正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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新世界の激闘

 ──新世界、とある海域。

 

「──あの悪ガキ共の次はおめェらか……ったく、どいつもこいつもウチのナワバリを荒らしやがって……お前らに用はねェが、やるってんなら容赦しねェぞ」

 

「おどれらになくてもわしらにはあるんじゃい、バカたれが……!!」

 

 白い鯨を模したその船は“四皇”白ひげ海賊団の本船であるモビーディック号。

 その船首に立ち、立ち塞がる海軍の軍艦数十隻とその先頭に立つ海軍中将サカズキと睨み合うのは薙刀を持った6メートル強の大男、四皇“白ひげ”エドワード・ニューゲートだ。

 

「あ、あれが“白ひげ”か……!!」

 

「なんて覇気だ……!!」

 

「……!」

 

 海兵達は皆、新世界に駆り出されるだけあり精兵だが、それでも四皇のその存在感、圧力、覇気には汗を掻き、血が冷たくなる。

 歳は既に60を超えている筈だが、その生き様から“世界最強の海賊”と称されるその覇気は未だに健在。どれだけ軍艦があろうが海兵がいようが油断出来る相手ではなかった。

 

「オヤジ。赤髪を追いかけてる百獣海賊団と海軍が接触して交戦を始めたってよい」

 

「チッ、そうか。島が荒らされなきゃいいが……しょうがねェ。マルコ、別働隊を率いて先に向かってろ。カイドウとぬえのバカを長く放っておくと問題になる」

 

「了解。それじゃオヤジは──」

 

 白ひげ海賊団1番隊隊長のマルコが報告を行い、指示を受ける。

 白ひげ海賊団の本隊、船は1つではない。直参の隊長16人がそれぞれ100人ずつの隊を率いており、母艦であるモビーディック号の他に4つの船を持っている。

 総勢1600人が白ひげ海賊団。この海で最も幅を利かせる最強の海賊の一団である。

 それだけだと四皇にしては少なく感じるかもしれないが、白ひげには四皇の中でも最も傘下の海賊が多く、その兵力を合わせると他の四皇の兵力を上回る。

 仁義という絆で結ばれた家族としての結束。白ひげを中心に集まった大勢の海賊達の総合的な戦力が白ひげ海賊団を今なお“世界最強の海賊”足らしめる1つの要因だ。

 故に白ひげは隊を率いて先に向かえとマルコへ指示を出した。

 そしてマルコは一度、心配という意味を秘めた言葉を白ひげに掛けたが、白ひげはその言葉にニイッと口元を歪めながら答えた。

 

「心配すんじゃねェ。おれを誰だと思ってやがる」

 

「!」

 

 白ひげが薙刀を振り上げ、その覇気と力をそこに込める。超人系悪魔の実、グラグラの実の能力だ。

 その力と覇気が合わさった一撃は、大地を、波を裂き、天を割る。

 

「──おれァ白ひげだ!!!」

 

「!!!」

 

「ウアアァァ~~~~!!!?」

 

 その衝撃波に距離は関係ない。幾つかの軍艦が白ひげの繰り出す薙刀の一撃で宙へ吹き飛んだ。それを見てマルコは下がりながらも笑みを浮かべる。

 

「どうやら余計な心配だったようで……」

 

 そう、白ひげの強さはまだ健在。

 その強さが四皇を四皇足らしめる最大の要因。

 だがそれ故に、マルコは今は大丈夫でもこの先の不安がある。

 加えて、同じく“四皇”に追われているであろう相手のことも、心配ではないが、どうなっているのかという思いがあった。

 

「……さーて、赤髪のヤロウがまだ生きてるのか、確かめに行くとするかよい」

 

 そうしてマルコは幾つかの隊と船と共に、その場を離れていった。

 

 

 

 

 

 氷の海や常識では考えられない気候、現象、動植物が存在する新世界にあっても、その光景はまさに地獄であった。

 

「ギャハハ!! 赤髪を討ち取れェ!!」

 

「海兵もだ!! 名のある奴を殺せ!!」

 

「昇格のチャンスだ!! 出来るだけ多くの首をあげてやる!!」

 

 海賊にとって、海賊旗に描かれた髑髏は死の象徴であり、その一団にとっての威信でもある。

 

「少将殿!! 奴ら、氷の上を渡って攻めてきます!!」

 

「こちらも迎え撃て!! 四皇同士の接触だけはなんとしても避けるのだ!!」

 

「おお!!」

 

 そしてその“二本角の髑髏”を掲げる海賊は、この海で最も恐れられ、最も死の象徴に相応しい一団であった。

 氷の大地となった海を渡るのは、その多くが頭に角をつけた海賊達。

 その誰もが好戦的であり、金棒や刀、槍や銃、殺意の高い武器を持ち、海兵達を襲っていく。

 それだけでも恐ろしい戦いの光景。──だが、それ以上に恐ろしいのは空に浮かぶ者達と、それと戦おうと試みる者達だ。

 

「ワハハ!! 笑える!! あいつら、カイドウ様とぬえ様と戦う気か!?」

 

「消し炭になるのも時間の問題だぜ。ありゃあっちを狙っても意味ねェな。海軍を狙おう」

 

 海賊達にとっては恐ろしくも頼もしい存在。そして、この場所をどんな場所よりも恐ろしい場所に仕立て上げる要因こそが──この海で最強にして最恐の生物達と呼ばれるその威風。

 百獣海賊団の総督と副総督。その義兄姉らの戦闘だ。

 

「──さあ“ライブ”の始まりよ!!」

 

「くたばれ“赤髪”……!!!」

 

「悪いがこんなところでくたばる訳にはいかないんでな……!!」

 

 空に浮かぶ小さな影と大きな影。

 赤と青の奇妙な羽で飛び、UFOから弾幕を飛ばすぬえと、巨大な龍の姿で炎弾を飛ばしまくるカイドウ。

 常人にはひとたまりもない。小さな島なら軽く滅ぼしてしまう災害の如き攻撃だが、赤髪はそれを愛剣“グリフォン”を鋭く抜き放ち、それらを斬り裂いて船を守る。

 

「片腕を失ってもそちらの腕は健在か」

 

 と、氷の足場から同じ様にUFOに斬撃を飛ばして落とすのは、かつてシャンクスと決闘の日々を送った世界最強の剣士“鷹の目のミホーク”。

 ミホークがかつて見た剣の腕前は錆びついていない。片腕を失い、純粋な剣士としては一段実力が落ちたのだろうが、それを補って余りある覇気の強さ。

 もしかしたら総合的な実力は以前より増しているかもしれないと、そんな奇妙な事実を思い知る。

 そしてその強さに、上空にいるトリックスターも気づいた。

 

「へぇ……なるほど。クイーンが負ける訳だ。ちょっとUFOだけじゃ手に余るみたいだね!!」

 

「!! ──“妖獣”が動いた!!」

 

「来るぞ!!」

 

 上空でUFOによる攻撃を行っていたぬえが赤髪海賊団の船に向かって高速かつ一直線に飛翔する。

 純粋な飛行速度はカイドウよりも速い。数百メートルの巨体を持つカイドウに小回りと素早さで勝るぬえは持ち前の見聞色の覇気であらゆる攻撃を回避し、地に足をつけている時以上の自由さで敵を追い詰める。

 その三叉槍が煌めき、赤髪海賊団の船まで残り数秒で到達する──その直前にしかし、ぬえよりも速い存在が動いた。

 

「行かせないよォ……!!」

 

「! ああ、そういえば“光”だったね!!」

 

「そうだよォ……速度は“重さ”……光の速度で蹴られてみなァ……!!」

 

「!」

 

 ぬえの目の前。空中に突如として現れたのは海軍中将ボルサリーノ。

 光人間である彼は、少しの溜めこそ必要だが、その速度に勝る相手はこの世に存在しない。

 地上から空中へ一瞬で移動し、宙返り。上から下へ叩き下ろすように繰り出す蹴りはまさに光の速度。

 結果、ぬえは斜め下に、地上へと叩き落された。

 

「ぬえさん!!」

 

「吹き飛ばされたぞ!! 大丈夫なのか!?」

 

 さすがにその攻撃には百獣海賊団の下っ端達も僅かに焦る。

 だがその数秒後には、その焦りはさらなる信頼と頼もしさに変わった。

 

「──ふ~ん……これが光の速度での打撃ねぇ……思ったより大したことないね。名前負けしてるんじゃない?」

 

「っ……!!? ボルサリーノ中将の攻撃を受けて無傷……!!」

 

「化け物め……!! 少女の姿をしていてもやはり怪物か……!!」

 

 氷の大地をすたすたと何もなかったかのように歩いてくるぬえの姿に、海兵達は戦慄する。直撃し、武装色で防御したようにも見えなかったが、それで血の一滴も出さないというのは怪物にも程がある。

 

「光人間……私のスポットライトになるのがお似合いなんじゃないかなぁ?」

 

「遠慮させてもらうよォ~~~……!! ──全部隊、怯まず攻撃を続けなよォ!!」

 

「はっ!!」

 

 ボルサリーノの指示に短く了解の意を示す海兵達は、軍艦から大砲を撃ち、少しでも足止めをするために氷の上にも降り立って百獣海賊団を果敢に迎え撃つ。

 

「“指銃”!!」

 

「うぐっ!?」

 

「百獣海賊団め……!! かつて仲間を殺された恨みを思い知れ!!」

 

「ぐあ!!?」

 

「──“アイスサーベル”」

 

「!!」

 

 精兵の海兵に比べれば、四皇とはいえ百獣海賊団の下っ端はそれほど強くはない。

 だが百獣海賊団も雑兵ばかりではない。

 

「まったく……新入りとはいえウチの大切な兵をゴミみたいにやってくれちゃってさ!!」

 

 ぬえが再び高く跳躍、そのまま後方へふわりと飛び上がり、何かの上に降り立つ。それを見て海兵達はどよめく。

 

「な、なんだあれは!!?」

 

 それは船から突き出たように見える何かだった。

 角を生やしたそれは船から降り立ち、巨大な金棒を持ち、ズシン、ズシン、と足音を響かせて近づいてくる。

 

「“ナンバーズ”が出るぞ!! 道を空けろ!!」

 

「ぎゃはは!! 踏み潰しちまえ!! おれ達も続くぞ!!」

 

 百獣海賊団の船員達はそれの進軍に声を上げて続く。

 そう、彼らもまた百獣海賊団の船員であった。角を頭に生やした怪物集団の一体。

 その肩に乗り、ぬえは地上を指差して指示を出す。

 

「こっちもゴミみたいに叩き潰しちゃいなさい──()()!!」

 

「ナギギギ!!!」

 

「!!!」

 

 ぬえの指示を聞いて、怪物は海兵達に向かって金棒を振り下ろす。

 氷の大地に穴を開け、海兵数十人を一度に叩き潰したその存在に海兵達は驚く。

 

「デカい……!! 巨人族……なのか……!!?」

 

「いや、それよりデカイぞ!!」

 

「イビ!!」

 

 人語を話さないその怪物は、40メートル近い巨体を持っていた。

 そしてその巨躯に相応しいだけのサイズの金棒を持って暴れ回る。

 

「ちゃんと潰したら後でご飯とお酒上げるから頑張りなさいよ!!」

 

「ハチャチャ!!」

 

「お肉ならそこにいっぱい転がってるんだから好きにしていいよ♪ それじゃ任せたからね!!」

 

「ハチャ~!!」

 

『百獣海賊団“ナンバーズ”八茶(はっちゃ)

 

 肩の上に乗るぬえと会話を行い、怪物集団“ナンバーズ”の1人である八茶は再び海兵達に向かって行く。

 巨人族を超える巨体を持つ存在が暴れ回るだけでも厄介だった。その巨体に見合ったパワーと見合わないスピードにも驚かされる。

 

「ナンバーズだけには任せておけないな……!!」

 

「海軍の艦隊に赤髪……どちらも唆る獲物ね♡」

 

「逆らう奴は全員ぶち()()()()れす!!」

 

「! あらら、これまた厄介そうなのがぞろぞろと……」

 

 だが進撃はそれだけでは終わらなかった。

 クザンは敵を凍らし、あるいはアイスサーベルで突き刺しながら、新たな敵の集団に眉をひそめる。ここまで来るとクザンも確認済みの顔も幾らかいた。

 なにせそれらは百獣海賊団の幹部──“真打ち”。

 

「ほらほら、どんどん行っちゃえ~!! 名のある奴を討ち取り、最も戦果を上げた人は~~~真打ちなら“飛び六胞”への挑戦権!! “飛び六胞”なら“大看板”への挑戦権が貰えるかもよ~!!」

 

「! おいおいマジかよ!!」

 

「俄然やる気が出てきた!!」

 

「さすがぬえさんだわ……!!」

 

「こりゃやるしかねェな……!!」

 

 その言葉に船から出てきた彼らが目の色を変える。百獣海賊団に所属する船員にとって、“昇格”はどんな宝よりも価値のある報酬だ。

 その報酬に釣られて、真打ちもまた下っ端達を押しのけるようにして前線に出だす。

 そしてその厄介さはすぐにわかった。なにせ彼らは皆──1人残らず能力者だからだ。

 

「“猪突”……“猛進”!!!」

 

「!!?」

 

「猪!?」

 

「イシシシシ!! このパワー!! 止められるものなら止めてみやがれ!!」

 

『百獣海賊団“真打ち”ビズリー ウシウシの実モデル“猪”』

 

 この戦いに参加している真打ち、約20名。その全てが──

 

「敵は皆()()()()れすよ!!」

 

「え、斬らない!?」

 

「ウソれす!! “トンタッタコンバット”……“斬々舞”!!!」

 

「!!!」

 

『百獣海賊団“真打ち”ダウト ムシムシの実モデル“オオカマキリ”』

 

 ──動物(ゾオン)系の能力者だ。

 

「全員捕まえてぬえさんの食料にしてあげる……♡ 私の網からは誰も逃れられない……“スパイダーネット”!!」

 

『百獣海賊団“真打ち”スパイダー クモクモの実モデル“タランチュラ”』

 

「遅すぎて欠伸が出るぜ!! “イーグルネイル”!!!」

 

『百獣海賊団“真打ち”カナスタ トリトリの実モデル“鷲”』

 

「クイーン様の仇討ちを邪魔する者は吹き飛ばす!! ──“象の鼻息(エレファントハックション)”!!!」

 

『百獣海賊団“真打ち”ババヌキ ゾウゾウの実』

 

 それぞれの動物の特性を活かした技を使う真打ちは海兵を蹴散らし、名のある首と戦果を求めて動き出す。

 その強さは並の海兵では敵わない程であった。──だが海兵にもまた、彼らを凌ぐ者が存在する。

 

「ぐあっ!!?」

 

「能力者だからと怖気づくな!! 複数で当たれ!!」

 

 六式や覇気を修め、あるいは能力者も存在する海軍の中将クラスは真打ちと同等以上の強さを持ち、怯むことはない。

 中でも怪物と称される中将2人の奮戦は真打ちやナンバーズの参戦で勢いづいた相手の気勢を抑えてしまう程だ。

 

「無駄に戦力引き連れてきちゃって……」

 

「ぐあああ~~~……手が……!! クソッ……!!」

 

 自然系、ヒエヒエの実の能力で手足を凍らされた真打ちが地面に倒れる。

 他にも中将相手に苦戦する真打ちが数名いた。彼らは名のある首を求めたが、その力の差を痛感する結果となっている。

 だが名のある首を求めたのはただの真打ちだけではなかった。

 

「──クザンさん!! 危ない!!」

 

「!」

 

「──死ね」

 

 海兵がクザンに危ないと声を掛けたその時。クザンの背後に現れた巨大な影が、その長い鼻を鞭のようにしならせてクザンを吹き飛ばす。

 クザンはそれを見聞色と身体を流動させて回避したが、僅かにダメージを負う。相手は当然の様に覇気使い。

 殺意を乗せた一撃を繰り出したのは、ある意味で、この氷の大地に最も似合う古代の動物──マンモスだった。

 

「百獣海賊団、ジャック……まだ若ェってのに噂通りの狂犬っぷりだな」

 

「黙れ。お前はここで殺す……!!」

 

 話が通じないイカれ野郎として有名な相手と対峙し、クザンは軽く相手を睨む。まだ10代という若さでこの強さは末恐ろしいものがあった。

 そして古代の生物はジャックだけではない。百獣海賊団の“飛び六胞”は皆、動物(ゾオン)系古代種の能力者なのだ。

 

「わはは、やっぱ急いで戻って来て正解だったぜ……!!」

 

「ジャックやササキに先を越される訳にはいかねェ。ぬえさんのライブの件はともかく、クイーンのバカの仇討ちなんざ気が乗らなかったがこれなら話は別だ……!!」

 

「……!! 古代種か……面倒な相手が出てきたな……!!」

 

 ジャックを含めた飛び六胞の内の3人、ササキとフーズ・フーがそれぞれ海軍中将と対峙し、それぞれ能力を解放する。

 通常の動物(ゾオン)系を遥かに凌ぐパワーとタフネス。そして凶暴性を持つ古代種は純粋な白兵戦に於いて最強と称される優秀な能力だ。

 それに覇気を加えれば悪魔の実最強種とも言われる自然系にも劣らない。

 そして中には氷の大地を利用して、赤髪海賊団を狙おうとする者もいた。

 

「ファイト!! ぺーたん♡ 負けるなぺーたん♡ ファイ……きゃ~、足が滑る~!!」

 

「──おい遊んでねェで他いけよお前!! おれについてくるな!!」

 

「お前だと~~~!!?」

 

「ぐえ!!? やめろ!! 前が見えね──ぎゃああ~~~!!?」

 

「! きゃ~~!!」

 

「うるティ様に、ページワン様!? 一体何を……!?」

 

 子供でありながら真打ち。そして飛び六胞候補として注目されている2人。うるティにページワンが赤髪海賊団を狙おうと氷の大地を走っている途中、うるティがページワンの背中に飛び乗り、目元辺りを手で隠したタイミングで、ページワンは突如、足元を崩されて転び、顔面を氷に打ち付けて顔面スケートをしてしまう。

 部下達がそれに動揺する中、うるティはページワンの背中から降りると、氷に顔を埋めたまま動かなくなった弟を見てわなわなと震え、

 

「……人ってなんて脆いのでごんす……」

 

「──半分はお前のせいだろ!!」

 

「──あ、良かったぺーたん。起きて……お前だとォ!!?」

 

「ぐえあっ!!? ま、待て姉貴!! 敵が……!!」

 

 と、弟のページワン相手に普段どおりの傍若無人っぷりを発揮する姉うるティだったが、それを見て舌打ちをしたのは遠く、赤髪海賊団の船の上からページワンの足元を銃で狙撃した幹部──ヤソップだった。

 

「チッ……あっちも子供の癖にタフだな……!! ガキも戦闘員とはやりにくいったらねェぜ……ったく、カイドウもぬえも鉛玉撃ち込んで傷一つつかねェってどうかしてるな……!!」

 

 銃弾をリロードし、狙いをつけると、そこに覇気を込めて相手を撃つ。言ってしまえばただそれだけのことだが、その狙撃が現在、逃走を図るため逃げながらの戦闘を強いられてる赤髪海賊団にとっては極めて有効な戦術であった。

 そしてヤソップの超人的な狙撃の腕もあり、追いかけてくる敵を倒し、同様に追いかけて弾を撃ってくるUFOを撃ち落とし続けている。

 そして当然、空に浮かぶ巨大な的や小さい的にも狙いをつけて引き金を引いているが──あれはやはり怪物だ。

 

「あはは!! シューティングゲームなら負け──んぐっ!!? ……!! ぺっ、ぺっ!! も~~人が喋ってる時に口の中に鉛玉撃ち込むなんてさいてー!! さすがの私でも鉛玉は食べないよ!!」

 

「──お前も変身しちまえばいいだろう。小せェ鉛玉なんざ無視しろ」

 

「え~~!! だって的を広げるだけだし、こっちの方が動きやすいから楽だよ!! それに()()()()姿()は可愛くないし、今日は気分じゃない!! ──っと、また撃ってきた」

 

「……!! 手で受け止めやがって……キャッチボールしてんじゃねェんだぞ……!!」

 

 ──覇気付きの銃弾を撃ち込んでも傷1つつかないカイドウとぬえは超遠距離の狙撃であっても問題としない。わざわざ躱すことなく全てを受け止めることが出来るからだ。

 最初は頭部に撃ち込んだが銃弾は頭皮を貫かなかった。だから今度は喋ってるタイミングで口の中を狙ったのだが、嫌そうに吐き出された。やはり貫けない。

 どんな身体をしているんだと頭を抱えたくなるが、普通に撃ち込むよりは効果があると考え、続けて発砲。しかし今度は見聞色で読まれたのか、それを受け止められた。

 

「……!! チッ……!!」

 

「あっ、惜しい!! 避けられちゃった!! んもう、こっちの弾は避けるとかひどーい!! キャッチしてみなよー!!」

 

()()()()()()()()()ような化け物と一緒にすんじゃねェ……!!」

 

 ──しかも受け止めたこっちの弾を投げ返してきたため、ヤソップはそれを見聞色で読んで躱す。するとぬえは嬉しそうに悪態をついた。

 

「でもさすが!! これは仲間に引き入れたくなっちゃうな~!! 赤髪海賊団はどいつもこいつも賞金首だし、アベレージも高くて優秀だって聞いてたけど……確かに中々楽しませてくれるね!!」

 

「!」

 

 ──ぬえが再び接近してくる。真正面からの銃は避けられた。空中を自在に移動する小回りが利く相手にはヤソップの腕前を以てしても当てるのは難しい。

 ──だが難しいだけだ。ヤソップは「だったら……」と銃口をぬえから外してみせる。

 

「あはは!! 狙いが定まってないし、当たらないとわかってUFOでも狙い始めたの? いいよいいよ、UFOくらいなら幾らでも撃ち落とせばさ!! 何度でも生み出せるし──んっ!!?」

 

「──()()()読めなかったか?」

 

 ぬえは突如として、銃弾に撃たれた。傷は負わないがその不可解な現象に眉をひそめる。撃たれたのは脇腹にこめかみ。正面ではなく真横から来たものだ。

 だがすぐにその正体に気づく。3発目。こちらのUFOを狙ったその銃弾は、UFOに当たって角度を変えてぬえに向かってきた。

 

「……あはははは!! ()()なんてやるじゃん!! 私が速すぎて外したのかと思ったよ!!」

 

「生憎とおれは──狙った獲物は絶対に外さねェんだ!!」

 

「! ──いいねいいね!! 俄然楽しくなってきた!!」

 

 ──“追撃者(チェイサー)”の異名を持つだけはある。

 新世界きっての狙撃手として名を馳せる相手の腕前を見せられ、ぬえは興奮する。

 だがそれだけでは止められない。ぬえもそうだが、もう一体の怪物は銃弾を無視して赤髪海賊団に迫った。

 

「消し飛べ……!!!」

 

「……!! またあのブレスか!!」

 

「お頭!!」

 

 赤髪のシャンクスが船から跳躍し、その剣でカイドウのブレスを歯噛みしながらも受け止める。並の腕前では消し飛ぶだけだが、シャンクスの覇気と剣の腕はそれを可能とするだけのものがあった。

 

「──ずっと空を飛ばれていては協定を果たすのにも苦労する……」

 

「!!」

 

「──“鷹の目”だ!!」

 

 地上。氷の大地の端で赤髪海賊団の殿となるように立ちふさがるミホークはその黒刀“夜”を振るい、極大の斬撃を飛ばしてカイドウとぬえを狙った。

 だがそれすらもカイドウとぬえは対処する動きを見せない。見せた行動と言えば、ぬえが一瞥し、誰かに声を掛けたことだけ。

 

「──()()も邪魔だから任せたよ~♡」

 

「──了解だ」

 

「!」

 

「! あれは……!!」

 

「斬撃が止められた!?」

 

 その世界一の斬撃が鋼の音を鳴らして空中で止まる。カイドウとぬえは動いていない。

 だがそれを為した者は確かにいた。海兵や赤髪海賊団も確認した。間に割って入ったのは黒く、そして背中に炎を背負う影。

 そしてそれは斬撃を受け止めると急降下し、ミホークに向かって大上段から斬撃を繰り出した。そのとんでもないパワーから繰り出される豪剣を受け止めたミホークとの間に衝撃波が発生し、氷の大地を揺らす。

 そしてさすがのミホークもその見た目と名前には憶えがあり、その鷹のような目で相手を見据え、目の前の男の名を呟いた。

 

「百獣海賊団大看板……“火災のキング”か」

 

「“鷹の目”……おれは剣士と名乗った覚えはねェが……おれが刀を使う以上、お前の世界最強の剣士の称号も、今日で見納めだ……運が悪かったな」

 

「……凄まじい豪剣だ……なるほど、言うだけはある……」

 

 新世界において知らぬ者のいない程の剣士同士。互いに初めて顔を合わせたその瞬間に剣士の勝負は始まる。

 剣士を名乗る者なら一度は戦うことを夢見る相手である“鷹の目のミホーク”だが、“火災のキング”は不遜にも上から物を言い、ミホークも言うだけはあるとその強さを認めた。

 動物(ゾオン)系古代種と本人の凄まじいパワーから繰り出される剣は、ミホークを以てしても余裕を出せる相手ではない。単純なパワー。豪剣にあっては相手に分があった。

 

「ダメだ!! 近づけねェ!!」

 

「“鷹の目”とキングさんの戦いだ!! 近づいたら巻き込まれるぞ!!」

 

「チッ……キングの野郎……鷹の目を持っていきやがって……!!」

 

 百獣海賊団もその戦いには近寄れない。ただでさえキングの戦いは近寄ることが難しいが、相手が鷹の目ともなれば流れ弾のように飛んでくる斬撃で命を落としかねないのだ。

 だが王下七武海の1人で世界最強と呼ばれるほどの剣士を相手出来るのは、確かにカイドウやぬえを除けばキングくらいだと多くの者は納得する。

 それに納得せず、舌打ちをしてその戦いを忌々しそうに一瞥したのは同じ剣士でもある飛び六胞フーズ・フーくらいだ。

 

「──そろそろ手痛いの行っちゃうよ~~!!」

 

「ぬえ……!!」

 

 そして鷹の目の邪魔が入らなくなったぬえが空中で動きを見せる。海兵と赤髪海賊団が警戒を見せた。

 

「“紫鏡”」

 

「!? なんだ……槍が増えた!?」

 

 海兵達が驚愕する。ぬえが手に持つその三叉槍が、二つになった。

 そうして増えた一本を右手に、ぬえは身体を振りかぶって狙いをつけた。

 

「まず一投目~~♪ “スピア・ザ”…………」

 

「……!!」

 

 その瞬間、クザンやボルサリーノ、あるいは他の中将や赤髪海賊団の見聞色に長けた者達はその攻撃のマズさに顔を歪めた。なんとかしたいが、既に手遅れ。

 

「──“グングニル”!!!」

 

「!!!」

 

 ──槍がレーザーにも匹敵する速度で飛ぶ。

 力と覇気いっぱいに投げただけの槍の投擲は周囲に衝撃波を、空気の打撃を撒き散らしながら軍艦を貫き、海面に突き刺さり、そして海底を割った。

 

「うあああ~~~~!!?」

 

「軍艦が一撃で……!!」

 

 軍艦が割れて、そして爆発する。少女の膂力ではありえないパワーだったが、相手は少女の皮を被った怪物であることは誰もが知っていた。

 だがそれでもなお恐ろしく感じる。ぬえはその破壊をもたらし、笑っていた。そして再び“紫鏡”で槍を増やす。

 

「これくらいで騒いでもらっちゃ困るよ~? あはは、それじゃ二投目~!!」

 

「!!? マズい!! 止めろ!!」

 

 その一撃の威力は今しがた思い知ったばかり。一撃で軍艦を破壊するような攻撃を何度も放たれてはひとたまりもない。

 

「“天叢雲剣(あまのむらくも)”」

 

「おおっと!!」

 

「! ボルサリーノ中将!!」

 

 それを止めるべく、ボルサリーノが光の剣を生み出してぬえに向かって剣を振るう。ぬえもそれに対応して槍を動かした。お互いに覇気は当然込めている──が、やはり上手なのはぬえの方だった。

 

「軍艦をぽんぽんと壊さねェでくれませんか……!! ハァ……始末書の内容に困っちまうもんで……!!」

 

()()にあったとでも書けば? 大丈夫大丈夫!! センゴクも私が相手だとしょうがないって言ってくれると思うよ!! ──だから安心して壊されていってね!!」

 

「それはそうでしょうが……かといって守らねェ訳にはいかないんでねェ……!! どうにか退いてくれんでしょうか……そうすりゃわっしらも撤退出来るんだがねェ……!!」

 

「冗談!! 海賊は舐められたら終わりだからね。わかる? ──こっちはナワバリを荒らされて子分もやられてんの。海賊なら話し合いなんかより……まず“返し“が先でしょ?」

 

「ウッ!! ……!! 困ったねェ~~……!!」

 

 ボルサリーノの腹に切り傷がつき、血が流れる。ぬえに刺され、流動回避が間に合わなかった結果だ。致命傷ではないが、徐々に戦闘に支障が出るだろう。

 

「私があなたを殺すのと、カイドウがあっちを滅ぼすのどっちが早いかな~~? まあ、出来るだけ長く楽しませてよね♡」

 

「……!!」

 

「ボルサリーノ中将!!!」

 

「チッ……!! “アイスBALL(ボール)”!!」

 

「!」

 

 ボルサリーノがキツいと見て、氷の柱を作り、そこを登ってクザンがぬえに攻撃を仕掛ける。相手を凍らせてしまう技だ。

 

「ぬえさんが凍った!!?」

 

「大丈夫なのか!!?」

 

「……!! いや、見ろ!!」

 

 その技によってぬえが凍る──が、それは一瞬だった。

 氷の中で笑っていたぬえは、そのまま力尽くで内側から氷を割って抜け出す。そうして砕けた氷の破片の1つを口に含み、噛み砕いて喜んだ。

 

「ん~~♡ 氷漬けの拷問、冷たくて気持ちいいけど~~~……生憎と彫刻になる趣味はないかなぁ♡ あ、でも今度私の彫刻作ってみない? 氷で出来たやつ!! ナワバリの冬島辺りに置きたいんだけど、どう?」

 

「バカ言いやがって……!! お前達が引き下がるなら考えてやるよ!!」

 

「残念。それは無理な相談だよね!!」

 

「……!!」

 

 クザンが氷の矛を作り、それでぬえを攻撃しようとするが、それごと槍で叩かれ、再び氷の大地へ叩きつけられる。そしてぬえが地上の一点を見て叫んだ。

 

「──こらズッコケジャック!!! クザンが相手とはいえ一対一(サシ)で戦ってる相手に逃げられるって何してんのよ!!! あんたちゃんと目ついてんの!!?」

 

「……!! すまねェ、ぬえさん……!!」

 

 地上でクザンと戦っていた筈のジャックを叱責するぬえ。中将の中でも化け物と称されるクザンが相手とはいえ、仕方ないとは言えないし言い訳は通用しない。

 ジャックの無鉄砲さ、真面目さは百獣海賊団の中でも有名だ。世間からはイカれた男だと見られているし、決して間違いではないが、それらの評価はその性格の裏返しとも言える。

 相手が格上だろうと関係なく向かっていくジャックはそれで手柄を立てることも多いが、失敗することも多い。──だから兄御や姉御達に叱責されることも多かった。

 だがその時だ。ぬえが僅かに身体を反らし、その原因となる相手を見る。

 

「まったく──私って人気者ね♡ でも可愛い女の子が頑張ってる子分にアドバイスしてる時に発砲するなんて酷いじゃない……ベン・ベックマ~ン?」

 

「──良く言うぜ……あんた、実年齢幾つなんだ? もう40年以上もその姿のままだって聞いてるぜ……」

 

「そこは正体不明~~♪ でも永遠に可愛い15歳くらいの女の子には変わりないからね♡ ──まあそれはそうと、そっちは私に構ってる場合じゃないんじゃない?」

 

「っ……!! ああ、どうやらそうみたいだ……!!」

 

 赤髪海賊団の副船長ベン・ベックマン。

 赤髪の片腕であり、頭脳派でもあるその海賊が放った銃弾を躱し、言葉を交わす。だがベックマンはぬえの言う通り、もうぬえを狙ってる場合ではなくなったと感じていた。

 その理由こそ──人型に戻った最強生物の存在だ。

 

「──カイドウが来たぞ~~~!!!」

 

「!!!」

 

 赤髪海賊団の船であるレッド・フォース号。

 その船の甲板に降り立つのは、今この海で何よりも強く恐ろしい海賊だ。

 

「──赤髪ィ……!!!」

 

「!!!?」

 

 ──仮にそこが、どこかの島の上だったとしても……カイドウが降り立ったなら起きる結果は同じだ──全て滅ぶ。

 ここまで来れば逃げることは叶わない。ここが海の上である以上、逃げるには船が必要であり……そしてたとえ逃げようとも飛ぶことの出来るカイドウはどこまで追って来る。

 

「……やるしかないみたいだな……!!」

 

「──心配するな……一瞬だ!!!」

 

 カイドウが金棒を振り上げる。

 そしてシャンクスが剣を構え、金棒を止めるために覇気を込めて鋭く叩きつけた。

 

「!!!!」

 

「!!?」

 

 その瞬間、甲板を中心に黒い雷の様な衝撃波が海と空を駆け抜け、戦場全体に響きを伝える。

 

「あ、あれは……!!」

 

「! やはり噂通りか……」

 

「……ふーん。ま、知ってたけど……カイドウの一撃を辛うじて止めれるレベルか……」

 

 そして誰もが、知っている者も知らない者もその現象に驚く。

 それはカイドウ自身もだ。だが、驚くのは金棒が止められたことではない。結局力ではカイドウが勝り、赤髪は大きく船室を貫いて叩きつけられている。

 だが立ち上がった赤髪のシャンクスに対し、カイドウは忌々しそうに告げた──その素質の名を。

 

「お前も“覇王色”か……ガキの癖に生意気な……!!!」

 

「なら潰してみろ……!!! おれ達はお前にはやられねェ……!!!」

 

 ──その言葉と共に……新世界で()()、2人の覇王が激突した。




白ひげ海賊団側→VSサカズキと王下七武海2人。別働隊はライブ会場へ向かう
白ひげ→実力は“まだ”健在。しかしそろそろ……
ボルサリーノ→レーザーでUFOを破壊しながら、ぬえと戦う。実質星蓮船EX
八茶→ナンバーズの1人。他の奴らは人間っぽいシルエットじゃないけど、1番初めに出てきたこいつが人間っぽいので若干混乱するけど、まあ能力者じゃないってことはないと思うやつ。後、巨人族よりデカイってのはデカすぎる。そりゃ人も食うわ。ロック&スコッチくらいかな?
真打ち→大体モブ。層の厚さを見せるために敢えて色々出した。ワンピでよくあるやつ。なにげにババヌキがガチのゾウゾウの実の能力者に……ん? ってことはひょっとして→ファンクフリード消失
ダウト→トンタッタにはムシムシの実がよく似合う
飛び六胞→昇格を掛けてバトル
今日のうるぺー→ぺーたんの顔面スケート。原作で出る度に愉快度があがる不具合
今日のササキ→ワノ国の歴史は教えられない
ヤソップ→ぬえちゃんとSTG。赤髪海賊団は銃使い多くてSTGしやすい
ズッコケジャック→怒られる。姉御こわい
鷹の目とキング→剣士対決。個人的に1番熱そうな戦い
カイドウとシャンクス→現四皇と未来の四皇対決。赤髪側は赤髪海賊団全員だけど
今日のぬえちゃん→カイドウと同じでほとんどの攻撃が無傷なの可愛い

こんな感じで。一応戦いは次回までで収めます。赤髪海賊団の運命や如何に(ドン!!)

感想、評価、良ければお待ちしております。
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