正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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運命の島

 ──船長は次の目的や行動を、ギリギリまで教えてくれない。

 情報が漏れることを防ぐためでもあるそうだが、基本的に船員達は何処の海のどの島に行くかは教えてもらえても、そこで具体的に何をするか、この行動が何を意味するかは、それを起こす直前や、もしくは終わった後にしか教えてくれないのだ。

 だからその日の召集も、ただの今から行うことの指示を与えられるだけのものだと思っていた。

 

「──さて……いつも通りだ。これから、おれ達はある島を襲撃する……」

 

 船の甲板。集まったロックス海賊団の船員達に向かって、静かにロックス船長は口を開く。

 その言葉を聞いて、いつも通りのことをやるだけだと思った船員が殆どだろう。私だってそうだった。

 ……だが、その日はいつもと違っていた。

 

「だが、今日はいつもより“特別”だ……! 記念日でもある……! おれが“ハチノス”で儲け話をお前らに聞かせて5年──もうじき6年が経つが……今日の一件が成功すれば、その話はほぼ確実なものとなるのさ……!!」

 

「!!」

 

 船長のその言葉に、船員達の誰もが驚き、息を呑む。一体何をする気なのか。船員達の声は殆ど聞こえないのに明らかにざわついた様子であった。

 そんな中、船長の近くでそれを聞いていた幹部の1人──白ひげは真剣な表情を浮かべて問いを投げる。皆を代表するように、

 

「……一体何をする気なんだ? 船長」

 

「ギハハハハ……ま、そりゃ当然気になるだろうなァ……だがまあ待てよ。もうちょっと喋らせろ。おれとしては、ここまで付いてきて、よく働いてくれたお前らを褒めたい気分なんだ」

 

 と、白ひげの質問を涼しく受け止めて、しかしあくまでロックス船長は自分のペースで話を続ける。

 

「今日この日までに、色んなことをやってきた……世界政府加盟国を襲い、海軍基地を潰し、多くの海賊を傘下に加え、また邪魔な奴は消してきたよなァ……そのおかげで、政府の戦力、求心力は低下し、反対におれ達は総勢3万の兵力を得た……!! ここにいる本船の連中だけでも、約1000人……どいつもこいつももう立派な悪党で、おれにとって充分な戦力だ……」

 

 自分達のやってきた所業を回顧するようにロックス船長は改めて口にする。確かに、思い返してみれば毎日の様に戦いに明け暮れ、その全てに勝利し、政府にひた隠しにされようがどの海にも轟くほどの悪行を繰り返してきた。

 だが、その道も簡単なものではなかった。戦いは楽なものもあったが、船員にとっては苦しいものもある。

 ロックスを筆頭に白ひげやリンリン、シキなどの幹部達は危なげなく戦いを乗り越えてきたが、それでも政府から送られてくる刺客や、海軍の艦隊との戦いは時に、歴戦のロックス海賊団の船員であっても命を落とす。

 また、船内での仲間殺しも横行し、1日たりともそれが絶える日はなかった。昨日まで生きていた仲間が次の日にはいなくなっていることなど日常茶飯事。白ひげを始めとする仲間殺しを嫌うような存在がいても、それを止められることはなく、多くの船員が亡くなり、また、船長の目にかなった新たな船員を加えて航海を続けてきた。

 それだけに、今ここに残る海賊達は猛者中の猛者。誰もが一筋縄ではいかない曲者揃い。最悪の個性の集団。

 まさに最強の海賊団──今や世界はロックスの時代と謳われるほどに、悪名が轟いている。

 そんな海賊達の王たる存在こそが、ロックス。世界最悪の海賊にして“海の悪魔”とまで称される男は、甲板に置かれた“とある物”に手を置き、海賊達に向かって語りかける。

 

「更には……ギハハ……!!  政府にとって最悪な手札も幾つか手に入った……!! この石だって、その一つだ……!!」

 

 甲板に置かれた、赤い石碑。古代文字が刻まれたその石こそ──“ロード歴史の本文(ポーネグリフ)”。

 政府が調べることを全面的に禁止し、関わるだけでも犯罪者の扱いを受ける“歴史の本文(ポーネグリフ)”の中でも、“真の歴史の本文(リオポーネグリフ)”と並ぶ程の特別な代物である。

 ……だが、船員の殆どは未だその石が一体何なのかを知らない。その証拠に、リンリンは船長に問うた。

 

「……結局、その石はなんなんだい?」

 

「ギハハハハ……まァ、“国”を──いや、“世界”を手に入れるのに必要な道筋の一つさ……だがこれはあくまで手札の一つ。()()()()()()()()には関係ねェものさ……!!」

 

「…………」

 

 多くの船員達はロックスの言葉の意味に気づけない。だが、それがとんでもない物であるということを密かに感じ取る者達もいたし、気づいていない者もロックス船長の言葉に嘘があるとは思っていない。きっとそれは、世界を手に入れる上で重要なものなのだろう。そうやって誰もが自分を納得させた。

 そして次に気になるのはロックス船長の、これからやること、という言葉。前置きから察するに、いつもと毛色の違う……もしくは規模の大きいものになるのかもしれない。

 その疑問はシキが唱えた。彼自身も笑みを浮かべ、ロックス船長に視線を向ける。

 

「それでお頭。これからやることってのは何なんだ? 一体どの島のどの国を襲うってんだ?」

 

「ギハハハハ……知りてェか。そうか……よし、それなら教えてやろうじゃねェか──」

 

 と、ロックスは一度言葉を止めた。そして、平時以上に悪い笑みを浮かべ、それを皆に告げる。

 

「島の名前は──“ゴッドバレー”。目的は……そこにいる“天竜人”と……おれ達から奪った物を取り返しに行くことだ……!!!」

 

 

 

 

 

 ──“西の海”。とある海域。

 

「この先にある島に目的のブツがあるんだよな!?」

 

「……ああ。そうらしいな。だから落ち着けロジャー。やるのは島に上陸してからだ」

 

 穏やかな海に浮かぶ海賊船。その甲板で何気なくやり取りを行うのは、その船──ロジャー海賊団の船長であるゴール・D・ロジャーと、副船長のシルバーズ・レイリー。

 他に幾人かの船員も聞きながらも、彼らは次に行く島のことを考えており、ロジャーは特に自信満々に船員達に向かって告げていた。

 

「ああ、例の情報が確かならあそこには“宝”がある!! 何もないとしても行くしかねェだろ!! 確かめてみるまで分からんからな!!」

 

「確かに、あのハチノスから奪った宝だ。獲りに行くなら今しかねェ」

 

「ただ相手が相手だ。かなり荒れるだろうな……」

 

 ロジャーの好奇心満載の声色に対し、船員のギャバンとレイリーはそれぞれ笑い、そして神妙な様子で考えを口にする。

 もう2年ほど前に到着した“水先星島”で、その島が“偉大なる航路”最終地点ではないことに気づいたロジャー海賊団は、冒険を大きくやり直し、世界の海を回ってその手がかりを探し続けていた。

 そんな時、とある情報筋から聞いた宝が運ばれた場所。

 その島の名前こそが──“ゴッドバレー”。

 その島は現在、島の海域にすら近寄ることを禁止されており、度々政府の監視船が行き来しているらしい。

 とある筋からその情報を得たロジャーは、真っ先にその島に行くことを決めて、クルー達と地図を眺めながらその島に対する思いを話している。

 だがそんな時だった。マストの見張り台から声が張り上げられた。

 

「──船長!! 海賊船だ!!」

 

「海賊船!! よォし、それじゃ景気づけに一戦やるか!!」

 

「またそんなイキイキしやがって……」

 

 船員の1人が敵船を見つけた時のロジャーの反応に呆れ果てる。

 しかし他の者達も海賊船を見たと聞けば誰もが戦闘準備を整える。必ずしも戦闘を行うとは限らないが、急に始まらないとも限らないので、準備をしておくに越したことはないのだ。

 だがそうやって、目視で見えてきた海賊船に近づいていくと……その海賊達は、ロジャー海賊団を見つけるなり、こう忠告した。

 

「おいてめェら!! 今すぐこの海域から離れな!! 留まるならぶっ殺すぜ!?」

 

「わはは!! 嫌だ!!」

 

「嫌だじゃねェんだよ笑ってんじゃねェ!!! 大頭から誰にも近づけんなって言われてんだよこっちは!!」

 

「……大頭? おいお前達……まさか誰かの傘下なのか?」

 

 開口一番、相手の要求を突っぱねたロジャーに怒る敵海賊の言葉に、レイリーが目敏く反応する。すると敵の海賊達は誰もがニヤニヤと勝ち誇ったような表情を浮かべ、

 

「ぎゃははは!! そうだ!! おれ達はかの大海賊──ロックス海賊団傘下の海賊団、ノウナシュ海賊団だ!! 命が惜しければさっさとここから──」

 

「──へェ、自分から能無しって名乗ってんのか。可哀想だなお前ら」

 

「名乗ってねェよ!! 能無しじゃなくてノウナシュだ!! くそ……バカにしやがって……おいやるぞ野郎共!!!」

 

「おお!!」

 

 ロックス傘下の海賊。そして彼らから聞いたその情報を耳にし、相手が今にも襲いかかろうとしているにも関わらず、落ち着いた様子でロジャーはレイリーの問いかけを聞いた。

 

「ロックス……つまり、この先にロックス海賊団がいるということか……おい、ロジャー。どうする?」

 

「──決まってんだろ相棒!! あの時の借りを返すチャンスだ!! 行くぞ野郎共!!!」

 

「やれやれ……全然懲りてねェなァ……ま、それはおれ達も同じだけどよ!」

 

 おお……!! と、ロジャー海賊団の面々の誰もが意気揚々と不敵な笑みを浮かべ、この先の島にいるという宿敵を見据える。

 2年程前に敗北したあの時の悔しさを彼らは忘れていない。その時に感じた、ロックス海賊団の圧倒的な強さも。

 ──だがそれから2年だ。彼らはあの時の経験があったからこそ、誰もが苦しい思いをしながらも強くなることを望み、少しずつ前に進んで、どんなに高い波も仲間達との結束と揺るぎない意志で乗り越えてきた。

 次に出会った時には、あの時と同じ轍を踏まない──誰もが口にはしないまでも、そう誓っている。

 そして、他ならぬロジャー自身も、

 

「おれァ世界一の海賊団を目指してんだ!! 邪魔するならロックスだろうとぶっ倒す!!! また敵に回せるってんなら──望むところだァ!!!」

 

「っ!!? ろ、ロジャー? ま、まさかこいつら──!?」

 

 ロジャーの啖呵を皮切りに海戦は始まり、ものの数分で敵船は海に沈んだ。

 そして彼らは不敵な笑みを浮かべるロジャーと共に……その島──“ゴッドバレー”へと舵を切る。

 ……後に誰もが心の奥底に秘めることになる大事件──“ゴッドバレー事件”が……今まさに、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 ──その任務は、彼の海軍人生において、最も嫌な記憶の一つだった。

 

『──冗談じゃない!! なぜおれが!!』

 

『悪いが頼むガープ!! 万が一があってはならんのだ!!』

 

『天竜人の修学旅行か? 「ハチノス」をつつくなとおれは言ってた! 舐めすぎだ!』

 

 ──嫌がる自分に、上層部からの必死の説得。脅しにも似ているが、そこには懇願すらあったように思う。

 

『アレは海賊島の宝だ!! そりゃ取り返しに来るだろうな』

 

『一体どこから情報が……!!』

 

『護衛は十分つけたんだろ? なぜ怯える?』

 

『いやそれが……まさかロジャーも動くとは……』

 

『──先に言え!! 行く!!』

 

 周囲の心配と海兵としての責任感……などではなく、ガープが狙いを定めるロジャーという海賊が動いているとの情報を知ると、ガープは休暇を切り上げてすぐさまその島へ向かった。

 

 ──が……彼はその島にたどり着き、やがて後悔することになる。

 

「お待たせ致しました!! 3年に1度の腕試し!! 先住民一掃大会!!」

 

 高らかな声が響き、歓声が反響する。

 まるで祭りのような騒ぎだった――いや、それは確かに彼らにとってのお祭りだった。

 悍ましい趣味を持つ特権階級による悍ましい祭り。虐殺という言葉すら彼らの残酷さを形容するには足りない程のそれは3年に1度、秘密裏に行われ……彼ら“天竜人”をこれ以上ないほどに熱狂させる。

 

「今回選ばれましたのは世界政府非加盟国のこの土地――“ゴッドバレー”!!」

 

『うおおお~~!!』

 

「恥知らずにも“神の谷”と名付けられたこの島には、豊富な資源が確認されており!!」

 

 そしてその不幸にも、選ばれてしまった国、島の名こそゴッドバレー。

 非加盟国には人権はない。それを証明するかのように、彼らは名前が気に入らないことと資源があるというその理由だけで、その残酷な催しを行う。

 

「ここで恒例の“人間狩り”を執り行い、この島を“世界政府”が所有する事になります!!」

 

「勝手なマネを!! ゲームで国民を殺す気か!!? 正気じゃない!!! ここは我々の国だ!!」

 

「国王っ!!」

 

 そして当然、良識ある国王はそれに抗議する。

 あるいは暴君であってもそこには異を唱えるだろう。人間であれば、そんなふざけた話を認めるはずがないのだ。

 だがそんな普通の良識や常識が通用しない相手――それこそが天竜人であり……。

 

「!!!」

 

「きゃあ――!! 国王様!!」

 

 ――そしてそんな良識ある下等な人間を容赦なく殺すことが出来る天竜人こそ、天竜人の中にある組織に属する者達。

 逆立つ特徴的な髪を持ち、今しがた喚く国王を斬り捨てたその男もまたその組織に属する天竜人の1人であった。

 

『おっとっと!! 少々お待ちを!! ガーリング聖!! お手つきです!! なんと先住民の王を討ち取ってしまいました!! 優勝候補ガーリング聖はマイナス1万点からのスタート!!』

 

「それくらいのハンデがあった方がいい」

 

 ――“神の騎士団”フィガーランド・ガーリング聖。

 

 現在、天竜人の中で、そして“神の騎士団”の中の有望株、エースとして人気のあるその天竜人の青年は冷静に、そして無慈悲に国王を斬り捨てながらそのハンデを受け入れていく。

 天竜人の屈指の実力者。前回のこの大会においても優勝を飾っているガーリング聖にとっては、これくらいしなければつまらないのだと。

 

「今回も“脱兎”達は先住民に加え、問題ある奴隷達!! 罪人たちを取り揃え――」

 

 そんなガーリング聖率いる天竜人に狩られる予定の先住民達。そして、連れてきた奴隷たちは檻の中で、あるいは錠にかけられてその祭りが始まるのをただただ待つしかなかった。

 彼らに希望はない。あるのは絶望。諦観。あるいは許しを誰かに祈るだけ。

 今回の祭りにおいても不足はなく、盤石の体制で虐殺が行われようとしていた。

 

「脱走した子供が捕まったそうです。例のバッカニア族……!!」

 

「……何?」

 

 ――だが、その盤石の布陣で行われる祭りに、今1つの小さな不測が起こった。

 

 その報告を聞いた世界政府最高権力である“五老星”の1人――ジェイガルシア・サターン聖は冷静にその奴隷を捕らえるように告げる。

 だが、ゲームが始まってすぐに彼らは耳にすることになる。

 

「サターン聖!!」

 

「……どうした?」

 

「海賊です! ロックス海賊団が……!! 名だたる海賊達と共に島に現れました!!!」

 

「! 何だと……!!?」

 

 ――そしてそれが彼らにとって、大きな失態を起こす引き金となることを、この時は誰もが知らなかった。

 

 

 

 

 

 ──ついに始まったかぁ、と私はなんとも言えない高揚感と感慨深さを感じていた。

 

「えーい!!」

 

「っ、子供!? ブっ!!?」

 

「子供扱いして力抜いたら死んじゃうよ? ──って、もう死んじゃったか」

 

 私は武装色の覇気を込めた三叉槍で海兵の身体を貫き、刺さったままの海兵の死体を槍を振るうことで海に向かって放り投げる。たまーに刺さりどころが悪いと抜けなくなるんだよね。フォークに刺さったウインナーみたいにさ。まあ私の腕の問題もあると思うけど。

 

「よ、よくも……!!」

 

「右かな?」

 

「!? 何──ぎゃああああっ!?」

 

 背後からの攻撃も見聞色で読んで躱す。うーん。やっぱ覇気も使えなければ、身体能力もないような相手だと楽々になってきちゃったなー、これだと成長出来ないというか、虐めに楽しみを見出すしかなくてちょっと残念なんだけども。

 私はまだ息がある海兵の頭を掴んで、近くの相方に声を掛けることにした。例えばこうやって──

 

「カイドウ! 投げるよー!」

 

「ウォロロロ! 来い!!」

 

 と、カイドウも私が何をするか分かったのか金棒を構えてくれた。なので私は遠慮なく、海兵をカイドウの方に向かって投げる。

 

「ピッチャー第一球、投げたー!」

 

「ウォロロロロロ!!」

 

「っ──」

 

「わーお! ホームラーン!! ナイスバッティング~!!」

 

 私が投げた海兵をカイドウが金棒で振り抜いてぶっ飛ばすと、海兵が海に落ちていく。結構飛距離出たね。カイドウも成長してるし、やっぱ強くなってるからね。身体能力もそうだけど、覇気とかも。

 

「もう生き残りはいないかな? 声も聞こえないし。──UFOも解除っと」

 

「ふん、歯応えがねェ。もう終わりか」

 

 甲板のあちこちに転がる海兵達の死体を見渡し、見聞色で人の気配がしないことを確認。そこで戦闘の為に出していた7機のUFOを回収……というか消す。今は7機までが限界なのよね。徐々に数も増えて、弾の威力や耐久力も増してはいるんだけど。

 そうしながらカイドウが金棒を床に立ててつまらなそうに息を入れたところに、私は答える。

 

「いやいや、今からがお楽しみなんじゃない? 船長がああやって言うくらいだしさ」

 

「そうだといいがな」

 

 と、私とカイドウは2人、飛行して船に戻ることにする。やっぱただの軍艦の1隻くらいなら楽だね。雑兵ばっかりなら私とカイドウだけで事足りるという船長の読みはやっぱり正しかった。

 そして、遠く、既に目視出来る距離まで近づいた私達の船に戻れば──そこでは、船長が悪い顔をして指示を出していた。

 

「──終わったよー」

 

「ギハハ、どうだった?」

 

「雑魚だった」

 

「弱すぎて面白くねェ」

 

「ママママ……見習い2人にやられる程度か。とはいえ今回は数が多いからやりがいはありそうだねェ……!!」

 

「む……その言い方はなんか気になるなぁ……」

 

 ロックス船長に返答したらリンリンがそんなことを言ってきたので、妙な皮肉を感じてしまう。まあそりゃそうなんだけど、私達が弱いって言われてるみたいに感じるのだ。実際、それほど強くはないだろうから何も言えないんだけど、ちょっとムッとしてしまう。カイドウに至ってはものすっごい怖い顔をしており、今にも殴り掛かりそうであったが、

 

「──ギハハ……!! やるなら向こうさんにしとけ!! なにせ今日は入れ食いだ!! 殺っても殺っても足りないくらいの海兵!! 政府の役人!! 護衛!! 更には天竜人もいやがるんだからなァ!!!」

 

「それもそうだな……!! よし、突っ込むぞぬえ!! 全員殺してやる!!」

 

「いや、足並み揃えようよ。殺すのは船長の言う通り幾らでも出来るんだからさ」

 

 ロックス船長の言葉にカイドウが更に意気を上げて今にも殴り込みそうになるが、それを私は止める。船から見える幾人もの海兵や奴隷。その国の民らしき人達が逃げ回っているのを見れば私にも分かる。そこに私達が突っ込めば、とんでもない大騒ぎになることくらい。

 

「いいかお前ら!! 暴れるだけ暴れろ!! そんで奪い取れ!! 殺せるだけ殺せ!! 海軍も天竜人もやればやるだけおれ達の糧になる!!! 世界を獲るための通過点だ!!! 存分に楽しまなきゃ損ってもんだぜ!! ギハハハハ!!!」

 

「え!! 天竜人も殺していいの!?」

 

「おう!! 好きにしろ!! 心配すんじゃねェ!! どの道、最終的には全員殺すんだからなァ!!!」

 

「そっかぁ……」

 

 私はロックス船長の言葉を聞いて、それを噛みしめるように感慨深く声を出す。

 別に今更過去のことを気にしているわけではない。ではないけど……それはそれとして、やり返さなきゃ気持ちが悪いのはある。

 それと自分達が強いと思って調子に乗っている奴らに冷水を浴びせてやるのはきっと楽しいことだろうと私は思う。

 

「……よーし!! それじゃ気合入れていくぞ!! レッツゴー!! ロックス海賊団!!」

 

「見習いがなんで先頭にいやがんだアホンダラ!! お前は後ろからついて来い!!」

 

「いてっ!?」

 

 なので今日も楽しいお祭りだと楽しくなった私は腕を上げて前に出ようとするが、そこを白ひげに軽くげんこつを落とされて止められる。私は頬を膨らませた。

 

「えー別にいいじゃん!! せっかくのお祭りなんだし、最初は若い子に華を持たせてあげてもさ!!」

 

「ママママ!! 威勢が良いのは結構だね!! だが白ひげの言う通りだよ!! あんたら見習いは下がってな!!」

 

「うるせェリンリン!! 最初に突っ込んで殺すのはおれ達の仕事だ!!」

 

「そうだそうだー!!」

 

 私は白ひげに軽く不満をぶつけるも、リンリンが更に下がってろと前に出ながら告げてくる。それに更にカイドウが不満を口にしたので、私は珍しくそれに同調した。見習いであり拷問役であり特攻隊でもある私とカイドウの暴れる機会……もとい、経験値を積む良い機会だと私はいつも通りカイドウの隣で浮かび上がりながら槍を構えていく。

 

「全部早いもん勝ちだ!! ジハハ!! 全員俺が吹き飛ばしてやる!!!」

 

「ちょっとニューゲート!! 待ちな!! 私を置いてくなんて水くさいよ!!」

 

「白ひげの女気取りは見苦しいよステューシー!!」

 

「うるさいグロリオーサ!!」

 

「フヘヘ!! 天竜人もいるなら余計に宝がありそうだな。全部俺が獲ってやる!!」

 

「いいや俺のもんだ!!」

 

「俺がやる!!」

 

 そしてシキにステューシー。グロリオーサにジョンに、“銀斧”に“王直”と名だたるロックス海賊団の面々が次々に島に上陸していく。

 私達の快進撃。それを止められるものなど存在しない。海兵も政府の役人も全員殺して楽しむのだ。ロックス船長の言う“儲け話”。その過程を。

 

「ギハハハハ!! さあ行くぞ!! この俺に続け!! ロックス海賊団!!! 天竜人だろうが五老星だろうがその裏に隠れる世界の王だろうが邪魔する奴らは全員仲良く首を並べてやれ!! 海に沈めろ!! おれ達の儲け話が成就するまでもう少しだ!! 次に世界を“支配”するのはこのおれだ!! ギハハハハ!!!」

 

 そうして一瞬にしてロックス船長は皆の士気を高めながら、突撃する。

 その発言に何かを思うはおれど、少なくとも戦意だけは皆が高める。

 そんな中で、私は、これから始まる大きな戦いに対し、相棒のカイドウや多くの仲間達と同じ様にワクワクしてしまい、

 

 ──さて、どうなるんだろう……どんな結末になるか、ちゃんと見届けないとね!! 

 

 どんな結末に終わろうと、それを楽しみ、見届けてやると、ここまで導いてきたロックス船長の背中を見て決意し――そうしてロックス海賊団最後の戦い……“ゴッドバレー事件”は幕を開けた。




新たに改訂した24話「運命の島」です。ゴッドバレーでの目的や神の騎士団やサターン聖、グロリオーサやステューシー、後はくまとかジニーとかイワンコフとかも追加していきます。最新話の先でくまやら天竜人の話もやるから必要なんじゃ。

ちなみに今回だけ24話を削除して新たに投稿しなおしましたが感想が消えてしまうのが悲しいので次からは編集で告知だけします。そういうことでよろしくねって。

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
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