今回はオリジナルの話と早坂と鷺宮コンビが苦労する話。
また実施してるアンケートを参考にして、読み易さを重視して書いてみました。
アンケートは今月いっぱい行うので宜しければ投票をお願いします。
「おはようございます~。鷺宮さん、相変わらず早いですねぇ」
「おはよう。そうでもないよ。それと今日、白銀くんは欠席するそうよ」
「え?あの会長が欠席って珍しいですね。何かあったんですか?」
「風邪を患ったみたい。声が枯れていたし、熱もあるって電話で聞いたのよ」
朝の生徒会室に顔を見せた藤原。既に来ていた鷺宮は挨拶を返した後、白銀の事を藤原に伝えた。何故、鷺宮がその事を知っているのか。それは朝、本人から休むと連絡を受けたからである。そういう事情もあり、今日は朝早く登校した鷺宮は本日の活動業務を確認していた。
「ああ。だから早く来たんですね。あれ?確か、今日は部活連の会合ですよね。代理は誰がするんですか?言っときますけど、私は嫌ですよ! 一度、同席した事がありますけど、凄い威圧感を感じて生きた心地がしませんでしたからね」
「う~ん。立場で言えば、四宮さんの役目なんだけど。今回は私が名代で会合に出席するよ。四宮さんには他の業務に関する指示を任せるつもり」
「成程。確かに指示を出す人も必要ですからね」
鷺宮の意見に藤原も賛成だった。四宮なら部活連の会合でも相手の威圧に負けることなく、済ませる事が出来るだろう。しかし、そうなると他の業務が滞る可能性もある。そうならない様に指示を出す者は四宮が適任と鷺宮は考えていた。
「こんにちは。遅くなってごめんなさい」
「あ、丁度いい所に来た。四宮さん。実はお願いしたい事があるのよ」
噂をすれば影。タイミングよく現れたかぐやに鷺宮は、白銀が欠席した事と藤原と話して決めた事を伝えた。
「事情は分かりました。確かに鷺宮さんが言う様に業務の指揮は私が取った方がいいですね。だけど、大丈夫ですか? 部活連の人達を相手にするのは想像以上に大変ですよ」
「大変だろうけど、やるしかないでしょ。本来ならこの会合って、庶務の仕事でもあるんだよね。普段は白銀くんがやってくれてるけどさ」
「ああ。会長は役員に負担を掛けたくないと仰ってますからね。思えば私達も少し会長に甘えていたのかもしれません」
「そうですね。だから、無理して風邪を患った訳ですし……」
知らない内に白銀に頼りきっていた。それを思い知った鷺宮達は反省する。
「だから今回は私達でやりましょう。私と藤原さん。それと石上くんで書類等の業務。鷺宮さんは部活連の会合を頼みます。部活連の人達が家柄を盾に無理難題を吹っかけて来た場合、こう言って下さい」
「分かった。いざとなったら使わせてもらうわね」
「はい。遠慮なく使って下さい。まあ、出来れば使う事が無ければいいのだけれど…。多分、使う事になると思いますから」
かぐやは鷺宮にある対抗手段を授けた。当の本人は使う機会が無い事を願っていたが、十中八九使う場面が来ると予感していた。無論、それは鷺宮も同じだ。いざという時は頼りになるだろうが、後先を考えるなら使わず己の力で乗り切りたい所だ。
そして放課後。白銀を除く役員が生徒会室に揃った所で活動を開始した。朝の話し合いで決めた通り、かぐやの指示で藤原と石上は書類整理。鷺宮は予算案の書類を手に会合場所へ向かった。
「こんにちは。今回は白銀会長の代理を務める鷺宮です。予算案が出来たので報告に来ました」
鷺宮が会合場所に訪れると、参加する部長達が既に揃っていた。参加者は剣道部の鮫島健吾、天文部の龍珠桃、オカルト部の前川早苗、ボランティア部の柏木渚、陸上部の藤堂壮介、サハ部のガルダンディア・サハードの6名であった。本来、全ての部長達も参加するのが決まりであるが…。この場にいる6人を恐れていつの間にか参加する事は無くなっていた。無論、参加しなくても予算は振り分けられる為。別に問題は無いので生徒会も特に言及はしなかった。
「代理?白銀はどうしたんだ? 今日はあいつが来ると聞いていたが……」
「会長は風邪で欠席です」
「四宮はどうした? 白銀が休みならあいつが来るんじゃないのか?」
「四宮さんは他の業務の指揮を取っているんですよ。そういう事は慣れてる人が良いと話し合いで決めた事です」
「成程な。それじゃあ、始めるとするか。生徒会で作った予算案を見せてくれ」
最初に口を開いたのは鮫島。続いて龍珠が事情を尋ねて来た。それに鷺宮は相手の顔を見据えて返答を返す。正直、怖いと思っているが代理という理由で舐めらない為である。これが幸いしたのだろう。当初、軽んじた態度を見せていた部活連の連中も態度を改めて話を聞く姿勢を見せた。
「これが生徒会で考えた予算案です。何か意見はありますか?」
「質問、良いかしら? 今回、オカルト部の予算が前回より少ないけど。これはどうしてなの?」
予算表を配り意見を募る鷺宮に前川が手を上げて質問を投げかける。どうやら予算額に不満がある様だ。それは前川の表情にも現れている。やはり来たと鷺宮はこの展開を予想していた。
「それはオカルト部の活動を顧みての結論です。大会や他校の試合で結果を出している運動部と比較して、文化部の予算を下げると決めました。予算表に記載されてる通り。全ての文化部が対象です」
「生徒会の言い分は分かるけど、何とかならない?」
「難しいですね。茶道部や書道部の様にコンクールの出場等で目に見える結果が出せるのであれば、予算が増える可能性もありますよ」
鷺宮の返答に理解は示す前川だが、未だに納得出来ないのか食い付いてくる。鷺宮も個人的に力になりたいと思うものの。こればかりはどうしようもない。現状は無理だとはっきり言われた事で諦めたのか。前川は大人しく引き下がった。他に意見はあるかと鷺宮は尋ねるが、全員は特に何も言う事は無かった。
その後、部活の内情や活動方針等を話し合い。何事も無く、部活連の会合は終了した。
「それでは今回の会合はこれで終わります。皆さんお疲れ様でした」
「ああ。君もな。それと前から思っている事だが、他の部長達は何故出席しないんだ? この事を生徒会は何もしないのはどうかと思うぞ」
終了の挨拶の後、鮫島はある疑問をぶつけてきた。それは他の部長達が会合に参加しない事である。この問題は生徒会も悩んでいた。実の所、解決する事は容易い。しかし、その原因を伝えるべきか鷺宮は迷っていたが、思い切って打ち明ける事に決めた。
「鮫島くんの言う問題。解決案は在りますよ。只、原因は皆さんにあるんですよ」
「僕達が原因? その言い方は聞き捨てならないね」
鷺宮の発言に藤堂が反応した。本人は先程の発言が些か気に障ったのだろう。彼は眉を顰めてこちらを睨みつけてくる。
「今のですよ。それが他の部長達が参加しない理由です。単純に皆さんを怖がっているんですよ」
「とんだ言いがかりだな。別に俺達は何もしていないぞ」
「言葉が適切ではなかったですね。皆さんというより、皆さんの家柄を恐れています。以前、ある生徒を処断した事を覚えていますか? あの出来事はされて然るべきでしたけど、家柄が齎す力がどれ程なのかを知らしめる形になってしまったんです。無論、皆さんが無暗に家の威光を翳すとは思ってません。だけど、秀知院では家柄が物を言うヒエラルキーが存在するもの事実です。それが意図せず部活にも反映されているんですよ」
鷺宮の言葉に全員は無言になった。この場にいるのは警視総監の息子や自衛隊の息子に始まり、日本全国の宗教を纏める会長の娘や日本財団の孫。果てに暴力団の娘に他国の王子と家柄は様々である。勿論、彼らは威光を盾に傲慢な振舞いをする事はしない。されど、下手をしたらまともに生活出来ない環境に追いやられるのでは?と恐怖を与えるには十分すぎる肩書きなのである。
「あの出来事があってから、噂に尾びれ背びれが付いてますからね。逆らったらどん底に落とされると思い込んでいる人が殆どなんですよ。だから、皆さんから歩み寄って下さい。この事は生徒会だけでは解決が難しいんです。どうか力を貸して下さい」
部活連の人達と対立する可能性があると、伏せてきた事情を鷺宮は全て話した。その上で彼らに頭を下げて協力を申し出た。これが吉と出るか凶と出るか。それは鷺宮も分からない。最悪の場合、かぐやに聞いた手段を使う必要もあるだろう。それは四宮家に寄る秀知院への寄付金の全面停止。相手を確実に黙らせるが、強い確執を生む事になるのは明白である。
「事情は理解した。まさか裏でそんな事が起きていたとはな。これは俺達にも責任がある。そういう事ならば、俺達も手を貸そう。よく打ち明けてくれたな」
「そうね。確かに私達の家柄が相手を追い詰めていたなんて全然知らなかった。文化部の部長達には、私達から話しておくわ。安心して頂戴」
「しゃーねえな。面倒だけど、うちも協力してやるよ」
「私も手を貸すわ」
鮫島を筆頭に他の部長達も協力する事に同意してくれた。これで問題は解決するだろう。鷺宮は再び頭を下げて礼を述べた。
「ただいま。こっちは無事終わったよ。そっちの方はどう?」
「おかえりなさい~。丁度、こっちも本日の活動が終わった所ですよ。はぁ疲れましたぁ」
「藤原先輩は判を押すのと書類整理だけしかやってないじゃないですか。僕と四宮先輩の方が疲れましたよ」
「お疲れ様です。会合で何か言われましたか?」
「そうだ。皆に言っておく事があるのよ」
鷺宮は部活連の会合での出来事を話した。藤原と石上は驚いていたが、かぐやは冷静に鷺宮の話を聞いていた。
「成程。それなら一つの問題が片付いた訳ですか。しかし、あの場でよく言えましたね。鷺宮さんにそんな度胸があるとは知りませんでした」
「私だって、そう思うよ。でもさ。そういう考えが問題を複雑にしてたんだよねぇ。いざ話せば、皆分かってくれたもの」
「そうみたいですね。あと…私が教えた手段ですが…。使ったんですか?」
かぐやはか細い声で例の事を尋ねた。あの時は鷺宮を思っての事だったが、思い返せば過剰な手段だと理解している。もし使ったとすれば、確実に生徒会と部活連の溝が生まれてしまう。そうなれば、結局の所、白銀の首を絞める結果になりかねない。
「ううん。その必要は無かった。だから安心してよ」
「それは何よりです。実は不安で溜まりませんでした」
「一体、四宮先輩と鷺宮先輩は何の話をしてるんですか?」
「何でもないわ。こっちの話。さあ、業務が終わった事だし。これで解散しよう」
「そうですね。皆さん、今日はお疲れ様でした」
半ば強引に鷺宮は話を打ち切り、かぐやが解散の号令をかける。腑に落ちない思いを石上と藤原は抱くが、かぐやの笑顔に恐怖を感じて聞かない方が良いと判断した。
【本日の勝敗 問題を一つ解決した生徒会の勝利】
秀知院を出た鷺宮はその足で白銀の家に向かっていた。理由はお見舞いのついでに本日の事を報告する為である。報告に関してはメールか電話で済ませようと考えていたが、どうせ見舞いに行くのなら口頭で伝えた方が早いと判断しての事だ。
近くのコンビニで消化に優しい果物の缶詰。経口保水液を購入して白銀の家に訪れた。彼の家は小さいアパートで呼び鈴はあるが、壊れているのか押しても音は鳴らない。仕方無く、鷺宮は戸をノックして来訪を知らせた。するとパタパタと足音が聞こえた後、戸が開かれて一人の少女が顔を見せた。
「はい。家に何か用でしょうか?」
「こんにちは。私、白銀くんのクラスメイトの鷺宮と申します。今日は白銀くんの見舞いに来ました」
「兄のクラスの方ですか。ご丁寧にどうも。兄は大分快復してますよ。良かったら上がって下さい」
「…それではお邪魔します」
突然の来訪者に警戒の色を見せる少女だったが、用件を伝えると警戒を解き。家に上がる様に促してきた。未だ伏せているなら帰るつもりであったが、少女の話では順調に回復してるとの事だった。
「あ、そういえば。まだ私の自己紹介してませんでした。私、白銀圭と申します。兄の御行がいつもお世話になってます」
「いいえ。こちらこそ、白銀くんにお世話になってますから」
少女の名は白銀圭。白銀を兄と呼ぶ手前、妹と分かった。見た目からして、中学生だろうがルックスも良く。鷺宮は知らない内に見惚れていた。その視線に気づいたのか、圭は少し恥ずかしそうにしながら鷺宮に話しかけてきた。
「あ、あの……。私の顔に何か付いてますか?」
「え?ああ。ごめんなさい。白銀くんに妹がいると聞いてたけど、こんな可愛い子だと知らなかったものだから」
「…そんな事ありません。寧ろ、鷺宮先輩の方が可愛いですよ。っ!! ごめんなさい。私、先輩に失礼な事を」
「ううん。気にしなくていいわ。褒めてくれてありがとう」
つい口に出た言葉に慌てて圭は謝るが、鷺宮は笑って許した。無論、こんな可愛い子をどうして怒れるだろうか。そうしてる間に奥から件の人物、白銀御行が姿を見せた。
「圭ちゃん。何か騒がしいけど、親父が帰ったのか? って鷺宮!? 何で此処にいるんだ?」
「お兄のお見舞いだって。何舞い上がってるの?」
「こんにちは。朝と比べて体調は良さそうね。はい。これは差し入れよ」
「ありがとう。気を使わせて悪いな」
朝より快復した様子の白銀に鷺宮は安堵した。そして持参した見舞い品を手渡した後、鷺宮はもう一つの用件を切り出した。
「そうそう。今日の部活連の会合だけど、上手くいったわよ。それと部活連に関する問題も解決したわ」
「…本当か!? それは良かった。会合だけじゃなく、問題を解決までするとは驚いたぞ。会合には四宮が出たんだろ? あの連中と渡り合えるのは四宮くらいだしな」
「いいえ。会合に出たのは私だよ。四宮さんは他の役員に指示を出す役目をしてもらったのよ。それは日頃、人の上に立つ四宮さんが適任だからね」
「そうか。何にせよ。面倒をかけたな。明日には俺も登校出来るだろう。改めて礼を言うぞ」
報告を聞いた白銀は嬉しそうな顔で礼の言葉を口にする。そんな表情を余り見た事が無い鷺宮は思わず見惚れてしまった。元々、整った顔立ちの白銀は異性に人気である。中には白銀に告白しようとする者がいたが、それはかぐやの手回しで防がれている為。当の白銀は知る由もない。
「うん?どうした、俺の顔に何か付いてるのか?」
「え?う、ううん。何でもないよ。それじゃあ、私はこれでお暇するよ。治った様だけど、油断はしないでね」
「そうするよ。また、ぶり返したら本末転倒だからな」
「うん。それじゃまた明日ね」
「ああ。鷺宮も気を付けて帰れよ」
用を済ませた鷺宮は白銀の家をあとにした。その帰り道、鷺宮は元気になった白銀の事を考えていた。
(白銀くんの風邪も大した事なくて良かったわ。それにしても白銀くんって、意外とかっこいいのね。普段は何気なく接してるから気付かなかった。そういえば、白銀くんに好意を抱いている女子は四宮さん以外にいるのかな?以前、誰かと付き合ってたっぽい事を言っていたし、好みのタイプはどんな人なんだろう?…って、私は何を考えているのよ。これじゃあ、私が白銀くんを意識してるみたいじゃない。はあ、きっと疲れてるのね。早く帰ってお風呂に入ろう)
気付けば白銀を意識してる事に気付いて、頭を振ってその考えを振り払う。しかし、この時に誤魔化した感情は鷺宮の心に深く根付く事になる。
【本日は勝負が発生してない為、勝敗はなし】
白銀が休んだ日の真夜中。静かな秀知院の廊下にその人影はあった。廊下に設置されている数多の防犯機器を物ともせず、くぐり抜けるとその影は生徒会室に侵入する。そこで被っていたマスクを外すと、闇の中でも目立つ金髪が露わになった。
「ふう。部屋に入るだけなのに面倒な事ですね。さて、早く任務を終わらせて帰ろう」
侵入者はかぐやの近待の早坂である。早坂が此処に来た理由。それは例に漏れず、かぐやの命令だった。懐から珈琲が入った瓶を取り出すと、棚にある珈琲とすり替える。間違いは無いか確認した後。早坂は再び部屋を出て、元来た道を戻っていった。
翌日
生徒会室で業務を勤しむ白銀とかぐや。風邪で休んでいた白銀が欠席した時に行った業務の話をしたいと白銀だけを呼び出していた為、この場にいるのは二人だけである。
「成程。大体の事は分かった。結構、手間が掛かる書類もあったみたいだな」
「ええ。その日の活動内容は早く伝えておくべきかと思いまして。態々、呼び出してごめんなさい」
「いや。別に構わん。俺としても気になっていた事だしな」
昨日の書類に目を通しながら、謝るかぐやに気にするなと白銀は返事を返した。勿論、呼び出した本人は気にしてはいない。何せ、白銀を呼び出した事はかぐやが仕掛ける作戦の一環である。次の段階に移るべく、かぐやは行動を起こした。
「そう言ってくれると私も安心します。そうだ。今、珈琲を淹れますね」
「ああ。頼むよ。四宮が淹れるコーヒーが一番美味いからな」
「大袈裟ですよ。だけど、褒めて貰えるのは嬉しいですね」
白銀の言葉が余程嬉しいのだろう。かぐやは満面の笑顔を浮かべていた。そして淹れたての珈琲を白銀に差し出した。
「味の方はどうでしょう?」
「ああ。いつも通りの味だ。すごく美味いぞ」
「それは何よりですね」
味の感想を述べる白銀をかぐやはジッと注視する。時折、腕時計の針を目をやっては、何処か時間を気にしている様子を見せていた。
白銀が珈琲を飲み始めてから数分後。突如、白銀は喉を抑え苦しみ出した。暫し、藻掻いた挙句。白銀はソファーに凭れ掛かると寝息を立てていた。
「どうやら効果が現れた様ですね。さて、作戦の最終段階に入るとしましょう」
熟睡する白銀を見て、かぐやはほくそ笑む。昨夜、早坂に準備させた珈琲はカフェインが入ってない物であった。日頃から寝不足の白銀はカフェインを摂取する事で眠気に対抗していた。しかし、珈琲にカフェインが入っていなければ、襲い来る眠気に抗えず眠りに陥るのは必然である。
白銀が眠っている間に目的を果たそうとしたかぐやだが、此処で思わぬアクシデントが発生する。あろう事かかぐやの肩に白銀が凭れ掛かって来たのだ。これに慌てたかぐやは部屋の外で待機中の早坂を呼んだ。
「どうしました?何か問題でも起きました?」
「ええ。非常に不味い事態よ。会長が肩に凭れて来たの。いい?私が次の作戦を思い付くまで誰も生徒会室に入れないで。難しい様なら、鷺宮さんに手を貸して貰いなさい。分かったわね」
「……了解しました」
此処に来て、語るのはかぐやの事ではない。彼女に付き従う早坂と唐突に面倒事へ巻き込まれる鷺宮の苦労話である。
主の命を受けて、部屋を出た早坂は手始めに鷺宮にメールを送る。内容は勿論、先程の無茶ぶりに手を貸して貰う為である。メールの返事はすぐに返ってきて、協力してくれるとの事だった。これに早坂は安堵の息を吐く。何かと協力してもらっているが、今回はかぐやと早坂の二人で行う作戦という事もあり、鷺宮は参加する予定は無かった。突発な協力要請にも快く協力してくれる鷺宮に早坂は深い感謝の念を抱く。
そして鷺宮に頼んだ事は藤原の監視と制御である。他の者は自身で何とか出来るが、藤原だけはそうはいかない。此方の予想を超える行動に振り回されて任務を失敗した事も一度や二度ではない。それは主のかぐやも知っているが、失敗したら怒られるのはいつも自分なのだ。しかし鷺宮が藤原を抑えてくれるなら、この任務の成功率も上がる。あとは自分が生徒会室に来るものを追い払えばいいだけだ。
深呼吸して気持ちを切り変えると早坂は任務を開始する。
「不味いなぁ。こんな時に忘れ物するなんて、早く取って帰ろう」
最初の邪魔者は会計の石上。大事な物を忘れたのか。無意識にぼやきながら廊下を駆けてくる。そんな彼に向かって、早坂は態と聞こえる様に独り言を口にした。
「さっきの四宮さん。とても機嫌悪かったなぁ。あんなに怒鳴る所を初めて聞いたよ~。今部屋に入ったら、矛先を向けられるだろうなぁ」
「…今日は良いか。明日にしよう」
この言葉に石上は回れ右をして立ち去った。全くの嘘なのだが、かぐやを恐れている石上には絶大な効果を示した。何処となく落ち込んだ背中に早坂も同情したが、主人の為と免罪符を掲げて誤魔化し邪魔者が来ない様、見張りを続ける事にした。
一方、鷺宮は藤原を探して校内を彷徨っていた。早坂の協力要請に応じた鷺宮であるが、当の藤原が見つからず焦りを抱く。例え失敗したとしても早坂は咎めない事は分かっている。だが、頼まれた以上は遣り切るべきだと鷺宮は考えてしまう。それ故、抱く必要のない焦りを抱いてしまうのだ。
そんな時、目の前から藤原が歩いてくるのが見えた。鷺宮はチャンスだと、足早に藤原へ近付くと声をかけた。
「藤原さん。何してるの?」
「あ、鷺宮さん。良い所に来ました。何処かでリボンを見てませんか?」
「え?見てないよ。どうかしたの?」
「はい。昼休みの時に着けていたリボンを失くしてしまって……。放課後に校内を探しているんですけど、一向に見つからないんですよ」
声を掛けるや藤原は慌てた様子で鷺宮に尋ねてきた。どうやら大切な物を失くした様で普段より、元気が無かった。
「そうなんだ。でもさ。リボンなら頭に着いてるけど、これじゃないの?」
「これはスペアなんですよ。ほら、このリボンはいつもより色が薄いでしょう。これも気に入ってはいますけど、やっぱりいつものリボンじゃないと落ち着かなくて」
「そう。昼休みに失くしたと言ったよね。それは何処なの?」
失くし物や落し物は大概、本人が最後にいた場所で見つかる事が多い。今回もそれで見つかるだろうと鷺宮は踏んでいた。
「えっと。最後にいたのは鳥小屋ですね。確か…この写真を撮った時は着いていたので失くしたのは、この後です」
「…何これ? 藤原さんは何を思ってこんな写真を撮ってるの?」
鷺宮が見たのは地面に寝そべった藤原が鶏に囲まれている写真だった。その写真には加工された文字で鳥葬と書かれている。正直な気持ち、この写真を撮った理由が鷺宮には理解出来ないでいた。
「ああ。これはかぐやさんに送る奴なんですよ。時折、こうして面白い写真を撮って遊んでるです。色々と想像力が働くので楽しいんですよ。鷺宮さんもやってみませんか?」
「私は遠慮しておくよ。それより、リボンを探すのに専念しよう」
「あ、そうですね。では鳥小屋に行ってみましょう」
話を脱線させる藤原に呆れながらも、鷺宮は藤原と鳥小屋に向かった。しかし、鳥小屋に来てみたが件のリボンは何処にも見当たらない。
「此処で失くしたと聞いたけど、鶏と写真撮った時には無かったの?」
「はい。気付いた時には無かったです」
「そっか。鶏と戯れた際に何処かへ飛んでいったのかもね。少し辺りを探してみよう」
「分かりました。じゃあ、私はあっちの方を見て来ます」
藤原と手分けして、リボンを探してみるがやはり見つからない。既に誰かに拾われたか、或いは風で遠くに飛ばされた可能性が高い。運が良ければ落とし物として、生徒会室に届けられているだろう。だが、早坂の頼みは暫くの間、生徒会室に人を近づけるなである。これを守る以上、生徒会室に行く事は出来ない。
暫し辺りを入念に探してみるも、リボンどころかゴミすら見つからない。徐々に日も暮れて来た事もあり、空が薄暗くなってきた。これでは探しても見つける事は不可能だろう。鷺宮はリボン探しを断念して藤原の元へ向かうと時同じくして藤原も戻って来ていた。
「リボンありましたか?」
「ううん。残念ながら見つからなかったよ」
「そうですか。此処まで探して見つからないとなると、もう諦めるしかないですね」
「…力に慣れなくてごめんね」
「いえいえ。私こそ、こんな時間まで付き合わせてごめんなさい」
リボン探しを断念し、付き合わせた事を藤原が頭を下げて謝った時。藤原の足元に何かが落ちた。それに目をやると落ちていたのは一つのリボン。頭を下げた拍子に落ちたのだろうか。それを拾って渡すと藤原の頭にはリボンが付いている。
「あーーーー。私のリボン!! 一体どこにあったんですか?」
「い、いや。藤原さんが頭を下げた時、落ちてきたんだよ。ねえ、改めて聞くけどさ。鶏に戯れてる時にリボンを外したとか無いよね?」
「ああ~。そういえば、鶏さんが私のリボンを突くので胸ポケットに仕舞ったんでした。すっかり忘れてましたよ」
失くした筈のリボンが出て来て、大騒ぎする藤原と反対に鷺宮は無表情で藤原に尋ねた。そこで全てを思い出したのか。藤原は手を叩くと事の真相を話した。これに鷺宮は項垂れて大きい溜息を吐く。単に自分が懐に仕舞った事を忘れて失くしたと騒いでいただけなのだ。
そして探し物が見つかって帰路に着いた藤原と別れた後。早坂から再びメールが届く。内容を読むとかぐやの策略は失敗し、今回も白銀との仲に進展はないとの事だった。その結果に自分の苦労が無駄になったと分かり、更なる疲れを感じたものの。何処か安堵していた事に鷺宮は気付いていなかった。
【本日の勝敗 かぐやと藤原に振り回された挙句、苦労が報われない早坂と鷺宮の敗北】
今回のお話いかがだったでしょうか?
今までの話を読み返してみると、自分でも地の文が長くて諄いと感じてしまう。
簡潔にすると薄くなるし、長くすると諄くなる。読み易さを意識して書いてみると難しい。
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また誤字がありましたら、お手数ですが誤字報告もお願い致します。
次回もお楽しみに