正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる 作:黒岩
その歴史的大事件は即日、全世界を駆け巡り、人々にこの先の荒れ狂う海を予感させる。
その時、多くの夢見る男達の伝説が始まったのだ。
「おれは行くぞ!! “
「ロジャーは言った!!! あいつの財宝は“
「“
「大きくなったら海賊になるんだ!!!」
“
世界中の人々はその報せに熱狂する。
人を衝き動かすものは“夢”と“ロマン”であることを証明するかのように、人々は挙って己が信念の旗を掲げ、海へ出る。“海賊王”が置いてきたという宝──“
──かくして“海賊王”ゴールド・ロジャーのその死と共に“大海賊時代”の幕が開いたのだ。
「ロジャーめ……やってくれたな……!!!」
「海賊達の心をへし折るどころか……その逆……心に火を灯した……!!」
だがその人々の熱狂の裏で、その時代の始まりに頭を悩ませ、心に不安を浮かばせ──あるいは既に実害を被る者達も存在する。
「コング元帥!! 各地からの増援要請の電伝虫が鳴り止みません!!」
「海賊達の数が急速に膨れ上がって……!! とても抑えきれないと……!!」
「っ……!! まさかロジャーの処刑がこれほどの事態を招くとは……!!」
突如として始まった海賊達の時代に、世界の海の治安を守る海軍本部はその対処に苦慮することになる。
世界政府。そして各国とも、各地で暴れ回り、名を上げる海賊達の台頭を防げず、多くの被害を出してしまっていた。
そんな中、最も被害の大きい場所が2つあった。
「ぎゃはは!! 見ろよ!! 本当に魚人がいやがる!! 気持ち悪い!!」
「人魚ってのは高く売れるらしいな!! どうせなら一匹攫っていくか!!」
──1つは魚人島。
元々魚人差別により、島を訪れた人間に荒らされることが多かった島だが、大海賊時代が始まってからその島の被害は増えた海賊達の数に比例して膨れ上がった。
そしてもう1つは当然、その魚人島を通過したその先……
「うぐ……く、くそ~~~……!!」
「やめろ……ハァ……ハァ……仲間を殺したらタダじゃおかねェぞ……!!」
「…………」
「ぎゃああああ~~~~!!!?」
「なっ──て、てめェ……!!!」
新世界の海は
4つの海にいる海賊達から“海賊の墓場”と恐れられる
だが前半の海を渡り、実力を身に着け、自信をつけ……そして新たな冒険を夢見て新世界を目指す多くのルーキー海賊は知らない。
新世界は今──酷く荒れている。それもその筈、今はちょうど均衡が崩れたところであった。
かつてこの新世界の海に君臨していた海賊の覇者達。“ロジャー”、“白ひげ”、“金獅子”、“ビッグ・マム”。4強と称される彼らが支配する海こそこの新世界だった。
だが今は違う。“海賊王”となったロジャーは死に、“金獅子”のシキはインペルダウンに幽閉され、金獅子海賊団は今、後釜争いによる内部分裂と外部からの干渉により半ば壊滅状態に陥っている。
これにより、新世界に根付く多くの海賊達の動きが活性化した。彼らは大海賊時代が始まって海賊になったようなルーキーとは違う。元より、その4強と競ってきた強豪海賊達だ。
そう……荒れているのは新世界の島々もだが、それだけではない。新世界にやってきたばかりのルーキー海賊達、自分の強さを、この海のレベルを勘違いし、無謀にもこの海の覇権争いに参加しようとした奴等もまた、今まで彼らが襲ってきた民間人と同じ様に、新世界の海賊達に何もかもを奪い取られて消される。
特に──彼らは不幸だった。現在、新世界を活動拠点にする海賊の内、“白ひげ”と“ビッグ・マム”を除けば最も凶暴で、ここ最近で急速に活動を活発化させ、勢力を伸ばしている海賊団に狙いをつけてしまったのだから。
──新世界の事情を知る中堅以下の海賊なら、そのイカれた海賊団とは関わりたくもないだろう。その“二本角の髑髏”を旗に掲げる一味──“百獣海賊団”は、とにかく凶暴で凶悪。イカれたエピソードには事欠かず、たとえ4強が相手だろうと海軍本部の大艦隊が相手だろうと牙を剥いてきた危険な武闘派集団なのだ。
だが野心を強く持つ者であればその限りではなかった。
「──殺したぞ。どうだ、何かやれるものならやってみろ」
「お、お前ェ……が、ああああああっ~~~……!!」
当然……新世界に入りたてのルーキーの虚勢染みた脅しでビビるような者はいなかった。
「タダじゃおかねェと言いてェのはおれの方だ……お前らみたいなつまらねェ雑魚を相手に、時間を取らせやがって……!! お前らはタダじゃ殺さねェ……1人1人バラバラにして獣の餌にしてやる……!!」
「あァ……グう……や、やめて……くれ……わかった……謝る……!! だから命だけは──」
「黙れ……耳障りだ……」
「ぎゃあああ~~~~!!?」
髑髏を掲げるとある海賊団の船。その甲板の上で若い海賊達の腕を容赦なく刀で切り落としたのは、顔の上部分を二本の角がある鬼の様な被り物をして服の前をはだけたスーツ姿の男だった。
彼はその海賊団の船長であり、ルーキーとして新世界に入った男。その途中、新世界に入りたての百獣海賊団傘下のルーキー海賊達に襲われたので、それを蹴散らした。その名を部下が呼んだ
「──フーズ・フー船長!! この男、思ったより懸賞金懸かってますよ!!」
「何……? そうか。ならこいつは海軍に突き出すぞ」
「はいっ!!
「……何言ってやがる……!!」
「へ……? ウブッ!!?」
フーズ・フー。そう呼ばれた男は部下の言葉を聞いて船長だけは懸賞金を得るために海軍に引き渡すことを決めた。無論、首だけではあるが。それを聞いて賞金稼ぎを装って賞金を受け取る
「バカかてめェは……おれ達が今、これから何をしに行くかわかってんのか……!!?」
「う、が……は、はい……勿論、怪物の首を取りに行くんですよね……?」
「そうだ。ならわからねェか? これは頭だけを狙うことの出来る絶好のチャンスなんだよ……!!」
百獣海賊団の船長、“百獣”のカイドウ。それにその兄妹分にして副船長の“妖獣”のぬえ。百獣海賊団のトップ2人であり、新世界においてその名は酷く恐れられている。その圧倒的な戦力は並の海賊ではその顔を拝むことすら叶わないだろう。
しかしだ。今は状況が違う。
「裏から得た情報に寄ると、今百獣海賊団は金獅子のナワバリを狙って大規模に動いてる。船長自ら、単身で残党を蹴散らしてるところだ。」
「! なら、おれ達にもチャンスが……!!」
「ああ、そうだ……だからこの隙に乗じてその首を取ればこの新世界で圧倒的な地位を得ることも夢じゃねェ……!!」
「!!? そ、それは……」
そのフーズ・フーの言葉を耳にしていた海賊団の船員は一気にどよめく。
すなわち……海賊王。その次に来る四強とも呼ばれる大海賊。
今はそれを狙う絶好の機会だということだ。
「わかるか? それには手柄が必要だ……こんなつまらねェルーキーに時間を取られて、万が一にでも出遅れてみろ……おれもお前達も上に昇るチャンスを失うかもしれねェんだ!!」
「な、なるほど……それは……!!」
「事の重大さが理解出来たか? ──ならさっさと動けバカ共……!!」
『は、はっ!!』
フーズ・フーの一喝によって一斉に動き出す海賊団の船員。彼らもまた一船員とはいえ荒くれ者の海賊。野心は必要以上に持ち合わせていた。
刀を鞘に納め、海賊達の始末を部下に任せて船内に戻るフーズ・フー。彼は軽く舌打ちをしながら、船内から聞こえてくる声を聞いて呟いた。
「チッ……雑魚海賊の相手で時間に遅れちまった……!! 今のうちに準備を進めておくか……」
そうして、彼は扉を閉めると、室内から獣の鳴き声が鳴り響き、甲板にまでそれが届く。
「フーズ・フー様……苛ついてたな……」
「ああ……聞こえるだろ。船内から聞こえる音……あれもまた苛立ちを表してやがる……!!」
「新入りは下手なことすんじゃねェぞ……下手して船長に処罰されてもしらねェからな……!!」
「うっ……な、中で一体なにを……?」
それを聞いた部下達は誰しも顔をしかめて自分達の仕事に戻っていった。
新世界のその島は、かつて新世界の4強と呼ばれた“金獅子”の旗を掲げていた島であった。
だがその金獅子海賊団の大親分、“金獅子”のシキはロジャー逮捕の報を受けて海軍本部に特攻をかけ、ガープとセンゴクとの死闘の末に同じく逮捕。大監獄インペルダウンに幽閉された。
その後、金獅子海賊団に起きたのは混乱と悲劇だった。シキが捕まったことで、金獅子海賊団は次の後釜を据えるか、玉砕覚悟でインペルダウンに救出に行くか、それとも様子を見るか。それぞれの意見で食い違い、大いに荒れた。
中にはシキが捕まったと知ってすぐに離反した者さえいる。その者達は目敏く、そして幸運だった。シキのカリスマで纏めていた何十隻もの海賊艦隊。幾つもの海賊団。元はバラバラだった彼らが、シキがいなくなったことで勢力を保てる筈はない。そもそも、4強というのはトップの強さがあるから成り立っているのだ。
タイミング悪く、ロジャーの処刑により大海賊時代も始まり、新世界に参入してくる海賊も増えた。その大半は駆逐されたとはいえ、この隙を他の猛者達が見逃す筈がない。
そして彼らにとっての不運は、その隙を虎視眈々と狙っていた海賊団が、あの“百獣海賊団”であったことだろう。4強が圧倒的だったとはいえ、そんな4強にも臆さず挑みかかってくるイカれた連中。あの怪物カイドウがトップを務める獣の軍団。
それでもすぐに跡目を立て、まとまって対処すれば撃退は出来たかもしれない。
だがそれは出来なかった。その結果が──
「や……やべで……ぐれ……お願い、だ……だのむ……!!」
「ハチャチャ?」
「ゴキキ……」
「くにゅにゅ~♡」
「ジュキキー!!」
「あ、あ゛あ゛~~~……!!! やべろッ!! やべ──」
かつて立てられていた金獅子の旗は建物ごと折られ、島ごと燃やされ……そこにいた海賊達は例外なく怪物達に叩きのめされた。重傷者の男の断末魔とバキバキ、バリッ、という音が同時に鳴る。そして異形の怪物達は喜びの声をあげた。しかしその直後、
「──こらぁ~~~!!! つまみ食いは駄目だって言ったでしょ!!」
「イビ!?」
「フガガ……」
「く、くにゅにゅ!!」
「ザギギ……!!」
その燃える島には一見、似つかわしくない黒髪の少女が颯爽と飛行して現れ、巨大な怪物達を頭を叩いて叱りつける。先程まで敵相手に容赦なく暴れていた彼らは一斉に怯え、頭を抑え、まるで謝罪するかのように大きい身体を小さく丸めたり屈めたりした。どうやら少女は怪物達を従えるほどの存在であるらしい。──あるいは、その少女こそが1番の怪物なのか。
その真偽は彼女を知る者ならば誰でも知っている。この異形の集団“ナンバーズ”よりも、彼女1人の方が恐ろしいと。
「ちゃんとこの後焼き肉パーティするんだから、お腹空いても我慢!! 我慢した方が焼き肉は美味しいんだから!!」
「ジュキキ……」
「わかった? ──それじゃほら、運ぶものはちゃんと運び込んで、さっさと焼き肉パーティするわよ!!」
「ロキキ!!」
「はい、それじゃ撤収~~~!! ──って、いつまで暴れてんのよカイドウ!!!」
「うブ!!?」
その少女は怪物達に指示を出し、宝や食料などを船に運び込ませると、まだ町の上で酔って暴れていた巨大な龍──カイドウに近づき、そのまま頭を殴りつけた。
するとカイドウは龍形態のまま少女をジロッと睨み、
「何すんだぬえ!! ──ヒック……おれァ殴られるようなことした覚えはねェぞ!!」
「もう敵いないのに無駄に町を破壊しちゃ駄目でしょ!! おかげでまた建て直さないと、この島手に入れる意味がないじゃない!!」
「なんだそんなことか……そんなもん、部下に建てさせりゃいいじゃねェか」
「そんなの駄目よ!! ──いや、やっぱいいか!! 別にそれでも!!」
「ええっ!!? いいの!!?」
上空でやり取りを交わし、急にカイドウの言に賛同したその少女──ぬえにそれを聞いていた百獣海賊団の部下達がツッコむ。何をするかわからない正体不明の副船長の気まぐれさはいつものことだが、やはりまともな荒くれ者である船員達はツッコまざるを得なかった。だがぬえは気にせず空中で船を指差すと、
「よーし!! さっさと次も攻め落とすわよー!!」
「了解です!! この島はどうしますか!?」
「さっき言ったでしょ!! ここにも部下を残して次行くわよ。──ブラックマリア!!」
「──はい、ここに!」
ぬえは1人の部下の名前を呼ぶ。すると1人の幼女が立ち上がり、ぬえに向かって威勢よく返事をした。
だが先程のナンバーズとは違い、幼女にしては大きいが異形ではない。二本の角こそあるが、それは珍しくないもの。ワノ国の派手な着物を身に纏い、髪を簪で結った、まるで花魁の様な格好をした少女だ。その自分よりも大きな幼女相手に、ぬえは顔の近くまで近づいて指示を出す。
「あなたに仕事をあげる! 他の皆と一緒にこの島を守ってね♡」
「……それだと可愛いぬえさんが見られなくて残念だけど……それも仕方ないですね!!」
「可愛い……そ、そう? やっぱそうよね~♡ さすがブラックマリアはわかってるじゃない♡」
「ぬえさんのファンとしては当然ですわ!! いつも怖くて可愛いぬえさん……ホント最高……♡」
『百獣海賊団見習い“真打ち(内定)”ブラックマリア』
まだ子供も子供だが、百獣海賊団の幹部であり、ぬえのファンでもあるブラックマリアは頬に手を当ててぬえを可愛いと褒める。それにぬえは照れて調子が良くなった。それを見ていたカイドウはフラフラと船に近づいていきながら、
「ウィ~~~……ヒック。おい、ブラックマリア……ちゃんとこの島を守っとけよ……!!」
「ええ、勿論ですカイドウさん! ──皆も準備は出来てるかい?」
「へい!! 勿論ですお嬢ォ!!」
「ヒャッハー!! 活きの良い木材が大量だァ!!!」
「建て直しがいのある島じゃねェか……!! 地盤もしっかりしてやがる……!!」
「へへへ……覚悟しろよ……!! てめェらをズタズタに解体して、組み立てて立派な建築物にしてやらァ!!!」
「釘よし!! のこぎりよし!! 図面よし!! 木材よし!! 安全確認よし!!」
と、ブラックマリアの背後には大量の木材、そしてそれを前に舌舐めずりをしている凶悪な人相の男達がいた。彼らの視線は獰猛。極上の獲物を前に鼻息を荒くする獣そのものである。
それらを指して、ブラックマリアは手に持った扇子から離し、
「私達に任せればこれくらいの島、ちょちょいのちょいで建て直しますわ」
「……おいぬえェ。お前、いつの間に職人をウチに入れたんだ?」
「入れてないわよ。皆勝手に、必要に応じて覚えただけの連中みたいだし……まあ私達のせいみたいだけど……」
カイドウがくるっとぬえの方を向いて尋ねると、ぬえがひそひそと耳打ちして答える。どうやらぬえにとっても想定外だったらしい。いや、そういう奴等がいるのは知っていたが、どうやら数が増えている。伝染したのか……と、ぬえは困惑した。クイーンの
「……とりあえず、気を取り直して次行きましょう。ブラックマリア、後は任せたからね!!」
「はい。ぬえさんのように、ウチのナワバリに入る奴等は1人残らず潰してみせます♡ ──お前達!! 始めるよ!!」
「ヒャッハー!! 工事開始だァ~~~!!」
「……まあこれはこれで面白いし、役に立つからいっか!!」
ぬえはブラックマリアの陣頭指揮に従って工事を始める部下達を眺め、カイドウや部下達と共に船に乗り込み、次の場所へと向かう。シマを奪うには速さが命だったし、何人かの頼りになる部下も出来始めている。ある程度分散させても問題ないくらいには、百獣海賊団の戦力も充実していた。
──その頃。また別の島では、
「ん~~~~♪ エキサ~~~イト!! ムハハ!! 歯ごたえがねェな!! 金獅子がいなきゃこんなもんか!!」
「後は島を奪っていくだけだが……ジョーカーの情報だと幾つかの海賊団も金獅子のナワバリを狙ってやがるみてェだな……」
「ロジャーの野郎が死んだせいで雑魚海賊が増えてるみてェだからな!! まあおれの敵じゃねェ~~~♪」
その島もまた、かつて金獅子海賊団のナワバリだった島だった。
周囲に歯向かった大勢の海賊達の死体の山を作り、百獣海賊団の最高幹部、キングとクイーンは港に海賊旗を立て、奪った財宝や物資を部下達が運び込むのを待っていた。
大海賊時代が始まり、4強の内の2つが一気に脱落したことで、新世界は大いに荒れている。ナワバリを広げ、部下を増やし、勢力を拡大させるには絶好のチャンスであった。
そして多くの部下達は、組織再編の噂を耳にして、より気合いが入っている。狙うはより上の地位。幹部の座。海賊はいつだって美味しい思いをしたくてしょうがないのだ。
もっともキングやクイーンといった最高幹部には関係のないことではあるが、部下が増えるとやりやすくもなる。最強の海賊団を目指すなら強い部下は幾ら勧誘しても足りなかった。
そんな中──また1人、そう、1人の少年が彼らに近づいた。
「あ?」
「ん?」
「…………」
キングとクイーンがそれに気づく。少年──いや、本当にガキだった。
口元、歯が尖っている子供であり、おそらく普通の人間ではない。魚人か何かだろう。それに気づいた部下は驚き、
「うわっ!? いつの間に忍び込んだんだこいつ!?」
「す、すいません!! すぐに追い出します!!」
「……この船に乗せてくれ」
「あァ!!? 寝ぼけてんのかガキ!! ウチは託児所じゃねェんだぞ!?」
「海賊だ!! わかったら失せろ!!」
部下達が子供に凄み、その子供を追い出そうとする。普通の子供なら、これだけでも走って逃げるか、腰を抜かして立てなくなるだろう。
しかし、その子供は違った。立ち塞がる船員達にゆっくりと近づき、その足を横に押しのけた。
「うおわっ!!?」
「うご!!?」
「え!!? な、なんだこのガキ!! すげェパワーだぞ!?」
子供は容易に海賊の足を払い除けてキングとクイーンに近づく。見上げる程の大きさ。キングとクイーンからしたら容易に踏み潰せてしまう、まるで子犬の様な小ささだった。
だがその子供はジッと彼らを見つめ、もう一度言ってみせた。
「……おれをこの船に乗せてくれ」
「……ほう?」
「…………」
中々に度胸のある子供に2人は興味を示す。もっとも、よく見れば子供はキングとクイーンを前に汗を額に垂らし、僅かに震えてはいた。度胸はあっても、そのどうしようもない実力差を感じ取っているのだろう。
しかし、見たところ二桁にも届かないほどの子供だ。それでこの度胸と、並の船員を弾き飛ばす程のパワー。それにキングとクイーンは気づいた。悪くはない逸材だと。
「ムハハ、面白ェ。海賊になりてェのか。親はどうした?」
「……いねェ」
「魚人は生まれつき、人間の十倍の筋力を持つ……だがその歴史から魚人は差別されてもいる。大方、捨てられたか売られたか……」
「……知らねェ」
「ワハハハハ!! なるほどなァ、生まれた時から1人か!! 面白ェ!!」
と、クイーンは子供の境遇を聞いて大笑いする。キングが説明した様に、何かあったのだろう。もっとも、子供過ぎて何があったのかは分からず、ただ単に1人になっただけの様だが。
しかし境遇は関係ない。クイーンは頷き、膝を叩いた。
「よし、ウチに入れてやる!!」
「え~~~!!? 本気ですかクイーン様!!」
「まだガキですよ!?」
「何驚いてやがる!! 他にもガキはいるじゃねェかドアホ共!! さすがにここまで小せェのはいねェけどな!!」
「実力があるなら問題ねェ……カイドウさんとぬえさんにはおれ達の方で紹介しておく。ここまでのガキを何も言わずに置くと問題になるかもしれねェからな……」
「う……は、はい……!!」
クイーンとキングにそう言われたら部下達は引き下がるしかない。それに実際、百獣海賊団は子供であっても入団を断らないことが多い。ぬえが子供好きなこともあるが、それとはまた関係ない。カイドウも認める。
何故なら強ければ問題ないし、弱ければ勝手に死ぬのだ。子供の頃に入団して、今でも子供だが強くなって立派に戦力として数えられてる者だっている。別に損はないのだ。何も親の様に何から何まで面倒を見るという訳ではないのだから。
それを理解しているからこそ、キングもクイーンも許可した。無論、子供の将来性を垣間見たせいもあったが、役に立たないならそれでもいい。しかし一応は有望な存在でもあるため、クイーンが名前を問いかけた。
「──名前は?」
「……“ジャック”」
「は?
「おあつらえ向きな名前だな……それとも、おれ達のことを知ってそう名乗ったのか?」
「……おれはジャックだ」
「ムハハハハハハ!!! 駄目だ!! 面白ェ!! こんなガキがいきなりジャックだなんてよォ!! それっぽすぎて笑っちまうぜ!!」
「フン……いい度胸だ」
ジャックと、そう名乗った子供に対し、クイーンは耐えきれないといった様子で腹を抱えて大笑い。そしてキングはその少年の真意を見抜こうと質問を重ねたが、意味が分かってないのか、ただジャックだと返す子供の度胸を褒めた。そして部下達に視線を向け、
「──おい。こいつに仕事を与えてやれ」
「えっ? し、仕事ですか?」
「力はある。仕事は教えてやれ。──おれに同じ事を二度命令させるつもりか?」
「っ!! は、はっ!! 了解です!! ──お、おいっ、行くぞガキ!!」
「…………ああ」
「ワハハハ!! 聞いたかあの返事!! 生意気にも程があるぜ!! どんだけ面白ェんだ!!」
「ぬえさんが気に入りそうだな……まあいい。さっさと出航して合流するぞ」
キングの威圧的な命令に船員達がそのジャックと名乗った子供を連れて船内へ入っていく。それを大笑いで見届けるクイーンに、上司には気に入られそうだと評価するキングは、本隊と合流するために船を出した。
──新世界では未だ、大物海賊達のナワバリ争いが続けられ、足の早いルーキー海賊達が食い物にされていた。
──だがしかし……大海賊時代が始まって数ヶ月。百獣海賊団が新世界で新たな戦力を着々と揃えながら勢力を拡大するのと同じ様に、とうとう
『“鷹の目”ジュラキュール・ミホーク』
『“砂漠の王”サー・クロコダイル』
これらの名前はほんの極一部。しかし、間違いなくこの先も世間を賑わせる大事件を起こすであろう男達だ。
そしてその中でも特に名を上げていたのは、先んじて新世界入りをしたこの男。
「キシシシシ!! ここが新世界か!! だが……歯ごたえがねェな!! 本当にこれが新世界のレベルか!? 萎えちまうぜ!!」
「ぐ……くそ……ルーキーが……!!」
『ゲッコー海賊団船長、ゲッコー・モリア ──懸賞金3億2000万ベリー』
まるで悪魔の様な容姿をしたその大男は、新世界の海賊達を、これまで多くの困難を乗り越えてきた優秀かつ頼もしい部下達と共に倒してみせた。その野心と自信に満ち溢れたその目は、倒した海賊達を不敵に見下ろしている。その彼らには、不思議と影が存在しなかった。
「モリア船長!! 次はどうするんですか!!?」
「もっと暴れてやろうぜ!! おれ達に恐れるものなんてねェ!!」
「新世界にゲッコー海賊団の旗を立てるぞ!! “
「それより一杯やろうモリア船長!! 新世界入りの記念に!!」
「キシシシシ!! 落ち着きがねェな野郎共!! 慌てんじゃねェよ!! もう誰を的に掛けるかは決まってんだ!! ──こいつらの旗を見てみな!!」
「ああ? あー、確かこれって……」
新世界入りを果たし、更に戦闘にも勝ち、肩を組んで酒を飲もうとするゲッコー海賊団の船員達。それらを見て笑うモリアは、踏みつけたその連中の旗を部下に見せる。その旗を掲げる海賊団は、彼らでも知っている有名な海賊団だった。
「“百獣”のカイドウの旗じゃねェっすか!! おれ達、とうとうそんな有名人すら潰しちまったのか!?」
「ぎゃはは!! そりゃあいい!! おれ達の名もまたあがるな!!」
「キシシ!! バカヤロウ、こいつらはただの下っ端だ!! だが潰しちまったからにはしょうがねェよなおめェら!! 下の者潰しちまって喧嘩を売っちまった以上は──頭も取ってやるのが筋ってものだ!!!」
「おうよ!! そりゃあそうだ!! さすがはモリア船長!!」
「ぎゃはは!! だがおれ達も負けねェぞ!! カイドウの首を取るのはモリア船長じゃなくてこのおれだ!!」
「キシシシシ!! てめェらは部下の首で我慢しとけってんだバカヤロウ共!!」
「そりゃそうだ!! 船長の獲物を横取りしてどうすんだバカめ!!」
「だが任せろ!! おれは“海賊王”になる!! てめェらは海賊王の船員になるのさ!! ──いや、おれがならせてやる!!!」
「ひゅー!! 最高だぜモリア船長!!」
『あ~はっはっはっ!!』
新世界の海の上で、ゲッコー海賊団はその名を上げ、“海賊王”となるために進路を彼らから奪った“
フーズ・フー→ガキ共と言ってるから年齢高め→38歳でした。 ○○担当
ブラックマリア→幼女。ぬえちゃんファンで建築担当
ナンバーズ→鳴き声は数字対応? 10=ジュキキ 9=くにゅにゅ♡ 8=ハチャチャ 5=ゴキキ 全員数字のつく生き物と鳴き声かな? それと、ゴキキに嫌な予感しかしないのはきっと自分だけじゃない……
他の飛び六胞→次回以降。ササキは早め。うるティちゃんもそのうち。ぺーたんも、ちょっと年齢が20代後半かいっても30代前半くらいなんじゃないか説があるので、ちょっとだけ改訂するかも。でも漁業班なのは変わりませんのでご安心(?)を
ジャック→(魚人族 5歳) 人間の女の子よりは大したことないな!
新世界→地獄
金獅子海賊団→今日のしょ――犠牲者
ゲッコー海賊団→今は楽しそう。今は……
そんな感じでお送りしました。今日のジャンプは遂に飛び六胞が出て、鬼ヶ島の外観や内装も見れて個人的には養分を与えられた気持ちでした。これでようやく登場させられます。次回はワノ国。全盛期モリアさんも見れるかも。後、うるティとぺーたんも。
という訳でお楽しみに
感想、評価、良ければお待ちしております。