正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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魚人島

 “CP-AIGIS0”。それは世界最強の諜報機関である。

 世界貴族直属の組織であり、その任務は常に世界政府による政治的活動や天竜人の警護、果ては闇の取次人(ブローカー)との交渉まで、諜報の枠を超えた仕事を任されることもある難しい仕事だ。

 それは海軍の様な、ただ単に犯罪者を追いかけて捕らえればいいという単純なものではなく、先の先の未来までを読んで動くことを要求される。

 例えばだ。政府の益になるのであれば、海賊と手を組むことだってありえる。

 勿論、そんなことはただの癒着で、バレれば批判されるべきものではある。──が、そんなことはバレなければ問題なく、バレたとしてももみ消せばよいし、そうしたことで一般市民がどれだけ苦しもうがそんなことは関係ないのだ。

 世界政府は政府の存続のみを考えており、その直属機関であるCP0は政府の益になる任務を行う。

 故に()()()()──海賊との縁を結ぶことだって、任務の一環であった。

 

「ウォロロロ!! 野郎共!! 戦力も増えて良い取り引きも成立した!! 絶好の船出日和だ!!」

 

「ステューシーを連れて魚人島から新世界へ行くわよー!! ──あ、こら花火役! 逃げないの!!」

 

「ウ、ギャアアア~~……!! た、たずげで……!!」

 

「ウッ……相変わらずぬえさんはえげつねェ……!」

 

「……言っとくがあの人はこんなもんじゃねェぞ……前のシマにいた時は──」

 

「……ふふ」

 

 そこは百獣海賊団の乗る船の甲板。船のコーディングを終え、これから魚人島経由で新世界に行き、暴れ回ることを記念しての花火大会の会場だった。──ただし、花火は人間。人間に火薬を括り付けて、それを街に撃ち込んで爆発させ、二重に起きる惨劇を楽しむというイカれた行為だった。

 ただこれくらいの残虐な行為では動揺しないし、なんなら楽しむことだって出来る。それがCP0に所属する女諜報員──ステューシーの性悪な一面だった。

 

「たーまやー!!」

 

「ムハハ!! 面白ェ!! 人が弾けて吹き飛びやがった!! こういう絡繰公演(カラクリライブ)も悪くねェな!!」

 

「弾が中々尽きねェのが問題だがな……この島はゴミが多すぎる。景気よく燃やしてェところだが……」

 

「ウォロロロロロ!! おいお前ら!! あんまり悪趣味なことすんじゃねェぞ!! 今は客人がいるんだからな!!」

 

「え~!! 別にいいじゃん! ステューシーも楽しいよね?」

 

「──ふふ。ええ、勿論。楽しい余興だと思うわ」

 

 凶悪極まりない幹部達が楽しみ、その中でも一見この船に似つかわしくない少女の問いに自然体で応える。別に演技という訳でもない。こういうのを楽しめもするような感性を持っていなければCP0など務まらない。特にステューシーは潜入、情報収集、隠密行動など諜報のプロだ。数あるCP0の中でも特異であり、その任務は常に表の顔である裏社会の一員で居続け、その立場で動き続けることにある。こうやって百獣海賊団と縁を作り、懇意な関係を築こうとしているのも、その一環。そして別に、百獣海賊団を壊滅させようとして動いている訳でもない。

 無論、場合によっては良い具合に誘導して海賊同士で潰しあって貰うことも考えてはいるが、基本は監視し、情報を送り続けるだけで、それ以外は裏の付き合いとして、なんなら百獣海賊団に有利な様にだって行動する。

 それはそこらの一般人や海兵、ただのCPには理解出来ないかもしれないが、ただ罠に嵌めて潰すようなことは長期的に見ればCP0や世界政府にとって必ずしも有益とは限らないのだ。

 まずそれが出来るとは限らないし、そうやって決定的な裏切りを起こせば自分がCP0の一員だということがバレてしまう。CP0という裏の顔をバラさずに裏の世界の住人と付き合い続けるステューシーにとって、その顔をバラすことは今後の活動を少なからず制限されてしまい、裏の情報を持ち帰ることが難しくなり、結果的に政府に都合が悪くなる。

 だからこそステューシーの任務はあくまで諜報なのだ。無論、戦闘力だって持ち合わせている。六式に覇気。それを高レベルで修めており、CP9などの同じ六式を修める者など相手にならないし、海軍中将レベルとも渡り合える。

 しかしこの場にいる百獣海賊団……特に幹部連中を制圧出来るかというと不可能だと判断する。今いる船長、副船長も含めた4人の幹部は皆強い。一筋縄ではいかない相手だ。こうやって接していても分かる。

 

「ウォロロロ!! なんだ、お前も趣味が悪ィなステューシー!!」

 

「あら酷い。本当のことでも普通は口にはしないものよ?」

 

「あー、無駄無駄。カイドウはそういうの分かんないからねぇ~。──あ、ステューシーも一発いっとく?」

 

「──ありがとう。いただくわ」

 

 と、軽快な会話の中で花火を撃って人を殺す。会話の最中でさえ、この連中は捕まえてきた海賊や民間人、海兵などを拷問し、時に無残に殺す。そんな中で酒や食事に興じることが出来るのがここの幹部達だ。

 

「──カイドウさん、ぬえさん。そろそろ出航だ」

 

「あ、そう? それじゃ全部適当に街に投げ込んどこうか」

 

「締めは投げやりなのね」

 

「余興だしね~。──ってことでばいばーい♪」

 

「よし野郎共!! 出航だァ!!!」

 

「ウオ~~~!! とうとう新世界入りだァ!!!」

 

 船長の号令で海賊船が魚人島へ向けて出発する。部下達の士気は高い。これから新世界へ向かおうというのだから当然かもしれないが、その中には当然、この怪物連中の強さに信頼を持っているのもあるだろう。簡単に情報を整理しても、かなり危険な一味だということはもはや政府の人間なら誰もが知っているが……さらなる情報も求められてもいた。特に幹部以上の4人──

 

「さあ行くぜ魚人島!! おめェら、ステューシーちゃんを無事送り届けるぜ~~~~~!! 護衛はおれに任せてくれよ!! ステューシーちゃん!!」

 

「ふふ、ありがとうクイーン♡ 頼もしいわ」

 

「そう! おれは頼もしい男だぜ!! FUNK(ファンク)!!」

 

 まず1人目──百獣海賊団幹部、“疫災”のクイーン。懸賞金3億2000万ベリー。丸々太った巨漢の男で、動物系古代種、ブラキオサウルスの能力を持つ。覇気使い。歌とダンスが好きで、残虐極まりないショーを行う海賊として有名で、その特筆すべき脅威は、自作の病原体や絡繰武器などによる市民や敵対者への無差別攻撃。医療にかなり長けた医者がいればその病原体の治療自体は難しくないと思われるが、それでも自作の病原体の特効薬や治療法を探すのにはそこそこの時間が掛かる。戦闘能力も高い。初対面から好意的な態度を取ってきており、関係の構築にはさほど労力を割かなくても良いと思われる。

 そして次、

 

「……フン。まあいい……精々おれ達の役に立て」

 

「ええ、期待に応えられるように頑張らせてもらうわ」

 

「だといいがな……」

 

 百獣海賊団幹部、“火災”のキング。懸賞金3億3000万ベリー。黒尽くめの大男。偉大なる航路に生息する希少種族であることがほぼ確定済みで、その身体から吹き出される炎が極めて脅威。加えてこちらも動物系古代種、プテラノドンの能力を持ち、剣士としての腕前も達人レベルに達していると思われる。当然覇気使い。拷問好きの海賊でもあり、その性格は極めて凶悪。彼が暴れた土地はありとあらゆるものが燃えて無くなる焦土と化すと言う。警戒心も高く、隙の無さで言えば百獣海賊団でも随一。先のクイーンよりも僅かに戦闘能力でも勝っていると思われる。友好関係を構築するのが最も難しいと思われる。地道に信用を勝ち取るしかないだろう。

 この2人だけでもかなり厄介だが、それよりも更に厄介なのは次の2人だ。

 

「ウォロロロ……おいお前ら。大事な客人だ。あまり困らせるんじゃねェぞ」

 

「そこまで気遣って貰わなくても大丈夫よ。これでも裏社会は長いから荒くれ者の相手は慣れてるの」

 

「ほう、面白ェ女だ。まあ船旅は長ェ。色々話を聞かせてもらおうじゃねェか」

 

「勿論」

 

 と、軽快なやり取りをするのは甲板に立てつけられた大きな椅子に腰掛ける百獣海賊団の船長、“百獣”のカイドウ。懸賞金7億1110万ベリーの怪物。動物系の幻獣種、龍の力を持つ大男だ。覇王色の覇気の持ち主にして、あのロックス海賊団の残党でもあり、その戦闘能力は新世界基準でもかなり高い。──だが何より厄介なのはその暴れる相手を選ばない凶暴性であるとされ、政府は他のロックス残党と同じ様にカイドウを危険視している……が、他の者達と比べると特に何の思想も持っておらず、金獅子やビッグ・マムのように世界を取りかねないという程の脅威ではまだない。今後どうなるか分からないが、それも含めて他の大海賊と同じ様に監視は必須だったし、場合によっては利用も出来るかもしれない。取り引きを持ち掛けてからは気を許した様にも見えるが、その凶暴性は油断出来ない。安易に裏切るようなことをしたり、怪しまれるようなことをすれば直ぐに殺される可能性も高く、基本は支援者として動くのが良いだろう。

 そして……もう1人。態々こうやって接近し、島への案内という口実まで作って近づいた人物が──この少女だ。

 

「うわぁ、すっごいねぇ。本当に深海に潜ってくし面白~い! ほらほらステューシー! あの魚なんて美味しそう!」

 

「確かに見た目はね。でもあの魚には毒があった筈よ?」

 

「え~~~~! そうなんだぁ……せっかく美味しそうなのにお腹痛くなっちゃうなんて……」

 

 お腹が痛いではすまないと思うが、そのことを口にはしない。会話をしながらその少女を観察する。どう見ても、少女にしか見えない相手だ。

 だがこの少女こそが、百獣海賊団の副船長にして懸賞金5億8010万ベリーの海賊、“妖獣”のぬえなのだ。カイドウの兄妹分であり、元ロックス海賊団の見習い。実年齢は不明。不老だという噂もある。悪魔の実の能力も動物系幻獣種だと思われてはいるが、その詳しい能力は不明。覇王色の覇気を持つ覇気使いで、高い戦闘能力や危険性とは裏腹に、純粋な少女のような一面も持つ得体の知れない人物だ。

 そしてステューシーがもっとも優先して情報を集めることを求められている相手でもある。何しろその正体は不明。能力に関してやれることがわからないため、海軍も対応の仕方に困っているらしい。謎の羽と飛行能力を持ち、戦う時は様々な色のUFOを生み出して空から弾幕を張ってその一帯を襲い、予測不能な現象が幾つも巻き起こるという。そしてその本人の行動も極めて読みにくいという厄介な相手だ。……本来、島への案内など永久指針(エターナルポース)1つ渡すだけで済む話である。だがあえて船に乗り込んで同行することにしたのは何か分かるかもしれないと思ったためだ。一緒に船で行動すれば嫌でも色んな一面が見えてくるだろうし、その能力についても聞けるかもしれない。

 ただ今はまだ、僅かに警戒されているように思える。だが一方でそれを承知しながら仲良くしてくれているようにも思え、やはり得体が知れない。一筋縄ではいかなそうな少女だった。

 だがステューシーは諜報のプロである。如何なる時も動じず、裏社会の人物として自然体で相手に近づき、情報を盗み出す。ボロなど出す筈がない。本物のスパイは演技も演技ではないのだ。自分そのままで相手に近づくことが出来る。不自然さなど1つもない。時には怪しさを出すことだってテクニックの1つだ。まったく怪しくない人間など逆に怪しい。ましてや裏社会の人間が近づいてきたのだから少しは不穏になって当然である。

 

「あ、ステューシー! お風呂入る? この船ちゃんとお風呂あるんだよ! 使い方教えてあげるね!」

 

「あら素敵! ならせっかくだし、ご一緒させて」

 

 ステューシーはぬえの誘いに乗って、船内へ。そしてお風呂場へと向かう。綺麗な浴場だった。“ぬえ専用”と浴室の入り口に書かれており、おそらく男所帯の百獣海賊団には使わせない、副船長の彼女だけのものなのだろう。そこを使わせてくれることは素直にありがたいと思いつつ、親睦を深めようと一緒に浴場へと足を踏み入れる。彼女の肌は少女らしく1つの傷もない綺麗なものであり、今は羽も消している。とても海賊とは思えない容姿だ。──浴槽に入る今なら不意打ちも簡単だが、そんな短絡的なことをしても消せるかは微妙だし、成功したところで生きて帰ることは困難だ。ここで行動を起こす者など二流どころか三流のスパイである。故にステューシーはただの女友達の様にぬえと裸の付き合いを行う。

 

「ふふん。すごいでしょ!」

 

「ええ、良い湯加減ね。ボイラーでも船に積んでいるのかしら?」

 

「ん~~~まあ、ボイラーではないけど、湯沸かしは出来るようにしてあるよ! ──あ、そうだちょっと聞きたいんだけど……」

 

「なぁに?」

 

 微笑を浮かべながら、ステューシーはぬえの言葉を聞いた。──そう、全てはここから始まる。ステューシーのプロフェッショナルな仕事はここから……。

 

「──“六式”の習得方法……()()()♡」

 

「────」

 

 …………えっ? 

 

 ──ステューシーは思わず言葉に詰まる。その少女の質問の内容に、思わず耳を疑ってしまったのだ。

 自分の膝に乗りながら、こちらに顔を向けて歯を見せて愛嬌のある顔で笑い、問いかけてくる可愛らしい少女。その表情は先程までと変わっておらず、こうやって改めて見てもただの天真爛漫な可愛い少女である。……が、その質問を聞いた瞬間、僅かに嫌な感じを覚え、

 

「……六式の習得方法? 六式って政府や海軍が使うあの体技よね? 何故私にそんなことを聞くの?」

 

 我ながらボロを出さなかった自分を褒めたい。自然な反応の筈だ。そんなことを裏社会の人物である自分に聞いてくることに驚くが、裏社会の人間が“六式”の存在を知らない筈もない。その上で、自然に何故そんなことを聞いてくるのかと問うた。……まさかとは思うが、どこかでバレてしまったのかと──

 

「ん~、だってステューシーって裏社会に顔が利くみたいだし、色々知ってそうだもん。だから、それくらいなら知ってるかと思って」

 

「──ああ、そういうこと」

 

 僅かに胸を撫で下ろす──ことは出来ないが、バレてる可能性もそこまで高くないと判断する。何度も念押しするが、ボロなど一切出していない。ぬえの素性は分からないが、それでもこちらがCP0の一員だということを知れるような環境にはいないはずで、過去に私との接点もない。今も、ぬえは特に含むところがないように、少女らしく私におねだりしてくる。

 

「ねーねー、教えて~。お金なら払ってあげるからさぁ~」

 

「……まぁ、そういう情報を持ってくることは可能だけど……でもどうして? やっぱり強くなりたいの?」

 

「いや、確かに私も試しに使ってみたいかもだけど私じゃなくて、知ってたら部下とかの強化にも使えるし、得しそうだし。──ってことで教えて~♡」

 

 と、ぬえはこちらを向いて抱きついてくると、可愛らしくおねだりをしてくる。それを見てステューシーは思った。──確かに自分で言うだけあって可愛いし、個人的にも確かに可愛がりたくなる。自分の魅せ方を分かってるような振る舞いだ……しかしそれが自然なものか演技なのかは判断がつかず、考えようによってはそれは恐ろしいことでもあった。ステューシーは僅かに逡巡したが、直ぐに判断を下す。笑みを浮かべて、

 

「こんな可愛い女の子におねだりされたら教えてあげないとね♡」

 

「えっ! 本当!? やったー♪ ふふん、やっぱ可愛いは正義ね♡」

 

「──でも結構危ない橋も渡るから……それなりにお金も頂くけど大丈夫?」

 

「あ、それはいいよ~。カイドウには私から話しとくからさ。ってことでお願いね~♪」

 

 そう言って、ぬえは再び後ろを向いてこちらに背中を預けてくる。……信用している? いや、そうとも限らない。彼女もまた、何かを企んでいるかもしれないのだ。女は生まれついての女優とも言うし、演技の可能性も捨てきれなかった。

 しかし仲は深められそうだし、一応はプラスだと考える。六式の情報については問題ない。聞くところに聞けば知ることは実際のところ可能なのだ。別に六式は機密情報のレベルとしてはそれほど高くない。何しろ習得している者は海兵をはじめとして大勢いるため、情報の漏洩を防ぐことは難しく、海賊の中にもそうやってどこからか六式の情報を得て習得している者はいるのだ。

 そして既に覇気を使えるほどの相手に教えたところでそれほど脅威には繋がらないし、たとえ彼女が話す部下への強化が実を結んだとしても、こうやって距離を縮められることを考えればそこまで高い出費でもないのだ。それにお金もちゃんと頂く。

 ──仕事は極めて順調。そう思っていた。海底の楽園。魚人島に着いてからも、何も予想外の出来事はなく──

 

「──なんかどっかの国の王族が来賓として来てるって噂だけど面白そうだから殺しとく?」

 

「──いや、さっき港で出くわした時に()()()()()()()()()()

 

「え~、殺るところ見たかったなぁ……というか、だからちょっと街が騒がしくなってきてるんだね。なんか楽しそう」

 

「ああ、うざってェな。よその王族が死んだくれェで騒ぎやがって……お前もそう思うだろ? ステューシー」

 

「……えっ……あ、ええ、そうね」

 

 ──メチャクチャ予想外だった。

 

 

 

 

 

 ──なんか魚人島に外交か何かで来訪してた王族が死んだらしい。ってかカイドウが酔った勢いで殺しちゃってた。ま、ちょうど帰るところだったみたいだし、目撃者は一緒に殺したらしいから平気でしょ!! というかバレたところでどうでもいいしね! 

 ということで私達は魚人島の記録(ログ)が溜まるまでの半日を楽しく過ごすことにした。なんかステューシーがさっき一瞬固まってたけど、やっぱカイドウのメチャクチャっぷりに驚いたのかなぁ? 今はなんとか持ち直してるあたりさすがだと思う。さっき一緒に風呂入った時も全然動揺してくれなかったし、しかもあっさり六式教えてくれるらしいし、ちゃっかりお金も取る強かさもあるし、スタイルは抜群で肌はすべすべだった。いや、最後のは関係ないか。でもちょっと羨ましい……肌の張りとかすべすべ具合とか可愛さは私の完全勝利だけど、スタイルだけは……くそう。あの枕にした感じはどう見ても私の敗北──

 

「──いやいやいや、私も結構色っぽいからね! む、胸から下なら! む、胸から……くぅっ、やっぱ悔しい……けど、可愛さを追求するならある意味こっちの方がオイシイ気もする……」

 

「おい、何よくわかんねェこと言ってんだ?」

 

「カイドウには分からないことよ。……ま! 気にしてもしょうがないし、今は魚人島を楽しむぞー!!」

 

「海の幸食べ放題の宴会の始まりだぜェ~~~~~♪」

 

「ヒャッハ~~~~~~!!」

 

「ウオ~~~~!! どれも美味そうだァ!!」

 

「……島は静かでつまらねェがな。火炙りにしてやろうと思ったが……()()()で我慢するか」

 

 と、宴会をする百獣海賊団の仲間たち。その場所は……やってきました魚人島! 海の底の楽園! 陽樹イヴという光が照らす深海1万メートルの島! ……とはいえ、危ない海賊がやってきてるからか周囲に魚人や人魚の姿はないけどね! まあもう見たし、捕まえたからいいけど! ──とか考えてると即席で作った宴会場で隣に座るステューシーが、

 

「魚人や人魚、捕まえてたけどどこかに売り飛ばすつもり?」

 

「あ~、そういえば高いんだよね~。でも別に売り飛ばすかは分からないかなぁ。なんとなく捕まえただけだし、ひょっとしたら逃がすかもしれないよ? ──はぁむ……ん! 美味しい♡ さすが魚人島!! よ~し、いっぱい食べるぞ~!」

 

「……そう。売るなら私も仲介出来るから是非言って。魚人や、特に人魚を欲しがる()()()は多いから」

 

「考えとくね~♪」

 

 ステューシーのそんな言葉を耳にして応じながらも、私は海の幸に夢中だった。うんうん、色んな魚が食べれて美味しい。ともあれ、人魚を欲しがる好事家って、それ、天竜人やないか~~~い!! ──って、ツッコミたくなるなぁ。でも高くは買ってくれそうだし、気が向いたら売ろう。まあ私の気持ちが最優先だけどね。

 

「ん~♡ お菓子も美味しい♡ もっともーらいっ!」

 

「ああっ!!? 自分の分があるんだから取らねェでくれよぬえさん!!」

 

「早いもの勝ち~♪ 私は食べたいものを食べるからね。ほらほら、代わりに私が捌いたお刺身あげるからさ!」

 

「刺身……おいお前、ちょっと食べてみねェか?」

 

「い、嫌ですよ!! だってこれ、()()()()か分からないじゃないですか!!」

 

 あ、クイーンが部下に私のお刺身を食べさせようとしてる。もう、失礼だなぁ、と私は魚の尾の部分を見せて、

 

「も~、それじゃほら、今ここで捌いてあげるからさ。それなら食べれるでしょ?」

 

「むっ……確かに魚だ。よ~~~しいただくぜ~~~♪」

 

「あっ、ずるいですクイーン様!! 魚と分かった途端そんな一気に!!」

 

「おれ達も食べて飲むぞ!! クイーン様に続けェ~~~!!」

 

 私が目の前で魚の尾を捌いて切り身にして出すと、それをクイーンや部下達が一斉に踊り食いする。うん、やっぱ刺身は醤油だよね! うまうま。でもやっぱ他の調理法でも魚は美味しいし、私はキングに声を掛ける。

 

「ね~、キング~! そろそろ焼けた~?」

 

「……いやまだだ。少し火の通りが悪い……おいお前、暴れるなら今直ぐ刺身にするぞ」

 

 と、私達がいる上座。天幕の後ろから聞こえるのは調理場にいるキングの声と、コック達が息を飲みながら魚を調理する心の声だ。まあキングは珍しい魚を調理してるし、多少調理に時間が掛かるのは仕方ない。

 

「しょうがないから炙りから食~べよ! あむっ……ん~♡ こっちも脂が乗ってて香ばしくて美味しい~~~♡」

 

「ウォロロロ!! 確かに美味ェな!! 酒との相性が抜群だ!!」

 

 カイドウと一緒に海の幸を楽しむ。次に食べるのは炙りや煮付けだ。こちらもまた刺身とは違った味わいが楽しめて美味しいし、お酒にも合う。片方はちょっと普通よりは硬かったりするけど、焼いた方が食べやすいかな? でも全然美味しい。これはどっちも焼き魚が期待出来るなぁ。それまでは私が作ったこれを食べよう。

 

「おしゅしおしゅし~♪ 握りにちらし~巻き寿司も……んっ、美味しい~♡」

 

「本当に美味しそうに食べるのね?」

 

「ん! だって滅多に食べれないし、今まで食べたことなかったんだもん! ほら、ステューシーも食べてみて!!」

 

「……私は遠慮しとくわ」

 

 あら、残念。どうやらステューシーは私の採ってきた魚は食べないらしい。ん~、でも普通に食べられると思うけどなぁ──とか思っていると、今度はその私の言葉を聞いてクイーンやその部下達の動きが止まっていた。あ、気づいたかな? 若干顔をしかめてクイーンが、

 

「……今まで食べたことなかった? ぬえさん、それってもしかして──」

 

「あはは~♡ いやぁ、こんなに美味しいなら高く売られるのもわかるよねぇ~? ()()()()()()()()()()()、そのくせ常に泳いでるから身が締まってて美味しいし、おまけに重要な臓器は全部上にあって骨も一本だけだから調理も簡単。しかも身も多くて食べやすいし~~~これは私も売ってたら買っちゃうなぁ。普通の魚屋さんでも売ってくれないかなぁ?」

 

「……ウッ……」

 

「ま、まさか……」

 

 私が味の批評をしてると、部下達やクイーンが顔を青褪めさせて口元を抑える。どうしちゃったんだろうね? あんなに美味しく食べてたのに。ちゃんと食べた部分は魚類だし、別に問題はないと思うけどなぁ。上が魚の奴を食べさせた訳じゃないしね。にひひ……と私は歯を見せる笑みを浮かべながら注意する。

 

「あ、戻すならここで戻さないでね~? ここで戻したらもっと食べさせるから。──とはいえ、美味しいでしょ?」

 

「……お、おう……」

 

「く、クイーン様……おれ達、ちょっと……!」

 

「せ、席を離れます……」

 

 クイーンが微妙な反応を返し、私の採ってきた魚を食べた部下達は皆宴会場を離れていく。う~ん。だから別に平気だけどなぁ。食べてはいけないものを食べさせた訳じゃないんだし、大げさだよねぇ、と私は刺身を食べていると、

 

「──ぬえさん。焼き魚が出来た」

 

「あっ! 待ってましたキング~♡ ふんふん……美味しそうないい匂~い! いやぁ、ほんと、どっちもこんなに美味しいのに、差別されて可哀想だよね~! 弱くても美味しいんだし、皆で保護してあげたらいいのにさ。少なくとも普通の弱いだけの人間よりはよっぽど上等な種族だよね!」

 

「ウォロロロ!! 違ェねェな!! こいつらは人間よりは強ェし、泳ぐのも速ェし、使えねェ雑魚共よりは何倍も優秀だ!! なんなら仲間にしてェくらいだ!!」

 

「うんうん! 人間よりは平均値期待出来るし、もし使えなくても処理は簡単だもんね!! あ~~~~むっ!! ん! 焼いても美味しい♡ 良い仕事するねェ、キング~! 褒めてあげるね!」

 

「フッ……確かに、味には興味ねェがやりがいはあるな……いつでも頼んでくれ」

 

「……楽しい宴会なのね?」

 

「えへへ、楽しいでしょ? ステューシーも楽しんでね! これから何度も誘ってあげるからさ♪」

 

「……ええ。その時は活きの良いお魚をお土産に持ってくるわね♡」

 

 あ、やった。思いがけない楽しみが出来た、と私はかなり食べごたえのある大きな焼き魚、大きすぎるためキングが皿に切り分けてくれたをそれを口にする。先程までの私の話を聞いたからかちょっと皆が怖がってたけど、普通のものよりは大したことないと思う。()()()()()()()()()()()()()()! 普通の魚との食べ比べも中々良い感じだ。……うん、やっぱ美味しい。お土産にもうちょっと捕ってこうかなぁ♡ なにせこれから行くのは偉大なる航路(グランドライン)後半の海、“新世界”。そこで暴れるのだから、腹が減っては戦はできぬとも言うし、美味しいものは獲っていくに限る。──ま、乱獲すると怒られちゃうから、ちゃんとバレないようにね♪




魚人島の海の幸を堪能出来るなんて羨ましいなー。これはメシテロしちゃったかなー。
魚人は人間より上等な種族って認める話。これには魚人至上主義の方々もニッコリ。人間の王族も酔って殺しちゃったしね。――あ、これらの所業は全て隠蔽されましたので悪しからず。
という訳で観光とグルメ旅の次はとうとう新世界入りです。やっと前半の海からいなくなってくれたね……(迫真)

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