正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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百獣海賊団VS11人の侍

 ──その日の天気は一点の曇りのない晴れ模様であった筈だった。

 

 それはきっと彼らの心模様も同じであったことだろう。

 強大な敵を討ち倒すために選んだ方法は奇襲。矢文にて協力者である霜月家などの大名には戦いに際し、城を守ってもらいたい旨と、もしもの時は頼むと報せていた。

 しかし彼らは道中、気づく。

 無人島に向かうためにまずは兎丼に向かい気づいた。曇天の空模様に。

 彼らの道先に暗雲が立ち込める。彼らは嫌な予感を感じながらも兎丼の深い森の中にある丘を登り──そこで気づいたのだ。

 

「…………!!」

 

 彼ら10人──誰もが驚きを顔に浮かべる。

 丘を登った先から見える景色には町はない。まだまだ森が続く。

 ゆえに人など誰もいない筈だったが、

 

「想定外だ……!!」

 

 10人の侍達の先頭に立つ男、光月おでんは、まさか、という顔で言う。

 何故ならそこから見下ろす場所には──見渡す限りの人の群れ。

 それもただの人ではなく、彼らの敵である百獣海賊団の兵であった。

 海賊達は皆、武器や兵器などの得物を手に凶悪かつ嘲るような笑みをおでん達に向けていた。明らかに討ち入りの情報がバレており、待ち構えられていた。

 だがおでんは驚きを抑え、すぐに覚悟を決める。敵は強大。元よりすんなり行くとは思っていなかった。

 羽織りを脱ぎ捨てながら告げる。視線の先。向けるは巨大な岩に巻き付く巨大な青の龍──カイドウだ。

 そして隣には赤の空飛ぶ円盤に腰掛けている少女の姿も確認出来る。侍達は笠を捨てた。もう隠す意味もないからだ。

 

「──周到すぎやしねェか!? なぜわかった!! あの無人島で酒を飲んで寝てるお前の首を斬りに行くところだった!! 兵力戦を想定してねェ!!」

 

「お前の城にスパイでもいるのかもな。ウォロロロ……新しく建ったばかりのおれの屋敷を戦場にしたくねェんで……出向いてやったまでだ……!!」

 

「あはははは!! いらっしゃ~い!! 戦場へようこそ~♪」

 

「っ……全てウソだったんだな!! カイドウ!!!」

 

 

 

 

 

 あっ、本当に信じきってたんだ──と、私はおでんの発言を聞いて純粋にそう思ってしまう。正直、本当は何か策があったり、ウソだった時のために何かしら考えがあるのかなと思っていたが、どうやらなかったらしい。いやぁ、さすがおでん。でもそういう判断は大物かもしれないが、力があるからこそ映えるものだと、カイドウの次の返答を聞きながら思う。

 

「そうさ……ウォロロ、全てウソだった。あの時おれ達は分が悪いと踏んだ──お前が帰還し、ヒョウ五郎と手を組めば……ワノ国中の侍と侠客がおれ達の敵に回る。まだ部下も少なかったおれ達には苦しい勝負になっただろう……」

 

 そう、少なからず苦戦はしただろう。勝つにしてもこっちもただじゃ済まない。負けるとも思っていなかったが、ただで勝てると思うほどの相手でもなかった。部下を殺されたくない私達にとって、もしあの時戦っていれば、個人の感情は別として、結果は酷いものになったかもしれない。

 

「あの時お前がなんの犠牲にも動じねェ……前評判通りのイカれた男だったなら……ウォロロロ!!!」

 

 だがそうはならなかったのだ。カイドウが言うように、事態は私達の都合の良い様に進んでくれた。

 他の誰でもない──おでんのおかげで。

 

「──だがお前は誰も傷つかねェ方法を選んだ……!!」

 

 そう、それはおでんの判断のおかげ。かつておでんが親交を深めたであろうあの2人の様に甘い選択を選んだからだ。カイドウもそれを思い出すように告げる。私達にとっては勝てなかった相手。未だ勝ててない相手であり、片方は元仲間でもあり、同じ時代を生きている相手。ゆえに思うところが沢山あるのだ。

 

「ニューゲートやロジャーは確かにそんな海賊だった。強ェがどこか甘い奴等……!!!」

 

「…………」

 

 おでんや侍達はそれを黙って聞いている。白ひげとロジャーを知る連中は何を考えているのか。それは分からない。

 だが私から言わせればだ。その判断自体が悪くはなく──力の有無によってそれは決まるのだと言いたい。

 だから同じ甘い判断でも、ロジャーは“海賊王”。白ひげは“世界最強の海賊”。おでんは“バカ殿”なのだ。前者2人は圧倒的に強く、白ひげに至ってはあれで海賊船の船長としてやるべきことや判断すべきことを理解し、それを実行している。

 おでんはロジャーに近いが、ロジャー程強くはない。私達の様な相手を一方的に叩き潰せるほどの力があるのなら、その判断でも彼は英雄だった。

 だから彼は私やカイドウにバカと言われるのだ。

 

「お前も同類よ!! バカは踊り続けた!! 裸になって笑われ蔑まれながら!! ウォロロロロ!! お前にはもう“光月”の威厳も何もねェ!!」

 

「本当にバカだよね~♡ 選択肢ミスりすぎだって。後世の人にネタにされても知らないよ~? あはははは!!」

 

「あの日の判断はアレでよかった──話を未来へ進めようぜ」

 

 私達の嘲笑にも表情を乱すことなく、おでんは刀を抜きながらそう答える。まあ確かに済んだことは仕方ないもんね。そういうところで後悔したりグチグチ言わないで次に挑める辺りはロジャーっぽくて大物なんだけどなぁ……ふふふ、でもまあいっか。彼が稀代の豪傑で終わるか、バカ殿で終わるかは確かにこれから決まることだ。

 見ればカイドウもおでんや侍達を見下ろして不敵な笑みを浮かべている。口にこそ出さないが、戦いという手段を選んだことだけは、私もカイドウも認めるところなのだ。

 

 ──そう、私達は彼らを()()()()()()()()()しょうがなかった。

 

「ウォロロロ!! そんなに死に急ぎてェか!! なら殺してやる!! ──行くぞ野郎共!!!」

 

『ウオオオオオオ!!!』

 

「……行くぞお前達。背中は任せた」

 

『……応!!!』

 

 ──百獣海賊団と光月家。1000対10の国を賭けた長き死闘が今、幕を開けた。

 

 

 

 

 

 煌く光の束は海賊達の手にある刀、斧、槍、鉄砲。その全てがワノ国で造られた質の良い武器であった。

 たった10人で挑むには無謀過ぎる戦力。戦いは数だということを知る海賊達の士気が高まるのは当然であった。

 だが侍達は凶相を浮かべる海賊達の群れにも怯まない。真っ先に敵の群れに向かっていったおでんは、その二刀の大業物……“天羽々斬”と“閻魔”に流桜を込めてただそれを振るった。

 

「!!!」

 

『っ……!!?』

 

 そして一太刀で数十人を一度に吹き飛ばす。鎧袖一触。おでんの目は空に浮かぶ巨大な龍、カイドウにしか向いておらず、道中の敵は全て石ころも同然である。

 ただ1人、例外とも言える相手もカイドウの隣にいるが、おでんは背後の部下達を信頼していた。厳しい戦いになるだろうが、彼らなら持ち堪えられると信じている。

 その言葉なき信頼に応えるように、9人の侍は動いた。同じ様に抜き身の刀を手におでんの突撃で開かれた敵陣中央に駆けていく。

 

「おでん様に続けェ!!!」

 

『ギャア~~~~!!?』

 

 彼らもまた、おでん程とは行かずとも一騎当千の侍達。彼らは一太刀で敵を倒し、周囲を埋め尽くす程の敵にも全く怯まずに流桜を纏う刀を振るった。

 

「待て待て!! これが“侍”!!? 強すぎねェか!?」

 

「怯むな!! こっちにゃ数がいる!!!」

 

 そう、侍と真正面から殺し合うのが初めてな海賊達はその強さに驚く。中には早速腰が引けてしまう者もいた。

 しかし彼らには数がある。そして“無敵”とまで称されるカイドウにぬえ。最高幹部の3人がいる。

 世界に名だたる大海賊である百獣海賊団。その一員であり、数でも勝ることは海賊達にとって何よりも頼もしく、士気が下がることはない。

 

「!!」

 

「へへ……」

 

 狙撃銃でおでんの後頭部に狙いをつける海賊もまた、敵を討ち取り手柄を立てようとする者の1人だった。相手が幾ら強いとはいえ、自分達の船長達の様に銃弾が効かないなんてことはないただの人間。ならば自分でも倒せると思うのは必然だ。おでんもまた、その攻撃の気配に気づいて対応をしようと刀を握る手に力を込めたが、その刀が振るわれることも、引き金が引かれることもなかった。

 

「うわ!!」

 

「!? ──誰だ!!」

 

「勝手ながら!! 助太刀させて頂きます!!」

 

 その時、狙撃手をクナイで倒した忍び装束の美女が木の上から現れる。おでんが知らない相手。だが敵意はない。彼女は敵に視線を向けてクナイを放ちながらも素性を語った。

 

「お忘れかと存じますが昔、スキヤキ様の在りし日に…………」

 

「!? しのぶか!?」

 

「!! はいっ!! わたすです!!」

 

 だがその素性を口にする途中でおでんはその記憶にある少女を思い出し、その名を言い当てる。まさか憶えていると思わなかったしのぶは思わず敵から目を逸らしておでんに驚いた笑みを向けた。そしてそれなら話は早いと事情を説明する。

 

「再び光月の世になる事を信じ城に仕えてきましたが──“光月”の忍者軍は……福ロクジュは……!! 遂にオロチに寝返りました!! わたすはおでん様に仕える日を夢みてたので、もう城にはいられません!!」

 

「……バカ殿を信じられなかった者を責められやしない!!」

 

「…………!!」

 

 おでんが敵を蹴散らしながらそう言ってのけると、しのぶは歯痒さを表情に出す。彼女はおでんの真実を知っていた。それゆえに、彼女は何も言えない。悔しさと悲しさと怒りを感じながらもおでんを思い、黙ることしか出来ない。彼女に出来るのは、彼らに味方することのみ。

 

「こっちは茨の道だぞ!! しのぶ!!」

 

「──お供します!!!」

 

 しのぶを知るかつてのお庭番衆、福ロクジュのライバルでもあった雷ぞうはその覚悟を問い、しのぶは迷うことなくその茨の道を選び取る。

 そしてこれで国を救うために立ち上がった侍の数は11人──錦えもん、傅ジロー、菊の丞、雷ぞう、カン十郎、アシュラ童子、イヌアラシ、ネコマムシ、河松、しのぶ。そして光月おでん。

 千人の海賊達を相手にワノ国最強の侍達は臆することはない。彼らの強さは凄まじく、海賊達の予想を遥かに超えるものであった。

 

 ──だがしかし。それは侍達もまた同じ。

 

 彼らもまた、新世界にその悪名を轟かせる海賊達の真の強さと恐ろしさを知らなかった。

 

「っ……敵陣深くに進むに連れて1人1人が強くなってきたな……!!」

 

「我らを消耗させるためか……雑兵ばかりを前面に配置していたか!!」

 

 敵を斬り捨てながらの傅ジローの言葉に錦えもんが答える。敵の粘りが徐々に高まっており、彼らの足が徐々に止まるようになってきていた。

 そして錦えもんの言も当たっていた。百獣海賊団でも新入り、あるいは比較的弱い者達を前方に配置していた。まるで倒されても構わない──いや、ある程度倒されることは織り込み済みだとでも言うように。

 ゆえに進めば進む程に敵が強くなっていく。侍達の強さを見ても恐れるどころか好戦的に向かってくる。斬られてもそれが浅ければまだ戦おうと立ち上がってくる。まるでとめどないゾンビの軍団だ。

 

「だが進めぬ程ではない!!」

 

「押し通るだけじゃき!!」

 

「わたすも道を開きます!!」

 

 だがそれは侍達に勝てる、止めれる程ではない。

 雷ぞう、ネコマムシ、しのぶがそれぞれ、粘り強い敵を斬り捨ててまた先へ進む。

 しかし──進めたのはそこまでで、彼らはそこで後退することになった。

 まず最初にその彼らに遭遇したのは、木の上から進み、最も身軽なしのぶだった。

 

「──!! 紅い霧!?」

 

 木の上を跳んで次の木に飛び移ろうとしたしのぶの目の前に、紅い霧が立ち塞がる。

 

「──そう。そしてここから先は私の領域よ♡」

 

「っ……ぐあっ……!!?」

 

「しのぶ殿!?」

 

 そしてその直後にしのぶは真後ろから聞こえる声に背筋を凍らせ、直後に凄まじい力で地面に叩き落とされた。菊の丞がそれを見てカバーするように刀を手に立ち止まる。目の前に現れた存在に彼もまた警戒せざるを得なかった。

 

 そして更に直後、力づくで敵を薙ぎ倒して進もうとしたネコマムシの前に、巨大な丸い影がその巨体に似合わない俊敏な動きで現れた。

 

「──エキサ~~~~イト!!」

 

「っ!!? ニ゛ャ~~~!!?」

 

「!? ──ネコ!! 大丈夫か!!」

 

「何だあの瘴気は!?」

 

 その横っ面を敵の棍棒にも似た得物で引っ叩かれ、ネコマムシのその巨体が吹き飛び、木に激突する。傅ジローが叫び、刀を構えて立ち止まった。カン十郎も同じだ。そのネコマムシが叩かれた箇所を押さえて苦しんでいる。毒か何かか。その正体は傅ジローやネコマムシにはわからなかった。

 

 そして更にその後──森の一角が炎に包まれ、叫び声が響いた。

 

「ぐああ~~~!!?」

 

「フン!! 何をこの程度の相手に手間取っている……!!」

 

「雷ぞう!!!」

 

 その声は今まさに額から顔に掛けての太刀傷を貰い、同時に火傷を負った雷ぞうの悲鳴だった。そしてその前には刀を構える巨漢の男。その背に黒い翼と炎を持つ剣士だった。

 

「気をつけろ!! 強ェのがいるぞ!!」

 

 傅ジローがそれらを見て叫ぶ。おそらく敵の主力だ。

 そしてそれは当たっている。大男2人に美女1人。彼らが現れた途端、海賊達が気勢を更に盛り上げた。

 

『百獣海賊団大看板“戦災のジョーカー” 懸賞金6億ベリー』

 

「悪いけど、ここは通行止めよ♡」

 

『百獣海賊団大看板“疫災のクイーン” 懸賞金8億2000万ベリー』

 

「ムハハ!! 倒し過ぎだぜバカヤロウ!! そろそろくたばっときな、侍共!!」

 

『百獣海賊団大看板“火災のキング” 懸賞金10億3000万ベリー』

 

「おれ達に歯向かったんだ……楽には死なせねェから覚悟するんだな……!!」

 

 百獣海賊団の最高幹部3人。とうとう船が完成し、一軍団の船長──“大看板”の座に就いたばかりの3人は全員が“災害”と称される人外染みた戦闘力と凶悪性を持つ3人だった。

 

「うおおお!! 大看板の御三方が出陣だ~~~!!!」

 

「ジョーカー様~~~♡」

 

「ウオ~~~!! QUEE~~~~N!!」

 

「キング様!!!」

 

 海賊達が声を上げ、武器を手に侍達を囲み始める。足を止めてしまった少数の侍達は勝てるかわからない強敵を相手に周囲の海賊達に囲まれながらやらなければならなかった。

 だがそれだけではない。先頭を突っ走るおでんの先にいる2人もまた動き始める。

 

「あはははは!! ──さあおでんに侍達!! あなた達はこの飛行物体(だんまく)の恐怖を乗り越えられるかしら!!」

 

「!! 気をつけろ!! 来るぞ!!」

 

 おでんは背後の家臣達にも聞こえるように声を張り上げる。上空に浮かぶ少女の声とその力の気配を感じ取ったからだ。

 

「“レッド”、“ブルー“、“グリーン”、“虹色”……“ブラック”……!!」

 

 ぬえが腕を交差させ、その周囲を回るUFOを1つ、また1つと増やしていく。

 ──憤怒を示す赤色。

 ──哀愁を示す青色。

 ──義心を示す緑色。

 ──恐怖を示す虹色。

 そして──殺意の黒色。

 幾つもの飛行物体はそれぞれの数を増やし続け、やがて数えられない数となって空を覆う。

 理解不能。正体不明。その弾幕は彼らに恐怖と絶望を与えるために引き起こされたぬえの力だ。

 

「“正体不明”……“絶望のUFO軍団襲来”……!!!」

 

「!!!」

 

 ぬえの宣言と共に、遊びではない本物の弾幕が降り注ぐ。

 UFOは列を成し、あるいは不規則に侍達に向かって近づき、炎弾、レーザー、蛇などあらゆる弾幕を以て彼らを狙った。

 

「チッ……UFOか……だが!!」

 

「!! あはは!! やるねぇ!! でもこっちも負けないよー!!」

 

 複数のUFOによる弾幕。しかしそれらをおでんは躱し、飛ぶ斬撃によって撃ち落として跳躍すると、UFOを足場に使ってぬえとカイドウに近づいた。

 だがUFOだけでおでんを倒せるとはぬえも思っていない。ゆえにそこまで驚くこともなく、次の技を放つ。周囲にゆらゆらと揺らめく火の弾を生み出し、

 

「“アンノウン”……“軌道不明の鬼火”!!!」

 

「っ、熱ィ!! くそ!!」

 

「はーい、かすり点ゲット~♪ そして──UFO集中!! “正体不明の”──」

 

「!!? マズい!!」

 

 不規則に動く炎の弾幕にさすがのおでんも被弾し、UFOから落下し、地面へ落ちていく。だがそこへ、ぬえが数十のUFOの照準を落下したおでんへ合わせたことで、強い力の放出に気づいたおでんが何とかそれを躱そうと足に力を込めた。そしておでんの足が地上へ着くのとほぼ同時に、

 

「──“火空兵器(フー・ファイター)”!!!」

 

「!!!」

 

 UFO達がおでんの真上で高速で円を描き、その中央から極太の光のビームが地上へ発射される。

 ビームは轟音と共におでんの居た場所に直径20メートル近いクレーターという名の破壊の跡を作り出す。その余波は侍達どころか地上の部下達にも大気の打撃を与えた。

 

「うおおおっ!!? ぬえ様の攻撃だ!!」

 

「死んだかおでん!!?」

 

「……いやー、避けられた。やるねぇ♡」

 

 だがその地上の部下達の声を否定するかのようにぬえは言う。部下達はその攻撃が当たったと思い、そして死んでもおかしくないと思うが、ぬえの見聞色の覇気はおでんを捉えていた。

 

「“(ガン)擬鬼(モドキ)”!!!」

 

「!!」

 

 舞い上がった土煙の中から現れたおでんが土煙に乗じて再びUFOを足場にぬえの近くまで迫り、その二刀を振るい、それをぬえは覇気を込めた槍で受け止めた。

 

「お前も降りてこい!!」

 

「っ……!!」

 

 だがおでんは相手の覇気に自らの流桜をぶつけ、得物同士は触れずにぬえを力に任せて地上へ叩き落とす。

 ぬえは頭上からの攻撃なこともあって地上へ着地し、しかし僅かにダメージを負う。それを感じてぬえは槍を構えながら空中のおでんを見て楽しそうに笑った。

 

「良い感じ良い感じ!! カイドウ以外に傷つけられたのは久し振りだよ~!!」

 

「チッ……お前は早めに倒しておきたかったが……やっぱ見た目に似合わず強ェな……!!」

 

「あはは、可愛くて強いとか最高でしょ~? ──でもだからといって私にばっかり目を向けてたら……」

 

「!!?」

 

 ぬえがそう言った直後、上空からおでんへ向かって再び攻撃が飛んできた。

 しかし今度はUFOではない。極太の熱線。おでんを焼き尽くそうと放たれるそれは、

 

「──“熱息(ボロブレス)”!!!」

 

「!!!」

 

「おでん様!!」

 

 空を飛ぶ巨大な龍であるカイドウの口からブレスが放たれる。それを見た錦えもんが心配の声を上げた。

 だが破壊の跡は分かたれていた。左右に分かれた地上の跡。そのちょうど真ん中にはおでんが立っており、火傷を負いながらも無事であった。──熱線を斬り裂いたのだ。その怪物っぷりに海賊達がどよめき、ぬえは笑う。しかしそれを見ていたカイドウはぬえの方に視線を向け、

 

「おいぬえェ!! 手を出すんじゃねェよ!! こいつはおれの獲物だ!!」

 

「え~~~? ちょっとつまみ食いするくらいダメ~?」

 

「侍共でも殺してこい!!」

 

「も~しょうがないなぁ──なーんて、まあ良いけどね~。それじゃ侍達も何人かまとめて相手してあげよっかな~♡」

 

「っ……お前ら気をつけろ!! 悪いが任せたぞ!!」

 

『はっ!!』

 

 カイドウがおでんを見下ろし、おでんもカイドウを見上げる。お互いに隙を見せることは出来ない相手であり、おでんはとてもぬえに構ってる余裕はなかった。

 ゆえに家臣達に任せるしかない。信頼はしつつも気をつけろと声を掛けるのは、それだけぬえの実力を見抜き、警戒しているからだ。

 

「……ふふふ、あなた達ちゃんとわかってる? あなた達じゃ私に勝てない。つまり私を相手にするってことは~~~──“地獄”を見るってことだよ?」

 

 そう──家臣の彼らでは、ぬえには勝てない。それをおでんもぬえも侍達も見抜いていた。

 あるいは10人で掛かれば粘ることは出来るかもしれないが、しのぶと菊の丞はジョーカー。傅ジローとカン十郎はクイーン。アシュラ童子と雷ぞうはキングを相手にして離れられない。

 ゆえにぬえの前に対峙するのは錦えもん、イヌアラシ、ネコマムシ、河松の4人。だが4人がかりでもぬえには敵わないことを彼らも悟っていた。

 それはおでんを除く彼らがおでんやカイドウに束になっても勝てないのと同じだ。

 ぬえの実力はカイドウやおでんと同レベル。他の最高幹部とは文字通り格が違う相手である。4人がかりでも彼らが1番厳しい戦いに身を投じることになるだろう。

 そしてぬえはそれを意地悪く問いかけた。地獄を見せるけどいい? と。

 だが錦えもん達は順番に、そして声を揃えて答えた。

 

「見くびるな!! 既に覚悟は決まっている!!」

 

「左様!! 我ら全員、おでん様の侍として最後まで道を共にする所存!!」

 

「信ずる主君と同じじゃき!! 怖いものなど何もないぜよ!!」

 

「ゆえに地獄であろうとどこであろうとも!!」

 

『──望むところで候!!!』

 

 4人の侍が刀を手に強い意志を持った瞳でぬえを真っ直ぐに見据える。ぬえを見ていない者達も同じ想いでそれぞれの相手を見据えた。

 そしてそれを見て、ぬえは笑った。最初は愛嬌良く、そして悪魔の様に。

 

「あはははは!! ──いいねぇ。()()()()()も面白くて好きよ」

 

 ぬえはそう言って槍をくるくると回し、石突の部分を地面に立ててその赤い目を煌めかせた。

 

「お魚に猫に犬に人間……ふふふ♡ みーんな()()()で唆っちゃうし、本気で相手してあげる!!」

 

 そして彼女の覇気が全力のものになる。空にあるUFOも彼ら4人を標的に設定しながら告げた。さあ、と彼らを誘う様にぬえは左手でUFOを操作するように手を挙げて、地獄の始まりを宣言した。

 

「──主君を想うが余り、妖怪の恐怖を忘れた人間よ!! 正体不明の飛行物体(だんまく)に怯えて死ね!!!」

 




今回の話→分割。前編。原作部分多し。次回から本番
ぬえちゃん→本気。まあ皆本気だけど
紅い霧→ジョーカーの技。詳しくは次回だけどお察し
火空兵器→架空兵器。フー・ファイターっていう有名なUFOの話から。ぬえちゃんのオリジナル大技
組み合わせ↓
ジョーカーVSしのぶ&菊の丞
クイーンVS傅ジロー&カン十郎
キングVSアシュラ童子&雷ぞう
ぬえVS錦えもん&イヌアラシ&ネコマムシ&河松
カイドウVS光月おでん

ということでこんな感じで。原作部分多しな分短めに見えるかもだけど、戦い自体が長いので前編はこんなところで。次回は戦います。お楽しみに

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