正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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平和な日々

 ──これから先も、ずっと平和で穏やかな日々が過ごせると思っていた。

 

「ハァ……ハァ……!」

 

 島にやってきた人達が噂として口にするのはいつも、何処かの島が襲われたとか何処かの海軍基地が襲われたとか、そんな話ばかり。

 世の中は荒れている。しかし、それを頭では理解していても、実感としてはわかってはいなかった。

 

「ひゃはは! おら! 逃げ惑え!! 恐怖しろ!!」

 

「今日も大猟だな!!」

 

「っ……!」

 

 そのことを知って怖くはあったが、心の中でこうも思っていた──自分や自分の周囲に降りかかることはないだろう、と。

 伝え聞く話は全部別世界の話だと思っていた。自分たちがいるような田舎の島々ではなく、もっと有名な街などを襲うだろうと。

 今、こうやって街の路地裏で必死に逃げようと足を動かしているこの瞬間までは、現実のものとは思えなかったのだ。

 だが認識は甘かった。これは現実で、伝え聞く話も実際に現実にある脅威である。こんな田舎の国が襲われることだって充分にあり得ることだったのだ。

 

「──おーい、出ておいでー」

 

「っ!?」

 

 ──だが、それを理解してなお。

 

「んー、おかしいなぁ。この辺から気配がするんだけど……」

 

「……!」

 

 ──こんな……化け物がこの世に実在するとは思いたくはなかった。

 物陰に隠れ、追いかけてくる海賊の影を見る。

 それは化け物だった。人間ではない。可愛らしい少女の声で人語を介する、複数の獣をかけ合わせたかのような外見の化け物。

 そして実際に、先程までは少女だった。きっと少女の姿に化けていたのだろう。その少女は目の前で化け物に変化したのだ。

 それが今、すぐ近くにいる。

 気づかれてはならない。口元を押さえて息を殺し、身じろぎ1つせずにじっと化け物が何処かへ行くのを待ち続ける。

 自分の心臓の鼓動が酷く大きく聞こえ、1秒が長く感じる中……その化け物の影は何処かへ消えていき、

 

「この辺にはいないかなー? んー、やっぱりあっちかなー?」

 

 と、そう言いながら徐々に声が遠くなっていく。気配もなくなった気がした。

 だが怖くてしばらくはそこに留まる。どれだけ時間が経ったのかは分からないが、それから少しして、ようやく助かったと胸を撫で下ろし、物陰から出た。やはり、誰もいな──

 

「──みーつけた!!」

 

「ひっ!!? ぁ……! あ、ぁ……!!」

 

 ──目の前に化け物がいた。

 

 心臓が止まりかねないほどの衝撃。腰を抜かし、声を上げることも出来ない。

 目の前にいたのは先程も見た少女の声を響かせる10メートル強の化け物。

 獅子のような黒いたてがみを持ち、尾に緑の蛇、赤と青の羽。鋭い爪と牙を持った、複数の獣の部位を混ぜ合わせたかのような化け物。

 至近距離でこちらを見下ろすその化け物は、何か可笑しいのか楽しそうな笑みを見せた。

 

「あはは! すっごい驚きようだったね? いやぁ、これは驚かせがいがあるなぁ。今でも全然動けないし声も出ないくらいだもんね?」

 

「っ……ぅ……!!」

 

「んー、まあなんとなく言いたいことはわかるけどね。助けてほしいんだよね?」

 

「……!!」

 

 化け物は意外にもフランクで、本当に少女の様な無邪気な声色で言った。見た目の恐ろしさが緩和される訳でもないし、むしろ正体が分からず不気味だが、それでも必死にコクコクと頷く。声は出ないが必死に訴える。助けてくれ、と。

 すると化け物は笑みを浮かべた。その僅かに少女の特徴の残った獣の顔。それでもはっきりと分かるほどの屈託のない笑顔を。人懐っこい獣がこういう表情を浮かべる。例えるならそういう安心してしまうような敵意のない表情で、

 

「でもごめんね? 普段なら別に殺そうが拷問しようが見逃そうが何でもいいんだけど、ここは滅ぼすって船長に言われててさー」

 

「っ……!!?」

 

「という訳で実験体というか、ちょっくら試されてよ。いや~、こうやって自分から逃げてくれて助かったよ。人の目があるところでこの姿を見せて、しかもこれからやることを見せるとさすがに皆引くだろうからさ。慣れてないと死ぬほど痛いし苦しいと思うけど弱い自分を恨んでね。もしくは運がなかったってことで」

 

「……!!!」

 

 その化け物の軽い調子の言葉を聞いた瞬間、酷い怖気が全身に走る。今すぐ叫びだしたくなるほどの恐怖。言葉の裏に隠された具体的な目的は不明だが、それでもわかる。自分はこれから、地獄を見るのだと。

 そこでようやく、助けを求めるための声をあげようとしたが、直ぐに喉笛を掻き切られ、声が出せなくなる。そしてそのまま、物陰の更に奥に引きずり込まれ、

 

「──それじゃ、始めるよ~」

 

「!!? ~~~~~っ!!! ~~~~~っ!!!」

 

 ──そうして、少女の軽い調子の言葉と共に、路地裏では人知れずに1人の若い海兵の命が失われた。

 

 

 

 

 

 ──今日は良い天気だなー。こういう日はお昼寝したくなるよね。

 と、私は今日も今日とて海賊行為に励んでいた。南の海の田舎町をロックス船長の命令で滅ぼす。たまーに完全に滅ぼす時もあるんだよね。大体はそこまで大きな島や国じゃないけど、小さい島とか町なら、滅ぼすことでまた恐怖を与えることが出来るとかなんとか。それと適度な略奪と殺戮程度じゃ脅威が正しく伝わらない可能性があるらしい。程々でやめることもあるけど、たまにはこうやって世界政府とか加盟国の民衆にヤバい奴等がいることを知らしめるために滅ぼすのだ。

 そういう訳で私は日向ぼっこに向いてそうな天気の中、他の仲間達と一緒に駐屯していた海軍の一部隊と鬼ごっこと洒落込み、今しがたそれを終えたところ。──こういう遊びって子供っぽいかもだけど、本気でやるとそれはそれで面白かったりするよね。

 ただそのせいでちょっと汚れてしまったので私は近くにあった水桶で手とか身体を洗っていた。うーん、ちょっとばっちい。さすがにやりすぎたかなー、と、そう思っていると、

 

「──おう、ぬえ」

 

「あ、カイドウ。そっちも終わった?」

 

「ああ。つまんねェが、全員殺してやった」

 

 本当に退屈そうに路地裏にやってきたのはカイドウだった。金棒に赤い血を滴らせながらだが、やっぱ偉大なる航路でもない海軍支部の海兵や町の住人くらいだと楽だし、カイドウからしたらつまらないよね。私は別の楽しみ方も出来るからいいけどさ。

 

「それよりお前、()()()()姿()でいるのは珍しいな」

 

「ん? あー、まあね。あんまり人目には晒したくないけど、たまには使って鍛えた方が良いだろうし」

 

 と、カイドウがふと私の姿を指して言う。それもそのはず。私は滅多になることのない動物系の形態の1つ──()()()()()()()()()()()

 私はその、人々がイメージする鵺の姿から、本来の人獣型に戻りながら言う。私の獣型はかなりの見た目化け物だし、微妙に融通が利く形態だけど、普段はあまり出さないのでちょっと練習がてら変型していたのだ。……そういえば、こっちの姿で洗った方が良かったな、と思いつつ、

 

「獣型だと普通に怖いし、あんまりその姿に化けまくると私の可愛いらしいイメージが損なわれるでしょ?」

 

「強ェならどっちでもいいだろうが」

 

「駄目! こういうのはいざって時に取っておくの! 変化は見せないで、あの化け物が本当は可愛い女の子だったなんて……っていうギャップ萌えと、あの可愛い少女があんな化け物に……というギャップによる怖さを狙うんだから。基本は可愛く正体不明がモットーよ」

 

「……くだらねェな」

 

「くだらなくなーい!!」

 

 呆れた様子のカイドウに強く言う。私のこだわりはカイドウには理解出来ないようだったが、そこは譲れない。可愛さも恐怖もどっちもこだわっていきたいのだ。それに、可愛いのに強いとかの方がなんか得体が知れなくて怖いだろうし、相手の油断を誘う感じもなんだか良い感じ。まああんまりそういう手ばっかり使うように思われたら癪だけど、手段の1つとしては悪くない。私の能力ってそういうの向いてるもんね。不意打ちとか隠密とか潜入みたいなの。暗殺が得意な美少女海賊ってのも中々響きが良くて捨てがたいけど、それだと真正面から戦ったら弱いみたいだからそういうのは程々にしたい。やっぱカイドウの隣に立つなら舐められないようにしないといけないし。

 

「あっ、そういえばカイドウもそうだと思うんだけどさ。なんか強くなると獣形態になった時、前よりデカくなってたりしない?」

 

「──ああ、なってるな。そういうもんなんだろう」

 

「やっぱそうよね。身体を鍛える程に獣型の姿も強化されるというか……私なんて、最初の頃は1メートルくらいだったのに、気がついたらその10倍くらい大きくなっててびっくりしたもん」

 

「そこまで大きくねェじゃねェか」

 

「あんたと一緒にしないで!! カイドウ程大きくなることなんて普通はないわよ! 多分!」

 

「自信ねェんじゃねェか」

 

 うっさい。カイドウがおかしいだけだ。おそらく。……いや真面目に、カイドウ程大きくなるような動物系の悪魔の実ってないと思うんだよね……今でさえ全長100メートルくらいは多分ある。まあそこまで強くないから相手によってはただの大きい的みたいなもんなんだけど、それでもそこらの雑魚海賊とか民衆とかからしたら恐怖でしかない。私が言うのもなんだけど。他の実なら多分、そこまで大きくならないと思うんだけど、それともやっぱカイドウがおかしいだけなのかな……? だから例えば、虫になる悪魔の実とかをカイドウが食べたら、別に小さくなるとかではなく、普通に100メートル級の虫になるとか。それはそれで化け物過ぎるというか、もしかしたらそっちの方がある意味怖いけど……まあ多分どっちもかな。実の力もヤバいけど、カイドウの地力もおかしい。だから私が小さい訳ではないのだ。

 

「……まぁ、動物系って身体能力が純粋に強化されるから、身体鍛えたら鍛えただけ倍々に強くなっていってるっぽいし、そういうのが表れてるんだろうね」

 

「別になんだって構わねェ。どんな弱ェ能力だろうとおれは強くなるからな」

 

「さっすがカイドウ。すごい自信」

 

 まあカイドウならそう言うと思っていたし、私もそう思っている。結局、本人次第でしかないよね、と。

 

「……それよりぬえ……お前、()()()()()()()()

 

「えっ? ──ああ、こっちにも付いちゃってたんだ」

 

 と、カイドウが私の口元──正確には頬辺りに付いていた汚れを指してくれたので、私もそこで気づく。ちょっと恥ずかしいので頬に付いたそれを人差し指で拭ってちゅるりと舐め取り、水でも軽く洗い流す。

 するとカイドウがこちらをからかうような悪い笑みを浮かべ、

 

「ウォロロロ……相変わらず趣味が悪ィな?」

 

「いやいや、これはちょっとした実験だから。いざという時のために確認しておこうかなって」

 

「結果はどうだったんだ?」

 

「ん~、結構イケる部分とキツい部分が……まー、火を通したらまた違うかもだけどね。今度調味料とかも持ってこようかな?」

 

「良かったじゃねェか。これでおれの船の食糧問題は解決したな」

 

「バカ。普通の人間にはどう考えても無理でしょ。ドン引き案件よ。……でもまぁ、動物系なら可能性あるかもだけどね。肉食系に限り」

 

「ウォロロロ、今度雑魚でも捕まえて試してみるか」

 

 カイドウが口端を吊り上げてそんなことを提案する。中々楽しそうな提案だけど、そこらの一般人や雑魚海賊、海兵は逃げたほうがいいね。やると言ったらやるだろうし、別に私も忌避感はないし。いや、ほんとは攻撃手段として使う時とか以前の経験も踏まえて、動物系だと多分イケるんじゃないかなって思ったから試してみただけだ。まあ、結果はそこそこ。言った通り、生だとイケる部分とキツい部分がある。私の悪魔の実は妖怪だから全部生でイケるかと思ったけど、そうではなかった。味の好みの問題かもしれないけどね。まあ動物系はその動物の特性が追加されるってことで、多分、そういう部分も追加されるんだろうなーって思ってたら当たってた。それを考えると動物系も別の意味で他の系統に劣らず凶悪だなって思う。まさに悪魔の実だ。動物系の特性は今後重要になりそうだし、一応抑えておきたいし、今後も色々考えてみよう。

 

「──やめねェかこのアホンダラァ!!!」

 

「──うわっ!? びっくりしたぁ……何?」

 

「うるせェな。この声は……白ひげか」

 

 突然、遠くから大きな声が聞こえてきて私はビクッとしてしまう。一瞬、私が怒られたのかと思ってしまったが、どうやらこれは街の広場の方から聞こえてきている。そしてカイドウの言うように、これは白ひげの声。それもかなり怒った様子の。これはまた誰かと言い争ってるのかな? まあ白ひげと言い争える人物なんて数える程しかいないけど……、

 

「とりあえず、見に行ってみよっか」

 

「そうだな」

 

 自然と私もカイドウも、その声に惹かれて路地裏から出て街の広場へ向かう。死体だらけの町並みに、多くの海賊達。全員、ロックス海賊団の仲間な訳だが、さてさて、一体何があったんだろうと人の輪の中を覗く。宙に浮かんで見てみれば、

 

「敵ならともかく、味方をくだらねェ理由で殺すんじゃねェ!!!」

 

「あァ!? うるさいよ白ひげェ!!! おれはそいつに忠告してやろうと思ったのさ!! 新入りの分際で出しゃばるとどうなるかってねェ!!!」

 

「あ~~~……なんとなくわかった。またリンリンが仲間殺ししようとして、白ひげがキレたって感じかなぁ」

 

「白ひげは仲間殺しにうるせェからな。強ェ癖に甘くてウザってェ」

 

 私とカイドウは白ひげとリンリンの言い争いを見て状況を理解する。細かい経緯は知らないが、とにかく、リンリンがあの白ひげの後ろにいる……あれ? 誰だっけ。新入りかな? まあとにかく、その新入りの女を殺そうとしたところ、それを目撃した白ひげがリンリンを止めて激怒した。まあこれに違いないだろう。そんな風なこと言ってるし、そもそもこの手の喧嘩は日常茶飯事だ。珍しくもない。……ただあの新入りの子、なーんか見たことある気がするんだよねぇ……誰だっけ。水色の髪で綺麗な感じだけど。まあ気のせいかもしれないし、それはいいとして……ただ、ちょっといつもより喧嘩がヒートアップしてるというか……。

 

「~~~っ!! いい加減にしなァ!! いつもいつもおれの邪魔ばかりしやがって!! 今日という今日はぶっ殺してやるよォ!!!」

 

「上等だアホンダラァ!!! かかってきやがれ!!!」

 

「──あっ、ヤバいかも」

 

 リンリンと白ひげがキレてそれぞれの得物を手に構える。それを見て多くのロックス海賊団の船員達がどよめいた。人の輪が更に広がり、

 

「!!!」

 

「うわァ!!? やべェぞ!!!」

 

「白ひげとリンリンの奴がおっ始めやがった!!! 誰か止めろ!!!」

 

「クソッ……!! 勝手に殺し合ってくれるのは最高だが、ぼーっとしてると巻き込まれちまう!!」

 

「お頭に連絡するか!?」

 

「あの人は止めねェだろ!! いいから下がるぞ!!」

 

 瞬間、白ひげの薙刀とリンリンの剣が激突し、凄まじい爆音と衝撃波。単なる武装色の激突ではない。覇王色同士の激突だ。それを見て、誰もが慌てて距離を取りながらも、一部の連中はどっちも死ねばいいと囃し立てたりしている。

 だがそれは、私達も同じで、

 

「うっわ! ヤバいよカイドウ!! 覇王色の激突だ!! 白ひげとリンリンがとうとう喧嘩し始めちゃったよ!!」

 

「ウォロロロ!! 面白ェじゃねェか!! やれやれ!! 勝ったほうをぶっ殺してやる!!」

 

「それはキツそうだけど凄い戦いだよこれ!! 滅多に見られないし観戦しよ!!」

 

「それしかねェな!!!」

 

 と、私とカイドウは興奮しながらそれを観戦することにする。なにせ、あの白ひげとリンリンの喧嘩だ。中々見られるものじゃないしね! 

 そんな訳で宙に浮かびながらそれを観戦。こういう時、飛べると便利だよね。被害も飛んできにくいし。

 

 ──ただ、正直白ひげが普通に勝つ気がしてならないんだよね。

 

 白ひげの地震の力と、リンリンのゼウスやプロメテウスが荒ぶり始めた戦闘を見ながら、私は心の中でそう評する。リンリンもかなり強いんだけど、さすがに白ひげには敵わないように感じられるし、実際に見てもそうだと思う。怒れる白ひげはかなり押しててリンリンに傷を負わせてるけど、リンリンの方は脂汗をかいたり、白ひげに有効なダメージを与えられずに辛そうだ。やっぱり、さすがは白ひげ。ロックス海賊団でも船長に次ぐ実力者って言われてるだけはあるよね。

 しかし、その船長は何処行ったんだろう。何かを探してくるって言って島の奥に向かったっぽいけど……う~~~ん……気になるんだけど、ついてくるなって命令されてるから皆ここに留まってるんだよね。町を壊すのなんて一瞬で終わるし──というか、現在進行形で町がどんどんと更地になっていってるし。やっぱあの2人はおかしい。特にグラグラの実はチートだ。こっちは飛んでるから揺れは感じないけど、下にいる仲間達は大変そうである。……この隙を突いたら普段は到底勝てそうにない相手も殺せちゃいそうだなー……まあやんないけどね。やるなら正面からぶっ殺したいし──あ、そうだ。

 

「──? おい、どうした?」

 

「あの人とちょっと話してくる!」

 

 と、私はカイドウに一言そう告げてからとある人物の下へ。話したこともないし、良い機会だよね。思い出せるかもしれないしってことで、

 

「──おねーさん大丈夫?」

 

「っ!! あんたは確か……見習いのぬえよね?」

 

「あっ、知ってくれてるんだ。見習いなのに」

 

「あんたとカイドウは有名よ……見習いの癖に生意気で結構やる……船長のお気に入りだってね」

 

 そうなんだ。それは嬉しいことを聞いた。ふふん。やっぱり、私とカイドウは見習いレベルではないということが徐々に証明されつつある。問題は年齢くらいだが、それももう少しで解決する。船に乗ってもう5年経とうとしてるしね。私もカイドウも10歳は超えてる筈だから、もう16、17歳でもおかしくないし、それくらいならもう海に出ても良い年齢だし、見習いも卒業だ──っと、それはそうと、この人のことだ。この水色の髪の人は誰なんだろうなっと、

 

「おねーさんは誰? 新入りだよね? ここ最近の」

 

「……まあそうだね。この間、“北の海(ノースブルー)”で入れてもらったホワイティベイよ。よろしく」

 

「ホワイティベイ……うん、良い名前ね! 私には負けるけど!」

 

「そ、そう……あんた、見習いなのに全然物怖じしないんだね……」

 

 なんか私、呆れられてる気がする。まあいいけど。そういう細かいところは気にしない。……というかこの人、そうか、ホワイティベイね……うん……まぁ、そんな知ってる訳じゃないけど、辛うじて知ってる……筈。多分いた。白ひげの関係者だった気がする。しかも結構昔から知り合いっぽい感じの。ふーん、こんな時からいたんだ──って、じゃあ幾つなんだろう、この人……かなりのBBAでは……? 

 

「──なんか失礼なこと考えてない?」

 

「そんなことないよー、あははー……」

 

「……っそ。それならいいけど」

 

 私は笑顔でそう誤魔化す。びっくりした。見聞色? それとも女の勘かなぁ。一瞬、すっごい寒気がしたし、気をつけよう。新入りとはいえ、弱い訳ではないだろう。まあロックス船長にこの船に乗ることを認められるってことはそういうことだ。あんまりBBAとか言うのはよそう。そう私が自分を戒めていると、

 

「──おい大丈夫か? リンリンに殺されかけるとか災難だったな?」

 

「? あんたは?」

 

「あっ、最近よく白ひげと一緒にいる…………誰だっけ?」

 

「ラクヨウだ。……いや、ぬえ。お前には名乗っただろ……ニューゲートと一緒に飲んでる時にやってきて自己紹介したじゃねェか……」

 

 あれ? そうだっけ? ──っていうのは冗談だしノリだけど、うん。このドレッドヘアーに黄色いバンダナ。色黒で髭を生やし、鉄球を得物に持つこの男はラクヨウという名の……、

 

「思い出した! ス……スパ王!!」

 

「だから誰だよ!!? おれはラクヨウだっての!!」

 

「パーレイ! パーレイ! ほらほらテーマ曲! デデ、デンデン、デデ、デンデン、デデ、デンデンデデ、デン♪」

 

「意味わかんねェよ!! イカれてんのか!?」

 

「妙に耳に残るリズムね……」

 

「ちぇっ、ノリわるーい。私、ノリ悪い人とは付き合えないからもう行くね」

 

「自由人か!!」

 

 という訳で私はラクヨウとホワイティベイから離れる。女の人の確認したかっただけだからね。しかしこの2人が並ぶと……うーん。あまり口には出せないけど、なんかとある海賊を思い出しちゃうな……まあいいや。

 とりあえず、戦いも長引きそうだし、ご飯とお酒でも取ってこよ。カイドウの分と私の分。私はご飯はちょっとでいいかな。

 ──ということで私が町の中から適当に無事なお酒とか食料を適当に荒らし回っていると、

 

「──おうぬえ。何荒らし回ってんだ?」

 

「あ、シキ。いやほら、せっかくだからお酒とかツマミ片手に観戦しようと思って」

 

「ジハハハハ!! 酒を片手に観戦か! そりゃあいい! なんならどっちが勝つか賭けるか!?」

 

 今度はシキが空から降りてきながら声を掛けてきた。相変わらず変な眉毛のおじさんだ。まあ船員の中では割と陽気というか、意外と仲間殺しとかするタイプじゃないから安全なんだけども、こっちも飛べるから空とかに浮いてるとちょいちょい話しかけてくるんだよね。しかも、その際に軽口ではあるが、

 

「そんで、おれが勝ったらおれの部下になるってのはどうだ?」

 

「じゃあ私は白ひげに賭ける。私が勝ったら1億万ベリーね」

 

「ジハハ! そりゃ無理だな! おれも白ひげに賭けるからよ!!」

 

「賭けにならないじゃん!」

 

 ──とまあ、今みたいな感じで勧誘をしてきたりする。あくまで冗談というか軽口みたいなものだが、微妙にそうなってくれればいいだろうっていう下心が見えるのが若干いけ好かない。いつかニワトリ野郎って罵ってあげようと思う。意外とノリが良いから大丈夫だろう。

 

「そんなことより、船長はまだ帰ってこないの?」

 

「ん? なんでおれに聞く?」

 

「え? どうせ行き先を調べてたりするんじゃないの? 船内で密かに仲間集めとかしてるくらいだしさ」

 

「……ジハハ。まあ、そうだな。お頭はまだ帰ってこねェと思うぜ。()()()()()()()()()。まだ何かを探し回ってんだろうよ」

 

 私がそう告げると悪い笑みを浮かべてそう答えてくれた。あくまで勘とか言ってるけど、私は確信する。絶対嘘じゃん。知ってるよこの人。命知らずというかよくやるなぁ……さすがの私も、船長命令でついてくるなって言われてるのにどこに行ったか調べるようなことは出来ない。バレたらさすがに殺されそうだしね。

 

「だから白ひげとリンリンの喧嘩はしばらく続くだろうよ。暇だし、観戦するのも悪くねェな。おれも酒でも飲むか」

 

「あっ、私達のは取らないでよ。せっかくこそこそ集めまわってるんだからさ」

 

「ジハハ、相変わらず、見習いの癖に生意気だぜ。まあそりゃいいが──お前ら、酔ってあいつらに突っ込むようなことするんじゃねェだろうな?」

 

 おっと。何を言うかと思えばそんなことを言うとはこの変な眉毛の人。私は自信満々に言ってやる。それは、

 

「──あはは! そんなことする訳ないじゃん! 幾らなんでも、あの中に割って入るとか自殺行為で──」

 

 ──30分後。

 

「──ウォロロロ!! 行くぞぬえェ!! 最高の戦争を始めようぜェ!!!」

 

「あはははは!! おっけ~い!! 戦争! 戦争! クリーク! クリーク!!」

 

「……こいつら、やっぱイカレてやがるな……」

 

 ──気がつけば、私とカイドウはとんでもない痛みと衝撃を受けて地面に転がっていた。数時間で起きた時もまだ戦いは続いていて、結局、白ひげとリンリンの戦いが白ひげの勝利で決着するまで、私とカイドウは3回ほどその戦いに交ざろうとしていたという。なんでそんな頭おかしいことをしたのかは不明だけど──まっ、苦しいけど面白かったからいっか!! 

 

 

 

 

 

 ──その頃。

 

「……ギハハ……そうか。多分、この辺りだな……!」

 

 その悪魔は仲間達と離れ、次なる目的地の当たりをつけるために遺跡を調べ──結果、新たな()()()を見つけて凶悪な笑みを浮かべていた。




色々とネタが多い今回。何気に獣型のはっきりとした描写も初めてかな。という訳で地味にキャラが登場しつつ、次回はゲーム回です。ワンピース内にあるゲーム。それをやって、次次回かその次くらいからとうとうロックス海賊団の最後の戦いが始まります。そんな感じで、お楽しみに。

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