正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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最強生物

 千人の海賊達に対し、侍はたった11人。

 ゆえに海賊達はこの戦いを、すぐに終わる勝ち戦だと思っていた。

 しかし侍達の強さは海賊達の想像を遥かに超えるものであり、予想外の長期戦となる。

 だがそれは、侍達も同じだった。

 相手が千人の海賊とはいえ、必ず勝つと、勝てると信じ戦いに臨んだ。

 しかし侍達は自分達の甘い見通しを思い知る。

 厳しい戦いにはなるとは思っていたのは確かだったが、まさかここまで強いとは思わなかったのだ。

 予想を遥かに超える海賊達の強さは、侍達を着実に追い詰めていた。

 

「ハァ……ハァ……!!」

 

「くっ……!!」

 

「あら、もう息があがってるの? 侍も忍者も鍛え方が足りないわね」

 

「っ……侍を、この国の武人を舐めるな!!」

 

「まだ戦えますよ……!!」

 

 森の一角で激しい戦闘を繰り広げるのはしのぶと菊の丞。それに相対するのは百獣海賊団の大看板、“戦災のジョーカー”だ。

 だがその戦闘が始まってから侍と忍者の2人は息があがりはじめ、全身に傷を残す痛々しい状態となっていた。致命的な傷こそないものの、苦戦を強いられている。

 しのぶと菊の丞はジョーカーの挑発を受けながら、クナイを投げ、刀を振るった。2対1という状況を活かす。周囲の雑魚はもはや数には含めない。それだけ、侍は強かった。

 だがジョーカーは、外海で5億を超えるような懸賞金を懸けられる大海賊もまた、半端ではない。それ以上の強さで2人を追い詰める。ジョーカーの足が素早く振り切れ、

 

「──“嵐脚”……“紅蓮”!!」

 

「っ……!! また足で鎌鼬を……!?」

 

「くっ、また妖術か……!!」

 

 紅い斬撃が蹴りによって放たれ、空を斬る。菊の丞もしのぶも刀でそれを防御し、しかし威力の強さから抑えきれずに弾かれ後方に舞った。だがジョーカーは宙を飛んでそれを追撃する。

 

「自分の理解出来ないものは全て妖術と決めつける……諜報員としては二流以下ね」

 

「! しのぶ殿後ろですっ!!」

 

「……!!」

 

「──“吸血鬼の鉤爪(バンパイアクロウ)”!!!」

 

「っ、ア……!!?」

 

 菊の丞の声も虚しく、しのぶは背後からの攻撃──今度はその手によって背中を引き裂かれる。

 それはまるで獣の爪で引っかき回されたかのような傷であり、しのぶは強い痛みを感じながらも地上に堕ちた。菊の丞が刀を構えてそれを守るように立ち塞がる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「っ……く……平気だ……まだ……まだ戦える……!!」

 

「フフフ、本当にまだ戦えるのかしら? まだまだ“吸血鬼”の力は半分も出してないのだけど、そろそろ死んじゃいそうね♡」

 

「ハァ……吸血鬼……?」

 

「妖怪の類ですか……!」

 

 ジョーカーの“吸血鬼”という言葉を理解出来ない2人。ワノ国の住人であり海外に出たことのない2人に吸血鬼という想像上の生き物の知識はない。ジョーカーはそのことを嘲笑うかのように笑みを浮かべる。

 

「知りたければ自分で調べることね──“飛ぶ指銃(シガン)”……雀撥(スズメバチ)

 

「うぐっ!!?」

 

「!!? 貴様、何を……暗器の類か……!?」

 

 菊の丞を指差した瞬間、何故か菊の丞の肩が身体が何かに貫かれる。2人は確認出来ないが、その背後にあった木々や途中にあったものを全て貫き、数キロ先の建物までを貫き、破壊した。

 またしても正体の分からない攻撃に警戒し、攻撃をこちらからも仕掛けようとするしのぶだが、忍者のしのぶよりも速い動きでジョーカーは動く。

 

「暗器なんて全身凶器である私には必要ないもの。今のは狙撃銃みたいなものだと思いなさい」

 

「っ!!? 後ろ!!」

 

 一瞬で消えて背後に移動したジョーカーに向かってクナイを投げる。勿論、流桜を纏わせたものだが、それが当たることはない。

 

「侍が強すぎて手出しが出来ないという情報ももう古いみたいね」

 

「侍を舐めたら怪我しますよ……!!」

 

 菊の丞が刀をジョーカーに向かって連続で振るう。だがジョーカーはそれをある程度のところまで避け、そして流桜を纏った刀を爪で受け止めた。

 

「!!?」

 

「スピードもパワーも圧倒的に及ばないわ……あなた達は皆、精々がただの超人。超人でも人間じゃ巨大な組織には敵わないことを知りなさい──“指銃”……“紅一点”!!!」

 

「っ、危ない!!」

 

 そして再び放たれた指の一撃に嫌な予感がして受けるではなく避けることを選択する。そして、それは正解だった。

 

「大岩が……!!」

 

「流桜にしても強すぎる……!! ハァ……!」

 

 戦場にあった巨大な大岩が、ジョーカーの指の一撃で粉々に砕ける。菊の丞が言うように、流桜──覇気にしても凄まじい威力だった。

 

「受けてたら死んでたわね♡ フフフ、これで実力の差とあなた達の浅はかさをより理解したかしら?」

 

「ハァ……ハァ……それが、何だって言うんだ……!! お前達だって人間だ!! なら勝負はわからない!!」

 

「あれだけの流桜なら消耗も激しい筈……!! 時間を掛ければまだ勝機は見えます!!」

 

 しのぶと菊の丞は圧倒的な格上であるジョーカーの強さを思い知りながらも気迫の衰えない言葉をぶつける。

 だが覇気の消耗を狙うのは悪手だ。何しろジョーカーの強さは覇気だけではない。

 鍛えた末に習得した“超人”と呼ばれるだけの体技を習得する身体能力。それを更に鍛え、覇気も纏わせ“怪物”に。

 そして吸血鬼という比類なき“獣”の力を得た彼女はもはや“超人”や“怪物”という域では収まらない。そう、それは──

 

「フフ、人間なんて()()()いるのかしら?」

 

「何だと!! なら人間をやめたとでも言うつもりか!?」

 

「あら、わかってるじゃない──」

 

「!! マズい、来るぞ!!」

 

 空中へ飛び、紅い霧を出して姿を消したジョーカーに強い警戒を見せる──だが攻撃は一瞬だった。

 

「──“バッドレディスクランブル”!!!」

 

「!!!?」

 

 その攻撃は、先程の瞬間移動よりも速く、大岩を破壊した一撃を凌駕する威力で菊の丞の土手っ腹を打撃した。

 辛うじて流桜の防御は間に合ったのか。だとしても、その凄まじい破壊力を秘めた一撃は地面を割り、菊の丞を遥か遠くに吹き飛ばしてしまう。

 

「悪いけど、人間はやめたの。今の私は──“災害”よ」

 

「……!!」

 

 そう──これはもはや“災害”。

 超人などという人間の域ではもう収まらない。しのぶが歯噛みしながらも青褪める。あれでは生きていたとしても戦闘継続は不可能だろうと。

 つまりこの化け物をたった1人で相手にしなければならないのだ。

 

「フフフ……まだまだ楽しめるかしら?」

 

「っ……当たり前だ……!! 必ずお前に勝つ……勝てなくても道連れにしてやる……!!」

 

「無謀さもここまで来るといっそ清々しいわね。でも楽しめるならいいわ」

 

 と、ジョーカーは吸血鬼の力を更に解放し、雲間に僅かに姿を現した紅い弦月を背に翼を広げて口端を歪めてその口元から鋭い牙を覗かせた。

 

「──まだまだ楽しい夜になりそうね」

 

 

 

 

 

「菊の丞!!?」

 

「バカ、カン十郎!! 目を逸らすな!!」

 

「ムハハハハ!! そうだ!! 仲間を気にしてる余裕はねェだろ!?」

 

「っ……!!!」

 

 また別の一角で戦うのはカン十郎に傅ジロー。それに対峙するのは大看板“疫災のクイーン”だ。

 仲間の菊の丞が吹き飛ばされたことに目を向けるカン十郎を傅ジローが注意すると、その隙をついてクイーンが傅ジローに棍棒を叩きつけた。

 地面を陥没させる程に重い一撃。それを傅ジローは何とか受け止めるも、腕の骨が軋み、表情が歪む。それに先程受けた攻撃によって身体の一部が溶け落ちるような痛みと熱を感じて苦しんでいたし、呼吸もままならない程に苦しい。肺と喉が強く痛む。

 

「ハァー……ハァー……!!」

 

「ムハハ、どうだ苦しいか!? 全身の痛みに身体を内側から破壊する奇病──“ゾンビ”!! この間攻め込んできたバカのおかげで思いついたおれの傑作!! この武器にはそれをた~~っぷりと塗り込んである!!」

 

「傅ジロー!! すまぬ!! 拙者を庇って……!!」

 

「っ……この程度……大したことない……!! それより、こいつを倒すぞ……!!」

 

 自身の作った病原体の出来に機嫌がよくなるクイーン。苦しむ傅ジローを見てクイーンも周囲の部下達も笑っていた。それに対し、カン十郎は強く歯を噛み締め、自分の不甲斐なさを恥じて詫びる。

 だが傅ジローは大したことないと強がってクイーンを倒すぞと声を掛けた。傅ジローとて責められない。菊の丞の安否が気にならないといえばウソになるし、自分とて僅かに気を取られたからだ。だからこそ不覚を取っている。

 だが戦闘の継続は可能だと強く刀を握ってクイーンを睨む。クイーンは見下ろした相手のバカさ加減を指摘した。

 

「確かに~~~そいつは死ぬことまではねェが~~~♪ お前ら、まさか本当に生き残れるとでも思ってんのか? だとしたら間抜けにも程がある!! 侍ってのはバカばっかりで仕事がしやすくて助かるな!!」

 

「ギャハハ、クイーン様の言う通りだ!!」

 

「バカだらけで笑っちまうぜ!!」

 

「この国にはバカと間抜けとアホしかいねェのかよ!! ぎゃははは!!」

 

「っ、黙れ……!!」

 

 傅ジローが怒りを見せて、刀を振るう。怒りもまた、流桜の力の源となり得る。その斬撃の鋭さは周囲の雑魚を断ち切るのに十分な威力を持っていた。

 だがそれはあくまで雑魚相手の話。目の前の“災害”には通用しない。

 

「っ……!! くそ、崩せない……!!」

 

「ムハハ!! おまけに弱ェときてる!! お前ら侍、たった2人……たった11人でおれ達に勝てるとでも思ってんのかァ!! 身の程ってもんを知りやがれ!!」

 

「ぐっ……!!?」

 

 傅ジローの攻撃を受け止め、更に横から来たカン十郎の攻撃も軽く腕で弾いてしまうクイーン。確かに、ここまで強いとは思っても居なかった。クイーンの丸々太った肉体は太ってはいても全て筋肉で、その分俊敏でパワーも凄まじい。当然重量だってある。

 その重さはまるで“山”だ。どれだけ攻撃しても崩れないし押すことも出来ない。どれだけ精一杯力を込めても真正面から跳ね返される。

 それに加えてクイーンの作る絡繰武器と病原体によって搦め手でも翻弄されている。

 だが傅ジローもカン十郎も諦めることはない。身の程を知れと言われても諦めることはないのだ。

 

「ハァー……ハァ……身の程なら弁えている……!!」

 

「左様……!! 拙者達は……到底侍の器ではない……!!」

 

「ああ……ただのゴロツキ、チンピラ、コソ泥……それがおれ達の器だ……」

 

「ムハハハ!! 面白ェ!! わかって挑んできやがるとか正真正銘のバカだこいつら!! 救えねェな!! 光月おでんもバカだぜ!! こんな腑抜けどもが家臣とはな!!」

 

 クイーンがおでんを彼ら侍達を纏めてバカにする。どいつもこいつもバカしかいない。そんなバカを率いるおでんが1番バカだと笑いものにする。

 だが傅ジローとカン十郎は否定した。おでんはバカ殿じゃないと。

 

「黙れ……!!」

 

「──あァ!? 何だと?」

 

「黙れと言ったんだ肉達磨……!! おれ達をバカにするのはいい……おれ達は、あの人がいなきゃ侍になれなかった程度の人間……だからおれ達はバカにされても構わない……!! だが──」

 

「我らの器を引き上げたおでん様をバカにすることだけは断じて許さん……!!」

 

「ああ……許さないし、それも含めてここでお前を倒す……!! おでん様を“バカ殿”では終わらせねェ……家臣であるおれ達が不甲斐ない戦いをしたらそれこそ笑われちまうんだ……!!」

 

「おでん様を笑い者にはさせぬ!! 我らは……“侍”なのだ!!!」

 

「…………」

 

 傅ジローとカン十郎がクイーンを相手に啖呵を切ってみせる。自分達よりも格上の相手に全く臆することはない。

 立派な侍として戦う、生きる。それが多大な恩があるおでんに対する彼らなりの恩返しなのだ。光月おでんの侍として、彼らはどれだけ相手が強くても、病魔に身体を侵されようとも諦めることはない。

 その忠義と意志は確かに立派なものであった。並大抵の相手であれはそれに怯み、あるいは討ち倒すことは出来るであろう。……だが──

 

「──誰に物を言ってんだ? てめェら」

 

「!!」

 

 彼らが対峙し、強い言葉を向けたのは“災害”と称される百獣海賊団の大看板であるクイーン。

 

「調子に乗んじゃねェよ侍共」

 

 クイーンはドスの利いた低い声で彼らを威圧する。

 

「何を勝手に“希望”抱いてんだ? 本気で生きて何とか出来るとでも思ってんのか? おれ達に勝てると思ってんのか?」

 

 ただの侍と違い、この海でしのぎを削り、死地を乗り越え、悪名を高め、実力をつけてきた新世界の大海賊団。沈めてきた船も殺してきた人も滅ぼしてきた島も並大抵の数で収まらない。

 勝てると思い上がられ、舐められることは屈辱だ。海賊は特に面子を大事にする。

 

「てめェらバカの侍共に教えといてやる……!! お前らも、お前らの主君であるおでんもその家族も、お前らの大切にしてる連中、おれ達に逆らう奴等は全員同じところに行くのさ……!!」

 

 バカがバカをやるだけなら笑って流しもする。──だが本気で挑みに来るのであれば、それは許せることではない。

 

「死ぬんだよ!! お前らは1人ずつな!!!」

 

「っ……!!」

 

 クイーンの迫力に傅ジローとカン十郎が僅かに気圧される。

 怯えている訳ではない。だが、実力が上の相手からの殺気、それに強い警戒を示したのだ。

 

「手始めにまず生意気なてめェから殺してやる……!!!」

 

「!! 傅ジロー!!」

 

「ああ……!! 気をつけろ……!!」

 

 ──猛攻が来る。お互いにそれを察し、声を掛け合った。

 だがそのスケールの大きさまでを予想することは出来なかった。

 

「!!」

 

「! 地面に手を突き刺した……!?」

 

「一体何を……!!」

 

 クイーンがその両手を地面に突き刺し、地面に埋め込む。一体何を、と思いながらも、傅ジローとカン十郎はその隙を突こうと駆けた。

 だがそれは地面の揺れによって止められた。

 地震──ではない。それに気づく2人とクイーンの部下達。

 

「やべェ逃げろ!! クイーン様が暴れる!!」

 

「総員一旦退避だ!!」

 

「くっ……まさか……!!」

 

 部下達がその場から一斉に逃げ出す。傅ジローが、まさか、とたたらを踏んだその時、クイーンはそれを持ち上げるように力を込めた。

 

「ウオオオオ~~~!!!」

 

「!!!」

 

 クイーンの雄叫びと共に、それが持ち上げられる。

 まるでちゃぶ台返しの様に持ち上げられ、空中へ投げ飛ばされたそれは傅ジロー達が立つ──()()()()()()だった。

 

「ウワァ~~~!!? 逃げろ~~~!!」

 

「うおっ……!!? 大丈夫か傅ジロー!!?」

 

「くそっ、どんな腕力してんだ……!! だが大丈夫だ……!!」

 

 抉れた大地、岩石となって浮き上がったそれの上で何とかバランスを取って着地に備える傅ジローとカン十郎。

 しかしそんな暇はない。すぐにクイーンが跳んできたからだ。

 

「まずは1人だ……!!」

 

「なっ!!? 傅ジロー!!」

 

「っ……!!」

 

 駄目だ、回避が間に合わない──そう思い、傅ジローは流桜での防御を試みる。

 だがそれがまた甘い判断だった。クイーンが空中で傅ジローの足を掴み、そのまま地面に向かって思い切り投げ飛ばす。

 

「ぐあっ……!!」

 

「死ね!!! “無頼男(ブラキオ)”──」

 

 そしてクイーンが今度は落ちてくる──いや、大地を蹴って飛んできた。勢いをつけて、クイーンが覇気と共に拳を傅ジローに叩きつける。

 

「──“破城槌(ハンマ)”!!!」

 

「…………!!!」

 

 重音と共に大地にヒビが入って砕ける。それと共に、骨が砕ける音と血飛沫が舞い、侍の名を呼ぶ声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 大地の響きは兎丼の戦場全体に広がり、僅かに地面を揺らした。

 それによって森の一角で広がる大規模な火事は同様に揺らめくが消えることはない。むしろ別の干渉によって更に轟々と燃え広がった。

 それを為しているのは、巨漢の海賊。それに刀を持って立ち向かうのは、侍達の中で大柄な男と顔の大きな忍者だった。

 

「おおおお……!!!」

 

「せいっ!!」

 

「…………フン」

 

 おでんの家臣の中でも強さだけなら筆頭格とも言える男、アシュラ童子に、忍びとしてはお庭番衆の隊長の福ロクジュのライバルとまで称される雷ぞう。その2人の連携攻撃は相手を打ち崩すのに十分なものである筈だった。

 しかしその相手が問題だ。黒い翼と炎を背負い、巨大な太刀でその連撃を容易に跳ね返してしまうのは百獣海賊団の大看板“火災のキング”だ。

 彼は必死で立ち向かうアシュラ童子や雷ぞうと違い、鼻を鳴らして余裕さを隠そうとしない。今しがた起きた地響きの方に目線を向ける始末だ。

 

「バカが暴れてるな……どうやらお前らの仲間の1人を仕留めたらしい。おれもあまりモタモタしてると怒られるかもしれねェな……」

 

「っ、バカ言うな!! あいつらはやられんし、おいどんらもお前に負けねェど!!」

 

「そうとも……!! ハァ……拙者達も必ずお前を討ち取る……!!」

 

 炎に囲まれ、熱気を浴びながらも威勢の良い言葉を吐く。最強格の侍の睨みに対しキングは眉1つ動かさなかった。

 代わりにキングの背後、揺らぐ炎の奥からはその言葉を聞いた部下達が嘲笑うような返答をする。

 

「ワハハハ!! おい聞いたかあいつら!! キング様を倒すってよ!!」

 

「おいおいどんだけ命知らずだよ!! 身の程を知りやがれ!!」

 

「そうだ!! キング様は大看板最強と称される男だぞ!! 10億を超える懸賞金を懸けられた大海賊にてめェら如きが勝てると思うなァ!!」

 

 笑い声が炎の外側から発せられる。

 

「……ウチのバカ共じゃねェが、身の程を知らねェバカはこの海じゃ生き残れねェと知るべきだったな。威勢だけで力のないお前らじゃおれには勝てねェ」

 

「うるせェ!! もう勝った気か……!! 勝ち誇るのはまだ早ェぞ……!!」

 

「この程度の熱気……ハァ……ハァ……心頭滅却すれば火もまた涼しでござる……!!」

 

「フン……そんな強がりを言う奴は今まで幾らでもいた。だが最後には全員音を上げて醜く命乞いをする。おれの剣と炎で音を上げなかった……そんな奴は今までに()()しかいない」

 

「ハッ……2人もおるのか。それなら大したことねェと言ってるようなモンだ……!!」

 

 キングの上から目線の言葉にアシュラも雷ぞうも強がりを言う。実際、戦う場を丸々火の海にされてキツくない訳がないのだ。

 だが多少の火傷や熱気くらいで音を上げては他の戦っている同志に顔向け出来ない。キツイのは皆同じだ。皆格上相手の厳しい戦いに臨んでいる。

 だからこんな炎には屈しないと言った。実際2人も耐えられているのなら、自分達だって耐えられない道理はないと。

 ──しかしアシュラも雷ぞうも知らず、そして気づけなかった。

 キングの炎と剣を受けても音を上げなかった2人というのは、キングが明確に自分より上だと認めて下った2人しかいないのだと。

 だがキングは敢えてそのことを口にせず、別の事を引き合いに出す。火力を上げ、まるで威嚇するように翼を広げながら、

 

「だったら試してみろ……!! お前達に地獄を見せてやる。──()()ヒョウ五郎とかいう侠客の様にな……!!」

 

「!! あれをやったのはてめェか……!!」

 

 アシュラ童子が怒りに顔を歪める。アシュラは九里の盗賊やヤクザを治めていた関係上、ヒョウ五郎とは親交があった。

 だからおでんからそれを聞いた時も拳を震わせたし、今もそれは同じ。逆らった侠客1人だけではなく、子分や家族まで手をかけたことに怒りを抱く。

 無論、アシュラとて昔は鬼だった。だがおでんに倒され、平和を見せてもらい、人に、侍にしてもらったのだ。

 ゆえに正義を問うことはしないが、さりとて許すこともない。この男を倒すことだけに心血を注ぐのだ。それがおでんのためにもなる。恩返しにもなる。

 

「おおお!!!」

 

「!」

 

 流桜を纏わせ、キングと刀をぶつけ合う。強い意志の力はキングの手にも確かな手応えを感じさせるものだった。

 しかし……それではまだ足りないという非情な現実がそこにはあった。

 

「──まずは弱い方から処理してやる……!!」

 

「っ!! ──ぐっ!!?」

 

「炎……!!」

 

 キングは刀でアシュラを押し返し、そのまま返す刀で雷ぞうにも斬撃を飛ばした。炎を纏わせた炎の斬撃だ。それを何とか避けることには成功するが、逃げた先にはキングが回り込んでいた。そして上段に構えた刀を振り下ろせば、

 

「…………!!!」

 

「雷ぞう……!!」

 

「これで残り8人だ……!!」

 

 キングの剣が雷ぞうの身体を捉え、雷ぞうが白目を剥いて倒れてしまう。その瞬間、アシュラが先程以上の怒りを見せてキングに斬りかかった。

 

「てめェ……よくも雷ぞうを……!!!」

 

「負けたら恨み節を言うところも雑魚の特徴だ……お前達も所詮は口だけで何も出来やしない。怒りを見せたところでこれじゃ戦いを楽しむことも出来ねェな……」

 

「クソ野郎が……!!」

 

 キングとアシュラの振るう剣撃。鋼の音が連続し、時折キングの炎が周囲を焼き尽くす。

 既に森の一帯はほぼ山火事の様な状態になっており、このままこの場所に居続けることも危険であった。百獣海賊団の船員は戦いに巻き込まれない様に下がって別の連中を狙っている。

 そんな中、キングはまた一瞬、別のところに視線を寄越した。そして目の前のアシュラに向かって告げる。

 

「……直に4人ってところだな」

 

「! 余所見してんじゃねェど!!」

 

 怒りのアシュラの斬撃もキングは流す。だがその声は確かに聞こえており、アシュラは歯噛みし、祈るように思った──どうか無事であってくれ、と。

 

 

 

 

 

 戦いは長期戦となり、続けられるおでんとカイドウの戦いも激しくなっていた。

 

「おおおお……!!!」

 

「ウォロロロ!!!」

 

「ぐお!!」

 

 おでんが斬りかかり、カイドウがそれを弾いて炎や雷、氷をぶつけ、あるいはその巨大な身体でおでんを地面に叩き落とす。

 おでんは身体中に傷を沢山作っていたが、深手のものは1つもない。カイドウは無傷で体力もまだまだある様子だ。

 やはり耐久力とスタミナについてはこちらの圧勝みたいだと、私はそれを見て笑みを浮かべた。

 

「あはは、苦戦してるけど、おでんもさすがだね~。カイドウにあれだけ食い下がれるなんてさ」

 

「ハァ……うグ……ハァ……!!」

 

「クソ……ハァ……この怪物め……!!」

 

「カイドウと戦り合える相手なんてもう数える程だよ。その1人におでんは入ってるし、まだまだ勝負はわからない。う~ん、これは燃えるなぁ!!」

 

「ゼェ……ハァ……立てるか……ネコ……」

 

「なんの……これしきで……ゲホッ、ぐ……まだ終わっとらんぜよ……」

 

 私はおでんが落とされては向かっていき、カイドウが再び空中を行く、その戦いの模様や周囲の状況を見て楽しんでいた。ジョーカーもクイーンもキングも相手を1人ずつ戦いから脱落させた様である。強い声が消えたからね。私には見えていなくてもわかる。

 たださすがおでんの家臣と言うべきか、普通なら死ぬような一撃を食らっても誰一人死んではいない様だった。──あ、そうそう。彼らもだね。

 

「あはははは!! やっぱおでんもおでんの家臣も強いねぇ!! ここまで長く戦えた相手は久し振りだよ!!」

 

「ぐっ……当然……我らはまだまだ倒れはせぬぞ……!!」

 

 彼らのリーダー格である錦えもんがこちらを睨んで言う。その迫力は確かに中々のものだ。

 だがその全身の傷や、周囲の者達が足を引きずっていたり、血反吐を吐いていたり、肩を貸すような状態じゃなければだが。

 

「でも……そろそろ終わりかな~? もう相当グロッキーだもんね~~? あはは♡」

 

「ハァ……ハァ……まだ、ま……ゲホッ……まだだ……!!」

 

 そう言って何とか刀を手にしてはいるが、その刀は既に折れている。私が槍を振るって折ってあげた。

 なんならこの4人、錦えもん、河松、イヌアラシ、ネコマムシの身体はもうボロボロだ。骨も何十本もバキバキに折ってあげたし、全身が血みどろで中々に香ばしいことになっている。()()()の楽しみもあるから今はどうもしないけどね。槍に滴る血を舐めるくらいで我慢しておく。

 でも私としてはそこそこ満足出来た。久し振りに楽しくはあった。結構耐えてくれてたからね! 

 

「いやぁ、4人とも頑張ったね~? これが遊びなら私の負けを認めてあげてもいいくらいだよ、いや本当」

 

「まだ、勝負は終わっで……ないぞ……!!」

 

「え~、そう? ふふふ、それじゃあもうちょっとお話しながら戦ってあげよっか。──はーい、それじゃ右足狙うよー♡」

 

「っ……」

 

 私はUFOを操り、彼らの右足を狙って弾幕を放ってあげる。すると何とか躱したので、そのタイミングでこちらから直接弾幕を撃ち込んであげた。

 

「おー、凄い凄い。躱してるねー♪ ──でもざ~んねん!! ここで自機狙い弾を食らえ~!!」

 

「ぐ……ああァァ~~~!!!」

 

「イヌ!!」

 

「ちくしょうが……狙うならワシから先に狙わんかい!!!」

 

「あ、おっけー。それじゃあなたは左手ね~♡ 可愛い肉球目掛けて~~~──えいっ!!」

 

「が、あああァァ……!!」

 

 私の矢の様な形状の弾幕がネコマムシの手に突き刺さる。あーあー、痛そうだなぁ。もう強がる余裕すらなくなって来てるのかな~? 

 

「うふふ。正直、もうあなた達に対戦相手としての楽しみは期待してないんだよね~♡ もうここからはただの遊びだし、さっさと終わらせても良いんだけど~~~……そうなるとおでんの戦いを見るだけになって暇になっちゃうんだよなぁ。はぁ、困ったなー」

 

「おでん様の……元へは行かせん……!!」

 

「いやいや、あなた達は邪魔にすらならないから。カイドウが一対一でやりたいって言うからおでんを狙ってあげてないだけで、本当ならあなた達の相手なんかUFOか分身に任せてさっさとおでんのところに行ってるよ~」

 

 そう、ぶっちゃけそうなんだよね。1番楽しめる相手はカイドウが独り占めしてるから、侍4人で我慢してあげてたんだけど……まあおでん以外で何時間も持つ訳もないというかさー。ほら、子供でもないのに公園で何時間も暇潰ししろって言っても限度があるというか……最初は楽しめたんだけど、それでも本気で戦ってるとどんどんボロボロになっていって、最終的にはこんな感じになっちゃってるしね。それでも楽しめただけマシだ。無傷のノーミスで終わっちゃったけど、本気で戦ってここまで保っただけマシ。──まあとはいえまだまだ技を全部使ったとは言い難いし、能力を全て解放してる訳でもないから完全に本気って訳でもないけど……力を抜いたりした訳じゃないからね。全然及第点だし、収穫がある戦いには変わりない。だから感謝したい。

 

「でもまあありがとね!!」

 

「っ……!!? 何、を……!!」

 

「皆バカで()()()()()()()()()だったあなた達が挑んできてくれたおかげで安全にウチの海賊団の戦力をテスト出来たし、角も立つことなくワノ国を支配出来るし、私は楽しいしで良いこと尽くめだよ!! だからお礼を言っとこうかなーって!!」

 

「…………!!」

 

「こ、の……!!」

 

「なんという……!!」

 

 あれれ? 皆顔を青褪めさせてなぜか絶句してる感じだけどおかしいなー。せっかく褒めてお礼まで言ってあげてるんだから喜べばいいのに……ふふふ、なーんて、怒る理由もわかるけどねー。それも含めて楽しいからやめられないんだよねぇ。

 

「ほらほら、もうちょっとで勝負もつきそうだし、皆で見守ってみる?」

 

「! おでん様……!!」

 

 私がそう言ってあげると、侍達が瀕死状態だと言うのに皆でおでんの方に視線を向ける。不甲斐ないと謝罪するような、それでいてその身を案じるかのような。うーん、中々に泣ける。良いねぇ。もっと感動的な言葉を送ってくれてもいいんだよーって、それはあったとしてもこの後に取っておくよね。

 ──ほら、後は決めるだけなんだからちゃんと勝ちなさいよね、と私は侍達を虐めながらその時を見届けることにした。

 

 

 

 

 

 カイドウとおでん。ワノ国を支配する怪物と、ワノ国を救おうとする侍の戦いは長時間に渡っていた。

 

「くたばれ、おでん……!!!」

 

「てめェがな……うわ!!?」

 

 おでんはその卓越した剣技と流桜。長年の海賊生活でも磨かれたおでん二刀流によってカイドウを討ち取ろうと何度も空へ挑んでは叩き落とされる。

 カイドウは今まで何度も叩きのめされ、死にかけ、拷問を受けて鍛え上げられた鋼の肉体と龍の力でおでんを何度も叩きのめした。

 世界に名だたる強者である両者の激突は周囲に何度も王の証である覇王色の激突による衝撃波を撒き散らしている。

 

「やべェぞカイドウ様とおでんの戦い……!!」

 

「カイドウ様が負ける筈はねェが、随分と粘ってやがるな……!!」

 

「……ンニキョキョキョ……まあいざとなれば……」

 

 その戦いを遠巻きに眺めることしか出来ない百獣海賊団の船員達は、その両者の凄まじさ。レベルの違う強さを見て恐れを抱く。

 だが誰もカイドウが負けるとは思っていない。

 自分達の船長はあの“百獣のカイドウ”だ。敵船や海軍に何度も1人で、あるいは2人で挑みかかり、時には島を滅ぼしてきた正真正銘の怪物。

 負けたことだってあるが、その時ですらカイドウは誰にも殺せなかった。

 海軍に捕まり、拷問を受けようが死刑を執行されようが、軍艦や巨大監獄船を沈めて帰ってきた。

 まさに無敵の男がカイドウだ。

 カイドウに敵う者がいるとすれば、世界に数えるほどしかいないだろう。

 かの“白ひげ”や“ロジャー”がそうだが、ロジャーは既に死んでいる。後は“ビッグ・マム”や“金獅子”か。味方だがぬえも戦える。海賊の世界だと敵う者はもう殆どいない世界最強の一角。それがカイドウだ。

 それがこんな田舎国家のバカ殿などに負けるはずはないと誰もが信じていた。

 だがしかし……中にはそうでない者もいる。

 1人はカイドウが負ける可能性を考えて手出しをする準備を進めているし、また別の1人は何もしないにせよ、負ける可能性はなくもないと思っている。

 そして後者の見立てでは決着は近いと見ていた。そして──転機は唐突に訪れる。

 

「ハァ……ハァ……斬りてェのはお前の首一つ!!」

 

 地面に吹き飛ばされたおでんが刀を杖代わりに起き上がり、再び二振りの刀を握り締める。

 その刀には渾身の覇気が込められていた。長期戦となれば自身が不利となることを悟ったのだ。カイドウのスタミナには底が見えない。

 だからこそ渾身の一撃で決めると、おでんは跳躍した。

 

「──“おでん二刀流”……」

 

 もう何度目かになる激突。今度もまた、カイドウがおでんを叩き落とし、戦いは続くと思われた。

 だがそこで、誰もが──おでんの侍以外と一部の者以外には想像すらしていなかった事態が起きた。そう、遂にだ。

 

「──“桃源十拳(とうげんとつか)”!!!」

 

「!!!!」

 

 おでんの覇気を纏った二刀が、カイドウの腹に──十字の斬撃。その結果となる傷跡を負わせてみせたのだ。

 

「む、無敵の……!!」

 

「カイドウ様が斬られた!!?」

 

 百獣海賊団の船員達は口を大きく開け、そのありえない光景に驚きの声をあげる。

 カイドウの肉体は銃だろうが大砲だろうが刀だろうが槍だろうが、どんな攻撃でも傷つかない無敵の肉体だった。

 傷を負わせられるのは仲間内だとぬえのみ。ここ数年はぬえとの喧嘩でしか傷を負ったことがない怪物が、

 

「オォ……!!」

 

 確かに斬られた。

 カイドウは白目を剥いて、地面へと落下し、その巨体で森を叩き潰す。

 獣型の変身も解けていた。人型に戻り、カイドウは地面に手を突き、口の端から血を零している。

 それにおでんは猛然と追撃を──いや、とどめを刺そうとした。

 

「二度と来るな!! “ワノ国”へ!!!」

 

 そしてその瞬間は訪れる。

 とある老婆が子供の姿に変身し、おでんに隙を作ろうとしたその瞬間、

 

「──邪魔したら殺すからね」

 

「っ!!? な──ぬえ……!!?」

 

 その老婆──黒炭ひぐらしがその能力を発動する直前に、老婆の首に少女の……ぬえの槍が当てられた。

 明らかに妨害する行為。手助けを拒否するような行いに、ひぐらしは声をこれ以上出せないが、視線で何をするのかと言外に問うた。

 このままでは負けてしまう。それはマズい。早く手助けをしなければ手遅れになる。

 だが──ぬえは笑みを向けていた。

 それもひぐらしにではない。今にもとどめを刺されそうなカイドウにだ。

 そして、小声で呟いた。何かを懐かしむようで、しかし不敵な声色でぬえは言った。今にも死にそうなカイドウに向かって。

 

「──私達の戦いはいつも()()()()()()()()()()だったよね」

 

 ──そしておでんが二刀の刀を振るうその瞬間……鋼の音が響いた。

 

「なっ……!!? まだ動けるのか……!!」

 

「ハァ……ハァ……ウォロロロロロ!!! また……生きちまった……!!!」

 

 それはおでんにも驚きの光景。

 腹を斬られ、口から血を零すカイドウは、おでんの二刀の一撃を金棒で受け止め、不敵に笑っていた。

 だがカイドウと、その兄妹分にとって、それは当然のことだった。

 

「くそ……腹が痛ェ……死なねェもんだな……お前ほどの男に斬られても……!!」

 

「……!!」

 

 そう──彼は“死に場所”を求めていた。

 その男は海賊として7度の敗北を喫し……海軍、又は敵船に捕まること23回。

 

「だが……この死にかける感覚は悪くねェ……()を思い出す……!!」

 

 もう一度言うが、たった1人。あるいは()()で幾度となく4強、海軍に挑み、捕まること23回。1000度を超える拷問。60回の死刑宣告。

 

「昔は何度も死にかけた……おれよりも遥かに強ェあの頃の化け物共……毎日が殺し合い、戦争の日々……!!」

 

 時に首を吊られるも鎖は千切れ、時に断頭台にかけられるもその刃は砕け、串刺しにするも槍は折れ、海に沈められても耐えきり、仲間や敵に斬られるもそれを返り討ちにし、あるいは生き残ってきた。

 結果沈めた巨大監獄船の数は18隻……!! つまり、

 

「ウォロロロ……せっかくお前がこうやって挑んできたんだ……もう、やるしかねェな……!!!」

 

 ──誰も彼を殺せなかった……!!! 

 それは彼自身も、彼の兄妹分も然り……!!! 

 趣味は“自殺”……そして“殺し合い”。男の名は──近年、星の数ほどいる海賊達の中で新世界に君臨する4人の大海賊、その1人として……彼はこう呼ばれることとなる。

 

『“四皇”──“百獣のカイドウ”』

 

「こんな退屈な世界、壊れてもいい!! 壊した方が()()()!! 世界最高の戦争を──始めようぜ!!!」

 

「っ……お前……!! しまっ──ぐああっ……!!?」

 

 巨大な人獣型となり、目の前の侍を雷と覇気を纏わせた金棒の一撃で吹き飛ばす。

 その怪物、災害とまで称される戦いぶりは敵だけでなく、味方すらも畏れさせる。

 一対一でやるならカイドウだろう──口々に人は言う。

 陸、海、空……生きとし生ける全ての者達の中で……“最強の生物”と称される海賊……!!! 

 

「──ウォロロロロロロロロロ!!!!」

 

「…………!!! ま、だ……こんなに、力を……!!?」

 

「おでん様!!」

 

「おでん様!? ──っ!!!」

 

 そしてその戦いは、カイドウによる猛攻に気を取られた侍達が倒され、幕を閉じることになった。

 四皇カイドウの兄妹分。その右腕と称される正体不明の少女──“封獣ぬえ”の手によって。

 

「あはははは!!! いいねぇ!! 最高!! でももう決着が付くなら──最後に締めてあげないとね!!!」

 

 腹を抱えて大笑いし、そしてぬえはその手に弓を出現させる。

 そしてその弓を引き絞り、まだ生き残っている侍達全員に狙いを定めた。

 

「“恨弓(こんきゅう)”──」

 

 それは本来、己を退治する恨むべき弓でありながら、少女の最大の技であった。

 

「──“源三位頼政の弓(げんざんみよりまさのゆみ)”!!!!」

 

「!!!!」

 

 その覇気と力を集中させ放った矢は、空を走る流れ星の如くおでん以外の残っていた侍達全員を撃ち抜き、戦闘の継続を不可能とし……そして僅かに粘り、1人で戦ったおでんとカイドウの決着が付いたところで──この国を救うための戦いは終わりを告げた。




ジョーカー→六式と覇気と悪魔の実で身体能力バカ高い。速さと再生力と搦め手が強め。技名はオリジナルもあれば某吸血鬼のものも拝借。
クイーン→パワー重視の重量級だけど遅いとは言ってない。技名はありそうなものをオリジナルで
キング→劣ってるところはない剣士。そろそろ原作でも懸賞金か種族か技名か何かしら情報が欲しいところ
ぬえちゃん→1対4だったけど基本優勢でボコった。何時間も戦えたのは久し振りだったのでそこそこ満足。収穫もあったので満足。次回も満足。後で美味しく頂きます
カイドウ→負けた回数や捕まった回数。ぬえちゃんと一緒にいることによって戦闘回数が増えまくった結果、最強生物の誕生。まあまだまだ一強ではないけど、とりあえず四皇おめでとう!!
おでんと赤鞘→大看板連中の強化に伴い、カイドウの決着と待たずして1人ずつやられる。おでんはかなり頑張ったけど原作よりも強いカイドウと解放された人獣型で負けました。

とまあこんな感じで。カイドウとぬえちゃんの懸賞金は四皇編の最初の話で明かします。第二部は後1話、2話ってところですのでお楽しみに!

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