正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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海賊計画書

 目が覚めたのは、聞き慣れた大声が響いたからだ。

 

「おい!! 起きろぬえ!!!」

 

「──ん……あ、あ~……」

 

 私はカイドウの声を耳にし、頭を擦りながらゆっくりと起き上がる。身体が痛い。戦闘の痛みだ。私にとっては大したことのないものだが、気を失ったってことは一旦は限界だった程のダメージ。

 おそらくカイドウもそうなのだろう。見覚えのある島の景色と、ざわついている周囲の気配を感じて思う。そして直ぐに、

 

「ん~、負けちゃったかぁ……他の皆はもう撤退した?」

 

「知らねェ。だが敵はいなくなってるな」

 

「……ってことはもう終わりかな。それじゃ、船に戻ろっか」

 

「おう……クソ……! 身体が痛ェじゃねェかよォ……!! あいつら……次出会ったらぶっ殺してやる……!!」

 

「はいはい。次出会ったらね」

 

 という訳でカイドウと共に再び空へ。上空に飛ぶことで周囲の状況だってよく分かる。やたら周囲がざわついている気がしたのだが、果たしてその理由は──と、見渡してみると納得のものがあった。

 

「うわっ、海軍の艦隊じゃん」

 

「あァ? ……よし、なら次は──」

 

「待ちなさいっての。一旦船長の指示を聞きましょう。そもそも戦わないかもしれないし」

 

「チッ……」

 

 新たな敵を見つけたところでまた突っ込もうとすることは分かっていたので、直ぐに止めておく。カイドウはやたらと戦いたがるし、実際に敵を見つけたら真っ先に突っ込んでいくが、それでも酔ってなければ割と常識的なところもある。さすがに艦隊相手に1人で突っ込むのは勝ち目が薄いし、躊躇したのだろう。……酔ってたら全然行っちゃうんだけどね!! そういうところも良いし、私もそういう時はどうにかするためにも付き合うのは吝かではないが、今はロックス海賊団の海賊見習い。やはりここは船長の指示をまず聞くのが“筋”だ。

 という訳で船を探して──あっ、あった。まだ停泊してる。あれ? ロジャーの船はもう沖に出てるのに……いや、思ったより時間経ってないね、これ。さすが私とカイドウ。気絶してから回復する時間がまた早くなってる気がする。まあ毎日のように気絶してるもんね……そのかいはあったか。それとも、レイリー達が手加減したとか……まぁ、その可能性は大いにありそうだけど、私でもそれはちょっとムカつく部分があるので、カイドウに伝えたらキレそうだから言わないでおこう。

 そうして、一旦船に戻ろうと思って飛んでいると──大きな気配を地上に感じる。これはもしかして……、

 

「あっ、船長だ」

 

「ん? ──ああ、お頭だな。それとロジャーとかいう敵の船長が倒れてやがる」

 

「あ~……そうみたいね。やっぱロックス船長には勝てなかったかぁ……」

 

 白目を剥いて血まみれになって気絶しているロジャーを発見してしまい、私は何とも言えない息をつく。するとそれにカイドウが目敏く反応して、

 

「何だ? お頭に負けてほしかったのか?」

 

「いやぁ、そういう訳じゃないけどさぁ……せっかく船長に喧嘩を売れるほどの相手だし、もうちょっと善戦するかなーって思ってたんだけど、期待外れだったというか、呆気ない終わりだったから……」

 

「確かに、あの野郎も相当強そうだ。お頭には敵わなかったみたいだがな」

 

「いやほんと、強いのはここ数ヶ月見てたから知ってたし、期待してたんだけどね……さすがに船長が強すぎたというか……」

 

 2人して、空中で何気ないやり取りを交わす。その空気が僅かにぎこちないというか微妙なのはお互いに、そうやって語るしかない現状にままならなさを感じているが故だ。

 

「……クソッタレ……! なんでおれァこんなに弱ェんだ……!! 自分の弱さにイラつくぜェ……!!」

 

「…………」

 

「おいぬえ!! お前はイラつかねェのか!? おれはイラついてムカついてしょうがねェぜ……!!」

 

 ……確かにねぇ、と私はカイドウの言に心の中で同意する。

 もっとも、私の方は冷静だ。冷静に、考えている。ここからどうやって、昇っていくかを。

 今更言うまでもないが、私とカイドウの目的は海賊になること。それも“本物”の海賊。最強の海賊になって好きに生きること、最強の海賊団を作って好き勝手することが目的だ。

 そのために、私達は強くなろうとしている。それは順調と言えば順調かもしれないし、それほど焦る必要はないかもしれない。

 ──だが、私は知っている。独立までは、もうあまり時間がないことを。

 それにたとえ、どう転んだとしても私達は独立する。そして、海賊として生きることになるのだ。見習いではなく、ちゃんとした本物の海賊として。

 その時にどうするのか。まず何をするのか。どの海に行くのか。その辺りはその時になってから好き勝手に決めていけばいいと思ってはいるが……少しくらい、今から“最強”になるための計画を考えてもいいかもしれない。

 考えてみれば、これまでカイドウとは毎日、殺し合いと酒と誰かの話題とか自分たちの話とか適当な事とか世間話といつもの事しかしていなくて、あまり将来のことについて話したことはない。まあカイドウだ。他の事は考えないで、強さだけで上り詰めていこうとしか、今はまだ思っていないのだろうが……これも良い機会かもしれない。私が色々と考えていけば──

 

「……よし! カイドウ! 船に戻ったら作戦会議よ!!」

 

「……あ? 作戦会議だと?」

 

 頭に疑問符を浮かべるカイドウに、私は正面に回って笑みで頷く。それは、

 

「──“本物”の海賊になるための……将来に向けた……作戦会議♡」

 

 

 

 

 

 切り倒された木々。粉々に砕け散った岩。ひび割れた大地。

 元々広場となっていたその場所は、その広さを増していた。激しすぎる戦いによって。

 それを為した人物は、もう1人──相手になった人物を見て、笑みを深める。周囲の気配を感じ取りながら、

 

「ギハハ……どうやらお前の仲間は全員無事らしい。大したもんだな。自分で言うのもなんだが、おれの部下達から逃げるのは簡単じゃねェ。お前が足止めしたとしても、並の海賊なら一瞬で潰される」

 

 筋の良い部下が揃ってるみたいだな、と──ロックスは気を失っているロジャーに声を掛ける。返事はない。だがそんなことは関係ないという風に、ロックスはロジャーに話しかけ続けた。

 

「おめェも大したもんだったぜ? 10分ってところか……一瞬で終わらないだけでも勲章ものだが……何より、おれに傷を負わせた輩は久し振りだ……!!」

 

 と、ロックスは頬に出来た赤い線を親指で拭い取りながらロジャーを褒める。これはロジャーの剣によって出来た刀傷であり、ロックス海賊団結成以来、傷という傷を負ってこなかったロックスが初めて負わせられた確かな負傷である。その小さな傷一つ、付けられずに死んでいった海賊、海兵はごまんといる。生半可な覇気では、ロックスの身体に触れることすら出来ないのだ。

 

「ギハハ、良い覇気だ……自分の力を信じて疑ってねェ……わかるぜ。お前……本気でおれに勝つ気だったろ? ええ? ロジャー……!!」

 

 意識を失っているロジャーを見下ろし、そう告げる。意識を失っているにも拘わらず、こちらを向き続けているようにも感じられ、ロックスは笑みを更に深めた。

 

「…………おめェ、言ってたな? 戦闘中……『おれは世界一の海賊になる!!』──だったか。だからおれになんて負けねェって、ずっと思ってたろ? ギハハ……おれの強さを見てなお──」

 

 と、そこでロックスは一度言葉を止める。そして腰元から銃を引き抜き、何気なく手で弄んだ。引き金に指をかけながら、

 

「だが──ギハハハハ……!! 悪ィが、お前程度に世界はやれねェなァ……!! ロジャー……!! ギハハハハ!!」

 

 その銃口を一度、ロジャーに向ける。狙いは脳天。指を引けば、簡単に命を断つことが出来る。

 

「世界をひっくり返すってのは、簡単なことじゃねェんだぜ? このおれですら、手を尽くし、長い時間をかけなきゃならねェ……ましてや、お前程度の強さじゃ、到底──不可能なんだよ!!!

 

 パン──と、発砲。

 だがその銃弾は……ロジャーではなく、倒れて気絶した部下の1人を撃ち抜いており、

 

「──とは言わねェ。この世に不可能な事なんてねェんだ……業腹だが、おれにはお前の夢は笑えねェなァ……!!」

 

 それは、ある意味──似た者同士であると暗に告げるような、愛憎入り交じったかのような言葉だった。ロックスにとっても、どこか不思議な感覚を覚える。まるで他人とは思えないほどに、自分とこの男はどこか似ていると、

 

「……だからこそ、ここでおれはおれの野望の為に、今ここで確実に、お前の命を断つべきだが…………ギハハハハ……ここで殺すのは、面白くねェなァ……」

 

 と、そう言ってロックスは銃を腰元に戻す。そうして背を向け、自らの船の方へと歩き出す。

 

「お前ほどの男を世界から消しちまうのはもったいねェ……いずれおれのモノになる世界だ。お前程の海賊はなんとしてでも部下に欲しい──が、そうでなくとも構わねェ。どちらにせよ、おれを追うお前の道は2つしか──いや、3つしかねェ。おれの部下になるか、それとも死ぬか。()()()()──」

 

 ほんの僅かに、その可能性を思い、ロックスは“期待”をする。限りなく低い確率。ありえないことではあるが……この世に絶対なんてものはないのだ。

 そして……だからこそ、面白いのだと。

 

「──ギハハハハ……!! さて、どうなるか……次に会った時はその返事を聞かせて貰うぜ? ゴールド・ロジャー……!!」

 

 そうして、悪魔の様な笑い声を響かせて、ロックスはロジャーのもとから去っていった。

 ただ1人、そこに残されたロジャー。

 

 ──だが、その数分後。

 

「ハァ……ハァ……ようやく撒いた……! 生きてるか、ロジャー!?」

 

 気を失ったロジャーのもとに、息を乱し、幾つかの傷を作っているレイリーが辿り着き、倒れるロジャーの状態を確認する。血を流し、気を失ってはいるが生きている。そのことを確認したレイリーは、ロジャーを背負って走り出し、

 

「まったく無茶をしやがって……! だが、情けないのはおれの方も同じだな……! 結局は、勝ちきれなかった……!!」

 

 ロジャーへの悪態。しかし、それよりも自分の不甲斐なさを口にするレイリー。

 世界一の海賊を目指す副船長として、実力も判断力もまだまだ足りなかったことを嫌でも自覚させられた。世界一を目指すなら、これくらいの困難は突破しなければならないし、戦況が悪いのならもっと考えるべきだったのだ。

 ひょっとしたら、過信していたのかもしれないし、甘く見ていたのだろう。世界最強と名高いロックス海賊団の壁は高かった。たった10数年の航海ではまだ足りない。もっと強くならなければならない。彼らを乗り越えなければ、世界一など夢のまた夢なのだ。そう思い、歯噛みをしたところで、

 

「……レイ……リー……」

 

「!! ロジャー! 意識が戻ったか!?」

 

 背中から気を失った相棒の声が聞こえ、レイリーは足を止めずに名を呼ぶ。

 だがその返事は、先程の言葉の返事であり、宣言だった。

 

「……次は……負けねェぞ……相棒……!!」

 

「!」

 

 その言葉に一瞬驚くレイリー。だが、その思いをすぐに汲み取り、レイリーは真剣な眼差しを前に向けた。

 

「──ああ……!! 次は……勝つぞ……!!」

 

 その為にも、今は逃げて態勢を立て直す。傷を癒やし、もう一度立ち上がり……そうして、再び自分たちは奴等に……“世界”に挑むのだ──“海賊”として。

 

 

 

 

 

 ──世界最強のロックス海賊団と、悪名高いロジャー海賊団の“新世界”における戦いは、ロックス海賊団の勝利で終わった。

 だがその途中で海軍本部中将、モンキー・D・ガープ率いる艦隊に見つかったため、ロジャー海賊団は辛くも犠牲を出すことなくその場を乗り切り、またロックス海賊団も海軍の追跡を振り切って、再び“凪の海”を渡って4つの海へと行くことになった。

 そんな中、私とカイドウはと言うと、

 

「──最強の海賊団を作るにはどうすればいいか! とにかく色々考えてみましょう会議ー!! イエーイ!!」

 

「──急にバカになってどういうつもりだ?」

 

「バカって言うなぁ!! せっかくだから楽しくするために盛り上げてんでしょーが!!」

 

 船倉という、もはや私達の部屋──まあここで寝泊まりしてる訳だから実質部屋であることには違いない場所で、私達は顔を突き合わせて先程私が考えたことについて話し合いを始めることにした。カイドウは頭に疑問符を浮かべているが、やはり思うのだ。

 

「海賊になるために、私達には足りないものが沢山あるわ! それを出していって、何とかする方法を考えてみよう!!」

 

「足りねェもの? そんなもん──“強さ”に決まってんだろう。強ければ後はどうにでもなる」

 

「いやまぁ、確かに1番重要かもだし、それについては今後も頑張っていくけど……ぶっちゃけ、それ以外のことについては何も考えてなくない?」

 

「考える必要がねェからだ」

 

 えぇ……さすがカイドウ。脳筋にも程がある。まあ知ってたけど。だが考える力はあるので、私は敢えて自分が思ったことをカイドウにも教えるように口に出して質問していく。

 

「……いやほら、独立するなら私達以外に仲間とか必要じゃん。成り行きでなんとかなる気もするけどさ。どうやって集めるとか考えた方がよくない?」

 

「そんなもん、強ェ奴を誘えばいい。後は入りてェって言う奴は雑魚でも入れちまえ。戦力になる。強ェ奴で入りたくねェとか抜かす奴はぶっ潰して無理やり入れちまえばいい」

 

「うわー、さっすがカイドウ! 常人とは考えることが違うというかムチャクチャだね! いやまあそれはそれでいいけどさー、なんかこう、もうちょっと考えたら良い感じの戦力も手に入りそうじゃない? なんか、有望そうな子供捕まえてきて育てるとか、情報集めてからスカウトするとか……」

 

「ガキを入れるってェのか? 弱ェガキなんざいらねェぞ。強けりゃいいが、ガキなんざ船にはいらねェ」

 

 私達もガキっちゃガキなんだけどね。でもまあガキにしては強いと思うからまあ良いだろう。でもやっぱり、さすがカイドウ。多分そうだろうな、とは思ったけど、強ければガキでもいいんだ。子供とか嫌いそうだけど、強ければ別に良いらしい。いや、というか弱い奴が嫌いなだけで、別に子供が嫌いって訳でもないのかな? 子供全般が弱いからそう見えるだけで。私がこう言っても別に怒ってもないし。もうそこそこの長い付き合いだからさすがにわかってきた。……それじゃ、とりあえずこの案をノートに纏めて、と。

 前に街で奪ってきたそれに書き留めていく。題名は適当に、“海賊団計画書”。結構分厚いし、色々書けそう。ということで次々と書いていく。えっと、他には、

 

「まあ、それじゃ仲間はそんな感じでいいや。今の所は。入ってきたら強くするとか色々やりたいけどね」

 

「弱ェ奴を強くするってことか。そんなもん、戦わせまくればいいだろ。弱ェ奴は死ぬし、強ェ奴は勝手に生き残る。その強ェ奴を使ってやればいい」

 

「まー、武器とか道具とかで強化する方法は色々あると思うけどね。それはまた今度考えるとして……ほら、もし独立するなら船とかも必要でしょ? それで、船を買うにしてもお金が──」

 

「船は奪っちまえばいい。海だろうが街だろうが探せば幾らでもある」

 

「えー!? いやまあそうだけどさぁ……どうせなら自分たちで色々考えて作りたくない? ほら、見た目かっこいいのが良いし、内装も拘りたいじゃん。部屋とか色々作ってさー……」

 

「家でも作る気かてめェは。内装はどうでもいいだろ」

 

「よくない!! 奪うにしてもお風呂のある船にするからね!! それでふかふかのベッドで寝るんだから!!」

 

「面倒くせェな……勝手にしろ。おれはどうでもいい」

 

 投げやりに告げるカイドウに若干イラつく。くっ……カイドウはその辺り、ぞんざいというか、いやまあ海賊らしいというか、海賊的には普通なんだけど、ちょっとした意識の差がある。私的にはちょっと自分たちの船ってのがロマン過ぎて色々拘りたい。まあ船長の意志を尊重して最初は大変だろうから船を奪ってもいいけど、それでもお風呂だけは外せないものだ。まあ別に水浴びでも我慢出来るし、今もそうしてるけど、どうせならお風呂に入りたいし。そういうやりたいことを我慢するなんて海賊としては無しだ。というわけで私としてはこれは確定。船長が駄目って言うなら諦めるけど、船長になるカイドウは別にどっちでもいいらしいからこれは私の好きにしよう。──ということで次は、

 

「それじゃ船はお風呂付きのものを適当に奪うか買うかするとして……やっぱ何よりも、最初はお金が必要よね。カイドウ、お金持ってる?」

 

「持ってる訳ねェだろ。欲しいもんがあれば奪う」

 

「清々しいくらい海賊だね! まあ私も基本はそうするけどさ! ──でも、やっぱ毎回奪うってのもちょっと難しい時もあるだろうし、さっきの船とか、なんか作ったりどこかから仕入れたりするみたいな取引とかだと、お金とか必要だし、そもそも金の一銭も持ってない海賊ってそれはそれで微妙じゃない?」

 

「じゃあ金も奪っちまおう」

 

「ま、海賊だし、宝でも見つけない限りはそうなるんだけどさ。──というか、実はほそぼそと集めてはいるんだけどね! ほら!」

 

 と、私は船倉にある積荷の影に隠してある大きめの瓶を見せつける。普段は“正体不明の種”を仕込んで隠してるそれは、私が今までの旅でちょこちょこと奪ってきたお金が詰まっていた。

 

「! こんなもん、隠し持ってやがったのか……幾ら入ってる?」

 

「えへへ~、驚いた? 実はこれでたまーにお酒とか買ってきてたんだからね! それで、幾らかというと……多分、今は300万ベリーくらいはあるかな?」

 

「船は買えねェじゃねェか」

 

「やっすい小さいのなら買えると思うけどね……まあ無いよりはマシよ。とりあえず、もうちょっと集めて、これを海賊として独立する時の資金にしよ。だからカイドウも、お金とか金目の物を見つけたらちょっとずつでいいから持ってきて。あんまり大金だと怒られちゃうし」

 

「……しょうがねェな……」

 

 渋々だがカイドウが頷いてくれる。意外だ。自分で頼んでおいてなんだが、ぶっちゃけ断られるかと思っていた。だがやはり、カイドウもお金が重要であることは分かっているのだろう。独立する時に色々買うかもしれないし、何かに使うかもしれない。……まあ実は宝石とかもあって、それを偽装して隠し持ってるんだけどね。これを換金すればもうちょっと貯金額は増えるだろう。ウチだと島に滞在する期間が短いせいで中々換金出来ないが、独立した後なら問題ない。

 ──さて、パッと思いつくのはこれくらいか。私はノートを閉じようとして……しかし、次はカイドウから声が掛けられる。

 

「──名前はどうする?」

 

「……え?」

 

「海賊団の名前だ。1番重要だろう」

 

 私はそれを問われ、虚を突かれたように少し固まってしまう。驚いた。まさかそれを聞かれるとは思っていなかったから。正直、決まっていると思っていたし、カイドウが自ら名付けると思っていたので、まさか私に相談してくるとは。

 何気にその気持ちは嬉しい。一緒に海賊団を作るって感覚はあるのか。……でもまあ、名前は決まっているだろう、と、私はニヤリと口角を吊り上げてその名を口にした。

 

「……あはは、そんなの、決まってるじゃん────“百獣海賊団”!!

 

「──おう、気が合うな。おれもそれでいこうと思ってた」

 

 カイドウも同じく不敵な笑みを浮かべる。そして私は、ノートの題名に付け足して、題名をこう名付けた──“百獣海賊団計画書”。

 今はまだ、後もうしばらくは見習いの日々が続くだろうが、それを書いて、ようやく少し海賊としての展望が見えてきた気がした。




今日は投稿を休むと言った……言ったが、投稿してしまった。まあそういう時もある。
次回からはまたロックス海賊団としての日々。まあもうちょっと色々しつつ、その後にゴッドバレーかな。まあそこまで長くはないというか、もうちょっとで見習い時代は終わりです。という訳でまた次回をお楽しみに

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