正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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たった1人の家族

 ──新世界、ドレスローザ近海。

 

 騒乱巻き起こるドレスローザの近海。普段よりも荒れ狂うその波間に、一隻の巨大な船があった。

 その船は現代の技術よりも遥かに高度な科学技術で作られた船であり、一目見れば誰もが震え上がる“四皇”の旗を掲げた海賊船でもあった。

 

「見えてきたな……ふむ、まだ戦いの最中か」

 

 その船内。窓から望遠鏡と思わしきもので遠く、ドレスローザを覗いて呟いたのは老人だった。

 だがそれはただの老人ではない。この船に使われた数多の科学技術──否、科学帝国を形成するに至った数多の科学技術を発見、発明した世界一の科学者であった。

 

「おう! 戦いの最中じゃな!! なら乗り込むか!! 試したい発明品は山程あるぞ!!!」

 

「いや待て“(リリス)”!! あれは頂上戦争でも確認されたイトイトの実の“鳥カゴ”……!! 電伝虫の念波だけでなくあらゆる電波、通信の類を遮断する絶対の防衛膜!! あれでは島への上陸は難しい……!!」

 

「何じゃと!? フザケおって……!!」

 

 だが、その世界一の科学者は1人ではない。

 望遠鏡を覗く老人とは別に発明品と思わしき銃のようなものを手に持つ美女──“悪”と呼ばれた美女は老人の言葉に憤慨する。

 その性格は同一人物でありながら全く違っていた。その“本体“と“猫”の関係である2人を、もう1人──成り行きで付いてくるはめになった赤鼻の男が大声で口を挟む。

 

「──ああ、そうだ。乗り込めねェなんて冗談じゃねェ。どうにかしてあの戦いに参加して…………なんて言う訳ねェだろうこのスットコドッコイ!!!

 

「ならここで指をくわえて見てるしかないのか!!?」

 

「ううむ……どうにかして中にいる者に連絡が取れれば良いのじゃが……という訳でどうにかしてクエーサー」

 

「フザけんな!! 誰がそんな頼み……!!」

 

「念のため連れてきたセラフィム達の準備を」

 

「話聞けよ!!」

 

 月の明かりで照らされる夜の海の上で、また1人の大物が戦乱の最中にあるその島を訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

 ──“新世界”、ドレスローザ。

 

 2つの島に跨って作られた“神の大地”の麓。大勢の民衆と海賊帝国の雑兵が集まるその戦場は、とある男の参戦によって更に地獄と化していた。

 

「今だ!! 切り拓け!!」

 

「ウオオオオ~~~!!!」

 

 そしてその戦況は、新政府軍側に傾いていた。

 新政府軍の兵士が海賊たちに斬りかかる中、その理由を凍えた海賊たちが口にする。

 

「ダメだ!! チクショウ!! 止められねェ!!」

 

「弱音吐いてんじゃねェ!! 落ち目の新政府軍の元帥が出てきたぐらいで腰引けてんじゃねェよ!!」

 

「ならてめェが行けよ!!」

 

「…………」

 

「ひっ……!!」

 

 辺りに冷気が漂う中、文句を口にしていた海賊たちが次の瞬間、一斉に氷漬けになる。

 

「今だ!! クザン元帥に続け!!」

 

「ぐっ……!! クソ!! 落ち目でも元大将!! おれらで止められる訳がねェ!!」

 

「ジョーカー様かジャックさんに連絡を!!」

 

「バカ!! もうやってんだよ!!」

 

 百獣海賊団のウェイターズやプレジャーズ。一般戦闘員である彼らに、元海軍大将である“青雉“を止められる筈がない。

 ゆえに彼らは今、絶体絶命のピンチにあった。クザンの進軍は止まらない。次々と海賊と暴れる民衆を無力化して神の大地の麓に迫る。

 

「──おめェら“暴力の世界”を支持してんだろ。だったら自分が強者に無慈悲にやられても納得してくれるよな……?」

 

「うわァ~~~~!!?」

 

 そうしてクザンがまた更に海賊たちを氷漬けにしようと迫った──その瞬間。

 

「──悪いがここまでだ」

 

「!!」

 

「!!? クザンさん!!」

 

「あいつらは……!!」

 

 刹那、クザンに黒い影が迫り、その身体に打撃を与えて後方へ弾き飛ばす。

 そうして海賊たちの前に降り立った3人を、海賊たちも新政府軍の兵士も誰もが確認する。後者は歯噛みし、前者は口角を吊り上げた。

 

「やはり雑兵じゃ何人いようと時間稼ぎにもならねェか……」

 

「また随分とやられたのう」

 

「相手が元大将じゃ無理もねェだろ」

 

「ルッチさん!!」

 

「ロブ・ルッチ……!!」

 

「カクさんにジャブラさんもいるぞ!!」

 

「青キジをふっ飛ばした!!」

 

『百獣海賊団“メアリーズ”真打ち(元CP9)ロブ・ルッチ “ネコネコの実”モデル“レオパルド”覚醒フォルム』

 

 かつての人獣型とは違う姿でそこにいたのは、政府の諜報機関CP9の最高傑作とも言われたロブ・ルッチにその同僚であるカクとジャブラの3人。

 その3人を見て、吹き飛ばされ倒壊した民家から立ち上がったクザンはゆっくりと首を鳴らした。自然(ロギア)系“ヒエヒエの実”の能力者であるクザンに普通の攻撃は通じないし、覇気であっても並の覇気ではクザンにダメージを与えることは出来ない。

 だが目の前にいる3人──とくにロブ・ルッチはその前提を大きく乗り越えているようだった。それを思い、声に出す。

 

「元CP9の連中……海賊に身を落としたとは聞いてたがやってくれるな……」

 

「そちらも革命軍に身を落としてる。お互い様だ」

 

 互いに対峙し、睨み合う。元は世界政府の名の下、海軍とCPとはいえ同じ陣営にいた者達。

 しかも彼らは2年前にあったニコ・ロビンの一件の関係者でもあり、ちょっとした縁もある。それだけに、今は別の陣営にそれぞれ付いているということに奇妙なものがあった。

 

「はっ……それはそうかもな。だが革命軍は海軍の“正義”も受け継いでる……!! 海賊は許さねェって正義も昔と同じよ……!!」

 

「その海賊が今の世では“正義”の1つだ。海賊帝国にとって新政府は敵勢力の1つ……!! 排除させてもらう……!!!」

 

「まあそういうことじゃのう」

 

「こっちもこれが任務なんでな」

 

 革命軍も海賊も無法者であることに変わりはなく、その無法者に与しているのは互いに同じ。

 ゆえに相手を打ち崩す言葉をどちらも持たなかった。そして、仮に持っていたとしてもこの海では巧みな言葉よりも意志と力が物を言う。

 ゆえに交わすのは言葉でなく互いの矛だった。人獣型で戦闘態勢を取るCP9の3人に、クザンは同じく気を緩めないままに、しかし言葉も休めない。

 それは議論がしたい訳でなく、聞きたいことがあるからだった。それは、

 

「覚醒した動物(ゾオン)系の能力者複数の相手は参るな……時間がかかっちまう。勘弁してほしいところだが、そういう訳にはいかねェか……!!」

 

「さっきも言ったが任務だ……!! 諦めてもらおう……!!」

 

「任務、か。確かお前らはメアリーズ……百獣海賊団の諜報部隊だろ? おれなんかの足止めよりもっと重要な任務を任されてると思ってたがな……!!!」

 

 真っ先に肉薄して覇気を込めた拳を叩き込もうとしてくるルッチに対応しながらクザンは告げる。互いに世界政府に属していた者として分かることがある。新政府にとっても海賊帝国にとっても、居場所を捜索し、場合によっては消さなければならない者達のことを。

 

()()()()()()()()()のこと……お前らも追ってんじゃねェのか?」

 

「……!! 教えると思うか……!!?」

 

「情報交換くらいしてもいいと思ったんだがな。ならしょうがねェ……お前ら全員叩き潰した後で聞き出すとするか……!!!」

 

 新政府軍元帥クザンとロブ・ルッチ率いるメアリーズの真打ちが神の大地の麓で激突する。互いが持つ不安要素の情報を、胸に秘めたまま。

 

 

 

 

 

 ──“神の大地”、4段目。

 

 その頂上では、遂に“麦わらのルフィ”がこの戦場の支配者たちと対峙したところだった。

 

「処刑なんて……そんなこと……!! させるか……!! ゼェ……ゼェ……!!」

 

「フフ……息が上がってるわよ? ここまで必死に昇ってきて疲れてるでしょう。お年寄りなんだから無理は禁物よ」

 

「うるせェ!! 待ってろ、すぐにぶっ飛ばして……!! ゲホッ! ゲホッ!」

 

「ルフィ!!」

 

 膝に手を突き、大きく息を乱して咳を吐き出すルフィにハンコックが心配して声を掛けるが、この状況においては介抱することは難しかった。その場にいるローも同様に、その理由となる目の前にいる3人から目を離さないままに声を荒げる。

 

「おい麦わら屋!! 足手まといになるなら下がってろ!! 今はお前を診る余裕はねェ!!」

 

「ハァ……ハァ……それに親子って……誰と誰がだ……?」

 

「脳の機能が落ちてることは分かった。──そりゃあ……そこに転がってる2人のことだろう……!!」

 

 ジョーカーの発した言葉の内容を遅れて疑問に思うルフィにローが医者として無慈悲な結論を口にする。それに続けて、ローは険しい顔を緩めることなく視線を僅かにジョーカーの前で転がっている2人──元七武海の人間兵器バーソロミュー・くまと自分たちと同じ“最悪の世代”の海賊であるジュエリー・ボニーに向けた。

 

「え!!? くまとボニーが……親子~~~!!?」

 

「あら、聞いてなかったのね。同盟相手にすら関係性を隠してたなんて……冷たい子ね♡」

 

「っ……うる……せェ……!!」

 

 ルフィが大声を上げて驚くのを見てジョーカーは眼下のボニーに薄い笑みを向ける。その舐めきった態度にボニーは傷を負った身体にムチを打ち、よろよろと立ち上がった。

 

「まだやる気? 悪あがきをすると苦しい時間が長引くわよ?」

 

「黙れ……!! あたしの……たったひとりの家族だぞ……!! それを……そう簡単に諦められるか!!!」

 

 やがて完全に立ち上がったボニーは自らの身体を能力で強化する──だが、その動きに力はなく、覇気も弱まっている。

 ここまで散々ジョーカーに嬲られたボニーに戦う力はもうあまり残っていない。それは誰の目から見ても明らかだった。

 それでもなお彼女を衝き動かすのは、意志の力である。その諦めの悪さを見て、ジョーカーは僅かに目を細めた。

 

「……なるほど。やっぱりくまの子供というだけあってしぶといわね。仕方ないわ、次は動けないよう──手足の1つでももぎ取っておこうかしら」

 

「っ……!!」

 

 ジョーカーが手を振り上げてボニーに狙いを定める。

 そうして次の瞬間に起きるのは、ボニーが傷を負い、無力化されることだ。その危険性を読み取ったのだろう、ルフィは動いた。

 

「危ねェ!!」

 

「う……!! お前……!!」

 

 ルフィが腕を伸ばし、ボニーを地面に引き倒す。その直後にジョーカーの攻撃が先程までボニーが立っていた位置を通過した。

 

「あら……老人になってもそれだけ動けるなんて……そっちもそっちでさすがね」

 

「ハァ……ハァ……!! くそ……身体が思ったように動かねェ……!! 衰えてる……!!」

 

 何とかジョーカーの攻撃を回避し、ボニーと共に地面を転がるルフィだが、それが精一杯だった。

 老化した身体ではどうしても若い時と同じ動きは出来ない。力を発揮できない。老化がなくとも厳しい百獣海賊団の大看板という相手に、ルフィは息を荒らげながら歯噛みするしかなかった。

 

「おのれジョーカー……!!」

 

「ハハ、これはまた愉快なショーだ!! ハンコック、君の想い人が嬲られ死にゆく様を鑑賞できるとは!!」

 

「ぐ……麦わら屋……!!」

 

「フッフッフッ……!! どうにかしたいと思ってる顔だな、ロー。久しく見ねェ間に随分と仲間想いになったじゃねェか……!! 全く妬けちまうぜ……!! 本来その思いはウチのファミリーに向けられるハズだったってのによォ!!」

 

 そしてそのルフィのピンチを見て焦るハンコックとローだが、それぞれテゾーロとドフラミンゴという強敵を相手にするので精一杯であり、こちらも助け舟を出すことは出来ない。

 

「まずは“麦わらのルフィ”からね……!! 貴方にはもう殺害許可が出てる……さっきみたいに手加減する必要もないわ……!!」

 

「……!!」

 

 未だジョーカーに狙いをつけられ、ルフィは地面に倒れながらも必死に身構えた。続けてくるジョーカーの攻撃を防ぐために。

 だが。

 

「──と思ったけれど……まずは邪魔をしてくる()()の相手をしなきゃいけないみたい♡」

 

「え……!!?」

 

「──お父さん!!!」

 

 しかしジョーカーは防御を選んだ。立ち上がり、攻撃を仕掛けてくるもう一体の存在──くまの攻撃に対して。

 その異常事態にジョーカー以外の者達は驚きを見せる。戦いの最中ながら、その行動を見たドフラミンゴやテゾーロも。

 

「おいおい……こりゃどういうことだ? パシフィスタに掛けられた威権順位は書き換えられたハズじゃねェのか?」

 

「妙に破損しているから疑問に思っていたが……まさか先程までも反抗を?」

 

「フフ、まあね。ただ……大体どういう命令が残ってるかは見当がつくわ……!! こうなったら一度機能停止まで追い込んであげないとね……!!」

 

 その訳知り顔のジョーカーはその言葉と共にくまに攻撃を仕掛けようと動き出す。その身体を吸血鬼に──人獣型のものに変えて。

 そして人格の存在しない上に散々傷を負った今のくまが、ジョーカーに太刀打ち出来る筈もない。ゆえに誰もがこのままくまは破壊されると、そう思った。

 

「くそ……!! 止めてやる!! “ゴムゴムの”……」

 

「待て……麦わら……!!」

 

「うべ!!?」

 

 そしてそれを止めようと動き出すルフィを、更にボニーが止めた。その足を掴み、こけたルフィは軽く怒りながらボニーに向き直る。

 

「何すんだ!! 早くしねェとくまが……!!」

 

「──あたしが……その老化を何とかしてやる……」

 

「え!? ホントか!!?」

 

「ああ……だから……ハァ……ハァ……頼みがある……!!」

 

 地面に倒れたままのボニーは、その言葉を口にしようとする。内心に万感の想いを──父との思い出を浮かべながら。

 “暴君”、“七武海”、“革命軍”、“人間兵器”──世間からの評判は最悪だが、ボニーにとっては優しい父だった。

 それをある男の手によって兵器に作り変えられ、人間としてのくまは死んだ。そうして政府に使われ続け、今では海賊帝国の兵器として使われている。

 そんな状態の父を、ボニーは助けたいと思った。その想いは、ここに来て更に強くなった。

 

「頼む……!! あいつを倒して……くまを……お父さんを……!!」

 

 何しろくまは、人間として死んだ意志のない筈のくまは──ボニーを助けた。

 それはボニーが微かな希望と、そして父への情を溢れさせるのに十分な理由だった。

 だが自分に戦う力はもう殆ど残っていない。その悔しさと父への想いで涙を流し、ボニーは恥を忍んで言う。目の前の力を持つ男に向けて。

 

「助けてくれ……!!!」

 

「──ああ!! 分かった!!!」

 

 その言葉を、ルフィは迷うことなく力強く肯定する。

 その理由はボニーに頼まれたからというだけではない。

 

「くまはおれ達にとっても恩人なんだ!! それをあんな奴に好き勝手されてたまるか!!」

 

「……ありがとう……!!!」

 

 ボニーは礼を言い、そして能力を使う。ルフィに対して、その年齢を吐き出させる力を。

 

「さて……それじゃ残念だけど……少しの間眠ってもらうわよ、くま……!!」

 

 ジョーカーは鋭い爪をくまに向け、今にもそれを振り下ろそうとする。その瞬間だ。

 

「──やめろォ~~~~~!!!」

 

「!!?」

 

 横から、黒く硬化した巨大な腕が飛来し、ジョーカーに激突した。

 ジョーカーはそれを同じく覇気でガードし、軽く後ろに飛び退いて黄金の玉座の上に立ち、ダメージを最小限にしながら優雅にその敵対者を見下ろす。そして、その理由も即座に理解した。

 

「……なるほどね。一時的とはいえ……ようやく復活ということかしら。“麦わらのルフィ”……!!!

 

「これでようやく……思いっきり戦える!!!」

 

 玉座に続く階段の下に立っていたのは、若々しく──元の姿に戻っていた“麦わらのルフィ”だった。

 ジョーカーの吸血による老化現象。その効力を一時的に解いた。その首謀者であるボニーは叫ぶ。泣くのをやめながら。

 

「麦わらァ!! あたしの能力は生物に対して永遠の効力を持たない……!! 効力が切れればまた老人に戻る!! だからそれまでに何とかしろ!!!」

 

「ああ!! それで十分だ!!!」

 

「もう一度、スマートに仕留めてあげる♡ 愚直でおバカなあなたが“災害”の脅威にどこまで耐えられるかしらね……!!!」

 

 そうして宵闇の中。月明かりと黄金で煌めく神の大地の頂上で、最悪の世代の海賊。“麦わらのルフィ”と百獣海賊団の大看板。“戦災のジョーカー”が遂に激突する。

 

 

 

 

 

 ──“神の大地”、2段目。

 

 その黄金の大地を翔けるのは、翼を持った1人の男だった。

 

「おい見ろ!! “不死鳥のマルコ”だ!!」

 

「討ち取りゃ昇格間違いなしだぜ!!」

 

「ハァ……ハァ……!! さすがに無茶か……!? だがやらねェと……まずいことになるよい……!!」

 

 その男は白ひげ海賊団の1番隊隊長“不死鳥のマルコ”であり、彼は傷ついた身体を何とか再生しながら飛行し、立ち塞がろうとする海賊たちをついでに蹴散らしながらあることを行っていた。

 それは──2つの島にある全ての鏡の破壊。

 ビッグマム海賊団の将星カタクリとの戦いの最中、突如として現れたあの男の出現を知るマルコは、再び鏡の中から黒ひげが現れることを危惧して戦場を駆け巡っていた。

 

「せめて人手があれば……!!」

 

「うおおおおおおお~~~~~!!! こっちに来るんじゃねェ~~~~!!!」

 

「!?」

 

 ──そしてマルコが人手不足を嘆くそんな時。神の大地二段目に上がってきたとある男の情けない声に気づいた。

 

「麦わらの一味の……それに一緒に逃げてるのはトンタッタ族? ──おい!! どうしたんだよい!!?」

 

「うぎゃあああ~~~!!? また敵──って、うお!!? あんたは確か……白ひげの船の隊長!?」

 

「マルコだよい。そっちは敵と戦闘中か?」

 

「お、おおおうよ!! 今は何とか拮抗中……もう少しで倒せそうってところだ!!」

 

「えええ~~~~!!? ずっと逃げてるのにれすか!!?」

 

「さすがはウソランドれす!!」

 

 その爆走する集団の先頭にいる男とは、麦わらの一味の狙撃手であるウソップ。その名前と顔を予め話に聞いていたマルコは不死鳥の形態でウソップに並走しながら状況を聞く。あるいは協力し、助け合うために。

 

「そうか!! 敵との戦闘に問題がねェんなら聞いてほしいこととやってほしいことがあるよい!! 場合によっちゃ士気に問題が出る情報だがお前らなら問題ねェだろう!!」

 

「え、いや、そんな余裕……まあ一応聞くけど何だ!?」

 

「鏡の世界に黒ひげが来てる!! 鏡を見かけたら破壊するよう味方に伝えてくれよい!!」

 

「は!!?」

 

 その突然の情報にウソップはすぐに理解出来ずに間の抜けた声を出す。それが本当だとしたら中々に悪い報せに違いない。

 ──が、更に悪い報せは唐突に、そして味方から予想外に流れで伝えられた。

 

「? よく分からないけど鏡の世界から人が来るれすか?」

 

「鏡の世界があるなんて……!! まるで御伽噺みたいな話れすね!!」

 

「そう言えば自分もさっき通りすがりに聞いたれすよ!! 鏡の世界から後で()()()がやってくるって!! だから準備をするとか何とか……」

 

「ぬえ……どこかで聞いたことがあるような気がするれすけど……」

 

『はァ!!!?』

 

 そして、今度の驚きはウソップだけでなくマルコも同時だった。彼らは知る──この戦いに勝利するためには、今はこの場にいない強者たちの参戦を阻止する必要があるのだと。

 

 ──そしてその頃。“神の大地”、内部では。

 

「おらテキパキ動けェ!!」

 

「はい!!」

 

 その部屋は、石と黄金で造られた神の大地の内部にある秘密の大部屋であり、多くの機材を手に忙しなく動き回っている百獣海賊団の海賊たちが大勢いる部屋でもあった。

 

「音響チェック入りまーす!!」

 

「スパンダムさん!! 電伝虫オッケーです!!」

 

「よしよーし!! 準備は滞りねェようだな!!」

 

 そしてその百獣海賊団の撮影班。その中心にいるのは、この班の監督とディレクターを務める半仮面の男。

 

『百獣海賊団“真打ち”(撮影班)スパンダム 懸賞金1億ベリー』

 

「わはははは!! だが気は抜くんじゃねェぞ!! 登場シーンまでに準備はしっかり終わらせろ!!!」

 

『はい!!』

 

 元CP9の長官、現在は百獣海賊団の真打ちとして働くスパンダムは、予め島に入っていた大勢の部下たちと共に準備を進めていく。

 この島にいる多くの平団員。ウェイターズどころかギフターズや普通の真打ちですら知らないその極秘任務。この島の戦いの総仕上げとなる作戦を。

 

「くくく……!! 海賊帝国に逆らう新政府軍に目障りな海賊共……!! 結構頑張ってるみたいだが……お前たちの頑張りは最終的に無駄に終わるんだ……!! なにせこっちにはぬえさんが控えてるんだからなァ!!! ぎゃはははは!!!」

 

 スパンダムはその中心に置かれた特注の巨大な鏡の前で、その時の光景を想像して愉悦する。この戦いを有利に運ぼうとも──最終的にそれを全てぶち壊され、絶望する敵対者の表情を想像して。

 

 

 

 

 

 ──“鏡世界(ミロ・ワールド)”。

 

 辺りが闇に包まれ、鏡の破片が星々のように煌めく空間で、その拳は流星群のように目の前の男へと突き刺さった。

 

「キキーッ!!」

 

「ぐわァアアアアアア~~~~~~~!!!」

 

 “黒ひげ”マーシャル・D・ティーチの汚らしい心地いい絶叫が私の耳に届く。

 そうして地面に思い切り叩きつけられて転がる黒ひげを見下ろしながら、私は生み出したUFOの上でお猿さんらしく飛び跳ねて喜んだ。

 

「あはははは!!! ほらほら!! もう終わり!!? せっかく本気出してやってんだからもっと遊ぼうよ!!」

 

「ゲホ……ゲホ……!! ゼー……ゼー……クソ、めちゃくちゃに痛ェし速いし強ェ……!! デタラメな力だ……!!! これがカイドウと同格の力か……!!!」

 

 おっと。これでもまだダウンしないとはタフだねー。随分と苦しそうではあるし、結構な傷を負わせてるのは間違いないんだけど私たちと並び立てるような怪物クラスになると常識的な深手を負ったところで継戦能力に支障はない。

 これが黒ひげの実力で、あるいはその異形な体質も関係しているのだろうか。あらかた調べはついているとはいえ、気になるのでクイーン辺りに解剖させて調べてみたいところだけど……殺さずに仕留めるってのは無理そうだし諦めるしかなさそうだねっと。

 

「だが“覚醒”とはいえお前も能力者……!! 耐えてその力を抑え込めばおれの勝ちだ!!! ゼハハハハ!!!」

 

「ん~? 何? まさかの長期戦狙い? それはちょっと舐めすぎだよ。私と体力勝負しようなんてさぁ……!!!」

 

「おわ!!?」

 

 黒ひげの自信たっぷりの言葉に私はレーザーの雨を浴びせることで答えてやる。確かに黒ひげはタフだしその攻撃力も侮れない。私もそれなりにダメージを負っているが、それでもまだまだ体力は有り余っている。その程度の作戦で倒せると思われるのは心外だ。

 

「それにこれ以上触れさせるつもりもないよ!!!」

 

「ぐっ……!! うォ!!?」

 

 私は足に力を込めて宙を駆け、黒ひげの背後へと回る。羽がなくとも空中を自在に駆け回る、跳び回ることは一定の身体能力さえあれば難しいことじゃない。

 

「“帝釈天”!!」

 

 そうして繰り出すのは今度は拳ではなく槍を用いた嵐の如き連撃。ラッシュ。

 

「“破修羅(ヴァジュラ)”!!!」

 

「!!!」

 

「ウオァアアアアアアア~~~!!?」

 

 一撃一撃が相手を刺し貫き殺すその連撃を、黒ひげは覇気で身体を固めることで何とか致命傷だけを避ける──いや、それだけでなく同時に反撃も狙っていた。動けなくなるほどの傷のみを避け、黒ひげは闇の力をこちらへ向けてくる。

 

「“闇槍(くろやり)”!!!」

 

「っ!!」

 

 私を中心に向けられた引力。周囲の闇が塊となり、幾つもの槍となって私に降り注ぐ。

 それを躱し、捌き、受け、一部は食らってしまいながらも私は動きを止めない。黒ひげが攻撃重視で攻めてくるというなら──私だって攻め続けてやるのみ!! 

 

「“神鳥の化身(ガルダ・アヴァターラ)”!!!」

 

「!!? 今度は鳥か!!?

 

 お察しの通りだ。私は背中からいつもよりも大きくて黒い、燃える羽を生やし、宙を縦横無尽に高速飛行する。

 その速度は私の最高速。そしてその軌道はアイドル仕込み。

 

「“震破(グラッシュ)”!!!」

 

「遅い!!」

 

「ウッ!!」

 

 地震の力を込めた拳を放つ前に槍で黒ひげの身体を叩く。私はその勢いのまま動きを止めず、黒ひげを追いかけた。

 

「“舞終(マイトリー)”!!」

 

「ゲホッ!! 何だ!! 弾幕!!?」

 

 そして宙を舞いながら翼から放つ幾重にも渡る弾幕とその翼自体が対象を切り刻む──カイドウですら対処に苦労する高速の連撃を黒ひげに向けて放つ。

 

「“紋羽二重弩(ウパニシャッド)”!!!」

 

「!!!」

 

「ぬあ~~~~~~っ!!!」

 

 覇気を込めた両の燃える翼を叩きつけるようにぶつけ、黒ひげの身体を焼きながら真っ二つにしようと試みる──が、そこまでは至らず内臓や骨を焼き砕くに留まってしまう。

 

「中々死んでくれないね!! さすがは黒ひげ!! 私の本気の攻撃をここまで耐えるなんてやるじゃん!!」

 

「うがァ!! ハァ……ハァ……くそ!! 次に何をしてくるかが読めねェ!! バケバケの実もお前のことも……もっとよく調べておくべきだった……!!」

 

「世界一のアイドルの正体を探ろうなんて無駄無駄!! 調べたところで煙に巻かれるだけ!! 何かが分かるなんて……それこそ弱点なんてあると思ったら大間違いよ!!!」

 

 正体不明という私のアイデンティティにも等しいそれを破ることなんて誰にも出来やしない。ゆえに黒ひげが事前準備の少なさを後悔するのは全くの見当違いだ。

 そもそも黒ひげはこう言ってるが私のことは調べてきた筈。それでも分からない、分かることはそれなりにあっても私の底の部分には辿り着けない。

 

「さぁそろそろ終幕の時間よ!!! こっちはスケジュールも詰まってるんだから……!! さっさと殺して次の現場に向かわなきゃね!!!」

 

「ぐ……っ!! 待て待て!! 分かった!! 降参だ!! だから命だけは取らねェでくれ!!! ハァ……ハァ……そうだ!! おれと手を組まねェか!!? 戦力は入り用だろう!! おれが力を貸せば“千両道化”に“赤髪”!! こそこそ隠れてる政府の人間の打倒の役に立つ!! どうだ!!? 悪い話じゃねェだろう!!!」

 

「必要ないね♡」

 

 私は槍を構え、この期に及んで寝ぼけたことを抜かす黒ひげにとどめを刺すべく近づいていく。何をしてくるかを何となく察しながら。

 だがその世迷言の内容までは察することは出来なかった。する必要もなかったが……だからこそ、その言葉は予想外のものだった。

 

「っ……だったら良い情報を教えてやるよ!! 政府の奴らの秘密だ!!!」

 

「新政府なら今頃カイドウが叩き潰してる頃だよ。もう何を隠してようが……」

 

「そっちじゃねェ!! “世界政府”の方さ!!!」

 

「!」

 

 私はその黒ひげの放つ言葉に槍を放とうとしていた動きを止める。

 どう考えてもとってつけたような命乞いでしかない。それを聞いてやる必要性は皆無だ。

 だが不思議と黒ひげのその語りには耳を傾けてしまいそうになっていた。まだ分からないことがある。世界政府のことも、黒ひげ自身のことも。それがあるからだろう。

 だがそれを抜きにしても、黒ひげの言葉には異様な真実味と熱量が備わっていた。

 

「奴らの隠してる“宝”の隠し場所に心当たりがあるんだ!! そいつを手に入れにいかねェか!!? ついでにお前らが殺し損ねた“五老星”や“神の騎士団”……そいつらを束ねる奴も殺してよ!!!」

 

「!! ……なんでそのことをあんたが知ってるのよ!!!」

 

 黒ひげの言葉に私は声を荒らげて威圧する。

 確かにそれは私たちが探して欲しているものだった。頂上戦争を私たちが制したあの日。海軍本部を叩き潰し、聖地マリージョアへと乗り込んで第2ラウンドと洒落込もうとしたその日。

 お目当ての首や宝が綺麗さっぱり消えていたあの日のことを思い出す。

 ジョーカーやドフラミンゴの情報を元に聖地をくまなく探したが、見つかったのは貴重だが凡百の財宝の数々と無能な天竜人のみ。

 それらを手に入れ、防衛のために辛うじて残っていた世界政府全軍総帥のコングと衛兵たちを殺し、あるいは奴隷にして私たちはあの戦争に勝利した。それは間違いない。

 だが残党の処理はまだ終わっていない。自分たちでも理解しているそのことを、黒ひげは指摘していた。

 

「ゼハハ……知ってるさ。この2年で……いや、おれの40年の人生で色んなことを調べた……!! 海賊のこと……政府のこと……悪魔の実に“歴史の本文”……そして、この世界の歴史についてもな……!!!」

 

「…………」

 

 私は黒ひげを見下ろし、無言のまま睨みつける。眉根は自然と険しいものになっているのを自覚した。

 

「……もう一度聞くわ。なんであんたが知ってるの? その情報源も含めて知ってることを洗いざらい話しなさい。じゃなきゃ余計に苦しむことになるわよ……!!」

 

「ああ……ハァ……ハァ……教えてやるさ……そいつはだな……」

 

 私の質問に、息も絶え絶えな黒ひげは懐からある物を地面に投げることで答えた。

 それは羊皮紙の束を丸めたもので、私の視線、意識は一瞬それに持っていかれる。その瞬間に。

 

「っ!!」

 

「!!!」

 

 ──3本の線が私の顔のあった場所を通過した。

 私はそれを首を反らし、バックステップで距離を取って回避する。そして見れば、立ち上がった黒ひげの左手には3つの鋭い刃で構成された鉤爪があった。

 

「ゼハハ……!! ちくしょう外したか……!! せっかくお前の可愛い顔に傷をつけて“赤髪”とお揃いにしてやろうと思ったのによォ!!」

 

「……!! そんなことだろうと思った……!! だけど闇討ちや奇襲は私も得意よ……!! その程度で私を上回れると思わないことね!!!」

 

 この手の奇襲は見習い時代に私も得意としていた戦法。だからこそ、この程度で不意を突かれるようなことはない。話で意識を逸らし、見聞色の覇気を乱してきたところまでは見事だったが、私から見ればまだまだお粗末だ。

 

「私相手によくやったと褒めてあげる……!! だけどあんたの命もここまでよ!!! 終わらせてやる!!!」

 

「まだ終わらせねェよ!! さっき言ったことも嘘じゃねェ!! おれからの情報、手に入れとかねェと損するぜ!!?」

 

「隠れてる連中の居場所なら私達だってもう目星はついてんのよ……!! あんたからの情報がなくとも次は()()()()の番……!! すぐに後を追わせてやるから先に地獄で待ってなさい!!!」

 

「ゼハハハ!! そうかよ……!! だったらこんな情報はどうだ……!!?」

 

 黒ひげが闇と地震、そして覇気の力を全開に──いや、限界まで引き出して突っ込んでくる。長く戦うつもりはない。こちらを仕留めるという気概を持って。

 そして私はそれに応えるべく、同じく覇気を込めた槍を向け、能力を全開にして黒ひげの力の放出に突っ込んでいった──直に戦いは終わる。満身創痍の黒ひげとまだまだ余力を持つ私。黒ひげに引導を渡してやると、迷うことなく。

 

「おれは……ロックスの息子だ……!!!」

 

「!!?」

 

 ──その言葉を激突する直前に知らされた。

 

「ゼハハハ!! 隙が出来たぞ!! ぬえェ!!!」

 

「っ!!?」

 

 そうして気づいた時には、黒ひげの拳は間近に迫っていた。

 

「──“闇人震破(クロームクラッシュ)”!!!」

 

「!!!」

 

 闇と地震。そして覇気の力が、私を穿った。




科学帝国→トップと科学者(2名)とセラフィム出動中。原作が進んだことで本当に四皇らしい勢力になってきた。
クザン→こっちはこっちで自分の正義を真っ当中。
CP9の3人→クザンを足止め。ルッチとカクは覚醒済み。ジャブラは頑張ってどうぞ。
くま→反抗中。
ボニー→ジョーカーに散々やられたので能力でルフィの老化を一時的に治す。
ルフィ→一応復活。ジョーカーとバトル。
マルコ→黒ひげ参戦を阻むために頑張ってる。ウソップ&トンタッタ族と合流。
スパンダム→監督兼ディレクター兼その他諸々。神の大地内部で密かに準備中。
帝釈天破修羅→帝釈天とその武器のこと。カイドウの軍荼利龍盛軍みたいな技。
闇槍→くろやりと読むけど黒ヤリの陣は無関係。周囲から闇の槍を放つ技。
神鳥の化身→元ネタからして燃える鳥だけど誰かさんをリスペクトしてのは明らか。
舞終・紋羽二重孥→元ネタの説明は長いのでよかったら調べてみてね。
鉤爪→追い詰められてる証拠。
聖地から逃れた連中→暴力の世界に参戦フラグ。
黒ひげの正体→諸説あり
ぬえちゃん→完璧で究極のアイドル可愛い

今回はこんなところで。久しぶりの投稿です。半年経ってネタも溜まってきたのでまたしばらく最低月1で投稿したいところ。ステューシー関連とかで心配されてたけどそっちも適当にやるんでご心配なく。ぬえちゃんらしく原作に合わせて変幻自在に対応していきます。まあ変えない部分もあるけどもってことで次回もお楽しみに。次回からは戦闘回で徐々に決着させていきます。黒ひげ戦も次に出る時には終わるかもねって。

感想、高評価、良ければお待ちしております。
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