなことのために日和様を……!!!」
「
「おでん様のことを知ったように語るな……!!!」
ぬえの言葉に傅ジローは怒りを込めて言葉を吐き捨てた──が、多くは否定はしない。海賊がそうであることは知っている。おでんが、そうであったことも。
だがこいつらは“獣”であり、何よりも“仇”だ。今更何が正しかったのかとそんなことを論ずる気はない。相手を説き伏せる気もない。ただこちらのエゴで、相手のエゴを否定したかった。大好きな人の仇を討ちたかった。
そして実際にぬえはその気持ちをよくわかるのだろう。おでんのことを正しく理解し、好ましく思いながらも──その上で遺した者すら全て踏み躙ろうとしている。カイドウと同様に。
「私は“バカ”が好きよ……ロジャーも……“白ひげ”も……おでんも……
意志の強い者をぬえは好む。
言ってしまえばそれだけ。そんな純粋な気持ちであり、悪意はぬえの一面にして手段に過ぎない。まるで恋する乙女のように、それでいて宿敵を待ち望む獣のような表情で恋い焦がれている。
強い感情を向けられたい。強い意志を持つ人と戦い、それをどうにかしたい。敬意を払って弔うのも尊厳を破壊して無残に踏みにじるのもぬえにとっては同じ欲望。ただ自分達の野望や好みと合わせてその時その時取捨選択しているに過ぎない。
海賊は自由でなにものにも縛られない。欲望に正直で人助けも悪行もどちらも楽しむ。野望や欲望の邪魔になるなら消すが、それに繋がるなら生かす──それが本物の海賊の教えであり自分なりの流儀だ。
「言ってしまえば日和ちゃんはまだ“バカ”になる可能性がある。でもあなた達は……もうそんな希望もないかなって。時間もないし、利用するにも戦力は間に合ってる。──だったらここで殺して楽しむのもそれはそれで“利益”になるってものじゃない?」
「ウォロロロ……狂死郎……残念だ。もう少し強けりゃ生かしてやったんだが、今の小紫程度に負けるとはな。その程度じゃどの道おれ達を殺すなんて不可能だ……!! おれ達の下にもつかねェとあっちゃ殺すしかねェ……!!!」
この世界ではバカほど強い。強くなる──というのがぬえの持論だ。
頭が悪いという意味ではない──どんな方向でも常軌を逸した意志を持つ者が、ここでは何よりも強い。
だからぬえは自分を曲げなかった。カイドウと共に、目の前の弱者を好きなように蹂躙して楽しむ。
「大丈夫。あなた達のかわいいかわいい日和ちゃんは……私達がちゃ~~んと育てて最後に美味しく頂いてあげるからさ♡ 墓だって作ってちゃんとお葬式までして涙流してあげる♡ ──ま、途中で見込みがなくなったら適当に殺しちゃうかもだけどね!! あはははは!!!」
「っ……!!!」
「…………!!」
狂死郎が口から血を流す。その様を日和は体力の限界で、舞台に膝を突きながら呆然と見ていた。日和もまさか傅ジローがこの場で殺されるとは思っていなかったのだろう。覚悟はしていても、さすがに自分の身内も同然の相手の死を見るのは精神を揺さぶられる。たとえ、2度目であっても。
ぬえやカイドウの笑いにつられて観客もようやく事態を呑み込んで楽しんで笑い始めた。傅ジローは処刑の時をただ待つのみとなる。が、不幸はそれだけでは終わらない。
「ササキ!!」
「!」
ぬえが近くで狂死郎をじっと見ていたササキに声を掛け、どこからか持ってきたのか幾つかの武器や拷問器具をUFOから舞台の上に落とす。──それだけで何が起きるのか、許されるのかは察せられた。
「あなたにやらせてあげる。狂死郎には色々思うところもあるでしょ? 親友だったあなたが狂死郎を
「!! おい!! なぜ日和様まで……!!?」
ササキが拷問と処刑を命じられるが、小紫も含まれたために傅ジローは思わず声を上げる。ぬえはやれやれと肩を竦めて答えた。
「いやだって小紫ちゃんの次の相手はササキだし。それで小紫ちゃんは……もう本当に戦えそうにないし、せっかくだから修行してもらおうと思って。どうせ同じことだよ。小紫ちゃんは試合、棄権しないでしょ?」
「…………は、い……」
「日和様!! なんてことを……すぐに──ウ!!?」
日和が頷いたことに傅ジローが言葉を掛けて思いとどまらせようとするが、しかし途中で背中に衝撃を受けて言葉が告げなくなる。──踏みつけたのはササキだった。
「そうかよ……小紫もてめェもナメやがって……!! ──なあぬえさん、小紫は殺さなきゃどれだけ痛めつけても構わねェんだな?」
「今後戦えなくなるくらいの後遺症とか出ちゃうと困るけどねー。でもどうせ回復するし、回復手段もなくはないから別にいいよ!! これも小紫ちゃんがより強くなるための修行だからね!!!」
「……くくく、だとよ狂死郎……いや、傅ジローか……せっかくだ。お前におれを裏切った報いを受けさせる前に、小紫を痛めつけておれの怒りを見せてやる……!!!」
「!!? やめろ……ササキ……!!! ぐっ!!?」
「いつまで親友面してやがる……!! フザけやがって……どの道暴れなきゃ収まりそうにないぜ……!!! この怒りはよ……!!!」
ササキが人獣型に変型し、傅ジローから離れて日和を見下ろす。日和はよろよろと戦うために立ち上がろうとしており、何とか刀も握っているが──その様ではササキ相手に戦闘になる筈がない。
「恨むんじゃねェぞ。ぬえさんの言うように、てめェはあっちの裏切り者と違ってまだおれ達の仲間だ……!! 仲間ならわかるよな? 戦って、どれだけやられようが重傷を負おうが恨みっこなしだ……!!!」
「……ええ、当然です……!!!」
「うんうん、仲間って素晴らしいね!!! 勿論小紫ちゃんも戦えるなら戦って抵抗していいし、なんならササキを倒してもいいからね!!! そしたら後でご褒美に美味しいもの沢山食べさせてあげるよ!!!」
『ウオ~~~!! ショッキングな展開だぜ小紫たん!!! 可哀想だがしょうがねェ!!! 試合は棄権無し!!! 勝ったなら死亡しない限りは戦い続けるのが“百獣杯”だ!!! おれ達に挑むならこれくらいの長く絶え間ない戦闘も耐えられなきゃどうしようもないぜ!!!』
「ギャハハ!! 面白ェ!! 小紫の奴、まだ戦うつもりだぞ!!」
「処刑ショーも見ものだな!! 裏切り者は
「ウオオオオオオオ~~~~~!!!」
会場に歓声が響き渡る。彼らにとっては“飛び六胞”同士の試合も裏切り者の処刑も等しく娯楽だ。
そしてクイーンの言う“これくらい耐えられなきゃ”という言葉も正しい。この一対一のトーナメント方式。連続する戦いも“大看板”への挑戦権を賭けた試験として正しい。大看板ならどれだけ戦ってボコボコにされようとも立ち上がり、戦闘を継続する。死なない限りは倒れても復活し、カイドウとぬえのために戦うことが出来る“災害”。それが“大看板”だ。
そういう意味では小紫は最も大看板への適性があり、最も向いていない。カイドウとぬえへの忠誠心は皆無だが、遂に立ち上がってササキに向かって刀を構えている。膝を突いていたのは僅かでも回復するためだったのやもしれない。
「──さあ遂にベスト8!!! まあまだ終わってないベスト16の試合もあるけどその辺りはノリで進めてくよ!!! ササキVS小紫!!! 遂に飛び六胞同士が激突!!! そして狂死郎こと傅ジローの見せしめ残虐処刑ショー!!! 裏切り者はこうなるからね!!! どちらも見逃すな!!! チャンネルはそのままでね♡」
『いやチャンネルとかねェけどな!!!』
「ぎゃはははは!!!」
そしてぬえがそのまま、ササキと小紫がいる舞台の上で試合前の口上を謳い、クイーンがそれにツッコミを入れる。観客が笑い、小紫とササキが覇気と共に戦闘態勢を取り、狂死郎が失意と怒りの表情で涙を流した。
そんな中、ぬえは試合開始の宣言を高らかにマイク越しに告げ──
「──さあササキVS小紫!!! 試合開…………!!!」
「……ん?」
「え?」
『え~~~~~!!? 言わねェのかよ!!! どうしたんだぬえさん!!!』
「…………(この気配は……!!)」
──告げられなかった。
会場がタイミングをすかされ乗りきれず、クイーンが見逃さずにすかさずツッコミを入れるが、ぬえは上を見上げて訝しむ表情を見せたままで……何かを感じ取った。
(……キッド? キラー? ホーキンス? ──いや違う)
ぬえは内心で自分自身の質問に全て否と断ずる。今あげた最悪の世代の3人。その来島はカイドウやぬえ、大看板が事前に知るところであった。
加えてぬえは見聞色の覇気で確信はないが確実に何人かの強者が島にいることを知っている。ぬえの見聞色の覇気の範囲は旧ワノ国全域、新鬼ヶ島全域と近海を覆いカバーするほどに圧倒的に広い。デルタ島全域を感知してお釣りが来る。近海の半径数百キロまで全てぬえの知覚範囲だ。
だが見聞色の覇気は人の判別までは不可能だ。範囲にいる生物の覇気の強弱である程度見分けることは可能だが、強者が複数いればどれが誰かを判別出来るものではなく、強弱がはっきりしていても個々人をそれぞれ知らなければ誰かを判別出来るものではないのは当然のこと。
そしてぬえが感知したのは今島にいることを承知しているその誰でもなく、その上その誰よりも──
「……あは♡」
そこでぬえは確信し、破顔する。その目にはもう日和も傅ジローも映っていない。
獲物を呼び寄せる自分達の企みが想定以上に成功し──想像以上の
ぬえが企みの成功を確信する数分前、地下では
「ウ……!!」
「ハァ……ハァ……!!」
「クソ……何だってんだ……!!?」
地下はフェスタのアジトであり、百獣海賊団も預かり知らない──多くは調べていない場所だった。
だがフェスタの誘いと情報屋であるアプーの情報により、カイドウとぬえは最悪の世代の3人をそこに誘い出し、一網打尽にして捕らえようと目論んだ。
だがその地下で血塗れになって傷つき……しかし意識を保っているのは──たった5人。
キッド。
キラー。
ホーキンス。
アプー。
そして──ジャック。
3人を襲撃したアプーはともかく、“大看板”ジャックまでもが身体中に傷を負っていた。
だがそれはキッド達が負わせたものではない。ジャックとアプーがキッド達と戦った際、優勢だったのはジャックでキッド達は部下を含めてその殆どが倒され、絶体絶命の窮地にあった。
だがそれを、キッド達にジャック達ごと全て破壊したのは──ジャックより少し小柄な浅黒い肌の大男。
「──もういいだろう。露払いは十分だ……!!!」
その男はジャック達を地に沈め、その上で地上へと向かう。
男が目指すのはこんな小粒ではない──“世界最強”。
現世界最強を超えて誰も成し得たことのない最強の海賊になること。
その勝負の場は整った。露払いに手を組んだ連中によって準備も整っている。
ならば後は挑むだけ。自らの強さだけを信じて、かつて“ガルツバーグの惨劇”を起こし、ロジャー海賊団で悪名を広げ、インペルダウンから脱獄した伝説の海賊の1人。
「カハハハハ……!!! 世界最強を賭けて……勝負だ……!!! “百獣海賊団”……!!!」
──“鬼の跡目”と呼ばれた男……ダグラス・バレット。
20年もの間、地獄で力を溜め続けた男が──遂に表舞台に姿を現した。
ローVSディアマンテ→詳細は後に。ドフラミンゴとかローの話で。
ブエナ・フェスタ→久しぶりの登場。カイドウ達と表向き手を組んでる。
オワリ→能力者になってる。ふわふわ浮く能力ってなんだろうなー(棒)
試合→ほぼダイジェスト。ちゃんとトーナメント表まで用意したんだけどね……カクとジャブラはそれぞれ飛び六胞に負けました。
フーズ・フーVSロブ・ルッチ→飛び六胞は六式履修済み。ということでルッチ敗北。1年ならこんなもんよね。でも頑張りました。
日和→耐久力と回復力がそろそろヤバいかもしれない。狂死郎がここで殺されるとまでは思ってなかった。
傅ジロー→身バレ。日和ちゃんで絶望。身バレで怒りと悔しさ。色々と美味しい。
ササキ→裏切られて怒り。友情崩壊。
ぬえちゃんの好み→(色んな意味で)バカ、(色んな意味で)強い奴
ぬえちゃんの見聞色→半径にして数百キロくらい? 化け物。
バレット→劇場版最強ボス。強さは準四皇級? 次回仕掛けます。
ぬえちゃん→ファン必見の新情報(趣味、好み)が目白押しでかわいい。次回迎え撃ちます。
今回はこんなところで。話が進みました。試合がある程度ダイジェストなのはすまねぇ。一試合一試合書いてたらいつまで経っても終わらないので……でも今回飛ばした試合の内何個かは後にやり取りを書いたりするかもねって。でも昇格争いもまだ終わってません。次回からまた戦いです。飛び六胞とか大看板にぬえちゃんにカイドウさんも全員参加のスタンピード。遂に始まります。お楽しみに。
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