正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる 作:黒岩
ワノ国にある6つの郷の内、九里という土地はかつて“ワノ国の癌”とまで呼ばれたほどの曰くつきの土地であった。
統治する筈の大名はおらず、各郷から追放された罪人と浪人が徒党を組んで暴れまわる無法地帯。犯罪者も九里に逃げ込めば役人も侍も誰も手を出せないと、将軍家も九里の統治に匙を投げるほどの場所。
だが今は、そのかつての荒れ果てた光景は見る影もない。
「かごめかごめ♫」
「かごのなかのとりは♫」
「いついつでやーる♫」
「よあけのばんに♫」
「つるとかめがすべった♫」
「うしろのしょうめんだーれ♫」
子供達が輪になって遊び歌に興じている。それを通りがけに見守る大人たちは思わず顔を綻ばせ、日々の営みを噛みしめるように大切に過ごす。
「まったく、将軍様がお亡くなりになったばかりだってのに」
「ははは、まあそう言いなさんな。暗くなってもしょうがねぇだろ?」
「ああ。昔に比べりゃ、こんなもん屁でもない。将軍が亡くなったのは残念だがな。今はいないおでん様のことを思うと……」
「平和であればそれでええ……この九里はおでん様に与えてもらった我らの“宝”だ……おでん様とその家臣、そしてこの町があればどんな苦境でも乗り越えられる……」
九里の大人達は口々に楽観的な様子で告げる。この九里にはかつて、平和など存在しなかったのだと。
だがそれは今こうして平和を謳歌出来るのは、荒くれ者共を率いて郷を作り上げた九里大名“光月おでん”の偉業なのだ。
ゆえに他の土地よりも民衆は逞しく、平和を強く望む。皆おでんに恩義を感じている。……外海に出てしまったおでんの行動に愚痴を言う者もいるが、本気で嫌っている者はあまりいないだろう。
それに大名不在であるとはいえ、この九里ではおでんの家臣である侍達が切り盛りし、郷の統治をしっかりと務め上げていた。
おかげで城下町“博羅町”は活気に溢れている。近くの“桃源農園”で出来上がる食料によって、住民は飢えに苦しむこともなく、笑顔にも溢れていた。
そしてその九里の中心でもある町の山に建てられた城こそが“おでん城”。正式な名称を九里城と言うが、おでんを慕う住民達がおでん城と呼び始め、いつしかその呼び名が定着してしまった城である。
そこでは今、おでんの家臣である侍達が顔を突き合わせていた。
「──錦さん。今月の帳簿、確認してくれたか?」
「ああ。いつも助かる傅ジロー。まあ、最近の財政は微々たる利益しか出てないが……」
「それを言わないでくれ。儲けがあって平和であるだけ十分だろう?」
「はは、違いない!!」
城の一室で笑い合う2人の侍。立派なもみあげに髷を結った男の侍は“狐火”の錦えもん。陽の光を遮断する丸い黒眼鏡を掛けた侍が傅ジロー。
この2人はおでんの家臣の中でも最古参。家老とも言うべき中心人物だった。
錦えもんは家臣達の中心人物として彼らを纏め、傅ジローは九里の台所を一手に任されている。
2人は今月の帳簿を話題に軽く笑いあったが、その明るさに反して昨今の世情に頭を悩ませていた。それもその筈、彼らの主君である光月おでんの父であるワノ国の将軍、光月スキヤキの訃報もあり、おでんの事を考えて複雑な心境であったところに……あのオロチが跡を継ぎ、代理の将軍としてスキヤキに直接指名されたのだ。
それに伴い、花の都では悪い噂が流れている。少し前から行われている武器工場を建てるという謎の政策も彼らを困惑させていた。
「──戻ったど」
「──同じく、只今戻った!!」
「! アシュラ、雷ぞう。どうだった?」
「どうもこうもない。ろくに情報が入らんかった!!」
「左様か……雷ぞうの方はどうだ?」
「こちらは何とか情報を集められたが……花の都は大騒ぎだったぞ!!」
続き、部屋に入ってきた者達を見て、錦えもんと傅ジローの表情も引き締まったものになる。やってきたのはおでんの家臣、大柄で桃色のアフロ髪が特徴的なアシュラ童子と、顔の大きい忍者、雷ぞうだ。
2人は錦えもん達の相談によって、九里と花の都の情報を集めてきていた。アシュラはついでに賊の討伐なども頼まれており、それをこなしてきてもいる。彼は家臣の中でも特に腕っ節に優れていた。
そしてその結果、アシュラは特に何も得られなかったと言った。だが雷ぞうの方は違う。本職の忍者であり、花の都にまで行っていた雷ぞうは見てきた、聞いてきたことを皆に伝えようとする──が、それに錦えもんから待ったが掛かった。
「うむ。詳細は皆が集まってからにしよう。菊と河松とカン十郎は?」
「──ご心配なく!! もう来てますキン様♡」
「──カッパッパ!! 雷ぞう達が戻ってきたと聞いて飛んできたぞ!!」
そうして次にやってきたのはまるで女性にしか見えない美青年剣士、“残雪”の菊の丞と、菅笠を被った緑色の皮膚を持つ魚人の男、“河童”の河松だった。そしてそれに少し遅れて、
「うむ。こちらも今戻ったぞ!!」
「ならこれで全員か。──時にカン十郎はどこへ行っていたのだ?」
「少し腹を下してしまってな。何、心配はない。もう出してきたところだ」
「……そうか」
真っ赤な長髪を持つ歌舞伎役者の様な大男、“夕立ち”カン十郎が最後に現れる。錦えもんはその話に僅かに顔をしかめたが、それはともかくと皆が集まったことを歓迎した。
これで今ワノ国にいるおでんに仕える侍達、家臣が揃ったことになるのだ。後3名ほど、おでんと一緒に海外に出てしまった者達もいるが、今はこれだけだ。この7人で九里をなんとか切り盛りしているのが現状である。
そして彼らは錦えもんの号令の下、話を聞く体勢を取る。耳を傾け、聞くのは主に雷ぞうが集めてきた情報だった。
「──して雷ぞう。花の都はどうだった?」
「……端的に言えば、混乱と恐怖に満ちていた。オロチが用心棒として雇った“カイドウ”という海賊が暴れたらしくてな。侍と町民に犠牲者が出たとのこと」
「海賊か……その報を聞いた時はおでん様が戻ってきたのかと浮かれたが」
と、雷ぞうの言葉に海賊の報を聞いた時の自身の感情を話す河松。実際、河松だけでなく、海賊と聞いた時には真っ先に皆がおでんの事を思い浮かべたものだ。それに、おでんに付いていった3人と、彼らを引き受けたであろう“白ひげ海賊団”のことも。僅かな時間であったが、白ひげは海賊ではあったが、食料や物資の礼にと宝箱を置いていくような、粋な海賊であったと記憶している。
だが今回の海賊はどうやらそうではないようだ。雷ぞうが言うには、
「“白ひげ”とは似ても似つかない様な凶悪な一味だった様だが……その強さは都の侍を歯牙にも掛けない怪物並みの男だと言う。特に都ではカイドウとその相棒である“ぬえ”という海賊も恐れられていたようだが……」
「……? どうした雷ぞう? 何かあるのか?」
突然、言葉に迷った様子の雷ぞうに傅ジローが訝しげに問いかける。他の皆も同様に頭に疑問符を浮かべていた。
そんな中、雷ぞうは聞いてきた話を迷いながらも、皆に話すことにした。
「いや……それがな。まだ真偽不明の話ではあるのだが……そのぬえという海賊は……“妖怪”であるらしい」
「……妖怪だと?」
「キン様の様な妖術使いではなくてですか?」
アシュラと菊の丞がその言葉を聞いて質問を返す。妖怪はワノ国では伝承や昔話、あるいは怪談話で語られるものだが、彼らはそれを“妖術使い”だと理解している。
錦えもんやカン十郎も、かつては不思議な果実を食したことで、妖術を使えるようになっているのだ。それを知るからこそ、妖怪という存在も何となく、その妖術に由るものではないかと疑っているのだ。
だが雷ぞうは見てきたままの情報を伝える。その実際に見たという人々の声を。
「分からぬ……だが、それを見たという町民の怯えようは尋常ではなかった……!! 何でも、都を覆う程の怪物であったとの噂も──」
「まさか!! 見間違いであろう!! 幾ら妖術でもそのようなことが出来る筈がない!!」
「うむ。カン十郎の言う通りだ。我らの妖術でもそれほどの大規模なものは……いやまあ拙者のは服を変えるだけではあるからして、参考にはならぬが……」
「……何にせよ、強く凶悪なのは確かってことか」
「オロチは一体何を考えてそんな奴等を雇ったのでしょう……?」
傅ジローが話を纏めて、菊の丞は新たな疑問を呈する。
だがそんな中、アシュラと河松が言った。おでんの家臣の中でも特に力の強い2人が、力強く断言する。
「フン!! 海賊だろうがオロチの犬だろうが、九里を荒らすなら叩き斬ってやるど!!」
「左様!! つっぱりで追い出してくれる!!」
「こらやめよ。仮にもオロチは将軍代理……逆らえばおでん様や我らもそうだが、九里の者達の立場を危ぶめることになるやもしれん。害がなければ、今しばらくは大人しく──」
2人の血気盛んな発言に、錦えもんは冷静にそう判断して言い含めようとする。──そんな時だった。
「──錦えもん殿!! 傅ジロー殿!! 報告が……っ、これは、皆様お揃いでしたか!!」
「む……何事だ?」
廊下をドタバタと走る音。そして城に詰めている錦えもんや傅ジローを呼ぶ声。襖を開けて入ってきたのは、城で働く門番だった。おでんの家臣は少ないが、大名として郷を治める以上は、様々な者達を雇っている。……とはいえ、それほど多くを雇っている訳ではないが、それでも最低限必要な職は雇っていた。
その男が慌てた様子で錦えもん達に報告する。そしてそれは、今まさに錦えもん達が危惧していることでもあった。
「それが、都から役人達がやってきて……郷の男達を工場へ連れて行くと……!!」
『っ、何!!?』
錦えもん達家臣団は声を揃えて、その報告に驚いた。そして城下町へ急いで向かっていった。
九里の城下町はとっても平和だった。というか、九里が平和だった。盗賊もいなければ凶悪な獣もそれほどいない。中々につまらない土地だった。
だがそれはそれとして楽しもうと、私は和菓子屋の店先で腰掛けに座って、和菓子を適当に摘みながらそれを見ていた。
「郷の男共は1人残らず集まれ!! オロチ将軍の命令だ!!」
「これよりお前達は武器工場で働くのだ!!」
「そんな……郷の仕事はどうするんだ!?」
「おれ、武器なんて作ったことねェぞ!?」
「黙れ!! 将軍命令だ!! 列に並べ!!」
「んー、やってるねー。はむ、んぐ」
九里の城下町、博羅町の広場で、オロチに仕える侍、役人達が郷にお触れを出して、男達を徴集する。枕詞に将軍命令とつければワノ国の住人は疑問を覚えようとも従うものだ。誰もが困惑し、疑問を飛ばしながらも命令通り列に並んでいく。私達百獣海賊団は、それを近くて見ているだけだ。今の所は。
「思ったより反抗しないな~。やっぱり、将軍命令ってのが大きいかな?」
「順調っすね。このままじゃ何もしねェで終わりそうですが……」
「む~、つまんな~い。暴れ回って役人に斬りかかるような人斬り侍は出ないの?」
「そう言われましても……」
部下達と何気なく会話して退屈を紛らわす。私が話しかけた部下は困っていた。まあ皆、役人に連れて行かれる男達をニヤニヤと見物しているが、私としてはもう少し波乱が起きて欲しいのだ。これも面白いといえば面白いが、このままでは私がこの悲劇に参加出来ない。見てるだけでも面白いけど、自分が実際にやった方が面白いものだ。
もういっそのこと意味もなく町を破壊してみるとかも考えたけどね。ただ、強い気配がもうじきやって来るし、それを見てからでも遅くはないかと今はまだ見ているだけだ。
そうして、和菓子をおかわりしたところで──ようやく見たかった連中が現れた。比較的大柄な侍達が現れ、
「──待て!! これはどういうことだ!!?」
「錦さん!!」
「おでんの家臣達か……」
民衆もオロチ配下の役人達もその侍達の登場に良くも悪くも反応を見せる。民衆は何とかしてくれるかもと期待しているし、役人は少し忌々しそうにしていた。だが将軍の権力や私達の武力を後ろ盾に強気に発言した。説明しろという侍に……あれは錦えもんだね。その背後には傅ジローやアシュラ、河松に菊之丞に雷ぞう。それにカン十郎もいる。ふーむ……まぁまぁって感じかな? 思ったよりは弱いかもしれない。私が期待し過ぎなだけで、他の人達からしたら思ったより強いと言われるかもだけどね。その辺の認識の違いはしょうがないとして、私は一先ず役人とおでんの家臣達のやり取りを見物する。
「どういうことも何も、将軍命令だ。これから、各郷の男達は武器工場で働いてもらう」
「そんな勝手な……!!」
「そもそもオロチは将軍代理だろう……!! おでん様が帰ってくるまでの代わりだ!!」
「代わりでも何でも、今は将軍だ。大体、そのおでんは帰ってこないではないか。いつ帰ってくるかも分からない男の為に、国政に手をつけるなとでも言うのか? 随分と身勝手な言い分だな」
「くっ……!!」
あー、言い争いもとい、レスバに負けてるおでんの家臣達。まあ実際、一度将軍代理にと正式に指名された以上は、役人達の言い分にも理がある。おでんの代わりとは言うが、おでんは国を放って現在進行系で海賊ライフを楽しんでいる頃だもんね。しかも期限がわかっているなら、あるいは数ヶ月程度ならまだしも、何年も帰ってこない男を待って国政を放置するのは確かによろしくない。
ただ……このままじゃ普通に言いくるめられて終わっちゃいそうでつまんないなー……しょうがない。ここはちょっかいを掛けよう。私が遊ぶ為にも、私は立ち上がって会話に割り込むことにした。
「町の仕事はどうするつもりだ!!」
「案ずるな。男共は昼夜交代で働かせるし、賃金も払ってやるとのことだ。それに、男がおらずとも女がいるではないか」
「っ……このっ……言わせておけば……!!」
「──あ~♪ ひょっとして将軍の遣いに手を出すのかな~?」
「!!?」
私はアシュラが怒りに顔を歪ませたその直後に声を掛ける。そこでようやく、おでんの家臣達は皆こちらを見た。ふんふん。困惑してるかな? 私みたいな少女がいきなり話しかけてきたことや凶悪そうな海賊達を率いてることも、不可解といえば不可解。まあ驚いてくれるのは嬉しいのでオーケー。私は団子の串を置いて立ち上がり、近づいていく。
「あっ、待ってください。お代は──」
「払わな~い♡ 代わりに……九里の大名様にでもつけといて♡」
「っ!! なんだお前は……!!?」
「少女……? それにその後ろの者達はもしや噂の……」
和菓子屋の店員さんの要求を可愛らしく拒否して九里の大名にと言うと、傅ジローが声を荒らげた。菊の丞が私達を見て頭に疑問符を、そして心に不安を浮かべている。そしてその彼らの質問には役人が先に答えた。
「彼らはオロチ様が雇った国を守るための用心棒だ」
「用心棒だと……海賊を雇ったのか……!?」
「そうだ。何かあれば、彼らが対処してくれることになっている。気をつけるんだな」
「は~い!! はじめまして~、私達は百獣海賊団!! そして私は副船長の封獣ぬえで~す!! これからワノ国一のアイドルになる予定だからよろしくねっ♡」
「ぬえ……あ奴が……!?」
「あの様な少女が副船長……? 何かの間違いではないのか……!!」
可愛らしく挨拶すると、また露骨に驚いてくれた。さすがに雷ぞうも噂の海賊がこんな美少女だとは思わなかったようだ。まあ、情報面に関してはステューシーに一任してるし、ちゃんと防諜もしてくれたのだろう。後で褒めてあげないとね。
それにカン十郎もああ言ってるが……これが迫真の演技って奴かな? 正直さすがだ。私から見ると白々しいにも程があるけど、知らなければ全く気づけなかっただろう。まあそのことを触れる訳にもいかないので、私は彼らに向かって言葉を送る。彼らの前まで行ってから、
「ワノ国では将軍が絶対。将軍に逆らったら即牢屋送りだからね~? 手を出したくても出せないんだよね~、大義も何もないから」
「っ……元より、お主の様な少女相手に刀を抜くことなどない……!!」
「あ~~~そうなんだ。刀は抜かないんだね。じゃあ──
「!!!」
私は三叉槍を無造作に振るって、カン十郎の腹を斬りつけてやる。刺しても良かったけど、さすがに殺したら駄目そうだもんね。私って気配りの出来る女ね。
とか思っていると、一瞬の絶句の後、おでんの家臣達が怒りを見せた。
「カン十郎!!?」
「菊!! 手当を!!」
「はいっ!!」
「っ……貴様……!! 何してくれるど……!!?」
「あっれ~~~? 刀は抜かないんじゃなかったっけ~~~? つまり、何をしても許してくれるってことでしょ? いや~、九里がこんな良い場所だって思わなかった♡ さすが無法地帯って言われてるだけはあるよね!!」
「このっ……叩き斬ってやる……!!!」
「!! 待てアシュラ!!!」
「離せ河松!! 錦えもん!! 身内に手を出されては黙ってられん!!」
「わかっておる!! だが……だが今は……堪えよ……!!」
あれあれ? せっかく煽り付きで仲間に手を出してみたのに、錦えもんの必死の説得が成功しそうになってる。まあ将軍に逆らうことを相当重く考えているのだろう。おでんから国を預かっている身でもあるしね。かなり強く歯噛みしているし、他の者達も青筋を立てたり、こちらを睨んできたりしている。殺気と敵意が心地いい。──でもそいつ、裏切り者なんだよねぇ……むしろ感謝されて然るべきじゃない? これで何かの間違いでカン十郎が死んだら、彼らはこの先、相当助かるだろう。今ここで手当なんてするべきじゃなかったと後悔するに違いない。
でもなー……やっぱ手を出されないのもつまらないし、何か舐められてるのもそれはそれで気に食わない。だからもっと煽ってやる。
「あはは、別に私になら手を出してもいいよ? 問題にしたりしないからさ~。なんなら誓う? 指切りげんまんでもしてあげよっか? あなた達程度に私が負ける筈もないしね♡」
「──!! 言ったな!! 二言は許さねェど!!!」
「っ、アシュラ!!!」
おっと、さすが元盗賊の頭。真っ先に私に向かって刀を振るってきた。さすがにこの間見た侍よりは遥かに鋭い。覇気もかなり強い。これはウチの部下だと苦戦しそうだ。キングやクイーン、ステューシーなら勝てるだろうけど、それでも激戦にはなるだろう。少なくとも、一方的に蹂躙出来る程の相手でもない。
「──訂正してあげるね」
「!!?」
私はアシュラの刀を槍で受け止め、笑顔で訂正してあげる。片手に持った槍に覇気を込め、
「あなた達、結構強いじゃない。──まあ私には劣るけどね♡」
「っ、ぐ……!!?」
「アシュラ!!?」
「アシュラが力で負けた……!?」
「あの細腕にどんな力が……!!」
私はアシュラを槍で、受け止めた刀ごと吹き飛ばしてやる。皆驚いてくれてるなぁ。でも舐めすぎというか、やっぱり見聞色をもっと鍛えた方がいいよね。見ただけで実力差くらい感じ取って欲しい。驚いてる錦えもんや河松、傅ジローも強いは強いんだからもっと鍛えよう。まあワノ国の侍は武装色寄りというか武装色に向いてる人ばかりなのかな。──そんなことを考えていると、またしても私の部下達が囃し立てた。
「ぎゃはは!! 馬鹿め!! ぬえ様に敵うと思ってるのか!?」
「お前ら程度が束になってもぬえ様には敵わねェんだ!! 思い知ったか田舎侍共!!」
「可哀想に!! 海外に出てったバカな主君さえいなければこんな目に遭わずに済んだかもしれねェのになァ!! まったく、酷ェ殿様だぜ!!」
「っ……奴等、おでん様をバカにしやがって……!!」
おおっと。今度は部下達の煽りが結構効いてる! さすがウチで海賊やってるだけあって煽りが上手くなってきてるね! 煽りや口喧嘩が強い海賊はなんだかんだ強い海賊も多いし、この子達は見どころあるかもしれない。特に最後の奴。こういう一理ある煽りは結構効くだろう。正論が1番イライラするってよく言うしね。まあ、部下達の煽りに続こう。私も羽を出して浮き上がり、彼らと目線を対等にすると、
「浮いた……!?」
「あの羽は……妖術か……!!」
「ふふん。まあ身の程ってのを分かっちゃったかな? ──それにしても、こんな強い侍達や人の良さそうな人々を放ったらかしにして海賊になるなんて、あなた達の主君は酷い殿様だね? バカ殿だよバカ殿。そんなバカ殿に仕えるのなんてやめて、どうせならウチに入らない? 歓迎するよ?」
「~~~っ……断る……!!!」
「くっ……!!」
「っ……!!」
「……そう。まあいいけどね。気が変わったらいつでも言って。あなた達ならいつでも幹部待遇で迎えてあげるからさ」
私は笑顔でそう告げて、何も言わなくなった彼らに背を向ける。──というのもだ。彼らに安い挑発で喧嘩を買わせるのは難しいと思ったのと、やりあえば私はともかく、少なくない数の部下がやられると思ったからだ。
何しろ、逆らったらやっても良いと言われてるが、逆らわずに言うことを聞くならまだ放置すると決められていたので、これ以上手を出すのはあまりよろしくない。気絶させるつもりで叩いたのに、アシュラは気絶してないし。これでもかと挑発して、カン十郎という一応仲間扱いの彼も傷つけてやったのに、手を出したのはアシュラ1人だけだし。煽りも効いてはいたが、やはり彼らは動かない。まあこっちから無理やり仕掛けてボコっても良いんだけど……それだとあんまり面白くないし、約束が違うからなぁ。
まぁ、もうちょっと蛮行を続けて堪忍袋の緒が切れた時にでも私一人で一度くらいやりあってみるのが良いかな。今は一応、武器工場の労働者の確保が最優先だし、反抗の意志があるかと確かめるのが仕事だ。ある程度実力も見せてあげたしね。花の都とは違って、恐怖はゆっくりと味わって貰おう。怪物と出会う一瞬の恐ろしさより、真綿で首を絞められる方が意外と怖いものだ。その方が、想像力も恐怖も勝手に増幅される。
「約束通り、今回の件は不問ってことで。──それじゃ、武器工場へしゅっぱ~つ!!」
『は、はい……!!』
『おお!!』
まあ今回は暴れられなかったけどこんなもんかなぁ、と私が号令を出すと、オロチの部下の侍すら恐れていたので、それは良かった。郷の男達を連れて武器工場へと向かうことにする。──背後からの敵意と恐怖が心地良く、私は笑みで先程郷の子供達が歌っていた懐かしの童謡を歌いながら先導していった。か~ごめかごめ♫ ってね。
──そうして、ワノ国の各郷を百獣海賊団とオロチ配下の侍が訪れ、郷の男達を徴集し、その脅威をある程度見せつけた後のこと。
ちょっとした事件が、百獣海賊団で起こった。
それは、オロチに案内されたとある場所へ向かう途中。
「──ぬえ様!!」
「ん? どうしたの──って、あっ!!」
部下の呼ぶ声に反応したぬえが振り向くと、そこには見慣れない者達がいた。
部下達はその巨大な存在に少し怯えている。今は鎖で繋がれてもいる上に大人しいが、急に何をするかわからないからだ。
だがぬえはそれを見て目を輝かせた。まさに怪物と言っていい存在に。
「届いたんだ!! あはは!! やっぱ近くで見ると迫力満点だね!!」
「気に入ったのなら良かったわ」
と、ちょうど近くにいたジョーカーことステューシーも微笑を浮かべる。
人間には見えないその化け物の買い取りに尽力したのもジョーカーだったのだ。ぬえが喜んでいるし、カイドウも彼らのことを知ってからは欲しがっていたのだ。
「──“古代巨人族”の失敗作達」
「──ジュキキキ!!」
それはとある島から買い取った絶滅種──古代巨人族だった。
赤鞘との初顔合わせ→最悪
ナンバーズ→意外と可愛い。ペット枠
かごめかごめ→意味深。歌詞の意味が意味深。よく似合う。シンデレラケージ好き
次回はこれから20年以上の付き合いとなる無人島と、初めて目が出た人食い集団の一人目が登場です。お楽しみに。赤鞘はこれからもイベントがあります。まずはジャブってところで。
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