正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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どうも鯱です。2話目にて今更ですが、この作品は作者の考察要素というか、原作でまだ判明していない事柄についても、ボカしたり、ある程度推察したりしながら書くので、独自設定や過去のキャラについてはキャラ付けが独自のものになったりすることをご了承ください。
それ以外は基本、原作に忠実で、原作をリスペクトしていきたいと思っております。
それでは2話目をどうぞ


正体不明の能力

 “未来の”その男について話すならば……海賊として、7度の敗北を喫し──海軍又は敵船に捕まる事18回。

 

「ウォロロロロロ!!」

 

 拷問につぐ拷問を受け、罪人として生きていく男であり、

 

「…………」

 

 40回の死刑宣告を受けたが、時には首は吊られ、断頭台にかけられるもその刃は砕け、串刺しにするも槍は折れ、結果沈めた巨大監獄船の数は9隻。

 つまり──誰も彼を殺せなかったのだ。

 だが未来でそうである彼は、今はまだ、年若き少年で、そして、

 

「ウォロロロ……! 聞いてくれ、ぬえぇぇぇぇん……!!」

 

 ただの……酔っぱらいだった。

 

 ──ここは“偉大なる航路(グランドライン)”のとある島。

 

 海賊を含め、荒くれ者共が跋扈する酒場の一角であり、彼らのテーブルには、幾つもの酒瓶が転がっていた。

 

「なんだあのガキ共……?」

 

「片方はガキって面か? ガキの割には妙にでけぇな……」

 

「もう片方もガキだが……普通に酒飲んでるぞ。いいのかマスター?」

 

「別に構いやしねェよ。金があって飲めるンならガキだろうが死にかけの老人だろうがおれは誰にでも酒を出す」

 

 酒場にいる男達は遠巻きに彼らを見て話をする。その異様とも言える光景は確かに、衆人の目を集めるものだった。

 だからという訳ではないが、彼の目の前にいる少女──私は言った。酒の入ったグラスを両手に持ち、大人用の椅子の高さで足が下につかないため、プラプラと足を揺らしながら、

 

「……何? カイドウ」

 

 冷たい……とまではいかないが、いわゆるジト目に分類されるであろう、薄まった真紅の瞳で彼を、カイドウを見る。

 するとグラスではなく酒瓶を直接手に持ち、私と歳が殆ど変わらないというのに床にしっかりと足をつけた巨躯のカイドウは目の端に涙──どころか大粒の涙を零し、

 

「うおおおおおお~~~ん!! なんて冷てぇんだお前~~~!! おれと一緒に海賊やるって、お前言ったじゃねェかよォ!! ウオオオオ~~~!!」

 

「そりゃ言ったけど……」

 

 ボロボロに泣きながらカイドウは私にそう大声で、真正面から告げてくる。

 まるで子供だが、この場合は適切ではない。そう、まるで“酔っ払い”というのが正しい。

 それも泣き上戸だ。周囲の目が痛い。

 今更周囲の目を気にするかと言われれば微妙だけども、このノリは中々に面倒くさいかもしれない。──若干の面白さがあるのも事実だが、今はどちらかと言うとそのノリに戸惑っている。

 そして話していること、一応、泣いている理由も理解る。一緒に行動しているのだから当然だった。

 

「……でも誰も船に乗せてくれないし……」

 

「なぜだ!? おれァ……こんなにも海賊になりてェってのによォ~~~!! ガキだからって理由で海賊になれねェって言うのかよおおおおおお~~~ん!!」

 

 ──そうだった。カイドウが酒を飲んで泣いている理由は正しくそれだ。

 

 事の顛末を簡単におさらいすると……あれから、牢屋を出て別の町に移った私とカイドウは、港で海賊相手に船に乗せてくれと真正面からお願いしにいった。

 しかし断られた。というのも簡単な話だ。

 

『おれ達を船に乗せてくれ!!!』

 

『お前らを……? ほォ……? お前ら、歳は幾つだ?』

 

『10……幾つかだ!!』

 

『私もそれくらい……』

 

『はあ!? ガキじゃねェか!! 帰れ帰れ!! うちの船にガキはお断りだ!!』

 

 ──とまあ、簡単に言えばどこもそんな感じ。

 それも中々に洒落の利いた感じでどいつもこいつも断ってくれた。うちの船は託児所じゃねぇぞ、みたいな感じで。よくある海賊というか荒くれ者特有のジョークみたいな言い回しでだ。

 軽く5つくらい回って全部拒否られたところで、一旦酒場に入って──まあカイドウが『酒が飲みてェ』と有無を言わさず勝手に入っていったのだが──そこで酒を飲み始め、現在に至る。

 まあ確かに、船に乗せてくれないっていうのは中々にキツい。というか、スタート地点で躓いてるので、泣きたくなる気持ちも理解る。ほんと、どうすればいいのか……。

 

「ガキじゃ駄目だってのか!?」

 

「……そうみたいね」

 

「うおおおお~~~~ん!! あんまりだ!! そりゃあ、ぬえはどう見てもガキで駄目だろうけどよォ……おれは別に構わねェだろう……!!」

 

「──おい」

 

 やめろ。そんなこと思ってたのか。それこそあんまりだ。

 ……でも確かに、カイドウなら年齢こそガキって言っても乗せてくれそうなもんなんだけど……。

 もしかしたら運が悪かっただけかもしれない。偶然子供が嫌いな一味ばかりだったのだろう。もしくは道徳が妙にあるか。海賊だからそれはないと思うけど。

 

「……ま、なんとかなるんじゃない? 多分……」

 

「多分じゃ駄目だろうがよおおおおおお~~~ん!! クソッタレェ!! どうすりゃいいんだ……!! このままじゃ、海賊になれねェ……!!」

 

「ん~……そうね……それなら──」

 

ぬえぇぇぇぇぇぇん!! ぬえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!

 

「うるさいんだけど!!? というかそのたまに出る“ぬえぇぇぇぇぇん! ”って泣き方やめて!!」

 

 カイドウの野太いちょっと渋めの声で“ぬえぇぇぇぇん”って泣かれると中々にヤバい。でもちょっと違和感ないのがなんとも……。

 

「……とにかく、もうちょっと当たってみるしかないんじゃない?」

 

「それしかねェのか……」

 

「そうよ。ほら、そうと決まればそろそろ行くわよ」

 

 って、なんで私が励まして催促してるんだろうか……むしろカイドウについていくだけの筈なのに……。

 頭が若干痛くなってきたが、まあいいかな。久し振りに飲んだお酒、美味しかったし、と。

 

「……ほらカイドウ。お代払って出るわよ。お金、払ってきてあげるから出して」

 

「あァ……? ぬえ、何を言ってやがる……?」

 

 耳が遠いのか、カイドウは酩酊してフラフラな様子でそう聞き返してくる。まったく……これだから酔っ払いは……ヒック。

 

「だからお金よお金。酒場に自分から入っていったんだからお金あるんでしょ?」

 

 と、至極当然のことを私は言ったのだが、カイドウはそこでようやくこちらを向くと、

 

「──んなもん、()()()()()()()()

 

「…………は?」

 

 ──信じられない言葉が飛び出してきた。

 さも当然、と言った様にカイドウは言う。私は思わず絶句した。

 そしてタイミング悪く、そのタイミングでマスターが席を立った私達に向かってきて、

 

「おい、ガキ共。お代は?」

 

「え、あ……え~っと、その~……」

 

 荒くれ者が集う酒場の店主らしく、筋骨隆々の目に傷とかついてる店主が私とカイドウに威圧的に尋ねてくる。

 まあ普通に聞いているのだろうが、私からすればどうしても威圧的に見えてしまう。こっちは女の子だし……。

 しかしこの窮地をどうするかと、私が思わぬ事態に誤魔化そうと目を逸らし、時間を稼ぐために手を後ろ手に笑顔で、右の足のつま先で床をなぞりながら純真無垢な女の子を演じて考えていると、

 

「……金がねェから──」

 

「え?」

 

「あっ」

 

 不意に、カイドウが壁に立て掛けてあった自らの金棒を手に持ち、振り上げ──私は、あっ、と短い声を上げると、次の瞬間、

 

何だってんだよォ~~~~~~~!!!!

 

「ッ!!!?」

 

 ──カイドウは金棒を店主に向かって思い切り振るい……店主を店を突き破って外まで吹き飛ばした。

 

 そして、カイドウは言う。金も払ってもいないのに、残った酒瓶をグビグビと飲み干した後に、

 

おれが誰だかわかってんのかァ!!?

 

 ──いや、あなたまだルーキーどころか海賊ですらないただのチンピラじゃん……、とはさすがにツッコまない。

 私が呆れている間、その事態を見て、またカイドウの大声を聞いて辺りが騒然となる。

 

「な、なんだ!?」

 

「あそこのガキが店主を吹き飛ばしやがった!?」

 

「喧嘩か!?」

 

 ──いえ、ただの逆ギレです。しかも無銭飲食の。

 

 だがぬえは反省する。考えてみればそうだ……あのカイドウがお金持って丁寧にきちんとお代を払うかって言われると微妙である。

 いやまあ金があって機嫌が良ければ、もしくはもうちょっと大人になれば酔ってない時は聞き分けが良い可能性はあるが、今のカイドウは何も知らない怖いもの知らずのただの若者。

 酒が飲みたいけど金はない。から飲まない──とはならなかったのだ。

 あまりにも考えなし過ぎる……が、それを見て思う。

 

 ──面白いなぁ、と。

 

「……とりあえずカイドウ、騒ぎになる前に行くわよ」

 

「なんだと!!? 何処へ行こうってんだァ!!?」

 

「……あ、やっぱこれ、完全に怒り上戸だわ……」

 

 逃げるとか言うと怒りそうだし、言葉を選んで言ってみたのだが、それでもカイドウは怒っていた。金棒で殴られないだけマシか。怒鳴ってるだけだし。

 しかしちょっとここで普通に逃げると顔も憶えられて面倒なことになりそうだし、ちょっと工夫しよう。

 ……久し振りだから出来るか分かんないけど……と、自信はないが、手を前に出し、私は能力を発動させる。

 

「──()()()()()()()!!」

 

「!!?」

 

「今度は何だァ!?」

 

「黒い……霧か!?」

 

 周囲の荒くれ者達が突如として発生した得体の知れない黒い雲に視界を制限され、慌てふためく。

 そうして私は隣のカイドウの背中を押して言った。

 

「ほら、今の隙に行くわよ!!」

 

「あァ……? なんだこれは……ぬえ、お前がやったのか?」

 

「そうよ! こんなことしか出来ないけどね!」

 

 そう、私がやったこと。これは私の能力だ。

 バケバケの実幻獣種、モデル“鵺“を食べた私は……あの、“封獣ぬえ“としての力を持っている。

 つまりそれは創作上の彼女が持つ、『正体を判らなくする程度の能力』を持っているということだ。

 ただだからといって、私が過不足なくその能力を使えると言えば、そういう訳ではない。

 これは創作上の彼女の、彼女の世界観の力ではない。あくまで、悪魔の実の力なのだ。

 人型、獣型、人獣型という動物系にある3つの形態変化を持ち、悪魔の実の特性として、海には嫌われる。泳げない。水に落ちると力が出ない。

 まあ人型はただの“封獣ぬえ”というか、普段のただの私だし、人獣型は色々生やしたりで力が増すくらいな感じ。……獣型は……まあ、察して欲しい。見た目は結構な化け物になる。

 そして悪魔の実の力であるのならば……その力は、鍛えなければ伸びることはない。

 形態変化が出来て、簡単な物の偽装が出来て、辛うじて黒雲を生み出すことは出来ても……今の私はレーザーを出したり、未確認飛行物体を見せたりするような高度な認識変化は起こせない。

 だからこの黒雲も、ただのダーククラウドなのだ。本来の『平安のダーククラウド』ではない。足りえない。

 幼い身で、荒れた生活を送るしかなかった私にはここまでしか出来なかった。

 私は弱い。モデルとなった“ぬえ”とは比べようもない。未だ、こうやって逃げるためにしか能力を使えないのだ。

 

「……ほんと、私って弱いから──」

 

 と、思わず自嘲気味に笑みを浮かべ、小さく呟いたのだが、

 

ウォロロロロロ!! やるじゃねェか!!!

 

「……え?」

 

 黒雲の中、能力の影響を受けない私の視界で、カイドウが大笑いした。

 いきなりなんだ、と困惑していると、カイドウの太い左腕が私の首に回される──というか、首絞めみたいな形だけど、

 

「ぬぇっ!?」

 

「ウォロロロロロロ!! これならやれるぜ!! おれ達は最強の海賊団だァ!!!」

 

「え、えぇ……? そ、それほど凄い力じゃないと思うけど……」

 

「急げぬえ!! 最高の戦争を始めるぞ!!!」

 

「って、話全然聞いてない……」

 

 というかなんだ? 今度はこれ……まさかとは思うが、笑い上戸? 

 いきなり機嫌が良くなったカイドウに困惑する。こちらの肩に腕を回して大笑い。陽気過ぎる。マブダチか、とツッコミたくなる。

 ……でもなんか、馬鹿らしくなってきたかもしれない。

 一々落ち込んでる暇がないだけかもしれないが、こうやって何も考えてない楽しそうな馬鹿を見てると羨ましいと言うか……悩んでる自分がそれこそ馬鹿に思えてくる。

 いきなり全部が全部、吹っ切れないとは思うけど、どうせなら、こっちも楽しんだ方が──

 

「……ようし、それじゃあ──」

 

「おお!! それじゃあ──」

 

 私は久方ぶりに笑みを浮かべて言う。カイドウと声を揃えて、

 

「逃げるぞ──」

「戦うぞ!!!」

 

「……えっ?」

 

 きょとん、と呆気に取られて間の抜けた声を出してしまう。ん? おかしいな……なんか言うべき言葉が違うというか、合ってなかった気がする。

 そう思ったのも束の間、カイドウは私を左手に捕まえたまま、黒雲の中に突っ込み、

 

「行くぞ!!!」

 

「って、やっぱ戦うんかい!!?」

 

 まさかの、黒雲に乗じて逃げるのではなく、全員をぶちのめそうとしていた。

 

「ウォロロロロ!!」

 

「うぎゃああああああ!?」

 

「なんだ、今度は悲鳴が──ぎゃあ!?」

 

「おいなんだ!? 何が起きてんだ!?」

 

 黒雲の影響を受けない私にはそれをクリアな視界でもろに見ていた。

 それはもう、カイドウが金棒を右手で振り回して、ばったばったと無関係な酒場の荒くれ者共を殴り倒していく。

 ……なんというか……さすがカイドウって感じだ。

 普通今の場面は逃げるところだろうが、カイドウに普通とか常識は通用しなかった。

 

「……でもまあ、このままカイドウが倒してくれるなら、楽だしそれはそれで──」

 

「──ぬえ!! お前も戦えェ!!!」

 

「えっ?」

 

 不意に、カイドウが左手を振りかぶる。

 その先には当然、私がいる。そしてそこらには未だ黒雲で混乱している荒くれ者達がいて、そこに向かって私は飛んでいっていて……うわすごーい。カイドウって肩つよーい。時速160キロは超えてるんじゃない? って……、

 

「──って、私を投げるなぁぁぁぁあああああああああああああ!!?」

 

「ウォロロロロロロロロロ!!! そうだ!! もっと楽しもうぜ!!!」

 

 

 

 

 

 ──結果。名前も分からない正体不明の酒場は潰れた。南無。

 

 正体が判らない少女と、これまた無名の男は、人気の少ない路地裏に座り込んで話し合っていた。

 

「ウィ~~~……あ~~~……飲みすぎた」

 

「飲みすぎた、じゃないんだけど!? もっと他に言うべきことがあるでしょうが!!」

 

「うるせェな……楽しかったんだからいいじゃねェか……」

 

「っ……それは……いや、そういう問題じゃ……」

 

 ヤバい。一瞬納得しかけた。

 いやまぁ、いいんだけども、なんだかカイドウレベルに引っ張られてしまったら色々とヤバい気がするので思わず躊躇してしまう。ノリで突撃して暴れまわった挙げ句2人して捕まってまた拷問とか出来れば御免被りたいし……。

 しかしあの荒くれ者どもの拷問程度なら、かつて受けてきた仕打ちと比べて軽いのもまた事実で……というか、別に暴れまわるくらいならなんてこともないような気もして……。

 

「うー……あー……う~~~~~~~」

 

「何を唸ってやがる」

 

「いや……どこまで許していいかの葛藤が……」

 

「細けェことなんざどうでもいいだろうが。そんなことより海賊になる方法を考えろ」

 

「どうでも良くはないけど……うん、まぁ、そうね。海賊になる方法……」

 

 と言っても、頼み込むくらいしかやれることがない気がする。意外と運が悪かっただけで、子供でも海賊になるのは不可能ではないと思うのだ。

 というか、だ。確か海賊にはなれる。

 だがその時期がいまいち掴めないし、詳細な部分はそもそも知らないのだ。

 

「なんだっけ……島の名前……」

 

「あァ? この島の名前か? 確か“ハチノス“だ」

 

「いや、そうじゃなくてさ。そりゃ島の名前は知らなかったけど、私が知りたいのは海賊島って呼ばれてる島で……うーん、でもそうなんだ。この島ってハチノスって、名前──」

 

 …………え? 

 

「……この島の名前、ハチノスって言うの?」

 

「そう言ってるだろう」

 

「…………」

 

 私はクルっと、後ろを向いて、顔を上に向ける。

 すると、今まで見えていなかったが、大きなドクロの形をした建物がそこにあり、

 

「……ええ~~~~~~!!?

 

「何驚いてやがんだお前は……?」

 

 カイドウが珍しく困惑していたが、そちらに意識を向ける余裕は私にはなかった。

 

 この島の名前は──海賊島“ハチノス”。

 そう、ここはカイドウにとって……そして、多くの伝説にとって、始まりとなる島だった。

 

 

 

 

 

 ──“偉大なる航路(グランドライン)”、海賊島“ハチノス”

 

 港に集まる海賊たちは、いつもの荒々しくも活気ある空気ではなく、騒然としていた。

 海賊同士の喧嘩など日常茶飯事で、事件にすらならないこの島で、男達は口々にそれを噂する。

 

「おい聞いたか? 興味のある奴は島の中心にある建物に集まれって……」

 

「ああ、聞いたよ……“ロックス”だろ……クソ……あの野郎……! この島ででかい顔しやがって……!」

 

「おいやめとけよ……やりあっても死ぬだけだ……」

 

「わかってるさ! クソッ……!」

 

「島の中心に集まれ……! 何でも、美味い儲け話があるらしいぞ……!」

 

「ああ、おれも誘われた……あのロックスの話だ。とりあえず行ってみるか……」

 

 この島で生きる荒くれ者、海賊、無法者達は口々に“ロックス”という名前を出し、ある者は憎まれ口を叩き、またある者は指定された場所へと早足で向かっていく。

 ──それは……一際、不思議と人の目を引く彼らも同じだった。

 

「──おい()()()()()()ォ!! てめェはどうするんだ!?」

 

「……誘われたからな……話だけでも聞きに行こうと思ってる」

 

 ──1人は、巨大な薙刀を持った白い付け髭の大男。周囲には、彼の仲間達。

 

「お、おい()()()()! 待て、ロックスはまだ早ェ!! あいつには今のお前じゃまだ──」

 

「黙りな!! ()()()()()()()!! ハーハハママママ……丁度いいじゃないか。この島の顔役……殺せばまた夢の国に一歩近づくねェ!!」

 

 ──1人は、大きな鍔の帽子を被った桃色の髪の美女。傍らには小柄でその身に合った剣を背負った男に、その他大勢の船員。

 

「どうします? 船長」

 

「ジハハハハ……ロックスか。一度顔を拝んでみたかった……ちょうどいいじゃねェか」

 

 ──また1人は、若い獅子にも似た黄金の髪に特徴的な眉毛を持つ剣士の男。また彼の周囲にも彼が船長を務める一味の、多くの船員達。

 

「儲け話と聞いちゃ、行かない訳にはいかないわね」

 

「財宝かァ!? フヘヘ……独り占めにはさせねェぞ……!」

 

「……何やら“金”の匂いがするねェ……」

 

 その他にも、艶のある黒髪に魅惑的な唇の美女や、財宝に目がない若い男、サングラスを掛けた金の匂いに敏感な美女など、一筋縄ではいかない海の曲者達が続々と島の中心へ集まっていく。

 

 ──そしてここにも、また2人、

 

「ほら酒は一旦止めて、行くわよ()()()()!! 海賊になるチャンスなんだからね!!」

 

「ウォロロロ……! 儲け話か……面白ェ……!! 行くぞ、()()!! 全員ぶっ飛ばして独り占めだァ!!!」

 

「冗談でも止めて!?」

 

 金棒を持ち、角の生えた黒髪の大男と、特徴的な羽を生やした黒のボブカットの少女。未だ2人だけ。

 

 そんな彼ら、彼女らが集まる場所は島の中心にある巨大な吹き抜け状の酒場。

 その中心に──悪名名高き男が1人。

 

「────()()()()()……! そう、そうさ……“儲け話”だ……お前らが大好きな儲け話を、さっさと始めようぜ……?

 

 まるで地獄の悪魔の様な凶相を浮かべて嗤う……男の名は──ロックス。()()()()()()()()()()()()

 

 今この時、この男の野心を秘めた、たった1つの儲け話で……伝説が、生まれようとしていた。




そういう訳でさっさと2話目を投稿しました。まあ最初はね、早めに投稿したほうが良いんだよなって。
次回はロックスとその愉快な仲間達の結成秘話みたいな感じで。ぬえちゃんは吹っ切れるまでは若干苦労人になりそうな気もします。後、カイドウもぬえちゃんもちょっと良い人に錯覚しそうになるけど、どっちもど畜生です()

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