正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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飛び六胞

 ──ワノ国、“鬼ヶ島”。

 

 そこは巨大な鬼にも見える髑髏状の山がそびえ立つワノ国の無人島だ。

 しかし今は無人ではない。その島は何年も前から、黒炭オロチと手を組む海外の海賊──“百獣海賊団”の本拠地となっていた。

 そしてその島は今、島の入り口となる湖から洞窟内部、山の周囲までもその一部とする巨大な城が建っており、今なお大勢の大工達が出入りし、屋敷や関所を増築している最中である。

 やってくる船は資材を運び、出ていく船は“兎丼”まで資材を取りに行く。大規模な工事はワノ国の腕の立つ職人達によって着々と進められていた。

 そして船員達は、屋敷の中の部屋やライブフロアで寝泊まりする。仕事は略奪、訓練、物資の仕分けや連絡、報告と様々だが、それ以外の自由な時間は思い思いの休息を取って過ごしている。宴会などが1番多い。

 無論、海賊であり、ワノ国の支配に協力してる彼らは毎日、ワノ国の各郷を見張ったり、武器工場で労働を監視したりしているが、そういう者達の殆どはその場所で寝泊まりするので、鬼ヶ島にいるのは百獣海賊団の全戦力の半分程度だ。

 だがそんな中、ちょっと変わった者達も存在した。

 

「──おいサボるな!! 何してんだ!?」

 

「あっ!? す、すみません。腕が、その……」

 

「あ!? 腕ェ!? てめェふざけんな!! あの人に見られたら殺されるぞ!!?」

 

「わ、わかってますけど……少し疲れて……」

 

 鬼ヶ島のとある一角に同僚を叱りつける船員の声と謝る者の声が響いた。

 そこは長い倉庫の様な建物の中であり、そこには変わった匂いが充満している。慣れていない者が一度入ればむせてしまう程の場所であり、実際ここに入ったばかりの新人は顔を露骨にしかめていた。

 そして彼らの手には赤黒い液体が染み付いていた。手袋をしているが、下手な者だと手袋に染み付き、服や顔にも飛び散っている者もいる。

 そういった者達が、この場所には複数。そして時折、呻き声まで聞こえる始末である。

 彼らは一様にある作業をしていた。命に関わる大事な仕事だ。

 だがその辛さに荒くれ者も場合によっては耐えることが出来ない。それほど過酷な場所だった。

 だがそんな場所に、カラン、カラン、と変わった足音が鳴り響いた。

 

「──おい。なにしてんだ?」

 

「あっ……すみません!! ちょっとこいつが……」

 

「い、いいいや、あの……その……」

 

「ちゃんと絞り出したんだろうなァ?」

 

「は、それは……」

 

 その足音は2人の船員の前で立ち止まる。若い男だった。青年といった面持ち。しかし体格はそれなりにしっかりしており、上半身に波を思わせる外套を羽織り、その鍛えた身体をむき出しに。ズボンも外套と似た模様のコートにも似たそれを穿き、下駄を履いていた。

 そして角つきの海軍帽にも似た帽子を被り、ギラギラした目つきをしていた。そして、口元は普通の人間とは思えないギザギザの歯。下顎から伸びる2本の牙が特徴的である。

 その男はまだ年若くも百獣海賊団の幹部だった。そして彼は、作業中のそれを確認するように手を伸ばすと、

 

「──おいおい!! てめェらふざけてるのか!?」

 

「ひっ!!?」

 

「い、いえ……!!」

 

 途端に怒りを見せた。笑みを浮かべているが、目は笑ってない。軽い殺意が向けられている。船員達はそれに怯えて身体をビクッとさせた。

 それを見た男はしかしすぐに殺意は消した。だが軽く呆れにも似た息を入れてまた笑い、威圧的な低い声で告げる。

 

「ハハハ!! あんまり舐めた真似すんじゃねェぞ!! おれはカイドウさんとぬえさんからここの管理を一任されてんだ!! ──なァ、おれも可愛い手下を怒りたくねェんだ。わかるよな?」

 

「は、はっ!! しっかりやります!!」

 

「今から全行程をやりなおします!!」

 

「おう、それでいい……しっかりやれよ。──やれるよな?」

 

『やります!! やらせてください!!』

 

 部下達が揃った声でそう言うと、ようやく男の威圧的な気配がなくなった。そしてまた1つ1つ、別の部屋を見て回る。その場所の匂いには全く反応しない。どうやら慣れている様だった。

 そうしてしばらく見て回ると、別の一室から一本のそれを持っていくと建物を出る。その男の名は、

 

『百獣海賊団“飛び六胞”ササキ』

 

「ふん……使えねェ部下共だ。ありゃ幹部は無理だろうな」

 

 カラン、コロン、と下駄を鳴らして肩で風を切って歩く。ササキは自分に自信があった。何しろ若くして百獣海賊団の幹部だ。それは彼に才能がある証である。

 実際、ササキは自分の実力は最高幹部を除けば1番だと思っている。何なら次に最高幹部……“大看板”の座に上がるのは自分だとも。

 何しろ功績だってある。今ササキが手にしている物がその功績だ。その作り上げたものには何よりも自信がある。そう──他の幹部連中にも負けやしないと。

 

「……やってるみてェだな」

 

 と、彼はしばらく歩き、またとある一角に到着する。

 そこはある意味、百獣海賊団の中で最も重要な施設だった。そう、自分が管理する場所と同じくらい重要だと認めざるを得ない場所。

 またある意味、百獣海賊団の施設の中で最も過酷な場所。報酬を得るには、物にも依るが、長い時が必要でありながら、運が悪ければ一瞬でその苦労は水の泡と化してしまう賽の河原にも似た場所。

 ササキでさえその苦労は知っている。なんならその同じ苦しみを味わったこともある。その時の絶望感は酷いものだった。ゆえにササキはそのかかる重圧を同情すらする。

 だが……今ここを管理しているのが、またある意味で、百獣海賊団で最もイカれてるかもしれない少女だから逆に心配がない。精神的に強すぎるからだ。単に頭のネジが飛んでるだけかもしれないが、その少女は。

 

「──おいお前よォ!! 何手ェ抜いてんだ!?」

 

「っ!! す、すみません!!」

 

「全力でやります!! だから頭突きだけはご勘弁を!!」

 

 その場所に、少女の、しかし荒っぽい口調が響いた。

 まだ年若く、多くの船員達よりも年下の少女の声。ササキも若いがその少女はもっと若い。半分子供のようなものであり、実際ササキから見ればガキみたいなものだった。

 だがその実力は幹部に足るものである。じゃなきゃ百獣海賊団で偉そうには出来ない。もっとも、この少女は昔から誰にでも噛みつくイカれたガキではあったが。

 今も、謝罪をして必死に手を動かす新入りの言葉を大人しく受け止め──なかった。

 

「全力でやりますだとォ!? じゃあ今までは全力じゃなかったって言うのかよォ!!?」

 

「そ、そういう訳では!!」

 

「あァ!!? じゃあなんだって──」

 

「──おいやめろ()()!! ここで流血沙汰はマズい!!」

 

 と、そこで必死に声を上げてやってきたのは少年だった。ある意味、百獣海賊団で最も苦労してるかもしれないガキだった。黒いマスクに角付きの白黒帽子を被った少年。その手には沢山の魚が入った網がある。きっと漁帰りだろう。ササキは漁業班も手伝ったこともあるからわかる。少年が先程までいたであろうそこもまた、百獣海賊団を支える重要な区画なのだと。

 そして少年は姉貴と呼んだ少女を必死で止める。すると少女が振り向いた。口元にマスクをして、頭に2本の角がある見た目は可愛らしい少女だ。先程までの噛みつきっぷりがなければ、普通に可愛いと称することも出来たかもしれないが、少なくとも彼女を知る多くの船員達はイカれた奴だという評価を下していた。

 そんな少女の目が少年を捉えると、先程までとは打って変わった様子に変化した。

 

「ああ、ぺーたん。漁帰りでおじゃるか?」

 

「ぺーたんって言うなや!! それとまたなんだその変な言葉遣い!! 恥ずかしいからやめてくれ!!」

 

「照れ屋でおじゃるねー♡ ぺーたんは♡」

 

「だからぺーたんって呼ぶのやめろって!!」

 

 ぺーたん、そう呼ばれた少年はそう呼ばれることを嫌がり、更には姉が変な言葉遣いをするのも嫌がる。その少女は毎度のことだが、謎のブームか何かで変な癖がついたりするのだ。本人は全く気にしてないし、ぺーたんと呼ぶのも改めないが、少年にとっては頭の痛い問題だった。その2人の姉弟の名前は、

 

『百獣海賊団“真打ち”うるティ』

 

『百獣海賊団“真打ち”ページワン』

 

 そして、そんな2人の争いを遠くから見ていたササキだったが、そこでようやくうるティに気づかれる。

 

「ん? そんなとこで何してるでおじゃるか? ササキ」

 

「……いや。ぺーたんが弄られるところを笑いものにしてただけさ」

 

「あァ!!?」

 

 ササキはそうからかうように言うと、ページワンが怒りの声と視線をササキに寄越す。しかしその先の声は続かなかった。先んじて、姉のうるティが噛みついたから。

 

「お前よォ!! ウチのぺーたんナメたらシバキ殺すぞササキ!!」

 

「オイ本当やめろ姉貴!!」

 

「やめろだとォ!?」

 

 弟をバカにしたとうるティが怒声をササキにぶつけるが、何故かササキに怒っていた筈のページワンが自分以上にキレ散らかすうるティを止める羽目になる。挙句の果てに止めに入った弟にまで噛みついてくる始末だ。人間、自分の怒り以上に怒ってる人間を見ると落ち着いてしまうものなのだろう。しかもそれが姉なら余計にそうなのかもしれない。ササキは何も言えずに黙った。その姉と弟のやり取りの奥で、作業は続いている。

 だがそんな中、また別の人間が通りがかった。そのやり取りを耳にして、反応を返してくる。

 

「うるせェぞクソガキ共……人の作業中にペラペラと……」

 

「今度はフーズ・フーでおじゃるか。何をしているでおじゃる?」

 

「だからその言葉遣いもやめろって!!」

 

 鬼にも似たメットを被るスーツ姿の男、フーズ・フー。彼もまた、つい先日仕事を終えて帰ってきたばかりの百獣海賊団の幹部だった。

 ページワンの言葉遣いを止めるツッコミが入る中、うるティはフーズ・フーに何をしているかと問う。するとフーズ・フーはメットの奥から威圧的な視線を放ち、言った。

 

「見てわからねェか? ──()()()()()()()()()……!!」

 

 そう──フーズ・フーは台車を引いていた。

 そしてその台車の上には、彼が作業で使う大量の牧草が積まれている。フーズ・フーのパワーを表すかのように積まれている量は常人が一度に運べる十倍の量を軽く運んでいた。

 それを見せつけ、フーズ・フーは心の中で勝ち誇る。──畜産において自分に敵う者はいないと。獰猛に笑みを浮かべるのだ。腰に差した刀に軽く手で触れ、

 

「雑魚海賊に時間を取られて遅れちまったからな……これが終わったら──くく、ようやく奴等を切り刻んでやれる……楽しみだ……!!」

 

「──羊の毛を刈り取るんだな」

 

「──あの作業大変でおじゃるよね」

 

「そうだ……そういうお前らこそ何してる? ちゃんと仕事は終えたんだろうな?」

 

「何だとォ!? こっちはもうすぐ収穫だってんだよフーズ・フー!! ウチの畑ナメたらシバキ殺すぞ!!」

 

 フーズ・フーの問いにうるティがキレながら畑を見せつけるように手を広げる。そこにはそろそろ収穫の頃合いだろう。幾つかの野菜や果物が実っていた。

 その畑は確かに立派だった。よく焼かれることを考えるとここまで保っただけでも称賛に値する。

 だがそれでも、フーズ・フーは勝ち誇った。そして、同じ様にササキも。自分の作り上げた物を懐から取り出し、

 

「フン……おれの牧場で採れた肉は最高の品質だ……このスモークハムを見ろ……これを見れば誰が1番大看板に近いかわかる筈だ……」

 

「ウチの作った物とは比べられないでおじゃる♡」

 

「黙れ……おれの収穫物をバカにするな殺すぞ……!!」

 

 懐から燻製した肉を取り出すフーズ・フーを見ていた部下達は心の中でツッコんだ。──それを見ても近づくのは大看板ではなく立派な酪農家なのでは……? と。

 しかしツッコんだら殺されそうなので何も言わなかった。何しろ、この場の幹部の目が全員、マジだったから。

 

「ハッ……わかってねェな。このおれの作ったこれ──酒が何よりもすげェ。てめェらが宴会で飲む酒も、カイドウさんやぬえさんが大量に消費する酒もおれが作ってんだ。それを考えればわかるよな? ──おれは百獣海賊団で最も重要なものを支配してるんだ……つまり、大看板に最も近いのはこのおれってことだ」

 

 ──こっちはただの醸造家だった。酒屋の看板でも掲げるつもりだろうか? ササキは懐から先程の酒造蔵から持ってきたワインを手にして見せる。最近はワノ国特有の酒の作り方もマスターしようとしているらしい。しかしお世話になっているのも事実なため、部下は何も言えなかった。

 

「──あんた達、わかってないわね」

 

「あ?」

 

「帰ってきてたのか、ブラックマリア」

 

「何か文句あんのかブラックマリアよォ!!?」

 

 だがその時、湖の方から巨大な歳若い花魁が顔を出した。そしてゆっくり近づいてくる。百獣海賊団の幹部、ブラックマリアだった。

 しかし彼女の手には何もない。普段から使ってる煙管のみ。

 でもそれはブラックマリアに戦闘以外出来ることがないという訳ではないし、収穫物がないという訳ではない。ブラックマリアは言外に視線で告げる。──見ろ、そこらの建築物全てを、と。

 それはすなわち、この場にある物こそが彼女の収穫物であることの証だ。彼女もまた生み出す者の1人なのだと。

 

「お前さんらが使ってる建物……それを造ってるのが誰か忘れたのかい? 全部私らが建てたものさ♡ つまり──大看板の座も、実際の看板も、私なら自分で建てれる」

 

 ──とうとう物理的な看板がどうのとか言い出した。それは勝ち誇っていいのだろうか。ただの建築家だろう。もはや大工の棟梁。いや、姐さん。色っぽいからおれは好きだ──そんな幾つもの声がそれを見守る船員達の内心から聞こえる様である。

 そして最後には、

 

「おい!! おれの魚を忘れるんじゃねェ!! おれ達は海賊だ!! 海賊といえば海!! 海といえば魚だろう!!?」

 

 ──つまり海賊といえば魚……? 何か間違ってるようで、間違ってない気もしてくる。今までがおかしかったせいで、ページワンの海で魚を採るくらい全くおかしくない行為に聞こえてくる。部下達は混乱した。ひょっとして、間違ってるのはおれ達の方なんじゃないかと。

 

「……引き下がるつもりはないみてェだな」

 

「当たり前だろ。おれが負けるなんざありえねェ」

 

「やる気かい? まあ負けないけどねェ」

 

「あァ!? お前らウチのぺーたんナメんなよ!! お前らなんてワンパンだからな!! ワンパン!! 全員まとめてもワンパンだ!!」

 

「い、言い過ぎだ姉貴ィ!!? ホントやめろよマジで!! おい!! 聞いてんのか!?」

 

 そしてとうとう、幹部達がやる気を見せる。……若干一名、姉の無茶振りでホントにやめてほしそうなのがいたが、誰も彼のことを気にしなかった。

 今にも全員、変形でもしかねない。何しろこの場にいる幹部は全員悪魔の実の能力者なのだ。

 部下達がそれを恐れ、離れようかと足を外に向けた瞬間──また別の声がその場の幹部達に掛けられた。

 

「──皆で何やってるの?」

 

「──ようおめェら、何してんだ?」

 

『!!』

 

 その瞬間、ほぼ全員の表情が驚きに染まった。

 言い争いを聞きつけたのか、やってきたのはこの百獣海賊団の総督と副総督。カイドウにぬえだった。彼らが目指す大看板ですら敵わない怪物2人。

 ゆえに誰もが矛を収める。勝負はまたの機会にしようと。誰もが視線を交わし、言外に告げて頷いた。

 だが1人だけ、それにも臆さない者がいた。うるティだ。イカれた彼女はカイドウとぬえを見て、まさにイカれたことを言い放った。

 

「見たらわかるでしょ? 2人共バカなの?」

 

「おおおおおおい!!! 待て待て待て!!!」

 

「そこ噛みつくのやめとけ!!!」

 

「な、何か言った? 私は、き、聞こえなかったねェ……」

 

「おいホントやめろ!! ほんっとにやめろよ!! マジで!! そこだけはやめてくれ!!!」

 

 うるティのまさかの噛みつき。しかも、この世で最も恐ろしいコンビに対しての噛みつきだ。

 フーズ・フーもササキもブラックマリアもページワンも、皆焦った。大声を上げてうるティの声を誤魔化そうとしたり、何も聞こえないと震え声で白々しい嘘をついたり、本気で注意したりした。

 カイドウとぬえが暴れればここなんて軽く消し飛ぶ。自分達だって流れ弾で、簡単に死ねる。死なないにしても大怪我をする。そんなのはまっぴらだった。

 だからこそそれを止めようとした。誤魔化そうとした。しかし、その甲斐もなく、

 

「あァ? 喧嘩でもしてんのか」

 

「あはは、楽しそうでいいね!!」

 

「…………あ、ああ。いやまあ……喧嘩というか勝負だが……そんなところです」

 

 フーズ・フーがややあって、それを誤魔化しに入る。どうやら聞こえていないか、もしくは気にしていないのか。とにかく助かった。

 皆がほっと息を吐く。そんな中うるティは続けて、

 

「ウチのぺーたんが最近また強くなってるでおじゃる♡ だからまた今度訓練を見てやってほしいでおじゃるよ♡」

 

「えっ、そうなの?」

 

「変わってねェだろ」

 

「おいウチのぺーたんナメんな!! ぺーたんなら2人の攻撃だって余裕で耐えてみせんだよォ!!」

 

「ば、ばばバカやめろ姉貴ィ!!! 弟殺す気かよ!!!」

 

「やめろだとォ!? ──やめてくださいお姉ちゃんだろォ!?」

 

「言ってやめるなら幾らでも言ってんだよ!! いやでも頼むからホントにやめてくれ!!」

 

「──そういや、おめェらにも話があるんだった」

 

「唐突!!?」

 

「まだ弟が困ってんでしょうが!!」

 

「姉貴のせいだよ!!!」

 

「あはははは!! うるティちゃんとぺーたん面白ーい!!」

 

「そうでおじゃるでしょ♡ ぺーたんはとっても面白いでおじゃるだから♡」

 

「だからぺーたんって言うんじゃねェ!! 面白くもねェ!!  ゼェー……ゼェ……ハァ……」

 

 カイドウとぬえに対するうるティの噛みつきと、そのマイペース過ぎるやり取りにツッコミまくり、ページワンは息を切らす。そんな気の毒な少年を見た幹部3人が近づき、

 

「あー……元気出せよぺーたん。酒でも飲むか? ……ガキだが飲めるよな?」

 

「──つまみならあるぞ。ハムだ」

 

「鍵付きの小屋はいるかい? いざという時はそこに逃げ込むんだ。人生辛い時は逃げることだって──」

 

「急に優しくしてくんじゃねェよ!!!  ……後ササキはぺーたんって呼ぶな!!」

 

「この間ナワバリを増やしたのは良いんだけど、幾つかの海賊団にウチの船が何隻か沈められて……」

 

「何事もなかったかのように話を始めるな!! おれがまだ困ってんだよ!! 聞く態勢取れねェよ!!」

 

「おお……とうとうぬえさんにまでツッコんだ……」

 

「只者じゃねェなぺーたん……やっぱうるティの弟か……」

 

「さすがぺーたんでおじゃるね♡」

 

「嬉しくねェ!!!」

 

 最後にビシッとページワンがツッコミで締めた。──そこでようやく、話が始まる。

 先程チラリとぬえの口から聞こえた、その続きとなるものだった。

 

「とりあえず、この間言った通り略奪と戦力集めに聖地に行くからそのメンバーを決めようと思って──あ、ハム♡ ハムちょーだい!」

 

「どうぞ──なるほど……ハム……じゃねェ。聖地襲撃となるとかなり大掛かりだが……まさか政府と戦争すると?」

 

 ぬえの説明に頷き、ぬえにハムを手渡すフーズ・フーは問いかけた。するとぬえはハムを美味しそうに齧って食べながら、

 

「はむはむ……ううん。ちょうどいい罪をなすりつけられる相手がいるし、戦争にはならなそうかな~? 向こうにその度胸がないだろうしね♡」

 

「罪をなすりつけられる相手……?」

 

「ウォロロロ……活きの良い連中がいるみてェだ──おい、おれにも酒を寄越せ」

 

「はいよ、どうぞカイドウさん」

 

 ──聖地襲撃の話を聞いてさすがの百獣海賊団も表情が硬くなる。そしてカイドウがササキから酒を受け取った。そうしてラッパ飲みをし始めるカイドウを尻目に、ブラックマリアがハムを食べるぬえを見て尋ねる。

 

「具体的にどうするつもりですか?」

 

「ん~……まあ適当にライブ配信して珍しいもの奪ってって感じかなぁ……あ、この間言った通り、うるちゃんとぺーたんにもついてきて働いてもらうからね♪」

 

「なんでもやる~♡ ぺーたんも!!」

 

「やっぱりおれもかよ……!!」

 

「え、来ないの~?」

 

「……いやまあ行くけど!!」

 

 姉に決められたことに憤慨はしたが、経験を積みたいページワンにとって行かないという選択肢はなかったのか、ぬえについていくことを決める。うるティの方はぬえに懐いているため、ぬえに誘われて喜んでいた。抱きついて頭を撫でられて嬉しそうにしている。

 

「それじゃ皆、メチャクチャに暴れてくるからお土産期待しててね~♡」

 

「ウォロロロ……天竜人なら金目の物も腐るほど持ってるだろうからな……!!」

 

 この世界に生まれていれば誰もが恐れる相手、天竜人。

 その天竜人が住まう聖地を襲う、神をも恐れぬ行為の計画を立てて笑う2人を見て、百獣海賊団の面々はまたしても畏怖を強くした。




鬼ヶ島→想像以上にデカいし雰囲気が良かった。
ササキ→魚人? バンカラ番長っぽくてカッコいい。酒屋ササキ
うるティ→口悪い何にでも噛みつく変なブームに嵌る姉。属性マシマシ。農民
ぺーたん→ぺーたん。多分、もう、一生ぺーたん。漁師。飛び六胞一の苦労人
フーズ・フー→畜産担当
飛び六胞→TO○IO こいつらにかかれば島1つくらい簡単に破壊して再生する。何かがおかしいな?
将来の飛び六胞→「おれは興味がない……(迫真)」

という訳でび六胞の回でした。思ったより長くなったけど、分量自体は少ない。

感想、評価、良ければお待ちしております。

追記

飛び六胞の年齢が判明しましたのでこの以前はモリア戦前のこの話を改定して後に持ってきました。

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