正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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六式

 ──新世界、“デザイア島”。

 

 その島はある日……島を訪れたとある海賊達によって、たった1日で半壊させられた。

 それはまさに予想外の災害だった。何しろ、その海賊達はこれからこの島を自らのナワバリにしようとする海賊達だったから。自分達のナワバリを荒らす海賊など聞いたことがないだろう。なにしろ、ナワバリの安定はアガリにも直結する。だからこそ海賊は自分達のシマを守るのだ。見せしめで多少暴力を振るったり破壊を起こすのはともかく、島を半壊させるのはやりすぎだった。

 だがそれこそが、この島を新たに治める──百獣海賊団のやり方なのかもしれないと住民は恐怖した。

 誰もが空を飛ぶ2人の怪物の姿を目の当たりにしているし、逆らえばどうなるかは破壊された島を見れば一目瞭然だった。

 故に元から話は通っていたとはいえ、百獣海賊団のナワバリになることに歯向かうものなどいなかった。誰もが低姿勢。腰が引けており、そしてアガリを払いながらも復興があるから少し手心を加えてほしいとお願いする。

 そうして島が新たな旗印を掲げ始めてしばらく──その半壊し、復興が進んでない区画に、百獣海賊団とその支援者の姿はあった。

 

「──島の復興は一先ず順調よ。お金は有り余ってるし、死傷者も島が半壊した割には少なかったから」

 

「それなら良かったね! まあ今回は別に島の人を殺して回った訳でもないし、そりゃそうか。なら後は時間の問題だね!」

 

「ええ。……それと……手伝ってくれてるあなた達の部下……妙に建設とか農業に詳しいのだけど、船大工を多めに乗せてるの?」

 

「古参の船員が教えてるし、慣れてるから。──と、それは置いといて今日は楽しい楽しい訓練の日よー!」

 

「ウオ~~~~!! お前ら盛り上げろ~~~!!」

 

「い、イェーイ!!」

 

「楽しい訓練の時間だァ~~~!! ……ハァ……」

 

 ステューシーとの会話で復興にはまったく問題ないことを確認すると、私はそこに集まった部下達の前で訓練の始まりを宣言した。クイーンが真っ先に声を上げ、部下達がそれに続く。うんうん、皆楽しみにしてたようで何よりだ。

 まあ前のシマにいた時から度々やってたことなので、長くいる連中は慣れてきているだろうし、新入りに関しては頭に疑問符を浮かべている。──そんな中、キングは私に向かっていつも通り冷静に、

 

「いつも通り、ぬえさんと戦うのか……? この辺りにまた被害が出るが……」

 

「それは大丈夫。この辺りは建て直すから解体作業待ちだしね。別に壊れてもいいのよ。──ね、ステューシー?」

 

「ええ、問題ないわ」

 

 焚き火から少し離れた椅子に座るステューシーが迷わず首肯する。……まあおそらく、復興の間は無闇矢鱈に暴れられても困るから、暴れても問題ない場所に私達を連れてきたという感じだろう。そのために、態々あの情報も早々に教えてくれたしね。表向きには、情報を仕入れてくれたってことになってるけど。

 まあそのおかげで私も楽しみなのだ。思わず笑みが浮かび、皆にも言ってやる。

 

「それと、今日の訓練はちょっといつもと違うんだよね~♪」

 

「違う?」

 

 うん、と私は頷く。そう、今日の訓練の内容は──

 

「今日は──“六式”の訓練をやってみまーす!!」

 

「!!」

 

「え!!?」

 

 部下達が一斉に驚くのも無理はない。

 海兵や政府の人間が使う“六式”を、海賊である私達が覚えようと言うのだから。そしてその情報を、皆の前でわかりやすくキングが説明する。

 

「……六式といえば、政府の人間が使う特殊な体技のことだ。それを習得する……いや、ぬえさん、そもそもどこからそんな情報を……?」

 

「ステューシーが教えてくれたの!」

 

「何……?」

 

 私が敢えて詳細を口にせずににんまりと笑顔で告げると、キングは訝しげな視線をステューシーに向けた。するとステューシーも反応し、しかし涼しい表情で、

 

「ぬえに頼まれたから情報を仕入れたのよ。裏社会の情報網は政府筋の情報だって仕入れてくる」

 

「蛇の道は蛇って言うしね!! ありがとね、ステューシー♡」

 

「…………そうか」

 

 キングはまだ何かを疑ってるようだったが、ステューシーや私がそう言うと一先ずは納得した。そして一歩下がったキングの代わりに、今度はクイーンが前に出て、

 

「それじゃ、その六式の訓練をやってみるってことか……」

 

「そうそう、そんな感じ~♪ ──ということで、順番に説明していくね~?」

 

 と、私は皆に六式の説明を、教わった情報を載せたメモを見ながら、述べていった。

 

 

 

 

 

 ──“六式”とは、人体の限界を超えた者のみが体得することの出来る6つの超人的体技であり、あの“覇気”とも関連性があるという。

 政府の人間……主に“CP9”や“CP0”などの特殊な諜報員が使用する他、海軍本部の将校も会得している場合が多い。

 

「“(ソル)”……消えたかのように見えるほどの瞬間的な移動術。六式の足技を使うには“剃”が使えるほどの脚力が必要である……だって! それじゃまずこれからやってみよー!」

 

「いや、ぬえさん……つってもどうやるんだ?」

 

 私が読み上げたメモの内容──剃の使い方についてを問いかけてくるクイーンに、私は説明する。まあ脚力があることを前提として言うなら、

 

「なんか地面を何回も蹴るんだって」

 

「……走るってことか? 案外普通だな……」

 

「いやそうじゃなくて、もっと短く足踏みするんだよきっと」

 

「タップダンスみてェな感じか……よーしお前ら!! やってみろ!!」

 

 と、クイーンの号令の下、部下達が一斉にそれをやってみる。

 ──だが、

 

「こんな感じか……?」

 

「バカ。どう考えても違ェだろ。もっとこう……足踏みを速く──」

 

「お前も出来てねェぞ……変なダンスみたいになってやがる……」

 

「全員出来てねェ~~~~……!!」

 

 クイーンがげんなりした様子でツッコミを入れる。……うーん。やっぱ最低限脚力がないと駄目っぽいね。

 と、そんな中、キングが地面や足を確かめつつ、

 

「……こんな感じか」

 

「!!」

 

「あっ!! 多分出来てる!!」

 

 キングが一瞬、消えたかのような加速をした。私は驚く。さすがキング。これくらいはあっさりやってみせてくれる。

 

「じゃあ“月歩(ゲッポウ)”と“嵐脚(ランキャク)”も出来るんじゃない? 月歩は空中ジャンプで、嵐脚は足で斬撃を飛ばすらしいけど」

 

「……月歩はおれにはいらねェが……だが──()()()()()()()

 

「おお!!」

 

 キングが軽く空中に跳躍し、そのまま一度空中でジャンプ。そして今度は蹴りを鋭く放ち、鎌風──斬撃を飛ばしてみせ、遠くの建物を割ってみせる。ほぼ力任せでやっているからか、大味な斬り口だったが、キングは地面に着地して、

 

「……こんなもんか。政府の技つっても大したことねェな。ただのつまらねェ小技だ」

 

「さ、さすがはキング様……!」

 

「あっさり習得しちまった……!!」

 

「チッ……目立ちたがり屋が……あれくらいで……」

 

 キングのやってみせた六式の技に部下達が畏怖の視線を向ける。クイーンなんかは忌々しそうに歯噛みしていたが、それを見てキングが、

 

「フン……もっとも、てめェには無理だろうがな」

 

「あァ!!? てめェに出来ておれに出来ねェことなんてあるか!! ──ぬえさん!! 他の技を教えてくれ! こいつより先に習得してやる!!」

 

「──オッケー♪ それじゃ、次は……そうだなぁ……“紙絵(カミエ)”とか? これは相手の攻撃から生じる風圧に身を任せてひらひらと攻撃を避ける訓練らしいけど……」

 

「よーし!! 誰でもいいから攻撃してみな!! 全部躱してやる!!」

 

「ならおれがてめェのアホ面をぶん殴ってやる」

 

「キング~~~!! 上等だてめェ!! やれるもんならやってみろ!!」

 

 私がメモを読んでる間に、クイーンとキングが対峙し、紙絵の実験をしようとしている。部下達が息を呑む中、キングはその拳をクイーンに振り下ろし──

 

「──はっ! おれは動けるタイプのFUNK(ファンク)なんだぜェ~~~~!!」

 

 クイーンがキングの攻撃を読んで避けようとした……だが、

 

「フッ……!!」

 

「!!? ──っ!!!」

 

「うおっ!!? 受け止めた!?」

 

「ってことは失敗か……!?」

 

 キングの拳はクイーンに向かい、クイーンはそれを一瞬驚いた後に受け止めてみせる。周囲に風圧が発生し、焚き火の炎が揺らめいだ。するとクイーンは表情を怒りに一変させ、

 

「キングてめェ!! 見聞色使いやがったな!!?」

 

「てめェもだろうがクイーン……!! それじゃ意味がねェってこともわからねェか能無し!!」

 

「何だとてめェ!!」

 

「やるってのか!! あァ!!?」

 

「まーた喧嘩。──とはいえ、紙絵って実際、見聞色に似てる部分も結構……というか、鍛錬方法も似てるし……」

 

「六式は覇気を礎にする体技らしいし、もしかしたら見聞色を習得するためのものなのかもね?」

 

 なるほど、とステューシーの言に頷く。らしい、と濁してはいるが、ステューシーが言うならその通りなのだろう。だって政府の人間だし。……キングとクイーンの喧嘩についてはいつものことなので無視する。睨み合ったり、精々が軽く攻撃し合う程度だし、放置しても問題ないのだ。私が話を再開すればどうせやめる。ってことで続きは、

 

「まぁ、次は“鉄塊(テッカイ)”と“指銃(シガン)”だけど~~~……これは私が──」

 

「──面白そうじゃねェか。ちょっとおれにもやらせてみろ」

 

「あ、カイドウ」

 

「か、カイドウ様が……!?」

 

 ──と、私が次の体技をやってみようと声に出すタイミングで、カイドウがその会話に割って入ってくる。先程から酒を飲んで大人しくしていたが、見ているうちに興味が出てきたのだろう。

 ならちょうどいいと、私は口端を吊り上げた。一度メモをしまい、

 

「それじゃ、次は私とカイドウでやってみましょう!!」

 

「おう──で、どうすればいい?」

 

「えっとね~……それじゃ“鉄塊”やってみて! 鉄塊は、全身に力を込め、肉体そのものを鉄の甲殻に匹敵するほどに硬化させるんだって」

 

「よし、それじゃぬえ、適当に攻撃してみろ」

 

「りょうか~い♪ それじゃ……えいっ」

 

「!!!」

 

「うおわっ!!?」

 

 私とカイドウなら話は早い。カイドウがその場で立って、力を込めるように拳を握ったので、私はそのカイドウのお腹辺りを三叉槍で叩いてみる。

 衝撃波が出て、周囲の部下達が声をあげていたが──それよりも叩いた時点で“しまった”と気づいてしまう。そもそもだ。カイドウにこんな技を使わせても()()()()()()()

 

「槍を止めた……!?」

 

「ってことは成功か!!? さすがカイドウ様だ!!」

 

 部下達が成功したのかと喜ぶが、そうじゃない。そもそも成功しているかどうかも分からない。

 だってカイドウの場合──

 

「──忘れてた。そもそもカイドウ、()()()()()()()()()()()()()()意味ないじゃん」

 

「一々力を込めねェと鉄にも劣るってのか政府の犬共は……使えねェ……とんでもねェ雑魚の技だ」

 

「ね。よく考えたら力を込めないと駄目な時点でメチャクチャ弱いね。素でも刀とか銃弾くらい弾けないと。人間はそのくらい出来るんだし」

 

「いやいやいや……」

 

「え~~~~……」

 

「……とんでもないわね」

 

 鉄塊はとんでもない雑魚技だと私とカイドウが結論づけていると、部下達が絶句したり、口をあんぐりと開けて白目を剥いていた。ステューシーもなんか畏怖している様子。その反応にカイドウは頭に疑問符を浮かべていた。──あれ? なにかやっちゃいました? って感じだ。──いやまあそもそもだ。

 

「というかこれも、“武装硬化”を覚えるための技っぽい気が……ぶっちゃけ覇気で防御すればいらない気も……」

 

「……一応、覇気と六式を組み合わせればより強くなるけれど……」

 

「力を込めて受けるってことは、要は受ける気で受ければいいってだけじゃねェか。そんなもん、一々技にする必要あんのか?」

 

「……普通の人間には必要なんじゃないかしら」

 

「──おれもぬえも普通の人間だ。あのムカつくニューゲートやリンリンの奴も力なんざ込めなくても鉄より硬ェ」

 

「…………そうね」

 

 ──あっ、ステューシーが諦めた。うーん、気持ちは分からなくもないけど、獣だの怪物だの化け物だと言われようが皆人間だよ? 人間は鍛えれば鉄より硬くなれる。つまり……なるほど! つまり鉄塊はいずれ素の状態でもそれくらいに肉体を鍛えるための技ってことだ! 最初は力を込めないと無理だけど、続けていれば皆鉄より硬くなれるっていう人間の可能性の証明が出来る技でもある。素晴らしい。やっぱフィジカルが1番重要。人間って凄い。やっぱり人間も獣の一種なんだね! 私はそう納得すると、最後の技も一応試しておく。

 

「それじゃ最後は“指銃”。ふふふ、これはやってみたかったんだよね~♪ 人体を撃ち抜くのに弾丸なんていらない! 至言だね!」

 

「おおう……急にノリノリになったな、ぬえさん」

 

「……念の為、全員ぬえさんから離れてろ……」

 

「……ぬえ? やるならこっちの建物の壁を使って。この建物の直線先は全部廃屋で島の外まで続いてるから」

 

「? いいよ~♪」

 

 私が指銃をやってみようと浮かれていると、クイーンがさっと離れていき、キングも部下達に離れるように言い、ステューシーが実験に使う場所を指定してきた。なんとなく、何を心配しているのか分かるけど、心配性だなぁ、皆。指銃なんてちょっと穴を空けるだけだし、無駄な破壊なんてしない。だからそんなに防災をしっかりしなくてもいいのになぁ。

 

「えーっと、指先に力を集中させて、弾丸のような速さで……」

 

 指先に力を集約……それで弾丸のような速さ……まあ普通に拳を振る感じでやればいいから……こんな感じかな? 

 

「よーし!! 行くよ──“指銃”!!」

 

「!!!」

 

 私は建物の壁に向かって人差し指を思い切り、突き刺すような形でぶつける。すると建物の壁に指が刺さるというか、貫く感触を得た。──成功かな? と、私が内心喜び始めていると、

 

「──あれ?」

 

 私は首をかしげる。建物を貫く──それだけで済むと思ったんだけど……私が指銃を撃ったその先の建物が何棟も、次々に壊れていった。

 

 

 

 

 

 ──“新世界”。とある島の海上。

 

「よーし、船を島につけろ!! そのまま──ウッ!!?」

 

「な、なんだァ!!? 風圧が来て──って、撃たれてんじゃねェか!!?」

 

「どこかに狙撃手(スナイパー)でもいやがるのか!? くそっ、なんて島だここは!!」

 

 

 

 

 

 部下達もそれを見て瞠目し、恐怖していた。皆が震え声で呟く。

 

「銃っていうか大砲……?」

 

「案の定いっぱい壊れたな……」

 

「た、ただの指銃だろ……? なんであんな──」

 

 私はその言葉を耳にしながら、ようやく自分のやったことに気づく。人差し指……よく見ると、力を集約し過ぎて武装硬化……覇気を全力で込めてしまっており、

 

「……あっ、ごめーん♡ うっかり覇気込めちゃった♡」

 

「え~~~~~~!!?」

 

「きっと身体能力と覇気でゴリ押したのね……」

 

「だからあんなに無駄な破壊が……」

 

 部下達が私の謝罪に驚く中、ステューシーとキングが解説してくれる。うん、間違った。覇気は使わないつもりだったのに、気合い入れすぎて全力で覇気込めてしまった。……いやだってしょうがないじゃん!! 指銃撃って遊びたかったんだもん!! そこらの人に向かって遊びで“指銃”!って撃ち込んで、それを鉄塊で受け止めるみたいな遊び、六式を知るなら誰だってやった筈だ。なのでその憧れをちょっと叶えようと気合を入れてみたのだ。うん──でもまあ出来たし、破壊も問題ないからいいよね! 別に壊しても良い場所だってことだし! 

 

「ウォロロロ!! 面白そうじゃねェか!! ならおれも──」

 

「い、いや待ってくれカイドウさん!! そっちの方向は復興中の街がある!!」

 

「えっと……せめてこっちの壁にやってくれる?」

 

「おう、そうか。なら行くぞ、ぬえよりももっと破壊力を出してやる……!! オオオオオオオ!!! “指銃“!!!」

 

「!!!」

 

「うあああ~~~!!? また建物が崩れた~~~!!?」

 

 

 

 

 

 ──“新世界”、とある島の海上。

 

「クソ……どこにいやがる!!? おれ達の仲間をぎゃあああああああ!!?」

 

「うぎゃあ~~~~~~!!? 今度は大砲かァ~~~~!!?」

 

「た、大砲にしては威力が高すぎる……!!」

 

 ──この日、人知れずとある海賊団が島の近海で船を沈められて壊滅した。

 

 

 

 

 

「うわぁ……って、カイドウ? それ、ただの全力パンチになってない?」

 

「一応力は込めたし、指で撃った。これが“指銃”だな……だが確かに普通のパンチと変わらねェじゃねェか。これも使えねェな」

 

「いやいや、まだそれは分かんないでしょ。──ってことで! まとめると、こんな感じで色々と使える体技だから皆で覇気と合わせて覚えてみよっか!! 鍛えれば鍛えるほどに身体能力が強化される動物系とは相性が良いから、将来的にも役に立つし、頑張ってね!!」

 

「お、おう……」

 

「……まあ使えることは証明されたが……」

 

「……六式って多分、そういうのじゃないと思うわ」

 

 皆が何故かげんなりしているが、まあ、六式は覚えて損がないことは確かだ。特に部下達の強化には使える。六式が使えなかったとしても、その身体強化の訓練は使えるし、身になる。覇気の習得にも身体能力の強化は無駄にならないし、動物系の悪魔の実を食べれば更に強化される。今カイドウが私以上の破壊を生み出したみたいに、とんでもない力になる。──ま、カイドウと私のこれは成功してるかどうか微妙だけどね! 身体能力に任せてやってる感ありありだし! 

 

「それじゃあ説明も終わったところで本格的に訓練始めるよー!」

 

「……やべェな……こりゃあ……」

 

「ああ……だがよく考えてみると……普段の訓練に比べたらマシじゃねェか……?」

 

「!! そうだ……!! カイドウ様やぬえ様に襲いかかられるあの訓練に比べたら、ちゃんとした訓練メニューがあるだけマシ──」

 

「──ということで、私とカイドウが手加減してぶん殴るから力を込めて受け止めるか、頑張って避けてみてね!!」

 

『って、いつもと変わらねェ~~~~~!!?』

 

「やべェ、来るぞ!! 逃げろ!!」

 

「クイーン様!! 助けてください!!」

 

「……助けてェが、お前達が強くなるためだ。おれは心を鬼にしてお前達を送り出すぜ……じゃあな!!」

 

「って、カッコつけながら逃げ出したァ~~~~!!?」

 

「待ってくださいクイーン様!!」

 

「おいクイーンてめェ!! あんまり遠くに逃げると街に被害が出るだろうが!! やめろ!!」

 

「大変ね、あなた達……」

 

「あァ!!? 言っとくがてめェもそこにいたら巻き込まれるからな!! どうなってもおれは知らねェぞ!!」

 

「何言って──っ!!?」

 

 部下達を追いかけ回して攻撃──しようとしたら、間違ってステューシーの方に攻撃がいってしまう。ステューシーはそれを何とか察知して躱してみせた。おー、さすがCP0。いやまだCP0とは限らないけど六式使い。咄嗟とはいえ中々の動きだ。

 

「あ、間違えちゃった。ごめんねステューシー。──あ、でもせっかくだから一緒に訓練しよ! 裏社会で生き残るには実力も必要だしね!!」

 

「遠慮してもいいかしら……!?」

 

「ふふふ~♡ だーめ♡ ほらほら、手加減してあげるから頑張って避けてね~♡」

 

「っ……!!」

 

 ──あっ、ステューシーが逃げた。しかし速いとも言い切れないし、遅いとも言い切れない絶妙な速さで。多分、言い訳が利くようにしてるのだろう。剃とか月歩も使えるんだろうけど、使っちゃったら怪しまれるし、あんまり身体能力が高すぎると怪しい。でも逃げたいから、最低限の速さは維持するという、ステューシーの葛藤が垣間見える。ふふふ、健気で可愛いねステューシー♡ そんないじらしいことされると、もっと弄り倒したくなるけど♡

 

「いぇ~い♪ 逃げろ逃げろ~!! 制限時間は私とカイドウの気が済むまで!! 最後まで生き残ったらご褒美あげるし、生き残らなくても治療と宴会はちゃんと行うから安心していいよ~!!」

 

「逃げてんじゃねェ野郎共!!! おれの攻撃を受け止めてみろ!!! 逃げる奴は殺すぞ!!!」

 

「え~~~~~~!!? もうメチャクチャだ~~~~!!!?」

 

 百獣海賊団の楽しい訓練はしばらく続いた。──ちなみに、死んだのは運が悪かった数人程度なので、中々良い感じの訓練だったと思う。私とカイドウも手加減が上手くなったね!! そしてステューシーは今日、訓練後の宴会で初めて酒に酔っていた。ステューシーも中々ウチに馴染んできたようで何よりだ。




皆大好き六式。二次創作でお決まりの六式でした。しかし習得に成功しているかは微妙なところです。
次回はまた復興を終えて、色々活動します。そろそろ懐かしい人とも再会するかもしれません。

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