正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる 作:黒岩
──シャボンディ諸島。
それだけにその諸島には“闇”も多い。特に、1番から20番までのGRは無法地帯とされており、非合法な店が幾つも存在する。
「──急げ!! 今日の品はやべェぞ!!」
「ああ……悪魔の実が出品されるんだってな……!!」
闇取引。奴隷や珍品のオークションが行われるその店には海賊を中心に続々とオークションの参加者が集まる。
その店は密かに海賊──ドンキホーテ・ファミリーによって経営される店であり、現在のシャボンディ諸島の裏社会でも評判の店であった。
そして参加者が口々に話す内容によれば、今回は“悪魔の実”が出品されるとのこと。
何の実かまではわからない。だが悪魔の実ともなれば船乗りが一度は見てみたい代物であり、海賊であればこれから新世界に向かうに当たっての戦力強化としても期待出来る一品である。海の秘宝とまで呼ばれるその果実を目当てに人が集まるのは当然であった。
──だが多くの人々はその果実が本当は売りに出されないとは知らない。
「おーおー、餌に釣られてバカが集まってやがるぜ」
オークション会場の裏側で続々と集まる人々を見て笑うのはドンキホーテ海賊団の最高幹部であるディアマンテ。
彼は今このオークションを──正確には悪魔の実を任されていた。
これから出品する悪魔の実、無限に”金”を生み出すことの出来る“ゴルゴルの実”は客を集めるための看板に過ぎない。
会場に紛れたドンキホーテファミリーのサクラにより、ゴルゴルの実はそのままドンキホーテファミリーが所有することになる。
そして誰かに食べさせて無限に金を生み出せるようになればこれからの活動もより上手くいくだろう。
彼らは特に今、金が必要な時期なのだ。金を集めて準備をしなければ、新世界の大物達を相手に取引することは難しい。
だからこそ最高幹部を遣わせるほどに警戒はしていた。
「──随分と盛り上がっているな……だが好都合だ……」
──だがフード付きのコートに身を包むその男はゴルゴルの実が出品される情報も、それをドンキホーテファミリーが手放さないことも、全て知っていた。
金を握らせれば末端から幾らでも情報を引き出せる。フードの中でほくそ笑む彼は全てを知った上で計算している。
「──火事だ~~~!!?」
「逃げろ!!」
「ウッ、煙まで……!!?」
──そしてとうとう彼は行動を起こす。
「……!! おい!! ゴルゴルの実を持って出るぞ!!」
「は、はいっ!! ……って、あれ?」
最高幹部を含むドンキホーテファミリーが事を収めようと動いた時には既に遅い。
その金を生む力は既に、金に全てを奪われた男の手にあった。
「ハ……ハハハハハ!!! ついに……ついに手に入れたぞ……無限に等しい“金”の力を!!!」
オールバックの黄緑色の髪を持つその男の名は──ギルド・テゾーロ。
彼こそこのオークション会場に犯罪者達を裏で動かし、火をつけさせ、その騒ぎに乗じてゴルゴルの実を手にした張本人。
彼は数年前に奴隷から解放されてから密かに海賊として活動を続け、その悪魔の実を探し続けていた。
「これでもう、誰にも支配はされない……!!! 全てを支配することが出来る神の力だ……!!!」
テゾーロはその実を即座に食し、自身の身に起きた変化を大いに喜ぶ。
彼にとって金は全てだ。
金は全てを手に入れることが出来る。金があれば幸せになれる。
貧乏人は生きる価値はない。人の命であっても金で買うことが出来る。
そんな歪な世界を支配するのはやはり“金”なのだ。
「見てろ……天竜人のクズ共……!! おれはこの金の力でお前らすら支配してやる……!!
彼の頭の中には全ての構想が描かれていた。
テゾーロは裏社会に精通している。伊達に12歳の頃から裏社会を出入りしている訳ではない。
この
新世界で海賊として活動を開始するのであれば彼らと手を結ぶのが一番の方法だと彼は知っていた。
そして幸いにもテゾーロには四皇の1つとコネ──とも言い切れないが、接点がある。
力を身につけ、金を持てば彼らと手を結ぶことも可能だ。本格的に海賊として仲間を集める頃合いだとテゾーロは考える。
「──だがまだ新世界に入るべきではないな」
しかしテゾーロは冷静だ。ゴルゴルの実を手に入れた高揚感にまだまだ酔いしれたい気持ちもあり、未だに口元はニヤリと歪んでいるが静かに船で密かにシャボンディ諸島を後にする。
このまま新世界に入ることも不可能ではないだろうが、テゾーロは時期ではないと思いとどまる。
なぜならだ。今年の新世界は荒れている。裏の情報網を使うまでもない。新聞で大々的取り上げられており、誰もがその海の荒れ具合を知っていた。
その理由が、今テゾーロの手にある少し前の新聞にある。左目に3本の傷を持つその海賊の名は──
「“赤髪”か……こいつはイカれている、な」
──“赤髪のシャンクス”。
彼の名はもはや海賊の世界で知らない者がいない程に有名であり、海軍からもマークされている危険な人物だ。
数年前に起こった“鷹の目”ジュラキュール・ミホークとの決闘の日々はあまりにも有名であり、今や伝説となっている。
その折に新世界を引っ掻き回していたその海賊がしでかした事は実にイカれた物だった。
だが元はと言えば、更に数ヶ月前の新聞に書かれたとある事件……これもまた赤髪が蒔いた種だと言えるだろう。そこに書かれた新聞の見出しはこうだった。
──“赤髪のシャンクス”!! “
そう──数ヶ月前、この事件には誰もが驚いた。
約2年ほど前から
剣豪談義では“鷹の目”、“火災のキング”、“花剣のビスタ”……その他様々な剣士達の中でも一際存在感のあった海賊界のダークホースが腕を落とす。中々衝撃的な事件だ。
そして腕を落としてきた彼が新世界に帰ってきた時、起こった出来事はわかりやすいもの。
赤髪に恨みのある海賊など幾らでもいる。そんな彼らが赤髪を狙い始めたのだ。
そして新世界では海賊達の仁義なき戦いが始まる。赤髪は極端に悪い噂は聞かない王道の海賊と言われ、自分から他人をどうこうするような人物ではないと言われている。
──だが赤髪は、怒らせると恐ろしい。
これは政府や裏社会では有名な話。赤髪は一度怒って暴れれば中々に手に負えない海賊だということ。
海賊達もそれは重々承知であったが、左腕を落とした彼なら討ち取れると思ったのだろう──結果はそんなに甘くはなかったが。
だがそれによって起きた新世界での闘争は、やがて四皇をも動かすことになった。
「“白ひげ”との小競り合い……“ビッグ・マム”の“将星”を退け、“カイドウ”の“大看板”に手痛い傷を負わせる……正気ではない」
どういう訳か、赤髪海賊団はその海賊達との争いを退け、あるいは航海を続けていたことで、新世界の勢力図に僅かに軋みを与えたのだ。
それによって四皇同士の小競り合いが起きて、新世界は荒れる。それの中心にいた赤髪海賊団もまたその嵐に巻き込まれ、全てを奪われると誰もが思った。
しかし結果は違う。彼らは四皇の海賊団すら退けていた。
四皇本人が出ていないにしろ、四皇の最高幹部と同等の戦闘力を持つ立派な怪物だ。
一時はその強さを見込まれて七武海への勧誘もあったと聞くが、そうなっていないことを見るにそれは断ったらしい。……それが意味するところは“自由”か“支配”か──いずれにせよ、さらなる“高み”へ登るつもりなのだろう。
「ふん……迷惑なことだ」
おかげで海軍の動きも活発になっている。これから本格的に動こうと目論むテゾーロにとっては迷惑な話だった。
だが”四皇”が本格的に潰しにかかればその命も長くはないだろう。そう思い、テゾーロは新聞を手に置いた──が、そのタイミングで。
「む……」
船の甲板に落とされた新聞に目を向ける。もう夜明けだ。定期購読をしているため、ニュース・クーが新聞を船に落としていったのだろう。テゾーロはそれを手に取り、見出しを確認する。金には劣るが情報は重要だ。
「!!? っ──」
だがその新聞を見て、テゾーロの顔が青褪める。
海賊になってしばらく、いつも冷静で驚いたとしても感情的な顔を覗かせることは少ない彼の顔が絶句し、揺れていた。それほどの衝撃。数年振りの衝撃を彼は受けたのだ。
その内容は──
「“タイヨウの海賊団”船長……フィッシャー・タイガーの死亡、だと……!!」
彼を奴隷の身から救った恩人の1人が──死亡したという記事だった。
──世界がそのニュースに驚かされる数日前のこと。
──
「──コアラ~~~!! 見えたぞ!! お前の故郷だァ~~~~!!!」
魚を模した船首が特徴的なその船に声が響き渡る。
その船に乗る者は皆、普通の人間とは違った特徴を持っていた。
「寂しくなるな!!」
「元気でな~~~!!」
「おめェみたいな人間もいるんだなァ~~~!! うおおお~~~ん!!」
水かき。ヒレ。牙。
あるいは手が複数存在したり、下半身が魚であったり。
そして誰もが身体のどこかに“タイヨウ”のマークがある。
彼らは皆魚人か人魚。そして海賊。
奴隷解放の英雄フィッシャー・タイガー率いるタイヨウの海賊団は
奴隷であり人間の少女──コアラを送り届けるために、彼らは旅の末、親交を深め、確かな絆を育み、それを成し遂げたのだ。
「あたし、村の皆に言うよ!! 魚人にはいい人達がたくさんいるって!!」
「……ふっ、さあ行くぞ」
「うん!!」
元奴隷であり、数ヶ月前まではそのトラウマと癖が抜けず、何をされても笑っていた痛ましい少女コアラの表情は見違えるほどに明るい。
そしてそれは見送りに出たフィッシャー・タイガーも同じだ。彼は誰にも教えていないことだが、彼も同様のトラウマと恨みと怒りと悲しみを心に抱えている。
だが彼の心はこの時だけは穏やかだった。──自分の気持ちと心の奥に抱えるそれは無くならないが、これからは変えられるかもしれない。
自分たちが接したこの人間の子供や、あるいは故郷の魚人島、人間との融和、共存の思想を持つオトヒメ王妃やその影響を受けるであろう次の世代であれば、自分達のように相争う道を選ばずに済むかもしれない。
再会を果たして泣き抱擁し、母娘や、先程別れる際に見せた仲間達を見てそう思う。少女も手を振って感謝を伝えてくれた。
希望を胸に、タイガーは船へと戻り、再び航海を続ける──
「──タイヨウの海賊団船長、フィッシャー・タイガーだな?」
「!!!」
──筈だった。
この瞬間まで、タイガーは僅かに人間のことを思っても穏やかでいられた。
「私は海軍本部少将ストロベリーである!!! 君達がこの島へやってくることは──ある島の者から通報を受けている!! 今君が行った村の大人達もここで少々騒ぎが起こることを承知してくれている……“天竜人”の所有物であった娘を見逃すという条件でな」
──罪状は“襲撃”と“逃亡”。
タイガーを取り囲む本部の海兵。向けられる多くの銃口。殺意の塊。
そしてそれが起きた原因もまた……タイガーらが善意で引き受けたコアラを故郷へ送り届けることを頼んできた元奴隷の人間と、先程娘を送り届けた村の人間。
そして”正義”を掲げる海軍もまた、聖地襲撃の罪だけでなく──聖地からの逃亡の罪を把握しており、それを思い出させた。
発砲と共にタイガーの血飛沫が上がり、怒りが膨れ上がる。
──そして同時にタイヨウの海賊団もまた、襲撃を受けていた。
「海軍の罠だったってのか……!!?」
「見ろ……これが人間だ!!!」
「全員!! 船を捨てて海底へ避難しろォ!!! タイのお頭が危ない!!!」
取り囲む軍艦はタイヨウの海賊団に容赦ない砲撃を行う。
そして彼らは船を捨てて、タイガーの救出と軍艦の奪取に向かう。
村の人間はそれに聞こえぬ振りをした。タイヨウの海賊団の撤退戦が始まる。
──そこから遠く離れた沖合には、1つの船があった。
「──軍艦が3隻来てますね。乗ってるのは……ありゃ誰だったか、どれどれ……おっ、こいつだ。海軍本部中将ボルサリーノ。自然系ピカピカの実の能力者で次期大将候補と名高い怪物……って、書いてやすがどうします? ぶち殺せば手柄になりやすぜ?」
「くくく……面白ェ提案だがやめとこう。無駄な戦いをしても損するだけってもんだ」
望遠鏡を覗いてそれを見る海賊は甲板で腰を落ち着ける船長に手元のリストに書かれていた情報を見て報告する。船長はそれを聞いて不敵に笑いながら答えた。
「特に今はマズい、さっさと仕事を終わらせて帰るぜ!! こんな退屈な海はもう真っ平だ!! 少し離れて様子を見てな!!」
「了解」
船長の提案により、彼らは見つからない様に船を隠す。
海軍もタイヨウの海賊団も、その船を見つけることは出来なかった。
──そしてタイヨウの海賊団は海軍の奇襲攻撃から辛くも逃げ切ってみせた。
だが船は奪われ、タイガーは瀕死の重傷を負ってしまう。
「入れるな!!! そんな血で生き長らえたくはねェ!!!」
「!!?」
輸血を行わねばタイガーは死ぬ。
だがタイガーは人間の血を強く拒んだ。船員達の説得にも耳を貸さない。
珍しい血液型であるタイガーは奪った軍艦にストックされた人間の血を入れなければ死んでしまう。
「おれは人間に屈しないっ!!!」
だが息を乱しながらも強く拒絶する。
恩も情けも受けたくない。魚人を強く蔑んできた汚らわしい人間の血に生かされたくない。
「おれは!!! 奴隷だった!!!」
「なんじゃと……!!」
「…………!!!」
「お頭……!!」
そう──彼は奴隷だった。
多くの魚人達は初めて知るその事実に強いショックを受ける。英雄の痛みと悲しみに濡れる表情からの言葉はそれだけ彼らの顔を青くした。
だがタイガーはそれを伝えたくなかった。
本当はこの怒りを次の世代に持ち越したくない。自分達で終わりにしたい。
コアラの様な良い人間やオトヒメの様な良い同胞の邪魔をしたくない。
自分達は間違っている。人間全てに怒りや恨みをぶつけて復讐をするのは間違っているのだ。
だがそれら全てを分かってなお、タイガーはそれが出来ない。
「おれはもう……!!! 人間を……!!! 愛せねェ……!!!」
──彼の心の“鬼”はそれを拒絶する。
一緒に旅をしてきた仲間達や全ての同胞に伝えたくない。
人間の恐ろしさや真実は墓場に持っていく。──だから平和を。
そう願い、彼はもうそのまま死ぬつもりだった。
「お頭!!! そんな事言わんで生きてくれ……!! 頼む!!! 生きられる命なんじゃ!!!」
「──おいおい!! そうだぜ!! 死なれちゃ困る……おれにとってもな!!」
「!!?」
その時──部屋を吹き飛ばして入ってきたのは大柄な男だった。
その体格は魚人の中でも大柄であるジンベエに並ぶか、僅かに超える程。
そして背後に複数の海賊を引き連れた男だった。
「海兵……じゃねェ!!」
「なんじゃ貴様らは!!!」
「じ、ジンベエさん……!! 船をつけられています!!」
海兵ではない。しかし複数の人間を引き連れる彼らは海賊に違いなかった。
そして船もまた、軍艦のすぐ隣にある。タイガーの死に際で多くの船員が船内にいたその時を奇襲してみせたのか、何人かの魚人は既に甲板に倒れてしまっていた。
「随分と魚人と人魚が雁首揃えてよ……こりゃ今日は大漁だな。
「……!! お前、達は……!!」
「っ……あの旗は……!!!」
タイガーやジンベエがその男達と船の旗を見て血の気が引く。知らない筈はない。彼らは魚人海賊団の面々とも縁がある、この海を統べる四皇の一角。
──2本の角の髑髏を掲げる海賊団の名は……“百獣海賊団”。
『百獣海賊団“飛び六胞” ササキ 懸賞金5億4400万ベリー』
「タイガーはお前だな? なら用件はわかるよな? ──ぬえさんがお前と……そのついでにお前の仲間共もご所望だ!!」
「な──なんでこんなところに“四皇”の船が来てるんだよ~~~~!!?」
魚人海賊団の面々はどよめく。
危険な武闘派として有名な四皇の幹部がここにいることに。
そしてそのササキの言葉に、タイガーは強く歯噛みした。──ここまで救いがないのかと。
「ふ……フザケやがって!!! てめェら人間は……人間はァ!!!」
「!! よせ!! アーロン!!!」
そして身体を怒りで震わせたアーロンは涙ながらにササキへ向かっていく。タイガーの制止を聞くこともなく、自慢の鼻で相手をズタズタに斬り裂こうとする。
ただでさえアーロンにとっては屈辱を味わわされた海賊だ。怒りを抑えられる筈はない。
──だが勝てる筈もなかった。
「ギャアアアア!!!?」
「アーロン!!?」
アーロンが鼻を押さえて床で絶叫する。その顔の上にササキの下駄が突き刺さり、鼻は中程から折れてしまっていた。
それを見てササキは嘆息する。
「おいおい……いきなりいきり立つんじゃねェよ……てめェみたいな
「っ……おつかい……じゃと……!!?」
「ああ──タイガーと残りの魚人を捕まえてウチに引き入れろってよ!!」
「なに……!!?」
ジンベエら、魚人海賊団の面々が驚愕する。──言ってしまえば、四皇からのスカウトではあった。
ササキはアーロンの首根っこを掴んで背後に投げ捨てる。するとササキの仲間と思われる海賊達がアーロンを拘束し始めた。
「さっきも言ったがぬえさんの頼みだ。じゃなきゃこのおれが態々前半の海なんざ来る筈がねェだろ? “利”がありそうだと思ったから来たんだ……わかるよな? ──おれをあまり苛立たせるんじゃねェぞ」
「……!!」
ササキが不敵な笑みで彼らを睨む。魚人達は格上の存在と四皇という旗を持つ相手に警戒し、僅かにたじろいだ。
その怯えを感じ取り、ササキは笑う。
「さっさと縛られてくれると助かる……こっちも忙しいんだ。人間が魚人がとバカみてェに騒いでるお前らの相手なんざつまらなすぎてしてられねェ」
「なん……だとてめェ……!! クソが……離せ……!!! ぐあっ……!!?」
「──それとだ。入らねェ奴は何をしても構わねェと言われてる。くく、まあだから悪いことは言わねェから諦めな。入らねェってんなら……そうだな、半分は売り飛ばして、半分はぬえさんの酒の肴に献上するか──
「ギャハハハハ!!! さすがだぜ船長!!」
「上手いこと言うもんだねェ!!」
ササキとササキの仲間達が笑う。その口振りに怒りを覚えない魚人はいなかった。
そんな中、タイガーは瀕死ながらも声を振り絞る。
「売り飛ばす……だと……?」
「おれはシノギで奴隷売買もしてるからな。魚人や人魚は男でもそれなりの稼ぎになるだろ? くく、この食用鮫もフカヒレ用にヒレだけ切り取ったら後は
「……!! ハァ……殺、す……!!! 殺してやる……!!!」
「外道め……!!」
ササキの言葉にアーロンやジンベエが怒る。特にアーロンはかつてと同じ言葉を掛けられて目を真っ赤に充血させながら怒った。
そしてそれはタイガーも同じだ。
「ハァ……ハァ……悪ィが、おれはもう死ぬ……!!! お前らに支配なんかされねェ……!! あの“鬼”にもそう伝えろ……!!!」
「そういう訳にはいかねェな!! 悪いが無理やりにでも生き長らえてもらうぜ……!!」
「!!?」
ササキがそう言って変型をする。悪魔の実、動物系古代種。
圧倒的なパワーを誇る獣型で更に大きくなるササキが、彼らに恐怖を与えながらタイガーへと迫ろうとする。
「ほら、雑魚共はどいてろ!! じゃねェと全員踏み潰しちまうぜ……!?」
ササキの中では既にもう、全員連れて帰るつもりなのだろう。
そしてだからこそ、瀕死のタイガーを最優先に捕らえようとした。
魚人海賊団の面々は動けない。動こうと武器を構えようとはしたが、迷いを見せる。
何しろだ。無理矢理にでも生かすということはタイガーはまだ生きていられるということ。
その迷いが一瞬、彼らの決意を躊躇させた。
だがそんな中1人だけ、ササキの前に立ち塞がったのは、
「──させん!!!」
「! てめェは……」
「ジンベエさん!!!」
ジンベエがササキの突進を受け止める。僅かに押されたが、ササキもまた目を細めて僅かに驚いた。ジンベエ、その名前には聞き覚えがあった。
「へェ……てめェがジンベエか。ちょっとは出来るみたいだな」
「……皆、タイのアニキを連れて逃げろ!!」
「ジンベエさん……!! で、でも──」
魚人海賊団が迷う。そしてジンベエも、その迷いは理解出来た。
だがジンベエはそれを良しとしない。歯を噛み締め、拳を震わせ、涙を流しながら構え、そして言う。
「タイのアニキの最期の願いを……聞き入れるんじゃ……!!!」
「……!!」
ジンベエは既に決意していた。
タイガーが死ぬ。連中に捕まれば助かるかもしれない。だが、
「仲間になれば助かるかもしれん……じゃが、そうなればまた待ち受けているのは人間の支配!! タイのアニキが最も忌み嫌う道じゃ!!!」
「ジン、ベエ……!!」
「タイのアニキ……わしはあんたに生きてほしい……!! じゃが、死ぬまではまだわしはあんたの子分……!! なら、その願いを聞き届けてやるのが……子分としての
「ジンベエさん……」
ジンベエの言葉に魚人海賊団の面々が迷っていた決意を固める。
誰もが目に涙を浮かべながらも、相手を睨み、武器を取った。構えた。彼らの目には、船長の自由を脅かそうとする敵しか映っていない。
そしてジンベエは代理として叫ぶ。
「タイのアニキの……“魚人島”の英雄の自由を奪わせはせん!!! ──行くぞ!!!」
「おおおおおおお!!!」
魚人海賊団が1つになる。彼らは泣きながら、四皇という強大な戦力へ立ち向かった。
「チッ……この単細胞の雑魚共が……!! なら全員、地獄に送ってやるよ……!!!」
そしてササキは舌打ちをし、ジンベエを含むタイヨウの海賊団を部下達と迎え撃つ。
その光景を最期に、英雄は呟いた。
「嬉しい、ねェ……加勢、してやれなくて……すまねェが……頑張れよ、お前たち……」
「ウオオオオ~~~!!! お頭を守れェ~~~!!!」
「お頭~~~~~!!!」
魚人達が慟哭と共に百獣海賊団との戦闘を開始する。
そしてそれから間もなくして──タイヨウの海賊団船長にして奴隷解放と魚人島の英雄、フィッシャー・タイガーは死亡した。
──そして……世間が英雄の死に驚いた後のこと。
──ワノ国、鬼ヶ島。
そこではとある男の声が響いていた。
その声を聞いて、美味しい美味しいお寿司を食べながら、私は残念だと声を上げた。
「え~~~? タイガー死んだの~~? せっかく楽しみにしてたのにな~~」
『すまねェ、ぬえさん……!! だが、このままじゃ終われねェ……!!! 少し待っててくれ、あのジンベエとかいう野郎の首を取ってあんたとカイドウさんへの手土産にするからよ……!!!』
電伝虫を片手に寿司を食いながら、おつかいに出したササキの報告を耳にする。
その内容は、タイガーは死に、ジンベエには逃げられたというもの。
魚人を数十人程捕まえることには成功したが、結果的に見ればササキはタイガーに……いや、ジンベエに出し抜かれたのだ。
そのためかササキの声には僅かな苛立ちが見え隠れする。大方、ジンベエに負けはしなかったが、そこそこ良い勝負をしてしまい、まんまと目的を果たされたからだろう。……まあ気持ちは分からないでもないけど、と私はけらけらと笑う。
「あはは、
『っ……だが──』
「──黙れ!!! おれに命令するな!!! 殺すぞジジイ!!!!」
『!!?』
──ササキが更に異を唱えようとした瞬間、こちら側の声でササキが驚いたのがわかる。
そしてこちら側でも部下達が慌てていた。
まあ理由は簡単。私の兄姉分もまた、電伝虫でとある相手と話しているのだ。
しかもそれは、ただの相手ではない──カイドウと同じ……四皇の1人だ。
『来るなら沈めるぞ、カイドウ!!!』
「てめェに用はねェ!!! あの赤髪のガキを殺しに行くってんだ!!!」
『何だろうとおれのナワバリを侵すならタダじゃおかねェぞ!!!』
「上等だ!!! ついでにてめェの首も獲ってやる!!! 覚悟しやがれジジイ!!!」
カイドウが受話器に大声で怒鳴り散らす。
その勢いは屋敷を、島を揺らす程だった。カイドウの怒りに呼応するように空が荒れている。
それを私は聞いていると、ササキが恐る恐る聞いてきた。
『……カイドウさんと……相手は?』
「ん~? 白ひげとやりあってるねぇ。ほら、この間クイーンが怪我して、しかもウチのシマをメチャクチャにした赤髪を殺しに行こうってことで白ひげに連絡してるんだけど……いやぁ~~~白ひげが中々頑固でさぁ」
『……なるほど』
ササキが静かになる。というかカイドウ側の怒りが凄まじいため、向こうのササキまで緊張していた。
周りの部下に比べればマシだろうけどね。明らかに怯えてるし。
「ぬ、ぬえさん!! このままじゃ屋敷が……!! なんとか止められませんか!?」
「へーきへーき。この屋敷結構丈夫だし……というか、私もちょっとイラッとしてるというか気持ちわかるしねー」
「へ?」
私は部下達に教えてあげる。──
八つ当たりは可哀想だから笑顔で。
「聞いてない? あの赤髪はさぁ、まあクイーンを退けたくらいなら別にクイーンが弱かっただけの話だからまだしも……私が次にライブショーを行う島とそのステージをメチャクチャにしやがってさ~~~♪ あはは、あのクソガキ、ちょっと見逃してやってたらメチャクチャ舐めた真似をしちゃって……あいつら、マジで殺す」
「……!!!」
──おっと、いけないいけない。ちょっと最後怒りがにじみ出ちゃったかもしれない。思わず顔が据わっちゃったのでちゃんと笑顔に戻す。
「まあという訳でさ。あんた達は船を出す準備でもしといてね~~~♡」
「は、はいっ!! すぐに……!!」
「うんうん♡ 言うことをちゃんと聞く部下は好きだよ♡ ──ってことでササキ~? あんたも早く帰ってきなさい。もう
『……わかった』
「それじゃあね~♪」
と、私は受話器を置いて電伝虫を切る。
するとカイドウの方も話が終わったところだった。
「──おう、ぬえ!! さっさと行くぞ……!! 舐めたマネをした赤髪のガキを殺しに……!!!」
「賛成さんせ~い!! さっさと行っちゃお~う!!!」
「か、カイドウ様にぬえ様!!? ちょっと、2人だけで行こうとするのはどうか……!!!」
私はカイドウの肩に乗り、そのまま龍になったカイドウと共に鬼ヶ島を出ようとするが、部下に止められて一応思い留まる。──まあ海軍とかとも遭遇する可能性大だし、一応船で行こうかと。あはは──さーて舐めたマネした赤髪に
テゾーロ→ゴルゴルゲットでご満悦。でもタイガー死亡はちょっとショック
29歳→ゴルゴル奪われたので計画が若干遅れてそう
タイガー→最期は支配されずに死にたい奴。ぬえちゃんに会ってたおかげか若干生き延びたけど、結局コアラを送り届ける頼みを聞くと海軍の罠ルートなので死にましたし死ねました
アーロン→フカヒレ奴隷ルート。多分一番可哀想だけど後で解放されるから我慢してね
ジンベエ→ササキと戦い、傷を負いながらも引き分ける。二代目船長に
ササキ→自分の仲間達とおつかいに。もしかしたら魚人かもしれない。それと個人的に能力はトリケラだと思ってる
赤髪→左腕無くして原作スタートして戻ってきたと思ったらメチャクチャしてる。詳しくは次回
クイーン→赤髪と遭遇して傷を負う
カイドウ→ブチ切れ中。白ひげと久し振りに通話した
ぬえちゃん→半ギレ珍しいけど怒ってても可愛い。ライブの邪魔は大分地雷です
魚人達からの百獣へのヘイトがそろそろヤバい。今回で第一話のあのイベントが終わった感じやねって。12年前はイベント多すぎ問題。とりあえず次回は赤髪です。お楽しみに
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