生徒会庶務は平穏に過ごしたい   作:アリアンキング

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最新話、お待たせしました。


GM中、連勤という事と個別にやりたい事があって投稿が遅れてます。


今回は夏休み前の話と夏休みになってからのお話です。


こちらのミスで同じ話を二つ掲載していました。現在は修正済みです。
大変申し訳ありませんでした。


第13話 かぐや様は呼ばれたい/生徒会は出かけたい2/かぐや様は出会えない

 秀知院学園中等部。それは高等部の校舎から距離5分の場所にある。

 高等部が近い事もあり、中等部からOBを訪ねる生徒も少なくはない。この日も一人の少女が高等部へ足を運んでいた。その少女の名は白銀圭。彼女は生徒会室の前で深呼吸をすると、戸を叩いて来訪を知らせた。

 

 

「はい。開いてますよ。どうぞお入り下さい」

「…失礼致します。私、白銀圭と申します。今、会長の白銀御行は留守でしょうか?」

「あら。ご丁寧にどうも。私は生徒会副会長の四宮かぐやです。会長に用事との事ですが、現在は部活連の会合に出ているので暫くは戻らないと思います。私で宜しければ、変わりに用を聞きましょう」

「良いんですか? それなら宜しくお願いします」

 

 

 白銀を訪ねてきた圭だが、当の本人は留守だった。それを聞いて一旦は出直そうとした時、かぐやが代理として話を聞くと申し出た。圭もかぐやの事は知っており、別段白銀でなければいけない用でもない。渡りに船だと、圭はかぐやの申し出を素直に受けた。

 

 

 

「そういえば先程、部活連の会合に行ってると言いましたよね? その…大丈夫なんですか? 噂では粗相を働いた人がとんでもない場所に送られたと聞きましたよ」

「ああ。その噂は中等部にも届いているんですね。それなら心配はいりません。確かに粗相を働いた人が咎めを受けた事は事実ですが、大体の部分は誇張された噂ですよ。本当は皆さん、優しい人達ですから。それに何かあっても私は会長の味方です。だから不安に感じる事はありません」

「…そうですか。それを聞いて少し安心しました。あんな兄でも私の家族だから心配だったんです」

 

 

 部活連の噂が杞憂だった事に圭はホッと安堵する。家では顔を見る度に悪態を吐く圭だが、本心では頼りになる兄であると思っている。只、それを表に出す事が素直に出来ないのは圭が反抗期だからだろう。一方、かぐやはコロコロと表情を変える圭に見惚れていた。同性であるのに目が離せない。それに誰かに似ている。一体、誰だろうか?と考えを巡らせた時、圭が口にした苗字を思い出した。

 

 

(そういえば、この子が此処に来た時。白銀と名乗っていたわね。じゃあ、この子が会長の妹さん。思えば目元が会長に似ているわ。初めは気付かなかったけど、こうして見ると面影があるものね。そうだ。此処で私が彼女に力を貸して親密になれば、会長の事がもっと分かるかもしれない。将を射るなら馬を射よとも言うし妹である彼女を通じて、会長の家族とも交流が生まれる筈。そうしたら会長との距離も縮まって、自然と名前で呼び合う仲になれる。ならば、この子に姉と呼ばれる様になりましょう)

 

 

「此処の箇所で助言を貰いたいんですけど…」

「どれどれ? えっと此処はですね」

「そこの計算は合ってるけど、表記にゆれがあるのが駄目かな。それと予算の減額を提示するなら、前年比との比較があると分かりやすいよ」

「成程。それなら此処は直した方が良いんですね」

「そうそう。あとはこの表だけど、マクロ機能を使う方が良いよ。それで入力ミスも防げるし、作業の時間短縮になるし確認も楽になるからね」

「そういうやり方もあるんですね。参考になります」

 

 

 圭を利用した企みを思い付くかぐや。だが正直な話、この計画は穴だらけである。そもそも生徒会室に居るのはかぐやだけでなく、圭が生徒会を訪ねたのは会計として意見を聞く為である事。当然、かぐやの意見よりも同じ役員の方が適切な助言が出来る。そうなれば、かぐやの出番は微塵もなく、二人のやり取りを見ている事しか出来ない。

 

 

 

 しかし、これで諦めるかぐやではない。出来る女としてのアピールが無理なら、それよりも近い関係。即ち友達として歩み寄ろうと路線を変えた。かぐやの脳裏では休日に圭とショッピングに出かける妄想が展開されていた。妄想の中でかぐやは圭と名前で呼び合い。歳の離れた友達として振る舞っている。そこから白銀家の家族とも付き合う様になって、ゆくゆくは親公認として会長の恋人になる。人が聞けば、ドン引きする程の妄想だが、家族や同年代の友達と触れ合う機会がかぐやは殆ど無い。そういう事情からこういう展開を強く望んでいた。

 

「こんにちは。遅くなってすみませんでした~」

「私も遅くなってごめんなさい」

「あら、二人共。こんにちは。別に構いませんよ」

 

 思い立ったら吉日。早速、友達作戦を実行しようとした時、新たな来訪者が訪れた。そう。嵐を呼ぶ女藤原とそれに巻き込まれる女の鷺宮である。出鼻を挫かれた事にかぐやは内心、舌打ちしながらも二人に挨拶を返した。それに続いて藤原が圭を見た時、パッと表情を崩して圭にに話しかけた。

 

 

「あ、圭ちゃんだぁ!! こんにち殺法!!」

「こんにち殺法返し~」

「え? 何それ? 二人共、一体何をしてるの?」

「ああ。これは私と圭ちゃんで決めた挨拶ですよ。仲良しの証としてやる事にしてるんです。ね、圭ちゃん」

「はい!! 最初は恥ずかしかったけど、今は慣れて出来る様になりました」

「…そう。所で圭ちゃんは何しに来たの?」

 

 

 圭と藤原が交わした謎の挨拶。これに思わず突っ込む鷺宮であるが、理由を聞いてもその感性は理解出来る物では無かった。藤原流の挨拶はともかく、圭がいる理由を鷺宮は尋ねる。

 

 

「はい。実は会計の書類を会長に見せて、助言を貰う為に来たんです。でも、変わりに会計の人に助言を貰ったんですよ。あれ? あの人がいない。お礼をまだ言って無いのに」

「ああ。石上くんなら私達が来た時に帰ったよ。まあ、お礼は私から伝えておくから大丈夫よ」

「そうですか。ありがとうございます」

 

 

 無論、鷺宮の言葉は半分嘘である。藤原は気付いていないが、石上が帰った理由はかぐやにある。そう。自分の出番を奪い、出鼻を挫いた石上をかぐやは昏い眼差しで睨んでいた。当然、石上はかぐやの邪魔をするつもりは無い。単に悩んでいる後輩を手を差し伸べただけなのだが、それを評価されない事が石上の不運な所である。

 

 

 

 偶然にも目撃した鷺宮はすごすごと帰る石上を不憫に感じていた。

 

 

「ところで藤原さん。白銀さんと仲が良いみたいですが、お知り合いなんですか?」

「ええ。実は圭ちゃん。妹の萌葉と同じ学年で時折、ウチへ泊りに来るんですよ。その時、意気投合しまして今では友達として付き合いがあるんです」

「そ、そうですか。友達として…付き合いがあるんですね」

 

 

(何てこと。折角、友達として接する計画があっさりと潰されるなんて…。藤原さん、貴女って人は何処まで私の邪魔をするんでしょう。陰でこそこそと卑怯でずる賢いドブ鼠。全く油断も隙もありませんね。だけど、まだ家族ぐるみの付き合いが残っている。先輩や友達関係よりも難度は高いですが、四宮たる私に不可能はない。この立場だけは絶対に譲らない)

 

 

「そういえば、鷺宮先輩。この間、兄の見舞いに来てくれましたよね。此処で言うのは少し照れ臭いけど…あの時、お姉さんが出来たみたいで嬉しかったです。機会があったら、また来てくださいね」

「あはは。そう言われると私も照れ臭いなぁ。分かった。暇が出来たらまたお邪魔するわね」

「あーーー。鷺宮さんってば、狡いですよぉ。私だってお姉ちゃんポジションなんですからね~」

「分かってるよ。でも、千歌姉はお姉さんというより、お姉ちゃんって感じかな。そして鷺宮先輩はお姉さんって感じだよ」

「ふふふ。それって、何か違いがあるの? 余り変わらないと思うよ」

「え~。大分違いますよ。まあ、違いの説明は難しいですけど」

 

 

 三人が和気藹々と会話に興じる中。蚊帳の外に置かれたかぐやは深い絶望と怒りを感じていた。

 

 

(藤原さんだけでなく、鷺宮さん。貴女まで私から欲しい物を悉く奪っていくんですね。それに私に黙って会長の家にお邪魔したですって? そんな話を私は聞いてませんよ。貴女、私に協力する振りして実は会長を私から奪おうって魂胆なんじゃないの? 思えば、最近はチラチラと会長に視線をやってますものね。陰で私を嘲笑う薄汚い外道。地球の癌と呼ぶに相応しいわね)

 

 

 怨念の籠った呪詛を胸中で吐き出すかぐや。心なしか鷺宮を見つめる瞳に闇が渦巻いているのは気の所為ではないだろう。しかし、そんなかぐやに藤原がある話を持ち掛けた。

 

 

 

「そうそう。かぐやさーん。今度、夏休みに私と萌葉。それと鷺宮さんと圭ちゃんでショッピングに行く予定なんですが、かぐやさんも一緒に行きます?」

「勿論よ。是非、ご一緒させていだきます!!」

「四宮さんも参加するのね。そういえば、皆で遊ぶのは初めてだし楽しみだわ」

 

 

 この誘いにかぐやは迷う事なく頷いた。先程と違い、かぐやの表情は太陽の様に明るい。幸いな事にかぐやが暗い顔をしていた事は誰も気付いていなかった。こうして夏休みに会う約束を取り付けたかぐやは、終始ご機嫌な様子であった。

 

 

 この日の夜。来たる日に想いを馳せ、浮かれるかぐやを早坂は優しく見つめていた。

 

 

【本日の勝敗 目論見は失敗したが友達と遊ぶ約束をしたかぐやの勝利】

 

 

 

 

 

 一学期の終了に合わせて来たる夏休み。多くの学生が何よりも待ち望んだ瞬間である。それは秀知院生徒会でも例外ではない。全ての活動を終えた後、生徒会室に戻った役員一同は浮かれていた。

 

 

「今学期の活動は全て終了した。そして明日から夏休みだ。いやぁ。これで暫くはゆっくり出来るな」

「そうだね。姉妹校の歓迎会やら部活動の予算会合とか、ハードな仕事が多かったもんね」

「確かにな。そういや、皆は夏休みの予定はあるのか?」

 

 

 今までの活動を振り返って、話を咲かせる中。白銀はふと役員達に予定の有無を尋ねる。それは何気ない話題に思えるが、白銀にはある思惑があった。

 

 

「私は買い物をする程度ですね。特に大きな予定はありません」

「私も似た感じかな。暑い中、外に出たくないからね」

「同感ですね。昨今は熱中症で倒れる人が老若男女関係なく、増えてますからね。無駄に外出するよりも家でゆっくりしてた方が無難ですよ」

 

 

 白銀の問い掛けに鷺宮達は三者三様の返事を返す。この有様に白銀は思わず苦笑した。しかし、これでは話が進まない。目的を果たす為、強引にでも話を進めるべきだろう。そう判断して白銀は以前、鷺宮達と交わした旅行の話題を切り出した。

 

 

 

「ところで夏と言えば、皆でぱーっとやるのが定番だよな?」

「あ、そうですね。夏にしか出来ない事や行けない所に行くのも良いですね」

「ああ。そうだな。仲間内で遠出するのも夏ならではだよな」

「はい。なので…私は明日からハワイ旅行に行くんですよ。もう待ち遠しくて仕方無いです~」

「そ、そうか。それは良かったな。思う存分、楽しんで来いよ」

「ええ。旅行は良いものですよね」

 

 

 白銀の話題に案の定、藤原は食い付いてきた。そして上手い事、皆と旅行に行く方向に話を持って行こうとしたが、その企みは藤原にあっけなく叩き潰された。それ処か、白銀達を差し置いて1人だけ旅行に行く始末である。流石の白銀もこれには苛立ちを隠せず、眉間に皺を寄せる。しかし、当の本人はあっけらかんとした様子で白銀の事など、一切気にしていない。それがまた苛立ちを覚える悪循環となっていた。

 

 

 こうなった以上、自分では手に負えない。白銀は藤原の友達であるかぐやに助けを請う視線を送るが、かぐやは魂の抜けた表情で虚空を見つめている。当のかぐやも白銀と同じく旅行へ行くプランを立てていた。だが、自分から行きたいと口にする。それはかぐやが白銀と旅行に行きたい。即ち、告白したも当然と白銀に敗北した事になる。故に藤原を利用する策を講じていたが、その策は既に破綻している。最早、打つ手はない。そんなかぐやに出来る事は心を無にして現実逃避のみ。

 

 

 

(四宮のあの表情。まるで廃人そのものだな。くっ、頼みの網がこれではどうしようもない。まあ、元より皆で旅行する自体が難しいからな。しかし、生徒会を支えてくれる皆と思い出を作りたいのも事実だ。何とか四宮を誘いつつ。全員で出来る事は無いものか……。そうだ。泊まりは無理でも日帰りならいくらでも方法はある。それに藤原書記がハワイから戻る日を聞いてみるか。一人だけ除け者にする訳にいかないしな)

 

 

「そういや、藤原書記はいつ日本に戻るんだ? 海外で思い出作りもいいが、国内でも楽しい事はいくらでもあるだろう?」

「何を言ってるんですか!! 来年は私達、受験のシーズンですよ。この夏が一番重要な時期なのに遊びに現を抜かしては駄目でしょう」

「お、お前なぁ。旅行に行く癖して良く言えるな」

「同感。だったら、遊ばないで勉強したらいいじゃない」

「勿論やりますよ。だからこそ、遊ぶ時は遊ぶ。勉強する時は勉強する事でメリハリを付けてるんですよ。テストでの順位は下がってますけど、私の成績自体は変わらない事を忘れてはいませんか? 馬鹿にしたら駄目ですよ」

 

 

 

 

 何とか生徒会の皆で思い出を作りたい。その一心で白銀は再び藤原に話を持ち掛けるが、当の藤原は遊びに現を抜かすなと言う始末。流石に理不尽と感じたのか。傍観に徹していた鷺宮も白銀の援護に回った。だが、藤原がこの程度で止まる訳もなく、逆に開き直って言い返して来た。藤原の言う通り、テストの順位は下がっているが成績は高評価なのは紛れもない事実。反論の余地が無い為、白銀も鷺宮も黙るしか無く、悔しそうに顔を歪める。

 

 

 

 そんな二人を未だに無の境地でかぐやが見つめていた。しかし、この状況を打破する者がいた。

 

 

「藤原先輩の言い分も分かりますけど、僕は思い出作りに賛成ですよ。先輩達は来年の受験で忙しいからゆっくり遊ぶ時間なんて無いでしょう?」

「そうね。それを考えると遊べる時間は今しか無いわね」

「ああ。だとしたら、夏祭りなんてどうだ? 8月の終わりに市が開催するそうだ。場所も近いし、無駄な費用も掛からん。祭りの最後に花火も打ち上げるようだし、一夏の思い出作りに打って付けだな」

「あー それは良いですねぇ~。私も行きたいですよ」

「え? 受験の心配は良いの? 遊ぶのは駄目って言ってたのに」

「いいじゃないですか~。皆で思い出作るのに無粋な事を言うのは無しですよ」

「そうですよ。藤原さんの言う通りですね。大事なのはメリハリですよ」

「いや。ハワイに行ってから祭りに来る時点で遊びっぱなしじゃない」

 

 

 

 あっさりと掌を返す藤原に鷺宮が指摘するも本人は何処吹く風といった様子であった。それにかぐやの援護射撃もあって、勢い付いた藤原に何を言っても効果は無い。思う所は只あるが、楽しそうな雰囲気を壊すのは無粋と思い、鷺宮は口を閉じる。

 

 

 だが、綺麗に話が纏ろうとしていた時。それを台無しにするのが藤原という女。彼女は何かを思い出して手帳を開き予定を確認した後、表情を曇らせながらある事を口にする。

 

 

「あ、駄目です。その日、私はスペインでトマト祭りに行く事になってます」

 

 

 あろう事か更なる旅行に出かけると言い放った。これには白銀も堪らず、苛立ちで顔を歪める。それもそうだろう。遊びなと叱咤する本人は旅行三昧で遊び放題。そんな藤原に鷺宮と石上も呆れた視線をむけていた。一方、かぐやは藤原の甘言で無心の境地が崩された事に頭を抱えていた。それに白銀が気付いていないのがせめてもの救いであろう。

 

 

 

「ま、まさかと思いますけど。私抜きで夏祭りに行ったりしませんよね? そんな酷い事をするんですか?」

「え? 普通に行きますよ。先輩だけ祭に行くのに僕らに祭へ行くなと言う方が酷いじゃないですか」

「同感。それが嫌ならハワイに行かなければいいのよ」

 

 

 石上と鷺宮。二人の息があった言葉責めに藤原も言い返す言葉が無く、終いには泣き出して生徒会室を飛び出して行ってしまった。無論、立ち去る際に石上に悪口を忘れず言う辺り、余裕はあったのだろうがそれは本人しか分からない。

 

 

「も、もしかして僕はまたやってしまったのか?」

「大丈夫。君は何も悪くない」

「ああ。鷺宮の言う通り、石上が気にする事はない」

「ええ。今回ばかりは貴方が正しいわ」

 

 

 落ち込み自分を責める石上に鷺宮達は優しく慰める。何せ、石上の言ってる事は正論であり、三人が言う様に気にする必要は無い。何やかんやで男と女の夏休みが始まりを迎えた。

 

 

【本日の勝敗 藤原以外全員勝利】

 

 

 

 

 夏。それは太陽が燦々と降り注ぎ、人の心を解放させる。多感な少年少女が恋に落ちて、男女の仲になるのも夏の定番イベントであろう。しかし、これは意中の相手が互いに接する機会がある場合に限られている。当然ながらその機会もなく何も行動しなければ、ドキドキの展開など起こる訳がない。

 

 

 

 言うまでも無いがその人物とは白銀である。夏休みに入って半月。経済的な状況から外出する事もなく、唯一外に出る機会といえばバイトの時だけ。それ以外は家で勉強に明け暮れる毎日であった。無論、この間にかぐやと接する事はおろか、会話したりメール等のやりとりは一切ない。何とも退屈な夏休みを過ごしていた。

 

 

 

「四宮のやつ。今頃、何をしてるんだろうか? 金持ちのアイツの事だ。何処か豪華なリゾートでも言ってるんだろうなぁ。はぁ、つまんねー夏休みだな」

 

 

 白銀は自室で寝転びながら本音を漏らす。早く夏休みが終わればいい。心の中で白銀は強く感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、当のかぐやも白銀と同様の毎日を過ごしていた。親しい友人である藤原は海外旅行に行っている為、会いに行く事は出来ない。もう一人の友人である鷺宮と出かけようと考えたが、奥手な事もあって鷺宮をどう誘えばいいのか分からない。結局、何も行動出来ないまま時間だけが悪戯に過ぎていく。そんなかぐやを見兼ねて、早坂は主に一つの提案を持ち掛けた。

 

 

「毎日、部屋でごろごろしていては体に毒ですよ。偶には外に出て、気分転換したらどうですか?」

「何処に行けと言うのよ。生憎、欲しい物は無いし行きたい所も無いわ」

「誰かを誘えば良いじゃないですか。鷺宮さんでも良いですし、いっその事、会長を誘うというのもありですよ」

「はぁーーーー。早坂、貴女は何を言ってるの!? そんなはしたない事を私がする訳無いでしょう!!」

「……相合傘したいが為に車をパンクさせたり、会長に携帯買わせる為に大勢を振り回した人の発言とは思えませんね。普段の無駄な行動力は何処へ行ったんですか? 待ってるだけでは進展しない事もあるのはかぐや様もご存じでしょう? 此処は勇気を出して一歩動きましょうよ」

「そうですね。少し学園に行ってくるわ。確か図書室は開いてるでしょうから、何冊か本を借りて来ます」

 

 

 早坂の一言はかぐやの背中を押すには十分な効果を持っていた。重い腰を上げたかぐやの身嗜みを早坂は慣れた手付きで整えていく。この奥手で可愛い主人に良い事があります様に。そんな願いを籠めながら髪を梳いた後、早坂はかぐやを送り出した。

 

 

 

 

 

 その頃、鷺宮は秀知院へ向かっていた。目的は借りた本の返却と新たな本を借りる為である。

 

 

「あ~。暑いなぁ…。毎日嫌になるわね」

 

 

 照り付ける日光は日傘で避けているが、空気を焼く様な暑さはどうにもならない。それ故、自然と熱さに対する不満を漏らす。そうして秀知院に着いた鷺宮は校門を見張る教員に挨拶を交わし、図書室に向かう。中には図書委員がおり、返却手続きを済ませて借りた本を手渡すと次に借りる本を選定するべく室内を見て回る。

 

 

「あら? 鷺宮さん。どうして此処に?」

「……四宮さんこそ、図書室に顔を出すのは珍しいね」

 

 本を選んでる最中、唐突に声を掛けられ振り返った先に居たのはかぐやの姿。普段、図書室を利用しないかぐやに鷺宮も目を丸くして驚いていた。

 

 

「私も本を借りに来たんですよ。まあ、生徒会に顔を出したついでにね」

「そうなんだ。じゃあ、私と本選びでもする?」

「ええ。私は構いませんよ。その変わりと言っては何ですが、面白い本を教えてください」

「いいわよ。お勧めなら沢山あるからね」

 

 

 

 偶然あった二人は図書室で会話に花を咲かせていた。今まで退屈だった日常も今日だけは楽しいと思うかぐやであった。その後、二人は互いにお勧めの本を教え合い、それを借りて家路に着いた。この時、生徒会室で一人項垂れる白銀に気付かなかった事で、かぐやと白銀のすれ違いが続く事となる。

 

 

【本日の勝敗 白銀とかぐやは出会わない為、不成立】

 




今回のお話、いかがだったでしょうか?


夏休み。スタートダッシュに失敗すると暑いだけの退屈な毎日になりますよね。
まあ、当時は家に籠ってゲーム三昧だったので自分は最高でしたが(笑)


すれ違いで会えない白銀とかぐやは夏の思い出を作れるのか?その為に陰で尽力する鷺宮はさぞ、大変な夏になるでしょう(確信)


次回も引き続き、夏のお話となります。
最後に感想、評価、お気に入り登録などをお待ちしています。宜しければ、お願いします。
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