「ふん・・・・・・ようやく応じる気になったか・・・・・・この私を待たせるとは、恥を知れ」
ノイズ混じりのモニターには、気の強すぎる顔の女性が映っていた。
「お待たせした事は、お詫びします。そちらとの交渉には大変な準備が必要だったので」
「ほう・・・・・・なかなか礼儀を弁えた坊やだ・・・・・・だが悲しいかな、私はロンドベルの代表者と話したいのだ。さっさと代われ」
「僕がその代表者です。カトル・ラバーバ・ウィナーといいます」
凛とした返事だったが、ハマーンの顔は憮然とする。
「私の見込み違いだったかな・・・・・・いくら火星方面のロンドベルが女子供ばかりの疎開船と噂されていようと、少しは頼りがいがあると思っていたのだが・・・・・・」
「確かに地球の本隊と比べ僕達は女性や子供が多く、地球圏の戦乱から逃れていたと言われてしまうこともわかります。しかし、先のホワイトベース隊の例もあります。火星では木連や異星人の撃退等、治安維持に貢献していました。この戦力はあなた達にも引けを取らないと思います」
「ふん・・・・・・ずけずけと・・・・・・まぁいい。では早速本題に入らせてもらおうか」
「ええ、そうですね。僕達新生ロンドベルとあなたたちアクシズの――」
「・・・・・・? なんだ、聞こえないぞ。通信兵!」
画面の外に呼びかける姿を最後に、ハマーンはノイズの霧に消えた。
「え? 一体どうしたんだろう? 通信状態が悪いのかな? いや、違う・・・・・・強制割り込み!?」
カトルはナデシコオペレーターのルリにコンタクトをとる。
「これは一体?」
「ネルガル本社経由からのスクランブル通信です。ネルガル製の本艦は拒否できません」
「ネルガルから? なぜこのタイミングで・・・・・・」
緊張を保ちつつシートに座り直すカトル。あのアカツキ会長のことだ、またおかしな事を言ってくるに違いない。言質をとられないようにしなければ――。
しかし、ロン毛男を想定したカトルの脳内は、それとは真反対の人間の登場により混乱を起こした。
「やぁ・・・・・・」
画面上の男は、割り込みをかけてきた割にぶすくれた顔をして、まるで嫌々連絡してやったかのような態度だった。ネルガルのアカツキ会長のうざったいロングヘアとは対照的な禿かかった頭が往生際の悪さを伺わせた。
「こ、こんにちは」
カトルはなんとか部隊の代表者としての対面を守り挨拶を返した。しかし、男は不機嫌になっていく。
「ちっ、カトルかよ、ルリルリだと思ったのに・・・・・・女みたいな美少年だけど、僕はホモじゃないし。だいたい、僕の方がイケメンだからね!!?」
何故か相手からひどく嫌われていることを自覚したカトルは、これからの交渉を考えて慄然とした。