「くそっ! どうして動かないんだよ!! 動け動け動け!!」
テレビ画面だけが薄暗く光る六畳の一室で、一人の男が絶叫する。どうやら目の前のゲーム機が故障したらしく、配線を繋ぎ直したり筐体を叩いたりしている。それでも直らないとわかると、
「悪かったよ・・・・・・僕が悪かった・・・・・だから許してくれないか・・・・・・?」
男は先ほどとは打って変わって猫撫で声でゲーム機に話しかけ、愛する人に囁くように配線部分へ息を吹きかけた。そしておもむろに電源ボタンを押す。しかし動かない。
絶望の吐息とともにへたり込むと、ゲーム機の前で跪き、祈りを始めた。「お願いします直ってください直ってください直ってください・・・・・・」再び震える指先でボタンをそっと押す。が、ゲーム機が光ることはなかった。
「アアアアア!!! ふっざけるなよぉぉぉ!!」
再度豹変した男はゲーム機を蹴飛ばしあらんかぎりの罵詈雑言をぶつけた。それが済むと今度は泣いた。
「どうしてだよぉぉ・・・・・・僕にはこれしかないんだよぉぉ・・・・・・もう無理・・・・・・皆死ねばいいのに」
毛布にくるまり泣きながらぶつぶつと世界を呪い始める男の前で、突然ゲーム機の電源ボタンが紫色に輝き始めた。
「あぅおぉッ!!?」
毛布をかなぐり捨てゲーム機に駆け寄るが、見たこともない色で光る電源ボタンに期待と不安がないまぜになる。
「・・・・・・貴様、我と契約を結ぶか?」
部屋に響くおどろおどろしい声。驚愕して辺りを見回し、それはテレビから発せられていることに気づく。
「我が御名はサーヴァ・ヴォルクルス。貴様の身勝手な呪詛を聞き届けてやった。契約を結び召還に応じるなら力を与えよう・・・・・・」
嵐のように乱れるテレビ画面の中に、微かに白い仮面が映っている。白い仮面は鮮血の色をした兜を被り、そこからは金色の角が二本節くれだって生えていた。明らかに異形のものだ。男は目を見開き穴があくほど見つめている。
「クク・・・・・・そう怯えるな。我は貴様にとって恵みとなるだろう」
若干笑いを含んだ陰気な声で、ヴォルクルスは男に語りかけた。
「・・・・・・ぃ」
「ふん?」
「・・・・・・遅すぎると言っているんだっっ!!」
「・・・・・・・・・・・・何?」
「僕がどれほど待ったと思っているんだ!? このくそったれな世界から早く僕を助けに来いと何百回祈ったか知っているか!? あぁもういい!! さっさと契約を結ぶぞ!!!」
「・・・・・・・・・・・・」
怒鳴り散らす男に対し、画面の中の仮面は微かに首を傾げた。そこからは表情を伺えなかったが、若干呆れているみたいだった。