正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる 作:黒岩
その日、世界中に報じられたその大事件は文字通り、世界中の人々の度肝を抜いた。
世界経済新聞、及び、各新聞社の見出しは細かい違いはあるものの概ねこう書かれていた。
──聖地マリージョア襲撃!! 魚人族の冒険家フィッシャー・タイガー!!
──聖地襲撃の大罪人フィッシャー・タイガーを船長とする魚人海賊団結成か!?
「お、おい!! やべェぞ今日のニュース!!!」
「まじかよ……魚人がたった1人であの天竜人に……!?」
「やりやがった……!! フィッシャー・タイガーは奴隷解放の英雄だ!!!」
人々はその信じられない内容の記事を見て、誰もが称賛の声をあげる。
天竜人の暴虐は世界中の人々が知るところだ。反抗心を持ち、しかし彼らが保有する絶大な権力と報復の軍事力に泣き寝入りしてきた者達は数知れず。
そんな中、あの
特に魚人達の反応はそれ以上に良く、荒くれ者の魚人達だけではなく、魚人島に住む一般人ですら彼の行動を偉業だと称した。
そしてタイガーが連れ出した魚人や人魚の奴隷達に加え、彼を慕っていた魚人街の曲者達は集結する。
「──いいか!! おれについてくればもう後戻りは出来ねェ!! おれと一緒にお前らも狙われることになる!! それでも良いなら……おれについて来い!!!」
「当然じゃタイのアニキ!!! アニキを見殺しにはさせん!!!」
「シャハハ!! そうだ!! 罪深いのは人間の方だぜ!!」
彼らは奴隷の烙印とそうでない者達の識別をされないように“タイヨウの烙印”を全員の身体に刻み込む。
そうして結成されたのが“タイヨウの海賊団”。構成員は皆魚人か人魚であり魚人海賊団とも呼称される一団である。
世間の多くはそのタイヨウの海賊団と船長フィッシャー・タイガーこそが事件の主犯であり、大勢の奴隷を連れ出した英雄であることを信じた。
……だが中にはこんな噂もある。
聖地襲撃はフィッシャー・タイガー1人に引き起こされたものではなく、何者かの関与があったと。
その噂は少しの間、人々に浸透した。確かに1人で引き起こすより複数であった方が自然といえば自然である。
しかし何者とは一体誰なのか。話がそこに飛ぶと、脈絡のない話ばかりになり、気づけばその噂はすぐに沈下した。
──だがしかし、真実を知る者はいる。
そしてそれは主に海兵だった。聖地マリージョアに至る玄関口でもある島、海軍本部マリンフォードでは、とある部屋で煎餅を齧りながら新聞の記事を読む海兵の姿があった。
「……記事では聖地襲撃の主犯……いや実行犯はフィッシャー・タイガー1人となっておるが……そうではないんじゃな?」
「ああ……ボルサリーノを始め、実際に聖地に詰めていた者や応援に駆けつけた者達が確認している。記事にはなっていないが大勢の奴隷を解放し、16名の天竜人を殺害して逃げたこの大事件の主犯はタイガーだけではなく“四皇”の勢力……それも──」
バリッ、と煎餅を齧る音が響く。
その部屋は海軍本部元帥が職務に使う部屋であり、その部屋にいるのは現在2人。
1人は海軍本部最高戦力、大将の1人で“君臨する正義”を掲げる、長い顎髭を三つ編みにした男──“仏のセンゴク”
そしてもう1人はそのセンゴクの同期であり、記事に出ている者と同じく“英雄”と称される海軍中将──“ゲンコツのガープ”……その人だ。
ガープは部屋に備え付けのソファに座り、真面目な顔でセンゴクからその事の真相ともう1人の主犯の名を聞く。すると真面目な顔で頷いた。彼もようやく得心したのだ。
「なるほどな……確かにあやつならやりそうじゃわい。それに政府の対応にも納得がいった……責任を被せる気じゃな?」
「……貴様だから教えたが……ガープ。誰かに公言するようなことはするなよ」
「わかっとるわい」
ふん、と鼻息を鳴らして再び記事を、そして今度は更新された手配書を見てガープは告げた。今度は湯呑を持ち上げお茶を啜りながら、
「だがどうせバレるじゃろうな。海兵に奴隷に目撃者は多数。人の口に戸は立てられん」
「だとしてもだ。このことを公にしてはならない。ただでさえ政府はあの娘には煮え湯を飲まされ続けているからな……今回も信用の失墜と戦争を避けるための処置だそうだ。政府と……それと天竜人からはタイヨウの海賊団と解放された奴隷を捕らえるよう指示が出ている」
「じゃろうな。まあ魚人は厄介じゃがなんとかなるだろう」
「ああ。タイヨウの海賊団は引き続きボルサリーノに任せてある。それでだ。ボルサリーノの仕事の代わりをガープ。貴様に──」
「……あ、わし急用思い出したんで帰る。茶美味かったぞ」
「──おいこら露骨に逃げるなガープ貴様ァ!!!」
海軍本部マリンフォードでは、元帥や大将センゴクの指揮の下、大事件の後始末をつけようと海兵達が動き始める。
──そしてその命令を下した張本人が住まう場所にして、事件の現場でもあるその地。
街の7割が燃え、現在急ピッチで復興を始めている聖地マリージョア。
その中心にあるパンゲア城では、同じく今回の件について話し合う5人の老人がいた。
「──被害は甚大だな……」
「全くだ……頭が痛い……!! せめてタイガー1人であれば対処も可能であったが……」
「それを考えても仕方あるまい。今はとにかくタイガーと逃げ出した奴隷を捕らえることだ」
「今回の件で魚人に対する反発の声が強まっているな。リュウグウ王国は厳しい立場に置かれることだろう。残念だ」
「城にまで手を出されなかったことは僥倖と言うべきか……」
「海兵の配備を強化しなければな……海軍大将を1人は配置する必要があるだろう。それ以下では“四皇”の足止めにもならん」
「しかし後始末はある程度上手くいった。業腹ではあるが……“四皇”との正面衝突など堪ったものではない」
「天竜人が寿命や事故以外で死んだなど公表出来る筈もない。相当恨みがあるのか……?」
「であればもっと殺されていただろうな。CPからも特に天竜人に恨みを持っているとの情報もない……ただ面白いからやっただけだろう」
「存在自体が恐ろしい連中だ……暴れられれば手に負えん。火に油を注がず様子を見るべきだな。下手に動けば奴の好奇心を刺激することにもなるだろう」
「聖地の損失と奪われた物資については頭が痛いが……幸い均衡が崩れるような事態にはなっていない。やはりタイガーに責任を被って貰うしかないな……」
──世界政府最高権力“五老星”。彼らは今回の大事件についての決定と今後の動きを話し合う。
世界に知らされる情報もまた、政府の情報操作によって決められていた。
そして彼らの手には、今回の大事件で新たに懸けられた
「──私が思うに……多分、政府は私達と事を荒立てたくないみたいね~」
「…………」
その船室は暗い。牢屋だから。牢屋ってのは大体ちょっと薄暗いものなのだ。何十回と捕まってきたからわかる。大体そういうもの。
単に密室に造らないといけないからそうなりやすいってだけだとは思うけどね。それに加えて私的には光を与えないことに意味があるんだろう。
「新聞の記事には私達百獣海賊団のことは一ミリも書かれてない。主犯はフィッシャー・タイガーたった1人で、奴隷解放の英雄も彼1人。まったく、政府の情報操作癖には困ったものだよね~~~そんなに私が人気者になるのが嫌なのかな?」
「…………」
太陽の光が当たらないと時間の感覚が曖昧になるし、人間はそもそも日光に当たらないと健康にも悪い。魚人はどうだか知らないけどね。少なくとも人間はそうだ。
それに暗闇は人に負の感情を与える。不安や恐怖、絶望。光が差さない環境というのは精神を摩耗させ、人体にも影響を与える。
人間に限らず生物というのは環境に適応し、進化していくものだ。
「まあでも政府が情報操作で私達の存在を隠した理由は……おそらく天竜人のせいよね~~♡ 人々に隠すためというより、天竜人に私達のことを伏せたいのよ。だって政府襲撃なんて大事件、主犯は絶対捕まえなきゃ政府の沽券に関わる訳で……そうなると主犯である私達──“四皇”と戦争しなきゃならない。それが嫌だったから、政府は私達の存在を隠蔽し、タイガー1人に罪を着せた」
まあ生物の進化には膨大な時間が必要で数年でどうこうなるものではないと思うし、というかそういう生物学的な話は知らないが……私個人の意見として、人間は慣れる生き物だと思っている。
どんなに厳しい環境に置かれても、それが日常になれば人はそれを乗り越えることが出来る。何度も続けば強い耐性すら手に入れるだろう。
それは私達もそうだったし、目の前で牢に繋がれる彼女もそうだった。
「──でもその割に懸賞金は大幅にアップしてるってのがちょっと杜撰だよね~♪ ま、嬉しいけど!! ほらほら見て見てしのぶちゃん!! 私の新しい手配書!! それと一応タイガーのも!!」
「……黙れ……そんなもの、見たくもない……!!」
私は牢屋の前で彼女に向かって自分とタイガーの手配書をひらひらと見せつけた。彼女は顔をしかめ、目だけでこちらを睨む。ギラギラしたその目に、私達の手配書は映っただろうか?
『百獣海賊団副総督“妖獣のぬえ” 懸賞金33億8010万ベリー』
『タイヨウの海賊団船長フィッシャー・タイガー 懸賞金3億ベリー』
「ねえ見えてる? 私のとってもキュートな写真♡ 賞金額も3億も上がっちゃった♪ ……でも天竜人虐殺の値段としては安い気もするんだけどどう思う? 確かに事件一つで上がる金額として3億は破格だけどさ~~~……最低でも5億は上がるかなって思ってたからちょっとショックなんだよね」
「知るか……このゲス……」
「あれ? 勢いが無くなっちゃったね? もうちょっと感情的に怒鳴ったりしないの?」
「……!!」
私がそう言うと、しのぶはギロリと片目だけを私に向けてくる。
何しろもう片方の左目はもうないからね。あはは♪
「──なーんて、冗談冗談!! しのぶちゃんも5年の奴隷生活で良い感じにギラギラして忍者らしくなったね!! 感情を抑えるのも上手だし、今の方が私好みだよ!! 片目だけになっちゃったのもカッコいいしね♡ 今日から“独眼のしのぶ”って名乗ったら?」
「……ああ、そうだな……貴様のおかげでわたすは思い知った……人間の悪意の底というものを……!!」
「それは良かったね!! あ、そうだ!! せっかくだしウチ入る? 今なら大歓迎だよ!! 昔のことも水に流してあげる♡」
ウチは基本的に強ければ殺さないし、何をされても大抵のことは水に流す。仲間になればの話だが。
「水に……流すだと……?」
「そうそう。嫌? 敵対してた昔のことなんて忘れてウチに入っちゃえば良い思いも出来るし楽しいよ!!」
「はは……そうだ……お前達はそういう奴等だったな……人の気持ちなど考えない畜生共……」
うわっ、酷い言われようだ。ま、否定は出来ないけどね!! でも考える必要なんてないってことをまだしのぶちゃんはわかってないみたいだ。私は笑顔で教えてあげる。
「この海じゃ弱者に権利なんてないんだよ? 弱者は強者に支配され、一方的に奪われるだけ。権利があるとすれば、どの強者の檻に入れられるかを選ぶ権利かな。しのぶちゃんに獣の檻はお気に召さない?」
「わたすが受けてきた仕打ちを、全てお前に与えられるのなら考えてもいい……」
「あはっ♪」
しのぶちゃんの目が私を捉える。濁りきった目だ。この世の地獄を見てきたという目。
きっと今、しのぶちゃんの脳内では私はグチャグチャにされているのだろう。泣き叫び、命乞いをし、最終的に絶望し、みっともなく屍を晒す。そんなことを夢想し、実際にそうしたいと願っているに違いない。
しかし……しかしだ。やはりまだまだ考えが甘いなぁ……と私は口端を三日月の様に歪めて言ってあげた。
「あなたが想像する程度の拷問で……私やカイドウが絶望すると、
「っ……!!」
「あはは♡ 不幸自慢はアホらしいからやめた方がいいよ? 自分はこんなことをされてとっても可哀想で、だから復讐してやるんだー!! なーんて、他所から見たら萎えるだけだし、メチャクチャどうでもいいんだから」
「貴様……!!」
「怒っちゃやーよ。私は親切に教えてあげてるの。もしあなたが私とカイドウを絶望させたいなら、もう10年くらいは奴隷として生活して、そこから1人で這い上がって……とまあ最低でもそれくらいは必要かな? しのぶちゃん、精神的にはマシにはなってるけど、よわよわなのは変わってないし、盲目的に出来もしない私達への恨みを吐き出すだけだし……これならあなた達の
「!!? 何だと……!! おい、それは一体どういう──」
「──あはは!! 知りたいならいつか自分の目で確かめることね!! 大人しくしてたらちゃんと他の奴隷と同じように解放してあげるから♡ それじゃ、しばらくそこにいてね~!!」
「待て!! 一体何を──」
と、私は掌を振ってしのぶちゃんに別れを告げる。牢屋を後にし、船内を移動。そのまま船の甲板に出た。
外にはウチの船員達と解放した奴隷達がいる。船を諸島の奥に止めてあるのだ。13番GR。
シャボンディ諸島の無法地帯で奴隷達にご飯を与えてやってるのだ。私って超優しい。食料はそこらで適当に奪ってきた。
「──あ、ぬえ様ザウルス!!」
「どう? ちゃんとやってる?」
「勿論ザウルス!! ぺーたんと一緒にちゃんと仕事をこなして……あっ、そういえば懸賞金上がったでザウルスよ!! 見て欲しいでザウルス!!」
「──ぺーたん言うなや!!」
外に出ると、真っ先にうるティがやってきて、遅れてページワンもやって来る。うるティちゃんは自分達2人の手配書を持っていた。
『百獣海賊団“真打ち” うるティ 懸賞金1億6800万ベリー』
『百獣海賊団“真打ち” ページワン 懸賞金1億1000万ベリー』
2人とも懸賞金が上がっている。まあこれを見る限り、やっぱりあの場に誰が出ていたのかは政府にバレてるってことで、その上で態々隠してくれてるらしい。毎度ながらご苦労なことだね。
「んー、結構残ってるかな?」
「ああ……はい。半分は残るみてェで」
「あのタイみたいに支援を断るような阿呆が少なくて良かったザウルス」
「そうだねー……あっ」
「? ぬえ様どうかしたでザウルスか?」
「ちょっと話しかけてくるだけ~♪」
と、私はうるティとページワンにそう言って奴隷の中からとある子達を見つけて近づく。そこにいたのは髪色がそれぞれ違う3人の少女だ。
「──やっほ~♡ 久し振りのまともなご飯は美味しいかな?」
「! はい……ありがとうございます……!!」
「ね、姉様……」
「……!!」
私が近づいて話しかけると、3人のうち2人は1人の背中に隠れるように、しかし隠れきれる筈もないので怯えた様子で縮こまってしまった。思わず笑ってしまう。
「あはははは!! そこまで怖がらないでいいのに~♡ 取って食ったりしないからさ──名前を教えてくれる?」
「……ボア・ハンコック……です」
「ボア・サンダーソニア……」
「ぼ、ボア・マリーゴールド……」
「三姉妹なんだ!! ハンコックちゃんにサンダーソニアちゃんにマリーゴールドちゃんね!! 見たところ、ハンコックちゃんがお姉ちゃんかな?」
「……そう、です」
「ん~? どうしたのかな♡ この私のプリティフェイスに何かついてる?」
せっかく助けてあげた3人だが私を見て怯えてるのはどういうことだろうね? 優しく声を掛けて笑顔を見せてもまだちょっと恐がってる。まあ単に奴隷から解放されたばかりだし単純に喜んではいられないだけかもしれないけど──とかなんとか考えてるとハンコックちゃんが立ち上がった後、私を見て、
「あの……」
「ん? なにかな?」
「……どうしたら……そこまで強くなれる?」
「! へ~? ハンコックちゃんは強くなりたいんだ♡」
「姉様……?」
何を言うかと思えば……なにかを決心したような目でハンコックちゃんはどうしたら強くなれるかを私に問う。ほうほう、中々良い目だ。さすが将来の七武海。戦闘民族、九蛇の皇帝になるような娘はやっぱり違う。まあもう16歳くらい……だよね? うん、そのくらいなら覇王の資質を出すのには遅すぎるくらいだ。
これは中々に唆られるが……さて、何と言うべきか。とりあえず理由でも聞いてみようかな。
「どうして強くなりたいの?」
「強くなれば……誰からも支配されることなんてない……強ささえあったのなら……」
「う~ん、なるほどね!! 確かに、それは間違ってないよ♡」
「なら強くなれる方法を教えてほしい……!! わ……わたしに出来ることなら何でもする……恩は必ず返す……!! だから……!!」
「
「!」
ハンコックは私に頭を下げて頼み込む。まあ私ほどじゃないけどハンコックちゃんみたいな美少女に何でもすると言われたら男だろうと女だろうと頷く他ないよね~♡ 私が教えてもいいと言えばハンコックは僅かに期待と喜びの色を顔に覗かせた。
でもまあ……恩人だからって気を許しすぎというか、支配されたくないのに私達に頼む辺りは客観的に見たら間違ってるかもね! 可哀想に。でも私に関わり、私に頼み込んだのだ。その隙を突かないほど私は優しくない。私は彼女達に指を突きつけて言ってあげた。
「あなただけじゃなくて3人とも強くしてあげても良いけど……私は海賊。何の代償もなしにそんな頼み事は聞かないし、無事に強くなれる保証はない。強くなる過程で死ぬこともある──それでもいい?」
「っ……それでも構わない……!!」
「姉様……!!」
「なら、私達も……!!」
ふむふむ、どうやら覚悟は決まってるようだ。あ、今更だけどもしかして私が女の子で強いからそれで頼んできてるのかな? 男は恐怖の対象だっただろうし、もし男ならここまで言ってくることはないだろう。美少女ってお得だね! 人生ハードモードになりやすいし! 美しいものはそれだけ人の目を奪い、人の欲望を刺激する。ハンコックちゃんも、私の魅力に欲が出ちゃったのかな? ふふん。まあそれなら代金はきっちり払ってもらおう。私はハンコックちゃんの頭を撫でであげて、条件を告げた。
「──ならあなた達3人
「……!!?」
「か、海賊に……!?」
「それは……」
「ん~? 何驚いてるの? 予想してなかった訳じゃないでしょ? 仮に私があなた達に修行をつけるなら、同じとこにいなきゃダメじゃない。数日ちょっと修行しただけで強くなるなんて無理よ? それともあなた達の居場所に私もずっといるとでも思った? そこまで甘い考え持ってた訳じゃないよね?」
私がそう言うと3人は押し黙る。まあ海賊になることに抵抗があるという感じではないね。多分、男所帯の中に入るのが怖いし、嫌なのだ。私の船は女の子は多いし、百獣海賊団には女性の船員もそれなりにいるとはいえ、全体で見れば当然男の方が多い。しかもザ・荒くれ者の海賊!! って感じで悪者で下品な奴も多いしね。慣れるとノリが良くて可愛く見えてくるけど。ぶっちゃけ昔の船に比べれば可愛いものねー。──さて、なんと答えるかな? どうやら迷っているみたい。ハンコックは額に汗を掻いている。まだ少し離れた場所で騒いでいるウチの船員を目だけで見た。そして再びこちらを見て、
「……船長は……」
「私じゃないよ? 言ったでしょ、私は百獣海賊団の副総督。私の姉弟で船長の“百獣のカイドウ”は男よ」
「っ……なるほど……」
今、小さくハンコックが歯噛みした。また男に支配されることになるとでも考えてるのかな? うーん……このままじゃ拒否っちゃいそうだし、カードを出してあげよう。まあ元からこうするつもりの予定を言ってあげるだけだけどね、と。
「あ、それじゃこうしましょう。1年か2年、私の下で経験を積んである程度強くなったら、島に帰してあげる」
「!! それは本当か!!?」
「うん、ホントホント♪ あなた達、九蛇の出身でしょ? 出身は女ヶ島ってとこよね?」
ハンコック達がそれを聞いて頷き、思わず喜んでいる。故郷に帰れると知ったからか。でも表情が完全に明るくないのは、奴隷であったことを考えると色々追及されそうだし、そもそも過去を知られかねないから心を許しきれないのだろう。とっくに過去を知っててなおかつ同性で恩人の私はまだマシってことだ。
だがそこまで甘い条件ではない。私は言う。
「ただ~~~し♪ あなた達がそこで九蛇海賊団の船長になったら……私達、百獣海賊団の傘下になりなさい♡」
「さ、傘下……!?」
「そうそう♡ それなら良いでしょ? 実質あなた達は女性だらけの島で女性だらけの海賊団の長。私達の船に乗る必要もない。──まあ私達の下ではあるし、ちゃんと命令には従って貰わないと困るけど、それでも強制はしないわ。ウチは強ければ細かいことはあんまり気にしないからね!! カイドウも強ければちょっと命令に従わなかったくらいで怒ったりしないし、ウチの大看板──最高幹部も命令をドタキャンされるなんてしょっちゅうよ!! なんかこうやって言ってると組織として大分ヤバい気がするけど、強ければそんなのどうだっていいのよ!!」
「なる……ほど……」
「どうするの……? 姉様……」
私がウチのセールスポイントを笑顔で力説すると、ハンコック達は少したじろぎ、その上でどうするかと悩み始めた。いやまあ実際言ってて思ったけど、ウチって割と上下関係に厳しいように見えていい加減だよね。下の方には……正確には弱い連中とかしくじったバカとか裏切り者には厳しいけど、飛び六胞くらいにまでなるともうなんか大看板の命令になんて従うかって奴が約2名ほどいる。飛び六胞じゃないけど、私とカイドウにすら噛みついてくる娘が約一名いるし、ツッコんでくる子も約一名。未だにちょっぴり反抗的な考古学者もいるし、割と上の方は上下関係メチャクチャだよね。まあ私やカイドウの命令に従わない奴はいないけどさ。
考えてみれば意外とやっていけるような気がしてきた。うんうん、やっぱりカイドウと、そして私の器が大きいから成せることだよね!! そう思い、私はハンコックの返答を聞いた。
「──条件を、呑む……!!」
「あははは♪ それじゃあ……ようこそ!! 百獣海賊団へ!!!」
私は思わず笑顔を浮かべる。そして快く彼女達を歓迎した──やった♪ 三姉妹ゲットだぜ!!
そうして、船室に三姉妹を案内した後、私がシャボンディ諸島にさよならバイバイを決めようとした時だ。その前に挨拶を済ませようと私は飛び上がる。
奴隷達は今、他の真打ちやうるティとページワンら部下達によって分けられている。というのも、ついさっき私が彼らに言ったのだ。
『このままウチの海賊団のお世話になるか……それともここに残って自ら逃げるか、今決めてくれる?』
そう──当然だが、奴隷をこのまま全員連れて行くなんてことはしない。だって面倒だし、可哀想だしね! せっかく奴隷から解放されたんだから自分の道は自分で決めてもらう。それが自由ってものだ。
まあなので半分くらいはこの島に置いていく。まあ皆どうにかして勝手に逃げるだろう。ぶっちゃけバカで弱いだけの奴等を抱え込むのも……まあ労働力にするのなら悪くないんだけどね~。恩を感じてる連中はそのままにしておいた方が将来の利益になるかもしれないし、とりあえず選ばせるだけ選ばせてあげたのだ。
ちなみに自分からついてくる連中は強制的にウチで労働者にでもなってもらうか、あるいはそのまま海賊になるかだ。奴隷には元海賊や犯罪者もなんだかんだで多いし、男はやっぱついてくるのが多い。女子供は残りがち。やっぱりイメージが良くないのかな? こんなに可愛い私の下僕になれて、しかも安全まで買えるんだからついてきた方がお得だとは思うけどね~、タイガーもそうだけど、どうにも私を恐れていてとにかく離れたい連中もそこそこいるみたいだ。まあ皆自由になりたいんだろうけど、ぶっちゃけ弱いままなら遅かれ早かれ誰かに支配されると思うけどね。
ただ中には有望そうな者もいた。ここに船を停めてすぐに話しかけてきたあの青年もそうだ。
『ありがとう……世話になった……』
『あれ? もう行っちゃうの~? 私のショータイムはお気に召さなかった?』
『……それは……』
『……ふふふ♡ 楽しんでもらったようで何よりだね!! それじゃあまあ──これをあげる!!』
『!? これは……か、ね……?』
『そうそう、お金♡ 何をするにしてもお金は必要でしょ? だから貸しといてあげるね♡』
『それはそう、だが……しかし、なぜ……?』
『あなたは将来大物になりそうだしね~♡ その時に利子を付けて返して貰うよ♪ あ、別に大物にならなくてあなたがどこかで野垂れ死んだとしても、その程度のお金は痛くも痒くもない金額だから気にしないで!!』
『……貸し、か』
『そうそう、だから精々元気にやればいいと思うよ? あ、新世界に来たら是非私のライブを見に来てね!! もしくは……ふふふ♡ あなたなら私のショーのバックダンサーか前座くらいは務めることが出来るかもね?』
『っ……失礼……する』
『ああ、そう。じゃあまたね~♡』
──とまあ、そんな感じでお金に執着してそうで悲しい過去がありそうで将来金の亡者になりそうな金のなる木にお金を貸してあげた。早ければ数年で芽が出そうだし、支援してあげるのも悪くない。もし本当に新世界に来たら可愛がってあげよう。
後は奴隷といえばもう1人可愛い子がいた気がするけど、ウチの船には乗ってなかった。奴隷を全員私の船で連れてきた訳じゃないからしょうがないけどね。多分、タイガーが逃した奴隷の中にいたのだろう。まあそこは運命だったということで諦めよう。収穫はそれ以外にも沢山あったしね♪
と、そうこうしてる間に家に着く。家と言っても私の家じゃない。この13番GRにあるとある店には、懐かしい顔が住み着いているのだ。
「──それじゃ、私はもう行くね~!! あっ、最後にちょっと殺し合いする?」
「勘弁してくれないか。私はもう隠居したジジイだ。四皇の副船長相手に一対一の勝負など荷が勝ち過ぎる」
「海賊王の右腕が何言ってんのよ!! まだ全然戦える癖に!! ……あ、そうそうシャッキーとそこのババア。1年後か2年後に女ヶ島出身の元奴隷連れてくるから帰りはお願いね♪」
「ば、ババアじゃと!? なんと失礼な……昔世話してやった恩を忘れ──」
「……それは構わないけれど……そもそも元奴隷の子達を連れて行ってどうするつもり?」
「強くしてほしいって言うから強くしてあげるの♪ えへへ~、いいでしょ?」
「相変わらず、可愛くないことしてるのね」
「可愛いでしょ!! 可愛くないなんてどこに目付いてるのよ!!」
「見た目が可愛くないと言った訳じゃないわよ……はぁ、まったく……」
家の中にいた3人と愉快な会話を繰り広げる。ちなみにその家……というか店にいるのは大物ばかりだ。
まずロジャー海賊団の副船長であった“冥王”シルバーズ・レイリー。多分未だに結構強い。さすがに今は私の方が強いと思うんだけど、挑みかかったら無傷とはいかなそうだし、今も笑ってはいるし謙遜してるが全然隙がない。
そしてシャッキーもまた懐かしい。元九蛇海賊団の船長で、最後に会ったのがまだ私が見習いだった時だし、そもそも途中で海賊から足を洗っちゃったから彼女の記憶だと私はまだまだか弱い美少女だったことだろう。昔はよく可愛がってもらった。まあ今は完全に実力は逆転。それでもまあまあ強さは保ってるのはさすがだけど。でも……そうか。何で海賊やめちゃったんだろうとか思ってたし、どこ行ったんだろうって謎だったけど、もしかしたらレイリーと出来ちゃったのかな? 結構気になるところだけど、アダルティな問題はあんまり突っ込んで聞くのは野暮なので言わない。美少女ぬえちゃんは空気を敢えて読まないことが多いけど、ちゃんと空気が読める娘なのだ。
そして最後はババア。グロリオーサ。元仲間でロックス時代はあんなに美人だったけど今や見る影もない。やっぱり恋破れたのが原因なのかな。まあどうでもいい。ババアはババアだ。
「あ、ひょっとして私が可愛すぎて久し振りにヘアアレンジでもしたくなった? ふふん、普通なら絶対やらせないけどシャッキーは元仲間だし特別にやらせてあげてもいいよ?」
「元仲間は儂の方じゃろう!? 記憶を改竄するでないわ!!」
「やってってこと? まあいいけれど……ほら、こっちにいらっしゃい」
「わーい♪ 私の可愛さを飾り立てれるなんてシャッキーは幸せ者だね!!」
「ぬえちゃん、見た目は全然変わってないわよね」
「これほど少女らしい娘があの百獣海賊団の副総督とは……」
「フフ……そうやって見た目で油断をすると手痛い反撃を食らうことになるぞ? まあ我々は一度も負けなかったがな」
「喧嘩売ってるなら買うよ!! あ、それと大人になろうと思えばなれるから。素の私が1番可愛いから敢えて何もしてないだけなんだからねっ!!」
「──じっとしててくれる?」
と、私はシャッキーの膝の上で髪を弄って貰いながら喧嘩を売ってくるレイリーに言い返す。そして軽く大人の姿になってみた。怒られたけど。
するとレイリーが私をじっと見て、
「それにしても……あの奴隷解放の裏に百獣海賊団がいたとはな。どんな風の吹き回しかね? また悪巧みか?」
「私が人助けや親切をするのがそんなに不自然かな? 昔は人助けもしたじゃない。あなた達の手伝いで」
「そうだったな。しかし、最近は悪い噂しか聞かないものでね。随分と新世界で暴れているようだが……」
「私達の勝手だもんね!! 文句は言わせないよ!!」
「いやァ……言う気もないさ。私は隠居人だと言っただろう。今の海の在り方を決めるのは今を生きる者達だ」
「また意味深なことばっかり言うなぁ……はーあ、喧嘩したかったのに残念。それじゃもう行くね!!」
「ああ、好きにするといい」
と、私は立ち上がり、そのまま店を出ていく。結構粘って戦おうとしたけど何をしても戦う気はなさそうなのが残念だった。まあ今は実力も落ちてるし、そんなレイリーに勝ってもという気持ちもあるが、それでも仕返ししときたい気持ちもあったので複雑だ。
サイドテールになって可愛さにまた一工夫を加えた私は船に戻ってまた新世界に戻る。私の能力でUFOを生み出せば船を空に浮かべることは簡単だからね。コーティングして態々魚人島を経由しなくても、もう一度
今回の襲撃は収穫が大量だし、ウチの海賊団の良い補強にもなった。カイドウも喜ぶだろう。特にこの子達だ。
「──とりあえず、今日は私のベッドで寝かせてあげる!! お風呂もあるし、身体を綺麗にも出来るからね~♡」
「感謝するドン!! ぬえ様と一緒にお風呂に入って一緒に寝られるなんて普通なら許されないドン!! あ、ぺーたん、今日は1人で寝るドンよ。ベッドに入ってきてはダメドン」
「いつも一緒に寝てるみてェな言い方するんじゃねェよ!!! 一度もそんなことしたことはねェ!! あとまたなんだその変な語尾!! あとぺーたんって言うのやめろっての!!」
「ダメだようるティちゃん。もうそろそろぺーたんも思春期だし、私やうるティちゃん、しかも三姉妹がいる中で寝るなんてしたら鼻血出ちゃうでしょ?」
「それもそうドンね」
「そういう問題でもねェし、鼻血も出さねェ!!!」
「……外海には随分とツッコミの上手い男がいるのだな……」
「好きで上手くなったんじゃねェよ!!!」
──ということで今日もぺーたんのツッコミが炸裂。ある程度からかったところで私とうるティちゃんで三姉妹をお風呂に連れていき、身体を綺麗にした後、きちんとベッドで寝て私達は新世界のナワバリへと帰った。
世界政府と海軍→四皇と喧嘩する羽目になるの嫌だし、魚人を主犯にしよ……
しのぶ→左目が無くなって恨みが増した。でもまだぬえちゃんには煽られる
懸賞金→主犯の2人は3億アップ。幹部のうるティとページワンは1億アップ。後、いつも思うけど隠蔽してるのに懸賞金上げるのはどうなんだろうか
レイリー&シャッキー(ついでにババア)→いきなりぬえちゃんが奴隷連れてきたけど今更何か言うこともない。レイリーはメチャクチャ喧嘩に誘われた
うるティ→新しいブーム到来
ぺーたん→羨ましいと思った人は今までのぺーたんの人生と普段の状況をよく考えてからもう一度羨ましいかどうか考えてみましょう
今日のぬえちゃん→可愛い
収穫成否
鯛(失敗):理由『鬼が怖いから』
蛇姉妹(成功):理由『強くなりたいから+ぬえちゃんが(美少)女だから』
金(保留):ぬえちゃんのコメント『今後に期待だね!』
コアラ(失敗):理由『そもそも回収出来なかった』
ということでこんなところで。まだまだ影響というか色々あります。次回はワノ国へ帰還。お楽しみに!
感想、評価、良ければお待ちしております。