正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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終末の救い

 ──“神の大地”1段目。

 

 様々な勢力による激しい戦いが繰り広げられるそこで、大型の獣に跨ったナミはムサシから預かったオワリを抱えながら、お玉やチョッパーと共に神の大地の一段目を駆けていた。

 その理由は──背後から迫りくる追跡者から逃げるためだ。

 

「いやァ~~~~!!?」

 

「ぎゃ~~~!! 近いでやんす~~~!!」

 

「イビビビ!!!」

 

 お玉がキビキビの能力によって操った獣が全速力で走るが、逃げられない。

 背後から迫りくるその巨体。巨人族の倍以上の体長を持つナンバーズの一美(インビ)が大地を揺らしながら迫りくる。その恐ろしさにナミとお玉は揃って悲鳴を上げていた。捕まればタダじゃ済まない。それを比較的冷静に理解しているチョッパーが背後で追いかけてくるもう1人の方も見ながらその理由を口にする。

 

「……!! アプーが正確に指示を出してるせいだ!! これじゃ逃げられない……!!」

 

「YOYO!! それが分かってるなら逃げるんじゃねェよ!! そうすりゃ怖い思いをしなくて済むぜ~~~~!!?」

 

 神の大地の一段目で行われる乱戦の中。どれだけ逃げても一美が標的を見失わない理由が、そのナンバーズの統率を委任されている“最悪の世代”の海賊、スクラッチメン・アプーだ。

 

「百獣海賊団にとって重要なキビキビの実の能力者!! そいつを捕まえりゃ大きな手柄だ!! ついでにこの戦況も大きく傾くからよ!! 何としても捕まえさせてもらうぜ!!」

 

「子供を利用して……!! あんた恥ずかしくないの!!?」

 

「お前らも利用してんじゃねェか!! 言われる筋合いはないだろうがよォ!!」

 

 そう、アプーの狙いはお玉だった。

 自身の能力が通じず面倒なバルトロメオと戦うより、弱い上に捕まえれば大手柄なお玉を狙った方が楽だと判断したアプーは一美と共にお玉を追いかけることにした。二牙と三鬼に他の足止めを任せた上で。

 

 

「とはいえオワリお嬢様もいるからな……傷つけちまうわけにはいかねェが……!! この距離なら射程範囲だぜ~~~~!!!」

 

 一美の肩の上からアプーは狙いをお玉につけると笛になった左手を口元に持っていき、思い切り吹いた。

 

「“(ピュー)”!!」

 

「!!」

 

「うわあああ~~!?」

 

「お玉!!」

 

 アプーのオトオトの実の能力。左手の笛によって対象を風によって吹き飛ばす能力を受けたお玉が上空へ舞い上がる。咄嗟の不可避の攻撃にナミ達も対応が出来なかった。

 

「アッパッパッ!! 狙い通りだぜ!! ──一美!! 捕まえろ!!」

 

「イビ!!」

 

「!?」

 

 そしてその舞い上がったお玉を一美がアプーの指示を受けて捕らえにかかる。巨大な手を伸ばし、空中にいるお玉をその手で掴もうとしていた。

 

「マズい!! “柔力強化(カンフーポイント)”!!」

 

 その動きを見たチョッパーが僅かに遅れて焦り、動き出す。跳躍力と腕力に優れた形態に変化し、お玉の元まで跳び出していく。

 だがそれだけでは一美を退けることは出来ない。慣性でお玉の元まで届くと判断したチョッパーは空中でランブルボールを口にするとそのまま“怪物変化”を使って巨体になった。そしてその上で一美の手に向けて技を放つ。

 

「“刻蹄”……!! “椰子(パルメ)”!!!」

 

「!!!」

 

「イビ!!?」

 

 お玉を捕らえようとしていた一美の手を弾き、一美が突然の衝撃に手を押さえて痛がる。

 なんとか一美の手を防いだチョッパーがそのままお玉を確保した。

 

「たぬき君!! 変身出来たでやんすか!?」

 

トナカイだ!! ……間に合って良かった……!!」

 

 空中でお玉の発言にツッコミを入れながらお玉を抱えて落下していく──が、まだその危機を脱したわけではない。

 

「よく防いだな!! だがこっちの攻撃は避けられねェだろ!!?」

 

「!! アプー……!! くっ……!!」

 

 アプーが再び攻撃の照準をチョッパーに向ける。避けることは出来ない。

 ゆえにチョッパーはせめてお玉には当たらぬようにその手で庇いながら歯噛みして覚悟を決めた。

 

「さあ行くぜ!! “(ドーン)”──」

 

「……!!」

 

 そうしてアプーが胸を叩こうとした瞬間──別の衝撃が、一美のふくらはぎに来た。

 

「──やらせねェっぺ!! “バリア突進牛(ブルズ)”~~~!!!」

 

「!!!」

 

「うお!!?」

 

「イビ~~~!!?」

 

 背後から猛進してきたバルトロメオがバリアの壁を一美のふくらはぎに、膝の関節にぶつける。いわゆる膝カックンのようになって体勢を崩された一美はその攻撃の衝撃もあってゆっくりと地面に倒れていく。

 当然その一美の肩の上に乗っていたアプーも体勢が崩れて攻撃が中断された。

 

「うわああああああ~~~!!?」

 

「一美が降ってきたぞ!!?」

 

「大丈夫か!!?」

 

 そして一美が倒れたことでその周囲で戦っていた者達に少なからず被害が出る。ナンバーズの巨体はそれだけで脅威であり、味方にも敵にも効果的だった。

 

「……! 今よ!! チョッパー!! ありがとうバル男!!」

 

「いびいびこけたー!!」

 

「ああ!!」

 

「!!!? (お礼……!!! 今のは……「あなたのハートを盗んであげる♡」というナミ先輩からのご褒美だっぺか!!?)」

 

「痛てて……くそ、二牙と三鬼は何してやがんだ!!? ──一美!!」

 

「イビビ~~~~!!!」

 

 一美が倒れ、アプーの攻撃が中断されたその瞬間を見計らってナミがチョッパーからお玉を受け取り、再び獣にお願いして走り出す。オワリだけが無邪気にはしゃいでいるが、それに反応している余裕はない。ナミのお礼がバルトロメオにとてつもない衝撃──大ファンであるがゆえの限界化に襲われたが、しっかりとバリアは維持していて怒った一美の攻撃を防いでいた。

 

「はぁ……危ないところだった……!!」

 

「この後はどうするナミ!!? おれ達も鏡を壊しに行くのか!?」

 

「……!!」

 

 アプーとナンバーズの追撃を一旦は退けたナミは詰まっていた息を吐いて僅かだが安堵する。

 だが戦況は未だ油断ならない。並走するチョッパーがこの後はどうするのかと尋ねるとナミは考えた。先ほど、鏡の情報を一緒にいたキャベンディッシュやベラミーらに伝えたところであったが……。

 

「──鏡の方はウソップ達に任せましょ!! 私達は……!!」

 

「どうするんだ!?」

 

「それはもちろん……このまま逃げるのよ!!!

 

「え~~~!!? それでいいのか!!?」

 

「お玉ちゃんを敵から遠ざけるためよ!! 後オワリちゃんも!!」

 

 そうしてナミとチョッパーはお玉とオワリを連れたまま神の大地を爆走し、逃げ続ける。お玉の操る獣達が──この戦場を左右することを理解しているがゆえに。

 ……背後から追いかけてくる強敵にビビっていることも理由の1つであったが、しかしその選択はこの場において間違いではなかった。

 

 

 

 

 

 ──“神の大地”内部。

 

 黄金の大地の中に作られただだっ広い空間で、高速の戦闘が行われていた。

 

「くっ……!! まさかただの幹部がこれほど手強いとは……!!」

 

「“スプリング跳人(ホッパー)”!!」

 

 鏡の中からの増援を防ぐためにこの場にやってきたキャベンディッシュとベラミーが対峙する敵を倒そうと懸命に動く。キャベンディッシュはその卓越した剣技で。

 そしてベラミーはバネバネの実の能力によって密室内を跳ね回って加速し、その加速した拳で敵に狙いをつけた──もう何度目にもなるその攻撃を。

 

「ふん!! ただの幹部と思われちゃ心外ばい!!」

 

「っ……!!」

 

 だがそのベラミーの常人では視認出来ないほどの速度の攻撃を、更に上回る速度で叩き落としてみせたのは百獣海賊団の真打ちにして“超人シスターズ”と呼ばれるアイドル部隊の幹部──スカートだった。

 

「あたしらはぬえさんに認められた“超人シスターズ”!! あんたらがなんばしよっとも鏡は割れん!! あたしらがここにいる限りね!!」

 

「くっ……!! 速い……!!」

 

「捉えられねェ……!!」

 

 スカートはキャベンディッシュとベラミーを同時に相手にしながらその攻撃の全てを跳ね除けている。モアモアの実の能力だけじゃない。単純にスカートが強い。その事実をここに来てキャベンディッシュらは思い知った。

 

「わはははは!! 馬鹿め!! お前ら木っ端海賊如きが敵うか!! 数いる真打ちの中でも超人シスターズは上位の強さを持つ!! 謂わば百獣海賊団における新世代!! 超新星だ!! TDセールスランキングでもぬえさんや歌姫、ソウルキングに次ぐ人気を誇り──」

 

「──なんでスパンダムが勝ち誇るピョン? 何もしてないのに」

 

「うっ……!」

 

「まったくですね。敵を煽っている暇があったらさっさと仕事を遂行してください。貴方に任された仕事は鏡の死守だけじゃないでしょう?」

 

「そ、そうだったな!! よし野郎共!! 超人シスターズを援護しつつおれを守れ!! これより処刑を行う!!!」

 

「はいっ!!」

 

 そして超人シスターズの強さに勝ち誇っていたスパンダムだが、シュミアやミニモの言葉によって水を差され、気を取り直す。周囲の部下に命令を与えるとそのまま背中の象剣ファンクフリードを抜いてヴィオラに近づいた。

 

「!!? ──ヴィオラさんっ!!」

 

 その光景に血相を変えたのがレベッカだった。2段目の戦いは父親であるキュロスや麦わらの一味に任せ、鏡を破壊しに行った戦士達を追いかけてここにやってきたレベッカは母親の妹に当たるヴィオラが殺されるのを阻止するために無理をして前に出ようとした。

 

「おっと、だめピョン」

 

「!!? うっ……!!」

 

 突如、真横にワープしてきたシュミアの奇襲を受けてレベッカは肩に銃弾を掠らせる。肩から血が流れ、レベッカは後退するしかなくなった。その道を塞ぐようにシュミアがワープしてくる。

 

「良い見聞色ウサね……!! 察知してなきゃ身体に穴が空いてたピョン!!」

 

「はぁ……はぁ……!!」

 

「とはいえシュミア達に比べれば程度が低いピョン♪」

 

「きゃあっ!!?」

 

 ワプワプの実のワープは見聞色でも察知し辛い。目の前にワープを行い、その手に持ったライフルで殴られたレベッカは頭から血を流して床へ倒れる。

 

「殺すのは勘弁してやるから大人しくするピョン!!」

 

「ううっ……!! (殺さない……? なぜ……!?)」

 

 銃口をレベッカに突きつけて動きを止めさせたシュミア。その言動にレベッカが痛みに喘ぎながらも疑問を感じる中、戦況は満身創痍に傾いていた。

 

「ゼェ……ゼェ……早く……ウソランド……!! 鏡を壊すれすよ……!!」

 

「わかってる……!! もう少しだけ頼む!!」

 

「もちろんれす……!!」

 

「いい加減にするれす~~~~!! お前じゃ無駄!! このダウトには勝てないれすよ!! この邪魔な糸も私の刃には通じない……いや間違えた。通じるれす!!!」

 

 その空間の出入り口に立ちふさがって敵を足止めするレオがウソップを急かす。オオカマキリの人獣型になったダウトにはレオのヌイヌイの実の能力も通じない。純粋な地力においてダウトに劣るレオは息も絶え絶えになりながらも戦い続ける──ウソップに鏡の破壊を託して。

 

「チクショウ!! あの能力、制限はねェのか!!?」

 

「ふふ……無駄ですよ。何度やろうと飛び道具じゃ私のモドモドは突破出来ません」

 

 そのウソップは遠距離狙撃による鏡の破壊を何度も試していたが、鏡の前に陣取るミニモによって尽くを戻される。ウソップの武器は植物を材料にしたもの。その全てが当然、直近に作られたものであるためモドモドの実の12年という消失効果の範囲内だ。

 ゆえにウソップの放った緑星は全てミニモの掌に触れた瞬間に消える。

 

(遠距離じゃ埒が明かねェ!! どうにかしねェとここで全滅しちまう!! 何か手を考えねェと……!!)

 

「……ふふ、何か手を考えているようですが……その暇があるとは思わないことですね──ねえ皆さん♡」

 

「ぎゃはは!! 姫の言う通りだ!!」

 

「いつまでも安全に狙撃してられると思うなよ!! 長っ鼻~~~!!」

 

「ぎゃあああ~~~!!? そうだった!! 雑魚が多すぎるんだった!!」

 

「誰が雑魚だ~~~!!」

 

「その鼻切り落としたらァ!!」

 

 そう、敵は真打ちだけじゃない。その場にいる百獣海賊団の戦闘員もまた脅威だ。雑魚とはいえ普通の雑魚とは違う。ドンキホーテファミリーなどと比べればその強さは明らかに差を感じられる。

 その四皇の一味、下っ端が大挙してウソップに押し寄せてきた。

 

「誰か助けてくれ~~~~!!」

 

 そしてウソップが雑魚に向けてパチンコを放ちながら叫ぶ──その瞬間に。

 

「!!?」

 

「え……!?」

 

「!? これは……!!」

 

 ──周囲の雑魚が、()()()()()()()()()()()

 

 斬撃を身に受け、倒れていく百獣海賊団の下っ端の姿にウソップやミニモも驚愕する。一体何が起こったのかと視線を迷わせ、雑魚を斬り捨てたその人物──人相が明らかに変わったキャベンディッシュを見つけた。

 

「もしや、あれが噂に聞く“ハクバ”……!!」

 

「……!!」

 

「! ──いけません!! シュミアさん!!」

 

「ピョン!?」

 

 その情報、キャベンディッシュのもう1つの人格である“ハクバ”のことを聞いていたミニモが当たりをつけた瞬間、ハクバが動き出したことでミニモは声を張り上げた。レベッカを抑え込んでいたシュミアの方へ向かったのを見聞色で感じて。

 シュミアも見聞色は使えるがレベッカと対峙している状態で他に気を回すことは難しい。出来てもその速度では隙を突かれてしまう。

 ゆえに間近に迫ったハクバに驚きを見せた──斬られる。そう思い、ワープが間に合うかどうか。とにかくワープを行おうと考えた瞬間に。

 

「あたしを無視するんじゃなか……!!」

 

「!!?」

 

「──スカートさん!!」

 

 ──スカートが、更にその上を行く速度でシュミアの前に割って入り、ハクバの攻撃を防いでみせる。

 その動き、速度にはハクバもまた驚愕した。武装色で硬化した腕でハクバの剣を止めた上で、スカートはハクバを睨みつける。

 

「急に気を失ったけん何事かと思うたけど……この程度の速さなら10倍──いや、20倍もあれば十分対応可能やけん……!! ボコボコにしたるよ!!!

 

「オマエ……!! 斬リ刻ンデヤル……!!」

 

 肉体派かつモアモアの実の能力で圧倒的な速度を誇るスカートが先ほどよりも速くなり、ハクバを襲う。ハクバもまたそれに負けじと高速での剣撃をスカートに見舞った。

 その高速の応酬はこの場の誰もが割って入ることは出来ない。時折見える残像や攻撃によって傷つく壁や床によってその戦闘が確かに行われていることが分かるのみだ。

 

「び、びっくりしたピョン……!!」

 

「……危ないところでしたね……ですがスカートさんがいる以上、超速度の対応も可能です。これで後は外を片付けるだけ……!!」

 

「……!! (今だ……!! 下っ端達が倒れて敵が浮ついてる……!!)──“緑星”!!!」

 

 そしてその隙を真っ先に突いたのがウソップだった。邪魔な下っ端がある程度倒れたのを見て、ウソップは緑星を連続で放つ。それは種から成長し、複数の手裏剣状の植物が相手を襲う必殺技。

 

「“プラタナス手裏剣”!!!」

 

「! なるほど……質で駄目なら量ですか……!! ですが、その程度の物量がアイドルに通用すると思わないことです!!」

 

 飛来する無数の手裏剣を見たミニモは手に持っていた日傘を一旦しまうと両手を開いて手裏剣を待ち構えた。

 

「ぬえさん直伝……!! アイドル神拳……!!」

 

 そしてモドモドの実の能力を発動しながら素早く全ての手裏剣に触れていく。触れて消しては次に。消しては次に。大勢のファンを相手にするように、ミニモは襲い来る全てに対応した。

 

「“流行の握手会(モード・ハンドシェイク)”!!!」

 

「!!!」

 

 無数の手裏剣。そのどれもがミニモを傷つけること叶わない。その背後にある鏡を守るための鉄壁の守護者。特に、遠距離攻撃でミニモを突破することは至難の業だ。

 

「……ふぅ。さて、これで無駄であると理解しましたか? 貴方が何をしようと──ん?」

 

「これでいいのか……!?」

 

「ああ……!! は、放してくれ……!! 行くぞ!! 必殺!! “成長(グローアップ)”!! な、“()()()”……!!」

 

 そして全ての手裏剣を消して勝ち誇ったところで、ミニモは妙なものを見た。

 それはウソップが地面にその成長させた黒カブトを固定させた上で、ベラミーに引っ張らせる。

 そこに乗った自分という弾を放つために。ウソップは覚悟を決めて──飛んだ。

 

「“ウソップ彗せ”──ぎゃああああああああああ~~~~!!?」

 

「!!?」

 

 技名を口にしようとして発射され、悲鳴を上げながらウソップは鏡に向かって──ミニモに向かって山鳴りに発射された。

 それは優雅かつ品を大事にしているミニモですら声を張り上げて絶句してしまいそうな暴挙だった。

 

「自分自身を飛ばした!!? ──いえ、ですがこちらに近づいて来るというならそれは無謀というものですよ!! 2回……私の手で触れて存在ごと消してあげます……!!」

 

「さ、させるかよォ!! “必殺緑星”!! ──“花火花”!!!」

 

 2回触れられると消えてしまう。1回でも子供になる。それを防ぐためにウソップは懐から取り出した別の種をミニモの側の床に向かって投げ落とす。黒カブトは置いてきたため使えなかったが、斜め下に投げ落とすだけなら問題ない。

 

「甘いですよ!!」

 

「なっ……傘!?」

 

「武装色の覇気で硬くすれば何でも武器や防具になる……!! 勉強不足でしたね……!!」

 

 床に投げ落とされた“花火花 ”は着弾と同時に花火のように火花を散らして敵を焼く。

 だがそれをミニモは自らの傘を手にとって開き、武装色を流し込むことで防いだ。

 

「さて、終わりです……!! まずは12年……!! “モドモド”!!」

 

「うわっ!!?」

 

 そして火花が収まったところでミニモは落ちてくるウソップに対して右手の掌を当てて12年戻す。

 一気に7歳の子供に戻ったウソップが床に尻もちをついた。衣服のサイズが合わずにずり落ちる。植物の種もまたこぼれ落ちた。

 

「くすくす……可愛らしい姿になりましたね♡」

 

「いやァ~~~!!? やめてくれ~~~!! 消さないでくれ~~~!!」

 

「それは無理な相談です。抹殺命令が出てる以上、貴方達を生かす必要は……」

 

 子供に戻ったウソップが命乞いをする様を見下ろしたミニモは、もう一度右手で触れてウソップをこの世から消し去ろうとする。こうなってしまえばこっちのもの。子供の身で出来ることは何もないとミニモは判断し、それゆえに──

 

「──なんてな」

 

「!! え……?」

 

 ──その罠に、嘘に気付けなかった。

 

 ウソップの衣服からこぼれ落ちた松ぼっくりのような植物。それが周囲に撒き散らされたことに。

 そしてその松ぼっくりのような植物──“爆ボックリ”は光りだした。

 

「貴方……まさか……!!」

 

「じ、自爆覚悟だ……!! この数とこの距離じゃ防げないだろ……!! 食らえ!! “必殺緑星”……“爆ボックリ”……!!!」

 

「! ミニモ!!」

 

「くっ……!!?」

 

 ウソップが技名を口にし、ハクバと戦っていたスカートがその異変に気づくも、もう遅い。ミニモがそれを防ごうと手を伸ばすよりも先に──爆ボックリは爆発した。

 

「!!!」

 

「……!!?」

 

「ミニモちゃん!!?」

 

「う……嘘だろ……!!?」

 

「か…………」

 

 決して小さくない爆発がミニモやウソップ。そして中央の台座にあった物を襲い、その場にいた百獣海賊団の船員達は驚嘆した。その爆発によって起きた結果──それを信じられない、信じたくないという表情で一斉に口にする。

 

「鏡が割れた~~~~~~~~~~~!!!」

 

「やべェ……やべェよ!!」

 

「ぬえさんに怒られる~~~~~~~!!!」

 

 鏡世界から戻って来るための巨大な鏡。それが割れてしまったことで、百獣海賊団は悲鳴を上げる。ぬえから与えられた仕事をこなせなかった。その事実に恐怖が湧き上がってきた。

 

「み、ミニモちゃん!!?」

 

「……!! (鏡を割った……!! 敵の目が向こうに向いてる……!! 助けるなら……今!!)」

 

「! しまった……!! 動くなピョン!! 動かなくても撃つウサ!!」

 

 そして鏡が割れて全員が鏡の方を注目する瞬間、レベッカもまた動いた。立ち上がり、飛び込むように一直線に捕らわれているヴィオラとマンシェリーを抱え込む。その場にいたスパンダムもまた割れた鏡を見ていてそれに気付いた時にはやはり遅い。

 

「おわっ!!? って、しまった!! おい返せ!!」

 

「レベッカ!!」

 

「後ろ!! 危ないれす!!」

 

「大丈夫……!!」

 

「!?」

 

 ヴィオラとマンシェリーがレベッカに抱えられてその場を脱しようとする──が、その背後から銃口を向けられていることに2人は注意をする。このままでは撃たれてしまうと。

 だがレベッカはそれを予想していた。問題ない、と。だから2人にも笑顔で口にする。

 

「その2人を返すピョン!! 返しても返さなくても撃つウサ!!」

 

「っ……う……!!」

 

「レベッカ!!」

 

 そして危惧していた通り、レベッカの足に何発もシュミアの銃弾が撃ち込まれる。

 だがそれでもレベッカは足を止めずに離れた。そう、覚悟していた。()()()止まらずに走れた。

 

(どういう理由か、私のことは殺さない……!! なら、我慢すればいいだけ……!!)

 

 殺されないなら撃たれる覚悟さえ、傷つく覚悟さえあれば助け出せる。この場から逃げ出すことまでは難しくとも、少なくとも取り返すことは出来た。

 

「逃さないピョン!!」

 

「……っ……!!」

 

 シュミアがレベッカの前にワープして立ち塞がってくる。ここまでは良いが、これをどうにかくぐり抜けなければならない。レベッカは痛みに耐えながらその方法を頭の中で必死に模索した。

 

「っ……はぁ……はぁ……まさか、自爆されるなんて……!!」

 

「姫!! 大丈夫ですか!?」

 

「この程度でやられません……!! それに……鏡の方も、どうにかなります……!!」

 

「え……それはどういう……?」

 

 そしてレベッカの退路をシュミアが塞ぐ中、爆発の煙の中から立ち上がったミニモがしてやられたことに表情を歪めながらも問題ないのだと心配してくる部下達に説明した。そう、問題はないのだ。自分たちがここに来た時点で、どうあろうと鏡は何とかなると──

 

『──あれあれ~? これはどういうことかなぁ~?』

 

「!!?」

 

「え……!?」

 

「っ……この声は……!!?」

 

 ──そう思った直後、その場に声が届いた。

 それはこの場にいる誰の声でもない少女の声だ。可愛らしい女の声。聞こえるはずのない声。

 だがそれが聞こえてきた。その事実に、その場にいる百獣海賊団の面々は目を見開き、そして恐怖する。あるいは表情を硬くする。

 彼らはすぐに理解したのだ。その声が誰の者で、どこから聞こえてきたのか。壊れた鏡の破片から、その怪物の声が届く。

 

『鏡、壊れてるんだけど……おかしいなぁ。私、鏡は死守するようにって言ったはずなんだけど……ねぇ、スパンダム?』

 

「ぬ、ぬぬぬぬ……ぬえさん……っ!!!」

 

 ──百獣海賊団の頂点に立つ2人の怪物の内の1人……“妖獣のぬえ”。

 

 最恐生物と恐れられるその海賊が、鏡の中に、前にいた。

 その事実と声を掛けられたことでスパンダムは震える。任務失敗。それによってどんな罰が与えられるか──想像するだけで恐ろしい。

 

『あれ、聞こえてるよね? 返事はどうしたの?』

 

「は、ははははい!! き、聞こえてます……!!」

 

『あ、良かった。それで? どういうことなの?』

 

「そ、それはですね……あの、その……!!」

 

 ぬえからの詰問。それに答えることが出来ない。しどろもどろのスパンダムだが、それを情けないと言うことは、少なくとも下っ端には出来ない。ぬえの恐怖の前にはひれ伏すしかないと誰もが知っているから。

 だから彼らの心中は1つ──どうか連帯責任で処罰されませんように。そんな願いだけだ。

 普段は寛大だが、ぬえのステージを邪魔した。失敗させてしまったことによる処罰がないわけがない。そのことを知っているため、誰もがそれを願っていた。せめてスパンダム1人で頼むと。

 そしてスパンダムもまた上手い言い訳を考えることに終始していた。言葉を迷わせながら引き伸ばし、必死に思考を回す。自分が助かるために──。

 

『──なーんて、ね』

 

「え……?」

 

 ──だが、ぬえからの冗談を意味するそんな言葉が聞こえてきたことでスパンダムは間の抜けた表情を浮かべた。頭に疑問符を浮かべ、どういうことかと頭を再起動させる。

 だがその前にミニモが鏡に近づいた。

 

「ぬえさん。こちらミニモです」

 

『あ、ミニモちゃん。ちゃんとその場にいるみたいだね』

 

「はい。スカートさんにシュミアさんもいます」

 

『おっけーおっけー。それじゃ問題ないね──さっさと()()()()()()

 

「へ……? も、戻すって……」

 

 ミニモが鏡に応答し、ぬえとの会話を行う。その内容を耳にしてスパンダムは疑問した。戻すとはどういうことかと。

 そしてその疑問にはぬえが答えた。何か食べているのだろう。口をもごもごさせる音を響かせ、軽く笑いながら。

 

『んー、んぐ、んぐ……あはは、そりゃミニモちゃんの能力で鏡を復元させるって意味だよ。そこに運ばせた鏡は作られて大体20年ぐらいの古い鏡だからね。ミニモちゃんの能力なら壊されたところですぐに戻せるんだよね』

 

「っ……!! なるほど……!!」

 

「! (な、何~~~!!? あれだけ苦労して壊したのに……そんなのってありかよ!!)」

 

 ぬえの説明にスパンダムが遅れて理解し、今だ汗ばみながらもゆっくりと表情を笑みに戻していく。

 反対に爆発でボロボロになりながらも意識を残して這いずるように逃げようとしていたウソップの方は内心で絶叫した。壊したところで無意味だった。そんな馬鹿な話があるかと。

 

「そういうことです。なので、問題はありません。欠片さえ無事なら鏡は復元出来ますので」

 

「ってことは……!!」

 

「ぬえさんがここに来る……!!」

 

「なら勝利確定だ!!!」

 

「うおおおお~~~~!!!」

 

「ぬえさんがいれば敵は皆殺しれす……!!」

 

「……!!」

 

 続くミニモの補足で下っ端達もまたこれからぬえが出てくることを理解し、勝利を確信して雄叫びを上げる。

 カイドウとぬえはこの世の頂点。最強の存在。戦えば負けはない。その圧倒的な強さに対する信頼が士気を上げるのだ。

 

「──盛り上がりに水を差すようでござんすが……勝ち誇るにはちょいとばかし早ェんじゃねェですかい……!!!」

 

「え?」

 

『! ──ミニモちゃん!!』

 

 ──しかし、それは一瞬の気の緩み。刹那の隙だった。

 

 凄まじい速度で神の大地の内部を飛翔し、その鏡のある部屋まで辿り着く──そして攻撃を放つその存在に気付いたぬえが鏡の欠片を持つミニモの名を呼んだ。直ぐ様鏡を復元するようにと、そう言おうとして。

 

「“重力刀(グラビとう)”……“猛虎”!!!」

 

「!!!?」

 

 ──間に合わなかった。

 超速で奇襲を仕掛けたその重力波による攻撃は、容赦なくミニモとその周囲にあった鏡を叩き、粉々に粉砕する。

 彼の耳には聞こえていた、“欠片があれば復元出来る”というその企みを防ぐために。

 鏡の破壊による増援の阻止。それを上司から託された男は、僅かに残った足元の鏡の欠片を手に取ると、その中にいる怪物の気配に表情を険しくする。

 

「間に合いやしたか……これで何とかあんたの参戦は阻止できそうだ……“妖獣のぬえ”……!!!」

 

『イッショウ……!!!』

 

 反対に、鏡の中のぬえは愉快そうに笑みを浮かべる──鏡の中と外ではあるが、海賊帝国と新政府の最高戦力が互いの覇気をぶつけ合っていた。

 

 

 

 

 

 ──ドレスローザ、西の港(神の大地の麓)。

 

 ドレスローザとグラン・テゾーロの境目にあたるその場所で、神の大地を見上げ続ける男──新政府軍の元帥であるクザンがいた。

 

「クザン元帥!! マゼラン大将から報告です!!」

 

「ああ……グラン・テゾーロ側は順調か?」

 

「はい!! 毒を広げて建物毎溶かしているとのことで……!! 後30分もすれば全域の汚染が完了するとのこと!!」

 

「そうか。ならそのままでいい……続けさせろ」

 

「はっ!!」

 

 部下からの報告を受け、クザンは冷静に追加の命令を出す。

 元帥であるクザンの命令を受けた新政府軍の兵士は、ドレスローザの各地に散らばり、住民の確保と鏡の破壊を行っていた。

 前者は民衆の意志である新政府軍にとって当然のことだが、後者は──海賊に頼まれたことだ。クザンは少し前に頼まれたそれを回顧する。

 

『鏡を?』

 

『ああ!! ぬえと黒ひげがおそらく戦ってる!! まだしばらくは出てこないだろうが、決着がつけば出てくる!! もしぬえが勝って出てくるようなことがあればこの戦いは一気に不利なものになるよい!!』

 

『……なるほどな。だから鏡を壊せ、か』

 

『ああ、頼む!! 手が足りねェんだよい!! 手伝ってくれ!!』

 

『…………』

 

 その場面を見たという白ひげ海賊団の1番隊隊長“不死鳥のマルコ”の頼みに、クザンは一度は考えた。

 海賊が海兵に頼み事をする。筋違いであることは承知の上のその頼みに、クザンは元帥として、立場を考えるのならば断るのが筋であると考えはした。以前の世界政府直下の組織である海軍の大将の立場であればまだそこまで深く考えることはしなかったが、今のクザンは元帥。それも以前の世界政府よりも信頼出来る組織に属している身であり、その軍隊のトップである。

 ゆえに半端な判断は許されない。部下が海賊を助けたり共同戦線を張ることを許容することもあるが、その判断には政治的に不信感を与えるものだ。戦争に勝つためとはいえ新政府に加盟している幾つかの国からは不満が挙げられている。だからこそ、その頼みを断ることもまた新政府という組織を維持するためには“アリ”な選択肢ではあった。

 

 ──だがクザンはその頼みを承諾した。

 

 マルコには頂上戦争の件で借りがある。その頼みを無下にはしたくない。

 それがクザンの狙いと相反するとしても、そうなったらなったでこの戦いを有利に運べることは疑う余地はない。そう思い、クザンは増援を阻止するために鏡を壊して回ることを兵士達に命令し、イッショウやマゼランにもそのために動くように指示を出した。

 そしてその作戦は順調である。増援がなければ、敵はそのまま、この神の大地に集っている海賊帝国の幹部達だけだ。

 

「監視係からの報告です!! 神の大地での戦況は未だ不利!! 頂上で戦う“麦わらのルフィ”も“大看板”ジョーカーに苦戦しているとのこと!!」

 

「……どうします元帥? 我々も上を目指しますか?」

 

 部下からの報告。そして傍らにいた中将の言葉にクザンは目を伏して考える。軍のトップとして一応検討することは大事なことだ。

 だから考えたが──考えた上でも、結論は変わらないとクザンは答えを出すと確固たる意志を持って部下達に発言する。

 

「──いいや、まだ待機だ」

 

「は……しかし、戦況は……」

 

「今はまだ動かねェ。イッショウとマゼランにも伝えとけ。幹部達との戦いは避けて体力の温存に徹しろってな」

 

「それは……いえ、分かりました……!! 伝えます……」

 

 その命令に明らかに納得していない様子の部下に、クザンは内に秘めているであろうことを察しながら息をついた。──加勢に向かうべきだと言いたいのだろうと。

 ドフラミンゴにテゾーロ。その両方の幹部に、百獣海賊団の飛び六胞に大看板。その戦力に対し、麦わらの一味やトラファルガー・ロー、ジュエリー・ボニーなどが集まった連合軍では少しばかり荷が重い。

 だがここに新政府軍──それもマゼランやイッショウ、そしてクザンが加われば話は変わってくる。

 今は海賊帝国側の有利ではあるが、それでも新政府軍の最高戦力と当たっていない状況で押し切れていないというのは、こちらの有利とも言える。海賊帝国側からすれば、麦わらの一味やその他の有象無象にいつまでもかかりっきりになっている場合ではないのだ。彼らにとって最も警戒すべきなのは新政府軍の大将。そして、クザンである。大看板のジョーカーにジャック。それにドフラミンゴにテゾーロは本来、そこにぶつけるための戦力なはずだ。

 それが止められている今、加勢すればともすれば討ち倒せるかもしれない。そう考えるのは自然なことだ。間違った考えではない。

 

 ──だがクザンはそれでも動かない。体力を温存する。

 

「──少なくとも今はまだ、その時じゃねェ」

 

「それは……どういう意味で?」

 

「大看板や他の幹部を倒したところで、トップが残ってりゃ奴らは何度だって復活する……そのトップに備えるって意味だ」

 

「!! そ、それは……しかし、増援の可能性は……」

 

「鏡を破壊するっつっても絶対じゃねェ……少しでも漏らしがあれば出てくんだろ。ならむしろ出てくる可能性の方が高い」

 

 島中の全ての鏡を残らず壊し尽くす──それが出来ればいいが、現実的にそれが出来るかと言うと難しいと言わざるを得ない。

 大きな鏡だけに限定しても困難であるし、それをマゼランやイッショウが大雑把に建物ごと壊したところで確実なものではない。

 それにグラン・テゾーロはともかく、ドレスローザの方で島1つを更地にするようなことは無理がある。罪のない住民に対してそれを行えば海賊帝国と変わらない。

 だからこそ増援が、ぬえがここに現れる可能性は高いとクザンは見ていた。

 

「だから力を温存しておく……もし奴が現れた時のためにな」

 

「なるほど……了解しました」

 

 そしてぬえが参戦してくる──その可能性が高いと聞けば、部下は戦々恐々としてしまう。

 ぬえの悪名を考えれば無理からぬことだが、クザンはむしろチャンスだと感じていた。

 

(覚悟は終わってる……だからこそこれはチャンスだ)

 

 新政府軍の元帥として、クザンは海賊帝国を倒すための方法を、作戦を、戦略を……ドラゴンやサボ、大将や軍隊長らと相談し続けた。

 最終的な目標として絶対に回避することは出来ない現実──すなわち、カイドウやぬえ、ビッグマムといった怪物を倒すこと。

 特に百獣海賊団はカイドウとぬえ。2人の怪物を相手にしなければならないのだ。

 仮にその2人に対し、新政府軍の全戦力で挑んだとしても分の悪い戦いになるだろう。

 だからこそ彼らを倒すためには如何にその戦力を減らし、彼らを消耗させるか。それが重要だった。

 そしてそのためにはどうすればいいか。どうやれば戦力を削れるか。消耗させられるか。それを考えるのに散々苦労してきたし、今でも悩んでいたところに──偶然にもカイドウとぬえが別れ、なおかつぬえが消耗している状況が運良く巡ってきている。

 

「そろそろ……借りは返さねェとなァ……!! そのためには──」

 

 拳を強く握り、意志を固める。様々な想いを滲ませて。

 恩師、同僚、友人、部下……その多くが奴らに殺された。

 だからこそクザンは決意していた。あの日からずっと。

 ゆえにもし……今日、ぬえが目の前に現れるなら。

 

「この手で──“ぬえ”の首を取るしかねェだろ……!!!」

 

 それが遺された自分の使命だと……クザンはそう思っていた。

 

 

 

 

 

 ──“神の大地”頂上。

 

 “大看板”ジョーカーにとって、その戦いはそれほど苦労しないものだった。

 

「“ゴムゴムの”ォ……!!」

 

 相対する“麦わらのルフィ”。その切り札たる“ギア4”、バウンドマンの情報は入手済みであり、その弱点も理解している。

 そのパワーもスピードも格段に跳ね上がっており、如何にジョーカーとて真正面から戦えばそれなりに対処に時間がかかる相手だ。

 だが、弱点を突けばその限りではない──ゆえにジョーカーはその技に対しても回避を選択した。

 

「“猿王回転弾(コングライフル)”!!!」

 

「見えてるわよ……!!」

 

「!!?」

 

 見聞色の覇気で攻撃を察知し、僅かに先読みを行って上空へ飛ぶ。

 ルフィが驚きを気配に滲ませる中、空中からジョーカーは銃弾を放った。

 

「“指銃”……“雀撥(スズメバチ)”!!!」

 

「ウ!!」

 

 普通の飛ぶ指銃“撥”が拳銃ならば、それは狙撃銃。

 射程、威力と共に普通の指銃を遥かに凌ぐ高速の弾丸がルフィの脇腹を穿ち、貫通して背後へと更に飛んでいく。

 

「ぐわっ!!?」

 

「なんだ!? 流れ弾か!?」

 

「おいしっかりしろ!!」

 

 それは戦場である黄金の大地を貫通し、その先にいた誰かに流れ弾が当たるほどの凄まじい貫通力。

 神の大地の一段目にいた運の悪い誰かはそれを受けて倒れるが、ルフィもジョーカーもそれを気にできるはずもない。2人の戦いは周囲の環境を次々と破壊していく。

 

「中々やるけれど私には通用しないわ……!!」

 

「くそ!! 攻撃が当たらねェ上に躱せねェ!! どうなってんだ……!!?」

 

「それを教えるほど私は優しくないわ。自分の無知を後悔することね……!!」

 

「うるせェ!! 絶対に当ててやる!!」

 

 再び空中を翼と体術で駆けてルフィへと迫るジョーカー。

 その攻撃の予兆をルフィは当然、見聞色で察知しようとするが、その先読みは僅かにジョーカーの方が上回っている。

 

「“ゴムゴムの”……!!」

 

「“血手銃(ケッシュガン)”……!!」

 

 ゆえのその行動も読めた。ルフィが連続での打撃。それを狙っているのを察知し、ジョーカーは指先から流した血液を肥大化させ、幾つもの拳を作る。

 そうして2人の乱打が激突した。

 

「“猿王銃乱打(コングガトリング)”!!!」

 

「“斑”!!!」

 

「!!!」

 

 両者の覇気を纏った打撃。それらが一瞬の間に幾度もぶつかり合い相殺される。

 だが僅かに上回ったのはジョーカーだった。血を操って繰り出した拳をそのままに、ジョーカーだけは再び跳躍。空中を蹴り、ルフィの頭上へと移動し、足を振り上げる。

 

「“嵐脚”……“紅一点”!!!」

 

「!!!」

 

 ジョーカーの履いたヒール。空中で一回転し、覇気を込めた上での変則的なかかと落としがルフィの顔面に直撃する。

 ギア4状態でなければ顔に穴が空いてしまいかねない破壊力を秘めた技を食らい、ルフィは吹き飛んで黄金のビルへと激突した。そして地面へと落ちて痛みと出血に悶えるように顔を押さえる。

 

「ゲホッ!! 痛ェ……!! ギア4でも防げねェ……!! ハァ……ハァ……!!」

 

「武装色もまだまだね……!! 安定感が足りないわ」

 

 地面へと降り立ちながらジョーカーはルフィの強さを正確に理解し、上からの言葉を送る。

 武装色を纏う技術もまだ未熟。その上、見聞色もジョーカーには及ばない。

 特にジョーカーは大看板の中では最も見聞色の扱いに長けていることもあって、ルフィに対して有利に戦えていた。攻撃を無駄に食らうこともなく、回避を中心にした防戦による時間稼ぎを行う。

 そう──未だジョーカーは本気の攻勢を行っていない。

 それなのにルフィは苦戦し、地面に倒れていた。その事実から、やはり負けはない。もうじき仕留められるとジョーカーは判断する。

 

「まだまだ……──!!?

 

「──あら、思ったより早かったわね♡」

 

 そして、遂にその時が来た。

 ルフィのギア4の時間制限。ルフィの全身から蒸気のようなものが溢れ出て身体が萎んでいく。

 そうなれば10分間、ルフィは覇気を使えない。

 

「やべェ!! どうにか10分逃げねェと……!!」

 

「賢明な判断ね……だけど逃がすと思う?」

 

「!?」

 

 そしてそれがジョーカーの狙いだ。

 ルフィのギア4が解除され、覇気を使えない。著しく弱体化した瞬間にジョーカーは更に変化する。

 よりスリムに、しなやかに。吸血鬼としての全能力を発揮出来る姿に。

 

「また変身した!!?」

 

「これが本気の姿よ……!! さぁ……蹂躙してあげるわ……!!!」

 

 更に変形したジョーカーの姿をルフィは見て、そして目を見開く。

 爪や牙がより鋭くなり、黒い羽もまた大きく広がった。羽衣のような何かを纏い、先ほどまでの人獣型よりも更に怪物度の増したその形態こそ、ジョーカーの本気でありルフィの未だ到達していない悪魔の実の能力の高み──“覚醒”した姿だった。

 

『バットバットの実(幻獣種)モデル:バンパイア 覚醒フォルム』

 

「夜の王の力を思い知りなさい……!!!」

 

「……!!?」

 

 本気の姿を出したジョーカーが足に力を込めれば、六式の“剃”もかくやという圧倒的なスピード、爆発的かつ軽やかな加速によってルフィの前に現れ、その長い足でルフィの顎を蹴りつける。

 

「いっ!!」

 

 蹴られて地面をバウンドしながら転がっていくルフィ。

 だがそうして距離が離れたことで、ルフィは急いで立ち上がることで痛がりながらも逃げようとした。

 だが。

 

「二撃目……!!」

 

「うがっ!!?」

 

 その場所に既にジョーカーが追いついていた。

 ルフィはその気配を感じ取るとほぼ同時にジョーカーによって更に大きく蹴り飛ばされる。

 

「三撃目!!」

 

「ぐぎっ……!!」

 

 今度は地面や建物にぶつかる前にジョーカーによって蹴り上げられた。

 見聞色も使えず、スピードも落ちたルフィには追いつけないほどの速さを以てして、更にジョーカーは宙に浮いたルフィの身体を覇気で纏った膝で打撃する。

 

「実力を出せないのはもどかしいでしょうね……!! だけど、私はそんな正々堂々とした戦いには付き合わないわよ……!!!」

 

「……!!」

 

 更に連続での攻撃を放ち、ルフィをピンボールのように跳ね回らせながらジョーカーは自らの矜持をルフィへの煽りと共に口にする。

 

「敵は仕留められる時に仕留める……!! 相手が本気を出せない時こそ、力の出し時よ……!!! おバカさん……!!!」

 

 情報を入手、精査した上でその敵の弱点を狙う。相手が実力を発揮出来ない時を逃さずに敵を仕留めることこそジョーカーの戦闘だ。

 バカ正直にぶつかり合うことなんてない。無論必要とあらばそうするし、正面からでも負けない自信はある。

 だがこの方が効率的だ。敵が、ルフィが何も出来ない時に、ジョーカーは本気を出す。

 ギア4状態の時に用いて力の差を見せつけるのも悪くはないが、隙を突くにはこのタイミングがベストだとジョーカーは判断していた。ルフィが逃走に移ることも時間制限を理解していれば予想出来る。

 その瞬間に本気を出して連撃を叩き込んで戦闘を終わらせるのだ。

 

「さあこれで終わりよ!!!」

 

 空中で幾度となくルフィを痛めつけた上で、最後に大技を放つ。

 それでも致命傷になるような攻撃はギリギリのところで外してくるのだから大したものだが、これは躱すことも受けることも出来ない。六式だけではない。世界中の武術のエッセンスを混ぜ合わせ、覇気で威力を底上げしたジョーカーの奥義の1つ。

 

「“獣王銃”!!!」

 

「!!!」

 

 両の拳を合わせる形で放つその奥義が、ルフィに直撃する。

 内部に与えられる凄まじい衝撃はルフィを穿ち、その背後にあった巨大な黄金の建造物を亀裂を走らせ、粉々に破壊するほどの威力だ。

 ゴム人間と言えども耐えられるはずはない。ルフィは血を吐き、白目を剥いて地面にどさっと背中を打ち付ける。

 

「フフフ……♡ 思ったより、弱かったわね……!!!」

 

「……!!」

 

「ただ……タフさだけは想像以上ね……!! 死なないどころかまだ意識は辛うじて保ってるみたい……!!」

 

 奥義を放ち、ルフィをダウンさせたジョーカーは勝ち誇りながらもしかし、ルフィのそのタフさに純粋に感心する。動物系の能力者を思わせるタフネスだ。大ダメージを負い、白目を剥いて歯噛みしながらも何とかしようと藻掻いている。

 

「とはいえそれは好都合……!!」

 

 ジョーカーは覚醒フォルムを解除し、通常の人獣型に戻りながらルフィに近づいていく。算段を口にしながら。

 

「抹殺命令を出しはしたけれど……捕まえられるならそれに越したことはないわ。ぬえさんも喜ぶことだし……このまま捕えさせてもらうわね♡」

 

 そうしてジョーカーはメアリーズに連絡を入れようとした。“麦わらのルフィ”が敗北し、囚われの身になったことを伝えさせるために。

 そうして通信モードのスイッチしようと手を動かしたところで──

 

「させねェ!!」

 

「!」

 

 ──死角からの長物による奇襲を受け、ジョーカーは僅かに飛び退いてそれを回避する。

 

 そしてその相手の姿を見て、微笑を浮かべた。気づかれない程度の苦笑いのエッセンスを加えて。

 

「まだやる気があったのね……ボニー」

 

「ハァ……ハァ……当然だ……“麦わら”はやらせねェ……!!」

 

 “最悪の世代”の海賊、“大食らい”ジュエリー・ボニー。

 先ほど容易く制したつもりの相手が再び立ち上がってきたことに、ジョーカーは自らの詰めの甘さを感じてそれを内心で自戒する。途中で増援が多く来たせいとはいえ、やはりもっと念入りに潰しておくべきだったかと。

 

「……やめておきなさい♡ 貴方じゃ私には勝てない……痛い思いはしたくないでしょ?」

 

「そんなこと……知ったことじゃない!! ──“歪んだ未来(ディストーションフューチャー)”!!!」

 

「!」

 

 ジョーカーの忠告を無視し、ボニーは能力を発動しながら動き出す。ボニーの身体が、体格が逞しく変化したのをジョーカーは見て反応した。トシトシの実の能力。それによってボニーの望む屈強な未来へと変貌したボニーは、どこからか拾った黄金の棒を振りかぶった。

 

「“跡死(トシ)”……“突き”ィ──!!!」

 

「“紙絵”……“残心”」

 

「!?」

 

 だがその攻撃はジョーカーにとって容易いものだった。その場に残像を残しながらボニーの年齢を操作する攻撃を躱すと手刀でボニーの持っていた棒を弾き飛ばす。

 

「──逆らうならもう一度、お仕置きしなくちゃね……!!!」

 

「……!!」

 

 ジョーカーの引き絞った右手の人差し指が硬化したのを見て、ボニーは表情を固くした──攻撃を食らう。痛い思いをする。その未来は避けられないと。

 

 ──しかし再び。

 

「!!!」

 

「……! やっぱり……あなたまでまだ動くのね……!! くま……!!!」

 

「──お父さん!!?」

 

 ──ジョーカーのボニーへの攻撃に割って入ったその巨漢の姿に、ジョーカーは名前を呼びながら眉をひそめる。

 ボニーがお父さんと呼ぶその人物……バーソロミュー・くまはもう動かないはずだった。これまでも。くまが奪われた時点で既に停止命令は出している。

 だが先ほどから何度も、ボニーがジョーカーに挑みかかった時から動き出し、ジョーカーに逆らいボニーを守っている。

 

「バッカニア族の血のせいかしら……貴方もまたしぶといわね……!!」

 

「……!!」

 

 そしてくまと対峙しながら、くまが動く理由について思考を回すも答えは出ない。くまの特殊な出自……すなわちバッカニア族という特殊な血筋が関係しているのかもしれないという曖昧な推測しか出来なかった。

 あるいはくまをこんな風にした張本人であれば知っているかもしれないが、その張本人はこの場にはいない。()()()()()()科学についてある程度の知識があるジョーカーでもくまのこの異常な行動について解明することは出来なかった。

 百獣海賊団の大看板にして優れた科学者であるクイーンも同様だ。くまを奪った際にその“威権順位”を上書きし、新たな命令を加えることは出来たが、そのプログラムを全て書き換えるには至っていない。そのことをジョーカーは知っている。

 

「だけどもう満身創痍……もう何発も耐えられないはずよ。私が全力で攻撃すれば機能停止どころか、破壊されかねない。そのことを分かっているのかしら?」

 

「!! お父さんは壊させない……!!」

 

「と、娘の方は言っているけれど……さて、困ったわね。私としては、交渉に使うためにも貴方達2人は生かして捕えておきたいのだけれど……折れてくれないかしら? 百獣海賊団に……ボニー。貴方が与すれば少なくとも命は助かるわよ?」

 

「っ……!!」

 

 バチバチと全身から異音を発生させ、破損が目立つくまを見てジョーカーは言葉でボニーを揺さぶることにした。ハーフとはいえ、バッカニア族の生き残りと幼いとはいえ“最悪の世代”の海賊。この2人は生かして捕まえるのがジョーカーに与えられた任務の1つだ。

 そしてこの2人を用いれば弱みにつけ込んである人物を味方に引き入れることも出来るかもしれない。それを思えば、ここでこの2人を殺すというのは出来れば避けなければならなかった。

 

 ──もっとも、ジョーカー個人としてはこの2人はここで消すべきだと思っていた。

 

「どうするの? 貴方達が投降してくれるならこれ以上痛めつけることは──」

 

「断るに決まってる……!! 父をこれ以上利用させはしない!!!」

 

「! ……へえ……そう」

 

 そしてそのジョーカーの誘いが言い終わる前に、ボニーは啖呵を切ってその提案を断る。

 ここで投降したところでくまはまた兵器として、あるいはまた別の方法で使われ利用されてしまう。結果的に大勢の人を苦しめる。百獣海賊団に使われて。

 そんなことを許すわけにはいかなかった。その想いを口にし、再び戦闘の意志を見せたボニーに、ジョーカーは可笑しそうに微笑んだ。

 

「父を解放しろ!! 父は……あたし達は……自由だ!!!

 

「──救いの形は人それぞれよ。純粋な正義に救われることもあれば……獣の群れに加わることで救われる人間もいる」

 

「“歪んだ未来(ディストーションフューチャー)”!!!」

 

 ジョーカーは抑えた声量で語りながらボニーが跳び上がり、その腕を巨大化させたのを見た。

 それはいつか聞いた古い神を真似ているのだろう。ジョーカーはそれを何度か耳にしていた。他ならぬ、ボニーにそれを教えた人物から()

 だがそれはあくまで真似でしかないし、仮に本物であったとしても今この場においては重要ではない。重要なのは、救いを与えることだ。

 

「相争い敗者を滅ぼし尽くすことは、この世から救われる手段の1つ……何も生き続けることだけが幸せとは限らないわ……!!」

 

「“()()()()()()”……!!!」

 

 獣となった今でも情を失ったわけではないし、恩義を忘れたわけではない。

 だからこそ、ジョーカーは心を鬼にして意志を固める。目を一度伏せ、そして開き、覚悟を決めた。

 

 ──獣の命令に背き……そして相手の意志にも背くことを。

 

「だから……そう──貴方には()()()()未来の方が救われるでしょうね」

 

「──“未来”!!!」

 

 ボニーの巨大化した腕がジョーカーを倒そうと唸りを上げて振るわれる。

 その力はボニーの口にした“奴隷解放の神”を真似たものであり、またゴムの身体を持つ誰かにも酷似した力だった。ボニーの信じる強い未来であるために、その力は決して弱くはない。

 だが──

 

「“剃”」

 

「!!? なっ──!!?」

 

 ジョーカーはその攻撃に応じることはなかった。

 六式の高速移動術でその場から消え、ボニーの拳が地面を穿つ。ボニーが驚愕する中、ジョーカーは攻撃してきたボニーに反撃をすることすらなかった。

 だがその移動先は──

 

「──だから……貴方を壊すわよ……!! くま……!!!」

 

「っ!!! やめろ!! ジョーカー!!!」

 

 ──()()()()()()()()()

 

 ジョーカーは先ほどと同じように、両の拳を当てて奥義を放つ。

 その利用され続けた男を完全に停止させるために。

 

「やめろ~~~~~~~!!!」

 

「──それじゃ、さよなら」

 

 そしてくまの身体の中心に……衝撃が走った。

 

「“獣王銃”!!!」

 

「!!!」

 

 ──くまの身体に亀裂が走る。

 

 バッカニア族の肉体に加え、サイボーグと化したその頑丈な肉体。その内部が破壊され──

 

「お父さ~~~~~~~~ん!!!!」

 

 ──くまの身体は爆発した。

 

「“死”は救いよ……!! 少なくとも彼にとっても……貴方にとってもね……!!」

 

 そしてくまの身体が倒れ、完全に動かなくなったのを見下ろし、ジョーカーは次にボニーに視線を向けた。

 目の端から涙を零し、悲嘆に表情を歪ませるボニーにジョーカーは腕に覇気を纏わせてゆっくりと近づいていく。

 

「安心して。もうこれ以上苦しむことはないわ……!!!」

 

「っ……!!!」

 

 ジョーカーが腕を振りかぶった──もう救いは来ない。

 ボニーのかけがえのない父親はもう動かない。

 自由になれず苦しんでいる人を助けるヒーローもいなかった。

 

「うおおおおおォ~~~~!!!」

 

「!!?」

 

 ──だが、少年は動いた。

 

 覇気はまだ使えない。

 満身創痍であることに変わりはない。

 だがそれでもなお、ボニーとジョーカーの間に割って入り、その攻撃から身を守る。

 

「“麦わら”……!!」

 

「……!! 驚いた……!! まだ動けるなんてね……!!」

 

「ハァ……ハァ……これくらいじゃ……まだまだ終われねェ……!!」

 

「……そう」

 

 ボニーを抱え、ジョーカーの攻撃から逃れたルフィは荒い息を吐きながらも強くジョーカーを睨みつける。

 だがその睨みにはまだ力はない。ルフィが持つ覇王色の気配も感じない。やはりまだ覇気は使えない。そのことを改めて確認し、ゆえに生まれた疑問をジョーカーは内心で言葉にした。

 

(今一瞬、寒気を感じた……()()()()は一体何……?)

 

 そう、“麦わらのルフィ”が割って入ってきたその一瞬だけ、ジョーカーは覇気のようなものを感じて一瞬攻撃が遅れた。

 ルフィが起き上がってきたことに対する驚きもボニーを仕留められなかった理由の1つだが、より疑問を感じるのはその謎の気配である。

 だがやはり覇気は使えないようで、だからこそ余計に分からなかった。今のはルフィなのか。それとも別の何かなのか。それとも──。

 

「!」

 

 ──と、そんな風に思考を回していたところでジョーカーは感じ取り、そして気付いた。

 先ほど感じた謎の気配ではない。見知った気配を。知っているからこそ恐怖するその存在感を。

 

「……盛り上がっているところ悪いけれど──どうやら終幕(フィナーレ)ね」

 

「は……!!? ──え……!!?」

 

「これは……!!!」

 

 ──ジョーカーが空を見上げ、それに釣られてルフィやボニーもそれに気づく。

 

「フッフッフッ……!! 来やがった……!!」

 

「……これは……マズいな……!!」

 

 ──否、気付いたのはその3人だけではなかった。

 この戦場に集う強者達が気配を感じ──

 

「おい空を見ろ!!」

 

「あ、あれは……!!」

 

「おい……嘘……だろ……?」

 

 ──強者でない者も空を見てそれに気づいて。

 

「間に合わなかったか……!!」

 

「……新たに生み出されたUFO……!! それもここは“鳥カゴ”の中……!! 外から来襲したわけではない……!!」

 

 ──事情を知る者はより正確に、その事実を認識した。

 

「あはは……!! どうやら戦いも結構佳境、終わりの始まりってところね……!! ちょうどいい時に来ちゃったかな?」

 

 そして大勢の生物が恐怖する。人間だけではない。獣達も、その空にぽつぽつと現れ、数え切れないほどに無数に広がっていく色とりどりのUFOの軍勢と。

 

「──“ぬえ”さんだ~~~~~~~!!!!」

 

「“妖獣のぬえ”が現れたぞ~~~~!!!!」

 

 ──最恐生物(ぬえ)の姿に。

 

「ならここからは“大トリ(わたし)”の時間よ……!!! “恐怖の世界”を見せてあげる!!!」

 

 ──そうして高らかにぬえは……地獄を作ることを宣言した。

 




アプー→風はオリジナル技。左手が笛らしいので風を起こす技にした。
ナミ組→ナミとお玉とオワリとチョッパーは西側、グラン・テゾーロ側に向けて逃走中。
シュミア→実はビビリ。ワプワプと銃のコンボは多分強い。
ミニモ→モドモドとかいう必殺。ただし気絶したら元に戻る(消えてない限り)
スカート→くっそ強い。そもそも超人シスターズが強い。まあドンキホーテファミリーに苦戦するくらいだと普通に勝てない。
キャベンディッシュ→速い。
ベラミー→今のところは実力不足。
レベッカ→見聞色は強い。ヴィオラとマンシェリーを一応救出?
スパンダム→役立たず。
イッショウ→鏡復元阻止。なお
ウソップ→めちゃくちゃ働いてる。なおこの後もまだまだ働く予定です。ウソップ彗星はその名の通りウソップを飛ばす自爆技。
マゼラン→グラン・テゾーロ汚染中。
クザン→覚悟が決まってる。原作よりも強い。
ジョーカー→覚醒フォルムは実は夜限定。見聞色が大看板で一番得意。そして一応情はあります。
ボニー→能力は強いけど覇気使えないっぽいから勝てないよねって。
くま→クイーンにめちゃくちゃいじくられた。クソ強いと思うけどさすがに厳しい。
ルフィ→ニカフラグ+1
ぬえちゃん→可愛い。

今回はこんなところで。投降が空いてる間に原作で新情報が沢山出てきたのでプロットを修正したり色んなネタをストックしました。
次回は鏡争奪戦で何があったのか辺りから始まってのひたすら戦闘回です。飛び六胞戦。ドフラミンゴにテゾーロと大看板戦。そしてぬえちゃんが暴れます。お楽しみに。

感想、評価良ければよろしくお願いします。
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