正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

47 / 176
ビッグ・マム海賊団

 新世界に根付く海賊は島を奪い、ナワバリを広げていくのが主な目的だ。

 勿論、記録指針(ログポース)を使って島から島へ移動し、冒険をする海賊もいるが、多くの海賊は新世界のどこかの島をアジトにして、その海域を自分達の領海として支配している。

 海賊同士の戦いが古くより、命も含めた奪い合いであるように、この海では自分達のシマを奪い合い、自分達の海賊旗を多くの島に掲げ、大規模なシノギによって金と物資を稼ぎ、組織を大きくしていく。

 戦いに勝利し、シマを奪えば名声は高まり、より富んでいく。そうして力を得ていくのだ。

 新世界はそういった海賊達が牛耳る裏社会──彼らの力が強い海であり、世界政府加盟国でさえ、海賊の旗印を掲げて、金や物資の代わりに島を守ってもらうような、二重支配の構造も珍しくはない。海軍本部でさえ一勢力に過ぎない海だ。王道の海賊……ロジャーや白ひげを代表にするような海賊団もいるが、そういった者達は少数で、確かな力がなければ成り立たない。あの白ひげでさえ少ないが自分のシマを持っている。シマを持たずに大海賊と呼ばれる者はロジャーを始めに数えるほどしかいない。

 故に新世界で勢力を広げるために、シマを守りながらナワバリを広げる活動が大事となる。──だからこそ、私達は片っ端から暴れるのだ。

 

「イェーイ!! この島も私達、百獣海賊団の物~~~!!」

 

「ウォロロロ!! もっとだ!! もっとナワバリを広げるぞ!!」

 

「ヒャッハ~~~~~!!!」

 

 私達は新世界のまだ誰の物にもなってない島に自分達の旗を掲げていく。

 当然、拒否すれば頷くまで暴れる。そして誰のシマであっても戦って奪い取るのだ。

 

「ふ、ふざけやがって……お前ら、この旗が誰の旗か分かってんのか……!? 大海賊……“ビッグ・マム”、シャーロット・リンリンの旗だぞ……!? それに手出せば、お前ら全員──ブ!!?」

 

 今しがた打ち倒してやった海賊達が負け惜しみのようにこちらを見上げ、自分達の旗を脅しに使う。だがそれを、カイドウは金棒でそいつの頭をかち割ることで黙らせた。

 それも当然。私達が、そんな旗程度でビビって芋引く訳がないのだ。

 

「リンリンの奴の旗だから何だってんだ!!! おれが誰だかわかってんのかァ!!?」

 

「今は酔ってるから話は通じないよ!! 怒らせないように気をつけてね!! ──もう遅いみたいだけど!!」

 

「バカヤロウ!! 酔っちゃいねェ!! ヒック」

 

 燃える島とリンリンの旗印を背後にカイドウは明らかに酔った様子で応答する。まあいつものことだし、敵と戦う時なら酔っていても問題ない。どうせ本物の強敵相手ならそのうち醒める。──まあ醒めてないのでこいつらは雑魚ってことだ。

 

「い、イカれてやがる……お前ら正気か!!?」

 

「ん~~~? なんて~~~?」

 

「っ、やめ──ぎゃあああ~~~~っ!!!」

 

「あはは、ナイス悲鳴~~~♪ ほらほら、私のこと可愛いって言ったらやめてあげるよ? ほら、ほらぁ♡」

 

「……!! いっ、ぎゃっ、が、がばっ、びっ、がぐあァ……!!」

 

「んー、これくらいの拷問で喋れないなんて根性なってないなぁ……それじゃ、次は別の子にしよっかな~?」

 

 私は海賊に突き刺しまくっていた三叉槍を抜き取って別の相手に向ける。すると露骨に私を恐れ、近くの海賊が必死に言った。

 

「わ、わかった!! 何でも話す!! だから命だけは助けてくれ!!」

 

「え~~~……やだ。話してくれたら苦しめず殺す、話さなかったら拷問してから殺す──だったら良いけどね♡」

 

「っ……!! そんなの、話にならね──ぐ、ぎゃああっ!!?」

 

「おっけ~♪ 別にあなたじゃなくてもいいし、あなたは拷問行き~。──キング! パース!!」

 

「──ああ」

 

 私は槍で突き刺した海賊をそのまま振って近くで火炙りなどの拷問をしていたキングにパスする。キングは海賊を受け取ると、そのまま鎖に繋いで部下達に指示しながらも自身も拷問を始めた。

 そしてその近くには、同じ様に部下に指示しながら敵の海賊相手に実験を行っているクイーンの姿があり、

 

「しっかし、シマを守ってる奴等がこんだけ弱ェとはな!! ビッグ・マム海賊団も層が薄いんじゃねェか?」

 

「他人事じゃねェぞ、クイーン。おれ達も、そろそろシマを任せられるような部下を作らねェとならねェ……」

 

「つっても後は数だろう! そこそこの能力者は増えた。足りねェのは何より部下の数だ! こいつらみてェな雑魚共でも足止めにはなるしな! ムハハ!」

 

()()()()はまだまだ弱ェし使えねェ……もっとも、この雑魚共よりは使えるがな。ビッグ・マムも不憫なもんだ……」

 

 キングとクイーンがそれぞれ相手を拷問しながら、最近出来たウチの新しい戦力について話題にする。まあ確かに、あの子達はまだまだ能力者になったばかりだし、もっと鍛えて、戦闘経験を積ませないとね。後、指揮能力は……まあそれはまた別の子に任せるかなぁ……それと部下の数はクイーンが言うようにまだまだ少ないのでもっと増やさないと。シマを増やしてもそれを守るだけの戦力にはまだまだ足りない。スカウトはちゃんとしないとね。──こういう雑魚でも、使いようはあるんだし。

 

「ハァ……ゲホッ……ハァ……ウヂはママだけじゃねェぞ……!!」

 

「あァ?」

 

 喉が焼けてしまっているせいか、くぐもった声で海賊が言う。何を言うのかと皆でそちらに視線を向けると、その海賊は死にかけになりながらも声を絞り出して、

 

「ママの……息子も……最近は恐ろしいほどに強くなっでる……!! でめェらなんが、すぐに殺されちまうだろうよ……!! いや、行って殺されてこい……!!」

 

「……ふーん? それは楽しみだねぇ♡」

 

「リンリンのガキ共が……? あんな雑魚共が強ェとか……冗談言ってんじゃねェぞ!!」

 

「っ……!!」

 

 私はその言葉に純粋に楽しみになるが、カイドウはそんな訳ないだろと相手を威圧する。

 だがそんな時だ。今日の新聞を拾ってチェックしていたキングがこちらにそれを差し出し、

 

「冗談……という訳でもねェみたいだな」

 

「あァ? こいつは……」

 

「! へぇ……?」

 

 私達はその新聞と、それに挟まっていた手配書を確認した。

 そこに映っていたのは、私達が見知った者の、口元を隠した姿であり……私は思わず笑みを浮かべてしまいながら、リンリンの部下から聞き出した次のナワバリを破壊しようと島を出た。

 

 

 

 

 

 ──新世界、とある島の海域。

 

 そこは“わたアメ雪”という食べられる珍しい雪が空からふわふわと落ちてくる海域。

 しかしその島だけではない。とある島を中心としたその海域は食べ物に関連する気候や現象が起きる新世界の中でも特異な一帯である。

 だがしかし──その甘い匂いに釣られてその島の海域に足を踏み入れたが最後、待っているのは地獄の鬼も裸足で逃げ出す……最悪の家族達だ。

 

「や、やめろ!! 頼む!! 家に帰してくれ!!」

 

「ナワバリだなんて知らなかったんだ!! もう二度と入らねェから頼むよ!! なァ!!」

 

「フフフ……ナワバリを踏み荒らしておいて、知らなかったで済むと思うか? キャンディより甘い奴等だ──ペロリン♪」

 

「う、グボボッ……!! ガッ……ア゛……!!」

 

「な、なんだこりゃ!!? 飴!?」

 

 その海域がナワバリだと知らずに入ってきた新顔の海賊達は、あっさりとその者達に蹴散らされ、縄で縛られ責め苦を受けている。

 責め苦を与える彼らの年代はそれぞれ違った。まだ若いがようやく大人とも言える年齢の者達から、小さい子供まで、数十人の子供達がその船に乗っている。

 シルクハットを被り、長いステッキを持った舌の長い男は、甘い棒付きキャンディを舐めながら、海賊達を能力で殺してみせる。

 周囲にもそういった者達はいた。同じ様に、ナワバリを踏み荒らした海賊達を次々と殺していく。一回りも二回りも年齢は違うが、この強者の海に年齢などは些末な問題だった。

 

「ったく、ママに逆らうとは愚かな奴等だ……!!」

 

「全くだ!! 対処しなきゃならねェおれ達の身にもなれ!!」

 

 スペードマークの様な髪型の男や、坊主頭の男も次々に相手を始末していく。前者は相手を焼き殺し、後者は身体から何かモヤ状の何かを召喚し、それに相手を殺させていた。

 凶悪な強さと能力を持ち、見た目もそれぞれ違う彼らは、しかしある共通点がある。

 それは……全員が、血の繋がった実の家族、兄弟だということだ。

 

「やっちゃえお兄ちゃん!」

 

「兄貴達すげー!!」

 

 小さい女の子に男の子。多種多様な種族の血を半分持っている彼らは皆一様に海賊として立派に活躍する兄や姉達を尊敬している。

 そしてそんな中、特に尊敬を集める1人の青年がいた。

 

「──“加々身(かがみ)モチ”!!」

 

「ぐ、あぶっ、やべ──」

 

「いぎが──ァ……!!」

 

 それは身長2メートルに届こうかというあずき色の髪色を持つ男だった。

 右手に三叉槍を持ち、左手から生み出し、伸ばした白い何かで相手を押し潰し、相手を窒息死させているクールで冷酷な印象を抱かせる男。

 その口元はファーで覆い隠され、左腕に髑髏の刺青を入れた彼は、このビッグ・マム海賊団を構成するシャーロット家の子供達の中で、最高傑作と称される無敗で完璧な男。

 

「カタクリ兄ちゃ~ん!!」

 

「すげェ!! さすがカタクリ兄さんだ!!」

 

「まさに超人! おれもいつか、カタクリ兄さん程とは言わねェが、あんな風に……!!」

 

「……よせお前達……」

 

 弟や妹達に称えられ、しかしそれを謙虚に受け止め、誇ろうともしない気高い人間であり、その強さは政府にも知れ渡り、既に億超えの賞金を懸けられている海賊。

 

 ──ビッグ・マム海賊団戦闘員、シャーロット家次男、“シャーロット・カタクリ”。懸賞金2億7200万ベリー。

 

「……誰も怪我はないな?」

 

「当然だよお兄ちゃん!! カタクリお兄ちゃんやペロスペロー兄さんが守ってくれたからね!!」

 

「そうか」

 

 家族の怪我がないことを確認したカタクリは軽く息を入れると槍についた血を払い、食事中の母親に報告をした。

 

「──ママ。始末は終わった。これから後処理に移る」

 

『ハ~ハハハマママママ……そうかい。ご苦労だね~~カタクリ♡ お前は本当に優秀で良い子だよ♡』

 

 電伝虫の向こう側から上機嫌にそう答えたのは当然、カタクリを始めとするこの場の子供達の母親。

 この海域を支配する大海賊──”ビッグ・マム”、シャーロット・リンリンだ。

 現在リンリンは島の中心で食事を摂っており、ゆっくりと寛いでいる最中である。優秀な子供達に経験を積ませがてら、海賊達の始末を任せていたのだ。

 その責任者がカタクリであり、彼は兄弟姉妹を連れて完璧にその任務をこなしてみせた。

 そしてまた、多くの家族、船員達から尊敬を集めた。

 だがカタクリはそれらを涼しく、いつものことだ、と受け止め、報告を終えて任務の後処理に移ろうとする。──そんな時だ。下の弟、妹達が空を見上げて、

 

「──あ、見て見て!! すごーい!! あれ、UFOじゃない!?」

 

「あ、ホントだ!! UFOだUFO!! 兄ちゃん達も見て!!」

 

「!! ──何……!?」

 

「何だと!?」

 

「ゆ、UFO……!? 見間違いじゃないのか……!?」

 

 ──空にUFOが浮かんでいると指差し、きゃっきゃと騒がしく声をあげた。

 それに対し起こった反応は大きく分けて2つ。

 1つは同じ様に空を見上げて、その虹色のUFOを見つけて同じ様に喜び、騒ぐ者。

 そしてもう1つは……UFOという言葉を聞いて、そして確認して、明らかに狼狽えたり、あるいは顔を青褪めさせる者達だ。

 そして共通点もある。前者は兄弟達の中でも下の子達ばかり。

 逆に後者は、上の兄や姉達ばかりだった。

 故に下の子達は訝しみ、頭に疑問符を浮かべる。

 

「……? なんで兄ちゃん達はそんなに怖がってるの?」

 

「そうだよ!! せっかくUFO見つけたんだから捕まえようよ!!」

 

「! ──待て!! 近づくんじゃない!!」

 

「えっ……?」

 

 と、UFOを見てはしゃぎ、UFOに少しでも近づこうとする子達に、カタクリは強い声で注意した。そして何故そんな慌てた様子で注意したのか分からない下の子達を無視して、そのUFOに嫌な予感しかしない歳の近い兄弟達に話しかける。

 

「……ペロス兄……あれは……」

 

「あ、ああ……嫌な予感しかしねェ……マジでそうだったら……」

 

「い、いやそうじゃないかもしれねェだろカタクリ! ペロス兄!!」

 

「そうだ!! あれはきっと、ただの偶然通りがかっただけのUFOだ……そうに違いねェ……!!」

 

「UFO怖い……UFO怖い……」

 

 先程まで年上の海賊達相手に容赦のない戦いっぷりを見せて惨殺した兄や姉達が明らかにUFOを恐れている。中には、陰に隠れてぶつぶつと耳と目を塞いでる者もいた。

 そしてそんな様子を、電伝虫越しにも感じ取ったのか、リンリンが眉根を寄せる。

 

『……? 何かあったのかい?』

 

「……いや……まだ何とも言えないが、おそらく気のせ──」

 

「──気のせいじゃないんだよね~♡」

 

「っ……!!? お前達離れろ!! ぐっ……!!」

 

「カタクリ兄さん!!?」

 

 何も行動を起こさないUFOに、気のせいだと思いたかったカタクリだが、その懐かしい声を聞いてすぐに弟や妹達を遠ざけ、自身は吹き飛ばされる。

 カタクリという誰もが尊敬する完璧な兄が吹き飛ぶところを見た下の子達は驚愕する。──だが、上の兄弟達は一様に表情を一変させた。

 

「ああ、やっぱりだ……!!」

 

「とうとう出やがったな……!!」

 

「怯むな……あの頃のおれ達とは違う……!!」

 

 ペロスペローにダイフク、オーブン等といった彼女を知る者達が、顔を青褪めさせながらもなんとか気持ちを保って戦闘態勢を取る。

 そんな中、カタクリが見上げる先、UFOに腰掛ける少女はカラカラと楽しそうに笑い、見知った少年少女達の成長を喜んでいた。

 

「あはは~♪ 皆大きくなったねぇ~? ちょっとは強くなったかな~~~?」

 

「っ……お前も、相変わらずみたいだな……!!」

 

 カタクリは既に槍を構え、姿勢を低くして最大限に警戒していた。カタクリよりも背の低い少女相手に警戒するその姿は異様でもあり、カタクリを尊敬する弟、妹たちは困惑する。

 そして、彼女を知らない小さい子が1人、問いかけた。その名を、

 

「一体誰なんだよあいつ!!? あんなに小さいのにカタクリ兄さんを吹っ飛ばすなんて!!」

 

「……小さいからって甘く見るな……!! あいつは、封獣ぬえ……百獣海賊団の副船長だ……!!」

 

「!!」

 

 カタクリがその名を告げる。そして他の兄弟達も息を呑んだ。──昔を知る者は、昔と全く姿形の変わっていないぬえに対して。知らない者は、その得体の知れないぬえという少女に対して、気味の悪さを感じる。

 だがぬえはその恐れを心地よく受け止め、UFOの上で頬杖をつきながら告げる。彼らを楽しそうに見下ろし、

 

「あはは、でもそれだけじゃないよ? 私は──」

 

「そうだ。こいつはかつて──」

 

 カタクリが、自分や上の兄弟達が知る情報を下の子達に教えようと口を開く。ぬえも同じことを言おうとしていた。……そう、このぬえという少女はかつて──

 

「──カタクリの初恋のお姉ちゃんよ!!」

 

『え~~~~~!!?』

 

「──違う!!!」

 

 カタクリは冷静さをかなぐり捨てて全力でツッコんだ。──自分の名誉のために。

 

 

 

 

 

 私はUFOの上から懐かしい顔ぶれの変化を楽しみながら、彼らをからかうことにした。先に偵察に来たが、戦りあうまでもうちょっと時間はある。なのでカタクリや他の子達……特に自分を知らない者達にも聞かせるように。

 

「またまた~、恥ずかしがっちゃって♡ 正直に白状しなさいよ」

 

「そんな訳があるか!!! 弟や妹達に嘘を教えるんじゃない!!!」

 

「え、嘘?」

 

「ああ、嘘なんだ……そりゃそうだよね……」

 

「……でもカタクリ兄ちゃん、聞いたこともないような大声で話してる……凄い慌ててるし……」

 

 あら、弟や妹達がカタクリの言う真実を信じそうになっちゃってる。若干怪しんでるのもいるけど。しかしこれだと面白くないので、私はもっとからかってやることにした。手元の三叉槍を見せつけて、

 

「ん~~~? カタクリってば、昔は武器なんて持ってなかったのに、私と別れてから急に私と同じ武器使い始めちゃうくらいだもんね~? そんなに初恋のお姉ちゃんと同じ武器を使いたかったなんて、可愛いとこあるわね♡ ねぇカタクリぃ~~?」

 

「違う!! それは偶然だ!! ただ使いやすいのがこれだっただけで──」

 

「はっ……確かに同じ武器……!!?」

 

「まさか……カタクリ兄ちゃん、本当に……?」

 

「……確かに、独立してから急に武器使い始めたな……ま、まさか……!」

 

「カタクリお前……そんな趣味があったのか……」

 

「……マジだったのかよ……」

 

「信じるな!!! オーブンにダイフク!! ペロス兄まで!!」

 

『──ママママ……そうだったのか、カタクリ』

 

「ママまで!!?」

 

 眼下ではカタクリが半ば信じそうになっている弟や妹達、果ては私を知るはずの兄弟やリンリンにまでツッコミを入れて全力で否定しようとしていた。うんうん、カタクリは相変わらずからかい甲斐があって何よりだ。

 

「クソッ……!! いい加減にしろ、ぬえ!! おれを虐めてそんなに楽しいか……!!?」

 

「──え? 楽しいけど?」

 

「くっ……そうだった……お前はそういう奴だった……!!」

 

 カタクリが頭を抱えている。どうやら私の性格を忘れていたみたいだ。可哀想に。あんなに汗を掻いて……すっごい面白いね!! 

 

『……マママ……それにしても久し振りだねェ、ぬえェ……?』

 

「! ええ、お久しぶり、リンリン」

 

 そうやってもっとカタクリや他の子達をからかってやろうと思っていたが、途中で電伝虫からリンリンが話しかけてきたので、そちらの応答をする。電伝虫越しでも分かる威圧感。化け物ババアのおでましだ。

 リンリンは楽しそうに、しかし恐ろしい魔女のような含みを持たせて声を送ってくる。今更そんなのにビビる私じゃないけど、この圧は懐かしくて笑みが漏れ出てしまうな、と思いながらその声を聞いた。

 

『何年振りだい? お前がここにいるってことは、カイドウの奴も近くにいるんだろうね?』

 

「う~ん? それはどうか──」

 

「──久し振りだな、リンリン……!!!」

 

「ああっ!? まだ出ちゃ駄目って言ったのに!!」

 

「!!? カイドウまで……!!」

 

 私はそれをすっとぼけようとしたが、我慢出来ずにカイドウが空から声を発してしまった。──あーあ。せっかくサプライズで奇襲してあげようと思ったのに。これならもう意味ないね。ってことで私は能力を解除しておく。

 すると空にカイドウ。そして島の沿岸部に船が見えて、シャーロット家の子供達は指差し声を上げた。

 

「な、なによあの化け物……!!?」

 

「あ、あっちには船まで……!!」

 

「どうなってんだ……!!?」

 

 空を覆い尽くすほどの龍となったカイドウに怯え、私達、百獣海賊団の船にも驚く子供達の反応に私は満足する。脅かしは大成功だ。──まあリンリンなんかは当然、ビビる訳ないんだけども。

 

『カイドウ……!! マママママ……そんなに大勢で、おれに何か用でもあるってのか?』

 

「てめェへの用なんざ何もねェよ……!! ただ殺しに来ただけだ……!!」

 

『ハ~ハハハマママママ……!! そうかい……!! だがおれの方は用があるねェ……!!』

 

 リンリンとカイドウが何年振りかになる会話を行う。相変わらずカイドウの方は剣呑としていたが、リンリンの方はそれを余裕を持って受け流し、用事があると告げた。ん? なんだろう──と思っていると、

 

『カイドウにぬえ……そしてお前達の海賊団丸ごと、ウチに入りな……!!』

 

「あァ!!? 何だと!!?」

 

 その用事は“勧誘”だった。あー、うん。まあそういうこと言うよね、リンリンなら。シキ程じゃないけど、リンリンもそういうところあるし。

 なので私は特に驚くこともなかったが、さすがに次の発言にはちょっと目を丸くした。それは、

 

『ウチは入る時に誰かと婚姻関係を結ぶことになってる……!! だからぬえ、お前適当に()()()()()()()()()()()()()!!』

 

「え?」

 

「なァ!!? ママ、何言ってやがんだよおい!!!」

 

 ──何を言うかと思えば、まさかの結婚しろ発言。あー……でもリンリンならそうなるのか……って、ペロスペローのその反応は何? なんか失礼な匂いを感じる。他の子達……特に男兄弟達が絶句していた。

 だがリンリンはそんな反応を知る由もなく──もしくは無視して、電伝虫越しに驚きの声を上げたペロスペローに笑みを向け、

 

『ママママ……なんだいペロスペロー。そんなに慌てて……お前が結婚したいのかい?』

 

「ウッ……い、いやそういうことじゃねェママ……そうだ、結婚するなら弟達がいい。まだ若いが、先に身を固めておくのも悪くねェだろう……」

 

「はァ!!? ペロス兄!! 幾ら長兄だからってその発言は許さねェぞ!!」

 

「そうだ!! おれ達に押し付けるな!! 押し付けるなら……そうだ、カタクリにしよう!! なんてったって初恋のお姉ちゃんだもんな!!」

 

「!!? ダイフクてめェ!!! その発言は幾ら家族でも許さねェ……!!」

 

「おいやめろカタクリ!!? 実の弟を殴るな!! そんなに嫌なのか!? だったら……そうだ、婚約関係ってことにしよう。それならまだ幼い子でも問題ない。──ということでクラッカー。お前、ぬえに懐いてただろう。だから婚約するがいい……ペロリン♪」

 

「な、なァ!!? じょ、冗談じゃねェよ!! 懐いてねェし、おれは嫌だぜ!! ……そうだ、オペラの兄貴が良い!! この間可愛い娘と結婚したいとかしたくないとか言ってたぜ!?」

 

「ファッ!? クラッカー貴様!! 兄を売るとはいい度胸だファ!! ──そうだ、じゃんけんで決めるファ!! 誰が負けても恨みっこなしだファ!!」

 

「バカ言え!! それなら見聞色が使えるカタクリの一人勝ちじゃねェか!! ここは……多数決だ!! おれ達で多数決にしよう!! おれはカタクリに一票だ!!」

 

「裏切ったなオーブン……!!! いいだろう……なら実力行使だ……!! たまには上下関係を分からせてやらねェとな……!!」

 

「お、おい!! 弟はともかく、兄に手を上げるなんて無礼だぞカタクリ!!」

 

「──あんた達全員失礼よ!!!」

 

『うぎゃあああっ!!?』

 

 私は結婚のことで喧嘩を続けるシャーロット家の男兄弟達に、空から思い切り殴り掛かり、全員の頭を腫れさせてやる。失礼すぎる。そりゃ結婚する気なんてないけど、ここまで断るなんて失礼だ。むしろ、こんなに可愛いんだから取り合いにならないとおかしい。こいつらはおかしい。美的感覚が狂っているのだろう。可哀想に。

 ──私は怒りを発散し、やや間をおいて、気を取り直すと、

 

「こんなに可愛い私に失礼なことして……ウチのクルーが黙ってないわよ?」

 

『ずみません……』

 

「……おいキング。おれ達、出る幕ねェんじゃねェか? アレ、完全に牙折れてるぞ……」

 

「フン……あれくらいじゃ苦労してるとは言えねェな……」

 

「そこ張り合うとこじゃねェだろ!!?」

 

 そうこうしている間に百獣海賊団の船も島につける。キングとクイーンがちょっと騒いでいたが問題ない。

 そして躾が終わったところで、空にいるカイドウがリンリンやその子供達にも向かって、

 

「おいおめェら!! 勝手に話を進めてんじゃねェ!! 傘下入りなんて何の冗談だ!! 断る!!!」

 

『ハハハ……そうかい。なら戦りあうしかないねェ──カタクリ!!』

 

「! おれだ、ママ」

 

 カタクリが何故か嫌な予感を感じた様子で電伝虫に応答する。すると、リンリンは不敵な笑みを浮かべ、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()!!』

 

「っ……!! わかった……!!」

 

『──ということだカイドウ!! おめェ、ウチの子供達を殺したらタダじゃおかないからねェ!! 首を洗って待ってな!!』

 

「上等だ!!! さっさと来い!!! ぶっ殺してやる!!!」

 

 と、カタクリにそう命令し、カイドウにもそう啖呵を切り、その返答を受け取ってから受話器を切った。

 するとシャーロット家の子供達や船員も明らかに、歯噛みし、

 

「っ……嘘だろ……!! ママが来るまでこの化け物を抑えとけってのか……!?」

 

「……!! 怯むな!! 時間稼ぎに徹しろ!! ママが来ればこっちの勝ちだ!!」

 

 ペロスペローが長男として、子供達や海賊団のまとめ役として命令すると、カイドウは動き出す子供達を見て眉を立てた。彼らをゴミのように見下ろし、

 

「リンリンのガキ共が粋がりやがって……!!! おいおめェら!!! あんなガキ共、さっさと消しちまえ!!!」

 

「おおお!!!」

 

 百獣海賊団の凶暴な船員達が雄叫びをあげる。ウチのクルーは基本、荒っぽいので、戦闘になるとテンションが上がる血気盛んな連中だ。

 そして私も、三叉槍を構えて再び突撃していく──すると前方に同じ武器を持った相手が立ち塞がり、

 

「ぬえ……お前はおれが止める!!」

 

「あはははは!! 皆の成長振り、私が確かめてあげるね~♡」

 

 ──鋼が噛み合う音が鳴り響き、それを皮切りに、ビッグ・マム海賊団との戦いは始まった。




VSビッグ・マム海賊団。マムが来るまで持ち堪えるという、無双ゲーとかにありがちな感じです。海賊無双4やりたいなって。
次回はビッグ・マム海賊団との戦い。まあ勝てないなぁ……

感想、評価、良ければお待ちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。