正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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超人シスターズ

 

 ──“鏡世界(ミロ・ワールド)

 

 身体の至るところが痛い。

 外傷だけでなく骨や内臓も幾分か傷ついているのが分かる。これだけのダメージを負うのはカイドウとの戦い以外ではかなり久しぶりだ。何十年振りかもしれない。

 だけど……それだけだ。

 

「あはははは!!! 私の勝ちね……!! “黒ひげ”……!!!」

 

「ハァ……ハァ……」

 

 私は黒ひげの首元に槍を突きつけていた。

 その四肢は生み出した分身の自分の槍によって串刺しにして磔にしてある。念のためその身体には触れず、万一にも逃さないように空中には幾つものUFOで照準もつけていた。

 そして仮にまだ動き出してもまだまだ戦闘に支障はない。血も流れてるし傷も多いがそのうち塞がる。

 もっともすぐに全快出来るほどでもないが……それでも私を殺そうと思うならまだまだ足りない。

 

「さて……こうなってくると生きたまま連れ帰るのも視野に入ってくるわね……!! 四肢をもいでから後で殺すか今殺すか……!! ヤミヤミの実とグラグラの実は有望な若手か“チルドレンズ”……うちの見習いの誰かにでも上げるのもいいわね……!!!」

 

「っ……ま、待て……!! 待ってぐれ……!! おれを殺すのは勿体ねェと思わねェか……!!?」

 

「んー?」

 

 ──と、黒ひげという極上の獲物を前に舌なめずりしてどう使うかを考えていると黒ひげが必死な形相でそんなことを口にし始めた。命乞いだね。せっかくだから聞いてあげようと私は首をかしげてその言葉に耳を貸す。

 

「おれは戦力になるぜ……!! お前ら敵も多いだろう!! さっきも言ったが、おれ達ならあの腰抜けた政府の老人共や“赤髪”に“千両道化”を消すにも役に立つ……!!」

 

「あー……まあ、それはそうかもねー」

 

「だろ!!? だったら今はおれを……ウグ!!

 

 私はその黒ひげの言葉に軽く同意しながらその様を眺める──分身たちが、私の意思に従って黒ひげの四肢に槍をぐりぐりと押し付けて回し始めた様を。

 

「ギャアアアアア!!? やべ、やべろ……!!」

 

「うーん。汚くて良い悲鳴だね♪ ほらほら、痛がってないでちゃんと口を動かさないと。時間の無駄だって思ったらさっさと殺しちゃうよ?」

 

「アグッ……!! グゥ……!! お、おれ゛を本気で殺すのか……!? おれはロッグスの息子だぞ……!!」

 

「へぇ、まだ言うんだそれ」

 

「ほ、本当だ……!! 嘘はづいでねェ……!! 証拠だってある……!! 服の内側だ……!!」

 

「ん? そうなの? だったらちょっと失礼して……」

 

 黒ひげの続く命乞いの言葉。その内容に興味を示し、私は少しだけ距離をつめる。気をつけながら黒ひげの衣服に手を伸ばした──そこで。

 

「……!!」

 

「きゃっ!?」

 

 黒ひげが、突如として起き上がって大口を開けて向かってくる。その分身に貫かせていた両腕を地面に置いてきぼりにして。

 その突然の行動に私は不意を突かれて噛みつかれる──

 

「──なんて、ね」

 

「ウッ゛!!」

 

 と、思わせといて私は黒ひげの腹を槍で突いて再び地面に押し倒す。広がるのは黒ひげの身体の至るところから溢れる血。どっちにしても助かる見込みのない傷跡だ。

 

「あんたのやることなんてお見通しよ。あんたは最後の最後まで諦めるような奴じゃない……ま、でもさすがにここまでやれば諦めがつくかな?」

 

「ゲホッ!! ガハッ!! ハァ……ハァ……チクショウ……駄目だったか……そりゃそうか……!!」

 

 黒ひげの口からも大量の血液が吐き出される。そうして問いかけると黒ひげもまた自身の終わりを感じ取ったのかもしれない。必死な形相から一転して笑みを浮かべた。

 

「……そうだな……おれはもう終わりらしい……!! ゼハハハハ……!!」

 

「……ふーん? 笑うんだ? 自らの死を悟りながら」

 

「おお、そりゃあな……!! なにせ、面白ェ人生だった……!!! 夢は破れたが後悔はねェ……夢ェ見れてそこに手がかかっただけでも上等だ……!! 特にこの2年……お前らの作った“暴力の世界”は最高に楽しかったぜ……!!!」

 

 本当に、全くの後悔はないという様子で黒ひげは楽しそうに口にする。

 全身がボロボロに、いや、ボロボロと形容するにも足りていない惨状になりながらも痛みに苦しむことも死に恐怖することもない。あるのは負けて悔しい。垣間見える負の感情は夢を叶えられずに口惜しいというものだけだ。

 死の間際にあってこういった様子を見せる人間は珍しいことを私は知っている。私に殺される弱者たちは皆一様に苦しみ恐怖するもの。

 つまるところそれがないということはやはり──この男もまた“本物の海賊”であり、そして……。

 

「……そっか。それじゃ私相手にここまで頑張ったご褒美としてこれ以上苦しませるのはやめてあげようかな。そこまで潔い相手は嫌いじゃないしね」

 

「助かるぜ……!! ゼハハハ……!! さっきから全身が痛くてしょうがなかったんだ……」

 

 私は腹に刺していた槍を抜いてもう一度振り上げる。そして、それを一気に振り下ろし──

 

「1つ……最後に聞くが……“眠る”ってのは()()()()()()()()()……?」

 

「……そうね。結構気持ちいいよ。起きた時はスッキリするしね。たまに()()()()()()()()()()()()()

 

「そうか……じゃあ体験してみるとするか……!! 目覚めに期待してよ……!! ゼハハハハハ……!!!」

 

 黒ひげの笑い声。その生きた証。それが最後の輝きだった。

 

「!!!」

 

 そして、静寂が訪れる。

 動かなくなった海賊“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチの亡骸から槍を引き抜き、分身やUFOを消すと私はその死体を見下ろして声を掛ける。

 

「やっぱりあんたも……“ジョイボーイ”ではなかったね……!!」

 

 そう一言。これでまた1人Dの一族が消えたことで、私は自らの考察がまた一歩進んだことになんとも言えない感情を抱く。

 そうしてその死体と、切り取った首を取ってUFOにしまうとそこを立ち去った。

 

「さーて……次は()()()()をしないとね」

 

 

 

 

 

 “鏡世界(ミロ・ワールド)”の片端で破壊が巻き起こる。

 

「フー……フー……!!」

 

「ホホホ……よく……頑張りますね……!!」

 

 その破壊を巻き起こしているのは黒ひげ海賊団に数えられる数人の船員たち。

 そしてただ1人で奮闘を続けるビッグマム海賊団の将星──シャーロット・カタクリだった。

 完璧な男に相応しくない傷を幾つも作りながらカタクリは荒い息を吐いて黒ひげ海賊団に対峙し続ける。

 

「ニャハハ……!! 随分としぶといニャー!!」

 

「なんでそんな頑張るのんやろ~? トプトプトプ!!」

 

「……お前らこそ……何を余裕振っている……!!?」

 

 あの黒ひげが集めた海賊たちというだけあって誰もが弱くない。カタクリ1人では手に余る彼らは、しかしカタクリ1人を相手にまるで遊ぶかのように本気で相手をしない。

 その戦いに対する姿勢を見てカタクリは疑問に思った。もう少し、彼らが本気であればさしものカタクリと言えど地に伏していたかもしれない。

 ゆえにその態度を問いかけた。だが、その答えにも黒ひげ海賊団は笑いながら余裕を崩さない。

 

「そりゃおれ達はお前さえ止めてりゃいいからな!!」

 

「そういうことです。後は戻ってきた船長と一緒にあなたを嬲り殺すだけ……!!」

 

「ああ……可哀想に……!! お前はどうやら死ぬ運命にあるようだ……!!」

 

 バージェスやラフィット。既にぬえにやられてカタクリのモチに捕まっているドクQですらカタクリの辿る未来を思って笑い合う。それには元インペルダウンレベル6の囚人たちもまた同調したが……。

 

「……()()()()()、そうは思っていないようだが……?」

 

「ん?」

 

「ムルンフッフッフッ……!! 何を言って──」

 

 そして黒ひげ海賊団の一部が、それぞれ異なった反応を取った瞬間だ。

 

「──“スピア・ザ”……!!」

 

「あ……?」

 

「“グングニル”!!!」

 

「!!!」

 

「うぎゃあああああ~~~~!!!」

 

 ──遠方から飛んできたその破壊の槍が、黒ひげ海賊団のいる場所の地面に激突して巨大な衝撃波を撒き散らした。それを見て、カタクリは嘆息する。

 

「……遅かったな……随分と苦戦したか……」

 

「そっちこそ。まだ戦ってたんだね。こっちももう決着がついてるかと思ってたよ」

 

「……っ……!? お前は……!!」

 

 そしてその破壊からなんとか致命傷を逃れた黒ひげ海賊団の面々は、土煙の先にいるその影に驚愕する。カタクリの隣。そこに現れた小さな特徴的な羽を持つ人影。その正体を、この場の誰もが知っていた。

 

「ぬえ……!!」

 

「は~い♡ 完璧で最高の世界一のアイドル、ぬえちゃんでーす!!!」

 

「船長が負けちまったのか……!!」

 

「どうやらそのようだニャー……」

 

 “妖獣のぬえ”が現れた──その意味を、誰もが思い知る。

 彼らをまとめていた“黒ひげ”という男が死んだ。ぬえのその笑み。身体に残る幾つもの細かい傷がその死闘を証明する。かなり善戦したようだが、負けてしまったのだと。

 その事実に、黒ひげ海賊団の面々は驚いた。そして、すぐにメンバーがそれぞれ動き始める。ある者は逃走を。ある者は弱っているはずのぬえと一戦交えること考え──

 

「……!! デボン!? 何しやがる!!?」

 

「ムルンフッフッフッ……!!」

 

 ──そしてある者は……他の面々の背中を刺した。

 

「……!! ホホ……まあ船長を失えばこうなることはわかっていましたが……随分と動きが早い……!!」

 

「黒ひげが死んだならもう仲良くする必要はないニャー!!」

 

「トプトプトプ……!! そういうことでおれはぬえに付くでええのんか~?」

 

「チッ……!! やっぱそういうことか……!!」

 

 主に後ろから元仲間を刺す選択肢をすぐに取ったのはレベル6の囚人達であり、逃走を図ったり一戦交えることを考えたのはそれ以前のメンバーだ。

 だが、それらですら行動はバラバラで一貫性はない。それが意味するところはすなわち──黒ひげ海賊団は、ただ利害が一致しただけの個人の集団なのだと。

 

「醜いな……」

 

「まあまあ。私はこういうところも好きだよ? 海賊らしくてね──っと」

 

「!!?」

 

 そのてんでバラバラな動きを見てカタクリは気勢を削がれたように吐き捨てるが、ぬえは笑顔でその行動を認めた。

 だがそのぬえは、一呼吸置くと争い合う黒ひげ海賊団の間近に迫っていた。それを見たバージェスの顔の表情が引き攣る。

 

「──ま、それでも殺すけどね」

 

「!!! ……オ……ア……!!」

 

 そして一瞬後には、バージェスの背中からぬえの三叉槍が突き出ていた。

 槍が引き抜かれ、大量の血を吐いて倒れるバージェス。そのぬえの容赦ない行動と圧倒的な力を見た面々の額に汗が滲んだ。

 

「ニャー!! おれはぬえさんに忠誠を誓うニャー!!」

 

「そっか。じゃあ死んで♡」

 

「……!!? プギャアアア!!!」

 

 そして中には直ぐ様引き続きの変わり身を見せる者もいたが……その行動を取った“悪政王”アバロ・ピサロはぬえの指先から放たれたレーザーによって身体に幾つもの穴を空けて悲鳴を上げる。

 

「“酒豪炉火(シュゴーロップ)”!!!」

 

「!!」

 

 そしてその変わり身さえ通じないと分かって直ぐ様攻撃をしかけたのは“大酒”のバスコ・ショット。

 ガブガブの実の酒人間である彼は一度含んだ酒を吐き出し、引火させて巨大な火の玉を作るとそれをぬえに向けて飛ばす。それは確かにバカにできない火力ではあった。

 

「酒臭い火だなぁ……ま、慣れてるからいいけど」

 

「!!?」

 

 その火を槍で軽く散らして見せたぬえは、その背の特徴的な羽の内1つをバスコ・ショットに向けて高速で伸ばす。

 それはその羽の先端で相手を串刺しにする動きだった。そしてそれを彼は躱すことが出来ない。

 

「ギャアアアア!!!」

 

「これで3人と。やっぱ黒ひげに比べたら退屈な相手だね。ええと、残りは──ん?」

 

 そしてバスコ・ショットを羽で刺し殺すとぬえは淡々と感想を口にしながら周囲を見て、そこから人が遠ざかるのを認識した。

 

「ホ、ホホ……さすがに旗色が悪い……!! 彼らが犠牲になってる間に逃げさせて貰いますか……!!」

 

「ヒィ……ヒィ……!!」

 

 そして元仲間たちが犠牲になっていく中で、さっさとその場から離れて距離を取っていたのは“鬼保安官”のラフィットと“巨大戦艦”サンファン・ウルフだった。

 ラフィットはその能力で空を飛んで、ウルフはその巨体で懸命に、ズシンズシンと音を鳴らしながら走って逃げていく。

 その距離はそれなりだ。もうすぐでぬえの姿が見えなくなる。強者の身体能力は逃走においても有用だ。

 

「ふーん……この私と鬼ごっこしようだなんて良い度胸だね……とはいえすぐ追いつくけど」

 

「……!!」

 

 だが、それ以上の強者であるぬえもまた、獲物を逃さない能力には長けていた。

 見聞色で正確な位置を確認したぬえは槍を構え、雷と覇気を纏って勢いよく飛び出す。その速度は両者の比ではなく。

 

「“雷獣八卦”!!!」

 

「!!!」

 

 空を飛ぶラフィットとデカい的のサンファン・ウルフをまとめて貫いた。

 大量の血を流し、白目を剥く2人。だが更にそこに。

 

「おっと。まだ息があるねぇ」

 

「!!? やめ──」

 

 辛うじて息があって気絶を免れたラフィットの足にぬえの羽が触手のように四肢に巻き付いていた。そうしてぬえ自身は地面に倒れたウルフの首元に降り立つとそこに槍を突き刺して──

 

「……!!!」

 

「ウギャアアア~~~!!!」

 

「はいはい。これで5人と。後は──」

 

 ウルフの頭を身体からくり抜き、ラフィットを更に残った羽を伸ばして串刺しにしたぬえは、指で残り人数を数えてみせる。そこに──

 

「ムルンフッフッフッ……!! さすがはぬえさん……惚れ惚れする殺しっぷり……!!」

 

「あ、デボン」

 

 ──“若月狩り”のカタリーナ・デボンが悪い笑みを携えて現れる。

 

 その様子に恐れはありながらも敵意はない。その言葉は本心で、ぬえに恐怖しながらも敬うものだ。その態度と働きを思い出してぬえもまた笑顔を浮かべる。

 

「あなたはよく働いてくれたね。黒ひげをおびき寄せる仕事、ご苦労さま♡」

 

「ええ……!! ありがとうございま──……!!」

 

 そしてその部下として採用したはずのデボンの胸を、ぬえはまたその槍で一刺しした。

 

「ぬえ、さ……!!?」

 

「──あんたの魂胆なんて分かってんのよ。どうせ“黒ひげ”が勝ったらそのまま鞍替えしようとしてたんでしょ? それで負けたならこっちに付く。だからカタクリのことも私を怒らせないよう殺さないように手加減した。……ま、その狙いは他の連中も同じだったみたいだけど」

 

「それ、は……!!」

 

「とはいえ働いてくれたことは事実だからね。だから、苦しませずに殺してあげる……!!」

 

「ア……ア……!!」

 

 ぬえの爛々と輝く赤い瞳を間近で目撃しながら、デボンは身体から力を抜いていく──これが本物のぬえの恐怖なのだと。

 死の間際にそれを理解した。そして、それを最後に。

 

「んーと。オーガーはもう殺したしシリュウはビッグマム海賊団だし……ってことはこれで全員かな。はぁー……血いっぱい付いちゃった。シャワー浴びたいなー」

 

 ──“鏡世界(ミロ・ワールド)”に広がる死屍累々の光景。

 串刺しにされ、首が撥ねられ、叩き潰れ……8つの死体を作り上げたぬえは顔の片側や両腕を返り血で真っ赤に染めながら、それらに背を向けてすたすたと地面を何気ない感じで歩く。

 

「……終わった、か」

 

「あ、そういえばもう1人残ってたね」

 

 そして黒ひげ海賊団が壊滅したのを見て、そのぬえの圧倒的な力に眉根を寄せたカタクリは呟く。その姿を発見し、ぬえは再び思い出したかのように笑みを浮かべて近寄った。そして槍を振りかぶって──

 

「!!!」

 

「ウッ!!?」

 

「──ドクQ……あなたはまだ殺さない。ミラミラの実の能力者として、あなたにはまだ私達の役に立ってもらう……!! 念仏を唱える時間くらいは与えてあげるから感謝しなさい……!!!」

 

 カタクリに捕まっていたドクQの目の前に槍を振り下ろし、言葉と嗜虐的な笑みで彼に通告する。

 それは正に死刑宣告だった。そのぬえの細まった目で見つめられドクQは言葉を発せられない。運命を察する──自分は、限界まで利用された後に殺されるのだと。

 

「──さ、ゴミ掃除も終わったし戻ろっか♡」

 

「……それは良いが……戻れるのか?」

 

「うん? なんで? 鏡なら幾らでも……」

 

「殆ど割れてるが……」

 

「あ……」

 

 そして黒ひげ海賊団を壊滅させるという掃除を終えたぬえは、カタクリにドクQに向けたものとは違うニコッとした可愛いアイドルの笑顔を浮かべて帰ろうと告げるが……そこでカタクリに返された言葉で気づいた。

 

 ──黒ひげとぬえの激しすぎる戦闘の余波。地震に闇に雷に衝撃も盛りだくさんの戦闘によって……その一帯の鏡が全て割れていた。

 

 これではドクQがいても現実に帰ることが出来ない。帰るには鏡が必要なのだから。

 

「それと先程から幾つも鏡が割れる音が聞こえている。おそらく、企みに気づいた向こうの誰かが──」

 

「……なーんてね!! そのことなら問題無し!!」

 

「……何か備えがあると?」

 

「そりゃあ勿論!! ()()()()()に頼んでおいたからね!!」

 

「そうか」

 

 しかし一転して翻したぬえの言葉に、カタクリは納得する。その頼れる部下が誰かは知らないが、ぬえがこう言うならそうなのだろう。百獣海賊団の層は厚い。同じ海賊帝国の片割れであるビッグマム海賊団ですら底知れないほどに──その事実に危機感を覚えながらも、今は共に歩むべくカタクリはぬえと共にその場を後にした。

 

「あはは、向こうはどうなってるかなー♪ 楽しみ~!!」

 

 

 

 

 

 ──“神の大地”頂上。

 

「“ギア4!!!」

 

「!」

 

 黄金に煌めく大地の頂点。そこで戦うのは海賊帝国側の大将とも言える大看板“戦災のジョーカー”とそれに歯向かう反逆者“麦わらのルフィ”だ。

 その戦いは始まってから今に至るまでジョーカーが優勢であり、それを覆すためにルフィは切り札であるギア4を発動する。

 

「ギア4のパワーならお前にも負けねェ!! “ゴムゴムの”ォ!!!」

 

「出たわね……これが“バウンドマン”……」

 

 そして勢いよく戦意を剥き出しにして拳を引っ込めていくルフィに対し、ジョーカーはそれを冷静に観察しながら応じた。あらゆる武術に通ずる戦闘の天才で達人であるジョーカーは覇気とその武術を持って受ける選択肢を取る。

 

「“猿王銃(コングガン)”!!!」

 

「“鉄塊”!! “紅玉”!!!」

 

「!!!」

 

 ジョーカーが交差させた腕によるガード。先程は難なく受け止められるどころか跳ね返されダメージを受ける始末であった。

 だが、今度の結果は違った。

 

「!! (これは……受けきれない!?)」

 

 ギア4バウンドマンの攻撃。弾力を武装色で強化された拳はジョーカーを背後へと吹き飛ばすことに成功する。

 衝撃で轟音が鳴り、吹き飛んだジョーカーの足が地面について引きずりながら何とか立ち止まる。

 

「どうだ!! “ギア4”のパワーならお前にも敗けねェ!!!」

 

「……!! なるほど……確かに、弱くはないわね……!!」

 

 続いて追撃を掛けようと宙を駆けてくるルフィに対し、ジョーカーは今の結果を持って更なる分析を行った。

 実際にギア4の攻撃を受けてみて理解する。魚人島でジャックが、パンクハザードでクイーンが倒されずも不覚を取った理由を。

 このパワーと増しつつある武装色の覇気であれば如何に大看板と言えど受けてノーダメージとはいかないだろう。受けきれない訳ではないが、かといって無視していい攻撃でもない。

 あるいはキングであれば問題なく受け止めることも可能だろうが、実のところジョーカーのパワーとタフネスは大看板でも下位に位置する。わざわざそれを口にはしないもののジョーカーは正しく自己の能力と眼の前の敵の能力を認識していた。

 

「“ゴムゴムの“ォ!!!」

 

「(受けれなくはないけれど、受け続けるのは良くないわね……!!)“紙絵”……!!」

 

 スピードもパワーほどではないが上がっている。ゆえに高速で肉薄してきたルフィの足を見て、ジョーカーはそれを察知した。

 

「“犀榴弾砲(リノシュナイダー)”!!!」

 

「“残身”!!!」

 

 残像を残してルフィの攻撃を躱すとそのままジョーカーはルフィの間近に迫って吸血鬼の羽を動かした。

 

「こんにゃろ!! また躱された!!」

 

「パワーだけはそれなりだけど……それだけじゃ勝てないのが戦闘よ!!! “生命帰還”……!!」

 

 身体を自由自在。意のままに操る“生命帰還”。それを用いて吸血鬼の羽をより鋭く大きくしたジョーカーは、それをギロチンのようにルフィに上段から振り下ろす。

 

「“嵐羽(らんぶ)”!!!」

 

「!!!」

 

 今度はルフィが地面に叩き落される。

 身体の前面に斬撃による出血を強いられ、しかしルフィは地面を跳ねて敵であるジョーカーを睨みつけた。その様子にジョーカーもまた感心する。

 

「あら、弱点は斬撃だと聞いていたけど……今ので真っ二つにならないのはさすがね……!!」

 

「ハァ……ハァ……!! 羽でも攻撃してくんのか!!! 次は気をつけねェと……!!」

 

「当然……!! 私はただの戦闘の天才じゃない──夜を支配する吸血鬼よ……!!! 攻撃の手段は幾らでもあるわ……!!!」

 

 六式を含めたあらゆる武術の達人であるジョーカーにとってその身体は全て武器だ。それに吸血鬼としての能力が加われば、その力は正に“災害”に等しいものとなる。

 

「そして“麦わらのルフィ”……私がなぜ“ギア4”の発動を許したかわかるかしら?」

 

「何だと!!?」

 

 そしてそれほど力を持ちながらも……ジョーカーは頭脳すらも用いて敵を追い詰める。そのことをジョーカーはルフィに告げた。この状況にルフィを陥らせた意味を。

 

「それはね……あなたのギア4の()()()()()()()()()()()……!! 時間切れの後の10分間の覇気の使用が出来なくなる……言っておくけど、その隙を私は絶対に見逃さないわ……!!!」

 

 そう。その弱点の情報すらも当然ジョーカーの頭には入っている。

 ゆえにこそジョーカーは必勝のためにその隙を狙うのだ。あえてギア4を発動させ、そしてその後に──

 

「覚悟しておきなさい。ギア4が切れた瞬間──私はあなたの命を刈り取る……!!! そのギア4の切れ目があなたの命の切れ目よ!!!」

 

「……!! だったらそれまでにお前を倒すだけだ!!!」

 

「フフフ……!! 出来ないことは口にするものじゃないわよ……!!!」

 

 ギア4発動後のデメリットを狙ってきていると知り、ルフィは決着を急ごうと攻撃を激しくする。ジョーカーはその攻撃を躱し、捌き、受け切る姿勢に入った。

 攻勢に至りながら未だなお不利。“麦わらのルフィ”と“戦災のジョーカー”の戦いは未だ序盤から変わらずジョーカーの優勢を保ち続けていた。

 

 

 

 

 

 ──ドレスローザ。

 

 新政府軍の軍艦が着陸した中央街。その一帯は今、冷気に満ちていた。

 

「ハァ……ハァ……!! 足が……!!」

 

「く……!! やはり元大将にして新政府軍の元帥は手強いわい……!!!」

 

 その戦場で戦うのは元CP9であり現在は百獣海賊団の真打ちである3人だ。

 だがその内の2人、ジャブラとカクはそれぞれ足と手を凍らされ、多くの傷と凍傷を作りながら立っているのが精一杯の状況。

 ゆえに残っているのはただ1人──

 

「大した粘りじゃねェの……さすがは元CP9の最高傑作にして覚醒した動物(ゾオン)系の能力者……」

 

「──“手銃(シュガン)”!!!」

 

 ──常人では視認出来ないほどの速度で移動し、攻撃を繰り出すその男……ロブ・ルッチ。

 ネコネコの実モデル“豹”を覚醒させた彼のスピードは元大将クザンに対しても戦いが成立するほどのもの。ここまで致命傷を負わずに耐えていることからもそれは明らかだ。

 

「ロブ・ルッチ……お前らとはエニエス・ロビーの件で縁があるが……!!」

 

「!!」

 

 だが、それでもなお。

 新政府軍の元帥クザンの強さはそれを大きく上回る。ルッチの放った“手銃”を受け止め、カウンターとして氷の拳をルッチの腹に直撃させた。

 

「……!!」

 

「今のおれァ新政府軍の元帥……!! 責任ある立場でな……手心を加える訳にも、負ける訳にもいかねェのよ……!!!」

 

 ヒエヒエの実の能力と覇気。そして鍛え上げられた自分自身の強さによってクザンはルッチを殴り飛ばし、街に激突させる。

 凄まじい戦塵が氷の結晶と共に撒き散る中、それを見ていた海賊帝国側の雑兵は焦った。

 

「ルッチさん!!」

 

「チクショウ!! やっぱ元大将には敵わねェのか!?」

 

「有利なのはこっちだってのに全然怯みやしねェ!!」

 

「“氷河時代(アイスエイジ)”」

 

「!!」

 

 そしてその雑兵たちの足元に氷が迫る。一瞬にして、大勢の人間を凍らせる自然系の暴威が。

 

「おわァ!!?」

 

「やべェ逃げろ!! おれ達まで凍っちまう!!」

 

 そしてそこいらの戦闘員にそれを防ぐ術はない。

 新世界の海賊たち。この場にいる戦闘員も決して弱くはないが、相手はかつての世界政府の最高戦力。旧三大将最後の生き残りだ。海賊たちは逃げ遅れた者から順番に氷漬けになっていく。

 

「さっさと氷の世界にでも行ってろ……!! おれは上に行かなくちゃならねェんだ。さすがにまだあいつらに期待する訳にもいかねェからな……」

 

 クザンは容赦なく敵を蹴散らしながら眼前にそびえ立つ神の大地を見上げて小さく呟く。そこにいるであろう海賊帝国に歯向かう海賊たち。

 その中でもクザンが特に思うのは自身の師の孫である海賊だ。

 

「“麦わらのルフィ”……」

 

 かつて自身も立ち塞がり、見逃した相手がそこにいる。

 新政府軍の斥候の報告によれば現在“麦わらのルフィ”は大看板“戦災のジョーカー”と戦っているらしい。

 おそらくは苦境に立たされているであろうルフィのことを考え、クザンは冷えた息を吐いた。そうして歩みを前に進めようとしたところで──上空に影が差す。

 

「……ん?」

 

 上空を飛んで近づいてくる存在に、クザンは疑問を感じながらも警戒する。新手の敵かと。

 だがその警戒も一瞬で途切れた。やってきたのは、味方でもなければ敵でもない男。

 

「──青雉!!」

 

「! マルコ……? 頂上戦争以来だな……一体俺に何の用だ?」

 

「頼みがあるよい!!」

 

 かつて頂上戦争で共闘した白ひげ海賊団の1番隊隊長──“不死鳥のマルコ”であった。

 

 

 

 

 

 ──“神の大地”内部。

 

「…………」

 

 その“目”は未だ、この戦場全体を監視し、共有していた。

 ゆえにそのメアリーズはこの場にいる一応の指揮官に報告を行う。バカ笑いを続けながらコーヒーを楽しもうとするその上官に。

 

「スパンダム様」

 

「わはははは!! さァおれ達の掌で踊れ!! バカ共──って熱ちゃあ!!? コーヒー零したァ!! こんちくしょう!! ど、どうしたァ!!?」

 

「報告です。ドレスローザ中心街にて“青雉”の足止めを行っていたロブ・ルッチら3名の真打ちが突破されました」

 

「あァ? なんだそんなことか……ルッチ達が負けようが突破されようがどうだって構わねェ……なんたって、見ろ!!! この鏡からやがてぬえさんが現れ!! 海賊帝国に歯向かう愚か者共を皆殺しにしちまうんだからなァ!!!」

 

 ルッチ含む元部下たちの仕事が失敗したと聞いてもスパンダムは一切心配するどころか気にかけることもしない。自身の背後の台座に鎮座するそれ。大勢の戦闘員に囲ませたその10メートルはあろうかという巨大な鏡を見上げて勝ち誇る。

 スパンダムにとってはこの鏡こそが自信の源だ。鏡を守り切るだけで勝利が確定する簡単な任務。それをこなした後の褒美を思えば笑いが止まらない。

 

「つくづく新政府もバカな野郎共だ……!! そもそもカイドウさんやぬえさんがいる時点でどう足掻いたって勝てやしねェってのに……世界政府の崩壊から何も学んじゃいねェ!! 下らねェ正義にこだわって勝ち馬に乗らねェのはバカの……」

 

「──それとどうやら侵入者がいるようで……こちらに向かってきています」

 

「ん? なんだそんなことを一々報告──って何ィ~~~!!?」

 

「麦わらの一味“狙撃の王様”そげキングと他数名を確認しました。如何しますか?」

 

「バカ野郎!! んなもん迎撃に決まってんだろ!! 死守だ死守!! おいお前らァ!! 戦闘準備だ!!!」

 

「オオ!!」

 

 メアリーズの報告により接近に気づいたスパンダムと戦闘員たちが迎え撃つ準備を行う。

 

 ──そしてその奥に向けて、今まさにウソップたちは駆けていた。

 

「ハァ……ハァ……本当にこっちであってんのか?」

 

「間違いないれす!! この次を右で……後は真っ直ぐれす!!」

 

「よし来た!! 後は鏡を破壊するだけ……!!」

 

 レオの案内に従って迷路のような内部を走ることしばらく。ウソップたちはその場所に辿り着いた。

 後はもう、鏡を破壊するだけの簡単な任務。古代の生物やら強敵を相手にするより遥かに簡単な仕事だった。

 

「さァ!! 到着れす!!」

 

「よし!! あれが鏡だな!! ──って人多~~~~~~!!!?」

 

 ゆえに安心してその大広間に辿り着いた──が、そこにいる大勢の戦闘員たちを目にしてウソップは白目を剥く。楽な仕事かと思っていたが、これだけの人数を何とかして鏡を壊さなければならないのかと。

 

「来たな……“麦わらの一味”!!」

 

「ん? あいつは……見たことあるぞ!!」

 

 そしてその戦闘員たちの中心には見知った顔があった。2年前にあったウソップにとっても思い出深いエニエス・ロビーでの事件。その時にロビンやフランキーをCP9に命じて連れて行った事件の黒幕とも言える小物。

 

「その長っ鼻には見覚えがあるぞ……!! かつてこのおれの野望を邪魔した憎き“狙撃の王様”……!!」

 

「げっ!! あいつは確か……CP9の長官だとかいう……!!」

 

 その時、両者が過去に思いを馳せ、情報を思い出す。そして2人は同時に思った。

 

((こいつなら何とかなるかも知れねェ……!!!))

 

「わはは……!! 狙撃だけが取り柄の長っ鼻が……!!」

 

「その鏡を壊しに来た!! 邪魔をするなら容赦はしねェ!!」

 

(……なんで2人共腰が引けてんだ……?)

 

 その一見かっこいい対峙を見ていた百獣海賊団の戦闘員たちは結構な距離を取った状態で啖呵を切る2人を見て頭に疑問符を浮かべていた。

 

「レオ~~~!! 助けて~~~!!!」

 

「麦わらの一味……」

 

「!? マンシェリー姫!! ここに連れて来られてたんれすね!!」

 

「トンタッタ族のお姫様か!? それになんかもう1人捕まってるぞ!!」

 

「あっちはヴァイオレット……いや、ドレスローザの元姫のヴィオラれす!! ドフラミンゴの仲間の振りをしていた筈れしたが……もしやバレて捕まったのかも!!」

 

 そしてやってきたレオの姿を見て助けを求めるマンシェリーと静かに2人の姿を確認するヴィオラ。レオ達もまたその姿を見て囚われの身として助けを求めていると理解する。ゆえに行動は早かった。

 

「どうするれすか!!? ウソランド!!」

 

「よし!! それじゃあの戦闘員共を何とかしてくれ!! おれはここから狙撃で鏡を何とかしてあいつらも助けるぞ!!」

 

「わかったれす!!」

 

「おい野郎共迎え撃て!! 鏡に傷1つ入れさせるな!!」

 

「おお!! 敵はたった2人だ!! やっちまうぞ!!」

 

「オオオ~~~!!」

 

 そしてウソップはレオに前衛を任せ、鏡に照準を合わせる。あれさえ破壊出来ればとりあえず増援は阻止出来る。他の鏡についてはマルコに任せてある。破壊したらさっさと逃げればいいのだ。ゆえにウソップは気合を入れたが──

 

「やらせねェぞ“麦わらの一味”!! おれが2年前と同じと思うなよ!! おれもまた強くなったんだ……!! ()()()()()()()()()()()……!!」

 

「!? なんだあいつ変身して……動物(ゾオン)系の能力者か!!」

 

 スパンダムもまたその鏡の護衛に全力を尽くすために能力を発動した。自身の身体を動物の物へと作り変える動物(ゾオン)系。その人獣型へ変形してみせる。

 

『百獣海賊団“真打ち”スパンダム イヌイヌの実モデル“ヤブイヌ”』

 

「舐めるなよ……!! お前みたいな雑魚に怯むおれ様じゃねェ!!!」

 

「なんだあれ!! 犬か!!?」

 

「ただの犬じゃねェ!! ヤブイヌだ!! その力を見せてやる!!」

 

 ヤブイヌの人獣型になったスパンダムはその場で身体を少し後ろに倒してみせる。一体何をするつもりかとウソップ達が疑問に思った瞬間──スパンダムは高速で走り出した。

 

「!? 速いれす!!」

 

「ああ!! でもあれは……!!」

 

 ──()()()()()

 

「ええええ~~~~!!? 後ろ向き!!?」

 

「馬鹿め!! ヤブイヌは生物界でも珍しい前を向いたまま後ろに走る珍しい動物だ!! だからこそその能力も得たおれ様も高速でバック走が可能なのだ!!」

 

 スパンダムはそう言って背中の剣に手をやった。ウソップやレオが驚く中、スパンダムの表情は自信に満ち溢れている。

 

「てめェらこのバック走がなんの意味もねェとでも思ってんだろうがそれは間違いだと教えてやる!! この状態から繰り出すおれとファンクフリードの合体技で……!! お前を一瞬でゴミのように叩き潰してやる!!」

 

「……!? いや、()()()()……!!」

 

 だが、ウソップは途中で何かに気づいて思わずそれを止めるような言葉を口にしてしまう──が、その心配は杞憂だった。スパンダムは敵の声に耳を傾けるような殊勝な人間ではない。

 そう。それゆえに……その悲劇は起こった。

 

「さあ食らえ!! “象牙(アイボリー)”──ゲフゥ!!?」

 

「あ……」

 

「え……?」

 

 後ろ向きに走り出したスパンダムが、何か巨大な物に激突する。

 そのグラリと揺れてゆっくりと後ろに倒れようとする物の正体は──百獣海賊団が守り抜くべきはずの……()()()()

 

「えええええええ~~~~~!!?」

 

「うおおおおお~~~~~!!? た、倒れる!!? おいバカやめろォ!! 何しやがる!!」

 

「お前だよ!!!」

 

 その場にいる全員が一瞬の間を作った後に絶叫し、ふざけたことを言うスパンダムに怒りのツッコミを入れる。

 

「やったれすウソランド!!」

 

「あ、ああ……!! 何もしてねェけど……」

 

「鏡が倒れる~~~~~!!!」

 

「誰か止めろォ!!!」

 

「ぬえさんに殺される~~~~!!!」

 

 ウソップが呆れる中、戦闘員たちはてんやわんやでその鏡が倒れゆくのを見て頭を抱えた。誰かに助けを求めるも誰も止めることの出来ない。ウソップ達の襲来で戦闘員は皆前方に集中していた。

 それゆえに誰もが一瞬後の未来を幻視して絶望した。鏡が倒れて割れるその瞬間を。

 

「!!!」

 

「……え……?」

 

「と……止まった!?」

 

 だがその瞬間は、訪れなかった。

 鏡は一定の角度まで倒れたところで突然ピタッと静止する。

 その不思議な動きに敵も味方の誰もが驚いた──ただ鏡の背後にいた者達以外は。

 

「──まったく……なんしよっとね……!!」

 

 ゆっくりと、鏡が元の位置に戻っていく。

 そうしてそれを持ち上げた人物と他の2人は鏡の背後から声を発した。それは全て若い女の声で。

 

「くすくす……わたくし達がいなければ大変なことになっているところでしたね♡」

 

「やっぱりぬえさんの見立ては完璧ピョン!!」

 

「え……?」

 

「おいおい……この声って……!!」

 

「まさか来てたのか……!!?」 

 

「何だ……? この曲……?」

 

 その聞き覚えのある3人の声を耳にした海賊たちは一様に驚愕する。ただ2人、ウソップとレオだけが流れ始めた音楽に困惑していた。

 そうして鏡の陰から現れるのはその声の印象通り年の頃15歳前後の可愛い美少女たちだが、それもその筈。彼女たちは百獣海賊団の真打ちでありアイドルであり。

 

「ぬえさんの悪事あるところにシュミアたちの影ありだピョン♫」

 

 銃身の長い大きな銃を持ち、うさ耳にシルクハットと黄色いバニーガール風衣装に身を包んだ語尾が特徴的な金髪ツインテールの少女と。

 

「ぬえさんは前座にも一流を求めるお方。スパンダムさん如きに任せるなんてありえません♡」

 

 日傘を持ち、フリフリの多い紫色のゴスロリ風アイドル衣装にリボンを身に着けた淡い桃色の髪のミディアムヘアのお嬢様らしき少女と。

 

「やけんあたしらが来た!! そう!! あたしらこそアイドル界の超新星!!! ぬえさんプロデュースのアイドル一期生にして百獣海賊団の真打ち!!!」

 

 個性的な喋り方をするミニスカートにへそ出しルックにニーハイソックス。セーラー服にも似た白色の丈の短い上着に角の生えた帽子を身につけたその少女。

 彼女たちの登場とそのアドリブの効いた口上にこの場に集められた撮影班であるぬえの部下たちが揃って声を上げる。

 

『その名は~~~~!!?』

 

 そうして満を持して3人は元の位置に戻った鏡の前に躍り出る。ぬえに習った片足を上げて手でピースやハートマークを作ったり、手を上げるポーズをそれぞれ決めて──

 

『“超人シスタ~~~~ズ”!!!』

 

「ウオ~~~~!!!」

 

『百獣海賊団真打ち“超人シスターズ”』

 

『“暴力少女”スカート 懸賞金3億ベリー』

『“抹消少女”ミニモ  懸賞金2億ベリー』

『“跳躍少女”シュミア 懸賞金2億ベリー』

 

 ──彼女たちは自らの登場シーンを演出してみせた。

 

 そして彼女たちを知る百獣海賊団の戦闘員たちが歓声を上げ、それを黙って見ていたスパンダムはそれが終わったのを見て話しかける。

 

「超人シスターズか……助かった……!! 危うく鏡が割れちまうところだったぜ……!!」

 

「なーにが『割れちまうところだったぜ……!!』──だピョン!! 自分で割るところだったウサ!!」

 

「まあそうなりかねないからこそわたくし達が派遣された訳ですが……スパンダムさんじゃ到底守りきれないでしょうし」

 

「まさか自分1人に任されたとでも思うとった? あんたみたいなバカにぬえさんが任せる訳なか!!」

 

「ウッ、ギ……それは……!!」

 

 シュミアにミニモ、そしてスカートと順番になじられるとスパンダムは歯噛みして口ごもる。期待していなかった訳ではないし、言いたいこともあるが彼女たちが来たことで安心もしていた──これで万が一もなさそうだと。

 

「なんなんだあいつら……!?」

 

「ウソランド気をつけるれす!! 多分強いれすよあいつら!!」

 

「普通の女の子にしか見えねェぞ!? マジか!?」

 

「!」

 

 そしてその新手の登場にウソップとレオが会話する中、それに気づいたスカートらが視線を向けウソップ達を認識した。

 

「あたしらが普通の女の子……? 舐められたもんね……!! ──そういうあんたは()()()()()()!!?」

「え……?」

 

 そこで不意に指を指し示され怒りを向けられたウソップだが──こちらを誰か分かっていない様子に困惑した声を出す。

 そして辺りが静まり返る中、スカートはハッと何かに気がついたようで。

 

「まさか……あたしらのファン!? それともご新規様!? だったらええと……握手でもすると……? ついでにサイン入りのTDでも──」

 

「──ファンでもご新規でもなくてあれは麦わらの一味の1人ですよ。スカートさん」

 

「ええ!!? そうやと!? え、でも手配書にはあげな男載ってなかったけん……」

 

「忘れたんですか? “狙撃の王様”そげキングですよ。顔写真と本名、各種情報もメアリーズ経由で上がってきて確認した筈ですよね?」

 

「姫の言う通りだし、というか魚人島でも実際にチラ見したピョン……」

 

「…………ああ!! おったかも!! あの()()()()()()()を連れて行った時やとね!!」

 

「……!? 魚人島に、たぬきとコック……? まさか……!! おい!! お前らもしかしてチョッパーとサンジを……!!」

 

 どうやらウソップのことを忘れたらしいスカートとその説明をするミニモとシュミアの会話を聞き取り、ウソップはあの時の裏側を推測する。この3人が仲間を連れ去った張本人なのではないかと。

 そしてそのウソップの懸念は正解だった。日傘を持ったミニモがくすりと笑って肯定する。

 

「くすっ、そうですよ。あの時もいつも通りぬえさんから仕事を与えられましてね。そちらの仲間を2人ほど隙を見て誘拐させて頂きました♡」

 

「ジャックが結構痛めつけてくれたおかげで楽勝だったピョン!!」

 

「別に無傷でもあたしらなら楽勝やったけどね!!」

 

「……!! そうだったのか……!!」

 

 明かされた真相にウソップは苦々しい思いが湧き上がる。チョッパーとサンジが連れて行かれたそのせいで、チョッパーは消えない傷を負い、サンジは未だどこにいるのか分からない。おそらく、まだ捕らえられているのだろう。

 それを思えばウソップも奮起する。あるいは彼女たちであればサンジの居所も知っているかもしれないと。そうして黒カブトを構えた。

 

「……!! だったら後でサンジの居場所も吐いてもらうぞ!! 食らえ!!」

 

 ウソップは狙いをつけてパチンコの弾をセットする。その狙いは彼女たちと、その背後にはる巨大な鏡だ。放つのは“衝撃狼草(インパクトウルフ)”。球根の先から強力な衝撃波を放つウソップの必殺技だ。直撃すれば如何に巨大な鏡と言えど粉々に砕け散る。

 

「! ウサウサウサ……!! 身の程知らずにもやるみたいピョン!!」

 

「くすくす……♡ わたくし達から情報を引き出せるとお思いで?」

 

「ふん!! こやんな奴秒殺しちゃる!!! 行かんと二人共!!」

 

 そうしてウソップの攻撃の意思を見て3人も戦闘態勢を取るとそれを見たウソップもまた距離を詰められる前に攻撃を放った。

 

「やってやる……!! “緑星”!!」

 

 ウソップの放った緑星。その球根が狼の形の草を生やす。

 その弾はまっすぐに、狙いを外すことなく鏡と少女たちに向かっていった。見た目が可愛い女の子というだけあって若干の罪悪感を感じないでもないが、邪魔者として立ち塞がるならば仕方ない。

 

「“衝撃狼草(インパクトウルフ)”!!!」

 

「姫!! 危ない!!」

 

 そして球根は鏡を守るように立ち塞がったミニモの前へ。

 ウソップの放った見慣れぬやばそうな攻撃に彼女を心配する戦闘員たちの声が響く──が、そんな心配は杞憂だった。

 

「──“モドモド”」

 

「!!?」

 

「……え……!?」

 

 ウソップの“衝撃狼草”が当たる直前、ミニモは左手に持った日傘を離すことなく右手をかざし、球根を直接受け止め──そのまま消してしまった。

 その衝撃の光景にウソップは絶句する。自身の必殺技が、いともたやすく消されてしまったことに。人間業じゃない。だからこそ、すぐに気付けた──悪魔の実の能力だと。

 

「くすくすくす……♡ びっくりしました。球根がいきなり狼に変わるだなんて……でもそういった“成長”はわたくしの前では無力」

 

「悪魔の実の能力か……!!? 何の能力だ!?」

 

「あらゆる物の時間を12年分巻き戻す力……!! モドモドの実の能力を持つ“抹消少女”とはわたくしのことです♡ 触れるならご注意を。12年以下のものは()()()()()()()()

 

「じ、時間の巻き戻し……!? そんなのアリかよ!!」

 

 ミニモが宿す超人系能力であるモドモドの実の反則的な能力を知りウソップは思わず文句を口にする。つまるところ自分が放った緑星はミニモの手に触れた瞬間、12年分の時間を戻されて球根に戻るどころか、その場から存在が消えてしまったのだ。

 これで自分自身に触れられてしまえばどうなるのか。ぞっとするような能力を眼の前にし、ウソップが怯む中、その視界では次の能力を発動されていた。それもミニモではなく──シュミアの方だ。

 

「ピョン!! そんな呑気にしてる場合じゃないピョン!!」

 

「!!? 後ろれすウソランド!!」

 

「え……!? い、いつの間に……!!」

 

 レオの言葉で先に現象に気づく。ウソップの視界から一瞬にしてシュミアが消えてウソップの背後に移動したその現象にウソップは驚愕した。速いなんて次元じゃないその移動スピードは全く視認出来ないものだった。

 しかしそのタネもまた存在する。無論、悪魔の実の能力だった。

 

「驚いたピョン? “ワプワプの実”の瞬間移動能力……!! これがどんな人や物も一瞬で別の場所に移動させる“跳躍少女”の凄さピョン!!」

 

「……!! こっちも能力……って危ねェ!!?」

 

 その超人系悪魔の実の能力“ワプワプの実”の能力を続いて知ったウソップは、背後から発射される銃弾を何とか横に飛び込んで回避した。その危機察知能力と言うべきか、逃げる力を見てシュミアは感心する。

 

「おっと。外してしまったウサ。だけど、これでジエンドだピョン!!」

 

「──その通りばい!!!」

 

「!! そういやもう1人……!! 今度は何の能力だ!?」

 

 そしてシュミアの声に応えるように最後の1人であるスカートがその場で拳を引いてパンチの体勢を取っていた。

 だがその距離は遠く離れている。それゆえにウソップはまだ攻撃まで猶予がある筈だとその予備動作を見逃さないようにした。見てから躱すか逃げるか。何をするにしてもとりあえず生きるためにがむしゃらに何とかしてやると。

 

「とりあえず……“10倍”で行くと!!」

 

「!!」

 

「え……また消えた!!?」

 

 だが、スカートの力はまたしてもウソップの想像を超えていた。拳を強く握って意気込んだ直後、スカートの姿が消える。

 だがそれはシュミアの使ったような瞬間移動ではない六式の“剃”を用いた高速移動だった。

 ──ただし、それは普通の“剃”ではなかった。

 

「やっぱ反則能力ウサね──“モアモアの実”の力は……!!」

 

「自身の身体能力や物の大きさを最大100倍まで倍加させる能力……ただでさえバカみたいに強いスカートさんのパワーも、その能力によって破滅的な威力を発揮します──そこらの人間が食らえば一発でお陀仏ですね♡」

 

 ──超人系悪魔の実の能力“モアモアの実”。

 

 かつて世界の破壊者とまで呼ばれた海賊の能力。それを用いて“剃”を10倍にして移動したスカートは一瞬でウソップの眼前に迫り──拳を振り上げていた。

 

「ぬえさん直伝……!! “モアモア10倍”……!!!」

 

「え……!?」

 

 そして激突の瞬間に気づいた。死にかねない攻撃が迫っていることに。

 ウソップにはその高速の攻撃を躱す術はなく──その10倍の速さで繰り出される拳の一撃を顔面に直撃させる。

 

「“偶像握拳(アイドルフィスト)”!!!」

 

「!!!」

 

「ウソランド~~~~!!」

 

 ──ウソップの顔面の骨にヒビが入る音がする。

 レオの心配する声が広間に響く中、ウソップは広間の壁に激突して派手な戦塵で見えなくなった。

 

「この……ウソランドによくも!!」

 

「!」

 

 ウソップが殴り飛ばされて憤慨したレオが今度は雑兵からスカートに向かっていく。スカートもまたそれに気づいたが……それより先に通路からやってきた相手に気づいて息をついた。

 

「……こげんところまで敵ば逃して……なんばしよっとね!!

 

「うるさいれす……!! ガキ共……!!」

 

「!? ダウト!! もう追いついてきたれすか……!!」

 

「あんなゴミ……障害にならない……いや、なるれすよ……!! さあ次はお前の番れす!!!」

 

「くっ……!!」

 

 ウソップ達がやってきた通路。その先から大きめの小人族である百獣海賊団の真打ちダウトが追いついてきており、やってくるなり血走った目でレオを睨んで斬りかかってくる。

 それにレオもまた応じたことで手が足りなくなった。その状況の優位さを思い知り、スパンダムは笑い声を上げる。

 

「わはははは!! バカめ!! 百獣海賊団に逆らうからこうなるんだ!! 逆らわなきゃ死なずに済んだのによォ!!!」

 

 その言葉はウソップのことを指すものだった──が、それを耳にしつつ壁際で死んだふりをして倒れているウソップはこっそりと動き出す。

 

「……!! (ほ、本当に死ぬかと……!! でも今が隙だ……!! 向こうはおれが死んだものと思ってやがる!! 今のうちに……!!)」

 

 顔面から血を流し、歯も幾つかかけてしまってまさに満身創痍。

 だがなんとか気も失ってないし身体も動く。それを千載一遇のチャンスとしてウソップは倒れたまま再び黒カブトに緑星をセットした。このまま気づかれず発射して今度こそ鏡を破壊してやるとそう目論んで。

 ──だが。

 

「ぷぷぷ~!! さすがドジなスパンダム。まだ生きてることにも気づいてないピョン!!」

 

「そうですよ。まだ()()()()()()()()

 

「へ?」

 

「! (やべェバレてる!! ならすぐに……!!)」

 

 敵はそれほど甘くはなかった。見聞色の覇気でウソップが生きてる気配をしっかりと感じ取っていたシュミアとミニモはそのことをスパンダムに指摘する。スパンダムが間の抜けた声を漏らす中、それを聞いていたウソップは即座に動こうとした。パチンコをまず撃って次の作戦を考える。あるいは逃げる。どう考えても自分とレオの2人の手に負える相手じゃないと。

 

「せからしか!!!」

 

「ウッ!!?」

 

 だが相手は逃走すら許さなかった。同じくウソップの生存と行動に気づいていたスカートが接近し、ウソップの顔を掴んで地面に押し倒すとそのまま身体の上に乗ってマウントポジションを取った。その頭上からスカートはウソップを見下ろして告げる。

 

「ふん、さっきの一撃で死ななかったのはさすがやっちゃけど……!! 次は確実に息の根止めるけん!!! 一思いに、“モアモア100倍”で……!!!」

 

「……!! や、やべろ……!! そんなの耐えられねェ……!! ほんとに死んじまう……!!」

 

「やめん。あたしらは忙しか。いつまでもあんたなんかに構ってられん」

 

「この仕事を無事完遂したら次はすぐにフェスでやる新曲のリハですからね。わたくし達だけじゃなくぬえさんの新曲の練習もありますし遊んでいる余裕はそんなにありませんね」

 

「だからささっと仕事を終わらせるピョン!!」

 

「!」

 

 ウソップが命乞いをする中、淡々と仕事をこなす姿勢を見せる3人。スカートがウソップに馬乗りになりミニモが鏡の前に変わらず陣取る中、シュミアが瞬間移動である人物の前に移動して銃口を突きつけた。

 その相手は……囚われの身であるドレスローザの王女ヴィオラであり──。

 

「──と、言うわけでさっさと殺して次のタスクをこなすウサ!!」

 

「……!!」

 

「ヴィ、ヴィオラさん……!!」

 

 笑顔でヴィオラの頭に銃口を突きつけたシュミアにヴィオラが戦慄し、死を覚悟する。それを見たマンシェリーが彼女を心配した。孤軍奮闘するレオはダウトと戦闘中で駆けつけることが出来ない。

 

「──敵を殺す時は頭か心臓を狙って確実に……!! ぬえさんの教え通り確実にやるピョン!!」

 

「くすくす……♡ 相手が悪かったですね♡ ぬえさんの教えを受けたわたくし達には油断も隙もありません♡」

 

「ここは暴力の世界!! 弱者は強者に食い物にされるのが必然!! 死ぬのはあんたが弱かったせいばい!! やけん恨むんなら……弱か自分ば恨みんしゃい!!!

 

 弱者を食い物にすることに容赦はしない。百獣海賊団の理念、今の世界の理を体現するかのように、3人は敵を殺そうとする。シュミアの指が引き金に掛かり、スカートの拳がウソップの顔面に再度狙いをつけた。

 

「うぎゃあ~~~!!? よせ!! やめろォ~~~~~!!!」

 

「“モアモア100倍”……!!!」

 

 そうして腕が振り下ろされる。10倍ですら人を容易に屠る破壊力。100倍であれば大地に穴を空け、人間を地面のシミにしかねないだろう。

 数秒後に2人の人間の命が奪われる──それが差し迫った、その瞬間。通路から走ってくる3人の人影が見えた。

 

「……!!? スカートさん!! シュミアさん!!」

 

「ん? 今度は誰──ピョン!?」

 

 鏡の前で全体を、通路もまた見ていたミニモが最初に気づいて2人に警告する。シュミアが気づいて顔を向けたその瞬間に、人影は弾丸に撃ち抜かれんとするヴィオラに飛びかかりそれを守った。

 

「ウッ……!!」

 

「!? あなた……」

 

「間に合った……!! ヴィオラさん……!!」

 

 銃弾が肩を掠めて出血し、痛みに苦悶するその人影の姿を見てヴィオラが驚愕する。何しろその彼女は──ヴィオラにとって他人ではなかったから。

 そしてその彼女にヴィオラが救われる中、もう1人──

 

「“スプリング死拳(デスノック)”!!!」

 

「!!」

 

 ──ウソップを殴り殺そうとしていたスカートを、伸びる腕のパンチでふっ飛ばした男がいた。

 突然の攻撃。不意打ちにはどんな強者も対応が遅れ、あるいは無防備になる。スカートもまた腕を交差させてガードをしたものの背後に後退さざるを得なかった。

 

「スカート様!!」

 

「……ふん!! 大したことなか!! こげん貧弱な攻撃は問題にならんやけど……()()()()()()()攻撃して来たかが問題とね……!!!」

 

 心配する戦闘員の掛け声に振り向くことなく、スカートは自分を攻撃してきた相手を睨みつける。今まさに死ぬところだったウソップの横を通って前に立ち塞がったその男を。

 

「ハァ……ハァ……危なかった……誰だか知らないが助かった……!! ありがとう──」

 

「──礼ならいらねェ……利害が一致しただけだ……!!」

 

「ん!? あいつは……!!」

 

 その男の姿を見て戦闘員たちもまた気づく。彼もまた見覚えのある男だったから。

 そして最後の1人もまた──名の知れた男だった。

 

「フ……味方を颯爽と助けるところは先を越されてしまったが……まァいいだろう。君の方はともかくお嬢さんの方は頼まれてしまったしね……!!」

 

「! お前も味方か!?」

 

「ああ。そっちはドレスローザの方を救った“ゴッド・ウソップ”だね? 君の仲間に頼まれてね。怪物の参戦を阻止するため──助太刀させてもらうよ……!!

 

 そうして最後の男。名の知れた海賊であるその美男子もまた剣を抜いて立ち塞がる──彼を含めた3人の男女の名を、それぞれ誰かが口にした。

 

「レベッカ……!!」

 

「ありゃベラミーか!? あいつも裏切ったのか!!」

 

「キャベンディッシュだ~~~~!!」

 

 海賊帝国に歯向かう戦士たち──その3人が、一枚の鏡を巡る闘争に参戦した。

 

 

 

 

 

 ──ところかわってそこは、海底の楽園。

 

「クソ……強ェ……」

 

「なんで()()()()()()がこの島に……!!」

 

 海底一万メートル。巨大なシャボンで包まれたその島はかつては海底の楽園と呼ばれ、その後は海底の地獄と呼ばれ……現在は再び一時の平和を取り戻した魚人島。

 その島で大勢の海賊たちが倒れていた。新世界側からやってきた島を襲った彼らの正体は海賊帝国傘下の複数の海賊達。その誰もが決して弱くはなく、中には名の知れた者達もいる。そんな彼らが徒党を組んで魚人島を奪還しに来たその危機を、容易く振り払ったのは広場にて腰掛け海賊たちを殴ったその手で夜食のおにぎりを頬張る白髪の老人達だった。

 

「ふふ、参ったな……!! せっかく来たのは良いがこれではやることがない……!! まさかここに“海軍の英雄”が来てるとはな……!!」

 

「ふん!! そりゃこっちの台詞じゃわい!! まさかこの島に“冥王”が来とるとは誰も想像せんじゃろう!!」

 

 ──そう。海賊帝国からの軍勢を鎧袖一触でなぎ倒したその2人の老人は、かつて相容れることのなかった海賊と海兵。

 それもただの海賊と海兵ではなく──伝説の2人だった。

 

『“冥王”シルバーズ・レイリー』

 

「まさか再び海兵と肩を並べて戦う日が来るとはな……()()()以来か」

 

『新政府軍中将 モンキー・D・ガープ』

 

「また古い話を……!! あの事件のことなど思い出したくもないわい……!!」

 

 ガープとレイリー。海軍の英雄と海賊王の副船長の邂逅は他の海兵や魚人、余人が割って入ることを憚られるものだった。

 

「まァそう言うな。私は助けたい者を助けに来ただけ。こんな時代だ……手を組む相手を選べる余裕はないだろう」

 

「……ふん。だったらそのままこの島を守っておれ──おい、行くぞ」

 

「は、はっ!!」

 

 おにぎりをさっさと食べ終えたガープはレイリーの言葉にぶっきらぼうに答えてその場を立ち去ろうとする。どんな時代であっても海賊と海兵は交わることはないとそう態度で示すように。

 

「……そっちは新世界側の岸だが……()()()()?」

 

「……何の話じゃ」

 

 だがレイリーは気づいていた。

 先程電伝虫で、新政府の兵達も慌てていた。その内容を知っているだけにガープの行動にも予想がつくと。

 

「先程耳に聞こえた。新政府の本拠地が壊滅し、ドラゴンは死亡……集まっていた王族や兵士の多くは何とか助かったが、最後まで現場に残っていた()()()()()()()()()()()()()()()だけが捕まり連れ去られたと……」

 

「…………」

 

 レイリーの指摘。その言葉に、ガープは答えない。ただ無言。レイリーからその表情は見えず、ただ腕を組んでいた。

 

「ガープ。お前は──」

 

「別に大したことじゃないわい」

 

「!」

 

 だが次の言葉を投げかけようとした時、ガープから被せるように返事が来る。

 ガープは腕を組むのをやめてレイリーにその答えを口にした──かつて自分が救った1人の少女を思い出しながら。

 

「ちょっくら()()退()()()()()──奪われたもんを取り返すだけじゃ……!!!」

 

 そうして拳を握るガープは……()()()()()()()()を浮かべていた。

 




黒ひげ→死亡。最後の最後まで諦めが悪いけどもう終わりだと悟ったらローグタウンのルフィ並の潔さを見せるんじゃないかと思ってる。
黒ひげ海賊団→黒ひげが死んだらあっさり瓦解しそうだよねって。ほぼ全員死にました。
カタクリ→遊ばれてたとはいえ生き残れるだけ強い
ぬえちゃん→世界一可愛いアイドル。次のステージへ。
ギア4→時間切れのデメリットが厳しい。ルフィ的にはいつもの
嵐羽→羽でたたっ切る。
クザンVS元CP9→元帥クザンにはさすがに勝てない。ルッチが一応追いすがる。一応まだダウンしてません。
マルコと青雉→頂上戦争で共闘した仲。
スパンダム→ドジすぎる男。ヤブイヌは色々と面白い生態です。
超人シスターズ→ぬえちゃんプロデュースのアイドルユニット。可愛さと強さで選別された。
スカート→リーダー。訛りが特徴的でちょっとバカ。モアモアの実の能力者で格闘が得意。一番強い。モデルは幽霊船長と色々。
ミニモ→日傘が手放せないゴスロリ。あだ名は姫。モドモドの実の能力者で一番頭が良い。モデルは小傘ちゃんと色々。
シュミア→バニーガールでちょっと電波系。ワプワプの実の能力者で狙撃手。実は一番無理してる。モデルはうさぎ達と色々。
レベッカ&ベラミー&キャベンディッシュ→それぞれ情報を得てやってきた。詳しくは次回。
レイリー→魚人島を守るためにやってきた。ぬえちゃんの師匠その2。
ガープ→魚人島を守るためにやってきた。でもそれだけじゃない。ぬえちゃんの恩人の1人。妖怪対峙に行くので実質霊夢(違う)

今回はこんなところで。3人組や今までのオリキャラのプロフィールもそのうち活動報告に出すかも。次回は早ければ多分11月の中旬くらいで。

感想、高評価、良ければお待ちしております。
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