正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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天夜叉

 この大海賊時代。偉大なる航路(グランドライン)に入ろうとする海賊は腐るほど存在する。

 1年の間に続々と新しい世代の海賊が誕生し、海賊達は偉大なる航路(グランドライン)の荒波に揉まれながらもその熾烈なサバイバルレースを生き延びる。

 半数以上の海賊達が蹴落とされ、海の藻屑と消える中、ここ数年ではまた新たな顔ぶれが偉大なる航路(グランドライン)に嵐を巻き起こしていた。

 その代表格が“赤髪のシャンクス”だろう。

 彼は数年前から偉大なる航路(グランドライン)に入り、新世界であの“鷹の目”との決闘など数々の世間を驚かせる事件を起こし、名を揚げた。

 だが彼が率いる赤髪海賊団はここのところ、新聞の一面を飾らない。

 裏の情報筋によると、どうやら彼らは一度偉大なる航路(グランドライン)を出て“東の海(イーストブルー)”を航海しているらしい。

 新世界を引っ掻き回していた彼がなぜ最弱の海なんかに……と疑問に思う者は幾らでもいたが、元より赤髪は飄々としており、掴みどころのない海賊として知られている。東の海に行ったこともきっと何か目的があるのだろうが、それを知る者もいない。もしくは本当にただ見て回りたかっただけなのか。

 しかし赤髪がいなくなったからといって、この海が平和になる筈もない。海賊は星の数ほどいる。

 この荒れ狂う海を越えていくには、何よりも“力”が必要だった。

 それは飄々とした“赤髪”であろうと、仁義を何よりも大事にする“白ひげ”であっても変わらない。どんな海賊も力がなければ、この海で生きることは出来ないのだ。

 ゆえに海賊達は誰しもが壁にぶち当たった時に考える。賢い者であればその前に考える。自分がこの海で成り上がる方法を。

 ある者は己の実力を過信し、強大な壁にぶち当たって学ぶ。仲間を失い、身体と心に傷を負うなど、高額過ぎる授業料を払って。

 ある者は壁の高さ、強さを事前に調べ、虎視眈々とその機会を窺う。数年、あるいは10年。力をつけて壁を少しずつ削り、あるいはまた同じ様な目的を持つ者達と同盟を組む。

 方針ややり方は海賊それぞれだが、一先ずの目的は概ね同じだ──力をつけること。

 力をつけて何を為すかはまたそれぞれ違うだろうが……信念を持ち、力をつけようとする者は強く、そして成長する。

 そして──そんな次世代の海賊達はこの島に必ず訪れる。

 

「──わー! やっぱりシャボンおもしろ~い!!」

 

「きゃー!!」

 

「いつ見ても島からシャボンが出るなんて面白いだすやん!!」

 

「あっ!! ちょっとやめてよバッファロー!! シャボンが風で飛んでっちゃったじゃない!!」

 

「幾らでも出るから別に良いだすやん」

 

 偉大なる航路(グランドライン)──シャボンディ諸島。

 楽園と新世界を繋ぐ中間地点である魚人島へ向かうために必要なコーティングが行えるその島で、子供達がそのシャボンで遊んでいた。

 背中に大砲を背負い、頭にリボンをつけた黒髪の少女──ベビー5。

 プロペラのような髪を回転させ、空を飛ぶ大柄な少年──バッファロー。

 2人はこの島を訪れた海賊団の幹部であった。

 そして2人が遊ぶのを見て、近くにある木箱や椅子に座ってトランプをする者達がいる。

 彼らもまた、この海賊団の幹部であった。

 

「2人とも子供ね」

 

「あなたも子供ざます」

 

 熊の形をしたフードを被る少女──シュガーがシャボンで遊ぶ2人をグレープを食べながら見て呟く。

 するとケバケバしい化粧をした中年のおばさん──ジョーラが同じくシャボンで遊ぶ小さい子供を見ながらシュガーに率直に告げた。もう1人の小さい子供はデリンジャーと言う。

 すると今度は別の席に座る男達が口を開いた。

 

「中々良い立地だな」

 

「だが治安は悪イ~~~ン!!」

 

「こういう場所じゃなきゃできねェからな……それにしても、取引は長引いてるな」

 

「この諸島は海軍の目も多い!! 海軍の“G”!!」

 

 おしゃぶりと涎掛けをつけた変態的な格好。しかしハードボイルドな雰囲気を纏った男性──セニョール・ピンク。

 グラサンをかけ毛深く、大柄。最近太り始めてきた男性で語尾を伸ばしている幹部──マッハ・バイス。

 ガスマスクのようなものをつけ、逆立った髪が特徴的。時計を見て時間を気にしている男──グラディウス。

 うさ耳付きの帽子をつけた筋骨隆々の老人。なぜか発言の後に手で“G”のマークをつくる男──ラオ・G。

 そして今度は建物の方を見て気づいた女性が彼らに告げる。

 

「噂をすれば帰ってきたみたい」

 

「!」

 

 その緑色の髪の美少女。シュガーの姉でもある──モネがそう言うと、全員が建物の方からやってくる複数の影の方を見やる。

 やってくるのは最高幹部の3人と彼らの船長だった。

 

「ウハハハハ!! 上手くいったぜ!! これでまた儲かる!!」

 

「闇取引やオークションは儲かるからな……」

 

「べへへへへ!! んねーんねー、この諸島はやりやすくていつも助かるんねー!!」

 

 細長い手足を持ちニヤついた顔の調子の良い大男。

 丸みを帯びトゲが生えたような特徴的な肩とやたら高い声を持つ大男。

 そして鼻水を垂らしたねちっこい口調の大男。

 その3人の最高幹部を連れて歩く絶対的な王。金色の髪にサングラス。ピンク色の派手な上着を身につけたスーツ姿の男は、自分の家族に向かって不敵な笑みで告げた。

 

「──フッフッフッ!! 待たせたな……!! お前達……!!!」

 

『ドンキホーテ海賊団(ファミリー)船長“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴ 懸賞金3億4000万ベリー』

 

『ドンキホーテ海賊団最高幹部ディアマンテ 懸賞金9900万ベリー』

 

『ドンキホーテ海賊団最高幹部ピーカ 懸賞金9900万ベリー』

 

『ドンキホーテ海賊団最高幹部トレーボル 懸賞金9900万ベリー』

 

 3人の最高幹部に老若男女様々な幹部達の頂点に立つ男が、危険な悪のカリスマとも称されるドフラミンゴだ。

 

「若……!!」

 

「フッフッフッフッ……!! 少し遅くなったが全て手筈は整った!! これからこのシャボンディ諸島と幾つかの島を拠点にして動くことになる……!!」

 

 ドフラミンゴは自分の家族とも言える幹部達に向かってそう告げた。彼は今しがた、最高幹部3人を引き連れ、偉大なる航路(グランドライン)前半の海で動くために必要な“店”を開店するための手筈を整えてきたのだ。

 その発言に幹部達は頷く。王に逆らう者があってはならない。ファミリーにとってドフラミンゴは王。王の資質を持ち、彼らに夢を見せる者だ。

 

「えー!? まだ新世界に行かないのー!?」

 

「おい!! 前に説明しただろう!!」

 

「フッフッフッ……構わねェグラディウス。そうだな……ベビー5も含め、改めて今後の動きを共有しておこう」

 

「はっ!!」

 

 だがベビー5といった子供の言うことに腹を立てはしない。ドフラミンゴは軽く注意するグラディウスを止めて改めて説明するという。

 なぜならドフラミンゴにとって幹部達は家族。苦楽を共にしてきた、自分達のくそったれな境遇を恨み、ファミリーに拾われた家族なのだ。

 誰もが悲惨な過去を持ち、それゆえにドンキホーテ海賊団に加入した。ドフラミンゴ自身がクソみたいな過去を持つことを重視して仲間を集めているからこそだ。そういう者こそ強くなる。自分がそうであったからこそ、ドフラミンゴはそれを重視していた。

 そして家族に苦い思い出があるドフラミンゴだからこそ、家族を大切にしていた。裏切りさえしなければどんなことでも彼は許す。

 

「しばらくはここで取引やオークションを行いつつ勢力を拡大する。新世界にはまだ入らねェ……!! 入ると面倒も多いからな……お前らの強さなら新世界だろうとそこらの海賊には負けねェとは思うが」

 

「何を……ドフィ。お前の強さとカリスマがあればこそだ」

 

「お前の剣の腕は一流だ」

 

「おいおい……!! よせドフィ……人を偉大なる航路(グランドライン)で知らねェ者のいない猛者みてェに」

 

「お前は新世界でも通用する剣士だ」

 

「やめろよ……そんな……」

 

 ドフラミンゴがファミリーの強さを軽く褒める。何しろ殆どが賞金首であり悪魔の実の能力者でもある。ドフラミンゴが自身と自身のファミリーの強さに自信を持つのも当然だ。

 それにディアマンテが謙遜する。ドフラミンゴはいやいやと褒めるが、ディアマンテは頑なに謙遜を続けた。なのでドフラミンゴも撤回するかと。

 

「──じゃあやめに」

 

「そこまで言うなら認めよう!!! おれは新世界でも通用する剣士だと!!!」

 

 そしてなぜかその前にディアマンテは認めた。毎度のやり取りであり、なぜか誰もツッコミを入れず、そのまま何もなかったかのように説明は続く。

 

「新世界に入れば“四皇”に挨拶をする必要がある。普通の海賊は四皇の支配を受け入れて安全を得るのが普通だからな……!!」

 

「え~~!? それじゃ四皇の部下になっちゃうの!!? 私達!!」

 

「バカ、早とちりしすぎよ。まだそうは言ってないじゃない」

 

 その発言にベビー5が驚くが、シュガーがそれを諌める。そして実際にドフラミンゴがシュガーの発言を肯定するように続けた。

 

「フッフッフッ!! ああ……部下にはならねェ!! ──ただ四皇を無視は出来ない。だから確固たる地位を築いてから行く必要がある……!!」

 

「べへへへへ!! 地位さえ手に入れば四皇にも話は通じるからね~~~!! ドフィは新世界にナワバリとはまた違った糸を張るつもりだ!!!」

 

 トレーボルが補足し、ドフラミンゴは不敵な笑みを浮かべる。──だが彼らの頭の中は冷静だった。

 新世界に入るだけの実力は確かにある。あるが、自分の強さだけでどうにかなるほど、新世界は甘くない。

 新世界は海賊達の頂点、“四皇”が統べる海だ。

 四皇の旗を掲げない海賊が新世界で大きなナワバリを得ることはない。精々が島一つ、二つ程度であり、ひょんなことで潰されてしまう砂上の楼閣だ。四皇に掛かれば一海賊団など砂山の城を崩すかの如く簡単に叩き潰せる。

 ゆえに普通の海賊は新世界に入ればいずれかの四皇の元に挨拶に行き、傘下となることで安全を得る。

 それが普通だが、新世界に入るような海賊は野心を持ったり、冒険がしたくて来る者だ。入らない者も多くいるが、そういう者達は大抵諦めるか、全てを失う。それをドフラミンゴは知っていた。四皇を甘く見てはならないと。

 ゆえにドフラミンゴはいつも通り、念入りに計画を立てて事を進めることにしたのだ。

 

「例の計画を進めるまでに勢力を拡大する。一度モネを送りに行くが、すぐにこちらに戻ってくるつもりだ」

 

「ええ、お任せください若」

 

 そしてそのための計画を進めるために、モネをとある国に送りに行く必要があった。なにを隠そう、その国こそが狙いであるのだが、敢えて口にはせずに曖昧な言葉で頷き合う。彼らにとっては周知の事実だった。

 

「なら若。地位を手に入れた後はどの四皇に?」

 

「よんこうってなにー?」

 

「ふふん、私知ってるから教えてあげるわデリンジャー!! 四皇といえば“白ひげ”でしょ!!」

 

「“ビッグ・マム”とかもいるだすやん!!」

 

「そうそう後は──」

 

 と、セニョールや皆が発した四皇という言葉をデリンジャーが拾って質問すれば、ベビー5とバッファローが四皇に名を連ねる海賊を順番に挙げていく。

 するとドフラミンゴが不敵な笑みを浮かべた。その質問にも答えるように続ける。

 

「フッフッフッフッ!! “白ひげ”は後ろ暗ェことを嫌う。奴隷や薬物も禁じてるらしい。取引をするには向いてねェだろう」

 

「なら“ビッグ・マム”はどうなのじゃ? ビッグ・マムの“G”!!」

 

「フッフッフッ……!! 確かに、“ビッグ・マム”はビジネス寄りで“白ひげ”よりやりやすいだろうが……傘下の海賊や協力者は奴の子供と結婚しなきゃならねェ」

 

「あの手配書のババアの子供とかお断りだイ~~~ン!!」

 

「なら後は二つに絞られるざますね!!」

 

 ドフラミンゴが“白ひげ”も“ビッグ・マム”も違うと言い、なら残り二つのどちらかになるのだろうと幹部達が答えを絞った。

 するとドフラミンゴがより一層不敵な笑みを浮かべて答える。

 

「フッフッフッ!! そうさ……相手はもう決まってる。取引を餌にしてその影響力を借りる相手は──四皇……“百獣のカイドウ”だ……!!!」

 

「!!」

 

 ──“百獣のカイドウ”。その名を聞けば、さすがの幹部達も僅かに緊張の色を顔に覗かせる。

 四皇は皆そうだが、四皇の名を知らない海賊などいない。よっぽどの田舎者か世情に疎い者でなければだ。新聞を見てればいつもゾッとするような事件を起こすのは偉大なる航路(グランドライン)の海賊であり、最も規模が大きいのが四皇だ。

 

「……四皇のカイドウといやァ……最もイカれた武闘派、最強生物として有名だ。話は通じるのか?」

 

「フッフッフッ……どんな奴にも欲はある。欲しがる物はデカいだろうが、それさえ用意出来りゃ問題ねェ」

 

「ウハハ!! セニョール!! お前ビビってんのか!? らしくねェぞ!!」

 

「相手が四皇なら、今まで以上に警戒した方が良いと思っただけだ……」

 

「フッフッフッ、そうだな。セニョールの言う通りだが……何にせよ、全員腹を括れ。おれについてくれば、取るべき椅子は必ず取ってやる……!!!」

 

「当然です、若!!」

 

「フッフッフッ!!」

 

 ドフラミンゴの言葉にファミリーの幹部は皆さらなる飛躍を信じ切る。元より、ドフラミンゴこそが海賊王の器だと信じる者達だ。

 たとえ相手が四皇であろうとも、必ずその席を奪ってみせる。力で敵わない相手を消す方法など幾らでもあるのだ。

 そしてそういった暗躍、陰謀というものはドフラミンゴの十八番でもある。

 全てが想定の内で、何が起きても一枚上手を行く──それがドフラミンゴという男だ。

 

「──ぎゃあ~~~~!!?」

 

「! 何だ……?」

 

「ん~~~? 部下の声かね~~~?」

 

 そしてだからこそ、少し離れた場所から悲鳴が聞こえてきても動じることはない。ファミリーの下っ端など幾らでも替えがきく手駒でしかないのだ。幹部以上のメンバーさえ失わなければそれでいい。

 

「わ、若様!! ご報告が!!」

 

「どうした。賞金稼ぎか海賊か……あるいは海兵でも現れたか?」

 

「そ、それが見たことのない顔で……とんでもない美女でしたが……♡ あ、ああっ、いえっ、それで、海兵ではなく、名のある賞金稼ぎや海賊でもないようなのですが、とにかく突然襲いかかってきております!!」

 

「……? そうか。ご苦労」

 

 ゆえに部下の報告を聞いてもドフラミンゴは僅かに眉をひそめたが、すぐに笑みを取り戻した。海兵でもなく、見たことのない顔であればそれほど危険な相手でもないだろうと。

 

「ねー敵襲なの?」

 

「そうみたいね……どこの命知らずかしら」

 

「邪魔者か……消し飛ばしてやる」

 

「ドフィ……おれに任せろ。全員生き埋めにしてきてやる」

 

「フッフッフッフッ!! よし、ピーカ、グラディウス、モネ。返り討ちにしてここに連れてこい。商品が態々やってきてくれたんだ。この店で売り飛ばしちまおう……!!」

 

「べへへ!! 仕入れる必要がないから楽でいいんね~~~!!」

 

 ウチのファミリーの幹部の敵ではない──暴れたいピーカにグラディウス。それに悪魔の実を食べたばかりでまだ実戦経験が薄いモネを迎撃に出す。

 3人とも悪魔の実の能力者。それにモネは自然系の能力者でもあり、覇気を使える者が少ない偉大なる航路(グランドライン)前半の海賊や賞金稼ぎでは傷一つつけられない。

 過剰戦力とも言えるが、仕入れには万全を期すのがいいだろう。自分達を狙った代償はその身で払ってもらう。

 その屈辱に塗れた顔でも見ながら一杯やろうかと他のファミリーと共に笑い合ってしばらく──

 

「──わ、若様!! 今すぐ応援を!!」

 

「あァ? ──何を言ってやがる。ついさっきピーカ達が……」

 

「ピーカ様達が苦戦しています!! 既にモネ様はやられて傷だらけに……!!!」

 

「! ──何だと!!?」

 

 再び入った部下の報告により、ドフラミンゴは自分の計算が間違いであったことに気づいた。

 ピーカ達を苦戦させるほどの相手。しかもモネを倒すということは覇気使いだ。

 

「あ~? ピーカの奴も情けねェな……なら次はおれが行こうか? ドフィ」

 

「……いや、全員で行くぞ。ナメた真似しやがって……フッフッフッ……!! これは売り飛ばすだけじゃすまされねェな……!!!」

 

「若様まで行くならもう終わったも当然だすやん!!」

 

「だねー!! 拷問だよ拷問!!」

 

 ディアマンテが次は自分が行くかと剣を肩に背負ったが、ドフラミンゴは軽く青筋を立てながらも不敵な笑みを浮かべ、全員で行くと告げる。家族を傷つけられて黙ってはいられない。こういう時、ドフラミンゴは自ら敵を倒しに行く癖もあった。

 それに加え、相手がまた別の大規模な組織であることも考えてファミリーを全員連れて行く。そうして指示を出しながら、ドフラミンゴは部下に質問を投げた。

 

「敵は何人だ?」

 

「──3人です!!」

 

「3人……フッフッフッ……随分とやるみてェだな」

 

「は、はい……滅法強くて……あ! あれです!!」

 

「!」

 

 ドフラミンゴが下っ端の指差す方を見た。この1番GRの木が立つその近く。大勢の部下が倒れている。

 だがその倒れている部下や、立っている部下を見てドフラミンゴは訝しむ。

 

「……オイ!! 何だこれは!!?」

 

「べ~~~!!? 全員石になってる!!?」

 

「悪魔の実の能力か!!?」

 

「石ってもしかしてピーカ様の……」

 

「違うな。あいつの能力は石と同化は出来ても他人を石にするような能力じゃねェ筈だ……」

 

 そう──部下達は皆、()()()()()()()

 倒れている者は身体を砕かれバラバラになり、立っている者は生きたまま石になったのかそのままの形で残っている。石像になっていた。

 石──と聞けば誰もがピーカのイシイシの実の能力を連想するが、イシイシの能力は石と同化して操ることの出来る岩石同化人間となること。生物を石にすることは出来ないため、ピーカではない。

 となればその能力は状況的にも敵の能力だった。そしてそこまで考えた時、遂に倒れたモネや傷ついているグラディウス、戦っているピーカらが確認出来た。

 そしてその相手は……美女だった。

 

「うおおっ!!?」

 

「何だあの美しさは……!!」

 

「美しすぎるざます~~~♡」

 

 ──それも絶世の美女だ。

 

「誰じゃ……わらわの通り道に……」

 

 そうして相手を視認した瞬間、その相手は口を開き、凄まじい速度とパワーでピーカに向かって足を振り抜いた。

 

「──石塊(いしくれ)を置いたのは!!!」

 

「!!! ぐ、フッ……!!」

 

「! ──ピーカ!!」

 

 ピーカの巨体がその美女によって吹き飛ばされる。苦悶の表情を浮かべ、血を吐いたピーカを見てドフラミンゴがその名を呼んだ。──まさかピーカが負けるとは、と。ファミリーの最高幹部の戦闘力は伊達ではない。そこらの名もない相手に負ける筈はなかったが。

 

「てめェ……!!! 一体何者だ!!? このおれを怒らせてタダで済むと思ってんのか!!!」

 

「……ほう。ようやく骨のありそうな輩が現れたか。だが……そんなことは知ったことではない」

 

「あァ!!?」

 

 ドフラミンゴがその美女を怒りのままに威圧する。しかし──その美女は一切怯んだ様子を見せなかった。

 美女はグラディウスと戦っているもう1人の顔の大きい女と、モネを倒したのか、雪を跳ね除けてやってきた太った女と共に並んで告げる。

 

「そう……姉様には関係ないわ。何をしようとも」

 

「何をしようとも姉様には許される理由がある……!!」

 

「なぜだかわかるか? わらわが何をしようとも。そなたの部下を殺しても、石に変えようとも、世界中がそれを許してくれる!! ()()()()以外には……」

 

 と、美女は告げた。自分の胸に手を当て、

 

「──そうよ。わらわが……美しいから!!!」

 

「……!!!」

 

「うお~~~~♡」

 

 ドフラミンゴの部下ですら目を奪われる美しさ。そしてその言い分から察せられる我の強さにドフラミンゴは相手が只者ではないことを悟った。

 だが、だからといって怯むドフラミンゴでもなかった。彼の額の血管がブチ切れるような音を立て、

 

「フ……フッフッフッフッフッ!!! 美しいから許されるだと……? なら──醜く殺してやるよ!!!」

 

「ふっ……外海の弱い男にそれが出来るか? 少しは出来るようじゃが──強く美しいわらわの敵ではない!!!」

 

 ドフラミンゴが跳ぶように美女に迫ると、美女も跳んでドフラミンゴに迫った。

 お互いが覇気を昂ぶらせ、その一部を足に集約する。

 

「──“足剃糸(アスリート)”!!!」

 

「──“芳香脚(パフューム・フェムル)”!!!」

 

 覇気とお互いの能力を集約した一撃。どちらも相手を葬り去るのに十分な威力を秘めていた。

 

「……!!」

 

「……!!」

 

 だがその力は拮抗し、周囲に()()()()をもたらした。その瞬間、お互いに相手の力とその器を感じ取り、周囲もその黒い雷のような衝撃波によってお互いの素質に気づいた。

 

「んな~~~!!? 覇王色の衝突~~~!!?」

 

「あの女もそうだってのか!!?」

 

「そんな……!! あれは姉様やあの方達と同じ覇王色の覇気……!!」

 

「まさかこんな場所に覇王色の持ち主がいるなんて……!!?」

 

「…………!!!」

 

 トレーボルやディアマンテといった最高幹部が驚き、美女の側近なのか2人の女性もまたその覇気に驚いた。

 周囲の者達はその空気の圧。尋常ではない王の素質同士の衝突に顔をしかめて耐えるしかない。

 

「っ……“(ピストル)キス”!!!」

 

「っ……“弾糸(タマイト)”!!!」

 

 美女が自らの人差し指にキスをして、手で鉄砲の形を作ってハート型の弾を撃ち出せば、ドフラミンゴもまた己の能力で糸を弾丸の様に撃ち出す。

 2人はお互いに見聞色の覇気で動きを先読みし、武装色の覇気で自らを防御、そして同時に相手を攻撃しているが、それらが拮抗していることに表情を歪ませた。

 

(この女……!! 強ェぞ……!! クソ、一体どこのどいつだ……!!? 見たことねェ顔だ……!!)

 

(この男……!! わらわの石化を覇気で防御しおって……!! 楽な試験だと思っておったがこれほど面倒な者がいるとはな……!!)

 

 お互いに覇王色の持ち主。それゆえに相手が自分に拮抗する強さの持ち主であることに忌々しいといった表情を隠せない。

 そして誰よりも驚いているのは周囲の者達。ドフラミンゴの部下達はドフラミンゴの資質に匹敵する者がこんな場所にいることに。美女の仲間2人は美女に匹敵するような相手がこんな前半の海にいるとは思えずに驚愕した。

 

「……! ドフィ……!!!」

 

「姉様……!!!」

 

「!!!」

 

 拮抗する勝負は続く。どちらも突然現れた謎の強敵を謎のまま討ち倒そうとしていた。

 だがそんな時、美女は仲間の2人を呼んだ。

 

「ソニア!! マリー!! 今()()()!!?」

 

「はい姉様!! ……っ、もう時間がないです!!」

 

「後一分もありません!!!」

 

「何を言ってんだあいつら……時間だと?」

 

 セニョールがそのやり取りに疑問を感じる。が、それは相手にとって重要な事のようで、見るにも増して美女の攻撃が激しくなる。そしてドフラミンゴに文句をつけた。

 

「まったく忌々しい……!! 鳥男が、わらわの邪魔をするな……!!!」

 

「フッフッフッ……!! それはこっちのセリフだ蛇女……!!! このおれの邪魔をしやがって……!!!」

 

 相手の服の特徴などを目敏く見つけて相手を罵倒する。そしてそれは的確なものであった。

 2人は偶然にも勝負をつけようと大技の準備を行う。覇気を全力で込めて己の最上の技でとどめを刺そうとした。

 

「「くたばれ……!!!」」

 

 その瞬間──()()()()()()()()を捉えられた者は誰1人としていなかった。

 

「──はーい、時間切れ~~~♡」

 

「!!? ぐっ……!!!」

 

「!!? ぐあっ……!!!」

 

「姉様!!?」

 

「若!!?」

 

 互いの大技が激突するその瞬間──空から現れたその影は、2人の大技をいともたやすく防御し、そのまま地面に叩き落とした。

 2人が苦悶の声を上げ、2人の仲間が2人を心配する声をあげる。

 そして何が起こったのか分かってないのはドフラミンゴとその仲間の方だった。彼らは突如現れた謎の影を警戒して戦闘態勢を取る。美女もまだ無事だ。戦いはまだ続くのだろう。

 そう思っていた……その予想は間違いだった。

 

「っ……ハァ……ハァ……時間切れか……!!」

 

「っ……す、すみません……!!」

 

「っ……そんな……もう少しだったのに……!!」

 

「……? あいつら、何を怯えてやがんだ? だがこの隙に──」

 

「っ……!!!? 待てディアマンテ!!!」

 

 美女たちがその影に怯え、失敗したことに落ち込んでいるように見える。その隙を突いてディアマンテが真っ先に攻撃を仕掛けようとした。

 だがそれを感じ取ってドフラミンゴが制止を掛けた──が、既に遅い。影と同様に彼らは既にこの場にやって来ていた。

 

「──今はぬえさんが喋ってるってわからないのかい?」

 

「あ……? ──っ!!!」

 

「ディアマンテ!!!」

 

 突如、同じく空から降りてきた巨大な美女がディアマンテを一撃で叩き潰す。

 5メートルを超える長身のディアマンテの更に倍以上ある美女だった。その美女はドフラミンゴファミリーの幹部達に向かって煙管を吹かしながら告げる。

 

「ふふふ……ぬえさんの可愛いお声の邪魔をしたら殺すわ♡ だから全員動かないようにね」

 

「なんだと!!? そんなふざけた──」

 

「──待てお前ら……少し黙ってろ……!!!」

 

「若!!? な、なぜこんな奴の言いなりに──」

 

「良いから言う通りにしろ……!!!」

 

 ドフラミンゴは突然現れた美女に憤る部下達を諌めた。ドフラミンゴは怒っている、が、それ以上の衝撃に歯を噛み締めて驚いていた。──()()()()()()()()()。ドフラミンゴの胸中はまずそれに尽きる。

 着物姿の巨大美女や謎の絶世の美女も警戒しなくてはならない相手だ。──が、それだけならドフラミンゴは戦うことも考えたかもしれない。

 しかしその巨大な美女の所属と、その彼女が発した名前。そして影が少女の形を取っていくのを見て、ドフラミンゴは動かないことを決めた。そして冷静にその場の推移を見守ることにする。

 なにせ相手は──ドフラミンゴが接触しようとしていた、“四皇”の一角。それの2番手である大海賊だったからだ。

 

「ごめんなさいぬえ様……!!」

 

「失敗しました……!!」

 

「っ……もう少し時間があれば、あ奴等も石にして──」

 

「あー、いいよ良い良い。謝らなくてもいいってば。これは命令じゃなくて試験なんだしさ!! ──というかあなた達が弱いことに私は関係ないし、自分で反省するくらいでいいと思うなー♡ あはは♪」

 

「っ……」

 

 空に浮かび先程まで戦ってた3人を、しかも1人はドフラミンゴと拮抗するほどの強さを持つ相手を“弱い”とあんまりな評価を下す笑顔の少女に、ドフラミンゴファミリーの幹部達は得体の知れない何かを感じ取る。

 

「それに──」

 

「!!」

 

「あっ……!!?」

 

「っ……!!? あれは……!!」

 

 そして遂に、その少女の顔がドフラミンゴ達を捉える。

 その顔が露わになり、そして同時に集まってくるのは頭に角を生やしたような荒くれ者の海賊達。

 空から降りてきた船を海につける。その船の海賊旗のマークや、その特徴的な赤と青の羽を持つ少女の顔は、情報通でもあるドフラミンゴファミリーが知らない筈もなかった。知らない方がおかしい相手なのだ。それは、

 

「──あはははは!!! 面白い面白い!!! さすがの私も、こんなところにそこそこ有名なフラミンゴ一家がいるとは思わなかったしね!!! おっかし~!! 凄い偶然というかなんというか……!!! あはははは!!! ほら見なよジャック!! ブラックマリア!! アレ確かフラミンゴって名前だったでしょ!!」

 

「──ええ、確かそうだったかと」

 

北の海(ノースブルー)出身のドンキホーテ海賊団。船長はドンキホーテ・ドフラミンゴで懸賞金は3億4000万です、ぬえさん♡ 間違ってないみたいで」

 

「あはははは!!! そうだよね!!! やばーい!! おもしろ~い!! あはははは!!!」

 

 ──百獣海賊団……!!! “妖獣のぬえ”……!!! 

 

 空中で身を捩り、腹を抱えてドフラミンゴを指差して笑う美少女──封獣ぬえ。

 かの四皇、百獣海賊団の副総督であり懸賞金は30億を優に超える新世界の化け物。

 彼女の登場にドンキホーテファミリーは戦慄する。よく見れば、突然現れた美女のブラックマリアや、部下達を引き連れて遅れて登場したジャックなども百獣海賊団の幹部、“飛び六胞”の2人だ。

 その少女は何が可笑しいのか、ドフラミンゴ達を見て笑う。ドフラミンゴ達はその異様な雰囲気を纏うぬえに何も言えない。

 カイドウと同じく不死身と称される化け物など手に負える筈もないし、仮に手に負えたとしてもその後に四皇に狙われることにもなる。ゆえに敵対行為だけは避けたかった。

 

「あー、おっかし!! まあ見たところ、そこそこの雑魚だし、運が悪かったね!! 今のハンコック達ならこの島の海賊を全員叩き潰すくらい簡単かなーって思ったんだけどな~」

 

「ふん……情けねェ。こんなバカそうな連中に負けるとはな」

 

「黙れジャック!! わらわは負けておらん!! それにぬえはともかく、お主に言われとうないわ!!」

 

「とはいえ卒業試験は失敗ですが、どうするんです? ぬえさん」

 

「ん~……そうだね~……」

 

 ──ハンコック、と呼ばれた美女がジャックに文句を言い、ブラックマリアがぬえにどうするかと余裕そうに尋ねた。未だにドフラミンゴ達は動けない。

 しかしドフラミンゴだけは僅かに引き攣った笑みを浮かべて思った──これは()()()()だと。

 先んじて接触してしまったのは想定外だが、ここで話を通せれば今後の動きが楽になる。

 

「──でもまあ、合格でいいかな!! 3人とも2年前とは見違えるくらいにはなったしね!!」

 

「!」

 

「……!! ありがとうございます……!!」

 

「ぬえ様に認められた……!! やりましたね、姉様!!」

 

「……まあ、そうじゃな。とはいえ、ケチがついたことには変わりないが……」

 

「あはは、なにそれツンデレ? よしよし、ハンコックは可愛いね~♡ ──私の次にだけど♡」

 

「ええいっ、頭を撫でるな……!! 試験を合格したのならわらわはもう子供ではないのだろう!!」

 

 ゆえにドフラミンゴは目の前でやり取りをするぬえ達を見てタイミングを見計らった。どこかで自分達に話しかけてくる、あるいはこちらから話すチャンスが生まれるだろう。

 その時に敵対する気はないと伝えて、取引を持ちかけるか、将来、欲しいものを取引出来るようにする準備があると伝える。

 そしてその時は、唐突に来た。

 

「──フッフッフッ……!! 少し、いいか?」

 

「──あっ!! ドンキホーテ・ドフラミンゴ!! 今何歳!?」

 

「…………28歳だ」

 

「28歳ね!! それじゃ13年後が楽しみだね!!」

 

「……フッフッフッ……どういう意味か分からねェが……少し話をさせてくれ」

 

 突然年齢を聞いてきた上に、13年後が楽しみだと伝えてくるぬえにドフラミンゴは意味が分からないと思いつつも話がしたいと伝える。やはりイカれた野郎の兄妹分はイカれてるのか。

 だが先程のやり取りを見ている限り、話は通じそうだ。上手くこっちのペースに持っていければ良いとドフラミンゴは話を通そうとした。

 

「別にいいよ!! 何かな?」

 

「フッフッフッ!!  ありがたい……話というのは他でもない。おれは──」

 

「──あ、でもその前に、見逃してあげるから何かちょうだい!! お金とか人間とか……とりあえず、お金は5億ベリー()()()()許してあげる!! もしくは人間1000人捕まえてきてね!!」

 

「…………なに……?」

 

 ぬえが笑顔で告げた言葉を耳にし、脳で理解した瞬間──ドフラミンゴは固まった。耳を疑う。それはあまりにも横暴な要求だった。

 思わず無言のまま立ち尽くしてしまう。が、ぬえはニコニコと笑顔を向けたまま首を傾げていた。「まだ?」とも言いたげだ。

 だがドフラミンゴはそれを冗談かと思い、再び不敵な笑みを浮かべる。

 

「フ……フッフッフッ……!! それは勘弁して貰いてェな。買い物がしてェなら、ウチの店で──」

 

「──いいから寄越せっつってんのよ♡ 5億ベリーか人間1000人。それとも……ここで死んどく?」

 

「…………!!!」

 

 ぬえの言葉の圧が強くなる。笑顔は変わらない。しかし──ぬえの覇気がドフラミンゴやファミリー達の身体を突き抜けたことで彼らは一様に顔色を悪くした。

 まるで自らでは到底敵わない巨大な獣を……それこそ大型の海王類に睨まれたか、それ以上の圧を感じる。

 そしてそれでいて得体の知れない恐怖が彼らを襲った。子供のベビー5やバッファロー、シュガー、デリンジャーなどは目に涙を浮かべて腰を抜かし、震えてしまう始末である。仮に覇王色の覇気を発動すれば気絶させることは容易であろうが、ぬえはそれをしなかった。

 そしてドフラミンゴは思う──()()()()()()、と。

 冗談で言ってない。目が笑ってない。もし渡さないなら、この場で自分達を虫ケラのように消すだろう。

 

「ほら早く~。話がしたいならまずそれからだよ! 見逃した後でなら見逃してる訳だし、襲わないでちゃんと話をしてあげる♪ こっちはあなたの話なんて聞かないで全員ぶっ殺して首を海軍にでも引き渡すか、もしくは心を折って部下にしてもいいんだよ? あ、部下になるなら払わなくてもいいけどね~~~♡ ──で、どうするの?」

 

「ぬえさんの言いつけに従わねェなら殺すだけだ……早くしろ」

 

「ふふ、ぬえさん程の美少女に献上出来るなんて幸せ者だね♡ それに問答無用で殺されないで済むんだから、見どころがある証拠だよ」

 

「…………!!!」

 

「わ、若……」

 

 ドンキホーテファミリーは誰も動けない。誰も笑えない。

 新世界の怪物。四皇の2番手という圧倒的強者を目の前にして、選択肢などほぼ無いに等しい。

 ドフラミンゴは部下にならない。なる訳がない。ドフラミンゴは自分が世界を破壊し、世界を支配する。誰かの部下にはならない。

 だが……ここで戦って勝てると思うほど、ドフラミンゴは自分の実力を過信してはいない。ここで反抗し、挑むのはバカのすることだ。

 

「……お前達、今すぐ街に行って人間千人攫ってこい」

 

「ドフィ……」

 

「若……それは……」

 

「いいから早くしろ、多少手荒になっても構わねェ。──少し時間がかかるがいいか?」

 

「うーん……ま、いっか。出来るだけ早くね~♡ あんまり遅いと()()()()さん始めちゃうぞ~♡」

 

「フッフッフッフフッフッフッ……そうならないように努力させてもらうぜ……!! ──早くしろお前ら」

 

「……!! おい行くぞ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

 ドフラミンゴが振り向く余裕もなくそう命令すれば、ファミリーの幹部達が一斉に動き出す。残ったファミリーの下っ端を引き連れて、すぐに街へと向かった。

 そうして残ったのは傷ついて治療を受けるモネやグラディウス、ピーカやディアマンテ。そして唯一無傷で残っているトレーボルやまだ小さい子供達だけだ。

 だが誰も口を開かない。開いたら何をされるか分からないからだ。

 

「ふんふ~ん♪ まだかなまだかなー♡ 予想外の収穫~♪ あっ、ハンコック達はどうする? このまま送っていってあげる予定だったけど」

 

「……いや、見送りはここまでで良い。世話になった」

 

「そう? それじゃシャッキー達によろしくね~♡ あ、あと有名になったらまた迎えに行くからね!! それと金色神楽には毎年必ず参加すること!! 良い?」

 

「出る前にも聞いておるわ。はぁ……サンダーソニア、マリーゴールド。行くぞ」

 

「えっと……それじゃまた。ぬえ様」

 

「あの、お世話になりました……!!」

 

「うんうん、ばいば~い♪ またね~♡」

 

 そうしてぬえは礼を言って去っていくハンコック達を手を振って見送ると、百獣海賊団の船員が持ってきた料理に目を輝かせた。部下の代わりにブラックマリアが受け取り、ぬえの前に並べる。

 

「──ぬえさん、ご所望の焼き鳥です」

 

「わーい!! いただきま~す!! はむはむっ……ん~♪ 美味しい~♡ タレが絶妙だね!! あっ、せっかくだし食べる? 鶏肉美味しいよ!!」

 

「フッフッフッ……遠慮させてもらう」

 

「? もしかしてお腹いっぱいなの? 勿体ないな~、こんなに美味しいのに」

 

「…………」

 

 そうして、ドフラミンゴは人間1000人をぬえに献上するまで、目の前で焼き鳥を食べながら話しかけてくるぬえに酷い屈辱を感じつつも、改めて誓った。──今は笑っていればいいと。

 だがこちらも利用させて貰う。そうすればこちらも笑える。

 そして利用するだけ利用した後……いずれは自分が王になると。

 それが10年後か20年後になるかわからないが──ドフラミンゴはいずれ世界を破壊するためのビジネスの相手、大口の取引先に四皇一の破壊者である百獣海賊団を選ぶ。

 何しろ天竜人相手でも容赦なく傷つけ、大暴れしてしまう相手だ。自身の目的にはうってつけの相手である。

 そのための協力者となりえる相手だ。一時の屈辱なら耐えてみせると、そのイカれた相手、自分以上に危険で話の通じない連中を前に、ドフラミンゴは将来を想定して再び不敵な笑みを浮かばせるのだった。




赤髪海賊団→東の海へ行ってこれから最強の山賊と海王類と戦ってきます
ドンキホーテ・ドフラミンゴ→28歳
ドンキホーテ海賊団→時期的にはローと別れて数カ月後。偉大なる航路に入ってって感じで
モネとシュガー→ローと別れた後に加入。モネが王宮潜入の任務があって、その時には既にユキユキの実の能力者になってることから、割と早期に悪魔の実を食べてる筈。シュガーはまだ
蛇姉妹→卒業試験中。内容はシャボンディ諸島の海賊を千人殺すこと。後もう少しってところでドフラミンゴに会っちゃいました。ちな卒業してもわりかし会います
マリーゴールド→原作通り。なおモネとの戦いはモネがまだ海賊になったばかりなのもあるのと、サラマンダー使えるので雪のモネに有利でした。覇気も使えるので
今日のお供→ジャック&ブラックマリア。ジャックは暴れられるんじゃないかと密かに期待してます
今日のぬえちゃん→鳥の前で鳥が嫌いなバーベキュー(焼き鳥)食べてて可愛い

そんな感じで。長くなりました。ファミリーが多すぎる問題。次回はまた色々と。時期的にはもうそろそろ原作1話の話があったり、魚人族の英雄が死んだり、ハンコックが七武海になったりと色々イベントが多い時期です。それはともかく鳥野郎の社会人的な苦労をお楽しみに

感想、評価、良ければお待ちしております。
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