生徒会庶務は平穏に過ごしたい   作:アリアンキング

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最新話、お待たせしました。


今回も読み易さを意識して前回よりも文字数を減らしてみました。



第11話 鷺宮は活動したい/鷺宮はテストされたくない/鷺宮は面倒を避けたい

 放課後。本日は生徒会の活動もなく、鷺宮が帰り仕度していると藤原が話しかけて来た。

 

 

「鷺宮さーん。今日は何か予定はありますか?」

「予定? 別に無いわよ」

「それは良かったです。この後、部活に顔を出すんですけど、鷺宮さんも一緒に行きましょう」

「ああ。そういえば、先日に入部したんだよね。ごめんなさい。すっかり忘れてたよ」

「大丈夫ですよ。じゃあ善は急げですし、早速行きましょ~」

 

 

 以前、藤原の誘いでテーブルゲーム部に入部した事を鷺宮は忘れていた。その事を謝る鷺宮だが、藤原は気にしていないと笑って許してくれた。それに感謝しつつ。藤原の案内で部室に向かう。

 

 

「此処が私達の部室です。部員が少ないので狭いのが難点ですが、中は快適なので安心して下さい」

「そういえば、私を含めて四人だっけ? だとしたら、正式に部として認定されるね」

「ああ~。言われてみるとそうでしたね。それも鷺宮さんのおかげですよ」

「ふふふ。大した事じゃないけどね」

「それじゃあ、テーブルゲーム部にようこそ!! 部員も来てる様ですし、その紹介もしないとですね」

 

 

 

 部室に入ると、藤原の言う通り。二人の部員がいた。藤原の後ろにいる鷺宮を見て、二人は驚いた表情を浮かべる。そんな様子に藤原は悪戯が成功した子供の様に喜んでいた。どうやら、鷺宮の事を今日まで秘密にしていたようだ。

 

 

 

「こんにちは。今日は新しい仲間を連れて来ましたよ」

「初めまして。新しく入部した鷺宮璃奈です。今日は宜しくお願いします」

「あ、こちらこそ。初めまして。私は三年の寺島裕子。部員からはギガ子と呼ばれてるわ。貴女も出来れば、そう呼んで頂戴な」

「初めまして。私は槙原こずえ。一年だけど、部長をやってるよ。あだ名はマッキー先ハイ。なので、鷺宮さんもそう呼んで下さい」

「……随分と個性的な方達ですね」

 

 

 

 手始めに自己紹介をする鷺宮。それに続いて、部員の二人もそれぞれ自己紹介をした。その際、自分の個性を前面に出してくる槙原と寺島に鷺宮は引いていた。考えてみれば、藤原が所属する部活なのだ。類は友を呼ぶという言葉が存在する通り。集う者もまた同類なのである。

 

 

 

「それにしても寺島さ「ギガ子ね」ギガ子さん。三年なのに部活をしていて大丈夫なんですか? 大抵は受験が控えていますよね?」

「ああ。私はこうみえて成績上位者だから、試験は免除されてるのよ。そうじゃなかったら、此処にいないって」

「そうそう。ギガ子さんって、見た目に反して頭がいいからね。全く悩みが無い人は羨ましいよ」

「えっと。槙原さ「マッキー先ハイよ」マッキー先ハイ。貴女は一年だよね。先輩にタメ口を利いていいの? 普通は敬語を使うべきでは?」

 

 

 寺島にタメ口を利く槙原に鷺宮は尋ねた。槙原が部長だとしても、年功序列は付いて回るものだ。言葉使いだけでなく、発言内容も失礼と取られかねない。だが、槙原は意に介した様子もなく鷺宮に言葉を返す。

 

 

 

「ああ。それは部活内のみだよ。元来、ゲームは対等の立場で行う物でしょ。そこに先輩後輩の立場や年功序列を持ち込んだ時点で対等なゲームが成立しない。ヨイショ有りのゲームをしても詰まらない。だからこそ、ゲームを心から楽しむ為に部活の最中は無礼講というルールを話し合って決めたんだよ」

「そうそう。最初は戸惑うけど、鷺宮さんもすぐに慣れるわよ。あ、鷺宮さんもタメ口オッケーだよ。遠慮はいらないからね」

「分かった。でも藤原さんは敬語だけど、そこはいいの?」

「私の敬語は口癖みたいなものですからね。今更、変えようとしても難しいですよ~」

「ええ。それは藤原さんの魅力だもの」

「うん。個性は大事に!! これが部のモットーなのさ」

 

 

 タメ口は対等の証。このルールに驚いた鷺宮だが、確かにタメ口を言われても寺島は穏やかに笑っていて、機嫌を損ねた様子は一切無い。それはお互いを対等だと思っている何よりの証拠だ。心から楽しむという事において、一番大切な事を鷺宮は教えられた。

 

 

「さて。自己紹介が済んだ所で早速、活動を始めませんか?」

「そうね。今日のお題目は例のゲーム作りの為。校内を探索するのはどうかな?」

「あら。という事は例のゲームの設定が出来たのね」

「例のゲーム? 一体、それはどんなゲームなの?」

 

 

 

 槙原の提案で盛り上がる一同に鷺宮が質問をした。話を聞く限りだと、大掛かりなゲームの様で鷺宮も興味を抱いた。何だかんだで鷺宮もゲームは好きな方である。

 

 

 

「お? 内容が気になるかい? これは私が考えた奴でね。この秀知院を舞台にしたゲームなんだ」

「へぇ~。学校を舞台にしたものかぁ。それは面白そうね。それで物語とかも決まってるの?」

「勿論。このゲームの最終目的は旧校舎に封印されたドラゴンを倒す事なの」

「え?ドラゴンが最終目的なの? 秀知院が舞台という事は日本が舞台という事よね? だったら、ドラゴンよりも妖怪の方が良いんじゃないの?」

「ドラゴンでいいの!! 妖怪は怖いし、恐ろしいでしょ。だけど、ドラゴンならカッコいいじゃない。ラスボスの大半がドラゴンというのは定番なんだよ」

 

 

 

 槙原の語った設定と物語に鷺宮が突っ込む。それも無理も無い。日本の学校が舞台なら、登場する敵は西洋の幻獣よりも、日本の妖怪の方が違和感が無い。そんな考えからの言葉であった。しかし、この指摘は槙原にとっては面白くなかった。自分が必死に思考を巡らせて考えた設定と物語を新人に駄目出しされる。年功序列や先輩後輩の立場は関係なくとも、ゲーム歴の浅い人に言われると面白くないのは人情というもの。また鷺宮の指摘に一瞬でも納得してしまった事が、反抗心に火を付ける形になってしまった。

 

 

「まあまあ。サッチーの意見も尤もだけど、設定の修正も大変なのよ。だけど、着眼点は面白いからサッチーの案は次回のゲームに使おうね」

「そうよサッチー。ギガ子の言う通り。設定の修正は大変なんだから横槍は無しよ。でも妖怪を出すのも面白いわね。それでもボスはドラゴンにしたいから今回は却下」

「そうですねぇ。今は当初の予定通り、校内を回りましょうよ」

「分かったわ。それとサッチーは止めて。そのあだ名は何か嫌なのよ」

「「「却下」」」

「…即決!? もう良いよ。好きに呼んで」

 

 

 

 収拾が付かなくなると判断したのだろう。二人の間に介入した寺島と藤原が場を収める。その後、四人は本来の目的である校内探索を開始した。

 

 

 初めに部室がある階の廊下に始まり、各部屋を見ながら進んでいく。その際、場所や部屋に関するイベント等を考えては意見を出し合いながら四人はゲームを構築していった。四人と言っても、鷺宮は一緒に行動して意見を控えていたが。本人は少しでも部に馴染もうと三人の意見をメモしていた。

 

 

「大体、見て回ったね。最後は旧校舎へ行こう」

「そうですね。最後のドラゴンのイベントも考えるのが楽しみですよ」

「それなんだけど。目覚めが近づくに連れて災いが起きる。こんなイベントはどうかな?」

「おお~。それはグッドアイディア。確かにそういうのがあれば、緊張感が増すよね」

「成程。ならこんなイベントはどうかな?」

 

 

 槙原の提案はゲームの進行に従って、旧校舎に眠るドラゴンに寄って国土が消滅するというイベントだった。その時はサイコロを二回振り、出た目が奇数なら国土消滅、偶数なら消滅回避。また奇数と偶数が出た場合、ドラゴンの呪いでプレイヤ―の能力が低下する。このルールに鷺宮達も異論はなく、槙原の提案がそのまま受け入れられた。無論、細かい調整は必要だがそれは後回しでも問題は無い為、特に言及する者はいなかった。

 

 

 その後、一同は旧校舎に赴いてラスボスの攻撃パターン等を話し合う。ああでもない、こうでもないと盛り上がる三人を見て、鷺宮も自然と笑顔を浮かべていた。因みにこのゲームが原因でテーブルゲーム部が風紀委員に目を付けられる事になるのは、また別の話である。

 

 

【本日の勝敗 途中、一悶着あったが何だかんだで部活を楽しんだ鷺宮の勝利】

 

 

 

「皆さんの前に生き物用の檻があります。その中に入ってる生き物の数は何匹ですか?」

「その抽象的な質問は何だ? それよりも仕事をしてくれ藤原書記」

「仕事なら終わりましたよ。だから心理テストをやろうと思ったんです。これで相手の心理が分かる面白い遊びなんですよ」

 

 

 唐突に役員達へ質問を投げ掛ける藤原。それを注意する白銀を既に終わってると反論し、撃沈させた後。再度、藤原は白銀に回答を求めた。

 

 

「うーん。そう言われてもなぁ。しいて言うなら9匹くらいか?」

「会長は9匹ですか。そうだ。鷺宮さんは何匹だと思います?」

「私は20匹くらいね。でも、これで何が分かるの?」

 

 

 白銀に続き、鷺宮も回答を求められ、素直に回答した鷺宮は藤原に結果を促した。心理テストと言う以上、質問の回答に沿った結果が用意されている。そこから自分の心理がどう読まれるのか気になるのも当然である。

 

 

「今の質問で分かる事。それは欲しい子供の数です。会長もそうですけど、鷺宮さんの回答に驚きましたよ。まさか、将来は本当に20人も産むつもりですか?」

「少し黙って。現実的に考えてありえないでしょ。第一、その本は何処から持って来たのよ?」

「ああ。これは図書室から借りたんです。今日、顔を出したらこれがあったので。是非、皆とやろうと思いまして。ざっと読んだら結構、面白い質問があるんですよ~」

 

 

 

 藤原の言葉に若干、苛立ちを覚えながら鷺宮が尋ねると藤原はパッと笑って教えてくれた。藤原らしいと言えば、そうだがまた面倒が起きそうだと感じて鷺宮は頭を抱える。今回の事で四宮さんを徒に刺激しなければ良いと願うが、きっと悪い方へ向かうだろうと鷺宮は予想する。それは当たっており、先程の白銀の回答で頬を染めて白銀を見つめるかぐやに鷺宮は気付いた。

 

 

(時すでに遅し。大方、白銀くんとの間の子供が出来た事を想像してるんだけど。もう少し表情を隠して欲しいなぁ。周りには石上くんもいるし、下手したら四宮さんが白銀くんに好意を寄せてる事が知られかねない。そうなると四宮さんは誤魔化す為に、思ってもない事を言いそうだし、白銀くんはそれを真に受けそうだからフォローが大変そう。はぁ~。一体、何処の誰よ?心理テストなんて入荷した馬鹿者の所為で余計に疲れるじゃないの)

 

 

 

 そんな鷺宮の悩み等、何処吹く風で藤原は次の質問を探していた。因みに心理テストは抽象的な質問で相手の本音を引き出す物だが、テストの結果は多くの者に当て嵌まる物が多い。先程、鷺宮が20匹と答えたのもその一環で彼女は檻いっぱいにいるモルモットを連想していた。一見、娯楽とも思える心理テストだが、時には事件の捜査や医療に利用する実用的な物も存在している。その為、娯楽と油断すると本音を暴かれる厄介な側面があるのが恐ろしい所である。

 

 

「あ、次の質問はこれにしましょう。良いですか? 今、皆さんは暗い夜道を歩いています。その時、後ろから肩を叩かれました。その叩いた人で思い浮かべた人は誰でした?」

「もう少しヒントは無いのか? イマイチ解り辛いぞ」

「…会長、これは心理テストですよ。クイズじゃないんですからヒントはありませんよ。まあ、あるとしたら、会長の心の中にあるものでしょうか。思った事をそのまま答えて下さい」

「暗い夜道に肩を叩く者ですか。それは一体、何を現わしているんでしょうね」

 

 

 

 不安気にそう呟くかぐやだが、心の中では薄笑いを浮かべる。そう。今回、図書室に心理テストを入荷させたのは、かぐやの仕業であった。中学からの付き合いである藤原の嗜好をかぐやは熟知している。故に藤原が好みそうな本を入荷する許可を出した。案の定、藤原はこの本に飛び付き、生徒会へ持って来ていた。

 

(ふふふ。来ましたね! 47ページの二問目。確か、答えは『好きな人を暗示している』でしたね。もし会長が私と答えたら、それはもう告白したと認める様なもの。さあ、今日こそ会長の心の内を晒してあげましょう)

 

 

 そしてかぐやはこの本の中身を既に把握している。先程、藤原が出した質問の答えも分かっているので、下手に回答して地雷を踏む事はない。この場に置いて、かぐやは大きなアドバンテージを持っていた。

 

 

「私は藤原さんですね。昔、初めて私に話しかけて来た時も同じ事をしてくれましたよね」

「ああ。懐かしいですねぁ。そうですかぁ~。かぐやさんは私を連想したんですか。これは嬉しいですね」

 

 

 かぐやの回答に藤原は身を捩って嬉しさを強調するが、かぐやは内心どうでもいいと感じていた。何せ一番重要なのは白銀の回答であり、先の回答に藤原を選んだのは差し障りの無い相手を選ぶ事で白銀を油断させる為である。

 

 

 

 だが、質問の答えが必ずしも良い方向へ行くとは限らない。石上が想像した状況。それは逢魔が時、鬱蒼とした林を疾走する自分の姿。背後には人気が無い洋館が建っており、そこから逃げてきたのだ。あと少しで敷地から出られると思った時。不意に肩を掴まれて石上は恐怖で固まる。

 

 

『何で逃げるんですかぁ…。石上くーん。さあ、私と一緒に来て下さい』

 

 

 背後にいたのは返り血を浴びたかぐやの姿。最早、一巻の終わりだと石上は目を閉じた所で妄想を止めた。これ以上、想像すると精神が崩壊しかねない。ガタガタと震えながら、石上は思い浮かべた相手の名を告げた。

 

 

「ぼ、僕は…四宮先輩でした。薄暗い場所が似合う人は四宮先輩しか想像出来ません」

 

 

 石上の回答に四宮は驚愕する。まさか、石上の口から自分の名が出るとは予想外だった。何せ、事あるごとに怯えた視線を向ける石上が好意を抱いてると思うのが無理である。しかし、かぐやには既に気になる異性がいる。それ故、結果は既に出ていた。

 

 

(え? 石上くんの気になる人は私なの? いつも向ける怯えた視線。あれは恐怖ではなく、石上くんの想いが伝わるか不安だったからなのね。だけど、私はもう気になる人がいる。だから、ごめんなさい。貴方の想いに私は応えられない。でも、石上くんの事は異性として虫けら程度には想っていますよ)

 

 

 全くの勘違いだが、石上は告白する事なくフラれた。そしてかぐやは白銀に目をやった。白銀の回答で意中の人が分かる。そう思うと緊張して鼓動が速くなるのを自分でも感じていた。

 

 

 当の白銀が連想した状況。それは夜道を歩いていると背後から怯えたかぐやが肩を叩いてきた。そして想像の中でかぐやは上目遣いで白銀を見つめるや。

 

 

『ねえ、会長ぉ。私、暗い場所が苦手なの。怖いから一緒に帰ろうよ』

『…四宮。良いだろう。俺の傍から離れるなよ』

『ありがとう。会長だーい好き』

『フッ。全く、お可愛い奴め』

 

 

 無論、これは白銀の煩悩に満ちた妄想である。実際は天地がひっくり返っても起きる事はないのだ。そして回答を言おうとした時、白銀はある事に気付いた。それは藤原の表情。何かを期待する様子でこちらを見る藤原に白銀は警鐘を鳴らし、質問する前に藤原が言った言葉を思い出した。

 

 

(待てよ。そういえば、藤原書記は面白い質問だと言っていたな。あの恋愛脳の塊である藤原書記の事だ。きっと質問の答えは好きな人だとか、愛を捧げたい人とかに違いない。此処で四宮と言おう物なら…それは告白に等しい行為!! 危なかった。思わず、普通に回答する所だったぞ。心理テストがこんな恐ろしい物だとはな。しかし、そうなると回答はどうするか? 差し障りが無い相手と言えば、鷺宮がいる。だけど、彼女をこんなくだらない質問の当て馬にするのは最低な行為だな。そうだ!! 回答しても問題ない異性がいた。この回答なら藤原の追及も逃れるし、四宮に対しての告白にもならない)

 

 

「俺が連想したのは妹だ。帰り道でよく肩を叩かれるからな」

 

 

 しれっと回答する白銀だが、一部は嘘である。現在、反抗期の妹が肩を叩いてくる事は無い。しかし嘘も方便。この回答を疑う者はいないが、同時に望んでいた答えが得られなかった藤原とかぐやは興醒めし、詰まらなそうに白銀を見ていた。だが、これで諦める藤原ではない。未だ、回答していない鷺宮に狙いを定め。藤原は詰め寄って回答を催促する。

 

「詰まらない会長は放っておくとして…。鷺宮さんは誰を連想しました? さあさあ、早く言って下さいよ~」

「何でそんなに迫るのよ。私は…白銀くんかなぁ。それでテストの答えはどうなの?」

「ふふん。そうですかぁ。鷺宮さんは会長なんですねぇ。実はこれ。好きな人を示すテストなんですよ。いやぁ~。まさか、鷺宮さんの好きな人が会長と思ってませんでしたね。一体、何処が好きになったんですか? この際、全部教えて下さいよ」

 

 

 まるで水を得た魚の様に活き活きとして、藤原は鷺宮に詰め寄った。だが、鷺宮はそんな藤原を気にした様子はない。いや、気にする余裕が無かった。何故ならば、鷺宮が白銀の名を口にした途端。どす黒い感情が籠った視線で自分を睨むかぐやしか、見えていない為である。

 

 

 

(この桃色疫病神めっ!! 何度、私を苦しめたら気が済むのよ。と、とにかく。今は四宮さんを宥めないと不味いわ。此処は誤魔化してやり過ごすか? いや、無理に誤魔化しても余計に怪しまれる。それに恋バナに目が無い藤原さんは絶対に止まらない。ならば肯定して適当に話を合わせる? いや駄目だ。そんな事をしたら、四宮さんを更に怒らせるだけだ。あれ? 私…。どう見ても手詰まりじゃない? ど、どうしようぉぉぉぉぉっ!! いえ冷静になるのよ。何か良い案がある筈…。そうよ!! これなら窮地を脱する事が出来るわ)

 

 

「そうね。私は白銀くんの事は好きだよ。気楽に話せる友達としてだけど」

「えぇぇぇぇぇっ!? 好きなのはそっちの意味ですか。なーんだ。鷺宮さんの回答も詰まらないですね」

「あのね。それは酷くない? 第一、そんなテストで人の気持ちを暴こうとするのが間違いよ。やり過ぎて本当に嫌われて友達を失くしても知らないからね」

「うっ、そうですね。私も人に嫌われたくないので、程々にしておきます」

 

 

 鷺宮の忠告が効いたのか、藤原は大人しく引き下がった。流石の藤原も人に嫌われる行為をするつもりは無い。また鷺宮の言葉はかぐやにも効果は絶大だった。当初、白銀の回答に不満を抱いていたが、思い返すと別に四宮が不満を抱く筋合いはない。それに好きの感情は様々である。自分が藤原に対して感じる好きと白銀に対する好きも別物だからだ。

 

 

 結局、今回もかぐやの企みは失敗に終わった。また窮地を回避する為とはいえ、己の気持ちに嘘を吐いた事に鷺宮の心がチクリと痛む。これが何を意味するのか。分からない程、鷺宮は鈍感ではない。しかし、一時の迷いだと鷺宮は気持ちを押し殺していた。

 

 

【本日の勝敗 場を誤魔化す事に成功したが、自分の気持ちに嘘を吐いた鷺宮の敗北】

 

 

 

 生徒会室へ向かう途中。鷺宮の目の前を藤原が通り過ぎた。いつもと違うのは藤原が何処か落ち込んだ様子である事。それが気になり、声を掛けようと口を開きかけたがすぐに閉ざした。不意に見えた藤原の表情は涙を浮かべて笑っていたから。声をかけたらまた面倒な事に巻き込まれる。そう判断して鷺宮は藤原を見なかった事にした。

 

 

 

「こんにちは。遅くなってごめんね」

「ああ。今日の業務は無いから気にしなくていいぞ」

「え? もしかして私が遅れた事を怒ってるの?」

「そうじゃない。実はこの後、四宮の家にお見舞いに行くんだよ。どうやら四宮も風邪を患ったと連絡があったらしい」

 

 

 白銀の発言に遅刻した事を怒っていると思った鷺宮だったが、それが杞憂と知って胸を撫で下ろす。しかし、白銀だけでなくかぐやも風邪で欠席したのは意外だった。白銀の場合、日頃から根を詰めた生活が原因であるが、規則正しい生活を送るかぐやが風邪を患くとは想像出来なかった。

 

 

「そうなんだ。事情は分かったけどさ。テーブルのトランプは何なの?」

「これか。実はだな」

 

 

 白銀の話に寄れば、先日の大雨の日。帰宅の手段を廻って一悶着あったらしい。その際、石上はびしょ濡れになりながらも校門で立ち尽くすかぐやを目撃していた。だが、白銀は結局の所。かぐやに気付かずに帰宅してしまい。かぐやの行動は無駄骨になったのだ。恐らく、その行動が原因でかぐやは風邪を患ったのだと白銀は気にしていた。

 

 

 そして話は進み。かぐやが風邪で欠席した事を知った藤原は自分が見舞いに行くと言い出した。

初めこそ、かぐやが心配なのだと白銀達は思っていた。しかし、それは建前で本当の理由は甘えん坊になったかぐやを見たいが為であると口にした。藤原の言葉に白銀は衝撃を受けた。普段は凛としているかぐやが自分に甘えてくる妄想を思い浮かべる。上手くいけば、かぐやに告白させる事が出来るかもしれない。そんな邪念に抱きながら、白銀は生徒会長の自分が見舞いに行くべだと主張する。だが、藤原も今回ばかりは一歩も引かず、互いに譲る事は無かった。話し合いで解決しないと踏んだ藤原は神経衰弱による勝負を持ち掛けた。勝負の結果は白銀が勝ちを収め、白銀がかぐやの見舞いに行く事が決まった。

 

 

 

「成程ね。だから藤原さんは落ち込んでいたんだ。まあ明日には元気になってるだろうけど…」

「あの人。自分で罠を仕掛けておきながら、逆に利用される間抜けですからね。ドジにも程がありますよ」

「その事はもう忘れてやれ。流石に言い過ぎだぞ。いくら藤原書記がアホでも傷付く事があるんだぞ」

「いやいや。白銀くんも十分酷いよ。人の事を言えないって」

 

 

 藤原の事をボロクソ言う二人に注意する鷺宮だが、彼女も人の事を言えない。過去に内心でボロクソ言っていた事を完全に棚に上げていた。

 

 

 その後、一人では不安だからと一緒に来て欲しいと白銀に頼まれた鷺宮。最初は断るつもりだったが、これを逃せばかぐやの家に行く機会はないだろう。資産家の家に興味を抱いた事もあって、鷺宮は白銀の頼みを聞き入れた。かくして白銀と鷺宮の二人はかぐやを見舞う為、四宮家の別邸へ向かう事になった。

 

 

【本日の勝敗 知らずに面倒事を回避した鷺宮の不戦勝】

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のお話いかがだったでしょうか?


この回では原作でも殆ど描写が無い部活動の話を書いてみました。
因みに作中でマッキー先ハイが口にしたゲームは小説版で生徒会メンバーが遊んだ奴です。一応、本編でもその描写がありますので原作を持っている人は探してみると面白いかもしれない。


次回はかぐや様の見舞いから始まります。
初のアホかぐやを見た鷺宮がどんな反応するのか。それを書くのが楽しみですね。

最後に感想、それと評価やお気に入り登録の方も宜しければお願いします。

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