正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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集う強者達

 ──空に浮かんでいた赤いUFOは残骸となり船の甲板に落ちた後、跡形もなく消えてしまっていた。

 

「こ、こえ~~~~!!? 何なんだよ今のUFO!!」

 

「攻撃してきたな……びっくりした」

 

 海賊見習いの2人、バギーとシャンクスが既に打ち落されて消えてしまったUFOに驚く。驚き方に差はあるが、UFOという未知の物体に不安を覚えているのはどちらも同じだった。

 だがそれを知る他の者達の感想は違う。誰もが戦闘準備を整えながら、水平線をそれぞれ見張る。

 

「! ──おいあれ……!!?」

 

「!! あれは……海王類と……やっぱりあいつか……!!」

 

 すると1人の船員が右舷側、遠くを指差して告げる。そこには確かに、空を飛んでこちらに向かってきている何かと、顔を出してきた海王類が遭遇しており、それを見たロジャーは思わず笑ってしまった。

 

「わはは!! そういや、初めて会った時もああやって海王類に襲われていたな!!」

 

「ああ……だがあれは10年以上前。今の実力だとやはり……」

 

「ああ──()()()()()()()

 

「!!」

 

 ロジャーの懐かしむような言葉にレイリーが頷き、ギャバンが沖合で起きた戦いの結果を見て呟く。そしてそれらの反応と、沖合で、海王類が倒されるところを見てしまったバギーとシャンクスは瞠目した。特にバギーが驚いて騒ぎ出し、

 

「か、海王類を一撃でェ!!? や、やべェ!! 何が来るってんだ!!?」

 

「マジで宇宙人が来んのかな……」

 

「アホかァ!!! バカシャンクス!! 呑気にそんなこと言ってる場合じゃねェだろ!! ど、どうする!? 今から友好の印として牛や羊でも渡すか!? ──って、そんなもんある訳ねェ!! どうしたらいいんだァ~~~~!!?」

 

「怖がりすぎだ。……というか目を背けていいのか? もう来るぞ? ほら見ろ」

 

「──へ? 来るって……」

 

 バギーがギャバンの言葉を聞いて背を向けていた身体を再び右舷側に戻す。すると、

 

「──ばあ♡」

 

「っ……!!!? ぎゃああああ~~~~~~~~~!!!? 出たァ~~~~~~~~~~~~!!!」

 

 目の前にいた少女の笑顔を見て、凄まじい勢いで後退り。涙目で大声を出してロジャーやレイリーの後ろに隠れる。

 そしてその反応を見てその少女は可笑しそうに笑い、

 

「あはははは!! 良い反応!! 脅かしがいがあるねぇ~♡」

 

「…………えっ? ……って、宇宙人でも何でもねェじゃねェかバッキャローめ!!!」

 

「だから違うって言っただろ……」

 

 ロジャー海賊団の船員がバギーの反応に軽く呆れながらツッコミを入れる。

 だがそんな中、やってきた少女に対し、ロジャーは不敵な笑みを濃くして、その少女の名前を呼んだ。

 

「よう()()!! 久し振りだな!!」

 

「ロジャー!! 久し振り!! 近くに来てるって聞いたから挨拶がてら殺しに来たよ!!」

 

「わはははは!! そうか!! なら相手してやらねェとな!! どうせお前の仲間や……あのカイドウも来るんだろう!?」

 

「勿論!! でも待ちきれないから先に来ちゃった♡ まずは私1人でお相手するよ!! ──“正体不明”……“恐怖の虹色UFO襲来”!!!」

 

「!! 出たなUFO!!」

 

 その少女──ぬえの言葉と共に、虹色のUFOが何機も出現し、空からロジャー海賊団を襲う。

 そしてぬえ自身も三叉槍を手にとると、覇気を込めてロジャーに向かって振り下ろした。

 

「!!!」

 

「っ……!!」

 

「うおっ!! 覇王色!!」

 

「うげ~~~~!!? なんだあいつ!! ロジャー船長と張り合ってるぞ!!? バケモンか!?」

 

「ああ……すげェな……!!」

 

「っ……何なんだあのガキ……!!?」

 

 甲板の上で、黒い雷のような衝撃波が駆け巡る。ロジャーのカトラスとぬえの三叉槍はお互いの覇王色、そして武装色の覇気をぶつけ合い、触れることなく鍔迫り合いを行った。

 だがそれは一瞬。船員達、バギーやシャンクスや目つきの悪い少年が驚いたのも束の間、ぬえは思い切り宙へと吹き飛ばされた。

 

「っ……あはははは!! やっぱ強い!! 強いねロジャー!!」

 

「わはは、そういうお前も強くなったな!! だが、まだおれの首を取るには足りねェぞ!!」

 

「──ならおれが首を取ってやる……ロジャー……!!!」

 

「! やっぱ来たか」

 

 ぬえが空へと吹き飛び、体勢を立て直している間に、空は突如として荒れ狂い始めていた。

 その曇天の中から突如として聞こえてきた声に、ロジャーは気配を感じ取って答える。またもう1人、かつての見習いがやってきたと。

 

「うおっ!!? なんだありゃ!!」

 

「でけェ~~~~~~~~~~~!!!? や、やめようロジャー船長!! あんな化け物相手にしちゃ身も船も保たねェよォ!!」

 

「っ……!!」

 

「うお……相変わらずデカいな……!!」

 

「カイドウか……」

 

 雲間に渦を作り、雷鳴を轟かせる。そしてその中から、現れたのは……巨大な龍だった。

 その姿で現れるだけで天を震わせ、大気を動かす。青い鱗を持つ長い身体の龍は、とある海賊だった。

 今や新世界でも恐れられる程の悪名高い海賊──百獣海賊団船長、“百獣”のカイドウ。懸賞金10億1110万ベリー。

 襲う者や場所を選ばず、たった1人でも島や国を滅ぼしてしまう天災の如き海賊。既に何度も敗北し、捕まり、拷問や死刑を受けているが、未だ身体も心も折れずに健在。

 そのカイドウを知らない者は驚き、恐れ、知る者は相変わらずの巨体を見上げて戦闘体勢を取る。この怪物相手に手加減は無用だった。

 そしてカイドウも、懐かしいロジャー海賊団を見下ろし、真っ向から突撃していく。その途中、兄弟分であり副船長のぬえも続き、

 

「ちょっとカイドウ!! 私が先に挨拶してくるから待っててって言ったじゃない!! なんで付いて来てるのよ!!」

 

「待ちきれねェのはおれも同じだ……!! お前だけにやらせてたまるか!!」

 

「もーしょうがないなぁ!! それじゃあ一緒にやるわよ!!」

 

「おお……!! 行くぞ……!!!」

 

「「くたばれロジャー!!!」」

 

 カイドウとぬえは声を揃えて、ロジャー海賊団の船の甲板に降り立った。

 

 

 

 

 

 カイドウと共に甲板に飛び降りると、私達は武器を手にロジャーやレイリーなどの幹部に向かって一直線。そりゃ当然、強い奴と戦いたいからね!! 

 

「来るぞ野郎共!! 戦闘だ!!」

 

『迎え撃て~~~~!!!』

 

「っ……まあそう簡単にやらせてはくれないよね!!」

 

「ウォロロロ!! 来やがれ!!!」

 

 だがやはり、敵の船だし、周囲には大勢の船員達。簡単には大将とやれないだろうが、これもまた楽しいものだ。

 しかし私が出したUFOの対処もしなければならないので、そこまで袋叩きには遭わない。UFOを放置するなら遠慮なく船を破壊するだけだ。

 

「さぁさぁ♡ 最初はだ~れ? 一緒に遊びましょ!!」

 

「戯れ言だ……!!」

 

「ん~? 知らない顔だねぇボク? んー……子供にしてはやりそうだけど、雑魚は相手にしてらんないなぁ」

 

「黙れ……!! おれは“最強”になる……!!」

 

 と、そんなことを言いながら突っ込んでくる浅黒い肌の凶暴そうな少年。ん~? もしかしてこの子……あいつかなぁ? 

 子供にしては強めって辺りで引っかかるし、見た目もどことなく面影がある。しかも最強とか言ってるし。ということはやはりそうなんだろうけど、だからといって手心を加える訳もない。私は突っ込んできたそいつを槍すら使わず手で蝿を払うように吹っ飛ばす。

 

「じゃま~」

 

「っ……!!?」

 

「バレット!! 大丈夫か!?」

 

 私がそんなパワーを持ってると思わなかったのだろう。あっさりとその男の子は吹き飛ぶ。──というかやっぱりダグラス・バレットだった。ガルツバーグの惨劇という国が一個滅びるヤバい事件を起こした後にロジャー海賊団に入った奴。確かガシャガシャの実の合体人間。……しかし今は子供にしては強いけど、私達が満足出来る程じゃない。

 しかしその言葉にカイドウは反応する。そりゃそうだよね。私としてはやれやれだけど、カイドウの前で最強なんて言うからだ。

 

「誰が最強になるだと……!? 小僧……!!!」

 

「っ……!! カハッ……!!」

 

「雑魚がいっちょ前に粋がってんじゃねェ!!!」

 

 おおっと!! ダグラス君吹っ飛んだ────!! カイドウの金棒の一撃。あっさりとバレットはKOされる。んー、気絶したかしてないか分からないけど、立ち上がっても私やカイドウには敵わないからなぁ。とはいえ、私達の部下が来る時には戦ってくれると助かるよね。ウチの船員の成長のためにも。ぶっちゃけロジャーと戦いたい理由の2割くらいはそういう理由もある。強敵と戦って極限状態を体験すれば強くなれるし、ウチの部下達も頑張って強くなってほしい。ロジャーは滅多に相手を殺さないというかとどめは刺さないし、やりあって生きていればそのまま生きていられる。そういう意味でも良い相手だ。

 まあだからといって舐めて掛かって良い相手ではないので部下にそれを言うこともないし、私達も本気で勝つ気でやるんだけどね。そろそろギャバンかレイリー辺りはボコしたい。いや、大分格上で無理ゲーだけど、だからこそ挑む価値があるのだ! 

 

「イェーイ!! レイリー!! 勝負ー!!」

 

「ほう……大分覇気もあがったな……!!」

 

「えへへ、そうでしょ!! 色んな相手と戦って強くなってるからね!! 現在進行系で!!」

 

 そう言ってレイリーに槍を打ち込み、レイリーが剣を払って防御。そのまま攻撃し、こちらも防御。くぅ、腕が軋む。やっぱり覇気の差が凄い。パワーには自信があるのに、押し込まれる。これで悪魔の実も食べてないただの人間だって言うんだからやっぱ怪物だ。“冥王”の名は伊達じゃないね!! 懸賞金も10億を超えたカイドウの倍以上はあるし!! 

 

「ウオオオオ!!!」

 

「わはは!! 以前とは比べ物にならねェパワーだな!!」

 

「うるせェ!! てめェを倒しておれが最強の海賊団の座を奪ってやる……!!」

 

「最高の海賊団だ!! まあ最強も間違っちゃいねェかもだが!!」

 

 そして向こうではカイドウがロジャーと得物と覇気をぶつけ合ってる。起こる覇王色の激突。衝撃波は恒例。しかし同じ覇王色、船長同士でも、あのカイドウが押し負けている。カイドウは怪物だけど、ロジャーと比べるとカイドウの方が人間でロジャーが怪物だ。まさに鬼。時折仲間を狙うUFOすら斬撃や銃で叩き落として庇っているのだから凄まじい。だがカイドウの方はそれを見て青筋を額に浮かばせ、

 

「っ……!! ロジャーてめェ……戦いの最中によそ見してんじゃねェ!!」

 

「嫌に決まってんだろう!! おれは殺し合いも好きだが、仲間の命だって大事だ!! 全員で生きて勝つ!! 生きてこその殺し合いだ!!」

 

「反吐が出る……!! そんだけ強ェのに甘ェ……救いようがねェバカだ……!!」

 

「わはは!! お前だって兄妹分のぬえがやられそうになったら助けるだろう!? それと同じだ!!」

 

「……バカ言ってんじゃねェ!! 戦いの最中だ!! 負けてどうなろうと弱ェ奴が悪い!!」

 

「……と、相方はそう言っているが、どう思ってるんだ……?」

 

「当然でしょ!! この世は弱肉強食!! 強いものは生き、弱いものは死ぬ!! それだけよ!! 負けたら誰のせいでもない、弱い自分のせいなんだからね!!」

 

 ロジャーとカイドウが信念と自らの矛をぶつけ合う。それを聞いてレイリーが剣を振るって問いかけてきたが、私も同じ答えを告げる。私の信念はカイドウと同じだ。この世で最も重要なのは強さ。力が何よりの正義だ。力がない奴は何も出来ない。無残に苦しみ死ぬだけ。強者は弱者を虐げ、好きに生きることが出来る。

 私達は最強の海賊団を作り上げて、この世を自分達の好きなようにメチャクチャにするのだ。他の奴らなんて知ったことじゃない。どうなろうと弱い奴らが悪いのだ。嫌なら強くなって私達を殺せばいいだけのこと。別にそれ自体を否定はしない。

 

「私的には、あなた達は愉快で嫌いじゃないけど……どっちかと言うと戦った方が楽しいのよね!! それで勝ってこの海をメチャクチャにしてやる!!」

 

「そうか……だがそれは聞けない願いだな……!!」

 

「っ……あはは!! 笑っちゃうくらい強いね……!!」

 

 レイリーの剣に再び吹き飛ばされる──が、これくらいじゃ倒れない。倒れる訳がない。海に落ちる前に空中ですぐに体勢を立て直す。

 

「まだまだぁ!! あはは、私達はこれくらいじゃ倒れないよ~!!」

 

「! 耐久力も随分と増してるな……!!」

 

「UFOも以前より硬ェぞ!! 油断するな!!」

 

「おお!! わかってらァ!!」

 

「く、来るならきやがれUFO──って、ホントに来たァ~~~~!!? やめろ!! こっちに来るな~~~!!」

 

「バギー!! っ、来いUFO!! おれが相手だ!!」

 

 あはは、他の船員達もやるねぇ! 私のUFOに船を襲わせれば、一隻くらい簡単に沈むのにさ。さっきから落とされまくってる。もう30機は落とされたかな? とはいえ、私がこうやって戦う限りは永遠にUFOを出し続けてあげるけど。昔みたいに何機しか出せないとかせせこましいことはない。力があれば幾らでも出せる。まあ上限はあるかもしれないけど、100を超えてからは数えてないし、どんどん潰されるから上限なんてないようなものだね! 

 それにしてもあの見習い……バギーはとっても反応が良くて見てて楽しい。脅かしがいがあるから敢えてUFOを3機程向かわせる。すると麦わら帽子を被った赤髪の少年、シャンクスが剣を手に割って入った。わーお、さっすが~。まだ見習いだろうに、そこそこやる。これは将来がより期待出来るね。

 

「おいおい!! いつまでUFO出てくんだ!? キリがねェぞ!!」

 

「やっぱりぬえを倒すか!!」

 

「確かに……そうするか」

 

 おおっと。レイリーが斬撃を飛ばしてきたので見聞色で読んでなんとか回避。うーん。まあ実際、私が気絶でもしようもんならUFOは消えちゃうからね。私を倒そうとするのは良い判断だ。私としても楽しくて助かる。だが、

 

「ふふん。私を狙うのもいいけど……ウチの船もやっと追いついてきたみたいだね!!」

 

「!! 来るか……船を動かせ!!」

 

「おお!!」

 

 私が気配を感じ取ってそう言うと、向こうも判断が早い。舵を切って船を動かす。

 するとしばらくして、肉眼でも船の姿が見えてきた。私達には見覚えがあり、彼らは初めて見るであろう、私達の船だ。

 

「さぁ……ここからが本番!!」

 

「ぶっ潰してやる!!!」

 

 そうして本格的にロジャー海賊団と百獣海賊団の戦いが始まった。

 

 ──だが、元々拮抗すらしていない格上との対決。

 

 戦いは半日は続いたが、決着は唐突に付いてしまった。私やカイドウもロジャーとレイリーを倒そうと、血反吐を吐いても気絶せずに頑張ったが……私達は負けてしまった。

 

「ウッ……くそったれが……!!」

 

「う……身体が動かない……でもまだ戦いたいからちょっと待ってて……10分で回復するから……!!」

 

「カイドウさん……ぬえさん……!! くっ……!!」

 

「クソ……離しやがれ……!!」

 

 血を吐き、誰もがグロッキー。瀕死の状態な私達。私とカイドウだけじゃなくてキングとクイーンもいる。途中から戦いに参戦したが、結果は見ての通りだった。部下も殆どが倒れている。

 そんな私達を見て、ロジャー海賊団の面々は恐れるような呆れるような面持ちだった。

 

「おいおい、負けたんだから大人しく諦めろよ。これ以上戦えねェだろ?」

 

「これが百獣海賊団……ぬえの仲間か……全員凶暴そうだな……」

 

「ろ、ロジャー船長!! 早いとこ海に沈めちまおう!! こいつらやべェって!!」

 

「わはは、落ち着け。もう戦う力もないし、おれ達の勝ちだ!! 適当に宝でも奪って帰してやれ!!」

 

 と、ロジャーが他の船員達にそう命令する。む~、なんか子供扱いされてるみたいでちょっとイラッとするけど、これ別に子供扱いしてる訳じゃなくてロジャーだからね……メチャクチャ甘いというか、今の所私達に恨みも怒りもないから扱いも甘い。まあどっちにしろ甘いのがロジャーだ。そのせいかカイドウはメチャクチャ機嫌が悪く、今にも相手を睨み殺しそうだ。実際には出来ないけど、バギーなんかは物凄いビビってる。見てて安らぐ。ペットとして飼いたいよね。飼うならビビリが良いし。

 

「む~……不完全燃焼なんだけど……!!」

 

「そう言うな!! お前達は強かった!! またいつでもおれの首を取りにこい!! いつだって返り討ちにしてやる!!」

 

「さて、それじゃあ宝も奪ったし、後は適当に船の甲板に転がして──」

 

「──ろ、ロジャー船長!! やべェ!! 海軍だ!!」

 

 と、宝を奪われ、船へと運ばれるそんな時だった。見張りがそんな声を上げたのは。

 ロジャー達が私達ではなくそちらに注意を向ける。そして笑みを深くし、

 

「この気配……誰だ?」

 

「海軍の艦隊だ!! ガープにセンゴクも乗ってる!! マズいぞ船長!!」

 

「ガープにセンゴク~~!!? 面白ェ!! よし戦ろう!!」

 

「いや、待てロジャー。今一戦やったばかりだぞ」

 

「そうだぜ!! さすがに分が悪い!!」

 

「わはは!! そりゃ逃げはするが、どうせ逃げ切れねェ!! なら一戦やってから逃げるしかねェよな!!」

 

 海軍の艦隊。しかもガープにセンゴクが乗っていると聞けば、海賊の多くは逃げ出すだろう。鬼より怖い連中だ。

 だがロジャーは子供のような楽しそうな笑顔を浮かべる。まるで遠足を心待ちにする子供のように目がキラキラしていた。それに他の船員は呆れている。いつものことなのだろうが、彼らも苦労してるんだなー。ちょっとは部下の制止も聞いてあげればいいのに。

 

「……ならそれはいいが、こっちはどうするんだ?」

 

「む、そうだな……よし、ならこうしよう!!」

 

 と、レイリーが私達を指してどうするのかと問うと、ロジャーは僅かに首をひねり、いい案を思いついたと言わんばかりに不敵な笑みでこう言った。カイドウや私に向かって、

 

「──戦いも終わったし、協力して逃げるか!! まだ戦りあう元気があるなら一緒に戦おうぜ!!」

 

「は?」

 

「何……?」

 

「出た……ロジャー節……」

 

 その提案にクイーンとキングが面食らう。私はなんとも言えない。ロジャーはこういうところある。基本的にメチャクチャなのだ。協力なんてする訳ないのに。いや、私は別にいいけど、カイドウが首を縦に振る訳ない。実際、それを聞いた瞬間カイドウは憤怒の表情で声を荒げる。

 

「あァ!!? 何言ってやがる!!? 断る!!」

 

「お前らだってこのままじゃ捕まって困るだろ? だから海軍から逃げるためにはこうした方がいいじゃねェか!!」

 

「……!!」

 

 あ、カイドウが今にも暴れだしそうだ。はぁ……しゃーない。このままじゃ話が拗れて面倒なことになるし、さすがにこの状態でガープとセンゴク相手はキツいし──利用させて貰おう。

 

「……それじゃ、戦ってる間に逃げてもいいの?」

 

「ああ、別にいいぞ。むしろ手を出すな。おれの相手だ」

 

「……だってさ。カイドウ」

 

「……!! クソ……フザケやがって……!!」

 

 否応無し。受けるしかないということを悟ったのか、カイドウが悪態をつく。意地でも首を縦に振らない辺りがカイドウらしい。だが、実質了承したのも同じだ。

 ……まあ私とカイドウだけならともかく、キングにクイーン、部下達が結構傷ついてる状態だしなぁ……それでもそこらの海賊相手ならそのまま突っ込むけど、ガープとセンゴク相手だと手塩にかけて育てたり仲間に勧誘した船員達がやられちゃうかもしれないし、ここはロジャーを囮にして逃げるのが──って、あれ? 

 

「…………」

 

「ん? 空を見上げてどうしたんだ? ぬえ」

 

「……いやぁ~……まさかこのタイミングで、あのおじさんまで来るとはな~って。間の悪いことは重なるものだね?」

 

「ああ? ──!! いや、確かにこの強ェ気配は……!!」

 

「おいおい……マズいぞロジャー……!!」

 

 私の言葉を受け、徐々に気づくロジャー海賊団の船員達。歴戦の彼らでさえ、この状況は思わず苦笑いだ。

 何しろ曇り空からふわふわと落ちてくるようにやってくるその船は、巨大な金色の獅子を船頭に置く、新世界の大海賊の船。

 そしてその船頭に立つのは、同じく金色の髪を持つ葉巻を咥えた男。腰に二刀の剣を差し、その能力で自身や船をも浮かせる空飛ぶ海賊。その名は、

 

「──ジハハハハ!! ロジャーが新世界入りしたと聞いて勧誘しに来たが……まさか百獣海賊団に海軍もいやがるとはな!! 運が良いのか悪いのか分からねェな、おい!! とにかく久し振りだなてめェら!!」

 

「シキ……!!」

 

 金獅子海賊団大親分、“金獅子”のシキ。懸賞金27億4400万ベリー。

 新世界に居を構える海賊艦隊の提督で、今の時代の4強の一角。

 そして私とカイドウにとっては、元仲間でもある男が、空から降りてきた。

 

 

 

 

 

 ──更に海からは、

 

「ぶわっはっはっはっ!! まさかロジャーを追いかけてきたら金獅子海賊団に百獣海賊団とも遭遇するとはな!!」

 

「笑い事じゃねェぞガープ!! これはおれ達も心してかからねェとどうなるか……!!」

 

「ああ、わかっとる!! あいつら全員──とっ捕まえてやる!!」

 

 海軍本部の艦隊。その先頭でそれぞれ指揮を取るのは、海軍本部大将“仏”のセンゴクに、海軍本部中将にして英雄とも名高い伝説の海兵、“ゲンコツ”のガープ。海軍本部の現最高戦力と言っていい2人が、今まさに、海賊達に襲いかからんとしていた。




ロジャーが新世界に来た!! どうする?
カイドウ&ぬえ「戦争だ戦争!!」
シキ「勧誘だジハハハハ!!」
ガープ「取っ捕まえる!!」
センゴク「待てガープ!! シキの件は――ry」
という感じで集合の回でした。次回はバトルロワイヤルして逃げます。ビッグ・マムは不参加。というか、来たらもうただのロックスの再来。戦う場所が島じゃなくて海の上で良かったね()

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