「確かにサワユキ・ドウナイは私の弟だけど・・・・・・サワユキ王国なんて聞いたこともないわ」
シャチコ・ドウナイは周囲の疑惑に対し弁解を始めた。
「とすると自称ってことですか? なんかあやしいですね!」
ユリカがつぶらな瞳でじーっと見つめてくる。親が連邦の高官同士という繋がりで、ユリカの事はよく知ってる。その無邪気な振る舞いは悪意がないのはわかるけど、ますます皆の好奇心を強めるだけだからやめてほしいな。
「私の弟は大人になってから音信不通でよく知らないの・・・・・・ただ、日本で民間人として暮らしているのは聞いていたけど」
そう言って飲みかけのパインジュースを啜る。大勢の前で話すのは苦手、喉が乾いちゃう。
「・・・・・・その民間人であるはずのサワユキさんですが、彼がジオン公国をクーデターで打倒したそうです」
ルリルリの平板とした声に、思わず身震いしてしまった。何かとてもいやな予感がする。
「すごーい!! さすがシャッチーの弟くん! これでジオンとの戦争も終わりだね!」(ぶいっ)
「・・・・・・そして、サワユキ王国を名乗りティターンズの主力部隊と戦闘状態に入れり、これを撃滅。さらにコロニー国家ネオアメリカに対し元首への無礼を理由に宣戦を布告、王国の大質量兵器によりネオアメリカは滅亡」
ルリルリがジャブローよりの電文を読み上げ、コロニー出身者は悲鳴や怒号をあげている。カトル君でさえ、気持ちを抑えようと必死になっているのが見えた。
「現在、外交交渉により連邦政府とサワユキ王国は停戦状態にあるが、このような戦争犯罪国家を政府として看過できない。ロンドベル火星方面分遣隊は、連邦軍の外郭部隊として当該国へ調査を行い必要であれば武力を以て鎮圧せよ」
・・・・・・なるほど、成功すれば政府の手柄、失敗すれば外郭部隊の暴走。狡い手、父親が考えたのかもね。余りにも突拍子もない事態に不思議と冷静な分析をしていたが、これは現実逃避の一種なのかな。
周りの様子を窺うと、トビア君やアスカは闘う意志を見せていて、シンジ君はこちらを困った顔で見ながらもじもじしていた。全体的には慎重論がやや優勢といったところかな。私への遠慮もあるようで、その配慮が少し嬉しかった。
「ジャブローより追伸。ロンドベル本隊はサワユキ・ドウナイとの戦闘により壊滅せり。諸君等の奮闘に期待する。以上です」
その言葉に、思わずパインジュースを手放してしまう。宇宙空間だから床に落ちて飛び跳ねることはなかったが、そのフラフラと彷徨う軌道を目で追っていたら、いつの間にか気を失ってしまっていた。