正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる   作:黒岩

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アイドル活動

 ──タイヨウの海賊団2代目船長“海侠のジンベエ”!! 王下七武海に!! 

 

 そのニュースは世間を驚かせた。

 4年前に聖地マリージョアを襲撃し、奴隷達を解放したタイヨウの海賊団船長フィッシャー・タイガーが死亡したのも、世間の耳にはまだ新しい。

 多くの奴隷達と魚人族が悲しんだその事件が1年前。その日からジンベエはタイガーの残したタイヨウの海賊団を率いて止むことなき戦いに明け暮れた。

 元ネプチューン軍の兵士という経歴。魚人空手と魚人柔術を操り、陸上でもさることながら……水上では敵なしとまで言われるその強さ。

 仁義に厚く、多くの魚人、人魚に好かれるその人望。厄介な魚人海賊団を率いる船長という肩書。

 それらを総合して懸けられた懸賞金は2億5000万ベリー。──だがそれでも過小評価だという声が政府内……とくに海兵から上がっている。

 王下七武海に穴が1つ空いた今、その枠に“海侠のジンベエ”が選ばれるのは当然とも言えた。

 魚人島を襲う人間、海賊が多かった時代を見てきており、今でも横行する人魚を中心とした人攫いなど、海賊嫌いな海賊であるジンベエは政府が期待した通り、王下七武海の加入を受諾。多くの海賊達はまたこの“偉大なる航路(グランドライン)”に油断のならない政府の犬が誕生したと鼻白む。

 世間からの評価はやはり畏怖が多いが、海賊である以上、政府側についたとはいえやはりまだまだ怖れる相手であることには変わりない。

 そんな中で最もそれを煙たがったのは“天竜人"だった。

 

「なぜだえ父上!! なぜ奴隷を返すんだえ!?」

 

「うむ……それがな、ジンベエという魚人が七武海になって、恩赦で魚人や人魚の奴隷は国に帰ったらしいえ」

 

「そ、そんな!! せっかく集めた奴隷がいなくなるなんて最悪だえ!!」

 

「仕方あるまい……」

 

 ──本来、天竜人は誰が七武海になろうが興味などない。どうだっていい。

 しかし七武海になればその海賊団に所属する部下は皆恩赦が与えられる。

 ジンベエはその恩赦で元奴隷の仲間達を国に帰すため、そして魚人族の地位向上のため、王下七武海に加盟し、世界政府に近づく道を選んだのだ。

 そうして魚人族の奴隷達が解放されたため、一部の天竜人はそれを遺憾に思っていた。

 だが世界政府が選んだ──五老星が絡む政府の選択を取り消すことは出来ないし、それを不満には思ったとしても何か異論を挟むことはない。

 かくして元奴隷の魚人族……タイヨウの海賊団の元奴隷達は解放された。

 そしてその中には──つい1年前に売られた者もいた。

 

「──アーロン!!」

 

「アーロンさん!!」

 

「…………」

 

 ──タイヨウの海賊団船員“ノコギリのアーロン”解放。

 その魚人族の男は1年前、百獣海賊団との戦いで捕まり、奴隷として売られた懸賞金2000万ベリーのタイヨウの海賊団船員だった。

 他の捕まった多くの船員は行方がわからなかったが、アーロンだけは天竜人に売られた。

 元仲間。同胞。アーロンを慕っていた者やそうでない者も、奴隷から解放され、ボロボロの服で歩いてくるアーロンを見て安堵し、声をあげる。

 その目は死んでいない。背中のヒレは綺麗になくなっており、船員達の顔を曇らせたが、それでも生きて戻ってきたことだけでも幸運だった。

 

「アーロン……」

 

「……七武海だってなァ……ジンベエの兄貴……」

 

「……そうじゃ」

 

 そして先頭に立ち、奴隷の仲間達を迎えに来た大柄な魚人族の男──“王下七武海”海賊“海侠のジンベエ”は心身共にボロボロの弟分を見て、さすがに言葉を迷わせる。返答はそれを認めるだけのものだ。

 だがそうするとアーロンの表情が一変する。目が赤く充血し、血管が浮き出る。怒りだ。

 ジンベエはそのまま罵られることを予想し、黙ってアーロンを見ていたが……そこにある怒り以外の反応にやはりなんとも複雑な感情を浮かばせる。

 アーロンの身体は小刻みに震えていた。そして──強く歯噛みしていた。

 

「政府の人間の……あの残虐な人間共の……政府の犬になるんだなァ!!!」

 

「……タイのお頭の言葉を忘れたかアーロン。恨みや怒りに生きるのはよせ」

 

 それでもジンベエは今は亡き兄貴分の意志を思い出させるように言葉を紡ぐ──が、それはもはやアーロンの心に響かない。

 

「ハッ……なにを寝ぼけたことを言ってやがるアニキ!! そりゃあ……迫害を受けてない次の世代への言葉じゃねェのか!!?」

 

「!」

 

 アーロンが一度は嘲笑するような顔になり、しかしすぐに激高しジンベエに言葉を浴びせる。

 その言葉にジンベエは目を見開いた。そして奥歯を強く噛みしめながら弟分の言葉を聞き続ける。

 

「おれは大アニキと()()さアニキ!!! おれは……おれは……人間の“狂気”を!!! 人間のクソみてェな醜い部分を見た!!! その仕打ちを受けてきたんだ!!! この1年間でな!!!」

 

「……!」

 

 アーロンの言葉に何も言えず、ジンベエは拳を強く握り締める。それは己への不甲斐なさ。今日この日まで弟分を救い出すことが出来なかった弱い自分への憤りが秘められていた。

 そしてアーロンもまた──この1年のことを思い出し、その痛みと苦しみを怒りに変えて言葉を発する。

 

『──さん。活きの良い鮫を中心に、幾つか仕入れてきたぜ。収めて酒のツマミにでもしてくれ』

 

『あはは!! 格安食用鮫じゃない!! ねえねえ、これって大丈夫なの~? 政府は2000万をつけたみたいだけど、政府の評価って当てにならないし……まあでもいいや。ちょっと試しに捌いてよキング』

 

『ああ』

 

『……!! やめろ……離せ……!! てめェら、こんなことしてタダで済むと──ギャアアアアアア~~~~!!!』

 

 ──人間が秘めるドス黒い獣性を見た。

 

『元魚人海賊団の奴隷だえ!! 鮫の奴隷だえ!!』

 

『面白いだろう。この間、ジョー……仲買人から面白い品があると聞いて買ってみたんだえ。しばらくはこれで奴隷の使い方を学ぶといいえ』

 

『やったえ!! 奴隷だえ!! わちきもパパがやってるみたいに奴隷で遊んでみるえ!!』

 

『ウ……ッ……!!』

 

 その地獄のような日々はアーロンという男の心に、これまで以上の怒りを植え付けるには十分だった。

 

「大アニキが殺された恨みだけじゃねェ!! おれ自身が痛みを受け苦しんだんだ!! 怒りや恨みに生きて何が悪い!!!」

 

「……! アーロン……!! 貴様……!!」

 

「悪いがアニキ!! おれは元のアーロン一味に戻らせてもらう!! 大アニキは死んだんだ……おれは同胞達と大アニキの“怒り”を継がせてもらう!!!」

 

「…………」

 

 アーロンはジンベエにそう言い──そして後に元の仲間達を連れてタイヨウの海賊団を去っていった。

 ジンベエの説得にも耳を貸さない。殴られてもアーロンはその意志を変えず、元アーロン一味の仲間達に支えられながら去っていく。

 タイヨウの海賊団は3つの派閥に分かれ、それぞれの道を行き始める。

 その中で最も人間を憎む種族主義者であるアーロンは復讐を誓う。

 

「見てろ……いずれ、必ず……おれが受けた仕打ちを奴らにも味わわせてやる……!!!」

 

 憎しみを込めてそう口にし、アーロン一味は“東の海(イーストブルー)”へ向かって舵を切っていった。

 

 

 

 

 

 ──赤い海、白い砂浜、照りつける太陽。

 そこにある物は全て、私を飾り立てる引き立て役なのだ。

 

「ん~~~……♡ 美味しい♡ おかわり!!」

 

「──はい、ぬえさん♡ どうぞ」

 

 私はその美しい夏島のビーチで膝に寝転がりながら新鮮な海の幸と美味しいお酒に舌鼓を打っていた。そんな私をパラソルの下でビーチチェアに寝転びながら、サングラス越しに見てくる水着姿のジョーカーが言う。

 

「フフ……確かに、歯ごたえがあって悪くないわ。ぺーたんにもっと仕入れて貰おうかしら♡」

 

「あァ!!? なんでてめェのためにぺーたんが動かなきゃならねェんだジョーカーおめェよォ!! ──いいか!! ぺーたんを動かしていいのはカイドウさんとぬえさんと私だけだ!! だからぺーたん!! おいどんの分もほしいでやんす~!!」

 

「──なんでだよ!! そこにあんだから自分で取ってこい!!」

 

「自分で~~~!!?」

 

 同じくマスクと帽子はしたままで水着を着たウチの真打ち、うるティとページワンが相変わらずのやり取りをしている。──すると今度はまた別の方向から別の人物が砂浜を踏みしめて声をあげた。

 

「──ええい!! そもそもなぜわらわがこんな場所まで呼び出されておるのじゃ!!」

 

「ぬえさんの呼び出しだと言った筈だよ──ハンコック」

 

「お主には聞いておらんわブラックマリア!! わらわは鬼ヶ島に、それも重要な話があるからと呼び出された筈じゃが……」

 

「あ、それはまた別の話ね。これは単に──私のバカンスというか女子会のお誘いよ♡」

 

「! またそれか……」

 

 ワインレッドとピンクのビキニを着たハンコックは同じく水着姿のブラックマリアの膝枕の上で寝転ぶ私の言葉に頭を抱える。うーん。ハンコックはあまりお気に召さないみたいだが、諦めてもいるみたいだ。一応気勢を衰えさせ、しかし言葉を続けた。

 

「……はぁ。まあそれは百歩譲ってわかるとしても……なら!! なぜ女子会なのに男がおるのじゃ!!」

 

「あァ!!? てめェジャックはともかく、ぺーたんナメてっとブチ殺すぞハンコック!! ──ぺーたんなら女装くらい余裕だ!!!」

 

「そういう問題じゃねェし、連れてきたのは姉貴が荷物持ちに来いって無理やり連れてきたからだろ!! おれだって来たくて来てんじゃねェよ!!!」

 

「…………ぺらぺらとうるせェ女だ」

 

「──なんじゃと?」

 

 ハンコックが男が来ていることに憤慨し、それにうるティとぺーたんがやはり面白いやり取りをするが……その後のジャックの発言に睨みを返す。しかも覇気で威圧していた。ジャックもそれに対して睨み返す──が、私はジャックに声を飛ばした。

 

「ちょっとジャック!! ハンコックと睨み合ってる暇があったらもっと私を撮りなさいよ!!」

 

「──すまねェ、ぬえさん。()()()

 

 と、ジャックは睨み合っていたハンコックからすぐに視線を切ると、再び首元から下げたカメラを私に向け、シャッターを切り始める。それを見て、ハンコックは腕を組み、近くにいたページワンに顔を向けた。

 

「……あれは何をしておるのじゃ、ページワン」

 

「おれに聞くな。見りゃわかんだろ……ぬえさんがウチのナワバリで出してる写真集用の写真をジャックが撮ってんだよ」

 

「……なぜジャックが……というかだからなぜこんな島に……」

 

 律儀に答えたページワンに、それを聞いたハンコックはなんとも言えない表情でそれを見ていた。

 まあ私がハンコックの疑問の続きを答えても良かったが、それより先にジョーカーのパラソルの下で椅子に腰掛け、テーブルに本を積みながらそれを一冊ずつ読んでいる仮面をつけた水着姿の彼女がその疑問に答えてくれた。

 

「──新世界、“レインボーアイランド”」

 

「! 知っておるなら答えよ、ドゥラーク」

 

 その言葉にハンコックが顔を向ける。相手はドゥラークだ。彼女も女子会の参加者である。

 

「気候は常夏の小さな島で、7つの色に変わる海が有名よ。海の幸や果物も豊富。バカンスにはうってつけね──ちなみにここは7つあるビーチの1つ、“ルビーレッドビーチ”」

 

「……ナワバリではないのか?」

 

「一応今の所はどの四皇のナワバリにも属していない。世界政府に加盟している訳でもない……新世界では珍しいかもしれないわね」

 

「……ならこの島を襲えとでも言うつもりか?」

 

 と、ハンコックが聞いてきたので私は笑って答える。両手を上げてポーズを取りながら。

 

「あはは、違う違う!! バカンスなんだから、たまには自分のナワバリ以外のところに行って遊びたいじゃない? 自分のナワバリだと旅行してる気分じゃないし……それに写真を撮るにもうってつけ!! だから今日は単純に私が遊びに来たのよ♪」

 

「……なるほど。それに付き合えということじゃな……」

 

「嫌じゃないでしょ?」

 

「……わらわがお主らと一緒にいるところを目撃されると問題になると思うが」

 

「──だから九蛇海賊団やあなたの妹達は置いて1人で来させたのよ、ぬえさんは」

 

 と言ったのはジョーカーだった。私達の仲間で、政府との二重スパイで情報を送ったり仕入れてきたりしているステューシーことジョーカーはそういった政府の面倒くさいあれこれにも詳しい。

 とはいえ王下七武海の一角を占める“海賊女帝”ボア・ハンコックが四皇の一角、百獣海賊団と繋がりがあると知れたらかなり問題になるのは誰でもわかることだ。

 もしバレたら除名されるだろう──がそれは問題ないと私は言ってあげる。

 

「大丈夫!! もしもの時は私が()()()()にしてあげるからさ!! だから一緒に楽しもうよ!! ね♡」

 

「……はぁ、相変わらずムチャクチャというか……自由じゃな……」

 

「ぬえ様が自由なのは当たり前でやんす!!」

 

 ハンコックが今度こそ諦めたように息を吐いた。ようやく楽しむ気に……なったかどうかはわからないが、受け入れはしたようだ。

 まあでも私と一緒にバカンスに来てるんだから楽しいに決まってるよね!! 

 

「──ぬえさん。規定枚数は撮り終わりました」

 

「んー、それじゃあ次の水着で撮ろっか。──小紫ちゃーん、水着持ってきてー」

 

「……わかりました」

 

 ジャックがカメラから顔を離してそう報告してきたので、私は次の水着を着るために新入りの可愛い子を呼びつける。

 その子がウチに入ってまだ2年。そろそろ環境には慣れてきたかな? という感じだ。

 

『百獣海賊団“見習い”小紫』

 

「いっぱいありますが……どれでしょう」

 

「ん~……じゃあそっちのフリフリの奴で!!」

 

「……はい」

 

 私がフリフリの黒と赤のビキニ──可愛い私にピッタリな水着を指差して選ぶと、薄紫色の水着を着た小紫ちゃんがきちんと持ってきてくれるので、私はそれを着る。さっきまでの水着は逆に渡して荷物の中に戻して貰った。

 

「……よく平常心でいられるな……ジャックの奴……」

 

「確かに。ぬえ様の水着姿をカメラで撮るなんて興奮してもおかしくないでやんす!!」

 

「そっちじゃねェよ……」

 

 なんかページワンとうるティが再び冷静にカメラを構え始めたジャックを訝しむが、ジャックは真面目だからね。教えたことは何でも真面目に学ぶし、やれと言えば何でも真面目にこなそうとする。融通がきかないところはあるし、目的達成のために手段を選ばないところはあるけど、それも私やカイドウ、ひいては百獣海賊団の利益のためだ。ちょっと破壊が好きだけど、ツルハシを持てばドリルでも使ってるんじゃないかってレベルで採掘作業が出来るし、私のライブの裏方やアイドル活動のセッティング、マネジメントも結構出来る。カメラの扱いも出来るし、最近では九里の元締めとしての業務もやらせてるけどそれもそつなくこなしてる万能な子なのだ。──まあそれでもちょいちょい何か失敗をしてキングやクイーンには怒られてるけど。

 

「……そなたは相変わらず釣りか……」

 

「あァ? いいだろ別に。好きでやってんだから放っとけ」

 

「そうでやんす!! ぺーたんは無類の釣り好き!! 釣りをさせれば百獣海賊団一!! こんな浅瀬でもマグロだろうがサメだろうが何でも釣れるでやんす!!」

 

「無茶振りやめろや!! ──お、何かかかったな……」

 

 ページワンとうるティ、そしてハンコックが浅瀬で釣り糸を軽く飛ばして釣りをするページワンを見て色々話している。ハンコックも思ったより馴染んでるのかな? まあ数年前は一緒に修行してた仲だしね。

 そしてぺーたんはまた何か釣れそうだが……んー? 珍しく苦戦してる。それに、なんかこの気配は……。

 

「! ……結構重いな……」

 

「大丈夫でやんすかぺーたん!! 応援するでやんすよ!! ──ぺーたん頑張れ♡ 頑張れ♡ 負けるなぺーたん♡ ファイト、オー!!」

 

「気が散るからやめてくれ姉貴!! く……だがこのおれに釣れねェ魚はねェ……!! 鯨だろうが海王類だろうが引き上げてやるぜ……!!」

 

「テンションが上がったわ」

 

「建築の時のあなたと同じよ」

 

 ブラックマリアの言うように、ぺーたんのテンションが上がってきてる。その発言にジョーカーが緩くツッコミを入れたが、まあ皆好きなことをしてる時はそりゃテンション上がるのもしょうがない。──それに確かになんか大物の気配がするし。

 

「随分と引っ張ってくれるじゃねェか……だがその足掻きもここまでだ!! ──オラァァ!!!」

 

「!」

 

「え……」

 

「これは……」

 

 ──ページワンが竿を思い切り引き上げたその瞬間。水飛沫と共にその長いシルエットが露わになる。

 長い尾びれと上体は人のもの。青い髪色をした上半身だけスタイルの良いその姿は……。

 

「──人魚!!?」

 

「すごいでやんすぺーたん!! 人魚!! 人魚が釣れたでやんすよ!!」

 

「──ハァ……まさか釣り上げられてしまうとは……面倒過ぎる……死にたい……」

 

「え? 本当に人魚!? ──人魚じゃん!!」

 

 私もちょっと驚いてしまう。大物がいるなーとは思ったが、まさか本当に人魚だとは思わなかったし、人魚が釣れるとも思わなかった。

 その色々と大きくて若い女の人魚はなんだか気だるそうで、ジトッとした目でこちらを見て、溜息をついた。

 

『リュウグウノツカイの人魚 ソノ(元公務員 現在無職)』

 

「人魚かどうかと聞かれれば……まあそうですが。それを答えるのも面倒ですね……私はソノ。リュウグウノツカイの人魚です……」

 

「いや答えてんじゃねェか……」

 

「なぜ人魚がこんなところに……」

 

 ページワンがツッコミを入れ、ハンコックが純粋な疑問を口にする。そしてそれにはジョーカーとドゥラークが答えた。

 

「何も魚人や人魚は魚人島にだけ生息しているという訳ではないわ。世界中どこにでもいる。……とはいえ、珍しいことには変わりないわ」

 

「特に人魚は人攫いに狙われてることも多い。魚人島以外ではあまり見られないのは確かよ」

 

「はぁ……多分そうなんじゃないですか」

 

「自分のことなのになんで曖昧なんだよ!!」

 

「私は元々魚人島の人魚でしたが、仕事に嫌気が差して仕事を辞職し、新世界の海で気ままに暮らしている人魚です」

 

「結局答えるなら最初から言え!!」

 

「はぁ……答えてもめんどくさい……」

 

「随分とダウナーな人魚じゃな……」

 

 確かに。なんだか個性的な人魚だった。というか人間に釣られたのに逃げようとしない辺り、危機感がないのか……それともなんか諦めてるのか、それとも自分で言うように面倒なのか。

 その人魚、ソノは私達を見て、話を変えるようにこう言った。

 

「ところで……そちらのお刺身、美味しそうですね。良ければ少し貰っても?」

 

「あァ? 人魚って魚は友達だから食わねェ筈だろ?」

 

「普通はそうですが……空腹の時は何でも食べるものです。いや元々私は魚を食べてましたが」

 

「じゃあ前半の理由いらねェじゃねェか……」

 

「ぬえさん、どうします?」

 

「面白いからいいよー!! もてなしてあげて」

 

 お腹が空いてるから刺し身をくれとかいう人魚らしからぬことを言ってきたソノの頼みを、ブラックマリアがどうするかと私に問う。そのどうするかには、捕まえて売り捌くかどうかの問いも含まれていたが、私は面白そうだから食べ物をあげるように指示する。捕まえて売り捌いてもいいけど、私個人としては面白ければどっちでもいいのだ。人魚で得られる金なんて私的には端金だしね。面白さには代えられない。

 ということで小紫が私に出していたお刺身と同じ刺し身を差し上げる。それをソノは口に運んでいくが、

 

「ああ……ありがとうございます……最近なにも食べていなくて……ええ、まあ私が悪いんですが……」

 

「なんだ? 人攫いにでも捕まって逃げてきたのか?」

 

「あ、質問タイムは1人1回。短めでお願いします」

 

「……なら今の質問に答えやがれ」

 

「捕まって逃げてきました。──それでは質問タイム終了ということで」

 

「おい!!」

 

「あはは!! 面白い子だね!!」

 

 私は思わず笑ってしまう。ページワンが若干怒ってたが、私がもてなせと言った手前、誰も手は出せないからね。ジョーカーやブラックマリア、ドゥラークもゆったりとそれを見てるし、ジャックも無言で控えている。

 

「……この島に住んでおるのか?」

 

「ええ……この島の人達はとても親切で……どうにか不労所得で楽に生きることを目論み、しかし世の中思ったよりも厳しく、腹を空かせていた脱サラ無職人魚の私も温かく迎えてくれました……この島の人には恩と感謝があります……」

 

「それでこの島で働きながら暮らしているということね」

 

「──いえ、タダ飯を食らうことに味をしめた私は無職のまま、この島の人のお世話になっていました……」

 

「いや、そこは働けよ……」

 

「厚顔無恥な人魚じゃな……」

 

 ドゥラークの働いて暮らしてるのかという質問に答えたソノにページワンやハンコックが呆れ顔になってツッコむ。私は面白くていいと思うけどね。自分の欲望に素直なのは良いことだ。

 

「ですが最近になって…………」

 

「……あ? なんだってんだ急に話すのやめやがって……」

 

「いえ、口が疲れてきたので話すのをやめただけです。はぁ……刺し身が美味しい」

 

「さっさと話せ!!!」

 

「という訳で、今この島は海賊に占拠されているのです」

 

「何がという訳なんだ!! フザケやがって……」

 

「あァ!? ぬえ様がバカンスしてる島に海賊だとォ!!? どこのどいつだ!! シバキ殺してやる!!!」

 

 ページワンとうるティがそれぞれ別の怒りを見せる。……でもまあ私はその説明に納得だった。

 

「あー、だから島の反対側で声が騒がしいのね~」

 

「ぬえさん、気づいていらしたので?」

 

「後で街の方にも行くつもりだったから何かあるならその時にでも確認しよっかなーとは思ってたけどね。メチャクチャ弱そうだし海賊だとは思わなかったけどさ」

 

「ああ……声ということは見聞色の覇気をお持ちなのですね。薄々気づいてはいましたが、相当な強者の様ですし……どうでしょう。ついでにこの島を救っていただくというのは……」

 

「あァ!!? 舐めてんのかてめェ!! あんまりフザケてっとおれ達がこの島滅ぼすぞ!!!」

 

「……ぬえさん。どうする?」

 

 ページワンがその頼みにキレて凄んでみせる。ジャックはそれを聞いて、どうするのかと私に伺いを立ててきた。

 言うまでもなく、私達はこういう時、そのまま島を支配したり、この人魚を捕まえてメチャクチャにしたりする。実際私が言えば一瞬でこの島は地獄に変わるだろう。その海賊とやらも死ぬけど、一緒に島の人も死ぬ。

 まあそれでも良いっちゃ良いんだけど……私は笑顔で言ってあげた。

 

「いいよ!! 助けてあげる!!」

 

「本当ですか? 感謝します。お礼は必ず……多分……おそらく……きっと……気分が向けばしますので……」

 

「しろよ!! そこは!! ──ぬえさん!! こんな奴の頼みを聞く必要は……」

 

「あはは、いいよいいよ。まあ普段なら強制的にお礼を出させたり、もしくは頼みなんて聞かずに色々するところだけど──」

 

 そう、普通ならそうするかもしれないが……今日はそういう気分ではないし、何よりだ。

 

「──今日の私はアイドルだからね♡」

 

「!」

 

 そう言って、私は立ち上がり、島の反対側。その海賊がいるところに皆を連れて行った。──それじゃ、人助けへレッツゴー!! 

 

 

 

 

 

 ──新世界“レインボーアイランド”

 

 7つあるビーチの内、緑の海が特徴的な“エメラルドグリーンビーチ”。

 その浜辺に、一隻の海賊船と海賊達。そしてこの島の住民が集められていた。

 

「や……やめてください……!!」

 

「ウ……く、くそ……」

 

「え~ん!! パパ~~!!」

 

 住民達が寄り添い合い、海賊達に恐怖する。

 大人の中には海賊に痛めつけられて倒れる者もおり、子供はそれを見て泣き叫ぶ。

 だが海賊達はやめはしない。ここは新世界。力無き者に自由などない。

 

「──うるせェ!!! お前らのせいでせっかく見つけた人魚に逃げられた……その鬱憤を晴らさねェと気が済まねェんだよ!!!」

 

「うぐ……!!」

 

 海賊は倒れた住民を腹いせに蹴り上げる。この海賊団の船長である彼は、せっかく見つけた人魚を逃したことにご立腹だった。

 

「ダメです船長!! やはり人魚の影も形もありません!!」

 

「そりゃあそうだ……人魚の遊泳速度は世界一……!! 一度海に逃げた人魚を捕まえることなんて出来やしねェ……だからおれは怒ってんだよ!!!」

 

「がはっ……!!」

 

 その大柄な男は再び別の住人を踏みつけ、そして浜辺に立てられた椅子にドカッと座り込んだ。部下達が周りについており、武器を持って住民達を囲んでもいる。

 

「船長。こいつらどうします?」

 

「ああ……痛めつけた後で働かせてやるさ……!! この島をナワバリにする……!! 勢力を拡大するには地盤が必要だからな……!!」

 

『テキサス海賊団船長ホールデム 懸賞金7600万ベリー』

 

 その海賊は住民達の前ではっきりとそう口にした。海賊の中でも過激な連中なのだろう。人を痛めつけることに一切の躊躇がない。

 住民達はそれに怯えた。そして絶望する。危険な海賊に支配された島に未来はない。

 

「ソノは逃したが……おれ達は一体どうなるんだ……」

 

「大丈夫だ……しばらくは従おう……そのうち助けが来る」

 

 彼らは──この島は以前まではとある海賊のナワバリであったが、その海賊団はなくなり、誰のナワバリでもなくなった空白地帯。

 新世界の島はいずれかの四皇か大海賊の旗を借り、それで安全を得るのが常識。世界政府加盟国であれば海軍が守ってくれもするが、そのどちらもないのであれば自分達の身は自分達で守るしかない。

 だが一般人が新世界までやってくるような海賊に勝てる筈もなかった。子供達にも言い聞かせ、誰も逆らわないように告げる。これ以上犠牲者を出さないために。

 

「──パパ!!」

 

「あ?」

 

「!! 待て!!」

 

 だが──そんな中、父親が血塗れで倒れるのを見て駆け寄る少女が出てきてしまう。

 それにホールデムは目をつけた。守ろうとした大人や、その父親を部下に抑えさせ、自身はその少女の首を掴んで持ち上げる。

 

「良い度胸だなガキ……だけどなァ……度胸だけじゃ人は救えねェし何も出来やしねェ!!! 力がねェ雑魚は強い奴に従っときゃいいんだよ!! ガハハハハ!!」

 

「うっ……あっ……!!」

 

「やめ……ろ……やめてくれ……!!」

 

 子供の首を締め、父親を踏みつけるホールデムはまさに暴君。この島にやってきた最悪の略奪者だ。

 新世界では力無き者は死ぬ。生きるには強者に従うしかない。どんなに屈辱的な目に遭おうが、大事な者を壊され、傷つけられようが生きるには我慢するしかない。

 それは誰もが納得する価値観だった。

 だが……ホールデムは未だそれを知らなかった。

 

「──やってるやってる~♪ 結構()()()()やってるね~♪」

 

「あ? ──って、うお!!?」

 

 ホールデムは突然の声に振り向くと、街に続く道から複数人の人影を見た。

 

「あら、思ったより少ないわね」

 

「ざっと100人ちょっとってところだねぇ……」

 

「雑魚ばっかりで歯ごたえがなさそうでやんす」

 

「さっさとやっちまうか。それとも生け捕りか?」

 

「……従うなら殺さねェ。だが、逆らうなら全員消せばいい……いつも通りだ」

 

「ふん……下品な男共ばかりじゃな……」

 

「片付けるだけなら誰か1人だけでも済みそうね……」

 

「…………」

 

 それは──殆どが女……それも水着姿の美女の集団だった。

 

「ウオォ~~!!? すげェ、良い女ばっかりだ!!」

 

「うひょ~~!! たまんねェ~~♡」

 

「この島にあんだけの美女がいたってのかァ!!?」

 

「つーか1人でけェぞ!!? 巨人族か!!?」

 

 そして海賊達はその美女集団の登場に色めき立つ。ホールデムも同様だった。

 

「なんだってんだこの美女共は!! 最高じゃねェか!! オイ!! こっちに来いよ!! 特別扱いしてやる!!」

 

「あら、私達を侍らせるつもり?」

 

「目が曇っていらっしゃるようで……」

 

「どうするのじゃ?」

 

 美女達が立ち止まり、とある少女に声を掛けている。その少女は前に出てくるとホールデムに向かって声を掛けた。

 

「まあ目を奪われるのは仕方ないことよね♡ でも生憎とそんな安い女じゃないの。私がここに来たのはちょっとしたアイドル活動とそのための人助けよ。まあ大人しく頭を垂れるって言うなら許してあげても──」

 

「──あァ? なんだ()()()()()。お前はお呼びじゃねェんだよ!! どっか行ってろ!!!」

 

「──は?」

 

「!!?」

 

 ──ホールデムがそう口にしたその瞬間……その場の空気が完全に凍った。

 ホールデムを含め、海賊達も、住民も……そして部下のジャックやページワンですら冷や汗をかいて怖れる。

 その圧倒的な威圧感に、ホールデムは地雷を踏んだことに気づく──が彼にとっての不幸は、美女達に目がいってその顔ぶれに気づかなかったこと。

 そしてその目の前の少女が、かの四皇の兄姉分にして懸賞金30億を超える大海賊であると気づかなかったことだ。

 加えて、その発言はその少女だけでなく、他の女性陣のほぼ全員を怒らせてもいた。それらを総合して、ページワンは思う──あ、こいつら死んだわ……と。

 

 

 

 

 

「──ねぇねぇ? もう一度言ってみてよ♡ ほら、誰がガキだって? 雑魚海賊風情が……私になんて言ったのかもっかい言ってみて♡」

 

「ギャアアア~~~……!!? う、グ……あ……ァ……ず、ずびばぜ……アガァ~~……!!」

 

 ──戦いは起こらなかった。

 なぜならあまりにも両者の実力に開きがあったから。

 島の住民を恐れさせたホールデムとその部下達は砂浜に血だるまで倒れ、悲鳴と呻き声を上げる機械となっている。

 足の裏を真っ赤に染め、ホールデムの大柄な身体を踏み潰すぬえは少女のような可愛い笑顔で問う。その力は万力に等しい。やろうと思えば頭をトマトのように踏み潰し、身体を粉々にしてしまえるだろう。

 そのことを理解したホールデムは砕けた歯や全身の痛みを無視して必死に声を出す。

 

「ぬ……ぬえざバは……ぜ、かいいち……かわいイ……でず……!!」

 

「聞こえないなぁ~? もっと大きな声で1000回。心を込めて言ったら許してあげる♡ もし言えなかったら……ふふふ♡ それはその時のお楽しみ~♡」

 

「……!! い゛いいばず……!! ぬ……ぬえざまはァ……!! せ、がいいち……かわいい……!!!」

 

「いいよいいよその調子~!! ──ほらあなた達も」

 

「ウ……あァ……」

 

「おいこらウルトラクソ野郎共!! ぬえ様が言えっつってんだろ!! 頭蓋骨カチ割るぞ!! さっさと言いやがれ!!」

 

「あらあら、せっかくの白い砂浜が台無しね」

 

「ぬえさんを侮辱したのだから当然の報いね」

 

「弱者には何をしても許される……そう! なぜならわらわは強く、美しいから!!」

 

 百獣海賊団の女性幹部達がテキサス海賊団に拷問をして、死体は彼らの船に投げ入れていく。生きてる者も同じだ。ぬえへの謝罪の世界一可愛い宣言を言い切れば、ようやく許され、彼らは百獣海賊団に入ることが出来る。入らないという選択肢もあるが、その恐ろしさを思い知っている最中の彼らがそれを選ぶ筈もなかった。

 助けられた住民は怯えつつ、しかしどうしていいか分からずに立ち尽くしていた。

 

「……なんともまあ……強いとは思いましたがここまでとは……」

 

「! ソノか!? もしかして、助けを呼んで来てくれて……」

 

「ええ、はい一応……本当に助かったかどうかはまだわかりませんが……」

 

 と、海の中から現れたのはリュウグウノツカイの人魚、ソノだ。住民達と会話し、助けられたことに一応安堵しながら、しかし若干憂いてもいる。

 ここまで強く残虐な彼らが何もせずにここを立ち去るのだろうか──そんな疑念が渦巻いていた。

 だが……。

 

「……あの……」

 

「ん?」

 

「あ、おい……!!」

 

「またあの子……!!」

 

 ホールデムを踏みつけ、可愛いを連呼させる褒美を上げているぬえに、先程ホールデムに首を絞められた少女が近づき、声を掛ける。

 そのある種、命知らずとも言える行為に住民は焦る。

 だが近づけもしない。黙って固唾を呑む中、ぬえは少女に反応し、少女と目を合わせた。

 

「どうしたの? サイン? もしかして私のファンになっちゃったかな?」

 

「……パパを助けてくれてありがとう」

 

「! あはは!! お礼言ってくれるの? ありがとね~♪」

 

 ぬえはその少女の頭を撫でて笑顔を向ける。住民達はそれに困惑した。相手を痛めつけてはいるが、その行為は普通の少女の様でもある。

 もしかして良い人なのかと思ってしまう。相手は海賊だが、中にはそういう相手もいることは新世界に住む彼らは知っていた。

 そこでようやく、大人達も動き始める。

 

「……私も、島の者を代表して感謝を申し上げる」

 

「あら、島の代表か何か? いいよいいよ。今日は私のアイドル活動に来ただけだし、ただの気まぐれだからね~♡」

 

「……それでも感謝させてくれ。……それで、お礼を差し上げたいと思うのだが……」

 

 と、この島の代表である壮年の村長がそう切り出す。

 だがぬえはそれに対して口端を歪めてその考えを言い当てた。

 

「──無償の人助けが不安? 私達がこの島をメチャクチャにするんじゃないかって怯えてる?」

 

「! い、いや……そういう訳では……ただ助けてもらったのに何の謝礼もないのも……」

 

「あはは、気持ちはありがたいんだけど──せっかく気まぐれで人助けしてあげるんだから素直に受け取ってくれる? 謝礼とか言い出したら普通の金や物じゃ済まなくなっちゃうよ?」

 

「……!!」

 

 その言葉に村長は全身から汗を一気に噴き出すような感覚を得る。

 一瞬、目が鋭くなった。そしてその言葉が意味するところは──取引を一度でもすれば、彼女達も海賊として対応するということ。

 謝礼を渡すということは、それは海賊にアガリを納めているに等しいもの。一度そうなれば、きっと彼女達は容赦をしない。この島を正式に支配して、毎月のようにアガリを納めさせるだろう。

 ぬえの言葉は、今はそうなっていないのだから素直に助けられておけと言うものだ。

 ぬえの気持ちで言うなら、人助けがしたい時にそうじゃない海賊としての取引をするのはせっかくの人助けの快感が狭まるため、嫌だ──言ってしまえばそれだけのこと。

 ぬえは自分に正直で自由だった。人助けもまた、たまにやってみれば面白いと知っているからやってみて楽しんでいるだけ。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 

「ん~……さて、こいつら詰め込んでそろそろバカンスに戻ろっかなー。あ、島のお店とかビーチは使わせてもらうけどそれはよろしくね♡」

 

「! あ、ああ……わかった。すぐに営業も再開させる。少し待ってほしい」

 

「全然急がなくていいよ~♡ それじゃあね♡ ──ジャック~」

 

「──はっ!!」

 

「ぐエ……!!?」

 

 ぬえがホールデムを掴んでジャックに向かって無造作に投げる。ジャックがそれをキャッチしてそのまま運ぶと、他の部下達にも命令を出した。

 

「それじゃ今度は別のビーチでも見に行こっか!!」

 

 遊びに来ただけという体を崩さず、ぬえは部下達を引き連れて数日掛けて島を観光する。水着姿で写真を撮り、最後にライブを行い、TDを売ったぬえは島の住民に恐る恐るも受け入れられ、ファンを増やした。

 

 ──そしてある程度楽しみ終わった後の帰りの航海のこと。

 

「──私を百獣海賊団に入れてください」

 

「いいよ~。人魚の船員とか結構役に立ちそうだしね!!」

 

「ありがとうございます。私も不労所得の……いえ、四皇の一味で楽したいなどとはこれっぽっちも思ってはおりません。楽そうだからではなくて──そう……まあ……ああ、面倒になってきたのでこの辺りでやめときます」

 

「取り繕えよ!! 最後まで!!」

 

「ぬ、ぬえさまは……ぜ、せかいいぢ……かわいい……ゼェ……ハァ……ぬえさまは……せかいいち……かわいい……!!」

 

 ──地味に新たな戦力を増やし、ぬえはアイドル活動とバカンスを終えて鬼ヶ島に帰った。




ジンベエ→七武海に。アーロンや同胞を助けられなかった負い目が若干ある
アーロン→ヒレがなくなった食用魚介類
百獣海賊団女子会→見てる分には良いけど、怖いし戦力がヤバい
小紫→海賊見習い。後1、2年で見習い卒業するかも。今回は見せられなかったけど、色々変化があります
ぺーたん→被害者その1。荷物持ち兼ツッコミ
ジャック→被害者その2。荷物持ち兼カメラマン
ホールデム→地味に登場。地雷を踏んで拷問もとい調教された
ソノ→ゲストキャラ。モデルはサタデーナイトフィーバーな人。名前は例によってトランプゲームの名前から。ゲストキャラだけど、百獣海賊団入りしたので、他の真打ちモブとかダウトみたいな感じでちょいちょい出てくるかもしれない
ぬえちゃん→気まぐれで人助けをするぬえちゃんは今日も可愛い!! 水着写真集は一冊1万ベリーです。ちなみにTDは音貝(トーンダイアル)のことなので誤字報告でCDにするのはやめてください。ワンピ世界にCDはありません

アニメっぽいオリジナル日常回でした。ぬえちゃんのアイドル活動はこれからも続く。次回は原作10年前なのでそろそろまた鳥野郎が出そうだし、そろそろ侍虐めがまた始まりそうです。

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