正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる 作:黒岩
唐突だがワノ国には様々な伝承、昔話が存在する。
迷信染みたものから、強く信じられているものまで、信仰から来るものや、恐れから来るもの、子供の躾に利用するために生まれたとされるものまで様々だが、それらは実際に起こった真実であることが多い。
そんな伝承の内、ここ数年で新たに生み出されたものとして、“鬼ヶ島のナンバーズ”というものがある。
人の住まない無人島、鬼ヶ島を本拠地にし始めたかの百獣海賊団。その配下には、多数の鬼が存在し、オロチ将軍と百獣海賊団に反抗する者を、捕らえて食べてしまうのだという。
その姿は見るも恐ろしい人の形をした獣であり、見上げる程に大きく、力も強い。動きも獣の如く俊敏であり、生半可な攻撃では膝を突かせることも出来ず、仮に倒したとしても何度も起き上がってくるという怪物であるとのこと。
その怪物の正体はワノ国の人間にはわからない。
だがその昔、外海に出ていたというとあるホラ吹き爺はこう言う──あれは“古代の生物”だと。
どういう意味かはわからない。そして、それを聞いた者もその老人の言葉を信じなかったが、老人もまた信じられなかったことを気にしなかった。気にしたところで、どうにかなるものでもないからだ。
ワノ国には人の住んでいない無人島がある。私達、百獣海賊団はワノ国での本拠地としてオロチ達にそこをプレゼントされた。ワノ国で腕利きの大工達も既に手配しており、その島の中に屋敷を作ってくれるらしい。屋敷というか城みたいになるみたいだけど。
そしてその島は角の生えた巨大なドクロのような山があり、その形が鬼のように見えることから──“鬼ヶ島”と呼ばれている。カイドウのシルエットや私達の海賊旗とも似通っていて私達にピッタリな本拠地だ。島も広いし気に入った! いいね!
そしてそんな時に更に良いことがあった。注文していた品が遂に届いたのだ。それは──
「じゃじゃ~~ん!! 私達の新たな仲間が届いたよ~~!!」
「へェ……って、デカすぎねェか!!?」
「ジュキキ!!」
「ナギギ!!」
クイーンが見上げた先にツッコミを入れる。
それほど巨大な相手だが、しかもただの人間でもないし、ただの巨人族でもない。
彼らはとある島から買い取った絶滅人種……古代巨人族の失敗作だった。
「ウォロロロ……普通の巨人族の倍以上の大きさだ。面白ェだろう」
「今日から仲間だからね!! ほら皆挨拶して」
「ゴキキ!! ゴキキ!!」
「くにゅにゅ♡」
「ハチャチャ!!」
「ジャキキ!!」
「いや喋れねェのかよ!!」
私とカイドウは彼らを見て面白いと笑うが、他の皆はちょっと困惑してるみたいだ。こんなに大きくて面白いのにね。しかも私達の言うことをちゃんと聞ける良い子達だ。
「これがパンクハザードの……政府の実験の失敗作、か……」
「ええ、そうよ。人体の巨大化の研究。巨大な兵士を作り出せば戦力になると考え、何百年もの間非合法な実験を重ねた結果がコレ……フフフ♡ 絶滅種の復活なんて貴方には他人事に聞こえないかしら? キング」
「……ペラペラとよく回る口だなジョーカー。その舌、おれが削ぎ落としてやろうか?」
「フフフ、ごめんなさい……さすがに詮索が過ぎたかしら」
ジョーカーの補足とその意味深な言葉をキングが軽く睨んで威嚇する。余計な事を口にするなと遠回しに言っていたが、それほど気にしてる訳でもないのか、ジョーカーが謝罪をするとキングは軽く息を入れて黙った。
まあキングはキングで珍しい種族だし思うところはなくはないのだろう。この子達の仕入れ先があのパンクハザードというのもあるしね。
とはいえキングも割り切っているようだし、私やカイドウも捕まってたこともあるけど気にしてない。おかげでこの子達の事も知識として知っていた訳だし……と、それよりもこの子達の商品説明と紹介が先だ。
「──で、これってパンクハザード産だし、やっぱりあのベガパンクが関わってるの?」
「関わってるとも言えるし、そうでないとも言えるわ。あのベガパンクでさえ、人体の巨大化は実現不可能な技術。政府の要望に応えて研究と実験は幾つか行ったみたいだけど……実験は尽く失敗に終わったようね」
「へぇ~~!! ならこの子達はその生き残りみたいな感じね!!」
近年生み出された画期的な発明には政府の科学者Dr.ベガパンクが必ず関わっているとされる。
500年先の頭脳を持つとも言われ、血統因子という生物の設計図を発見した天才でさえ、普通の人間を巨大化させるという研究は中々実現が難しいようだ。
「古代巨人族……確か、“国引きオーズ”とかの種族よね」
「? なんすか、そのオーズって奴は」
「500年前の怪物だ。何でも、討ち取った国を島ごと自分の領土に持ち帰り、悪党達の国を築いたらしいな……」
「その“国引き伝説”のオーズね。それが古代巨人族だったことは既に解明されてるわ。子孫もいることだしね」
私が言うと、クイーンは知らなかったがキングとジョーカーが説明を引き継いでくれる。それで思い出したけど、そういえば白ひげの傘下に子孫がいるのよねー。正直、大きいだけの的とも言えなくもないけど、大きいことはそれだけでも強いし、この子達にもそれが期待出来る。
「ウォロロロ!! 景気の良い話だ……!! おれ達も国を討ち取ったらこいつらに引かせてみるか?」
「良い戦力にもなりそうだしね!! ……というか、これはこれで兵士としては成功してる気がするんだけど、これでも失敗作なんだ?」
「知性が獣同然なのが問題みたいね。言うことを聞かせることも難しいようで──」
「そう? ──伏せ」
「ジュキキ!!」
「ジャキキ!!」
「……強者には従うのかしらね」
私が伏せと言うと全員地面に身体を伏せた。ペット同然の扱いを見てかジョーカーが軽く呆れた様子を見せるが、知性があまりなくても本能はあるし、頭の良い獣並みには知性は残ってるんだから、言うことを聞かせるのは正直簡単だと思う。
「ほら、ペット飼う時って最初に躾けするじゃない? 最初に上下関係を教え込んでしまえば、どんな生き物も言うことを聞いてくれる良い子になるよ!! ──お手!!」
「くにゅにゅ♡」
「ゴキキ!!」
「イビビ……」
「ああ……だから頭にコブが出来てんのか……」
彼らの頭に出来た巨大なコブを見てクイーンが言う。まあそういうことだ。ここに来る途中で暴れそうになったから全員一発ずつ叩いて躾けてあげた。
すると全員“逆らいませんから許してください”と言わんばかりに怯え媚びて来たので、笑顔で命令して連れてきた。
「一度躾けたら仲間意識とか上下関係とかはすぐに理解してくれるし、そこらの下っ端でも指示すれば聞いてくれるんじゃないかな♪」
「ウォロロロ!! そういうことだ……こいつらは“ナンバーズ”。ウチの戦力として今日から加わる連中だ。仲良くしてやれよ野郎共」
怪物集団“ナンバーズ”。
全員が体長30メートルから60メートル程の巨体を持ち、その巨体に見合うだけのパワーとタフネスを持つ連中。
これで百獣海賊団がまた一歩、最強の海賊団に近づいた。今回の宴はそれを祝う意味もある……が、やることはまだまだある。
私はバーベキューで肉の刺さった串を手にとって食べ始めながら考えるが……そこでじっと見られていることに気づく。
「ジュキ……」
「くにゅ……」
「フガガ……」
「ん? どうしたの?」
「ジャキキ……」
見ればお腹を擦っている。そして私が焼いているお肉をじっと見ていた。あー、なるほど。
「お腹空いた?」
「ゴキ……」
「ザギ……」
「……食べる?」
「! ハチャチャ!!」
「ロキキキ!!」
「えっ……いやぬえさん、その肉はマズいんじゃ──」
「もう食べちゃってるけど……」
「ジュキキ~~♪」
「ナギギ!! ナギギ!!」
「え~~~!!? 食べたァ!!? 食べて大丈夫なのか!?」
私の食べてる肉が欲しかったみたいなのであげてみると、その鋭い牙でむしゃむしゃとあっという間にお肉を食べてしまった。しかも美味しそうに。あれ? 味覚とかも獣に近い感じになってるし、忌避感とかもないのかな?
「ジュキキ!! ジュキキキ!!」
「美味しいって!!」
「え~~~……マジかよ……」
「もう殆ど獣ね……」
クイーンとステューシーが引いている。でも私は感心していた。そうか……この子も──いや、この子達もいけるのか。うんうん、よくわかってるし、餌をあげると喜ぶし、中々可愛いじゃん。これは仲良くなれそうだ。
「よしよし!! それならもっとあげる!! キング!! お肉じゃんじゃん焼いちゃって!!」
「……ああ」
「ゴキキ!! ゴキキ!!」
「ハチャ~~!!」
「メチャクチャ肉食ってるんだが……不安過ぎる……」
バーベキューのお肉をばくばく食ってる彼らを見てクイーンが不安がる。心配しなくても仲間は食べないし、言うこともちゃんと聞いてくれるから心配ないと思うけどなぁ。
「はいはい。いっぱい食べていいよ~♡ それで、食べたらちゃんと仕事してね♡」
「ジュキ?」
躾けは餌と鞭が基本。餌を上げたらその分働いてもらう。ただ食いはダメだからね。彼ら……ナンバーズにはここで最初の仕事に取り掛かってもらおう。
「戦力を強化するための訓練相手になってもらうわ!!」
「ジャキ!!」
「えっ……」
「ぬ、ぬえさん?」
宴会を終えて集まった部下達の顔が引き攣っている。明らかに見た目化け物なこの子が襲いかかってくるというのは、確かに普通に考えたら恐怖でしかないだろう。
だが、それを乗り越えてこそ、百獣海賊団の幹部だ。この子達ナンバーズを倒せるくらいじゃないとね。最強の海賊団の幹部になろうと言うんだからにはそれくらいじゃないと。ただでさえ、ウチはロジャーや白ひげ、リンリンのところと比べて質が劣ってるんだしさ。
「ふふふ、あなた達も頑張ってね♡ この子を倒せるくらいになったら即幹部だし、ある程度戦えるようになったら幹部にしてあげるから」
「ムハハ!! 大変だなおめェら!! 頑張れよ!!」
「そんな!! クイーン様、自分が訓練から解放されたからって!!」
クイーンは訓練から解放されたと思って喜んでいた。確かに、これくらいじゃキングやクイーン、ステューシーにとっては訓練にならなそうだからね。でも──誰も訓練がないなんて言ってない。だから私は、敢えていたずらっぽくクイーンに言ってやる。
「良かったね。これで……部下達をこの子に任せて、こっちの訓練にも集中出来るし♡」
「…………えっ?」
クイーンが間の抜けた声を出した。私は槍を取り出してそれを構えると、奥からも準備が出来たのか、酔ったカイドウが金棒を持って現れ、
「ウォロロロ!! お前らもおれとやり合うってのか!! 感心するぜ!!」
「それじゃ、私とカイドウの攻撃にいつも通り耐えてね♡ 3人とも」
「…………」
「……諦めろクイーン。おれ達じゃ、2人は止められねェ……」
「もうどうにでもなればいいわ……」
「……くそ~~~!! 後で腹いせにおしるこたらふく食って侍共を苛めてやる!!」
「ウオオオオ!! 行くぞォ!!」
「イエーイ!! 鬼ヶ島での初訓練開始~!!」
「ジュキキ!!」
「うわぁ~~!!? いきなり襲いかかってきたァ~~~!!!」
──と、そんな訳で私達百獣海賊団に新たな戦力がまた加わり、私達は新たに手に入れた戦力と本拠地で修行に励んだ。
百獣海賊団の船員にとって、戦うことは日常であった。
そして古参の船員であれば、戦うことは命懸けであると誰もが知っている。
そう、戦闘には常に“死”が付き纏う。たとえそれが……“訓練”であったとしてもだ。
船長と副船長の喧嘩……それもまた非常に危険なものであり、巻き込まれれば容易に死に至るため、日常は常に死地であった。何を言っているかわからないかもしれないが、真実だ。百獣海賊団に属していると、嫌でも生存本能とやらが鍛えられるし、身体も頑丈になる。いや……頑丈である者だけが生き残るの間違いか。
「ジュキキ~~~!!」
「ぐあああ~~~っ!!!」
「チキショウ!! あんな化け物、どうやって戦えばいいんだ!!」
「ハァ……ハァ……死ぬ……!! ギブだギブ!! クソ……!!」
──そして今日もまた、新たな本拠地であるという無人島で、実戦でしかない訓練が行われた。
岩場に次々と倒れていく百獣海賊団の船員達。これでも、船長達の方針転換によって最近は死者は抑えられるようになっている。あまり死者や重傷者を出すと海賊団として立ち行かなくなるかららしい。頭数が揃わないのも困ると。
そしてそれを聞いた時、古参の船員はこう思った──そりゃそうだろ……もっと早く気づけよ……と。お頭達はバカなのか……などとはたとえどんな拷問を受けようとも口にはしないし、思ってもいけない。そんな言葉が耳に入ったら殺される。
だが古参の船員はそのお頭達の異常な強さとイカれっぷりに憧れてもいた。そもそもだ。そういう奴がウチには多い。どいつもこいつも他人の事なんざどうでもいい。とにかく暴れたくて、気に入らない奴を傷つけたり殺したり、好き勝手することが好きな奴ばかりであり、そして、お頭達の強さを尊敬してここに入った者ばかりだ。
古参の船員はそうだし、最近入ってくる者や、お頭達のスカウトを受けて入る者も皆その強さを怖れ、同時に尊敬している。畏怖しているのだ。だから、自分も強くなると息巻いて、幹部の座を狙う者は多い。かくいう自分もその1人だ。
だからこそ、こんなところでいつまでも下っ端に甘んじている訳にはいかなかった。力を解放し、化け物を迎え撃つ。
「オオアアァッ!!」
「ジュキキ!!」
鋭い爪を打ちつければ、化け物は吹っ飛び、地面を転がる。だがこれくらいでは倒れないし、こちらも一発二発では倒れない。悪魔の実の能力──動物系古代種である恐竜の力は通常の動物系よりも凄まじいパワーを得る。
古参の船員は少し前に、副船長であるぬえさんに認められて悪魔の実を与えられた。本当ならそこに幹部の座もついてくる筈だが、今はまだ頭数も少ないし、組織図も考えてるところだからと、明確な地位は与えられてはいない。
とはいえ、能力者である百獣海賊団の戦闘員は、実質他の船員と比べても幹部扱いであるため、そこまで不満がある訳ではない。幹部の座は確約されているようなものなのだ。
しかし──そういった気の緩みを容赦なく叩くように、お頭達は自分達の訓練を激しくするし、戦いでも最前線に出す。
ゆえにもう何年も殺し合いを続ける生活を送っている。嫌ではないが、時には勘弁してくれ……と思う時はある。お頭達の喧嘩にシマごと巻き込まれた時や、酔った時の訓練で死にかける程の重傷を負って砂浜に転がされた時などは本当に勘弁してほしかった。六式の訓練と言ってメチャクチャに追い回された時も恐怖でしかなかったが……と、思わず頭が痛くなる。
だからそれに比べたらこんなただの化け物くらいなら大したことない。今までの地獄の様な戦場に比べれば随分楽だ。最近入ったばかりの連中はわかってない。これで地獄だと言っていたら、お頭達が喧嘩しだしたら卒倒するだろう。島くらい簡単に壊れかねない規模のものだ。
それに訓練が終わればきちんと治療はしてもらえる。だから……軽く半日くらいの訓練はいつものことだ。
──というのも全員じゃなくて、やられずに残ってる奴等を指して、主にぬえさんが言うのだ。本人曰く愛嬌のある笑顔で、
「あなた達、やるじゃない!! ──それじゃあもう数時間くらい
「!!」
──その発言に残った者達……主に能力者の連中が絶句するのもいつものこと。
数時間という言葉より、一緒に、という言葉が何よりも恐ろしい。つまり──カイドウさんとぬえさんに追いかけ回されるということだ。
その瞬間、先程までギラギラとした目で血気盛んに戦っていた者達も、一瞬で逃げる態勢を取る。背後には既にぬえさんが大量のUFOを出して楽しそうだし、酔ったカイドウさんは既に金棒をブンブンと振り回して、巨大な岩石をまるで豆腐か何かのように削り取っていた。
そして先程から逃げ回っているキングさんやクイーンさん、最近入ったジョーカーという幹部も言う。迫真の表情で、
「──おれは行く……!!!」
まずはキングさんだった。誰が相手でも恐れずに突っ込み、戦果を上げてくるキングさんが威厳たっぷりに変型し、プテラノドンになって飛んでいく。──カイドウさん達とは反対方向に。“おれは行く!!”ってまるで向かっていく感じで逃げていくから何とも言えないが、そんなキングさんを責める者はいない。飛んで逃げるキングさんを龍になったカイドウさんが同じく飛んで追いかけていく。その光景を見るととても情けないとは言えない。大きさ的に蚊が鷲か何かに追いかけ回されてるくらいの差があり、まるで自然の無情さを見ているような気持ちになれる……あ、叩き落とされた。あのキングさんですら、耐え続けるので精一杯なのだ。おれ達が耐えられる筈がないと思うのも必然だった。
「よし!! おめェら、後は任せた!!」
「え~~!!? お待ちを!! クイーン様!!」
「うるせェ!! おれはもう4時間も鬼ごっこしてんだ!! 殴られては耐え、殴られた勢いで飛んで逃げ……空を飛ぶUFOから身を潜め、逃げ続けること4時間のおれの大冒険の苦労がお前達にわかるか!!! 少しは時間を稼げ!!」
クイーンさんがその巨体に似合わない俊敏な動きで地上を駆けて逃げていく。そしてその叫びは必死さと苦労が滲み出ていた。……だが逃げた先にぬえさんと思わしき影が向かっていき、その直後にクイーンさんの絶叫が轟いた。これは地獄の鬼ごっこ。捕まったら最後、耐久力の試練とかなんとか言って殴られる。手加減してるから大丈夫って? ──パンチ一発で鉄を粉々に出来る2人の一撃が大丈夫な筈がない。それでも耐えてるだけやはり最高幹部は凄かった。最後の1人も、
「ああ……今日も血の雨が降るわ──
「私の!!?」
“戦災”のジョーカー。とんでもない美女の最高幹部で、吸血鬼の能力を持つ……が、誰かに雰囲気は似ているが、誰かはわからない。他人の空似だと思う。──まあそれはいい。実力は折り紙付きのジョーカーさんだが、こちらもまた、一見カッコいい振る舞いで相手に恐怖を与えるような独り言を呟くが、最後の“私の”という末尾で台無しだ。あんなに美人なのにカイドウさんとぬえさんは全く容赦しない。大量のUFOが弾幕をジョーカーさんに放ち、ジョーカーさんはそれを必死に空中で避け、時に覇気を纏わせた傘で弾いている。凄いけど、耐えるしかないのが見て取れるから可哀想でもあった。
──そしてまた俺たちも……。
「ほらほら、あなた達ももっと戦っていいんだよ!! 訓練なんだし、今だけは殴っても怒らないからさ!!」
「ヒッ……!!?」
──気がつけば背後にぬえさんがいた。とはいえ、おそらく分身だと思う。本人はさっきクイーンさんを追いかけていった筈だ。
「ん~、やっぱ今残ってるあなた達は他と比べても結構強いよねぇ。──そろそろプレゼントもあげようかな?」
「!!」
「あ、でもこの訓練が終わってからね♡ 頑張ってね~!!」
「……はっ!!」
その発言によって残った連中は僅かに気勢を取り戻す。
……だがそれも焼け石に水。終わってみればやはりと言うべきか、鬼ヶ島には死屍累々となった百獣海賊団の船員達が至るところで蹲っている。
何とか動けるのは最高幹部の3人や、能力者の連中、数人程度だ。
今襲われたらどうなるのだろうと思わなくもないが、船員の半分程度は都に残してきているし、問題ないのだろう。いざとなればカイドウさんかぬえさんが単騎で突っ込んで殲滅してくれる。2人だともっと酷い。海軍の軍艦すらあっさり沈めてくる。
自分達もそこまでとは言わないが、最高幹部のように島1つを滅ぼすだけの力を手に入れれば、どれだけ気持ちがいいかと夢想する。──そんな時だった。カイドウさんとその肩に乗ったぬえさんがやってきたのは。
「ウォロロロ……最後まで残って動けるとはやるじゃねェか」
「やっぱり能力者は伸びしろ高いね~。──ってことで、突然だけどあなた達にプレゼント!! 幹部としての……コードネームをあなた達全員にあげまーす!!!」
『!!』
その言葉に、ボロボロだったその場の連中の目が驚きと喜びに染まる。百獣海賊団幹部の座。一海賊団の部下となることを決めた連中もまた、仄かな野心は残っている。誰だって下っ端よりは幹部として君臨したいものだ。力をつけて暴れたい奴等だらけのここでなら尚更。
故に今残った数名は例外なく喜んだ。ある者はカイドウさんやぬえさんの役に立てると思い、ある者はこれで更に名を上げられると。またある者はこれでよりもっと暴れられると思い、そして誰もが認められたことに喜んだ。
海賊としての碌でもない喜びを得ている間、カイドウさんとぬえさんは2人で軽い調子で話している。どうやらコードネームをどうするかで話し合ってる様子だった。だがややあって、それは決まり、1人1人にコードネームを与えていく。
そしてその名前は全て──トランプゲームの名前から取られていた。
1人。そしてまた1人……名前を付けられていく。スカウトされて入った名のある海賊も、元海賊ですらない新入りもいたが、ここでは実力が重視だ。文句を言う者などいない。中には古参の、見習いの頃からいる船員もいる。
「じゃああなたはポーカーでこっちのあなたはカシノ。そんであなたは……」
そしてまた1人、また1人と名前が付けられる。ぬえによって名付けられた名前を名乗り、呼ばれることになる少年もまた、他の幹部同様凶悪な笑みを浮かべてその名を心に刻んだ。身体の痛みはもう感じない。血は熱く、身体は内側から昂ぶっている。これだけ痛めつけられた後なのに、今直ぐに暴れたいくらいだ。
──そしてこの日、カイドウとぬえに名付けられて幹部となった者達は後に百獣海賊団の幹部、“真打ち”として名を馳せることになるのだった。
ナンバーズが誕生。まあナンバーズはまだ数少なく、飛び六胞はそもそもまだただの幹部で数も少なく、揃ってもなければ、“真打ち”と呼ばれてもいませんが。詳細は来週の月曜くらいかな(原作待ち)
ちなみにページワンはまだ10代の少年です。本作だとカイドウも含めてどいつもこいつも成長速度が上がってます。数年くらいは早まってるので、幹部になるのも早い感じです。ページワンは勝手に40歳前後と仮定してます。これで実はあれで20代後半とかだったらヤバいので今のうちにお祈りしておきます()
次回はまたワノ国の兵器だったり、住人苛めだったり、海賊活動も行っていきます。そしてトキが帰ってきたらまた酷いことになります。ナンバーズも、これからはぬえちゃんとよくお散歩に行く予定です。食料は現地調達で。微笑ましいね!
感想、評価、良ければお待ちしております。
追記
ナンバーズ関連を訂正しました。
後ページワンがまさかの二十歳だったので修正しました。