生徒会庶務は平穏に過ごしたい   作:アリアンキング

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最新話、お待たせしました。


今回は白銀の特訓回と白銀&鷺宮の誕生日回です。


文字数は過去最大ですので、目を休めながら読むのを推奨します。


第17話 鷺宮は探りたい/かぐや様は贈りたい/鷺宮は抗えない

「璃奈さん。今、時間はあるかしら? 貴女に話したい事があるのだけど……」

「ああ、かぐやさん。別に大丈夫だよ。何かあったの?」

「その前に場所を変えませんか? 此処では…少し話し辛い事ですし」

「分かった。じゃあ、図書室に行こう」

 

 

 中庭で休憩していた時、かぐやが声をかけてきた。用件を聞こうとする鷺宮にかぐやは此処では言い辛いと返した。周りに聞かれたくないと言う事は、白銀絡みの事だろうか? だとしたら、かぐやが渋るのも無理はない。鷺宮は場所を変えて、話を聞く事にした。

 

 

 

「それでどうしたの? まあ、表情からして良い話って訳じゃ無さそうね」

「ええ。確かに良い話ではありません。実はですね。先程、廊下で見た事なのですが……」

 

 

 かぐやは一息吐いてから、話を始めた。それは授業が終わった後、かぐやが教室に戻る途中。廊下で何やら話している白銀と藤原を目撃した。知り会いの姿に折角だと、挨拶の一つでもしよう。そう思ってかぐやは二人に近寄ると、話の内容が耳に入ってきた。

 

 

「お前にはいつも甘えてるのは分かっている。だが、俺がこんな事を言えるのはお前しかいないんだ」

「そ、そんな事を言われても……。もう、仕方ないですね。分かりました。今回も私に任せてください」

 

 

(え? あの二人は一体、何を話しているのかしら? それに今の会長と藤原さんの言葉……。何処か意味深に聞こえるわね。ま、まさか…あの二人って、実は付き合っているの? 思えば、二人の雰囲気は明らかに男女特有のものだわ。そ、そんな…会長と藤原さんが。いや、そんなの絶対にいや。そうだ、此処は璃奈さんに相談してみましょう。あの人なら、何か良い案をくれるかもしれない〕

 

 

 

「……そんな訳で璃奈さんに二人の事を探ってほしいんです。どうかお願い出来ませんか?」

「わ、私が二人がどういう関係か探るの? こういう事はあっちゃんの方が得意でしょ。そっちに任せる方が良いんじゃないの?」

「それは私も先に思ったわ。でも、早坂は別の仕事で手が空いてないのよ。だから、璃奈さんにお願いしてるんですよ」

 

 

 蓋を開けば、白銀と藤原の関係を探れ。そんな難題を頼むかぐやに鷺宮は頭を抱える。だが、鷺宮も二人の関係が気になっていた。クラスでもよく話している姿を鷺宮も何度か見ている。自分とかぐやを除けば、仲のいい異性は藤原だけだ。しかし、それだけで二人がそういう関係であると、断定するには判断材料が足りない。結局、悩んだ末に鷺宮はかぐやの頼みを聞き入れる事にした。何しろ、自分ももやもやした気持ちを感じていたし、これを解消するには真実を明らかにするしかないのだ。

 

 

「ありがとう。璃奈さんに相談して良かったです」

「どういたしまして! それと一つ聞くけど、かぐやさんが二人を見た場所は何処? もしかしたら、またそこに来るかもしれないからさ」

「えっと、確か一階の渡り廊下でしたね。ですが、そこに来るとは分かりませんよ」

「まあ、一応確認の為よ。さて、いっちょやりますかね。但し、朗報は期待しないでよ」

「それは勿論です。本当なら自分でやるのですが、私も今週は予定が山積みで時間を割けないんです」

 

 

 

 悔しそうに顔を歪めるかぐやの肩に手を置いて、鷺宮は優しく言葉をかける。それに救われたのか、少しだけかぐやの顔が明るくなる。それに安堵して鷺宮も笑みを浮かべた。その後、かぐやと別れた鷺宮は教室に戻った。そこには件の二人がいた。バレない様に視線を送ると、やはり普段よりも仲が良い様に感じられた。とりあえず、今は白銀達の事は置いておいて、始まった授業に集中する事にした。

 

 

 

 放課後。全ての授業が終わり、帰り支度をする生徒達の中。二人は教室を出ていった。当然、鷺宮も遅れて教室を出ると、白銀達の跡をこっそりと追い掛ける。細心の注意を払って、尾行すると辿り着いたのは調理室であった。一体、こんな場所で何をするつもりなのか。鷺宮は皆目、見当が付かない。戸に耳を寄せて中の様子を窺うと微かに話し声が聞こえてきた。

 

 

 

『ほーら。実際に触ってみると怖くないでしょ?』

『ああ。だが、妙にヌルヌルしているな』

『それは濡れているからですよ。皆、濡れると同じですから』

 

 

 戸を挟んで聞こえる会話に鷺宮の顔が赤く染まる。もしや、二人の関係は想像以上に進んでいるらしい。だが、二人がどの様な関係とはいえ…学園でこのような行為は見過ごせない。そもそも生徒会に属する者がこの体たらくでは示しが付かないからだ。

 

 

 

 ならば取るべき行動は一つ。鷺宮は勢いよく戸を開けて中に踏み込んだ。

 

 

「こらーーーー。あんた達は此処で何をしてるのよ!! 生徒会に属する者が学園でこんな事をして恥ずかしいと思わないの」

「な、鷺宮!? どうしてお前が此処にいるんだ?」

「それに恥ずかしい事って、一体なんの事ですか?」

「惚けないで。二人が此処で破廉恥な真似をしたのは‥‥。これは生きた魚? え? 何がどうなってるの?」

 

 

 訳が分からず、混乱する鷺宮に白銀は事情を説明した。話によれば、来週に控えた調理実習の為に藤原と協力して特訓していたとの事。どうやら、鷺宮は大きな誤解をしていた様だ。それに藤原がニヤニヤと笑みを浮かべて、鷺宮に問い掛けてきた。

 

 

 

「そういえば。さっき鷺宮さんは破廉恥がどうとか言ってましたね。一体何をしてると思ったんですか? 良かったら教えて下さいよ~」

「べ、別に何でもないわよ。ところで特訓の成果は出てるの?」

「いいえ。実の所、さっぱりです。会長ったら、魚に触る事は出来ましたけど‥‥今度は魚から出る血が嫌だ―――って駄々を捏ねるんですよ。まあ、解決策はあるので明日にそれをやる予定なんです」

「成程。事情は分かったわ。そういう事なら私も協力しようか? 幸い、今の白銀くんに打って付けの物が家にあるからさ。藤原さんと同じく開始は明日になるけどね」

「良いのか? 俺としては助かるが…」

「別に遠慮しなくていいよ。第一、困ってる人を見捨てるのも寝覚めが悪いし、二人に変な疑いをかけてしまった詫びもしたいからね」

 

 

 

 こうして鷺宮も白銀の特訓に手を貸す事になった。特訓は面倒であるが、二人の関係を探るには好都合だ。見た所、怪しいと思う所は無い。しかし、白銀達が付き合っているのなら何処かで尻尾を出すだろう。あとはその瞬間をしっかりと確認するだけだ。

 

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。藤原は白銀と鷺宮を連れて、視聴覚室にやってきた。そこで藤原は用意した数々のホラー映画を広げた。彼女曰く、これは姉から借りた物で過激な描写が売りの作品との事だった。これを使って白銀の苦手意識を克服させる。それが藤原の作戦であったが、鷺宮が待ったをかけた。

 

 

 

「ねえ、これって私も知ってるけど。かなり怖い映画で日本での上映が禁止された奴よね? 逆に悪化すると思うわよ」

「ええ!? この映画って、そんなに怖い奴だったんですか~? 私自身、映画を観ないので全然知りませんでした!」

「おいおい。勘弁してくれよ。だが、藤原の策が駄目ならどうするんだ?」

「そこで私の出番よ。はい、これを使って慣れるのはどうかな?」

 

 

 

 鷺宮が取り出したのは塗り絵だった。それも只の塗り絵でなく、林檎を潰す手の絵や猪が解体されている絵など。妙に生々しい絵が多く掲載されている。タイトルには『生命の輝き』と書かれていた。だが、鷺宮の意図が分からず、困惑する二人に鷺宮は用途を説明する。

 

 

 

「これはさ。中世に存在した画家が描いた絵画を塗り絵にした物よ。当時は戦争や疫病が多かったから、自然とこういう死を連想させる絵を描く様になったみたいよ。使用するのは赤色が殆どだし、進むに連れて絵の方は過激になっていくけど、終わる頃には血に対しても耐性が付くんじゃない?」

「成程。確かに絵は怖いが、映像や実物を使って練習するよりは気が楽だな」

「へー。こんなやり方もあるんですね。鷺宮さんはこれを何処で手に入れたんですか?」

 

 

 斬新な克服法に感服する白銀を見て、藤原は本について尋ねてきた。どうやら、彼女もこの本に興味が湧いた様だ。

 

「ああ。これは今度、母の博物館で開催する展示会のグッズよ。いくつかサンプルを貰ったけど、扱いに困っていたからね」

「要するに鷺宮は要らない物を押し付けただけかよ。意外と酷いな」

「まあまあ。これで会長の問題も解決するんだから、良いじゃないですか。文句を言ったら駄目ですよ」

「そ、そうだな。これは有難く使わせてもらうぞ」

「どういたしまして。これで特訓は家でも出来るから、もう集まる必要は無いよね?」

「うーん。私はそうしたいけど、会長はどうします?」

「俺は別に構わない。こうして、克服する手段も見つかった訳だしな。何だかんだで二人に甘えている以上、少しは俺も踏ん張らないと格好が付かないだろう」

 

 

 そう言って、笑う白銀に二人も釣られて笑う。二人と別れた後、鷺宮はかぐやにメールを送った。それは白銀達の事を報告する為である。メールで済ませようと思ったが、あれだけ不安を抱いていたのだ。直に会って話す方がかぐやも安心する事だろう。そう配慮しての事だった。

 

 

 

「突然、呼び出してごめんね。今日も忙しいんでしょう?」

「いえ。それは心配に及びません。璃奈さんに無理を頼んだのですから、私も多少の無理はしないと釣り合わないでしょう。それで何か分かったんですか?」

「うん。その事だけど、二人は別に付き合ってなかったわ。只、白銀くんの特訓に協力してたみたい」

「特訓ですか……。二人の事は杞憂で安心しました。けれど、会長は何故私に相談しないのかしら? 言ってくれたら全力で協力するのに。選りに選って、藤原さんなんかに頼むなんて」

「ま、まあ。白銀くんにも色々あるんでしょ。そこは言わないで置こうよ」

 

 

 

(うーん。かぐやさんの気持ちも分かるけど、白銀くんの弱点はアレだからなぁ。以前の特訓も散々だったし、そんな事にかぐやさんが参加したら、絶対に愛想が尽きそうだもの。知らぬが仏ってやつよね)

 

 

「何にせよ。今回はどうもありがとう。璃奈さんが困った時はいつでも言ってください。全力で力になりますから」

「それは頼もしいわね。うん、その時はお願いするわ」

 

 

 結局、白銀と藤原の交際疑惑はかぐやの思い過ごしだった。また鷺宮も密かに安堵していた事を感じていたが、それは気の迷いだと誤魔化していた。因みに調理実習の内容が変更になり、特訓が無駄になったと白銀が落ち込む事になるのは別の話。

 

 

【本日の勝敗 疑惑が杞憂だと知って安堵したかぐやと鷺宮の勝利&無駄骨を折った白銀の敗北】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休日の昼下がり。鷺宮はかぐやと会う為、都心へ訪れていた。待ち合わせ場所に到着するが、かぐやの姿はない。どうやら、まだ来てない様だ。鷺宮は適当な場所に腰掛けて、本を読みながら待つ事にした。そして数十分が過ぎた頃、かぐやが姿を現わした。彼女は此方に気付くと、慌てた様子で駆け寄ってくる。

 

 

「遅れてごめんなさい。待たせてしまいましたか?」

「それは気にしないで。私も来て間もないから。じゃあ、かぐやさんも来た事だし。白銀くんのプレゼント選びに行こうか」

「はい。良い物が見つかるといいのですが……」

「大丈夫だって。沢山、店があるんだもの。心配はいらないわよ」

 

 

 この日、二人が来た理由。それは数日後に迫った白銀の誕生日、彼に渡すプレゼントを選ぶ為である。先日、藤原達とショッピングに来た際もかぐやは密かに探していた。しかし、その時はこれといった品を見つける事が出来ず、日を改める事にしたのだった。この件を早坂に話すと、鷺宮を誘って探しに行ってみてはどうかと助言を受ける。その鷺宮も白銀に贈る品を見つかっておらず、渡りに船だとかぐやの誘いを受ける事にした。

 

 

 

 二人が最初に訪れた場所。それは鷺宮がよく利用する文房具店だった。扱う品も一般的な物から高級品までと幅も広い。初めて来るかぐやも、品揃えの豊富さに驚いていた。

 

 

「凄い品数ですね。こんな場所にこれ程の店があるとは知りませんでした」

「普段は専門店に行く事は無いからね。私も初めて来た時は、吃驚したよ。でも、此処なら白銀くんにピッタリの物が見つかるんじゃないかな?」

「そうですね。それで私は中を見て回りますけど、璃奈さんはどうします?」

「ああ。私も適当に見て回るよ。三十分くらいしたら、此処で落ち合おうよ」

「分かりました。それでは後ほど会いましょう」

 

 

 

 それぞれで目的の物を探すべく、別れた後。鷺宮は手帳のコーナーに足を運んだ。思えば、白銀はいつも予定を手帳に書いている。その為、すぐに頁が埋まるだろうし、使い切る度に買うのでは金も馬鹿にならない。ならばと鷺宮が選んだのは、ずっと使える電子手帳だった。バッテリーも長持ちするタイプで、例えバッテリーが切れても記載した内容は消えない記憶機能付き。一万五千円と値は張るが、奮発して購入する事に決めた。

 

 

 会計を済ませた後。鷺宮が店内をうろついていると、かぐやがある品を手にやって来た。

 

 

「璃奈さん。良い物が見つかりましたよ。これです、これ。この万年筆なら会長も喜んでくれますよね」

「へえー。万年筆とは渋いチョイスだけど、白銀くんのプレゼントに丁度いいね。でも、何か高そうだけど…いくらするの?」

「ええ。これ程の逸品が十万円なんて随分と安いんですね。それでは早速、会計に行って「かぐやさん、ちょっと待った」はい?どうかしましたか?」

 

 

 何気なく万年筆の値段を聞けば、返ってきた言葉に鷺宮は絶句した。だが、すぐに我に戻って会計に向かおうとするかぐやを止める。その本人は止められた理由が分からず、呆けた表情で鷺宮を見ていた。

 

 

「ねえ、かぐやさん。十万円って、かぐやさんには安いのかもしれない。でもね、世間一般では十万は大金なんだよ。もし、それを白銀くんに贈るとしても…多分というより、絶対に喜ばないと思うわ」

「ええ!? これでは駄目なんですか? でしたら、此方の五万円の万年筆なら「それも駄目だよ」何故ですか!! だったら、私は何を贈ればいいんですか?」

「ま、まぁそれは別の店で探そうよ。とりあえず、それを置いてこの店を出ましょう」

「もう! 折角、良いと思ったのに」

 

 

 値段もさる事ながら、鷺宮が反対したのは自分達を見る店員の視線にあった。高級品を手にはしゃぐかぐやを先程からハラハラとした様子で見ていた。それも無理もない。何せ、十万と五万の高級品だ。万が一、傷が付いたらその時点で売り物にならない。店員の不安は鷺宮も理解していた。

 

 

 その後、少し不機嫌になったかぐやを宥めて鷺宮達は店を後にした。

 

 

 

 

 それから二人は色んな店に足を運ぶが、プレゼント探しは困難を極めていた。ふと寄った時計店で十五万の時計を見つめるかぐやを邪魔したり、次に寄った靴店ではあろう事か、三十万の靴を選ぶ始末。最早、此処まで来ると態とやっているのかと思うが、かぐやは真面目に選んでいた。単純な話、彼女と庶民の金銭感覚に大きな違いがあるのが問題であった。

 

 

 そのかぐやは度重なる鷺宮の妨害で、完全に拗ねていた。道中、何度も宥めるも一向に口を利いてくれない。そんな時、鷺宮の目にある店が止まる。

 

 

「これだ。かぐやさん、あの店に行こう。もしかしたら、贈り物が決まるかもよ」

「本当ですか? どうせ、また邪魔をするのでしょう。というより、あんな店で何があるというのですか」

「いいから行こう。物は試しだって、此処で駄目だったら次は邪魔しないからさ」

「はぁ…。分かりました。璃奈さんがそう言うなら行ってみましょう」

 

 

 

あれならば、上手く行くかもしれない。鷺宮はかぐやを必死に説得して、件の店に訪れた。

 

 

「ごめんください。あの…どなたかいらっしゃいますか?」

「はい。いますよ。何とも珍しいお客様ですね。当店にどの様なご用事で?」

 

 

 中に入り、声をかけると奥から一人の老人が姿を見せた。和服姿で白髪のお爺さんは優しい笑みを浮かべて、鷺宮達に用を尋ねた。

 

 

「実はこの店で扇子に特別な彫りをしてくれると、外の看板で見まして。それをお願いしたいんです」

「ああ。そうでしたか。では、どの扇子に文字を入れますかな? お嬢さんの好きな言葉を教えてくれんかね」

「あ、頼みたいのは私じゃなくて。こっちの子です。ほら、かぐやさん。入れる言葉を決めないと…」

「え、ええ。ですが、いきなり言われても…」

 

 

 成行きを見守っていたかぐやは、唐突に話を振られて困惑した。いざ、入れる言葉を考えろと言われて浮かぶはずもなく、かぐやは唸りながら考え込むがやはり言葉は思い付かない。

 

 

「一つ聞きたいのですが、これは誰かに贈る物ですか?」

「はい。私が日頃お世話になってる方への贈り物です」

「ふむ。ならば、その人を表した言葉はどうかな? 贈ってくれた相手が自分を理解してくれている。それは相手にとって、何より嬉しいと感じるものですよ」

 

 

 

 

 悩むかぐやに老人は優しく助言を与えた。老人の言葉はかぐやの心に染み渡る。

 

 

(そうですね。私とした事が、高い物を贈る事だけ考えて。相手の気持ちを考えていなかった。今になって、鷺宮さんが言った言葉の意味が漸く分かりましたよ。会長を表す言葉。思い浮かぶのは‥‥。そうです。ぴったりの言葉があるでは無いですか。ええ、これにしましょう)

 

 

 老人の助言で入れる言葉が決まったかぐやは、備え付けの紙にその言葉を書いて老人に手渡した。

 

 

「ほう、この言葉を知っているとは驚いた。お嬢さんもそうですが、贈る相手も相当に賢い様ですね。それでは私は早速、作業に入ります。ほんの数十分くらいで終わります。狭く退屈な所ですが、どうぞ寛いでお待ちください」

 

 

 そう言って、老人は奥に下がっていく。二人は老人の背を見届けた後、適当に座って大人しく待つ事にした。その間、特に会話をする事もなかった。奥で作業をする老人の邪魔をしたくなかったし、何よりこの静寂が心地良いと感じていたから。

 

 

 

 

 数十分後、作業を終えて老人は再び姿を見せた。鷺宮達に完成した扇子を見せようとした時、鷺宮は自分は必要無いと一言告げて、店を出て行った。その行動に首を傾げるかぐやだが、老人の方は鷺宮の心情を理解したのか、穏やかな顔で彼女を見送った。

 

 

 

「さて、出来上がったのがこちらになります。お嬢さんがお気に召さないのなら、もう一度やり直しますよ。無論、完成した物は此方でお届け致します」

「いいえ。寧ろ、素晴らしいとしか言えません。それに入れた言葉も見やすくて、風情があります」

「それは何よりです。その様に褒めて貰うのは、年寄りになっても嬉しいですよ」

 

 

 

 かぐやの言葉に老人は心の底から嬉しそうに笑っていた。そんな老人に釣られてか、自然とかぐやも笑みを浮かべていた。その後、代金を支払い店を出ると、外で待っていた鷺宮に声をかける。

 

 

 

「ありがとう鷺宮さん。貴女のおかげで会長のプレゼントが手に入りました」

「いいのよ。私こそ、勝手に出て行ってごめんね。今思うとかぐやさんにとっても、店のおじいさんにとっても失礼な行動だったよね」

「いえ。私は気にしてませんよ。それにお爺さんも怒っていませんでしたから。ところで何故、あの時に店を出たのですか? お爺さんは分かっていた様ですが、私は未だに分からないんですよ。分からないままというのも、もやもやしますし。その理由を教えて下さい」

 

 

 

 かぐやは、先ほど鷺宮がとった行動の意味を尋ねた。改めて考えてみても、分からない。単純に答えが気になるのもあったし、何より自分だけ分からないのもそれはそれで納得がいかない。そんなかぐやは鷺宮をジッと見つめており、この分だと教えるまで逃がしてくれないだろう。鷺宮は観念して訳を話す事にした。

 

 

「別に深い意味は無いんだよ。只、あれは白銀くんに贈る物でしょ? だとしたら、それに施された言葉を私が先に見るのは駄目だと思ったのよ。そこはやっぱり受け取る白銀くんが先に見ないとね」

「…ふふふふ。全く、そんな事を考えていたのですか。別に先に見たとしても、私は気にしないのに」

「い、いいじゃないの。折角、気を利かせたんだから、そこは笑うんじゃなくて褒めて欲しいわ」

「ええ。璃奈さんのお気遣いは私も感謝しています。本当にありがとう」

「どういたしまして! それじゃあ、用も済んだし帰ろうか」

「そうですね。だけど、お昼に何か食べていきましょう。ホッとしたら、お腹が空いてきました」

「いいわねぇ。実の所、私もお腹空いてるのよ」

 

 

 

 そんな会話をしてお互いに笑い合う。今日は大変な事もあったが、二人には充実した一日であった。

 

 

 

 

 

 後日、かぐやは白銀の誕生日を祝い、件の扇子を白銀に贈った。その白銀は想いを寄せるかぐやから誕生日を祝って貰い、素敵な贈り物をくれた事に感激する余り。家に帰った後、圭に何度も自慢した事で怒りを買い、散々蹴られる羽目になったという。

 

 

【本日の勝敗 無事にプレゼントを贈る事に成功したかぐやの勝利】

 

 

 

 

「「「「鷺宮庶務、お誕生日おめでとう!!」」」」

 

 

 9月15日 この日は鷺宮の誕生日であった。それを祝おうと生徒会の仲間達は、彼女に内緒で誕生日会を計画していたのだ。突然の事に呆然とする鷺宮だが、この状況を理解するや心の中で盛大に舌打ちをした。無論、本来であれば鷺宮も喜んだのだが、今の彼女には心から喜べない理由がある。

 

 

 

 

 それは白銀の誕生日まで遡る事になる。その日の夜。かぐやに呼ばれて鷺宮は四宮家に訪れていた。

 

 

 

「ようこそ、いらっしゃいました。急にお呼びしてごめんなさいね」

「ううん。私の方こそ、呼んで貰えるのは嬉しいよ。それで…何か用があるんでしょ?」

「…もう。璃奈さんは意外とせっかちですね。まあ、折角ですから本題に入るとしましょう。ちょっと一緒に来てくれますか?」

「‥‥うん? 此処では駄目なの?」

「ええ。とりあえず、今は私について来てください」

 

 

 

 何か隠してるかぐやに警戒心を抱くが、本人はニコニコと笑うだけで話すつもりは無い様だ。嫌な予感はするが、行かない事には話は進まない。仕方無く、鷺宮は言われた通りかぐやの後をついて行く。

 

 

「此処です。さあ、中に入って下さいな」

「…分かったわ。入ればいいんでしょ」

 

 

 

 促されるままに部屋に入ると、真っ先に目に入ったのは一つのケーキ。それだけであれば、普通の光景なのだが唯一違う点はそのケーキは従来よりも大きいのだ。これを見せて、かぐやはどうするのだろう?彼女の意図が全く読めず、鷺宮は困惑していた。

 

 

 

「ああ。これなのですが、璃奈さんも知っての通り。今日は会長の誕生日だったでしょう。その為に用意して振る舞おうとしましたが……まあ、量が多い為に余ってしまったんです。かといって、捨てるのも勿体ないでしょう。初めは早坂に食べてもらう話だったけれど、早坂は鷺宮さんにも振る舞ってはどうかと言われまして。こうしてお呼びした訳です」

「へぇーーーー。そうなんだ。あの子がそんな事をねぇ」

 

 

 自分が呼ばれた訳。それは残ったケーキの後始末。要するに体よく利用されたのだ。怒り心頭で早坂を睨み付けるが、彼女は目を逸らして素知らぬ顔をしている。それが余計に苛立たしい。しかし、事態はそれ所ではない。肝心なのはこの化物ケーキをどうするかである。無論、食べるしか手段は無いのだが、問題は食べた後。ケーキは性質上、カロリーも半端ではない。普通のケーキでさえ高いと感じるのに、このケーキに至っては測りしれないカロリーを有しているだろう。間違いなく体重が増えてしまう。

 

 

 

 だが、此処で拒否すればこのケーキはゴミ箱行きとなる。それはそれで寝覚めが悪いと思うのは、普通の人なら仕方ない事だ。悩んだ挙句、鷺宮はかぐやの頼みを聞き入れた。但し、条件を設ける事もわすれてはいない。中段の部分を鷺宮が引き受け、一番下の大きい部分は早坂が引き受けるという事。これは譲歩の意味もあるが、裏の部分では早坂に対する仕返しも籠められていた。

 

 

 

 何だかんだで完食に成功したが、その代償も大きかった。要は鷺宮の体重が増えたのだ。これにショックを受けて彼女は元の体重に戻すべく、ダイエットに励んでいた矢先に起きたのが自分の誕生日会。この催しには当然、ケーキも用意されている。自分の体重が増えた原因であるケーキを親の敵と言わんばかりに彼女は睨みつけていた。

 

 

 

「ほらほら、いつまでもボーっとしてないでこっちに座って下さいよ~。何だって、今回の主役は鷺宮さんなんですから」

「あ、ああ。ありがとう。このケーキだけど‥‥何か妙に大きいわね」

「ええ。それはそうですよ。今日の為に私が特注で作らせました。質のいい小麦と糖度17度の苺。それに厳選した牛乳から作られた生クリーム。どれをとっても一級品ですよ」

「へーーーー。そうなんだぁ。かぐやさん、どうもありがとう~」

 

 

 聞くだけで胸焼けのする内容に鷺宮は絶望していた。これは確実に…体重がまた増える。その残酷な運命を彼女は確信していた。何せ、ケーキ以外にもチキンやピザ。何れも手作りだろうが、カロリーが高いのは一目瞭然だ。しかし、並ぶ料理もケーキも非常に美味そうで鷺宮の精神を揺さぶっていく。その誘惑に負けまいと抗う中、かぐやはある言葉を口にする。

 

 

「さあ存分に召し上がってください。今日は特別な日なんですから、羽目を外しても罰は当たりませんよ」

「い、頂きます!! わーい 豪華なご馳走嬉しいなぁ~」

 

 

 かぐやの口から出た悪魔の言葉で鷺宮は…完全に吹っ切れた。カロリー?そんなの気にしない。体重が増える?上等だ!どんと来やがれ!! 自暴自棄になった彼女に怖い物はなく、我武者羅にご馳走とケーキを堪能する事にした。無論、心の中では大号泣していたのは言うまでもない。

 

 

 

 因みに案の定、体重が増えた鷺宮は二週間に渡るダイエットに励んで無事に元の体重に戻す事に成功した事を付け加えておく。

 

 

 

【本日の勝敗 誘惑に負けた鷺宮の完敗】




今回のお話いかがだったでしょうか?


以前に感想や評価コメントで原作と重なる部分が多いのでは?と指摘を受けて、この話では原作に沿いながらもオリジナルの展開を多く盛り込んでみました。
言われないと気付かないのが自分の駄目な所です。これは反省しないといけない。



それと現在はゆっくりとですが、過去に投稿した回で該当する箇所を加筆修正しています。リアルの都合もあるし、全て終わるのはいつになるやら…。

次回は生徒会選挙編に入ります。いよいよ最後のメインキャラの出番ですね。

それでは次の話もお楽しみに
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